JP3915462B2 - ガス発生剤組成物及びエアバッグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば車両に搭載され、人員保護のエアバッグを膨張させるためのガス発生装置、あるいはシートベルトを巻き取るためのプリテンショナーに使用され、作動時に燃焼ガスを発生するために用いられるガス発生剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、安全性の高い非アジド系ガス発生剤の研究開発が各方面でなされている。ガス発生剤としては、良好な燃焼性能を有し、経時安定性に優れ、高いガス化率を有し、また実質的に有害なガスを発生しないものが要求されている。
【0003】
ガス化率が高いことは、ガス発生装置に装填できるガス発生剤の量を低減できるため、装置の小型化、軽量化が可能となり、ガス発生装置の製造工数を低減できる利点を有する。この要求に応じるため、完全燃焼により残渣を発生しない酸化剤であるアンモニウム酸素酸塩を主成分とするガス発生剤が各方面で研究されている。
とりわけ、低毒性・低危険性、かつ燃焼で有害ガスを生成しないという点から、硝酸アンモニウムが注目されており、各方面で硝酸アンモニウムを主成分とするガス発生剤が研究されている。また硝酸アンモニウムは、人員保護用のガス発生剤だけでなく、ロケットモーターに用いられる固体推進薬の酸化剤としても研究がなされている。
【0004】
一方、ガス発生装置に着目すると、高圧条件下で燃焼させるシステムよりも、常圧下でも燃焼可能なシステムの方がシステム全体を単純化できる。そのため、ガス発生剤としては低圧での燃焼性が良好であるものが求められつつある。
【0005】
しかし、アンモニウム酸素酸塩は、金属硝酸塩や金属過塩素酸塩などと比較すると酸化剤としての反応性が乏しい。即ち、硝酸アンモニウム等のアンモニウム酸素酸塩は、アルカリ金属やアルカリ土類金属の硝酸塩、過塩素酸塩に比べて熱分解の反応機構が複雑であり、酸化還元反応が途中の段階で中断しやすいためと考えられ、それがアンモニウム酸素酸塩の酸化能力の低い原因と考えられる。
【0006】
例えば、硝酸アンモニウムでは、完全燃焼により窒素ガス、水、及び二酸化炭素といった形態で燃焼生成物が生成するが、完全燃焼しない場合は、硝酸アンモニウムの分解生成物である窒素酸化物や硝酸がガス発生装置外に放出される。酸化剤はガス発生剤の主要成分であるため、正常なガス発生速度のパターンから大きく逸脱し、さらに乗員が高濃度の酸性物質や有害な窒素酸化物を被爆するため、自動車の衝突時に安全に乗員を保護することができない恐れがあった。
そのため、ガス発生剤の燃焼性能を向上させる様々な試みがなされている。具体的には、反応性の大きい還元剤と組み合わせたり、より酸化能力の大きい酸化剤を併用したり、あるいは燃焼触媒を添加することが行われてきた。
【0007】
例えば、特開平7−215790号公報には、硝酸アンモニウム、熱可塑性エラストマー、還元剤としてグリシジルアジドの重合生成物からなるガス発生剤が開示されている。
また、特開平10−130086号公報には、硝酸アンモニウム又は硝酸カリウムなどで相安定化した硝酸アンモニウム、還元剤としてアミノテトラゾール、及び賦形剤からなるガス発生剤が開示されている。
【0008】
また、特開平10−265290号公報には、高分子系バインダーとして、ポリアクリル系高分子化合物、ポリアセタール、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂又はセルロース系高分子、硝酸アンモニウム又は相安定化硝酸アンモニウム、及び金属の硝酸塩、亜硝酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩から選ばれる補助酸化剤を含有するガス発生剤組成物が開示されている。
【0009】
また、特開平11−92265号公報には、還元剤としてカーボンブラック又は活性炭粉末、相安定化硝酸アンモニウムを必須成分とし、高分子系バインダーを任意成分として含有するガス発生剤組成物が開示されている。
さらに、特開平7−33578号公報には、還元剤として、3,3−ビスアジドメチルオキセタン/テトラヒドロフランコポリマー、又は3,3−ビスアジドメチルオキセタン/3−アジドメチル−3−メチルオキセタンコポリマー、酸化剤として、硝酸アンモニウム及び/又はシクロテトラメチレンテトラニトラミン、及び0.01〜1.0重量%のカーボンブラック、及び燃焼触媒として0.1〜3.0重量%の重金属からなる無煙系コンポジット推進薬が開示されている。
【0010】
しかしながら、特開平7−215790号、特開平10−130086号、特開平10−265290号の各公報に記載のガス発生剤組成物は、常圧域で着火燃焼させるガス発生装置に用いるには、依然その燃焼性能に大きな問題があった。
即ち、低圧域での燃焼性が悪いためガス発生速度が断続的となり、自動車の衝突時に人員保護装置が確実に作動しない恐れがあった。
【0011】
一方、特開平11−92265号公報に記載のガス発生剤組成物は、燃焼性能は比較的良好なものであるが、経時安定性、即ちガス発生剤組成物が自動車内に搭載されている期間における経時安定性が悪いという問題があった。
また、特開平7−33578号公報に記載の無煙系コンポジット推進薬は、その用途がロケットモーターの推進を目的としており、それゆえ上述のガス発生剤に求められる性能を有する組成をなしていない。具体的には、酸素バランスが考慮されていない組成のため、燃焼で有害なガスを発生する恐れがあり、また、ガス発生剤組成物として用いるには燃焼性が悪かった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、良好な燃焼性能を有し、高温での経時安定性に優れ、さらに実質的に有害な燃焼ガスを発生しないガス発生剤組成物を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アンモニウム酸素酸塩、粉末状微結晶炭素、安定剤を含有し、かつガス発生剤組成物の酸素バランスを特定の範囲に設計したガス発生剤組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次に示すとおりである。
【0014】
第1の発明は、(a)成分:アンモニウム酸素酸塩として硝酸アンモニウム又は相安定化された硝酸アンモニウム、(b)成分:粉末状微結晶炭素として活性炭又は木炭及び(c)成分:ガス発生剤組成物の自然分解を抑制するための安定剤を含有し、かつガス発生剤組成物の酸素バランスが、−0.25≦ガス発生剤組成物の酸素バランス(g/g)≦−0.05を満たす範囲内にあるガス発生剤組成物。第2の発明は、さらにガス発生剤組成物から(b)成分を除外したガス発生剤組成物の酸素バランスが、0≦ガス発生剤組成物から(b)成分を除外した組成物の酸素バランス(g/g)≦0.20の関係を満たす範囲内にある請求項1に記載のガス発生剤組成物。第3の発明は、(a)成分が硝酸アンモニウム又は相安定化された硝酸アンモニウムであり、(b)成分が活性炭又は木炭であり、かつ(a)成分と(b)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量の比率が70〜95重量%の範囲内である前記第1の発明又は前記第2の発明に記載のガス発生剤組成物。第4の発明は、さらに(d)成分として高分子系バインダーを含有する前記第1の発明乃至前記第3の発明のいずれかに記載のガス発生剤組成物。第5の発明は、さらに(e)成分として、含窒素化合物、固体有機酸、有機酸塩及び有機酸の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の燃料成分を含有する前記第1の発明乃至前記第4の発明のいずれかに記載のガス発生剤組成物。第6の発明は、さらに(f)成分として、硝酸アンモニウムと異なる酸素酸塩を含み、かつ(f)成分と(a)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量の比率が50〜97重量%である前記第1の発明乃至前記第5の発明のいずれかに記載のガス発生剤組成物。第7の発明は、さらに(g)成分として、一酸化炭素を低減する触媒を含有する前記第1の発明乃至前記第6の発明のいずれかに記載のガス発生剤組成物。第8の発明は、前記第1の発明乃至前記第7の発明のいずれかに記載のガス発生剤組成物を用いてなるエアバッグ。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で用いる前記(a)成分のアンモニウム酸素酸塩は、ガス発生剤組成物の酸化剤の主要成分である。アンモニウム酸素酸塩は、完全にガス化することから、高いガス化率やガス発生量を有する非アジド系ガス発生剤として最も望ましい酸化剤である。
【0016】
アンモニウム酸素酸塩としては、取扱い性(人体に対して有害性が少ないこと、感度が高くないこと、ガス発生剤の実用温度範囲における融解あるいは分解しないこと)の点、そして燃焼で塩化水素など有害ガスを発生しない点をもさらに考慮すると、硝酸アンモニウムである。硝酸アンモニウムは、その相転移による体積変化が原因となりガス発生剤の性能が変化することを抑制するために、必要に応じて相安定化されていてもよい。
【0017】
(a)成分の形態は、成形性と燃焼性とから粉末である。その平均粒子径は1〜1000μmの範囲であることが好ましく、ガス発生剤組成物を成形した物の機械的物性及び燃焼速度を考慮すれば2〜200μmの範囲であることがさらに好ましい。
その平均粒子径が1μm未満の場合、(a)成分自体の製造性、及びガス発生剤組成物の製造性が悪化する傾向にある。一方、平均粒子径が1000μmを超えると、成形物の機械的物性が悪化し、しかも燃焼速度が低下する傾向にある。
【0018】
(a)成分の含有量は、ガス発生剤組成物中において、好ましくは、40〜94重量%、さらに好ましくは、42〜92重量%である。40重量%未満ではガス化率が低下し、94重量%を超えると燃焼速度が低下する傾向にある。
【0019】
次に(b)成分の粉末状微結晶炭素について説明する。粉末状微結晶炭素はアンモニウム酸素酸塩の分解促進効果を有し、燃焼触媒として機能する。また自身も還元剤として寄与するため、ガス化率を向上させる機能を有している。その具体例としては、活性炭、コークス、木炭、骨炭、獣炭、瀝青炭が挙げられる。これらの中では、アンモニウム酸素酸塩の分解促進効果や、粉末状微結晶炭素に含まれる灰分などの不純物の割合が小さい点から、活性炭又は木炭である。そして粉末状微結晶炭素は、(a)成分が硝酸アンモニウムであるときに燃焼触媒としての効果が特異的に著しくなる特徴を有している。
【0020】
一般に、アンモニウム酸素酸塩の分解が始まると、反応で生じた窒素酸化物や硝酸が分解していないアンモニウム酸素酸塩を分解する自触媒反応により、アンモニウム酸素酸塩の分解が促進されると考えられる。その際、粉末状微結晶炭素がアンモニウム酸素酸塩の分解を促進する要因、特に初期燃焼を促進する要因としては、粉末状微結晶炭素を有する大きな比表面積や、酸性及び塩基性の表面官能基を有することが挙げられる。
【0021】
(b)成分の望ましい形態は、成形性と燃焼性とから微細な粉末である。その平均粒子径は1〜500μmの範囲であることが好ましく、ガス発生剤組成物を成形した物の機械的物性及び燃焼速度を考慮すれば、2〜60μmの範囲であることがさらに好ましい。
その平均粒子径が1μm未満の場合、(b)成分自体の製造性、及びガス発生剤組成物の製造性が悪化する傾向にある。一方、平均粒子径が500μmを超えると、成形物の機械的物性が悪化し、しかも燃焼速度が低下する傾向にある。
【0022】
(b)成分の含有量は、ガス発生剤組成物中において、好ましくは、4〜20重量%、さらに好ましくは、5〜18重量%である。4重量%未満では燃焼速度が低下し、20重量%を超えると燃焼で発生する一酸化炭素が高くなり、またガス化率が低下する傾向にある。
【0023】
次に(c)成分のガス発生剤組成物の自然分解を抑制するための安定剤について説明する。
(a)成分のアンモニウム酸素酸塩は、単独ではガス発生剤組成物の実用温度範囲では化学的な経時安定性(熱安定性)は良好であるものの、(b)成分を配合することにより、(a)成分の分解が促進され、ガス発生剤組成物の経時安定性が低下する傾向がある。そのため、(c)成分として燃料成分としての効果も併せ持つ安定剤が配合される。
【0024】
安定剤としては、ガス発生剤組成物の経時安定性を向上可能なものの全てが使用できる。例えば、ジフェニルウレア、メチルジフェニルウレア、エチルジフェニルウレア、ジエチルジフェニルウレア、ジメチルジフェニルウレア、メチルエチルジフェニルウレアなどのジフェニルウレア誘導体;ジフェニルアミン、2−ニトロジフェニルアミンなどのジフェニルアミン誘導体;エチルフェニルウレタン、メチルフェニルウレタンなどのフェニルウレタン誘導体;ジフェニルウレタンなどのジフェニルウレタン誘導体;レゾルシノールなどが挙げられる。
【0025】
(c)成分の安定剤が粉体として用いられる場合の平均粒子径は、1〜500μmの範囲であることが好ましく、ガス発生剤成形物の機械的物性及び燃焼速度を考慮すれば2〜60μmの範囲であることが更に好ましい。
平均粒子径が1μm未満ではガス発生剤組成物の製造性が悪化する傾向にある。一方、平均粒子径が500μmを超えると、成形物の機械的物性が悪化し、しかも燃焼速度が低下する傾向にある。
(c)成分の使用量は、ガス発生剤の経時安定性が実用に耐え得る水準となるまで配合できる。好ましくは、(b)成分に対して20〜200重量%であり、ガス発生剤の燃焼速度、生成ガス中の一酸化炭素発生量、およびガス発生剤組成物の実用的な経時安定性を考慮すると、30〜150重量%であることがより好ましい。
【0026】
次に、ガス発生剤組成物の酸素バランスについて詳述する。
硝酸アンモニウムなどのアンモニウム酸素酸塩を酸化剤とするガス発生剤組成物では、酸素バランスをゼロ以上とした組成設計では、前記したように、低圧域ではアンモニウム酸素酸塩の完全分解(完全燃焼)が達成されない恐れがある。
一方、ガス発生剤組成物の酸素バランスをマイナスにすることにより、燃料成分として炭素を含む場合、一酸化炭素が高濃度で発生することが考えられる。
例えば、硝酸アンモニウムと粉末状微結晶炭素(酸素バランスは−2.67(g/g)と仮定)から構成され、各々の組成が86重量%と14重量%である混合物(酸素バランスは−0.20(g/g)となる。)が完全燃焼すると、理論計算上、発生ガス1g中の一酸化炭素濃度はおよそ50000ppmとなる。
これは自動車衝突時の乗員への影響上、ガス発生剤組成物の燃焼で生成する一酸化炭素濃度が15000ppm以下であることが望ましいことを考慮すれば、ガス発生剤組成物に使用することは困難と考えられる。
そのため、ガス発生剤組成物は、一酸化炭素や窒素酸化物等の有害ガス発生量を最小にし、燃焼速度を高めるため、一般的に酸素バランスはゼロ近傍に設定される。
【0027】
それに対し本発明では、酸素バランスがゼロとなる組成よりも(b)成分をさらに多く添加することで、ガス発生剤組成物の酸素バランスを特定のマイナス範囲に設定していることが特徴である。
ガス発生剤組成物の酸素バランスが特定のマイナス範囲となるまで(b)成分を過剰に加えることで、(a)成分と(b)成分との接触面積、単位量の(a)成分に対する(b)成分の表面積が増加し、燃焼時に(a)成分の完全分解が促進される。それゆえ、低圧域においてもガス発生剤組成物の燃焼性能が向上する上に、(a)成分の不完全燃焼に起因する窒素酸化物や硝酸などの有害ガス発生量が低減されることを見出した。
即ち、実際に上記の混合物が燃焼する場合に発生する一酸化炭素量は理論発生量よりも少なくなった。この理由は、粉末状微結晶炭素は、還元剤としての機能よりもむしろ硝安の分解触媒としての機能が高く、粉末状微結晶炭素を過剰に加えた組成では、硝酸アンモニウムはより完全燃焼しやすくなった一方で、活性炭は硝酸アンモニウムとの酸化還元反応で二酸化炭素を生成するのに見合う分が反応し、未反応の活性炭はそのまま燃焼残渣になったためと考えられる。
【0028】
ここで酸素バランスとは、ある物質あるいは混合物質が完全に酸化還元反応を起こし、CO2、H2O、N2などの完全な酸化還元反応生成物を生成するとした場合の酸素の過不足を表し、燃焼前の物質あるいは混合物1g当たりのg数で表記する。具体的には、ある物質の分子式、または混合物の平均分子式をCxHyOzNuで表すと、その完全燃焼の反応式は、下記数式(1)
【0029】
【数1】
【0030】
で表され、酸素バランスは、−(1/2)(2x+y/2−z)×32÷(物質又は混合物の平均分子量)(g/g)で計算される。
ガス発生剤組成物の原材料において、酸素バランスがプラスである物質は酸化剤として作用し、酸素バランスがマイナスである物質は還元剤として作用する。また燃焼前後で変化しない原材料成分の酸素バランスはゼロである。
具体例を挙げると、硝酸アンモニウムの酸素バランスは、0.20(g/g)、過塩素酸アンモニウムの酸素バランスは、0.34(g/g)である。また、粉末状微結晶炭素の酸素バランスは、その表面官能基に基づく元素構成に依るが、−2.50(g/g)〜−2.67(g/g)であり、一般的には−2.60(g/g)前後である。
【0031】
本発明で必須要件となるガス発生剤組成物の酸素バランスの範囲は、−0.25≦ガス発生剤組成物の酸素バランス(g/g)≦−0.05である。ガス発生剤の燃焼性、一酸化炭素の発生量、及びガス化率を考慮すれば、ガス発生剤組成物の酸素バランスは、−0.25≦ガス発生剤組成物の酸素バランス(g/g)≦−0.05である。
【0032】
ガス発生剤組成物の酸素バランスが、−0.25(g/g)よりマイナス側の場合、燃焼で発生する一酸化炭素濃度が高くなる傾向にあり、また(b)成分で燃焼残渣として残る比率が高くなるため、ガス発生剤のガス化率が低下する傾向にある。一方、酸素バランスが、−0.05(g/g)を超えると、ガス発生剤組成物の燃焼性が悪化し、アンモニウム酸素酸塩の不完全燃焼に伴う酸性物質や有害ガスの発生量が多くなる傾向にある。
【0033】
また、ガス発生剤組成物から(b)を除いた組成物の酸素バランスの範囲は、0≦ガス発生剤組成物から(b)を除いた組成物の酸素バランス(g/g)≦0.20が好ましい。ガス発生剤組成物の一酸化炭素の発生量、経時安定性、及び燃焼性を考慮すれば、0.01≦ガス発生剤組成物から(b)を除いた組成物の酸素バランス(g/g)≦0.15がさらに好ましい。
その酸素バランスが0(g/g)未満の場合、燃焼で発生する一酸化炭素や、安定剤など還元剤成分の不完全燃焼に起因する各種の燃焼生成物の濃度が高くなる傾向にある。また、0.20(g/g)を超えると、(b)成分の比率、あるいは安定剤の比率のいずれかを低くせざるを得なくなるため、良好な燃焼性と良好な経時安定性が両立できなくなる傾向にある。
【0034】
ガス発生剤組成物において、(a)成分と(b)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量比率は70〜95重量%が好ましい。(a)成分の含有量比率が70重量%未満では燃焼で発生する一酸化炭素の濃度が高くなる傾向にあり、またガス化率が低下する傾向にある。一方、(a)成分の含有量比率が95重量%を超えると、ガス発生剤組成物の燃焼速度が低下する傾向にある。
【0035】
ガス発生剤組成物に成形性を持たせ、酸素バランスを調整するために、さらに(d)成分として高分子系バインダーを添加することができる。
高分子系バインダーとしては、例えば、ポリビニル系高分子、セルロース系高分子、ポリエステル系高分子、ポリウレタン系高分子、ポリエーテル系高分子、熱可塑性エラストマー類、ポリアクリル系高分子、ポリアミド、ポリイミド、ケトン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂、多糖類、ゴム類、及びエネルギー性化合物結合剤などが挙げられる。
【0036】
ポリビニル系高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
セルロース系高分子の具体例としては、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートナイトレート、セルロースナイトレートカルボキシメチルエーテル、カルボキシメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶性セルロースなどが挙げられる。
【0037】
ポリエステル系高分子の具体例としては、ポリエステル合成繊維、ポリエチレンテレフタラート、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。
ポリウレタン系高分子の具体例としては、ウレタン樹脂などが挙げられる。
ポリエーテル系高分子の具体例としては、ポリプロピレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
【0038】
熱可塑性エラストマー類の具体例としては、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマーなどが挙げられる。
ポリアクリル系高分子の具体例としては、ポリアクリルアミド及びその誘導体、ポリアクリルヒドラジド、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどが挙げられる。
【0039】
ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、共重合ポリアミド、メトキシメチル化ポリアミドなどが挙げられる。
【0040】
多糖類の具体例としては、可溶性デンプン、グアガム、ペクチン、キチン、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
ゴム類の具体例としては、アクリルゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、バイトン、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルブチルゴム、二トリルブタジエンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0041】
エネルギー性化合物結合剤の具体例としては、グリシジルアジドポリマー、3,3−ビス(アジドメチル)オキセタンポリマー、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンポリマー、3−ナイトレートメチル−3−メチルオキセタンポリマーなどが挙げられる。
【0042】
高分子系バインダーは、加圧成形時の結合剤として、粉体の状態で用いられる場合と押出成形時のバインダーとして用いられる場合とがある。押出成形による製造方法の場合、高分子系バインダーを適切な溶剤あるいは水に溶解させることが望ましい。特に(a)成分が相安定化されていない硝酸アンモニウムの場合、その相転移に伴う体積変化によるガス発生剤の粉化を抑制するため、押出成形時のバインダーとして、高分子系バインダーを使用することが好ましい。
高分子系バインダーの配合量は、ガス発生剤組成物の総重量を基準にして30重量%以下であり、好ましくは2〜25重量%である。
【0043】
さらに(e)成分として含窒素化合物、固体有機酸、有機酸塩、及び有機酸の誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上の燃料成分をガス発生剤組成物中に含有させることが望ましい。
含窒素化合物は、燃焼により窒素ガスを放出し、ガス発生量の増加に寄与する。含窒素化合物としては、分子内に窒素原子を有する化合物であれば特に制限はされないが、分子中における窒素含有率が重量比で15%以上であるものが好ましい。
具体例としては、例えば、トリアミノグアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、ジアミノグアニジン硝酸塩、硝酸ヒドラジン、ニトログアニジン、硝酸グアニジンなどが挙げられる。
【0044】
固体有機酸、有機酸塩、及び有機酸誘導体は、アンモニウム酸素酸塩と反応しやすく、良好な燃焼性を有する。固体有機酸、有機酸塩、及び有機酸の誘導体としては特に限定されず、ガス発生剤として使用可能なものであればいずれのものも使用できる。
【0045】
具体例としては、例えば、蓚酸、尿酸、オキサミン酸、フマル酸、コハク酸、グルタミン酸、クエン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、オロチン酸、ビオルル酸、粘液酸、ヒドラゾジカルボンアミド、アルギニン、アスパラギン、グリシン、アロキサンチンなどの固体有機酸;蓚酸カリウム、蓚酸ナトリウム、蓚酸銅、蓚酸鉄、蓚酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸銅、酢酸鉄、クエン酸ナトリウムなどの有機酸塩;蓚酸モノアニリド、蓚酸モノアミド、オキサミド、コハク酸アミド、コハク酸イミドなどの有機酸誘導体が挙げられる。
【0046】
前記(e)燃料成分は、複数の物質の混合物としても使用可能である。
燃料成分が粉体として用いられる場合の平均粒子径は、1〜500μmの範囲であることが好ましく、ガス発生剤組成物を成形した物の機械的物性及び燃焼速度を考慮すれば2〜60μmの範囲であることが更に好ましい。
平均粒子径が1μm未満ではガス発生剤組成物の製造性が悪化する傾向にある。一方、平均粒子径が500μmを超えると、成形物の機械的物性が悪化し、しかも燃焼速度が低下する傾向にある。
【0047】
(e)燃料成分と(c)成分の安定剤とを併せた成分の配合量は、ガス発生剤組成物の総重量を基準にして、40重量%以下であることが好ましく、着火性、燃焼速度、及び生成ガス中に一酸化炭素が実質的に生成しないことを考慮すれば2〜25重量%がさらに好ましい。
なお上記の最適な配合量は、燃料成分及び安定剤の酸素バランスも考慮して定められる。
【0048】
硝酸アンモニウムを主たる酸化剤とするガス発生剤組成物において、その燃焼性能をさらに高めるために、補助的に(f)成分として硝酸アンモニウムと異なる酸素酸塩を添加してもよい。このような酸素酸塩としては特に限定されず、ガス発生剤組成物として使用可能なものであればいずれのものでも使用できる。
具体的には、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などの酸素酸塩が挙げられるが、吸湿性が激しくないこと、有害性が小さいこと、熱安定性が良好であること(ガス発生剤の実用温度範囲で融解あるいは分解しないこと)の点を考慮すると、好ましいものは硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸ストロンチウム、過塩素酸カリウムである。
【0049】
(f)成分の形態は成形性と燃焼性とから粉末である。その平均粒子径は1〜1000μmの範囲であることが好ましく、ガス発生剤組成物の機械的物性及び燃焼速度を考慮すれば、2〜200μmの範囲であることがさらに好ましい。その平均粒子径が1μm未満の場合、ガス発生剤組成物の製造性が悪化する傾向にある。一方、平均粒子径が1000μmを超えると、成形物の機械的物性が悪化し、しかも燃焼速度が低下する傾向にある。
【0050】
ガス発生剤組成物の燃焼性向上及び硝酸アンモニウムの相安定化効果を考慮すると、(f)成分としてカリウムの酸素酸塩、この中でも特に、硝酸カリウムが含まれていることが好ましい。相安定化された硝酸アンモニウム中におけるカリウムの酸素酸塩の配合量は、相安定化効果が発現される範囲および燃焼残渣が実用上問題とならない範囲で適宜設定できる。
具体的には、硝酸カリウムを用いる場合、好ましくは硝酸アンモニウムが70〜98重量%、硝酸カリウムが2〜30重量%であり、より好ましくは硝酸アンモニウムが75〜96重量%、硝酸カリウムが4〜25重量%である。
相安定化された硝酸アンモニウムの製造方法としては、適切な物理的方法、例えば硝酸アンモニウムと所定量の硝酸カリウムとの両者が溶解した水溶液を、湯浴による加熱下で蒸発・乾燥させることにより得られる。
【0051】
ガス発生剤組成物において、(f)成分と(a)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量の比率は、50〜97%であることが好ましい。ガス発生剤のガス化率、燃焼速度、及び硝酸アンモニウムの相安定化効果を考慮すれば、上記の比率は54〜92%の範囲にあることがさらに好ましい。
この比率が50%未満ではガス化率が低下する傾向にある。また97%を超えると燃焼速度が低下する傾向にある。さらに硝酸アンモニウムをカリウムの酸素酸塩で相安定化する場合は、相安定化剤の配合比率が減少するため、硝酸アンモニウムが十分に相安定化されなくなる恐れがある。
【0052】
ガス発生剤組成物において、燃焼で発生する一酸化炭素の発生量をさらに低減するために、銅、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、モリブデン、タングステンから選ばれる遷移金属の酸化物、複酸化物、ならびにモリブデン酸、モリブデン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を、一酸化炭素を低減する触媒として添加することができる。
その中でも、酸化第二銅、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、二酸化マンガン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム及びモリブデン酸コバルトが、特に好ましい。
一酸化炭素を低減する触媒の配合量は、ガス発生剤組成物の総重量を基準にして、10重量%以下であることが好ましいが、燃焼残渣量の低減を考慮すれば、5重量%以下がさらに好ましい。
【0053】
本発明のガス発生剤組成物は、打錠機などを用いた加圧成形か、あるいは溶剤(有機溶剤や水など)を添加し均一に混合した後、押出装置による押出成形にて所定の形状とすることが好ましい。成形体にすることにより、ガス発生剤組成物をガス発生装置に適した形態とすることができる。
押出成形による場合は、(d)成分として適切な有機溶剤に溶解する高分子系バインダーを用いる必要がある。
【0054】
さらに、ガス発生剤組成物に可塑性を付与し成形性を向上させるために、可塑剤を配合してもよい。そのような可塑剤としては、高分子系バインダーと相溶性のよいものであれば全て使用可能である。例えば、ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸ジエステル可塑剤;リン酸エステル、トリアセチン、アセチルトリエチルサイトレートなどの脂肪酸エステル可塑剤;トリメチロールエタントリナイトレート、ジエチレングリコールジナイトレート、トリエチレングリコールジナイトレート、ニトログリセリン、ビス−2,2−ジニトロプロピルアセタール/ホルマールなどのニトロ可塑剤;グリシジルアジド可塑剤などが挙げられる。
【0055】
可塑剤の配合量は、ガス発生剤組成物の総重量を基準にして3重量%以下であることが好ましく、生成ガス中に一酸化炭素が実質的に生成しないことを考慮すれば2重量%以下がさらに好ましい。
可塑剤の配合量が3重量%を超えると、他組成の配合比率が低下するため、燃焼性が悪化し、また生成ガス中に一酸化炭素が生成する傾向にある。
【0056】
ガス発生剤組成物を打錠機で加圧成形する場合、成形体の強度を優れたものとするために、必要に応じて成形剤を添加することができる。そのような成形剤は、アルミナ、シリカ、雲母、二硫化モリブデンなどの無機系結合剤から選ばれる。
また、成形時において原料の流動性を改善するために、必要に応じてステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、二硫化モリブデンなどから選ばれる成形助剤を添加することができる。
成形剤及び成形助剤の配合量は、ガス発生剤組成物の総重量を基準にして、5重量%以下であることが好ましく、ガス発生剤の燃焼性能を考慮すれば4重量%以下がさらに好ましい。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば次のような優れた効果を奏する。
第1の発明によれば、アンモニウム酸素酸塩を酸化剤とするガス発生剤組成物において、良好な燃焼性能(燃焼速度、低圧燃焼性)、常圧域より燃焼させるガス発生装置内においてガス発生剤の完全燃焼が実現できる。また良好な経時安定性を有する。
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、燃焼で発生する一酸化炭素、安定剤や燃料成分の不完全燃焼に基づく各種の燃焼生成物の濃度を抑制することができる。
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の効果に加えて、まず酸化剤の取扱い性を改善できる。また、粉末状微結晶炭素による酸化剤の分解促進効果を大きくでき、さらに粉末状微結晶炭素に含まれる灰分など不純物比率が減るため燃焼残渣を低減できる。同時に、燃焼で発生する一酸化炭素濃度、ガス化率の低下、あるいは燃焼速度の低下を抑制することができる。
第4の発明によれば、第1から第3のいずれかの発明の効果に加えて、ガス発生剤組成物の成形性向上、酸素バランスの調整といった効果を与えることができる。
第5の発明によれば、第1から第4のいずれかの発明の効果に加えて、ガス発生量の向上、酸素バランスや燃焼速度の調整といった効果を与えることができる。
第6の発明によれば、第1から第5の発明の効果に加えて、硝酸アンモニウムを主酸化剤とするガス発生剤組成物において、ガス化率の大きな低下を抑制しつつ、燃焼性能をさらに高めることができる。
第7の発明によれば、第1から第6のいずれかの発明の効果に加えて、燃焼で発生する一酸化炭素の発生量をさらに低減することができる。
第8の発明によれば、さらに、前記のガス発生剤組成物を用いて少量で効率的にガスを発生するエアバッグとすることができる。
【0058】
【実施例】
以下に、具体例を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、例中の%は、特記しない限り、全て重量%を示す。
但し、硝酸アンモニウムと硝酸カリウムとを併用している実施例3〜6及び比較例3、4、6では、次の手順で得られた相安定化された硝酸アンモニウムを使用した。
1.相安定化された硝酸アンモニウムの製造方法
硝酸アンモニウムと硝酸カリウムとを蒸留水に溶解後、90℃の湯浴中で水分を蒸発させ、さらに真空乾燥を行う。次に、100メッシュの篩を通過させてガス発生剤組成物の試作に供与した。この相安定化された硝酸アンモニウムの平均粒径は125μmであった。
【0059】
2.燃焼速度の測定方法
ガス発生剤組成物をストランドに成形し、窒素ガスにより1MPaに加圧された条件下で燃焼速度(mm/s)を測定する。
3.燃焼後のpH及び燃焼ガス発生量の測定方法
粒状のガス発生剤組成物30gを、図1に示す構造のガス発生装置の燃焼室内に装填したのち、60リットルタンク内にガス発生装置を設置した後、電気着火によりガス発生剤を燃焼させる。
試験後、タンク内を1リットルの蒸留水で洗浄した洗浄水についてpH値を測定する。
また、燃焼ガス中の窒素酸化物(表中、NOxと略記)、一酸化炭素(表中、COと略記)濃度を、ガス検知管を用いて測定する。なおpHは5〜9、窒素酸化物濃度は1500ppm以下、一酸化炭素濃度は1.5%以下を本試験の目標値とした。
【0060】
なお、図1は試験に用いたガス発生装置の断面を上面から見たものである。ガス発生装置の周囲は厚み約3mm、外径約70mmのステンレス壁1で覆われている。壁1には外形約3mmのガス噴出口2が開けられている。図には示していないが、ガス発生装置の上面及び下面は密閉された状態である。ガス発生装置の燃焼室3は、内容積約40ミリリットルであり、燃焼残渣を捕捉するための金網フィルターとガラスフィルターを組み合わせたフィルター4が設置されている。燃焼室3の内部には点火薬5(ボロン/硝酸カリウム)が装填され、さらに点火薬5には点火装置が接続されており、電気着火によって点火薬5に着火し、次いでガス発生剤6に着火させる仕組みになっている。
【0061】
4.経時安定性の測定方法
粒状のガス発生剤組成物5gをサンプル瓶に詰め、107℃に調温された恒温槽中で400時間放置し、重量変化を求める。
なお、本試験の目標値は試験後においても試料が分解しておらず、かつ試験前後の重量変化が5%以下である。
【0062】
実施例1
硝酸アンモニウム、活性炭、及びジフェニルアミンを表1に記載した配合割合となるように均一に混合し、粉末状の混合物を得た。次いで、打錠機を用いて直径7mm、厚さ2mmのペレット状のガス発生剤組成物を得、それを用いて燃焼後のpH値、発生ガス中の窒素酸化物濃度や一酸化炭素濃度そして経時安定性試験を行った。また別途、上記の混合物をストランドに成形し、燃焼速度試験を行った。これらの試験結果を表1及び表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
なお、表1、表2に使用した原料成分は以下の通りである。
硝酸アンモニウム:平均粒径125μm、三菱化学(株)製、
過塩素酸カリウム:平均粒径70μm、日本カーリット(株)製、
活性炭:平均粒径25μm、二村化学(株)製、商品名:CA、
木炭:平均粒径25μm、奈良炭化工業(株)製備長炭、
瀝青炭:平均粒径25μm、中部電力(株)製、
ジフェニルアミン:平均粒径125μm、
酢酸セルロース:ジアセテート品、
ポリエステルエラストマー:東洋紡績(株)製、商品名:ペルプレンP-30B、
トリアミノグアニジン硝酸塩:平均粒径10μm、
蓚酸銅:平均粒径25μm、
二酸化マンガン:平均粒径12μm、
三酸化モリブデン:平均粒径10μm、
アルミナ:平均粒径0.3μm、Degussa製、商品名:Fumed Aluminum Oxide C。
また、表中の酸素バランス(g/g)は、ガス発生剤組成物の酸素バランス(但し、括弧内に示した数値はガス発生剤組成物から粉末状微結晶炭素を除外した組成物の酸素バランスである。)を示している。
【0066】
実施例2〜6、比較例1〜3、6
表1及び表2に記載した配合割合となるように実施例1に準じた方法でガス発生剤組成物を作成し、実施例1と同様に試験した。得られた各種の性能データを表1及び表2に示す。
【0067】
実施例7、8及び比較例4、5、7、8
表1及び表2に記載した配合割合となるように原材料を配合し、全配合量に対して0.24倍重量のアセトン及び0.06倍重量のエタノールとを加え、ウェルナー混和機で均一に混合し、粘土状の混合物を得た。
次いで、この混合物を押出装置に装填した。押出装置には予め5.4mmのダイス及び0.8mmのピンが取り付けられている。混合物は圧力をかけられてダイスを通りながら押出され、7個の貫通孔を有する7孔状に成型される。
この成型物を4mmの長さに切断し、乾燥することにより粒状のガス発生剤組成物を得、それを用いて燃焼後のpH値、発生ガス中の窒素酸化物濃度や一酸化炭素濃度そして経時安定性試験を行った。また別途、上記の混合物をストランドに成形し、燃焼速度試験を行った。これらの試験結果を表1及び表2に示す。
【0068】
表から明らかなように、酸化剤の主成分に硝酸アンモニウムを用い、ガス発生剤組成物の酸素バランスがゼロの比較例1、4〜8のガス発生剤はいずれも1MPaの圧力下では燃焼しなかった(即ち、立消えの現象を示した。)。
また、いずれもガス発生装置内での燃焼後、pH値は5以下の強い酸性を示し、窒素酸化物の発生量も2500ppm以上と高い値になった。
これに対して、各実施例では、1MPaの圧力下で燃焼し、またガス発生装置内での燃焼後、pH値、窒素酸化物発生量、一酸化炭素発生量ともに目標値を満足した。
【0069】
一方、比較例3では燃焼性能(1MPaでの燃焼性、一酸化炭素,窒素酸化物の発生量)には問題はなかったが、安定剤が含まれていないため経時安定性に問題が見られた。これは比較例5でも同様であった。これに対して、各実施例の経時安定性は、目標値を十分に満たしたものであった。
さらに、ガス発生剤組成物の酸素バランスが、−0.5未満かつガス発生剤組成物から粉末状微結晶炭素を除外した組成物の酸素バランスが負である比較例2では、燃焼性能、経時安定性には問題がなかったが、一酸化炭素の濃度がかなり高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ガス発生装置の内部を上から見た断面図である。
【符号の説明】
1 ガス発生装置のステンレス壁
2 ガス噴出口
3 燃焼室
4 フィルター
5 点火薬(ボロン/硝酸カリウム)
6 ガス発生剤
Claims (8)
- (a)成分:アンモニウム酸素酸塩として硝酸アンモニウム又は相安定化された硝酸アンモニウム、(b)成分:粉末状微結晶炭素として活性炭又は木炭及び(c)成分:ガス発生剤組成物の自然分解を抑制するための安定剤を含有し、かつガス発生剤組成物の酸素バランスが、−0.25≦ガス発生剤組成物の酸素バランス(g/g)≦−0.05を満たす範囲内にあるガス発生剤組成物。
- さらにガス発生剤組成物から(b)成分を除外したガス発生剤組成物の酸素バランスが、0≦ガス発生剤組成物から(b)成分を除外した組成物の酸素バランス(g/g)≦0.20の関係を満たす範囲内にある請求項1に記載のガス発生剤組成物。
- (a)成分が硝酸アンモニウム又は相安定化された硝酸アンモニウムであり、(b)成分が活性炭又は木炭であり、かつ(a)成分と(b)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量の比率が70〜95重量%の範囲内である請求項1又は請求項2に記載のガス発生剤組成物。
- さらに(d)成分として高分子系バインダーを含有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス発生剤組成物。
- さらに(e)成分として、含窒素化合物、固体有機酸、有機酸塩及び有機酸の誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の燃料成分を含有する請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス発生剤組成物。
- さらに(f)成分として、硝酸アンモニウムと異なる酸素酸塩を含み、かつ(f)成分と(a)成分との合計重量に対する(a)成分の含有量の比率が50〜97重量%である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガス発生剤組成物。
- さらに(g)成分として、一酸化炭素を低減する触媒を含有する請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のガス発生剤組成物。
- 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のガス発生剤組成物を用いてなるエアバッグ。
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