JP3913548B2 - 装飾物及び装飾物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、装飾物及び装飾物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、観光地等で何々小石と名付けられた天然石の小石が多数陳列されている。クリスタルなものや色の付いたもの、縞の入ったもの等があり、美しく興味をひいている。このような装飾品に関して、以下のようなものが知られている。
(イ)実開平4−9112号公報(以下イ号公報という)には自然石に彩色を施したブローチが記載されている。
(ロ)特開平9−295879号公報(以下ロ号公報という)には天然石、人造石、セメント、コンクリート製品にインキ等を塗布して得られる装飾用パネルが記載されている。
(ハ)特開平2001−151512公報(以下ハ号公報という)には黒色複合酸化鉄粒子粉末からなるセメント着色用顔料が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では以下のような課題を有していた。
(1)イ号公報、ロ号公報やハ号公報に記載の画材では、画材が流れ無機系被修飾物の表面に顕著な盛り上がりを呈する絵等の装飾を行うことができず、立体感を出すことができない。
(2)ロ号公報では塗料の付着を容易にするために、粒状無機物を吹き付けて微細な凹凸を形成しなければならず、作業性に欠ける。
(3)ハ号公報ではセメント着色用顔料が記載されているが、黒色の単色であるために彩色等の彩りやコントラスト性に欠ける。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、オニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物に精細で綺麗な立体感のある描画ができる無機系画材用組成物を用いて耐久性、作業性、生産性に優れた装飾物の提供、耐久性に優れ立体感のある装飾物を高い作業性や生産性で実現できる装飾物の製造方法を提供すること目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため以下の構成を有している。
請求項1に記載の装飾物は、a.セメントと、b.微粉末骨材と、c.着色剤と、d.モルタル接着増強剤とモルタル凝結促進剤とを含有する混和剤と、を含有する無機系画材用組成物に水を添加して得られた画材で、オニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物の表面に盛り上がった絵が描画された構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)無機系画材用組成物が適度に水分を有しているのでペースト状になり、画材が流れることなく、オニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物に描いた絵が細かいところまで綺麗に描くことができ、顕著に盛り上がりを呈するため、立体的になりリアリティに優れた装飾物を提供することができる。
(2)モルタル凝結促進剤を用いているので画材を急速に硬化させることができる。これにより、無機系被装飾物の表面の画材は顕著な盛り上りを保ち、立体的にすることができる。また、描画した上に待ち時間なしに別の描画ができ、色のにじみもなく、高い生産性を得ることができる。また、強度、硬度を早期に発現させる作用を有するので、ひび割れを生じ難く、かつ、傷が付き難く、耐久性を向上させる。
(3)加熱を必要とせず常温で作業ができ、省エネルギー性に優れる。
(4)無機系画材用組成物がセメントや混和剤を含有しているので、付着力が強く、無機系被装飾物から剥離し難い。
(5)骨材が微粉末であるので精細に、円滑に描画することができる。
(6)色彩が鮮やかで、色落ちし難く耐久性に優れる。
【0006】
ここで、セメントとしては、着色剤に染まりやすいので、白色セメントが好ましい。
【0007】
ここで、微粉末骨材としては石粉、貝殻粉、天然石粉等が使用される。特に貝殻粉が多孔性で軽く、艶があるので好ましい。微粉末骨材が微粒子で無機系画材用組成物中に均一に分散しているので、石材等の無機系被装飾物に細かいところまで円滑に描画することができる。また、微粒子で均質に分散しているので、強度の斑がなく、適度の強度を持ち、かつ、ひび割れや欠けを生じ難い。さらに、装飾物をとり落すようなことがあっても傷が付き難い硬度を得ることができる。
【0008】
ここで、着色剤としては、黒色には酸化鉄黒、赤色にはべんがら、青色には群青、緑色には酸化クロム等を主成分とするセメント着色剤(MAIN(株)製)等が用いられる。着色剤の粒子が微細で均一であり、着色性に優れ、また、酸、アルカリに強く耐候性に優れる。
【0009】
ここで、混和剤としては、モルタル接着増強剤とモルタル凝結促進剤が用いられる。モルタル接着増強剤としては、酢酸ビニル系やアクリル系や合成ゴム系のセメント混和用合成樹脂エマルジョンのNSハイフレックス(日本化成(株)製)、ペトロック(旭化成(株)製)等、モルタル凝結促進剤としては無機系MX液(アール.イー.エス(有)製)等が用いられる。
モルタル接着増強剤を用いているので画材の構造を緻密にし、かつ、粘着性を有するので画材が石材等の無機系被装飾物に強く付着し剥離するのを防止できる。また、画材が石材等の無機系被装飾物の表面から顕著に盛り上りを呈し易く、これにより立体感を出すことができる。さらに、収縮率を低減させ、ひび割れを生じ難くする。
【0010】
水は無機系画材用組成物100重量部に対し、20〜8重量部、好ましくは13〜10重量部含有させている。水が13重量部を超えるにつれ、水・セメント比が過大となり画材が流れ易く、肉盛りができ難く、また、絵を形成し、硬化した画材が強度、硬度に欠ける傾向があり、10重量部より少なくなると、円滑に描画でき難い傾向がある。これらの傾向は20重量部を越えるか、8重量部より少なくなるとさらに顕著になるので好ましくない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の装飾物であって、前記セメント100重量部に対し、前記微粉末骨材が180〜80重量部、好ましくは150〜100重量部、前記着色剤が15〜2重量部、好ましくは10〜3重量部、前記混和剤が50〜10重量部、好ましくは40〜20重量部を含有している構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)無機系画材用組成物の粒径が微細で、かつ、水との相溶性が優れているので、細部まで綺麗に描かれ、かつ、混和剤により画材が流れることなく、顕著に肉盛りを行うことができ、さらに、石材等の無機系被装飾物からの剥離を防止できる。
(2)無機系画材用組成物が適度の強度及び柔軟性を備えひび割れや欠けを生じ難く、さらに、硬度をある程度有し衝撃性に優れ、傷が付き難く耐久性に優れる。
(3)描画中に画材が流れることなく使用感に優れ、かつ、高い生産性を得ることができる。
【0012】
ここで、微粉末骨材は150重量部を超えるにつれ、水セメント比が大きくなり画材が絵を形成し、硬化した後、強度に欠けるきらいがあり、100重量部より少なくなるにつれ、骨材が不足し絵が盛り上りを呈し難くなる。これらの傾向は180重量部を越えるか、80重量部より少なくなるとさらに顕著になるので好ましくない。
着色剤は10重量部を越えるにつれ、画材が硬化した後、強度が減少し、3重量部より少なくなるにつれ、色が薄く彩色性に欠ける傾向があり、これらの傾向は15重量部を越えるか、2重量部より少なくなるとさらに顕著になるので好ましくない。
混和剤は40重量部を越えるにつれ、画材が絵を形成し、硬化した後、強度や硬度に欠けるきらいがあり、20重量部より少なくなるにつれ、付着力に欠ける傾向がある。これらの傾向は50重量部を越えるか、10重量部より少なくなるとさらに顕著になるので好ましくない。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の装飾物であって、前記微粉末骨材が、石粉、貝殻粉、天然石粉の内いずれか1種以上からなり、かつ、その平均粒径が500〜30μm、好ましくは400〜50μmである構成を有している。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)微粉末骨材が微粒子で無機系画材用組成物中に均一に分散しているので、石材等の無機系被装飾物に細かいところまで円滑に描画することができる。
(2)微粒子で均質に分散しているので、細部まで描き易く、また、強度の斑がなく、適度の強度を持ち、かつ、ひび割れや欠けを生じ難い。
(3)装飾物をとり落すようなことがあっても傷が付き難い硬度を得ることができる。
(4)貝殻や石材等の廃材を有効利用することができ、省資源化に役立つ。
【0014】
ここで、微粉末骨材の粒径が400μmよりも大きくなるにつれ、画材として粒子が粗大で細かいところが描き難く好ましくない。また、50μmよりも小さくなるにつれ水・セメント比が大きくなり、流れ易く、空隙が出来易いので、割れ、接着性が低下し、また、価格が高くなる。これらの傾向は、500μmより大きくなるか、30μmより小さくなるとさらに顕著になるので好ましくない。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の装飾物であって、少なくとも前記絵の上に耐透水性被膜が形成されていることを備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)耐透水性被膜を有しているので、汗や汚れ等が装飾物についても洗浄したり、拭いたりすることができる。
(2)無機系被装飾物の表面から顕著に盛り上りを呈しているので立体感が出てリアリティに優れている。
(3)耐透水性被膜が形成されているので白華が発生し難く、これにより、色彩が鮮明で色落ちし難く、耐久性に優れる。また、雨水に濡れても良く、屋外装飾物にも使用できる。
(4)耐透水性被膜が形成されているので輝きや清潔感がある。
【0016】
ここで、耐透水性被膜としては、透明なラッカーやガラス質の塗料(SiO2 を含有するもの)が用いられる。好適には耐候性や耐久性が優れている無機系の塗料が用いられる。また、耐透水性被膜を、少なくとも絵の上に形成することにより絵に艶が出て美しく、また、汗や汚れに強くなり、装飾物全体に形成すると違和感がなく装飾物を高級感のあるものとすることができる。
【0017】
装飾物の耐透水性被膜は、単一または多成分系金属酸化物ガラスの薄膜で形成されているのが好ましい。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)室温で硬化するので、作業性が高い。
(2)急速に硬化するので、生産性が高い。
(3)臭いもなく作業環境が良いので、健康を害さず、作業性も向上する。
(4)輝きや清潔感があり、使用感に優れる。
(5)白華が発生し難いので、色彩が鮮明で色落ちし難く、耐久性に優れる。
【0018】
ここで、金属酸化物ガラスの材料としては、加水分解が可能なものであればよく特に限定されない。好ましい有機金属化合物は金属アルコキシドであり、MR2 m(OR1 )n-m なる一般式で表される。式中Mは酸化数nの金属、R1 およびR2 はアルキル基、mは0〜(n−1)の整数を表す。R1 およびR2 は同一でもよく、異なる基でもよい。なかでも好ましいのは、R1 およびR2 が炭素原子4個以下のアルキル基、即ちメチル基CH3 (以下、Meで表す)、エチル基C2 H5 (以下、Etで表す)、プロピル基C3 H7 (以下、Prで表す)、イソピロピル基i−C3 H7 (以下、i−Prで表す)、ブチル基C4 H9 (以下、Buで表す)イソブチル基i−C4 H9 (以下、i−Buで表す)等の低級アルキル基が好適に用いられる。金属アルコキシドとしては、例えば、リチウムエトキシドLiOEt、ニオブエトキシドNb(OEt)5 、マグネシウムイソプロポキシドMg(OPr−i)2 、アルミニウムイソプロポキシドAl(OPr−i)3 、亜鉛プロポキシドZn(OPr)2 、テトラエトキシシランSi(OEt)4 、チタンイソプロポキシドTi(OPr−i)4 、バリウムエトキシドBa(OEt)2 、バリウムイソプロポキシドBa(OPr−i)2 、トリエトキシボランB(OEt)3 、ジルコニウムプロポキシドZn(OPr)4 、ランタンプロポキシドLa(OPr)3 、イットリウムプロポキシドY(OPr)3 、鉛イソプロポキシドPb(OPr−i)2 等が挙げられる。これらの金属アルコキシドは何れも市販品があり、容易に入手することができる。金属アルコキシドはまた、部分的に加水分解して得られる低縮合物も市販されており、これを原料として使用することも可能である。
特に、テトラエトキシシラン、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドの混合物、テトラエトキシシランとチタンイソプロポキシドの混合物、テトラエトキシシランとジルコニウムプロポキシドの混合物を用いると臭いがなく、急速に硬化するので好ましい。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の装飾物であって、前記無機系被装飾物に挿通又は固定若しくは接着等で配設された携帯用の紐類又は携帯用のホルダー又は止めぴんを備えている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)石材等の無機系被装飾物に絵を描いた装飾物が、ペンダント又はキーホルダ等として好適に使用し易くなる。また、押しぴんとして便利に使用できる。
【0020】
請求項6に記載の装飾物の製造方法は、a.セメントと、b.微粉末骨材と、c.着色剤と、d.モルタル接着増強剤とモルタル凝結促進剤とを含有する混和剤と、を含有する無機系画材用組成物に水を添加して画材を形成する画材形成工程と、前記画材を串状物や硬質性の筆に付けてオニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物の表面に盛り上がった絵を描画する描画工程と、を備えている構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)描画工程において、混和剤により画材を早く硬化させることができる。これにより、描画した上に待ち時間なしに別の描画ができるので、作業性が向上する。また、色のにじみを生じないので、生産性が向上する。
(2)簡単な生産工程で、優れた効果を有する石材等の無機系被装飾物に描いた装飾物を高い生産性で製造することができる。
(3)描画工程は常温で作業できるので、作業性、生産性が高く、省エネルギー性にも優れる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の装飾物の製造方法であって、前記セメント100重量部に対し、前記モルタル凝結促進剤が、5〜40重量部含有された構成を有している。
この構成により、請求項6の作用に加え、画材の凝結時間が短くなるので作業性が向上するという作用が得られる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の装飾物の製造方法であって、前記描画工程の次に、前記絵の上に行う耐透水性被膜を形成する耐透水性被膜形成工程とを備えている構成を有している。
この構成により、請求項6又は7の作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)耐透水性被膜形成工程において、塗料を塗り自然乾燥することにより、耐透水性被膜を形成することができる。これにより、白華が生じ難く、色彩が鮮明で色落ちし難く、耐久性に優れる。
(2)簡単な生産工程で、優れた効果を有する石材等の無機系被装飾物に描いた装飾物を高い生産性で製造することができる。
(3)耐透水性被膜形成工程は常温で作業できるので、作業性、生産性が高く、省エネルギー性にも優れる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に拘束されるものではない。
(試料の調整)
(1)セメントとして、白色セメントを用いた。
(2)微粉末骨材として、石灰岩の微紛(石粉、白色、平均粒径200μm)、貝殻粉(白色、平均粒径250μm)を用いた。
(3)着色剤として、セメント着色剤(商品名:MAIN、(株)MAIN製)を用いた。
(4)混和剤としては、モルタル接着増強剤として酢酸ビニル系合成樹脂エマルジョン(商品名:NSハイフレックスHF−1000、日本化成(株)製)を用いた。また、モルタル凝結促進剤として商品名:無機系MX液、((有)アール.イー.エス製)を用いた。
(5)無機系被装飾物として、オニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石又はコンクリート製の壁を用いた。
【0024】
(実験例)
本発明の無機系画材用組成物の配合比であるセメント100重量部に対し(表1)に示す配合量で微粉末骨材、着色剤、混和剤と水を添加して画材を作製し、オニックスに画材で描画し、乾燥後、次の評価を行った。
(評価項目)
1.硬度及び強度:オニックスに描かれた絵の硬さの感触及び強さ。
2.盛り上がり:オニックスに描かれた絵の盛り上がり具合。立体感。
3.耐久性:オニックスに描かれた絵の耐久性。白華の有無。
4:付着力:オニックスに描かれた絵の付着力。
5:艶及び使用感:オニックスに描かれた絵の艶及び使用感。
その評価結果を(表1)、(表2)及び(表3)に示した。
(評価方法)
各評価項目について、10人の試験員により、5段階評価で1を最も悪い、5を最良として評価し、その平均を求めた。その結果を(表1)〜(表3)に示した。
【0025】
【表1】
【表2】
【表3】
(表1)において、実験No.1〜4の凝結状態になるまでの時間を見ると、モルタル凝結促進剤を含まない画材である実験No.4の画材は1時間25分であり、モルタル凝結促進剤を含む画材である実験No.1の画材は35分、実験No.2の画材は17分、実験No.3の画材は7分であった。モルタル凝結促進剤を画材に配合することにより、画材の凝結時間は短くなるので、作業性が向上することがわかった。また、モルタル凝結促進剤の配合比により、凝結時間の制御が行えるので、作業効率の一番良い時間に凝結するように、配合比を換えて、作業を行うことができることがわかった。また、夏期やお湯を水の代わりに使用した場合は、モルタル凝結促進剤を含有しなくてもよいことがわかった。
(表1)の実験No.1と(表2)の実験No.5〜7から明らかなようにセメント100重量部に対し、微粉末骨材の配合量が100重量部の画材(実験No.1)と150重量部の画材(実験No.6)は強度も強く、画材が盛り上がり良好な結果となった。しかし、実験No.5の画材は微粉末骨材が不足し盛り上がりを呈し難くなり、また、実験No.7の画材では水・セメント比が大きくなり画材が強度に欠けてもろくなることがわかった。
また、(表2)において、実験No.8〜12の画材は微粉末骨材に貝殻粉の代わりに石粉(実験No.8、9)及び石粉と貝殻粉を混合したもの(実験No.10〜12)を使用したが、いずれも良好であることがわかった。
また、(表1)及び(表3)において、実験No.1〜4及び実験No.13〜20から明らかなように、セメント100重量部に対し、混和剤の配合量が20〜40重量部の画材(実験No.1〜4及び実験No.15〜17)は硬度、強度ともに強く、画材が盛り上がり良好な結果となった。実験No.13及び14の画材は付着力が弱く被装飾物から画材が剥がれ落ちることがあり、実験No.18〜20の画材は強度が弱くもろく崩れやすくなることがわかった。また、混和剤中のモルタル凝結促進剤の配合量が多くなると、凝結時間が早くなることがわかった。
【0026】
(試作例1)
図1は試作例1における装飾物の平面図であり、図2はそのA−A線断面図である。
1は粒径が約4cmのオニックス、2はオニックス1上に画材で描かれたイルカの絵、3は同様にして描かれた水玉の絵、4は画材の肉盛り部である。
セメント100重量部に対し、微粉末骨材100重量部、青色着色剤10又は5重量部、混和剤40重量部を加えて無機系画材用組成物を作製し、これに水を25重量部加水し画材を作製した。この画材を竹串に付けて、オニックス1の一面にイルカの絵2と水玉の絵3を描き、画材が硬化した装飾物を得た。
前記描画工程において、初回は、青色着色剤10重量部を混入した濃青色の画材を用い、イルカの目玉部と腹部を空白にしてイルカの全体像を濃青色で描き、次に第2回は、着色剤を混入しない白色の画材を用い、前記空白部の目玉部と腹部を白色に塗った。次に第3回は、前記白色の目玉部の中に濃青色の目玉を描き、イルカの絵2を終り、次に第4回は、青色着色剤5重量部を混入した淡青色の画材を用い、イルカの絵2の周辺部に淡青色の水玉の絵3を描き、描画工程を終了した。また、前記描画工程において、画材が急速に硬化するので、作業は待ち時間がなく多数の描画された装飾物を得た。また、子供が装飾物で遊んでも画材は剥がれることなく耐久性に優れていた。
【0027】
(試作例2)
図3は試作例2における装飾物のペンダントの平面図であり、図4はそのB−B線断面図である。
11は粒径2cmのオニックス、12はオニックス11上に画材で描かれたペンギンの絵、13はオニックス11に穿設された貫通孔、14は貫通孔13に挿通された紐、15はペンギンの絵12上に被覆された耐透水性被膜である。
まず、オニックス11の一偶に直径3mmの貫通孔13をあけ、貫通孔13を備えたオニックス11を作製した。
セメント100重量部に対し、微粉末骨材100重量部、青色着色剤10重量部、混和剤40重量部を加えて無機系画材用組成物を作製し、これに水を25重両部加水し画材を作製し、この画材をつまようじに付けて、前記貫通孔13を備えたオニックス11の一面にペンギンの絵12を描き、画材が硬化した後、絵12の上に無色透明な耐透水性被膜15を形成させ、自然乾燥して、オニックス11を得た。
次に、オニックス11に備えられた貫通孔13に直径2mmの首にかける紐14を通し、紐の長さを調整し、装飾物のペンダントを得た。
前記描画工程において、画材が急速に硬化するので、作業は待ち時間がなく多数のペンダント用のオニックス11を得た。また、耐透水性被膜15を表面に塗布したことにより、水に濡れても画材が流れ落ちることもなく、布で300回拭いても画材が剥がれ落ちることもなく、耐水性及び耐久性に優れた装飾物を得た。
【0028】
(試作例3)
図5は試作例3における装飾物のキーホルダーの平面図である。
21は粒径2cmの天然小石、22は天然小石21に画材で描いた蟹の絵、23は天然小石21に穿設された孔部に固定されたヒートン、24はホルダーである。
まず、天然小石21の側部に直径2mm、深さ1cmの小さい孔を穿ち、この穿孔の中に直径1.2mmのヒートン23のねじ部、長さ1cmを埋めた後接着剤を注入し固定し、ヒートン23を備えた天然小石21を作製した。
次に、セメント100重量部に対し、微粉末骨材150重量部、赤色着色剤10重量部、混和剤40重量部を加え濃赤色の無機系画材用組成物を作製し、これに水を30重量部加水し画材を作製した。この画材を硬質性の筆に付けて、前記ヒートン23を備えた天然小石21の一面に濃赤色の蟹の絵22を描き、画材が硬化した後、絵22の上に無色透明な耐透水性被膜を形成する塗料を塗り、自然乾燥して天然小石21を得た。
次に、天然小石21に備えられたヒートン23の円環にホルダー24を接続し、装飾物のキーホルダーを得た。前記ホルダーとして、鈴付きホルダーや、ミニホルダー、ストラップホルダー等を使用してもよい。
前記描画工程において、画材が急速に硬化するので、作業は待ち時間がなく多数のキーホルダー用の天然小石を得た。また、カギと接触しても絵が崩れたり、剥がれることがなく、耐久性に優れている装飾物を得た。
また、試作例3のように穿孔された孔部に、長さ1.2cmの皿付き止めぴん26の皿付部分を埋めた後接着剤を注入し固定し、図6の装飾物の押しぴんを得た。このとき、皿付止めぴん26のぴん部分を天然小石21から外側に7mm出し、止めぴんを備えた天然小石21を作製した。また、他の方法として、市販品の眞鍮製押しぴん頭部円板直径1cm、ぴん長さ6mmを、その頭部円板と天然小石を接着剤で接着し、固定してもよい。
【0029】
(試作例4)
図7は試作例4における装飾された壁の平面図である。
31はコンクリート製の壁、32はひまわりの絵である。
セメント100重量部に対し、微粉末骨材100重量部、着色剤10重量部、混和剤40重量部を加え、無機系画材用組成物を作製し、これに水を25重量部加水し画材を作製した。この画材を硬質性のハケに付けて、壁31にひまわりの絵32を描き、画材が硬化した後、絵32の上に無色透明な耐透水性被膜35(図示せず)を形成させ自然乾燥を行い、壁に描画した図7を得た。
前記描画工程において、黄色及び茶色及び緑色着色剤を配合した画材を用い、ひまわりの花弁を黄色で描き、茶色着色剤で花弁の中央に茶色の種の絵を描き、緑色着色剤でひまわりの緑色の色の葉の絵を描き、ひまわりの絵32の描画工程を終了した。画材が硬化した後、絵32の上に無色透明な耐透水性被膜35(図示せず)を形成させ自然乾燥を行った。前記描画工程において、画材が急速に硬化するので、作業は待ち時間がなくひまわりの絵32を得た。また、耐透水性被膜を被覆しているので、屋外において雨水等に濡れても画材が流れることはなく、また、絵が崩れ落ちることもない耐水性や耐久性に優れている装飾物を得た。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明の装飾物及び装飾物の製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば
(1)無機系画材用組成物が適度に水分を有しているのでペースト状になり、画材が流れることなく、石材等の無機系被装飾物に描いた絵が細かいところまで綺麗に描くことができ、顕著に盛り上がりを呈するため、立体的になりリアリティに優れた装飾物を提供することができる。
(2)モルタル凝結促進剤を用いているので画材を急速に硬化させることができる。これにより、無機系被装飾物の表面の画材は顕著な盛り上りを保ち、立体的にすることができる。また、描画した上に待ち時間なしに別の描画ができ、色のにじみもなく、高い生産性を得ることができる。また、強度、硬度を早期に発現させるので、ひび割れを生じ難く、かつ、傷が付き難く、耐久性を向上させる。
(3)加熱を必要とせず常温で作業ができ、省エネルギー性に優れる。
(4)セメントや混和剤を含有しているので、付着力が強く、石材等の無機系被装飾物から剥離し難い。
(5)骨材が微粉末であるので精細に、円滑に描画することができる。
(6)色彩が鮮やかで、色落ちし難く耐久性に優れる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、
(1)無機系画材用組成物の粒径が微細で、かつ、水との相溶性が優れているので、細部まで綺麗に描かれ、かつ、混和剤により画材が流れることなく、顕著に肉盛りを行うことができ、さらに、石材等の無機系被装飾物からの剥離を防止できる。
(2)無機系画材用組成物が適度の強度及び柔軟性を備えひび割れや欠けを生じ難く、さらに、硬度をある程度有し衝撃性に優れ、傷が付き難く耐久性に優れる。
(3)描画中に画材が流れることなく使用感に優れ、かつ、高い生産性を得ることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の効果に加え、
(1)微粉末骨材が微粒子で無機系画材用組成物中に均一に分散しているので、石材等の無機系被装飾物に細かいところまで円滑に描画することができる。
(2)微粒子で均質に分散しているので、細部まで描き易く、また、強度の斑がなく、適度の強度を持ち、かつ、ひび割れや欠けを生じ難い。
(3)装飾物をとり落すようなことがあっても傷が付き難い硬度を得ることができる。
(4)貝殻や石材等の廃材を有効利用することができ、省資源化に役立つ。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の効果に加え、
(1)耐透水性被膜を有しているので、汗や汚れ等が装飾物についても洗浄したり、拭いたりすることができる。
(2)無機系被装飾物の表面から顕著に盛り上りを呈しているので立体感が出てリアリティに優れている。
(3)耐透水性被膜が形成されているので白華が発生し難く、これにより、色彩が鮮明で色落ちし難く、耐久性に優れる。また、雨水に濡れても良く、屋外装飾物にも使用できる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の効果に加え、
(1)石材等の無機系被装飾物に絵を描いた装飾物が、ペンダント又はキーホルダ等として好適に使用し易くなる。また、押しぴんとして便利に使用できる。
【0035】
請求項6に記載の発明によれば、
(1)描画工程において、混和剤により画材を早く硬化させることができる。これにより、描画した上に待ち時間なしに別の描画ができるので、作業性が向上する。また、色のにじみを生じないので、生産性が向上する。
(2)簡単な生産工程で、優れた効果を有する石材等の無機系被装飾物に描いた装飾物を高い生産性で製造することができる。
(3)描画工程は常温で作業できるので、作業性、生産性が高く、省エネルギー性にも優れる。
【0036】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の効果に加え、画材の凝結時間が短くなるので作業性が向上する。
【0037】
請求項8に記載の発明によれば、請求項6又は7に記載の効果に加え、
(1)耐透水性被膜形成工程において、塗料を塗り自然乾燥することにより、耐透水性被膜を形成することができる。これにより、白華が生じ難く、色彩が鮮明で色落ちし難く、耐久性に優れる。
(2)簡単な生産工程で、優れた効果を有する石材等の無機系被装飾物に描いた装飾物を高い生産性で製造することができる。
(3)耐透水性被膜形成工程は常温で作業できるので、作業性、生産性が高く、省エネルギー性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試作例1における装飾物の平面図
【図2】 図1のA−A線断面図
【図3】 試作例2における装飾物のペンダントの見取図
【図4】 図3のB−B線断面図
【図5】 試作例3における装飾物のキーホルダーの平面図
【図6】 試作例3における装飾物の押しぴんの平面図
【図7】 試作例4における装飾された壁の平面図
【符号の説明】
1、11 オニックス
2 イルカの絵
3 水玉の絵
4 肉盛り部
12 ペンギンの絵
13 貫通孔
14 紐
15、35 耐透水性被膜
21 天然小石
22 蟹の絵
23 ヒートン
24 ホルダー
26 皿付止めぴん
31 壁
32 ひまわりの絵
Claims (8)
- a.セメントと、b.微粉末骨材と、c.着色剤と、d.モルタル接着増強剤とモルタル凝結促進剤とを含有する混和剤と、を含有する無機系画材用組成物に水を添加して得られた画材で、オニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物の表面に盛り上がった絵が描画されていることを特徴とする装飾物。
- 前記セメント100重量部に対し、前記微粉末骨材が180〜80重量部、前記着色剤が15〜2重量部、前記混和剤が50〜10重量部を含有していることを特徴とする請求項1に記載の装飾物。
- 前記微粉末骨材が、石粉、貝殻粉、天然石粉の内いずれか1種以上からなり、かつ、その平均粒径が500〜30μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾物。
- 少なくとも前記絵の上に耐透水性被膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の装飾物。
- 前記無機系被装飾物に挿通又は固定若しくは接着等で配設された携帯用の紐類又は携帯用のホルダー又は止めぴんを備えていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の装飾物。
- a.セメントと、b.微粉末骨材と、c.着色剤と、d.モルタル接着増強剤とモルタル凝結促進剤とを含有する混和剤と、を含有する無機系画材用組成物に水を添加して画材を形成する画材形成工程と、前記画材を串状物や硬質性の筆に付けてオニックス(平均粒径4〜2cm)又は天然小石の無機系被装飾物の表面に盛り上がった絵を描画する描画工程と、を備えていることを特徴とする装飾物の製造方法。
- 前記セメント100重量部に対し、前記モルタル凝結促進剤が5〜40重量部含有されていることを特徴とする請求項6に記載の装飾物の製造方法。
- 前記描画工程の次に、前記絵の上に行う耐透水性被膜を形成する耐透水性被膜形成工程を備えていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装飾物の製造方法。
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