JP3913765B1 - 偏光位相差板 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成により、偏光位相差板におけるフレネル反射を有効に抑制して光のロスを低減させることができ、ひいては、光学特性を向上させることができるとともに、コストを削減することができ、あわせて、製造不良を低減させることができる優れた品質の偏光位相差板を提供すること。
【解決手段】回折格子7の凸部8の断面形状が、その底部から頂部にわたってテーパ形状に形成され、少なくとも互いに隣位する凸部8同士の間に平坦部9が形成され、回折格子7の周期が、使用する光の波長以下の大きさに形成されていること。
【選択図】 図

Description

本発明は、偏光位相差板に係り、特に、微細構造に起因した構造複屈折を利用した偏光位相差板に関する。
偏光位相差板は、入射した光の偏光状態を複屈折によって変換させるものであり、このような偏光位相差板としては、λ/4板やλ/2板などがよく知られている。
偏光位相差板には、大きく分けて次の3つのタイプがある。
まず、1つ目のタイプは、光学的に一軸性の光学用高分子フィルムを延伸させて、使用する光の波長λに対して複屈折の総量(詳細は後述する)がλ/4(90°)またはλ/2(180°)となるように形成された偏光位相差板である。
次に、2つ目のタイプは、水晶のような一軸性の結晶を光学研磨して膜厚を調整することにより、複屈折の総量が特定の波長λに対してλ/4(90°)となるように形成された偏光位相差板である。
最後に、3つ目のタイプは、微細な周期構造から生じる構造複屈折を利用した偏光位相差板である。
このような3つのタイプの偏光位相差板の主たる使用目的は、いずれも、偏光の変換素子としての使用目的であった。
具体的には、直線偏光の光を偏光位相差板の速軸(進相軸)または遅軸(遅相軸)に対して45°の方向に入射させることによって、当該直線偏光を円偏光に変換することや、逆に、円偏光を偏光位相差板に入射して当該円偏光を直線偏光に変換することが行われていた。
前述した構造複屈折についてさらに詳述すると、この構造複屈折は、光の半波長程度以下の領域において、異方的な形状の1次元周期構造から複屈折が生じる現象として知られている。
この構造複屈折の一例として、例えば、図1に示すように、特に、0次回折格子しか存在しないような微少サイズの領域において、誘電率εを有する媒質(空気層)と誘電率εを有する媒質(回折格子1の凸部2)との2種類の媒質が周期的に存在し、z軸方向(図1における縦方向)に光が入射したような場合を考える。
この場合、x軸方向(図1における横方向)、z軸方向の平均的な誘電率は、有効屈折率法という考え方から次式のように表されることが知られている。
ε‖(0)=(1−f)・ε+f・ε (充填率:f=w/Λ) (1−1)
1/ε⊥(0)=(1−f)/ε+f/ε (1−2)
但し、(1−1)、(1−2)の各式は、媒質がx軸、y軸方向に無限に広がっていると仮定した場合に成立する式である。また、各式は、誘電率ε、εの各媒質の周期Λ(図1参照)が、光の波長より遙かに小さいと仮定した場合に近似的に成立する式である。なお、(1−1)式におけるfは、充填率と呼ばれるパラメータであり、周期Λに対する誘電率εを有する媒質(凸部2)のx軸方向の寸法の比w/Λとして表される。
ここで、屈折率nの2乗が誘電率εである。また、複屈折量Δn、すなわち、偏光位相差板の単位高さ当たりに生じる複屈折の量(換言すれば、偏光位相差量)は、上式におけるε‖(0)−ε⊥(0)の量に比例する。さらに、偏光位相差板全体に生じる複屈折の量、すなわち、複屈折の総量は、回折格子1の格子の深さd(換言すれば、凸部2の高さ)にほぼ比例する。
(1−1)、(1−2)の各式から分かるように、構造複屈折を利用した一軸性の媒質を用いる場合には、複屈折量Δnひいては複屈折の総量を、回折格子の周期構造の充填率fの値(充填ファクタ)を変えることによって人工的にコントロールできるという長所がある。
このことに関しては、Optical Review Vol.2(1995)92〜99に詳しく記述されている。このような場合の正確な複屈折量Δnおよび複屈折の総量は、厳密な電磁解析法の1つであるRCWA法(厳密波結合法)でほぼ正確に計算できることが知られている。
また、このような構造複屈折を有する偏光位相差板において、光の損失を少なくするためには、高次の回折光が生じないような周期Λのサイズにする必要がある。
ここで、1次以上の回折光が生じない条件式として、次の(2)式が成立する必要がある。
(Λ/λ)<1/(max[n、n]+n・sinθmax) (2)
但し、(2)式において、Λは、偏光位相差板を構成する回折格子の周期であり、λは、使用する光の波長であり、θは、偏光位相差板に対する光の入射角度である。また、(2)式において、nは、偏光位相差板を構成する基材の屈折率であり、nは、入射側の媒質(空気)の屈折率である。
ここで、使用する光の波長λ=650nm、屈折率n=1.512、入射角度0度と仮定すると、Λ<0.429μmとなる。
つまり、光の損失の少ない偏光位相差板を形成するには、周期を429nmより小さくしなければならないことが分かる。
この種の構造複屈折を利用した偏光位相差板としては、これまでにも種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、偏光位相差板として、図2に示すようなサブ波長領域のラメラ形状の回折格子1を利用した波長板4が開示されている。
特開2003−207636号公報 特開2005−99099号公報 特開2005−44429号公報
しかしながら、従来の偏光位相差板には、以下に述べるような光学特性上または製造上の問題が生じていた。
すなわち、従来は、偏光位相差板の厚み方向の表面において、偏光位相差板を構成する回折格子と空気層との屈折率の違いからフレネル反射が生じ、このフレネル反射によって、偏光位相差板を透過する透過光の光パワーの損失(ロス)が増加するといった問題が生じていた。
さらに、従来は、偏光位相差板の厚み方向の一方の表面におけるフレネル反射と、偏光位相差板の厚み方向の他方の表面におけるフレネル反射との間で干渉(ファブリーペロー多重干渉)が生じ、これによって、特に、使用する光がレーザ光のような干渉性が高い光の場合には、透過出射光の強度が振動して不安定になりやすいといった問題が生じていた。
これらの問題は、偏光位相差板の品質を悪化させる原因となっていた。
このようなフレネル反射を除去する方法としては、例えば、特許文献2に示すように、偏光位相差板(特許文献2における波長板)の表面に、真空蒸着等を用いることによって、誘電体多層膜からなる反射防止層をコーティングするという方法がある。この場合、誘電体多層膜は、SiO、TiO層などの高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層することによって形成することができる。
しかしながら、このような反射防止膜を採用した場合には、反射防止膜を真空中でコーティングする装置が必要であるためコスト的に不利である。
さらに、多くの場合、誘電体多層膜には酸化物等の無機物質が用いられるため、特に、偏光位相差板が高分子である場合には、反射防止コーティングと偏光位相差板との間の密着性がよくないことが多く、また、熱膨張係数の違いから、反射防止膜の膜剥がれやクラック等の製造不良が生じやすいという問題があった。
なお、特許文献3に記載の発明では、波長板の表面でのフレネル反射を減少させるために、微細周期構造の先端をテーパ形状にしているが、フレネル反射を減少させるために有効なテーパ形状やテーパ角度などを特定するパラメータについては何ら記載されておらず、反射防止に有効な波長帯域についても何ら述べられていない。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、簡易な構成により、偏光位相差板におけるフレネル反射を有効に抑制して光のロスおよび透過出射光の強度の振動を低減させることができ、ひいては、光学特性を向上させることができ、コストを削減することができ、製造不良を低減させることができる優れた品質の偏光位相差板を提供することを目的とするものである。
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る偏光位相差板の特徴は、基板の厚み方向における少なくとも一方の表面に、複数の凸部が整列された一定の周期を有する回折格子が形成され、前記回折格子の構造複屈折を利用可能に形成された偏光位相差板であって、前記凸部の断面形状が、その底部から頂部にわたテーパを有するような三角形状に形成され、かつ、少なくとも互いに隣位する凸部同士の間に平坦部が形成され、さらに、前記回折格子の周期が、使用する光の波長以下の大きさに形成されていることによって、前記基板における前記回折格子が形成された前記表面に、光の反射を防止する反射防止構造が形成され、前記基板と前記回折格子とが同一物質によって形成され、前記凸部の底部における前記回折格子の周期の方向の寸法が、前記回折格子の周期の0.7〜0.8倍の寸法に形成されている点にある。
そして、この請求項1に係る発明によれば、回折格子における凸部の断面形状を底部から頂部にわたテーパを有するような三角形状に形成し、かつ、少なくとも凸部同士の間に平坦部を形成し、さらに、回折格子の周期を使用する光の波長(以下、使用波長と称する)以下とすることによって形成された反射防止構造により、反射防止膜をコーティングせずともフレネル反射を有効に抑制することが可能となる。更に、基板と回折格子とを同一物質によって形成することにより、コストを削減して量産性を向上させることが可能となる。更に、凸部の寸法を特定することによって、フレネル反射をより有効に抑制することが可能となる。
また、請求項2に係る偏光位相差板の特徴は、請求項1において前記回折格子の周期が、使用波長の2/3以下の大きさに形成されている点にある。
そして、この請求項2に係る発明によれば、更に、回折格子の周期を使用波長の2/3以下とすることにより、フレネル反射をさらに有効に抑制することが可能となる。
さらに、請求項に係る偏光位相差板の特徴は、請求項1または2において、前記基板と前記回折格子とが樹脂材料によって形成され、前記回折格子の周期が400nmに形成されている点にある。
そして、この請求項に係る発明によれば、基板と回折格子とを樹脂材料によってより安価に形成することが可能となり、さらに、回折格子の周期を特定することによって、フレネル反射をより有効に抑制することが可能となる。
さらにまた、請求項に係る偏光位相差板の特徴は、請求項1〜のいずれか1項において、前記回折格子が、前記基板の厚み方向における双方の表面に形成されている点にある。
そして、この請求項に係る発明によれば、基板の厚み方向における双方の表面に回折格子を形成することにより、所望の光学特性を有する偏光位相差板をさらに容易に形成することが可能となる。
た、請求項に係る偏光位相差板の特徴は、請求項において、前記基板の厚み方向における双方の表面に形成された2つの回折格子のそれぞれについての複屈折の総量が、波長λの光に対してともにλ/8(45°)とされ、偏光位相差板全体としてλ/4板として機能するように形成されている点にある。
そして、この請求項に係る発明によれば、2つの回折格子の複屈折の総量を特定することにより、光学特性に優れた1/4λ板を簡易に形成することが可能となる。
本発明に係る偏光位相差板によれば、反射防止膜のコーティングをともなわない簡易な構成により、偏光位相差板におけるフレネル反射を有効に抑制して光のロスおよび透過出射光の強度の振動を低減させることができ、ひいては、光学特性を向上させることができ、コストを削減することができ、製造不良を低減させることができる。
以下、本発明に係る偏光位相差板の実施形態について、図3乃至図16を参照して説明する。
図3に示すように、本実施形態における偏光位相差板5は、所定の厚みを有する基板6を有しており、この基板6の厚み方向の一方の表面には、複数の凸部8が整列された一定の周期Λ(図6参照)を有する回折格子7が形成されている。
また、凸部8の断面形状は、その底部から頂部にわたってテーパ形状に形成されている。
さらに、互いに隣位する凸部8同士の間には、基板6の表面を露出させてなる平坦部9が形成されている。
さらにまた、回折格子7の周期Λは、使用波長以下の大きさ(サブ波長)に形成されている。
また、基板6と回折格子7とは、金型を用いたエンボシングやナノインプリント等の方法により、同一の樹脂材料によって一体的に形成されている。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン系、アクリル系、ポリカーボネートなどの熱可塑性の樹脂を用いることができる。また、樹脂材料は、可視光で吸収の少ないものが好ましく、より好ましくは、可視光の波長領域における屈折率が1.50〜1.52程度の値をとるものとされている。
ここで、図4に示すように、基板6の厚み方向における双方の表面に、λ/8板として機能する2つの回折格子7をそれぞれ形成することによって、偏光位相差板5として、λ/4板10を製造することを考える。
この場合に、光学特性に優れたλ/4板10を容易に製造するために好適な偏光位相差板5の形状や寸法は、以下のようにして求められる。
この偏光位相差板5の好適な形状や寸法は、使用波長の光の反射率が低く、かつ、製造が容易な形状であるかを主眼として、以下の図5乃至図8および表1を用いて決定することができる。
図5は、使用波長λ=650nm、充填率f=1.0における回折格子7の格子深さ(凸部8の高さ)と複屈折の総量(図5における複屈折(°))との関係を示したものである。図5における充填率は、図6に示すように、回折格子7の周期Λに対する凸部8の底部における回折格子7の周期の方向の寸法(幅寸法)の比f=d/Λとして定義されたものである。また、図5における複屈折の総量は、前述したRCWA法を用いて算出されたものである。
このRCWA法を用いた複屈折の総量の算出に際しては、図6に示すように、凸部8のテーパ形状を5段階の階段状の段部で近似した。また、前述したΛやd以外にも、各段部の高さのパラメータをhと定義した。さらに、テーパの直線が、各段部のそれぞれの高さ方向における中点を通ると仮定した。さらにまた、5段階の段部のそれぞれにおける底部の幅寸法を、下の段から順にL1〜L5とし、各段部の幅寸法を、以下のように座標として定義した上で、複屈折の総量を計算した。
L1(λ/2−9d/20、λ/2+9d/20)
L2(λ/2−7d/20、λ/2+7d/20)
L3(λ/2−5d/20、λ/2+5d/20)
L4(λ/2−3d/20、λ/2+3d/20)
L5(λ/2−d/20、λ/2+d/20)
さらに、前述したように、回折格子7の周期Λは429nm以下であることが必要であるため、今回は、製造上の精度誤差等を考えてΛ=400nmで複屈折の総量を計算した。なお、Λ=400nmは、使用波長650nmの2/3以下の大きさである。
図7は、図5において複屈折の総量がλ/8(45°)となる格子深さ(1.22μm)における回折格子7の透過・反射率の波長依存性を示すものである。なお、図5、図7から、回折格子7は、f=1.0、格子深さ5h=1.22μmのときに使用波長λ=650nmの光に対してλ/8板として機能し、使用波長に対する反射率が2.2%であることが分かった。
図8は、図7と同条件の下での波長と複屈折の総量との関係を示すものである。
同様に、λ=650nmのときの回折格子7の充填率fを1.0〜0.35まで変えていった場合に、回折格子7がλ/8板として機能するときの格子深さとその反射率をRCWA法により計算した結果は、次の表1のようになる。
ちなみに、図9は、図2に示したような通常のラメラ(矩形)形状の回折格子1における図5に相当する図であり、図10は、図9において回折格子1がλ/8板として機能する格子深さ(5h=0.78μm)となる場合の回折格子1の透過・反射率の波長依存性を示すものである。図10において、使用波長λ=650nmに対する反射率は3.21%であった。
これを、表1に示す反射率と比べると、回折格子7の凸部8の断面形状をテーパ形状にすることによって、ラメラ形状の場合よりも反射率を低減させることができることが分かる。
しかし、同時に、表1から分かることは、充填率fの値が変わると、複屈折の総量がλ/8(45°)となる格子深さとともに、反射率の値も変わるため、単に、回折格子7の凸部8をテーパ形状にしただけでは反射率を下げるのに不十分なことである。
反射率は、凸部8間に形成された平坦部9における回折格子7の周期方向の寸法(幅寸法)が、特定の値をとるときに最小となる。なお、平坦部9の幅寸法は、表1における充填率fと対応関係を有しているため、充填率fを規定することによって平坦部9の幅寸法が一義的に規定されることになる。
但し、本実施形態においては、金型によって偏光位相差板5を製造する必要上、金型からの抜け性を考えると、なるべく格子深さ5h(凸部8の高さ)は浅い(低い)方が望ましい。
このような反射率の低減および金型からの抜け性(製造容易性)の2つの要素を考慮した場合に、使用波長λ=650nm、Λ=400nmの場合には、充填率fが0.60〜0.80(好ましくは、0.70〜0.80倍)の場合に、λ/8板として反射率が低くなり、かつ、格子深さが浅くなることによって、性能上も製造上も好適な偏光位相差板5になることが分かる。
このようにして、光学特性に優れたλ/4板10を容易に製造するために好適な偏光位相差板5の形状および寸法を決定することができる。
ちなみに、図11は、Λ=400nm、λ=650nmでf=0.8のときの格子深さと複屈折の総量との関係を示すものである。また、図12は、図11において複屈折の総量が45°となる格子深さ(1.07μm)における回折格子7の透過・反射率の波長依存性を示すものである。図13は、このときの回折格子7の一例である。
なお、偏光位相差板5の好適な形状および寸法として、Λ=400nmの下での充填率fが0.60〜0.80であることが好ましいことを既に述べたが、このことは、Λ=400nmの下で、回折格子7の凸部8における底部の幅寸法が、240nm〜320nmであることが好ましいことと同義である。
次に、表2は、使用波長λ=780nmとした場合の表1と同様の表である。
なお、780nmの樹脂の屈折率としてはn=1.516を採用した。この値は、具体的には、日本ゼオン製のZeonex−480Rの屈折率である。
表2と表1を比べて分かるように、充填率fの値を1〜0.4まで変えていった場合に、複屈折の総量がλ/8(45°)となる格子深さは、光の波長によりそれぞれ異なるが、充填率fを変えた場合における格子深さおよび反射率の傾向は表1とほとんど一致している。
すなわち、使用波長λ=780nmにおいても、表1と同様に、充填率fが0.6〜0.8の場合に反射率を小さくすることができ、製造が容易なλ/8板を実現することができる。
従って、使用波長にかかわらず、偏光位相差板5の好適な寸法は、Λ=400nmの下で充填率が0.6〜0.8の場合となる。
これに対し、図14に示す偏光位相差板11は、構造複屈折を有する回折格子12はラメラ形状(矩形)でありながら、凸部13の頂点付近のみテ−パ形状になっている。
このような、偏光位相差板11の回折格子12は、前述した回折格子7と同様に、回折格子12の周期をΛ、凸部13の幅寸法をd、凸部13の矩形部分の高さを2h、テーパ部分の高さをh、テーパ部分を5段階で近似した場合に、使用波長λ=650nm、周期Λ=400nm、矩形部分の充填率f=0.4の下で図15、図16に示す特性を有する。
なお、図15は、前述した図5と同様の図であり、図16は、前述した図7と同様の図である。
図15から、複屈折の総量が45°となるのは、格子深さが0.87μmのときと分かる。また、図16から、格子深さ0.87μmのときの使用波長λ=650nmでの反射率は1.1%であった。
このことを、先ほどの表1と比べると、反射率を十分に下げるためには、図14のように、凸部13の先端のみをテーパ形状にするのではなく、図3に示したように、凸部8全体をテーパ形状にした方が有効であることが分かる。
また、製造プロセスの面からも、図14のような回折格子12にするよりも、図3に示した回折格子3にする方が、金型からの離型性が良好なため有利である。
また、本実施形態においては、前述のように、テーパ形状を、金型からの樹脂への転写プロセスにより形成することを前提としている。このような転写プロセスとしては、ナノインプリント法、UVインプリント、ホットエンボシング、射出成形などの様々な方法があることが知られている。サブ波長サイズの幅の回折格子形状に関しては、ナノインプリントや光インプリントで作成できるという報告がある。
また、一般に、アスペクト比(充填率fに相当)が高い程、金型からの離型時に樹脂の破壊が起こりやすいために製造が難しいことが知られている。
本実施形態においては、回折格子7の凸部8が、離型しやすいテーパ形状に形成されており、しかも、凸部8の高さが、反射率を考慮しつつも可及的に低い高さに形成されているため、製造プロセスの面から非常に有利なものとなっている。
以上述べたように、本実施形態における偏光位相差板5によれば、反射率が低く、かつ、離型性が良好な寸法・形状に形成された回折格子7を有することにより、フレネル反射を有効に抑制することができ、量産性を向上させることができる。また、反射防止膜のコーティングをともなわないため、コストを削減することができ、クラック等の製造不良をなくすことができる。
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
従来の偏光位相差板に用いられていた回折格子の構成を模式的に示す斜視図 従来の偏光位相差板の全体構成を示す斜視図 本発明に係る偏光位相差板の実施形態を示す斜視図 本発明に係る偏光位相差板の実施形態において、λ/4板を示す正面図 本発明に係る偏光位相差板の実施形態において、格子深さと複屈折の総量との関係を示すグラフ 本発明に係る偏光位相差板の実施形態において、回折格子の複屈折の総量を求める際の凸部の近似形状を示す説明図 本発明に係る偏光位相差板の実施形態において、回折格子がλ/8板として機能する場合における透過・反射率の波長依存性を示すグラフ 図7と同条件の下での複屈折の総量と波長との関係を示すグラフ 従来の偏光位相差板における格子深さと複屈折の総量との関係を示すグラフ 従来の偏光位相差板における透過・反射率の波長依存性を示すグラフ 本発明に係る偏光位相差板の実施形態において、図5とは充填率が異なる場合における格子深さと複屈折の総量との関係を示すグラフ 図11と同条件の下での透過・反射率の波長依存性を示すグラフ 図11の場合における回折格子の構成を、その具体的な寸法とともに示した説明図 本発明の構成を満足しない偏光位相差板の一例を示す説明図 図14の偏光位相差板における格子深さと複屈折の総量との関係を示すグラフ 図15と同条件の下での透過・反射率の波長依存性を示すグラフ
符号の説明
5 偏光位相差板
6 基板
7 回折格子
8 凸部
9 平坦部

Claims (5)

  1. 基板の厚み方向における少なくとも一方の表面に、複数の凸部が整列された一定の周期を有する回折格子が形成され、前記回折格子の構造複屈折を利用可能に形成された偏光位相差板であって、
    前記凸部の断面形状が、その底部から頂部にわたテーパを有するような三角形状に形成され、かつ、少なくとも互いに隣位する凸部同士の間に平坦部が形成され、さらに、前記回折格子の周期が、使用する光の波長以下の大きさに形成されていることによって、前記基板における前記回折格子が形成された前記表面に、光の反射を防止する反射防止構造が形成され
    前記基板と前記回折格子とが同一物質によって形成され
    前記凸部の底部における前記回折格子の周期の方向の寸法が、前記回折格子の周期の0.7〜0.8倍の寸法に形成されていること
    を特徴とする偏光位相差板。
  2. 前記回折格子の周期が、使用する光の波長の2/3以下の大きさに形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載の偏光位相差板。
  3. 前記基板と前記回折格子とが樹脂材料によって形成され、
    前記回折格子の周期が400nmに形成されていること
    を特徴とする請求項1または2に記載の偏光位相差板。
  4. 前記回折格子が、前記基板の厚み方向における双方の表面に形成されていること
    を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の偏光位相差板。
  5. 前記基板の厚み方向における双方の表面に形成された2つの回折格子のそれぞれについての複屈折の総量が、波長λの光に対してともにλ/8(45°)とされ、偏光位相差板全体としてλ/4板として機能するように形成されていること
    を特徴とする請求項に記載の偏光位相差板。
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