JP3914485B2 - 熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法に係り、更に詳しくは、熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを積層した熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明なフィルム若しくはシートにグラビア印刷、スクリーン印刷等の手法で加飾印刷を行い、当該印刷された柄の隠蔽のために同種類及び溶融軟化温度や融点Tmの近い不透明な着色熱可塑性樹脂基材と熱融着して成形された熱可塑性樹脂積層板、また、不透明基材に加飾印刷を行い、透明なフィルム若しくはシートで被覆して深み感をもたせた積層板、或いは、不透明なシートに加飾印刷を施して成形された積層板が知られている。このような積層板は、板形状のまま、または真空成形等で任意な形状に加工して住設、家電、自動車関連部材の化粧材等として利用されている。これら積層板は、複層同時押出し、カレンダー成形、熱プレス、熱ロールプレス等の手法によって熱可塑性樹脂同士の熱融着によって形成され、同種類同士及び溶融軟化温度等の近い熱可塑性樹脂同士の組合わせによって構成されている。同種類の組合わせとしては、例えば、塩化ビニル/塩化ビニル,アクリル/アクリル,ABS/ABS、PP(PO)/PP(PO)、PS/PS、異種類の組合わせとしては、アクリル/ABS等があり、また、一部無機フィラー含有熱可塑性樹脂品のものもある(例えば、特願平7−64089号公報、特願平9−268272号公報参照)。
【0003】
また、PET/PP(PO)積層体も住設部材の化粧合板の化粧シートとして使用される等、よく知られているが、PETは接着に関して不利な点と、前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度と約100℃程度違うという理由で、接着剤を用いたドライラミネート法で成形されているのが実状である(例えば、特願平10−236612号公報、特願平7−111969号公報参照)。また、ポリエステルの種類中、比較的溶融軟化温度の低い非結晶性PETフィルム(PETG等)をアクリル樹脂シートと絵柄層及び接着層を介してシート又はフィルムと熱プレス融着しているものもある(例えば、特願平11−110383号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した熱可塑性樹脂同士の熱融着による積層板を成形するに際しては、一方の熱可塑性樹脂に加飾印刷を行って他方の熱可塑性樹脂と融着させる場合に、溶融軟化温度等が近いもの同士であることに起因して、印刷された柄が熱融着時の熱で伸びたり、歪んだりして精度が悪くなり、印刷初期における柄の再現性が悪いという問題がある。例えば、透明アクリルシートのABS押出し同時ラミネート積層板であるアクリルバック印刷シート/ABSにおいては、ラミネート時にアクリルシートが押出しABS樹脂温度の影響で柄が伸びてしまうという問題を生ずる。
【0005】
また、前述した熱融着で成形されている熱可塑性樹脂積層板に使用されている樹脂(アクリル、ABS、HIPS、PS、PP、塩化ビニル等)は、一般的に耐溶剤性、耐洗剤性、耐薬性の点で十分ではないという問題がある。例えば、アクリル樹脂成形品の表面をアルコール、シンナーで拭くと溶解したり、ソルベントクラックを発生することが知られている。更に、アクリル樹脂成形品の場合、吸水率が高く寸法変化が大きいという問題もある。また、ポリ塩化ビニルフィルムは、燃焼に伴うダイオキシンの発生の恐れがあり、廃棄物処理上で問題となっている。
【0006】
一方、PET/PP(PO)積層体によれば、耐溶剤性、耐洗剤性、耐薬性等の表面性能は向上するが、上述のように接着性の問題からドライラミネート法で作製されており、このドライラミネート法は、接着剤塗布、乾燥等の工程が別途に必要となってコストアップをもたらす上に、接着剤や印刷インキによる凹凸がそのまま残るため、薄い鏡面シートでは平滑性に劣るという問題点がある。なお、非結晶ポリエステルと他の熱可塑性樹脂とを融着した成形品もあるが、溶融軟化温度の低い非結晶ポリエステルは結晶性ポリエステルに比べて耐溶剤性等の性能が劣るという問題がある。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、このような問題に着目して案出されたものであり、その目的は、柄の再現性に優れ、しかも耐溶剤、耐薬剤、耐洗剤性及び吸水率問題等に優れた表面性能を備えた熱可塑性樹脂成形品及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明に係る熱可塑性樹脂成形品は、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートに加飾印刷を行い、当該印刷用のインキをバインダーとして熱可塑性樹脂基材に積層した熱可塑性樹脂成形品であって、
前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して20℃以上高いものによって構成され、
前記インキは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度より低く、しかも前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−50℃〜+50℃の範囲のものによって構成されている。このような構成とすることで、融点差を利用した融着により、柄の再現性に優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
【0009】
本発明において、前記インキは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−20℃〜+20℃の範囲のものによって構成されることが好ましい
【0010】
前記熱可塑性樹脂成形品において、前記フィルム若しくはシートの加飾印刷面と前記熱可塑性樹脂基材との間にプライマー層若しくは接着剤を設けてもよい。これにより、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートと熱可塑性樹脂基材との接着強度を更に向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明は、熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを積層した熱可塑性樹脂成形品の製造方法において、
前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して20℃以上高い溶融軟化温度となる熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの一方の面に、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度より低く、しかも前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−20℃〜+20℃の範囲の溶融軟化温度となるインキで加飾印刷を行い、
前記熱可塑性樹基材の成形時の熱を利用して前記インキを融着して前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを熱可塑性樹脂基材に積層する、という手法を採っている。
【0012】
本明細書において、「溶融軟化温度」とは、以下の測定方法による温度について用いられる。
すなわち、測定は、ホットプレート上に硬貨(耐熱性があり、熱伝導率が高く変形しないもの印となるものであればよい)を置いた状態で、ホットプレートを昇温させてフィルム若しくはシートを硬貨上に置き、その上から一定の圧力(約1Kg/cm2)を加えるための重りを載せることにより行われる。そして、約30秒放置した後の、シートの場合には硬貨接触面側に硬貨痕(艶消え及凹み変形)が付き始める温度、インキの場合にはインキが前記フィルム若しくはシートから硬貨に転写するときの温度、フィルムの場合には艶消え及び溶解するときの温度を溶融軟化温度とする。
【0013】
本発明における熱可塑性樹脂成形品は、表装となる製品表面が溶融軟化温度の高い透明な熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートによって構成され、当該フィルム若しくはシート側に一色以上(抽象柄、幾何学固定柄、全面ベタ印刷、プライマー印刷)の絵柄加飾印刷がグラビア印刷、スクリーン印刷、インキジェット印刷等によって施される。加飾印刷に用いられるインキは、接着剤の役割をもたせてバインダーとされ、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを熱可塑性樹脂基材の押出し又はカレンダー成形時に同時ラミネートすることにより熱融着して成形した二層以上の板状若しくはシート状の熱可塑性樹脂成形品とされる。熱可塑性樹脂基材としては、例えば、ABS、アクリル、PS、HIPS、PP、非結晶ポリエステル、無機フィラー含有熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂低発泡品等が例示でき、それぞれ透明樹脂、顔料及び染料からなる着色剤で着色した半透明、不透明品のものを任意に選択することができる。例えば、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートとしてPETを用いた場合には、PETの有する表面性能を効果的に発揮することができ、また、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートと熱可塑性樹脂基材との溶融軟化温度の差を有効利用することにより、表層としてアクリル、ABS、HIPS、PP、PS、塩化ビニル等の樹脂を採用した場合に見られる耐溶剤性、耐洗剤性等の種々の問題や、柄の再現性低下、接着剤の塗布、乾燥工程等が別途に必要となる問題を解決することができる。
【0014】
本発明において、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートと前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度は、前述したように、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートが熱可塑性樹脂基材よりも20℃以上高い差が必要であるが、これは、熱可塑性樹脂基材の押出し樹脂温度を溶融軟化温度より高く設定しないと未溶解ペレットを含む未溶解物が残るため、これを回避する必要があるためである。なお、熱可塑性樹脂基材に対する熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度は50℃以上の差があることが一層好ましい。これは、表面の艶の問題と押し出し温度のばらつきを考慮するためである。
【0015】
また、本発明は、押出し時の熱(押出し樹脂の樹脂温度)を利用して熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートに印刷された印刷用のインキを溶融軟化温度以上の温度で再活性させて融着し、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートと押出し熱可塑性樹脂基材との押出し同時ラミネート成形品であり、これにより、ドライラミネート方式による問題を解決することができる。この場合のインキの再活性温度すなわち溶融軟化温度以上の温度とは、前述したように、押出し熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度と比較して−50℃〜+50℃の範囲である。従って、例えば、熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度が150℃であれば、インキの溶融軟化温度は100〜200℃であればよいことになる。なお、インキと熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度差は、好ましくは−20℃〜+20℃である。これは融着時にインキが押出し樹脂の熱を受けて溶融軟化温度以上の温度に達しなければならず、押出し樹脂温度が前記範囲外の関係であまりにも低すぎると密着性が著しく低下する一方、前記範囲外であまりにも押出し樹脂温が高すぎると融着前に柄がボケたり、歪んだり、シワが発生したりするためである。また、押出し樹脂温度のバラツキ(押出し後、ラミネート融着までの間で樹脂温度が下がる)も考慮する必要があり、前記範囲内で融着可能であることが確認されている。但し、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートとインキとの関係においては、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート自体が有する前記特性を維持する上で、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度が、インキの溶融軟化温度より高いことが必要である。このように、本発明は、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート、押出し熱可塑性樹脂樹脂基材、インキ若しくは必要に応じて用いられるプライマー、接着剤を前記条件(範囲)で相互に組み合わせることにより、前述した種々の問題を解決することのできる可塑性樹脂積層成形品を得ることができる。
【0016】
本発明で利用可能な熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートは、例えば、PETフィルム若しくはシートであり、代表的には一般的な結晶性PET(溶融軟化温度256〜267℃)であるが、融着相手である熱可塑性樹脂基材との関係において前述した溶融軟化温度の差があれば良く、結晶性PETと非結晶性PETのブレンドフィルム若しくはシート、非結晶性PETフィルム若しくはシート、又は軟質PETフィルム若しくはシートも利用可能である。これによりPETが有する特有の表面性能を付与した熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。また、溶融軟化温度の差を利用しているため、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート面の柄の伸びがないばかりでなく、熱による表面の艶消えもなく、印刷柄の精度、再現性も良好である。更に、押出し或いはカレンダー成形等による同時ラミネートによる成形であるため、ラミネート皺や異物混入の発生確率を低下させることができるとともに、フィルム巻きなおし工数や、別途に接着剤を塗布する工程等を削減して生産効率を向上させることができる。また、成形時に、押出し樹脂に凹凸が吸収されるため、表面平滑性も向上することとなる。
【0017】
印刷用のインキは、密着力要求性能によりインキの種類を選定し、更に、密着力を向上させるために全面ベタ印刷、透明なプライマー樹脂、接着剤等を組合わせて印刷若しくは塗布することも可能である。
【0018】
図1に示されるように、本発明に係る熱可塑性樹脂成形品10は、シート状に形成された状態で、合板、MDF等からなるパネル基材11の面に、反応性ホットメルト等の接着剤12を介して積層体とされ、これが住設部品等として利用される。熱可塑性樹脂成形品10は、図2に詳細に示されるように、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート20と、これの図中下面側に印刷されたインキ21と、当該インキ21をバインダーとして熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート20が融着される熱可塑性樹脂基材22とにより構成されている。また、図3に示されるように、前記インキ21の面に、全面ベタ印刷23を施したもの、図4に示されるように、グラビアロール等で印刷されたプライマー層、或いは、接着層25を設けたものによって構成することができる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明に係る熱可塑性樹脂成形品の実施例を示す。
【0020】
[実施例1]
以下の表1に示されるように、熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートとして、溶融軟化温度が225℃のPETフィルムを用い、その一方の面に、溶融軟化温度が140℃となる一液アクリル系インキを用いて印刷を行い、更に、色ムラ防止のための全面ベタ印刷を施した。融着の相手側となる熱可塑性樹脂基材は顔料を添加して着色した不透明ABS樹脂(溶融軟化温度125℃)とした。この熱可塑性樹脂基材を押出し成形すると同時に、その押出し時の熱によって前記インキを再活性させて融着し、ラミネートして熱可塑性樹脂成形品を得た。当該成形品の外観は極めて良好であり、また、密着性も良好であった。
本実施例では、前記熱可塑性樹脂成形品の全体厚みを2.0mmに固定したが、押出し成形であるため、厚みの調整は任意とすることができる。得られた熱可塑性樹脂成形品は、図1に示されるように、合板、MDF等からなるパネル基材に接着して化粧パネルとした。なお、パネル基材としては、パーチクルボード、無機板、金属板等も選択可能である。
【0021】
[実施例2]
印刷用のインキを溶融軟化温度165℃の二液ウレタン系インキを用いた以外は、実施例1と同一の条件で成形を行った。
【0022】
[実施例3]
実施例2と同様の印刷用のインキを用いて印刷を行った上で、密着力を上げるためのプライマー層を設けた。その他は、実施例1と同一の条件で成形を行った。この実施例では、プライマー層の介在により、密着性においても優れた結果を得ることができた。
【0023】
[実施例4]
実施例3のプライマー層に代えて接着剤を用いた。その他の成形条件は実施例2と同一である。この実施例においても、実施例3と同様の外観及び密着性を得ることができた。
【0024】
[実施例5]
熱可塑性樹脂基材として、溶融軟化温度が120℃のHIPS樹脂を用いた以外は実施例2と同一の条件で成形を行った。
【0025】
[実施例6]
熱可塑性樹脂基材として、溶融軟化温度が160℃のPP樹脂を用いた。その他は、実施例3と同一の条件で成形を行った。
【0026】
[実施例7]
溶融軟化温度が205℃のPBTフィルムを用いる一方、熱可塑性樹脂基材として溶融軟化温度が120℃のABS樹脂を用いた以外は実施例2と同一の条件で成形を行った。
【0027】
[実施例8]
実施例7と同一のフィルムを用いるとともに、実施例4と同一の印刷及び接着剤を用い、熱可塑性樹脂基材として溶融軟化温度が160℃のPP樹脂を用いて成形を行った。
【0028】
[実施例9]
溶融軟化温度が245℃のPCTフィルムを用いる一方、熱可塑性樹脂基材として溶融軟化温度が130℃のメタクリル樹脂を用いた。その他は、実施例2と同一の条件で成形を行った。
【0029】
[実施例(比較例)10]
熱可塑性樹脂基材として溶融軟化温度が85℃のPE樹脂を用いた以外は実施例1と同一の条件で成形を行った。この実施例では、熱可塑性樹脂フィルムと熱可塑性樹脂基材とが密着する積層を行うことができず、従って、成形品の外観の評価をすることもできなかった。これは、インキの溶融軟化温度が熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して高すぎたことに起因するものと考えられる。
【0030】
[実施例(比較例)11]
熱可塑性樹脂基材として溶融軟化温度が195℃のPC樹脂を用いた以外は実施例1と同一の条件で成形を行った。この実施例においては、成形品の外観において印刷ぼけを生じた。これは、インキの溶融軟化温度が熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して低すぎたことに起因しているものと考えられる。
【0031】
【表1】
Figure 0003914485
【0032】
表1から明らかなように、本発明の条件を満足する実施例1ないし9の熱可塑性樹脂成形品において、外観及び密着性(碁盤目試験クリアー)は良好であった。強制的に剥離を試みたが、印刷インキが熱可塑性樹脂基材側の面に転写されて剥離する状態であった。
【0033】
また、表面性においては、耐溶剤性等の表面性能試験で、同様の条件で成形した表面アクリル品(50μmPMMAフィルム/ABSシートと比較したが、本発明にかかる熱可塑性樹脂シートの表面の方が耐溶剤性、耐薬品性等優れた結果を示した。
【0034】
なお、前記熱可塑性樹脂成形品の前記樹脂基材裏面に接着剤(PUR接着剤)を塗布してパネル基材に接着した。接着性を向上させるため、プライマーを塗布して接着性向上させる方法と、熱可塑性樹脂基材面をワイドサンダーで研削して粗してから接着剤を塗布して接着する(物理接着、アンカー効果付与)方法で接着力向上可能であった。その結果ABS、HIPS、PP、メタクリル樹脂ともにパネル基材との接着力は向上し、化粧パネル(木口、端面、裏面処理して浴室パネル、キッチンパネル、パーテション等の住設関連部材パネルとして利用)として使用可能な問題ない物性を得ることができた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、柄の再現性に優れた特有の表面性能を有する熱可塑性樹脂成形品を得ることができる、という従来にない効果を得ることができる。すなわち、溶融軟化温度の差を特定の範囲にして積層することで、表層を形成する熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート面に設けられた印刷柄の伸びがなく、熱による表面の艶消えもなく、印刷柄の精度・再現性が良好となる。また、シート状の熱可塑性樹脂成形品を形成した後の当該成形品と熱可塑性樹脂基材との融着ではなく、押出し(カレンダー成形)同時ラミネートで融着するものであるため、ラミネートシワや異物混入の発生確率を低下させることができるとともに、フィルム巻き直し工数、別途接着剤塗布の工程等が削減でき、生産効率を改善することができ、更に、表面平滑性においても従来の問題を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る熱可塑性樹脂成形品を用いて化粧パネルとした状態を示す部分断面図。
【図2】 前記熱可塑性樹脂成形品の詳細断面図。
【図3】 前記熱可塑性樹脂成形品の他の例を示す詳細断面図。
【図4】 前記熱可塑性樹脂成形品の更に他の例を示す断面図。
【符号の説明】
10…熱可塑性樹脂成形品、20…熱可塑性樹脂フィルム若しくはシート、21…インキ、22…熱可塑性樹脂基材、25…プライマー層

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートに加飾印刷を行い、当該印刷用のインキをバインダーとして熱可塑性樹脂基材に積層した熱可塑性樹脂成形品であって、
    前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して20℃以上高いものによって構成され、
    前記インキは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度より低く、しかも前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−50℃〜+50℃の範囲のものによって構成されていることを特徴とする熱可塑性樹脂成形品。
  2. 前記インキは、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−20℃〜+20℃の範囲のものによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形品。
  3. 前記フィルム若しくはシートの加飾印刷面と前記熱可塑性樹脂基材との間にプライマー層若しくは接着剤を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形品。
  4. 熱可塑性樹脂基材に熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを積層した熱可塑性樹脂成形品の製造方法において、
    前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して20℃以上高い溶融軟化温度となる熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの一方の面に、溶融軟化温度が前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートの溶融軟化温度より低く、しかも前記熱可塑性樹脂基材の溶融軟化温度に対して−20℃〜+20℃の範囲の溶融軟化温度となるインキで加飾印刷を行い、
    前記熱可塑性樹脂基材の成形時の熱を利用して前記インキを融着して前記熱可塑性樹脂フィルム若しくはシートを熱可塑性樹脂基材に積層することを特徴とする熱可塑性樹脂成形品の製造方法。
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