JP3914062B2 - 回転霧化頭型塗装装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転可能に支持する装置本体とを備えて成る回転霧化頭型塗装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗料(液体塗料)に高電圧を印加して例えば自動車の車体等の被塗装物に静電塗装する塗装装置が一般的に知られており、このような塗装装置の一例として回転霧化頭型塗装装置がある。この回転霧化頭型塗装装置においては、回転霧化頭が高速回転されると、塗料は遠心力の作用により回転霧化頭の前面から端部に向かって流れて端部で微粒化されて放出され、被塗装物に塗着される。この場合、回転霧化頭の外周にシェーピングエアーキャップを設け、このシェーピングエアーキャップに設けられたシェーピングエアー噴射口からシェーピングエアーを回転霧化頭の外周に向かって噴射している。これにより、回転霧化頭の外周端部から放出された塗料が、シェーピングエアーに衝突して回転霧化頭の回転軸の軸方向へ向かって飛ぶようにしている。
【0003】
上記構成の場合、回転霧化頭の外周端部と、シェーピングエアー噴射口との間でエアーの乱流が発生することがあり、この乱流により塗料の微粒子が回転霧化頭の背面側へ逆流して該背面に付着することがある。そして、付着した塗料の積層が進むと、この積層した塗料が脱落し、被塗装物の塗膜に付着するという不具合が発生した。
【0004】
上記不具合を解消するために、シェーピングエアーキャップの内方に溶剤噴射ノズルを設けた構成があり、この構成の一例を図4に示す。この図4に示すように、シェーピングエアーキャップ1の内方には、溶剤噴射ノズル2が設けられており、この溶剤噴射ノズル2から溶剤が矢印で示すように回転霧化頭3の背面4に向かって噴射されるように構成されている。そして、上記噴射された溶剤により、回転霧化頭3の背面4が洗浄されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記溶剤噴射ノズル2を設けた構成の場合、溶剤の噴射方向と回転霧化頭3の回転方向のなす角度が90度であることから、回転霧化頭3が高速回転されたときに、回転霧化頭3の背面4に噴射された溶剤は周囲に飛散するようになる。このとき、飛散した溶剤の一部がシェーピングエアーキャップ1の内周面部5に付着する。そして、この付着した溶剤は、塗装の実行時にエアーの流れや重力等によってシェーピングエアーキャップ1から脱落して、被塗装物の塗膜に付着するという問題点が発生した。
【0006】
この問題点を解消するために、本発明者は、溶剤噴射ノズル2から噴射される溶剤を微粒子化すれば、溶剤がシェーピングエアーキャップ1の内周面部に付着することがなくなるのではないかと考えた。そして、溶剤噴射ノズル2から噴射される溶剤を微粒子化するために、溶剤噴射ノズル2の噴射口の内径寸法を小さくする構成を考えたが、このように構成すると、溶剤噴射ノズル2の製造コストがかなり高くなってしまう。また、溶剤噴射ノズル2の噴射口がすぐに目詰まるを起こすという問題点も発生した。このため、溶剤噴射ノズル2から噴射される溶剤を微粒子化することは、実用レベルでは困難であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、溶剤噴射ノズルから噴射される溶剤がシェーピングエアーキャップの内周面部に付着することを防止することができる回転霧化頭型塗装装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の回転霧化頭型塗装装置は、回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転可能に支持する装置本体とを備えて成る装置において、前記回転霧化頭の外周に向かってシェーピングエアーを噴射するシェーピングエアー噴射口が設けられたシェーピングエアーキャップと、このシェーピングエアーキャップの内方に設けられ、内部に1本の細径通路を有し溶剤とエアーが交互に供給されることにより前記回転霧化頭の背面に向かって溶剤を微粒化状態で噴射する溶剤噴射ノズルと、この溶剤噴射ノズルの先端部の内部に設けられ、前記1本の細径通路の一部分を構成する第1の細径通路と、前記溶剤噴射ノズルの内部に前記第1の通路に連通するように設けられ、前記1本の細径通路の一部分を構成するものであって前記第1の細径通路よりも内径が太い第2の細径通路と、前記第1の細径通路に挿入嵌合され、前記第2の細径通路の内部まで延びる長さを有する筒状部材とを備えたところに特徴を有するものである。
【0009】
上記構成の溶剤噴射ノズルによれば、筒状部材の内径寸法をそれほど小さくしなくても、溶剤噴射ノズルの筒状部材から噴射される溶剤を微粒子化できることを、本発明者は試作や実験等により確認した。これにより、溶剤がシェーピングエアーキャップの内周面部に付着することがなくなる。そして、溶剤噴射ノズルの製造コストもそれほど高くならないし、また、溶剤噴射ノズルの筒状部材が目詰まりすることもほとんどない。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例について、図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、図2は本実施例の回転霧化頭型塗装装置の概略構成を示す縦断面図である。尚、本実施例の回転霧化頭型塗装装置の構成のうちの、後述する溶剤噴射ノズル以外の構成は、周知の回転霧化頭型塗装装置の構成と同じである。
【0011】
本実施例の回転霧化頭型塗装装置の装置本体11は、図2に示すように、ハウジング12と、このハウジング12にエアベアリング13を介して回転可能に支承された回転霧化頭14と、この回転霧化頭14の外周に向かってシェーピングエアーを噴射する機能を有するシェーピングエアーキャップ15と、装置本体11の外装を構成するほぼ円筒状のカバー16とを備えて構成されている。
【0012】
上記ハウジング12の図2中の左面部の中央部には、収容凹部17が形成されており、この収容凹部17の内部にエアモータ18を構成するエアタービン19が回転可能に収容されている。エアタービン19は、円筒状の回転軸20の右端部に一体に回転するように取り付けられている。この回転軸20は、ハウジング12の左面部に取り付けられたエアベアリング13に回転可能に支承されている。上記回転軸20の左端部には、回転霧化頭14が一体に回転するように取り付けられている。尚、ハウジング12には、収容凹部17内にエアを供給するエア供給通路(図示しない)と、収容凹部17内のエアを排気するエア排気通路(図示しない)とが設けられている。
【0013】
そして、ハウジング12には、中空状の固定軸部21が上記回転軸20の内部に挿通すると共に回転霧化頭14まで達するように突設されている。この固定軸部21及びハウジング12には、回転霧化頭14に塗料等を供給する塗料供給通路22が設けられている。上記回転霧化頭14に供給された塗料は、回転霧化頭14が高速回転されることにより、回転霧化頭14の外周端部から霧化状態で放出されるように構成されている。尚、装置本体11内には、回転霧化頭14から放出される塗料に静電気(高電圧)を帯電させるための高電圧印加手段(図示しない)が配設されている。
【0014】
また、シェーピングエアーキャップ15は、リング状に形成されており、その円環状の先端面部には多数のシェーピングエアー噴射口23が設けられている。そして、シェーピングエアーキャップ15の内部には、上記各シェーピングエアー噴射口23に連通するシェーピングエアー供給通路24が設けられている。このシェーピングエアー供給通路24は、図示しないシェーピングエアー供給源に接続されている。この構成の場合、シェーピングエアー噴射口23から噴射されたシェーピングエアーは、回転霧化頭14の外周に向かって噴射されるようになっている。
【0015】
さて、エアベアリング13の図2中における左端部上部には、溶剤噴射ノズル25が左方へ突出するように設けられている。これにより、溶剤噴射ノズル25は上記シェーピングエアーキャップ15の内方に位置するように設けられている。そして、エアベアリング13及びハウジング12の内部には、溶剤噴射ノズル25に溶剤(例えばシンナー)とエアとを供給する溶剤供給通路26が設けられている。この溶剤供給通路26には、溶剤供給ホース27が接続されており、この溶剤供給ホース27には図示しない切換バルブ(CCV)を介して溶剤供給源(図示しない)及びエア供給源(図示しない)が接続されている。
【0016】
この構成の場合、上記切換バルブを溶剤供給源側に切り換えると、溶剤供給源から溶剤が溶剤供給ホース27及び溶剤供給通路26を通って溶剤噴射ノズル25へ供給されるように構成されている。また、上記切換バルブをエア供給源側に切り換えると、エア供給源からエアが溶剤供給ホース27及び溶剤供給通路26を通って溶剤噴射ノズル25へ供給されるように構成されている。これにより、溶剤噴射ノズル25の先端から溶剤が回転霧化頭14の背面28に向かって噴射される。このとき、溶剤は、詳しくは後述するようにして、微粒化状態で噴射されるように構成されている。
【0017】
ここで、溶剤噴射ノズル25の具体的構成について、図1を参照して説明する。この溶剤噴射ノズル25の先端部の内部には、第1の細径通路29が設けられている。そして、溶剤噴射ノズル25の内部には、第1の細径通路29よりも内径が太い第2の細径通路30が第1の細径通路29に連通するように設けられている。
【0018】
更に、溶剤噴射ノズル25の第1の細径通路29の内部には、筒状部材31が挿入嵌合されている。この筒状部材31は、その右端部が第2の細径通路30の内部まで延びている。即ち、筒状部材31は、第2の細径通路30の内部まで延びる長さを有している。尚、筒状部材31の内径寸法は、例えば0.7mmに設定されている。そして、筒状部材31の外径寸法と、第1の細径通路29の内径寸法とがほぼ等しくなるように設定されている。また、第2の細径通路30の内径寸法は、例えば3.0mmに設定されている。
【0019】
そして、このような構成の溶剤噴射ノズル25から溶剤を噴射すると、溶剤は微粒化されて噴射される。この場合、切換バルブを切換動作させることにより、溶剤供給源から溶剤を例えば0.5秒吐出させて溶剤噴射ノズル25内に供給した後、エア供給源からエアを例えば5.0秒吐出させて溶剤噴射ノズル25内に供給するサイクルの溶剤・エア切換供給動作を、必要な時間だけ繰り返し実行するように構成されている。尚、溶剤供給源からの溶剤の吐出量は、例えば300cc/min以下に設定されている。また、エア供給源からのエアの吐出圧力は、例えば0.2MPa以上に設定されている。
【0020】
ここで、溶剤噴射ノズル25から噴射される溶剤が微粒化される動作(理由)について考察してみる。切換バルブを上述したサイクル(タイミング)で切り換えることにより、溶剤とエアを交互に溶剤噴射ノズル25内に供給すると、溶剤噴射ノズル25の第2の細径通路30内には、2つの流体(溶剤とエア)が混入した状態となる。このとき、エアの粘度は溶剤の粘度よりも低いことから、乱流が生じ、その結果、溶剤噴射ノズル25の筒状部材31から塗料が微粒化状態で噴射されるようになる。
【0021】
この場合、溶剤噴射ノズル25の第2の細径通路30内に筒状部材31の右端部が延びて突出しているので、第2の細径通路30内の流体が筒状部材31内に入ろうとするときの流入損失が大きくなる。このとき、エアの粘度が溶剤の粘度よりも低いため、エアの方が筒状部材31内に積極的に流入するようになる。従って、筒状部材31(溶剤噴射ノズル25)の先端から、エアが微量の溶剤を含んだ状態で噴出されるようになり、溶剤が微粒化状態で噴射されるのである。
【0022】
そして、溶剤噴射ノズル25から噴射された溶剤は、微粒化状態であると共に、軸方向(図1及び図2中の左方)への流速が与えられているので、高速回転する回転霧化頭14の背面28の表面に衝突しても跳ね返ることがなくなり、更に、溶剤は軸方向前方へ飛散するようになる。この結果、溶剤はシェーピングエアーキャップ15の内周面部に付着することがなくなる。
【0023】
また、本実施例においては、溶剤噴射ノズル25の筒状部材31の内径寸法を0.7mmと比較的大きく設定することが可能であったので、筒状部材31が目詰まりすることをほとんど防止できる。
【0024】
一方、本実施例のような構成の回転霧化頭型塗装装置においては、回転霧化頭14の背面28の洗浄作業を終了した後、溶剤噴射ノズルへの溶剤とエアの供給を停止したときに、溶剤供給経路内に排出されずに残っている溶剤がある。この残留溶剤は、装置本体11が移動されたとき、特に、装置本体11が下向きに向けられたときに、溶剤噴射ノズル内から外へ流出しようとし、この流出した溶剤が被塗装物の塗装面に滴下してしまうことがある。
【0025】
これに対して、上記実施例では、図3に示すように、溶剤噴射ノズル25内において、筒状部材31の上端部が第2の細径通路30内にL寸法分だけ突出している。このため、装置本体11が下向きに向けられたときなどに、上記残留溶剤が、図3に示すように、L寸法の高さまで貯溜されるようになる。従って、残留溶剤が溶剤噴射ノズル25内から外へ流出すること(ひいては、被塗装物の塗装面に滴下してしまうこと)を防止できる。尚、本実施例では、上記L寸法を例えば5mmに設定し、第1の細径通路29の長さ寸法も例えば5mmに設定している。
【0026】
ちなみに、従来周知の構成においては、溶剤噴射ノズルの先端部にバルブを設け、このバルブを閉めることにより、残留溶剤の滴下を防止する対策が考えられているが、上記実施例によれば、このような精密小形のバルブを設ける必要がなくなる。即ち、装置本体11の構成を簡単化並びに小形化することができる。
【0027】
尚、上記実施例では、第1の細径通路29の長さ寸法、筒状部材31の内径寸法及び突出部分の長さ寸法Lを前述したように設定したが、これは一例であり、必要に応じて適宜変更すれば良い。また、溶剤/エアーの切換バルブの切換タイミング(サイクル)等のデ−タや、溶剤の吐出量や、エアの供給圧力等の各データも前述した各値に限られるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明は以上の説明から明らかなように、溶剤噴射ノズルの先端部の内部に設けられ1本の細径通路の一部分を構成するた第1の細径通路を備えると共に、溶剤噴射ノズルの内部に第1の通路に連通するように設けられ1本の細径通路の一部分を構成するものであって第1の細径通路よりも内径が太い第2の細径通路を備え、そして、第1の細径通路に挿入嵌合され第2の細径通路の内部まで延びる長さを有する筒状部材を備えるように構成したので、溶剤噴射ノズルから噴射される溶剤を微粒化できて、溶剤がシェーピングエアーキャップの内周面部に付着することを防止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す溶剤噴射ノズル周辺の拡大縦断面図
【図2】回転霧化頭型塗装装置の縦断面図
【図3】溶剤噴射ノズルの拡大部分縦断面図
【図4】従来構成を示す図1相当図
【符号の説明】
11は装置本体、12はハウジング、13はエアベアリング、14は回転霧化頭、15はシェーピングエアーキャップ、19はエアタービン、20は回転軸、23はシェーピングエアー噴射口、25は溶剤噴射ノズル、28は背面、29は第1の細径通路、30は第2の細径通路、31は筒状部材を示す。

Claims (1)

  1. 回転霧化頭と、この回転霧化頭を回転可能に支持する装置本体とを備えて成る回転霧化頭型塗装装置において、
    前記回転霧化頭の外周に向かってシェーピングエアーを噴射するシェーピングエアー噴射口が設けられたシェーピングエアーキャップと、
    このシェーピングエアーキャップの内方に設けられ、内部に1本の細径通路を有し溶剤とエアーが交互に供給されることにより前記回転霧化頭の背面に向かって溶剤を微粒化状態で噴射する溶剤噴射ノズルと、
    この溶剤噴射ノズルの先端部の内部に設けられ、前記1本の細径通路の一部分を構成する第1の細径通路と、
    前記溶剤噴射ノズルの内部に前記第1の細径通路に連通するように設けられ、前記1本の細径通路の一部分を構成するものであって前記第1の細径通路よりも内径が太い第2の細径通路と、
    前記第1の細径通路に挿入嵌合され、前記第2の細径通路の内部まで延びる長さを有する筒状部材とを備えたことを特徴とする回転霧化頭型塗装装置。
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