JP3914840B2 - 混練押出機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物の製造に好適な混練押出機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成樹脂材料の溶融、混練、脱揮及び押し出しを連続的に行う形式の連続混練押出機としては、ケーシング内において、スクリュー部を形成した第1軸及び第2軸を並列に配置し、これら第1軸及び第2軸の一部を対峙させてなる二軸型混練機に、脱揮及び押出を行う単軸押出機とを組み合わせた混練装置があった。この混練装置は、別個の作用をする二つの装置を組み合わせた構成であるため装置全体が大型化し、このため、効率が悪く消費エネルギーが大きいという問題があり、また、清掃に二軸型混練機と単軸押出機の2台分に相当する手間を要するなどの問題があった。
また、上記混練装置の単軸押出機をギヤポンプに置き換えた混練装置もあり、この混練装置では、脱揮運転ができないという問題があり、また、ギヤポンプの構造が複雑であるため、二軸型混練機を単軸押出機と組み合わせたもの以上に清掃時間を要するなどの問題があった。
さらに上記従来の混練装置では、二軸型混練部における樹脂材料の滞留時間はほぼ一定であるので、樹脂材料の量や状態によっては十分な混練がなされる前に、混練物が押し出されてしまうという問題もあった。
これらの問題を解決した混練装置として、例えば特開2002−79515号公報に記載の熱可塑性樹脂組成物及びゴム組成物の製造方法において用いられた混練装置がある。この混練装置を用いると、例えば微細な充填剤を高濃度に含有し、物性バランスにも優れる熱可塑性樹脂組成物又はゴム組成物を生産性(組成物の吐出量、品質安定性、作業性)良く製造することができるが、溶融混練物の押出し性能がさらに向上した混練装置が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、溶融混練物の押出し性能がさらに向上し、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物を、生産性良く製造することができる混練押出機を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特開2002−79515号公報に記載の混練装置において、スクリュー径Dに対するLf /D(原料供給部の長さ/スクリュー径D)の比の値及び第1混練部におけるスクリュー径と長さの関係を特定範囲とすることにより、溶融混練物の押出し性能がさらに向上することを見出した。さらに第2混練部におけるスクリュー径と長さの関係を特定範囲とすることにより、いかなる混練機サイズ(スクリュー径)であっても、いかなる配合組成であっても、生産安定性(サージングの発生防止、開放ベントからの充填剤噴出防止)、充填剤の分散性(特に圧縮充填剤を含有する組成物や充填剤を高濃度に含有する組成物における分散性)、生産性(組成物の吐出量、品質安定性、作業性)を満足する組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
ここで、第1混練部とは、開放ベント位置及びサイドフィード位置(メクラ板で塞ぐ場合もある。)よりホッパー側にある混練部(ミキシングロータ部)をいい、ロータ間にスクリューがある場合は、全ロータ長さを第1混練部の長さとする。また、第2混練部とは、開放ベント位置及びサイドフィード位置(メクラ板で塞ぐ場合もある。)よりダイス側にある混練部(ミキシングロータ部)をいい、ロータ間にスクリューがある場合は、全ロータ長さを第2混練部の長さとする。
【0005】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物の製造に用いる混練押出機であって、二軸部のL/D(長さ/径)が12以上であるスクリューを備え、原料供給部に近い側の第1混練部と該第1混練部に続く第2混練部とからなり、かつ二軸部端部においてせき止め構造を有する二軸混練部と、単軸押出部とからなり、スクリュー径Dと原料供給部の長さLf とが(Lf /D)/D=0.12〜0.33の関係にあり、かつ第1混練部のL1 /D(長さ/スクリュー径)が7〜13であることを特徴とする混練押出機を提供するものである。
また、本発明は、上記混練押出機において、第2混練部のL2 /D(長さ/スクリュー径)が2〜10である混練押出機を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の混練押出機は、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物の製造に好適な混練押出機である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンが挙げられ、ポリエチレンとしては、ホモポリエチレン、HDPE(高密度ポリエチレン)、LPDE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)が挙げられる。
ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムが挙げられ、合成ゴムとしては、エチレン−プロピレンゴム,エチレン−オクテン−1ゴム等のオレフィン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム,ニトリル−ブタジエンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム,クロロプレンゴム等が挙げられる。
【0007】
充填剤としては、有機充填剤及び無機充填剤のいずれも用いることができる。有機充填剤としては、木粉や木綿粉などの木質粒子,モミ殻粉末,架橋ゴム粉末,プラスチック粉末,コラーゲン粉末などが挙げられる。無機充填剤としては、タルク,炭酸カルシウム,沈降性硫酸バリウム,水酸化マグネシウム,カオリン(ケイ酸アルミニウム),シリカ、パーライト,セリサイト,ケイソウ土,亜硫酸カルシウム,マイカ,チタン酸カリウムなどが挙げられる。無機充填剤の中ではタルクが好ましいが、タルク以外の充填剤のうち、嵩比重が小さいために生産性が問題となっている場合は圧縮したものを用いる。
圧縮される前の充填剤の平均粒径は、レーザー式測定法による測定値で20μm以下であることが好ましい。平均粒径が20μmを超えると、圧縮による二次凝集体の形成が困難となり、また、嵩比重を高める効果が小さくなる。嵩比重を高めることにより生産性(組成物の吐出量、品質安定性、作業性)等が向上する点から、圧縮される前の充填剤の平均粒径は15μm以下であることがより好ましく、10μm以下が特に好ましい。
【0008】
本発明の混練押出機で後述するマスターバッチを製造する場合、これらの充填剤を圧縮することによりその嵩比重を0.4以上としたものを用いる。ここで、嵩比重とは、〔充填剤の重量(g)/充填剤の体積(cm3 )〕をいう。圧縮された充填剤の嵩比重は0.4〜2.0が好ましく、より好ましくは0.55〜1.5、特に好ましくは0.75〜1.5である。この嵩比重が0.4未満であると、充填剤が分級しやすくなり、かつ組成物の吐出量を向上させる効果が不十分となる。また、嵩比重が小さいと、高濃度混練の場合に樹脂が溶融せず、充填剤がダイスから噴出する傾向がある。一方、嵩比重が高いほど樹脂が溶融しやすくなり、高濃度混練が可能であるが、嵩比重が2.0を超えると、混練時に充填剤の分散性が良好でなくなるおそれがある。また、圧縮された充填剤の形状は、分散性を良好なものとする点から、チップ状等のものではなく粒子状のものが好ましい。チップ状とは、長径が約2〜10mm、短径が約2〜5mmの直方体状のものをいう。粒子状とは、チップ状以外のものをいい、長径と短径とがほぼ等しい形状のものであり、平均粒径が小さいものほど好ましい。
圧縮充填剤の製造法は特に限定されるものではないが、充填剤を加圧処理又は減圧処理することにより得ることができる。加圧処理は、ローラコンパクタ(栗本工業社製,MRCP)により行うことができる。このローラコンパクタは、二本のロールで圧縮する片持ちタイプのものであり、一方のロールの圧力により嵩比重を調整することができる。圧縮充填剤の形状は、後工程のグラニュレーターで、粒子状やチップ状などに調整することができる。充填剤としては、以上に述べた平均粒径、嵩比重及び形状等を満たす点から、タルクが最も好ましい。
【0009】
本発明の混練押出機で熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物を製造する場合、二種以上の成分の使用割合は任意とすることができる。本発明の混練押出機で熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物を製造する場合、充填剤の充填量(組成物における含有量)は、組成物中1〜90質量%とすることができる。この充填量が50質量%を超える高濃度の充填剤を含有する組成物は、製品のコストダウンを目的としてマスターバッチとして使用することができる。マスターバッチにおいては、マスターバッチの生産性(吐出量、分級)の観点から、嵩比重が0.4以上の充填剤を用いることが好ましい。嵩比重が0.4未満の場合は、圧縮したものを用いることが好ましい。マスターバッチの場合、充填剤の充填量は、20〜90質量%が好ましい。充填量が20質量%未満であると、コスト低減効果が小さい。また、充填量が90質量%を超えると、マスターバッチを成形時にニート樹脂で希釈したときに充填剤の分散性が低下するため、物性が低下することがある。ここで、ニート樹脂とは、マスターバッチを形成する樹脂と同様の樹脂を主成分とする樹脂をいい、他の樹脂が混合されていてもよい。
【0010】
マスターバッチを使用して成形品を製造する場合、射出成形等の成形時に、例えばニートポリプロピレンとドライブレンドしてマスターバッチを希釈し、成形される。この場合、成形機にミキシングノズルを設置しなくても、本発明の混練押出機で製造したマスターバッチは、物性が低下することがないが、顔料のマスターバッチ等を用いて成形時に着色する場合は、顔料の分散ムラが発生しやすいため、ミキシングノズルを設置する方が好ましい。
本発明に係る組成物には、有機過酸化物、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、顔料等を、組成物の使用目的に応じて適宜添加することができる。
【0011】
本発明の混練押出機は、二軸部のL/D(長さ/径)が12以上であるスクリューを備え、かつ二軸部端部においてせき止め構造を有する二軸混練部と、単軸押出部とからなり、スクリュー径Dと原料供給部の長さLf とが(Lf /D)/D=0.12〜0.33の関係にある混練押出機である。二軸部のL/Dは20以上が好ましく、より好ましくは25以上である。L/Dが12未満では充填剤の分散が不充分となり、充填剤を高濃度かつ分散性良く組成物に充填することができない。
スクリュー径Dと原料供給部の長さLf との関係は、(Lf /D)/D=0.14〜0.33であることが好ましく、(Lf /D)/D=0.16〜0.33がより好ましい。(Lf /D)/Dが0.12未満であると、サージングが発生したり、吐出量が減少したり、充填剤の分散性が不十分となったりする。また、(Lf /D)/Dが0.33を超えても、サージング防止、安定した吐出量及び充填剤の分散性においてさらなる効果が得られるものでもなく、設備コストが嵩むだけである。
ここで、原料供給部の長さLf とは、後述する図1に示すように、シューターの中心直下から第1混練部(第1ミキシングロータ部)までの距離をいう。
【0012】
本発明の混練押出機においては、原料供給部に近い側の第1混練部のL1 /D(長さ/スクリュー径)は7〜13であるが、9〜13が好ましい。L1 /Dが7未満であると、充填剤の分散性が良好ではなくなり、、充填剤が開放ベントから噴出し易くなる。L1 /Dが13を超えると、熱可塑性樹脂やゴムを混練しすぎることとなるため、熱可塑性樹脂やゴムが劣化し、また、設備コストが嵩んでしまう。
一方、第1混練部に続く第2混練部のL2 /D(長さ/スクリュー径)は2〜10であることが好ましく、6〜10がより好ましい。L2 /Dが2未満であると、配合組成によっては充填剤の分散性が良好でない場合がある。L2 /Dが10を超えても、さらなる混練効果が得られるものでもなく、設備コストが嵩むだけである。
混練される原料が、エアー、揮発成分又は蒸発成分等を含む場合、第1混練部と第2混練部の間に開放ベントを設けることが必要である。なぜなら、本発明の混練押出機では吐出量の増加効果が大きいからである。
【0013】
スクリューの回転数は、製造する組成物の特性に応じて10〜1500rpmとすることができる。例えば、射出用途の高流動組成物を製造する場合、高流動組成物は粘度が低く、剪断応力を得る必要があるため、回転数が多い方が好ましい。一方、押出し用途の組成物を製造する場合、分子切断が起こり易くなり、粘度の低下が起こるため、スクリューの回転数は少ない方が好ましい。また、二軸部のスクリューには、同回転数よりも異なる回転数を与えることが、混練効果の点から好ましい。通常、回転数比は1:1.1とされる。
せき止め構造は、二軸部端部のスクリュー溝を浅く形成してケーシング(後述する図1参照)との間隙をわずかにし、かつ細かいピッチとしたものであり、このせき止め構造により、通過する配合成分の流量が最小限に規制されると共に、混練が充分に行われる。
【0014】
二軸混練部のスクリューは、充填剤の分散と組成物の吐出量を考慮して、非噛合い異方向型であることが好ましい。スクリューの形状はロータ型であることが好ましい。また、このスクリューのネジ構造は、後述する図2に示すような2条ネジであることが好ましい。スクリュー及びロータは、それぞれセグメントになっており、必要に応じてロータの位置やL/D、あるいはチップクリアランス等で混練を調節することができる。
二軸混練部は、組成物の要求特性に応じて、混練部における配合成分の滞留時間が調整できるように、その終端に樹脂量を調節する機能を有することが好ましい。このような機能としては、オリフィス調整機能を例示することができる。また、二軸混練部と単軸押出部とは一体構造であることは必ずしも必要ではなく、上記の要件を満たす混練押出機であればタンデム型のものであってもかまわないが、一体構造であることが好ましい。
本発明の混練押出機としては、例えば図1〜図3に示す連続混練押出機を例示することができる。この装置は、金属製のケーシング1に内装された第1軸3と、これよりも短い第2軸4とを備えたものであり、ホッパーから供給された配合成分は、原料供給部を通じてミキシングロータ部12(第1混練部)に導入され、ミキシングロータ部12及びミキシングロータ部13(第2混練部)において溶融、混練されて先端側に送られ、吐出される。
【0015】
図1は装置の平面の断面を示し、図2は図1におけるA−A断面図であり、図3は図1におけるB−B断面図である。図1に示すように、ケーシング1は全体筒状に形成されており、略中央で左右に2分割されている。分割部分は蝶番1aにより回転可能に支持され、矢示F方向に折れ曲がるようになっている。なお、このケーシング1の分割部分には別部材とした接続部材1bが介挿されている。ケーシング1内には、円筒状シリンダ21、2つの円筒状シリンダを連結したまゆ型シリンダ20、及び接続部材1b内に形成された2つの軸受けシリンダ22及び23が形成されている。まゆ型シリンダ20内には、スクリュー部2(原料供給部)を各々形成した第1軸3及び第2軸4が並列に配置されている。これら第1軸3及び第2軸4は、スクリュー基部30及び31を介してケーシング1に嵌挿されている。これら第1軸3と第2軸4の基端部は、ケーシング1外部に設置した図示しないギアボックスに挿入され、ベアリングで回転自在に支持されている。
【0016】
また、第2軸4の先端の送出スクリュー部4aは、この部分とシリンダ22との間に溶融樹脂が介在することにより所定位置に保持されるので、第2軸4全体が回転自在に支持される。同様に、第1軸3の中間部の送出スクリュー部5aは、この部分とシリンダ23との間に溶融樹脂が介在することにより一定位置に保持されるので、第1軸3全体が回転自在に支持される。
そして、第1軸3及び第2軸4の中央部分は互いに接触しないように対峙し、これらの中途には一対ずつのミキシングロータ部12及び13が各々設けられている。このミキシングロータ部12及び13は、対向する第1ロータ部12a,12b及び第2ロータ部13a,13bからなっており、図示のように互いに離れた位置に形成されている。そして、第1ロータ部12aと第2ロータ部13aとの間には第2スクリュー2aが、また、第1ロータ部12bと第2ロータ部13bとの間には第2スクリュー2bが各々形成されている。第2スクリュー2aの上方には開放ベント41が設けられている。
【0017】
第1軸3は延長軸部5を有しており、この延長軸部5は円筒状シリンダ21内に回転自在に内装され、この全長にわたってスクリュー5bが形成されている。この延長軸部5の基端側は接続部材1b内に保持され、この部分にはせき止め構造として、スクリュー溝を浅く形成してケーシング1との間隙をわずかにし、かつ細かいピッチとした流量規制スクリュー5aが形成されている。この流量規制スクリュー5a部では、通過する配合成分の流量が最小限に規制されると共に、配合成分の混練が充分に行われるようになっている。
上記のような構成により、ケーシング1内には第1軸3及び第2軸4が並列する二軸スクリュー部6と、延長軸部5部分からなる単軸スクリュー部7とが形成されている。ケーシング1における第1軸3及び第2軸4の各々の基端部の付近には、二軸スクリュー部6に連通する材料供給口8が形成されている。この材料供給口8には、供給装置(ホッパー)42から送出された配合成分が、コイルフィーダー43、シューター44を経て送られる。シューター44は図1に示すように蓋を開けた状態とし、スクリューフィーダーを挿入し、配合成分を強制フィードすることが好ましい。
【0018】
一方、ケーシング1における延長軸部5の先端部9側には、組成物の吐出口10が設けられている。さらにケーシング1において延長軸部5の基端部側に脱揮口32が形成されている。延長軸部5の基端部側におけるケーシング1には、バルブ部11が設けられている。このバルブ部11は次のように構成されている。まず、送出スクリュー4aの先端側に空室14を形成し、この空室14の一部に小径な通路16を設けて、この空室14とシリンダ21とを連通させている。空室14内には外部から筒状の弁体15を挿通させ、この弁体15は矢印H方向において前進後退動可能となっている。そして弁体15が通路16に接近するほど空室14の容積が小さくなるので、配合成分の流路が狭くなるようになっている。
バルブ部11は、二軸スクリュー部6と単軸スクリュー部7とを連通するものであり、単軸スクリュー部7へ至る溶融樹脂をバイパスさせて流量を調整するものである。そして第2軸4の一端には送出スクリュー部4aが形成され、流量規制スクリュー部5aによりせき止められたほとんどの溶融樹脂を集めてバルブ部11を介して、ケーシング1内に樹脂を圧送するようになっている。
【0019】
なお前記流量調節機構としては他の構成としてもよく、例えば第1軸3を軸方向に移動可能として、第1軸3とこの周囲にあるケーシング内面に形成した凹凸部により弁体を形成し、流路の開閉度を調整する構造にすることも可能である。次に、上記の連続混練押出機の動作について説明する。材料供給口8より投入された配合成分は、第1軸3及び第2軸4のスクリュー部2(原料供給部)により矢示G方向に送られ、第1ロータ部12a,12b(第1混練部)により粗練りが行なわれ、樹脂が半溶融状態となって樹脂材料の密度が上昇する。このように樹脂の密度を上昇させることにより、第2スクリュー2a,2bでの樹脂の搬送能力が高められ押出量を多くすることができる。このときの第1軸3及び第2軸4の回転数は10〜1500rpmである。
第2スクリュー2a,2bで送られた樹脂材料は第2ロータ部13a,13b(第2混練部)で完全に溶融、混練が行われる。溶融、混練された樹脂は、送出スクリュー部4aによって空室14内へ送られ、弁体15によって流量を調節されながら通路16を通過してケーシング1内に送られる。このように流量を調節することにより、二軸混練部6での配合成分の混練滞留時間及び配合成分の充填度を調整できるので、バルブ部11を作動させることによって混練度合いを自由に設定できる。このため樹脂の状態に応じてバルブ部11の開閉度をコントロールして、配合成分に常に均一な混練を与えることができる。
【0020】
また、二組のロータ部である第1ロータ部12及び第2ロータ部13を設けたので、樹脂の溶融、混練作用が強化され押出量が大幅に増加する。さらに、接続部材1b内の流量規制スクリュー部5a及び送出スクリュー部4aは各々、独立に支持されており、これらとシリンダ22及び23との間に樹脂が充満することにより軸受作用が生じるため、高回転域で各スクリューがカジリを起こすことを防止できる。
そして、上記のようにして溶融、混練調整された組成物は、単軸スクリュー部7へ送られ、脱揮口32から必要な脱揮がされた後、延長軸部5にて順次送られて吐出口10から押出される。
【0021】
本発明の混練押出装置により得られる組成物のうち、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであって充填剤がタルクであるものは、高性能であることを要求される自動車内外装部材を形成するための組成物として好適なものである。また、本発明の混練押出装置を用いれば、充填剤が高濃度に充填されたマスターバッチを得ることができ、このマスターバッチは、タルクが高濃度に充填されたマスターバッチを必要とする自動車内外装部材や家電品の材料として有用なものである。なお、現行のマスターバッチは、ゲレーション法により製造されるものであり、配合の自由度がない。具体的には、ゲル化時における造粒の可否は、配合組成に制約を受け、また、ゴム系のマスターバッチの製造は困難である。これに対し、本発明の混練押出装置を用いれば、配合の制約を受けることがなく、目的に応じて所望の配合とすることができる。
【0022】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例1〜7及び比較例1〜5
ポリエチレン/プロピレンブロック共重合体(出光石油化学社,J−950HP)22質量%、エチレン−オクテン・1共重合ゴム(デュポン・ダウエラストマー社製,EG−8100)18質量%及び嵩比重が0.8のタルク60質量%の合計量100質量部に対して、分散剤としてステアリン酸マグネシウム0.5質量部及び酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製,イルガノックス1010)0.2質量部を用い、マスターバッチを製造した。タルクとしては、平均粒径が4.5μmのタルク(富士タルク社製,TP−A25)を、ローラコンパクタ(栗本工業社製,MRCP)により圧縮して嵩比重を0.8とした粒子状タルクを用いた。なお、嵩比重は、タルクを容積560cm3 の計量カップに充満するまで注ぎ、軽くタッピングした後、カップの容積に相当するタルクの質量を測定することにより求めた。
上記成分を、二軸混練部と単軸押出部とが一体構造となっている混練押出機(シーティーイー社製,HTM型2軸連続混練押出機,、以下HTMと記す場合もある。)により混練し、押出してペレットを製造した。HTMによる混練押出しは、第1混練部及び第2混練部の温度を160℃に、押出部の温度を180℃に設定し、スクリュ−回転数600rpmで行った。
なお、上記HTM型2軸連続混練押出機としては、混練機サイズ(スクリュー径D)、[(Lf /D)/D]、第1混練部のL1 /D、第2混練部のL2 /Dが第1表に示す値を有するものを用いた。また、上記HTM型2軸連続混練押出機において、スクリューは非噛合い異方向型のものであり、スクリューのネジ構造は2条ネジであり、二軸混練部の端部には、前記のようなせき止め構造と、樹脂流量を調節するオリフィス調整機能を有している。このせき止め構造とオリフィス調整機能により、熱可塑性樹脂組成物の吐出量を調節した。オリフィス開度は10%とした。
得られたマスターバッチについて、以下の方法により物性を評価した。結果を第1表に示す。
【0023】
(物性評価)
(1)サージング
得られた組成物のストランドの均一性を目視で判定し、均一な場合を○、不均一な場合を×とした。なお、比較例4では、サージングが激しく、溶融組成物を得ることができなかったので、ストランドの均一性を判定することができなかった。
(2)開放ベントからの粉体の噴出
粉体の噴出があるかどうかを目視で判定し、粉体の噴出がない場合を○、粉体の噴出がある場合を×とした。
(3)マスターバッチにおける充填剤の分散性
プレス成形機((株)小平製作所製,PY−50/50A)を用い、設定温度200℃でフィルム状の円盤(厚さ約30μm、直径150mm)にプレスし、圧縮タルクの分散状態をスケール付きのルーペ(倍率:10倍)で確認した。タルクの凝集物に長径100μmのものが確認される場合を×、タルクの凝集物に長径50μmのものが3〜6個確認される場合を△、タルクの凝集物に長径50μmのものが1〜2個確認される場合を△〜○、タルクの凝集物が確認されない場合を○とした。
【0024】
(4)成形品の伸び
上記マスターバッチをニート樹脂とドライブレンドし、射出成形機(日精樹脂工業社製,FS−160)により、成形温度210℃、射出時間10秒、背圧10%、金型温度50℃、冷却時間20秒の条件で成形してサンプルを作製し、以下の方法により物性を評価した。実施例1〜7及び比較例1〜5については、ポリエチレン/プロピレンブロック共重合体(出光石油化学社,J−950HP)66.7質量%とマスターバッチ33.3質量%を使用し、実施例8及び比較例6については、ポリエチレン/プロピレンブロック共重合体(出光石油化学社,J−950HP)71.4質量%とマスターバッチ28.6質量%を使用した。なお、実施例2のサンプルについてのみ、ミキシングノズルを装着して製造した。
引張り試験は、JIS2号ダンベルを用い、引張り試験機((株)島津製作所製,ASG−20KNG)にて、引張り速度10mm/分、チャック間距離80mmで行った。伸び率は、チャック間の伸び(mm)を平行部の長さ33mmで割り算することにより算出した。伸び率の目標値は、高衝撃型インパネの用途として実績のある市販のインパネ材(フルコンパウンド品)の引張り伸びを評価し(伸び700%)、ミキシングノズルなしの成形品の場合、このインパネ材の伸びを目標とした。
【0025】
【表1】
Figure 0003914840
【0026】
【表2】
Figure 0003914840
【0027】
【表3】
Figure 0003914840
【0028】
【発明の効果】
本発明k混練押出機は、熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物の製造に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の混練押出機の一例を示す断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 スクリュー部(原料供給部)
3 第1軸
4 第2軸
5 延長軸部
6 二軸スクリュー部
7 単軸スクリュー部
8 材料供給口
9 端部
10 吐出口
12 ミキシングロータ部(第1混練部)
13 ミキシングロータ部(第2混練部)
41 開放ベント

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる二種以上を含む組成物、あるいは熱可塑性樹脂及びゴムから選ばれる一種以上と充填剤とを含む組成物の製造に用いる混練押出機であって、二軸部のL/D(長さ/径)が12以上であるスクリューを備え、原料供給部に近い側の第1混練部と該第1混練部に続く第2混練部とからなり、かつ二軸部端部においてせき止め構造を有する二軸混練部と、単軸押出部とからなり、スクリュー径Dと原料供給部の長さLf とが(Lf /D)/D=0.12〜0.33の関係にあり、かつ第1混練部のL1 /D(長さ/スクリュー径)が7〜13であることを特徴とする混練押出機。
  2. 第2混練部のL2 /D(長さ/スクリュー径)が2〜10である請求項1に記載の混練押出機。
  3. 第1混練部と第2混練部との間に開放ベントが設けられたものである請求項1又は2に記載の混練押出機。
  4. 二軸混練部のスクリューが、非噛合い異方向型である請求項1〜3のいずれかに記載の混練押出機。
  5. 二軸混練部のスクリューが、そのネジ構造が2条ネジである請求項1〜4のいずれかに記載の混練押出機。
  6. 二軸混練部が、その端部に配合成分の流量を調節する機能を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の混練押出機。
  7. 混練押出機が、二軸混練部と単軸押出部とが一体構造のものである請求項1〜6のいずれかに記載の混練押出機。
  8. 充填剤が、圧縮されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の混練押出機。
  9. 充填剤が、圧縮される前の平均粒径が15μm以下のものである請求項8に記載の混練押出機。
  10. 充填剤が、加圧処理又は減圧処理により圧縮されたものである請求項8又は9に記載の混練押出機。
  11. 圧縮された充填剤が、その形状が粒子状のものである請求項8〜10のいずれかに記載の混練押出機。
  12. 充填剤がタルクである請求項1〜11のいずれかに記載の混練押出機。
  13. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1〜12のいずれかに記載の混練押出機。
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