JP3914165B2 - 離型層転写用フィルム及び積層フィルム並びにcof用フレキシブルプリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICあるいはLSIなどの電子部品を実装するCOFフィルムキャリアテープ、COF用フレキシブルプリント回路(FPC)などのフレキシブルプリント配線板に離型層を形成するための離型層転写用フィルム及び積層フィルム並びにCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)等の電子部品を実装するプリント配線板の需要が急激に増加しているが、電子機器の小型化、軽量化、高機能化が要望され、これら電子部品の実装方法として、最近ではTAB(Tape Automated Bonding)テープ、T−BGA(Ball Grid Array)テープ、ASICテープ、FPC(フレキシブルプリント回路)等の電子部品実装用フィルムキャリアテープを用いた実装方式が採用されている。特に、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のように、高精細化、薄型化、液晶画面の額縁面積の狭小化が要望されている液晶表示素子(LCD)を使用する電子産業において、その重要性が高まっている。
【0003】
また、より小さいスペースで、より高密度の実装を行う実装方法として、裸のICチップをフレキシブルプリント配線板上に直接搭載するCOF(チップ・オン・フィルム)が実用化されている。
【0004】
このCOFに用いられるフレキシブルプリント配線板はデバイスホールを具備しないので、導体層と絶縁層とが予め積層された積層フィルムが用いられ、ICチップの配線パターン上への直接搭載の際には、例えば、絶縁層を透過して視認されるインナーリードや位置決めマークを介して位置決めを行い、その状態で加熱ツールによりICチップと、配線パターン、すなわちインナーリードとの接合が行われる(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−289651号公報(図4〜図6、段落[0004]、[0005]等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような半導体チップの実装は、絶縁層が加熱ツールに直接接触した状態で行われるが、この状態で加熱ツールによりかなり高温に加熱されるので、絶縁層が加熱ツールに融着する現象が生じ、製造装置の停止の原因となり、また、テープの変形が生じるという問題がある。また、加熱ツールと融着した場合には、加熱ツールに汚れが発生し、信頼性、生産性を阻害するという問題があった。
【0007】
このような加熱ツールの融着は、デバイスホールのないCOFフィルムキャリアテープやCOF用FPCへの半導体チップの実装の際に問題となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、COF用フレキシブルプリント配線板に容易に離型層を形成でき、絶縁層が加熱ツールに熱融着することがなく、半導体チップ実装ラインの信頼性及び生産性を向上させることができる離型層転写用フィルム及び積層フィルム並びにCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を形成するための離型層転写用フィルムであって、転写用フィルムと、この転写用フィルムの一面に設けられた転写用離型層とを具備し、前記転写用離型層が、シラザン化合物を含有する離型剤により形成され且つ前記絶縁層に転写可能であることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0010】
かかる第1の態様では、転写用フィルムにシラン化合物の一種であるシラザン化合物からなる離型剤により形成された転写用離型層をCOF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に転写することにより、COF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に離型層を比較的容易に形成できる。
【0019】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記転写用離型層が、前記離型剤の溶液を塗布し、加熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0020】
かかる第2の態様では、塗布法により熱融着が確実に防止される離型層を形成するための転写用離型層が転写用フィルムの面上に形成される。
【0021】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記転写用離型層は、前記絶縁層に密着させた後、加熱処理することにより転写されることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0022】
かかる第3の態様では、転写用離型層は、絶縁層に密着された後、加熱処理することにより、有効に転写される。
【0023】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記転写用離型層は、前記転写用フィルムの一方面に連続的に又は間欠的な島状に設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0024】
かかる第4の態様では、転写用離型層が、連続的に又は間欠的な島状に設けられていれば、COF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に有効に転写される。
【0025】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記転写用離型層は、前記絶縁層に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0026】
かかる第5の態様では、転写用離型層の少なくとも一部が絶縁層に転写され、その絶縁層の面上に連続的に又は間欠的な島状の転写用離型層が有効に形成される。
【0027】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記転写用離型層は、前記COF用フレキシブルプリント配線板の少なくとも二列のスプロケットホールの列間に存在する前記配線パターンの形成領域に対応して設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0028】
かかる第6の態様では、転写用離型層が、スプロケットホールの列間に存在していれば、COF用フレキシブルプリント配線板に絶縁層が有効に形成される。
【0029】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記配線パターンの形成領域が少なくとも二列以上あり、当該配線パターンの列毎に対応して前記転写用離型層が多条に設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0030】
かかる第7の態様では、多条のCOF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に、各配線パターンの列毎に対応して多条の離型層が形成される。
【0031】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記転写用フィルムと前記転写用離型層の間には、当該転写用離型層のみと剥離可能な粘着層が設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0032】
かかる第8の態様では、転写用離型層が粘着層を介して転写用フィルムの一方面上に形成される。
【0033】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様において、前記転写用フィルムは、前記COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程にて前記絶縁層に粘着されて補強フィルムとして使用されることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0034】
かかる第9の態様では、離型層転写用フィルムを補強フィルムとして利用することで、COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程における絶縁層の剛性が高められ、所望のテープ搬送強度が得られる。
【0035】
本発明の第10の態様は、第1〜9の何れかの態様において、前記転写用離型層の面上には、当該転写用離型層と剥離可能な剥離フィルムが設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルムにある。
【0036】
かかる第10の態様では、剥離フィルムにより転写用離型層の表面が保護される。
【0037】
本発明の第11の態様は、基材フィルムと、該基材フィルムの表面にシロキサン化合物、シラン化合物、及びシリカゾルから選択される少なくとも一種を含有する離型剤により形成された離型層と、該離型層の前記基材フィルムとは反対側の面上に設けられてCOF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層と、該絶縁層の前記離型層側とは反対側の面上に設けられた導体層とを有し、前記基材フィルムは、前記COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程にて前記絶縁層に粘着されて補強フィルムとして使用され且つ前記COF用フレキシブルプリント配線板に半導体チップを実装する前に剥がされるものであり、当該基材フィルムが剥がされた後には前記絶縁層上に前記離型層が残ることを特徴とする積層フィルムにある。
【0038】
かかる第11の態様では、基材フィルムは補強フィルムとして使用され、基材フィルムを剥がすことで、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を比較的容易に形成でき、半導体チップ(IC)実装時の加熱ツールとの熱融着が防止される。
【0039】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記離型層が、シラザン化合物を含有する離型剤により形成されたことを特徴とする積層フィルムにある。
【0040】
かかる第12の態様では、離型層が、シラン化合物の一種であるシラザン化合物からなる離型剤により形成され、有効にCOF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に形成される。
【0043】
本発明の第13の態様は、第11又は12の態様において、前記基材フィルムと前記離型層の間には、当該離型層のみと剥離可能な粘着層が設けられていることを特徴とする積層フィルムにある。
【0044】
かかる第13の態様では、離型層が粘着層を介して基材フィルムの一方面上に形成される。
【0049】
本発明の第14の態様は、第11〜13の何れかの態様において、前記基材フィルムは、加熱処理した後、剥がされるものであることを特徴とする積層フィルムにある。
【0050】
かかる第14の態様では、離型層は、加熱処理することにより、絶縁層と密着して有効に形成される。
【0051】
本発明の第15の態様は、第11〜14の何れかの態様において、前記基材フィルムが剥がされた後に残る離型層は、前記絶縁層の一方面に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とする積層フィルムにある。
【0052】
かかる第15の態様では、離型層が、連続的に又は間欠的な島状にCOF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に形成され、有効に機能する。
本発明の第16の態様は、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を形成するための離型層転写用フィルムであって、転写用フィルムと、この転写用フィルムの一面に設けられた転写用離型層とを具備し、前記転写用離型層が、シロキサン化合物、シラン化合物、及びシリカゾルから選択される少なくとも一種を含有する離型剤により形成され且つ前記絶縁層に転写可能である離型層転写用フィルムの前記転写用離型層側を、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に積層する工程と、この離型層転写用フィルムを積層した絶縁層の反対側に設けられた導体層に配線パターンを形成してCOF用フレキシブルプリント配線板を製造する工程と、前記転写用フィルムを剥がして前記転写用離型層を前記絶縁層に転写して絶縁層に離型層を有するCOF用フレキシブルプリント配線板とする工程とを具備することを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法にある。
本発明の第17の態様は、第2〜10の何れかの態様の離型層転写用フィルムの前記転写用離型層側を、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に積層する工程と、この離型層転写用フィルムを積層した絶縁層の反対側に設けられた導体層に配線パターンを形成してCOF用フレキシブルプリント配線板を製造する工程と、前記転写用フィルムを剥がして前記転写用離型層を前記絶縁層に転写して絶縁層に離型層を有するCOF用フレキシブルプリント配線板とする工程とを具備することを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法にある。
本発明の第18の態様は、第16又は17の態様において、前記転写用フィルムを剥がす際に、加熱処理することで前記離型層が前記絶縁層に転写されることを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法にある。
本発明の第19の態様は、第16〜18の何れかの態様において、前記離型層は、前記絶縁層の一方面に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法にある。
【0053】
本発明の離型層転写用フィルムは、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を形成するものであり、転写用フィルムと、この転写用フィルムの一面に設けられた転写用離型層とを具備する。
【0054】
ここで、転写用フィルムは、特に限定されないが、転写用離型層をCOF用フレキシブルプリント配線板の絶縁層に離型層として有効に転写し得るものであればよい。転写の際には、絶縁層に転写用離型層を密着させ、必要に応じて加熱処理を行うので、このような転写処理に耐えられる強度及び耐熱性を有していればよい。転写用フィルムの材質としては、例えば、プラスチックフィルムを用いることができ、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、及び液晶ポリマー等からなるフィルムが挙げられる。このような転写用フィルムの厚さとしては、例えば、15〜100μm、好ましくは、20〜75μmである。
【0055】
このような転写用フィルムの一方面に設けられる転写用離型層は、半導体チップの実装時に加熱ツールと密着しないような離型性を有しており且つこのような加熱により熱融着しない材料で形成されていればよく、有機材料でも無機材料でもよい。例えば、シリコーン系離型剤、エポキシ系離型剤、フッ素系離型剤などを用いるのが好ましい。
【0056】
このような転写用離型層は、シリコーン系化合物、エポキシ系化合物又はフッ素系化合物からなるのが好ましいが、特に、シリコーン系化合物からなるもの、すなわち、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を有する化合物を形成するものがよい。シリコーン系化合物からなる転写用離型層は、比較的容易に形成でき、半導体装置実装面に転写したとしても、半導体チップ実装後のモールド樹脂の接着性に悪影響を起こし難いからである。
【0057】
ここで、シリコーン系化合物、すなわち、シロキサン結合を有する化合物からなる転写用離型層を形成する離型剤としては、シリコーン系離型剤を挙げることができ、具体的には、ジシロキサン、トリシロキサンなどのシロキサン化合物から選択される少なくとも一種を含有するものである。
【0058】
また、好ましい離型剤としては、塗布後反応によりシリコーン系化合物に変化する化合物、すなわち、モノシラン、ジシラン、トリシランなどのシラン化合物、又はシリカゾル系化合物等を含む離型剤を用いるのが好ましい。
【0059】
さらに、特に好ましい離型剤としては、シラン化合物の一種であるアルコキシシラン化合物や、シロキサン結合の前駆体であるSi−NH−Si構造を有する、ヘキサメチルジシラザン、ペルヒドロポリシラザンなどのシラザン化合物を含有する離型剤を挙げることができる。これらは、塗布することにより、又は塗布後空気中の水分等と反応することにより、シロキサン結合を有する化合物となるが、例えば、シラザン化合物については、Si−NH−Si構造が残存している状態であってもよい。
【0060】
このように、離型剤を塗布した後、反応により変化して形成されたシリコーン系化合物からなる離型層が特に好ましい。
【0061】
このような各種離型剤は、一般的には溶剤として有機溶剤を含有しているが、水溶液タイプのもの又はエマルジョンタイプのものを用いてもよい。
【0062】
具体例としては、ジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン系オイル、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、トルエン、リグロインを成分とするシリコーン系レジンSR2411(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、シラザン、合成イソパラフィン、酢酸エチルを成分とするシリコーン系レジンSEPA−COAT(商品名:信越化学工業社製)などを挙げることができる。また、シラン化合物を含有するコルコートSP−2014S(商品名:コルコート株式会社製)などを挙げることができる。さらに、シリカゾルを含有する離型剤としては、コルコートP、N−103X(商品名:コルコート株式会社製)などを挙げることができる。なお、シリカゾルに含まれるシリカの粒子径は、例えば、0.005〜0.008μm[50〜80Å(オングストローム)]である。
【0063】
ここで、半導体チップの実装時に加熱ツールと密着しないという離型性を有しており且つこのような加熱により熱融着しないという効果の点では、シラザン化合物を含有する離型剤でシリコーン系化合物からなる転写用離型層を設けるのが特に好ましい。このようなシラザン化合物を含有する離型剤の一例としては、シラザン、合成イソパラフィン、酢酸エチルを成分とするシリコーン系レジンSEPA−COAT(商品名:信越化学工業社製)を挙げることができる。
【0064】
このような転写用離型層を転写用フィルムの一方面に形成する方法は特に限定されず、例えば、塗布法、転写法等が挙げられる。塗布法では、転写用フィルムの一方面上に離型剤又はその溶液をスプレー、ディッピング、又はローラー塗布などにより塗布し、加熱処理することで転写用離型層が形成される。また、転写用離型層を転写法により形成する場合にも、加熱処理するようにしてもよい。転写用離型層の厚さは、例えば、0.05〜0.5μmであり、好ましくは0.1〜0.3μmである。また、転写用離型層は、必ずしも全体的に均一に設けられている必要はなく、間隔をおいて島状に設けられていてもよい。さらに、転写用離型層が転写用フィルムの一方面の全面に設けられた離型剤転写用フィルムテープによって絶縁層の面上に必ずしも全体的に離型層を転写できなくてもよく、連続的に又は間欠的な島状に転写できればよい。これは、絶縁層の面上に島状の離型層が形成されれば、加熱ツールと絶縁層とが直接接触するのを確実に防止でき、加熱ツールと絶縁層との熱融着が有効に防止できるからである。
【0065】
また、本発明では、転写用フィルムの一方面上、すなわち、転写用フィルムと転写用離型層との間に粘着層を設けるようにしてもよい。このような粘着層の材質は、例えば、アクリル系、ゴム系、及びエポキシ系等の樹脂材料が挙げられる。また、粘着層の厚さは、例えば、3〜25μmであり、好ましくは5〜15μmである。かかる粘着層の形成方法としては、例えば、スプレー、ディッピング、又はローラー塗布などにより塗布する方法が挙げられる。
【0066】
ここで、上述した転写用離型層は、絶縁層の導体層とは反対側、すなわち、半導体チップ(IC)を実装する側とは反対側の面上に転写されるが、この際、加圧してもよいし、その加圧と共に加熱してもよく、加熱だけ行うようにしてもよい。例えば、このときの転写条件としては、加熱温度を15〜200℃とし、ローラー又はプレスによる荷重を5〜50kg/cm2とし、処理時間を0.1秒〜2時間とするのがよい。
【0067】
また、絶縁層と離型層との間の剥離を防止するために、転写後、加熱処理等により両者の間の接合力を高めるようにしてもよい。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度を50〜200℃、好ましくは、100〜200℃とし、加熱時間を1分〜120分、好ましくは、30分〜120分とするのがよい。
【0068】
かかる離型層は、半導体実装時までに設けられていればよいので、導体層を設けていない絶縁層に予め設けるようにしてもよいし、導体層を設ける際に同時に設けるようにしてもよい。勿論、離型層は、導体層をパターニングする前に必ずしも転写して設ける必要はなく、導体層をパターニングした後設けるようにしてもよい。
【0069】
例えば、導体層を設けていない絶縁層に設ける場合などは、転写法を行うのに好適である。また、製造工程の初期段階で転写法により離型層を設ける場合、離型層が形成された転写用フィルムを剥がさないで補強フィルムとして使用し、最終工程で転写用フィルムを剥がすようにしてもよい。このように、離型層転写用フィルムを補強フィルムとして利用することで、COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程におけるテープ搬送強度が高められる。
【0070】
このようなCOF用フレキシブルプリント配線板は、導体層と絶縁層とを有する。かかるCOF用フレキシブルプリント配線板に用いられる導体層と絶縁層とのCOF用積層フィルムとしては、ポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムにニッケルなどの密着強化層をスパッタした後、銅メッキを施したCOF用積層フィルムを挙げることができる。また、COF用積層フィルムとしては、銅箔にポリイミドフィルムを塗布法により積層したキャスティングタイプや、銅箔に熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂などを介し絶縁フィルムを熱圧着した熱圧着タイプのCOF用積層フィルムを挙げることができる。本発明では、何れを用いてもよい。
【0071】
ここで、COF用フレキシブルプリント配線板は、半導体チップを実装して用いられる。この際、実装方法は特に限定されないが、例えば、チップステージ上に載置された半導体チップ上にCOF用フレキシブルプリント配線板を位置決め配置し、加熱ツールをCOF用フレキシブルプリント配線板に押しあてて半導体チップを実装する。この際に、加熱ツールは、最低でも200℃以上、場合によっては350℃以上に加熱されるが、絶縁層上に離型層が形成されているので、両者の間に熱融着が生じる虞がないという効果を奏する。
【0072】
また、本発明の離型層転写用フィルムは、上述した転写用離型層の面上に、この転写用離型層と剥離可能な剥離フィルムを設けるようにしてもよい。この剥離フィルムは、転写用離型層の表面を保護する役割がある。
【0073】
何れにしても、本発明の離型層転写用フィルムは、半導体チップ実装前に転写用フィルムを剥がすことで、絶縁層の導体層とは反対側、すなわち、半導体チップを実装する側とは反対側の面上に離型層を転写できれるものであれば特に限定されるものではない。
【0074】
また、本発明の積層フィルムは、基材フィルムと、この基材フィルムの表面にシラン化合物、及びシリカゾルから選択される少なくとも一種を含有する離型剤により形成された離型層と、この離型層の基材フィルムとは反対側の面上に設けられてCOF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層とを有する。
【0075】
また、このような積層フィルムは、これら基材フィルム、離型層、及び絶縁層3層タイプの積層フィルムに限定されるものではなく、例えば、絶縁層の基材フィルム側とは反対側の面上に導体層を設けた4層タイプの積層フィルム、あるいは基材フィルムと離型層の間に、離型層のみと剥離可能な粘着層を設けた5層タイプの積層フィルムであってもよい。
【0076】
また、このような本発明の積層フィルムを用いると、少なくとも、COF用フレキシブルプリント配線板に半導体チップを実装する前に基材フィルムを剥がすことで、絶縁層上に離型層を残すことができる。この際、加熱処理を行った後、基材フィルムを剥がすことで、離型層を絶縁層の面上により有効に転写することができる。
【0077】
そして、このような離型層は、上述した離型層転写用フィルムと同様に、必ずしも、基材フィルムの面上に設けられた全てを転写できなくてもよく、少なくとも、絶縁層の一方面に連続的に又は間欠的な島状に転写されればよい。
【0078】
また、このような本発明の積層フィルムは、上述した離型層転写用フィルムの転写用離型層の面上に絶縁層を形成することにより、または、更にこの絶縁層の面上に導体層を形成することにより製造でき、あるいは、絶縁層と導電層との2層を貼着すること、あるいは、絶縁層と導体層との2層タイプの積層フィルムを貼着することで製造することができる。若しくは、その逆で、絶縁層の一方面上に、離型層を形成した後、この離型層の面上に少なくとも基材フィルムを形成することで製造するようにしてもよい。
【0079】
このような本発明の積層フィルムによれば、少なくとも半導体チップを実装する前に、基材フィルムを剥がし、絶縁層に離型層を形成するようにすれば、上述したように、絶縁層と加熱ツールとが直接接触することがなく、熱融着等が確実に防止される。
【0080】
また、このような積層フィルムによれば、基材フィルムを剥がさずに、COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程を行うようにすれば、製造の際、この基材テープが、絶縁層に粘着されて補強フィルムとして作用する。したがって、このような場合には、製造の際、所望のテープ搬送強度を確保できるという効果がある。
【0081】
何れにしても、本発明の積層フィルムは、半導体チップ実装前に基材フィルムを剥がすことで、絶縁層の導体層とは反対側、すなわち、半導体チップを実装する側とは反対側の面上に離型層を形成できれるものであれば特に限定されるものではない。
【0082】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る離型層転写用フィルムを実施例に基づいて説明する。なお、図1には、一実施形態に係る離型層転写用フィルムを示す。
【0083】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の離型層転写用フィルム1は、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型剤を形成するものであり、転写用フィルム2と、この転写用フィルム2の一面に設けられた転写用離型層3とを具備する。
【0084】
転写用離型層3は、転写用フィルム2の一方面上の全面に設けられていてもよく、連続的又は間欠的な島状に設けられていてもよい。例えば、COFフィルムキャリアテープに転写する場合には、後述するスプロケットホールの間の領域、あるいは後工程にて半導体チップ(IC)を実装する領域に対応して連続的に又は間欠的な島状に設けられていてもよい。すなわち、転写用フィルム2の転写用離型層3の形成領域については、転写用離型層3を転写する対象であるCOFフィルムキャリアテープの半導体チップが実装される領域に対応して、任意に設定すればよい。例えば、多条のフィルムキャリアテープの場合には、2つの塗布用ローラを用いて、長尺の転写用フィルムの面上に幅方向に所定の間隔をおいて離型剤を塗布し、2条の転写用離型層を長手方向に亘って連続的に設けるようにしてもよい。または、転写用フィルムの長手方向に所定の間隔をおいて、例えば、半導体チップの実装間隔と同じ間隔で断続的に、且つ半導体チップの絶縁層への投影面積と同じ面積で、離型層を島状に設けるようにしてもよい。例えば、本実施形態では、転写用フィルム2の全面に転写用離型層3を設けた。また、このような転写用離型層3は、転写用フィルム2の一方面上に離型剤を塗布することにより設けられる。なお、転写用離型層3の厚さは、例えば、0.05〜1μmであり、好ましくは、0.1〜0.5μmである。そして、このような転写用離型層3は、詳しくは後述するが、絶縁層の面上に転写されて離型層となり、半導体チップ実装時の加熱ツールに絶縁層が熱融着するのを有効に防止するものである。
【0085】
以上説明した離型層転写用フィルム1は、少なくともCOF用フレキシブルプリント配線板に半導体チップを実装する前に、COF用フレキシブルプリント配線板を構成する絶縁層に離型層を転写するために用いられる。
【0086】
ここで、このようなCOF用フレキシブルプリント配線板として、図2に示すようなCOFフィルムキャリアテープを例にとって説明するが、COF用FPCについても同様に実施できることはいうまでもない。なお、図2には、一実施形態に係るCOFフィルムキャリアテープ20を示す。
【0087】
図2(a)、(b)に示すように、本実施形態のCOFフィルムキャリアテープ20は、銅層からなる導体層11とポリイミドフィルムからなる絶縁層12とからなるCOF用積層フィルム10を用いて製造されたものであり、導体層11をパターニングした配線パターン21と、配線パターン21の幅方向両側に設けられたスプロケットホール22とを有する。また、配線パターン21は、絶縁層12の表面に連続的に設けられている。さらに、配線パターン21上には、ソルダーレジスト材料塗布溶液をスクリーン印刷法にて塗布して形成したソルダーレジスト層23を有する。なお、配線パターンは、絶縁層の両面に形成されていてもよく(2−metal COFフィルムキャリアテープ)、この場合には、加熱ツールが接触する領域のみに離型剤を塗布、あるいは転写用離型層を転写することで、離型層を形成すればよい。
【0088】
ここで、導体層11としては、銅の他、アルミニウム、金、銀などを使用することもできるが、銅層が一般的である。また、銅層としては、蒸着やメッキで形成した銅層、電解銅箔、圧延銅箔など何れも使用することができる。導体層11の厚さは、一般的には、1〜70μmであり、好ましくは、5〜35μmである。
【0089】
一方、絶縁層12としては、ポリイミドの他、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマーなどを用いることができるが、ピロメリット酸2無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの重合によって得られる全芳香族ポリイミドを用いるのが好ましい。なお、絶縁層12の厚さは、一般的には、12.5〜125μmであり、好ましくは、12.5〜75μm、さらに好ましくは12.5〜50μmである。
【0090】
ここで、COF用積層フィルムは、例えば、銅箔からなる導体層11上に、ポリイミド前駆体やワニスを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して塗布層を形成し、溶剤を乾燥させて巻き取り、次いで、酸素をパージしたキュア炉内で熱処理し、イミド化して絶縁層12とすることにより形成されるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0091】
そして、このような絶縁層12の配線パターン21側とは反対側の面上には、上述した離型層転写用フィルム1により転写用離型層3が転写され、離型層13が形成されている。
【0092】
このようなCOFフィルムキャリアテープ20は、例えば、搬送されながら半導体チップの実装やプリント基板などへの電子部品の実装工程に用いられ、COF実装されるが、この際、絶縁層12の光透過性が50%以上あるので、絶縁層12側から配線パターン21(例えば、インナーリード)をCCD等で画像認識することができ、さらに、実装する半導体チップやプリント基板の配線パターン21を認識することができ、画像処理により相互の位置合わせを良好に行うことができ、高精度に電子部品を実装することができる。
【0093】
次に、上述したCOFフィルムキャリアテープ20の一製造方法を図3及び図4を参照しながら説明する。なお、図3は、本発明の一実施形態に係る積層フィルム及びCOF用積層フィルム並びにこれらの製造方法の一例を示す図であり、図4は、COFフィルムキャリアテープの一製造方法を説明する図である。
【0094】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、積層フィルム100及びCOF用積層フィルム10を形成した後、このCOF用積層フィルム10を用いてCOFフィルムキャリアテープを製造する。
【0095】
具体的には、COF用積層フィルムは、まず、銅箔からなる導体層11上に(図3(a))、ポリイミド前駆体やワニスを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して塗布層12aを形成し(図3(b))、溶剤を乾燥させて巻き取る。次に、キュア炉内で熱処理し、イミド化して絶縁層12とする(図3(c))。次に、基材フィルムとなる転写用フィルム2上に形成された転写用離型層3を絶縁層12の導体層11とは反対側に密着させて積層フィルム100を製造する(図3(d))。ここでの積層フィルム100は、図3(d)に示すように、転写用フィルム2(基材フィルム)、転写用離型層3(離型層13)、絶縁層12、及び導体層11から構成される。そして、このような積層フィルム100を加熱処理した後、転写用フィルム2を剥がし、絶縁層12の導体層11側とは反対側の面上に離型層13を有するCOF用積層フィルム10としたものである(図3(e))。
【0096】
ここで、転写条件としては、例えば、加熱温度を15〜200℃とし、ローラー又はプレスによる荷重を5〜50kg/cm2とし、処理時間を0.1秒〜2時間とするのがよい。また、加熱条件としては、例えば、加熱温度を50〜200℃、好ましくは、100〜200℃とし、加熱時間を1分〜120分、好ましくは、30分〜120分とするのがよい。ここで、転写用フィルム2の材質は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、及び液晶ポリマー等が挙げられる。このような転写用フィルム2の厚さとしては、例えば、15〜100μm、好ましくは、20〜75μmである。
【0097】
次に、図4(a)に示すような導体層11及び絶縁層12からなるCOF用積層フィルム10をパンチング等によって貫通することで、図4(b)に示すようなスプロケットホール22を形成する。このスプロケットホール22は、絶縁層12の表面上から形成してもよく、また、絶縁層12の裏面から形成してもよい。次に、図4(c)に示すように、一般的なフォトリソグラフィー法を用いて、導体層11上の配線パターン21が形成される領域に亘って、例えば、ネガ型フォトレジスト材料塗布溶液を塗布してフォトレジスト材料塗布層30を形成する。勿論、ポジ型フォトレジスト材料を用いてもよい。さらに、スプロケットホール22内に位置決めピンを挿入して絶縁層12の位置決めを行った後、フォトマスク31を介して露光・現像することで、フォトレジスト材料塗布層30をパターニングして、図4(d)に示すような配線パターン用レジストパターン32を形成する。次に、配線パターン用レジストパターン32をマスクパターンとして導体層11をエッチング液で溶解して除去し、さらに配線パターン用レジストパターン32をアルカリ溶液等にて溶解除去することにより、図4(e)に示すように配線パターン21を形成する。続いて、必要に応じて配線パターン21全体にスズメッキなどのメッキ処理を行った後、図4(f)に示すように、例えば、スクリーン印刷法を用いて、ソルダーレジスト層23を形成する。そして、ソルダーレジスト層23で覆われていないインナーリード及びアウターリードに必要に応じて金属メッキ層を施す。金属メッキ層は特に限定されず、用途に応じて適宜設ければよく、スズメッキ、スズ合金メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、金合金メッキなどを施す。
【0098】
以上説明した実施形態では、離型層13の形成をスプロケットホール22形成する前に行ったが、これに限定されず、COF用積層フィルム10の導体層12をパターニングする前に行ってもよく、配線パターン用レジストパターン32をアルカリ溶液等にて溶解除去した後、ソルダーレジスト層23を設ける前に行うようにしてもよい。また、ソルダーレジスト層23を設けた後のソルダーレジスト製造工程最後に離型層13を形成するようにしてもよい。このように離型層13を形成すると、離型層13がエッチング液やフォトレジストの剥離液等に曝されないので、離型効果が高いという利点がある。なお、ここで製造工程最後とは、製品検査工程の前を意味する。
【0099】
このように、本発明の離型層は、配線パターン21を形成するフォトリソグラフィー工程後そして半導体チップとのボンディング前までに形成するのが好ましい。これはフォトレジスト層の剥離工程で離型層が溶解する可能性があるからである。したがって、フォトレジスト工程終了直後、又はメッキ処理後、さらには、ソルダーレジスト層23形成後等に離型層を設けるのが好ましい。勿論、フォトリソグラフィー工程より前に行ってもよい。
【0100】
また、本実施形態のように、予めCOF用積層フィルム10に離型層13を設けるようにすれば、COFフィルムキャリアテープ20を製造する際、所望のテープ搬送強度を確保することができるという効果もある。そして、本実施形態では、基材である転写用フィルム2を剥がして、COF用積層フィルム10としたが、これに限定されず、COF用積層フィルム10に予め離型層転写用フィルム1を貼って、そのまま転写用フィルム2を剥がさずに各製造工程を行い、製造工程最後に転写用フィルム2を剥がすようにしてもよい。これにより、テープ搬送強度を十分に確保できる。
【0101】
さらに、本発明では、上述したように、転写用フィルム2の一方面上に転写用離型層3を設けたが、図5に示すように、転写用フィルム2と転写用離型層3Aの間に粘着層4を設けるようにしてもよい。図5に示す離型層転写用フィルム1Aは、例えば、まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる転写用フィルム2の一方面上に、厚さ3〜25μm程度の粘着剤を塗布し、転写用離型層3Aのみと剥離可能な粘着層4を形成する(図5(a))。次に、この粘着層4の面上に離型剤を塗布し、転写用離型層3Aを形成することにより製造される(図5(b))。そして、このような構成の離型層転写用フィルム1Aは、基材フィルムとなる転写用フィルム2上に粘着層4を介して形成された転写用離型層3Aを絶縁層12の導体層11とは反対側に密着させて積層フィルム100Aを製造する(図5(c))。なお、ここでの積層フィルム100Aは、図5(c)に示すように、転写用フィルム2(基材フィルム)、粘着層4、転写用離型層3A(離型層13A)、絶縁層12、及び導体層11から構成される。そして、このような積層フィルム100Aを加熱処理した後、転写用フィルム2を剥がし、絶縁層12の導体層11側とは反対側の面上に離型層13Aを有するCOF用積層フィルム10Aを製造する(図5(d))。このとき、粘着層4は、転写用フィルム2とは粘着しているが離型層13Aとは剥離可能であるため、転写用フィルム2を剥がす際に同時に剥がれる。なお、ここでの転写条件としては、上述したのと同様であり、特に限定されるものではない。また、転写フィルム2を剥がすタイミングについても、COFフィルムキャリアテープの製造工程前としてもよく、勿論、製造工程後としてもよい。このように、製造工程後に転写フィルム2を剥がすようにすれば、所望の搬送強度を確保することができる。また、製造工程前に剥がす場合でも、その後の製造工程において離型層13Aが形成されているため、COF用積層フィルム10Aの搬送強度を十分に確保できる。
【0102】
何れにしても、本発明に係る離型層転写用フィルム及び積層フィルムは、上述した構成のものに限定されず、少なくとも半導体チップ実装前に、転写用フィルム又は基材フィルムを剥がすことで、後述する加熱ツールと絶縁層との間の領域に対応して、絶縁層の半導体チップが実装される側とは反対側の面上に、特定のシリコーン系化合物からなる離型層を形成できるものであればよい。
【0103】
ここで、本発明では、上述したようにして製造されたCOFフィルムキャリアテープ20は、図6(a)及び図6(b)に示すように、半導体チップ30を実装することにより製造される。すなわち、半導体チップ30をチップステージ41上に載置し、COFフィルムキャリアテープ20を搬送する。この状態で、所定位置に位置決めした後、上部クランパー42が下降すると共に下部クランパー43が上昇してCOFフィルムキャリアテープ20を固定し、この状態で加熱ツール45が下降してテープを押し付け、加熱しながらさらに下降してCOFフィルムキャリアテープ20のインナーリードを半導体チップ30のバンプ31に所定時間押圧し、両者を接合する。なお、接合後、樹脂封止を行い、半導体装置とする。
【0104】
なお、加熱ツール45の温度は、押圧時間、圧力等の条件によっても異なるが、200℃以上、好ましくは350℃以上である。本発明では、このように加熱ツール45の温度を高温にしても、COFフィルムキャリアテープ20の加熱ツール45との接触面に離型層13が設けられているので、加熱ツール45と熱融着することがない。すなわち、本発明によると、接合条件の温度を十分に高くできるので、十分な接合強度が確保でき、逆に、一定の接合強度を得るのに、加熱温度を高くすることにより、圧着時間を短縮することができるという利点がある。
【0105】
(実施例1)
まず、厚さ50μmのPETフィルムからなる転写用フィルムの一方面上に塗布法によりシリコーン系離型剤を塗布し、厚さ0.1μmのシランを含むシリコーン系化合物からなる転写用離型層を形成した離型層転写用フィルムを用意した。次に、導体層としての厚さ9μmの超低粗度銅箔上に、絶縁層として塗布法により厚さ40μmのポリイミド層を形成し、さらに、この絶縁層の導体層とは反対側の面上に、上述した離型層転写用フィルムを用いて転写法により厚さ0.1μmの転写用離型層からなる離型層を設けて実施例のCOF用積層フィルムとした。なお、シリコーン系化合物からなる離型層を転写した後、120℃で加熱処理した。
【0106】
(実施例2)
実施例1でシリコーン系化合物からなる離型層を転写後、加熱処理を行わない以外は同様にして実施例2のCOF用積層フィルムとした。
【0107】
(実施例3)
実施例1において、シリコーン系化合物からなる離型層を形成する離型剤として、シラザン化合物を含有するSEPA−COAT(商品名:信越化学工業社製)を用いて転写用離型層を形成した離型層転写用フィルムを用意し、この離型層転写用フィルムにより絶縁層の面上に離型層を転写した以外は同様にして実施例3のCOF用積層フィルムとした。
【0108】
(実施例4)
実施例1において、シリコーン系化合物からなる離型層を形成する離型剤として、シリカゾルを含有するコルコートP(商品名:コルコート株式会社)を用いた以外同様に転写用離型層を形成した離型層転写用フィルムを用意した。そして、この離型層転写用フィルムを用いて転写する際、120℃で加熱すると共に20kg/cm2の荷重を加えて、30分間ホットプレスすることにより、転写用離型層からなる離型層を形成して実施例4のCOF用積層フィルムとした。
【0109】
(比較例1)
離型層を設けない以外は実施例1と同様にしてCOF用積層フィルムとした。
【0110】
(試験例1)
実施例1〜4および比較例1のCOF用積層フィルムの導体層をパターニングし、その後、配線パターン全体にスズメッキを施した後、ソルダーレジスト層を形成し、COFフィルムキャリアテープを製造した。そして、これら各COFフィルムキャリアテープを用い、加熱ツール温度を260℃〜440℃の範囲で変化させながら離型層側へ押し当てて半導体チップを実装し、加熱ツールとの付着性を観察した。この結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
この結果、比較例1では300℃を超えると付着が生じたが、実施例2では320℃を超えた際に一部に付着が生じる程度まで付着性が良好になり、実施例1、3及び4では400℃を越えるまでは付着が全く生じなかった。なお、実施例2は、比較例1と差はあるものの、効果は顕著ではなかったが、加熱融着温度は、加熱ツール、実装する半導体チップの種類、実装品の用途等により異なり、一般的には200〜350℃程度の場合もあるので、付着温度が上昇する点では有効である。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の離型層転写用フィルムは、特定のシリコーン系化合物からなる転写用離型層を絶縁層の面上に離型層として転写できるので、COF用フレキシブルプリント配線板に容易に離型層を形成できる、絶縁層が加熱ツールに熱融着することがなく、半導体チップ実装ラインの信頼性及び生産性を向上させるという効果を奏する。
【0114】
また、本発明の積層フィルムについても、単に基材フィルムを剥がすことで、特定のシリコーン系化合物からなる離型層を絶縁層の面上に比較的容易に形成できるので、上述した離型層転写用フィルムと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る離型層転写用フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るCOFフィルムキャリアテープを示す概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る積層フィルム及びCOF用積層フィルム並びにこれらの製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るCOFフィルムキャリアテープの製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る離型層転写用フィルム及び積層フィルムの製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置及びその製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1 離型層転写用フィルム
2 転写用フィルム(基材フィルム)
3,3A 転写用離型層
10,10A COF用積層フィルム
11 導体層
12 絶縁層
13,13A 離型層
20 COFフィルムキャリアテープ
21 配線パターン
22 スプロケットホール
23 ソルダーレジスト層
30 半導体チップ
31 バンプ
100,100A 積層フィルム
Claims (19)
- COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を形成するための離型層転写用フィルムであって、転写用フィルムと、この転写用フィルムの一面に設けられた転写用離型層とを具備し、前記転写用離型層が、シラザン化合物を含有する離型剤により形成され且つ前記絶縁層に転写可能であることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1において、前記転写用離型層が、前記離型剤の溶液を塗布し、加熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1又は2において、前記転写用離型層は、前記絶縁層に密着させた後、加熱処理することにより転写されることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記転写用離型層は、前記転写用フィルムの一方面に連続的に又は間欠的な島状に設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記転写用離型層は、前記絶縁層に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜5の何れかにおいて、前記転写用離型層は、前記COF用フレキシブルプリント配線板の少なくとも二列のスプロケットホールの列間に存在する前記配線パターンの形成領域に対応して設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項6において、前記配線パターンの形成領域が少なくとも二列以上あり、当該配線パターンの列毎に対応して前記転写用離型層が多条に設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜7の何れかにおいて、前記転写用フィルムと前記転写用離型層の間には、当該転写用離型層のみと剥離可能な粘着層が設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜8の何れかにおいて、前記転写用フィルムは、前記COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程にて前記絶縁層に粘着されて補強フィルムとして使用されることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 請求項1〜9の何れかにおいて、前記転写用離型層の面上には、当該転写用離型層と剥離可能な剥離フィルムが設けられていることを特徴とする離型層転写用フィルム。
- 基材フィルムと、該基材フィルムの表面にシロキサン化合物、シラン化合物、及びシリカゾルから選択される少なくとも一種を含有する離型剤により形成された離型層と、該離型層の前記基材フィルムとは反対側の面上に設けられてCOF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層と、該絶縁層の前記離型層側とは反対側の面上に設けられた導体層とを有し、前記基材フィルムは、前記COF用フレキシブルプリント配線板の製造工程にて前記絶縁層に粘着されて補強フィルムとして使用され且つ前記COF用フレキシブルプリント配線板に半導体チップを実装する前に剥がされるものであり、当該基材フィルムが剥がされた後には前記絶縁層上に前記離型層が残ることを特徴とする積層フィルム。
- 請求項11において、前記離型層が、シラザン化合物を含有する離型剤により形成されたことを特徴とする積層フィルム。
- 請求項11又は12において、前記基材フィルムと前記離型層の間には、当該離型層のみと剥離可能な粘着層が設けられていることを特徴とする積層フィルム。
- 請求項11〜13の何れかにおいて、前記基材フィルムは、加熱処理した後、剥がされるものであることを特徴とする積層フィルム。
- 請求項11〜14の何れかにおいて、前記基材フィルムが剥がされた後に残る離型層は、前記絶縁層の一方面に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とする積層フィルム。
- COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に離型層を形成するための離型層転写用フィルムであって、転写用フィルムと、この転写用フィルムの一面に設けられた転写用離型層とを具備し、前記転写用離型層が、シロキサン化合物、シラン化合物、及びシリカゾルから選択される少なくとも一種を含有する離型剤により形成され且つ前記絶縁層に転写可能である離型層転写用フィルムの前記転写用離型層側を、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に積層する工程と、この離型層転写用フィルムを積層した絶縁層の反対側に設けられた導体層に配線パターンを形成してCOF用フレキシブルプリント配線板を製造する工程と、前記転写用フィルムを剥がして前記転写用離型層を前記絶縁層に転写して絶縁層に離型層を有するCOF用フレキシブルプリント配線板とする工程とを具備することを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法。
- 請求項2〜10の何れかの離型層転写用フィルムの前記転写用離型層側を、COF用フレキシブルプリント配線板の材料となる絶縁層に積層する工程と、この離型層転写用フィルムを積層した絶縁層の反対側に設けられた導体層に配線パターンを形成してCOF用フレキシブルプリント配線板を製造する工程と、前記転写用フィルムを剥がして前記転写用離型層を前記絶縁層に転写して絶縁層に離型層を有するCOF用フレキシブルプリント配線板とする工程とを具備することを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法。
- 請求項16又は17において、前記転写用フィルムを剥がす際に、加熱処理することで前記離型層が前記絶縁層に転写されることを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法。
- 請求項16〜18の何れかにおいて、前記離型層は、前記絶縁層の一方面に連続的に又は間欠的な島状に転写されることを特徴とするCOF用フレキシブルプリント配線板の製造方法。
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