JP3912015B2 - 液晶注入システム、液晶注入方法および液晶装置の製造方法 - Google Patents

液晶注入システム、液晶注入方法および液晶装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像表示装置、コンピュータ端末、光学シャッタ等に利用される液晶表示パネル(液晶装置)の製造方法、液晶表示パネル内に液晶を注入するための液晶注入システムおよび方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
時計や電卓等の表示用として登場した液晶表示素子は、画質の向上と大型化に伴い、コンピュータ端末や光シャッタ等の表示以外の用途も含めた広い分野で使用されるようになってきている。液晶表示素子は、原理的には、電極が形成された基板間に挟持された液晶に電圧を印加することによって素子を通過する光を制御する電気光学素子である。
【0003】
このような液晶光学素子を製造する場合には、まず、ガラス基板上に形成されたITO膜をパターンニングして駆動用電極を形成し、電極が形成された面に液晶配向用の有機膜を印刷焼成により形成するとともに、有機膜の表面を配向処理する。続いて、配向処理された2枚のガラス基板同士を一定の間隔(セル厚)をもって対向させ、シール材(接着剤)で貼り合わせる。その後、貼り合わされたガラス基板を所定のパネル形状に切断して分離する。そして、最後に、パネル内に液晶を注入して、パネルを駆動用の回路に接続すれば、液晶光学素子が完成する。
【0004】
ところで、パネル内に液晶を注入する工程では、一度に複数枚のパネルが真空チャンバ内にセットされ、気圧差によってパネル内に液晶が注入される。パネル内に液晶を注入するシステムの従来例が図5に示されている。図示のように、この液晶注入システム100は、所定の真空雰囲気(例えば10−2〜10−3Torr)に設定される処理室を形成する真空チャンバ102と、チャンバ102内に配置され且つ液晶で満たされた液晶槽104と、液晶槽104の上側で複数のパネルP(ここでは液晶パネルを複数個取ることができる短冊パネル)を把持する把持機構106と、把持機構106を昇降させる昇降機構108とを備えている。チャンバ102には、真空ポンプ112と大気とに通じる排気管114が接続されている。また、排気管114の途中には、排気管114の接続状態を真空ポンプ112と大気との間で切り換えるためのバルブ116が介挿されている。また、各短冊パネルPには、2枚の基板が液晶注入用の注入口109を有する複数の開曲線状のシール材103によって貼り合わされることにより、複数のセル構造(空セル107)が形成されている。
【0005】
このような構成の液晶注入システム100を使用して、パネルP内に液晶を注入する場合には、まず、注入口109が液晶槽104と対向するように複数の短冊パネルPを把持機構106にセットする。この時、パネルPは、液晶槽104内の液晶と接触しないように、液晶槽104の上側で保持される。続いて、真空ポンプ112によってチャンバ102内を真空引きして、チャンバ102内を所定の真空度(例えば10−2〜10−3Torr)まで減圧する。チャンバ102内が所定の真空度に達したら、その後、セル107内がチャンバ102内と略同じ真空度に達するまで、チャンバ102内の真空雰囲気を所定時間維持する。
【0006】
セル107内が所定の真空度に達したら、昇降機構108を駆動させて把持機構106を下降させ、パネルPの注入口109を液晶槽104内の液晶に接触させる。この状態で、バルブ116を切り換えて、チャンバ102内を大気に開放すると、チャンバ102内の大気圧とセル107内の真空圧との圧力差によって、液晶が各注入口109を通じて各セル107内に注入される。セル107内が完全に液晶で満たされたら、再び昇降機構108を駆動させて把持機構106を上昇させるとともに、パネルPをチャンバ102内から取り出して、注入口109を封止材によって封止する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の液晶注入工程は、チャンバ102内を真空引きした後、セル107内が真空引きされるまで待機し、その後、セル107の注入口109を液晶に接触させてチャンバ102内を大気に開放して、セル107内に液晶が充填されるのを待つといったように、複数のステップを順次に行なうことによって構成されている。すなわち、これらの各ステップの所要時間の合計が、液晶注入工程の全所要時間となっている。
【0008】
ところで、液晶注入工程の前記各ステップの中で最も時間がかかるステップは、セル107内を真空引きするステップである。チャンバ102内を真空引きするステップは、設定圧が10−2〜10−3Torrの場合、30秒〜2分程度の所要時間で済むが、10μm以下のセル厚を有するセル107内をこの設定圧付近まで真空引きするためには、設定圧に維持されたチャンバ内に5〜10分程度放置する必要がある。そのため、サイクルタイムが長く、従来にあっては、前述したように複数のパネルPを一括して処理するバッチ処理によって、作業の効率化を図らなければならなかった。すなわち、注入工程をライン工程に組み込む(枚葉処理化する)ことができなかった。
【0009】
また、このようにバッチ処理は、大型の真空チャンバを必要とするため、作業効率を考えると、多種少量生産には不向きである。圧力差を利用して液晶を注入するためには、本来は、パネルの内部だけを減圧し液晶と接触させれば十分であり、チャンバ内まで減圧する必要はない。しかし、現状の方式では、パネルの内部だけを真空引きすることは困難であるため、チャンバ内の空気まで排気せざるを得ない。そのため、所定の真空度に達するまでに余計な時間がかかってしまっている。
【0010】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、大型のチャンバを必要とすることなく枚葉処理が可能で、サイクルタイムが短く作業効率が良好な液晶注入システム、液晶注入方法および液晶装置の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の液晶注入システムは、一対の基板と、一対の基板間に液晶を封入するためのセルとを有するパネルに液晶を注入するとともに、複数のパネルに連続して液晶の注入を行うための液晶注入システムであって、パネルを所定の数量ずつ収納するとともに、パネルが収納された環境を所定の真空状態に設定し、設定された真空状態を維持する複数の真空カートリッジと、パネルが収納された複数の真空カートリッジを真空状態に設定された順番に沿って順次搬送する搬送手段と、搬送手段から送り出される先頭の真空カートリッジを収納するとともに、真空カートリッジが収納された環境を所定の真空状態から、大気圧を含む所定の加圧状態までに可変するチャンバと、液晶が入った液晶漕があらかじめセットされたチャンバ内に先頭の真空カートリッジが搬送されると、チャンバ内を所定の真空状態に設定し、所定の真空状態において真空カートリッジからパネルを取り出した後、空パネルの液晶注入口を液晶漕の液晶に浸した状態でチャンバ内を所定の加圧状態にすることにより、セル内に液晶を注入する注入処理手段と、を少なくとも備え、注入処理手段において先頭の真空カートリッジに収納されていたパネルに液晶が注入されている間に、搬送手段における後続の真空カートリッジに収納されているパネルのセル内の減圧が平行して行われることを特徴とする。
【0012】
この液晶注入システムによれば、注入処理手段において先頭の真空カートリッジに収納されていたパネルに液晶が注入されている間に、搬送手段における後続の真空カートリッジに収納されているパネルのセル内の減圧が平行して行なわれるため、最も時間がかかるセル内の真空引きを搬送中に効率良く行うことができる。
これにより、複数のパネルへの連続した液晶注入が可能となり、サイクルタイムが短く作業効率が良好な液晶注入システムを提供することができる。
【0013】
本発明に係る液晶注入システムによれば、真空カートリッジには、液晶注入口を一辺に揃えた状態で複数のパネルが隣接された短尺パネルとして、それぞれ収納され、搬送手段には、真空カートリッジを待機させるとともに、真空カートリッジを順次搬送するための複数のステージが移動可能に設けられていることが好ましい。
また、チャンバは、所定の真空雰囲気下において真空カートリッジ内からパネルを取り出すための真空チャンバと、あらかじめ液晶槽がセットされるとともに、所定の真空雰囲気下において真空チャンバからパネルを受け入れた後、内部を所定の加圧状態にすることによりセル内に液晶を注入させるための注入チャンバとを含んで構成されることが好ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板と、一対の基板間に液晶を封入するためのセルとを有する液晶装置に液晶を注入するとともに、複数の液晶装置に連続して液晶の注入を行うための液晶装置の製造方法であって、液晶装置を所定の数量ずつ真空カートリッジに収納する工程と、真空カートリッジ内を所定の真空状態に設定するとともに、設定された真空状態を維持する工程と、液晶装置が収納された複数の真空カートリッジを真空状態に設定された順番に沿って順次搬送する搬送工程と、搬送工程から送り出される先頭の真空カートリッジをチャンバに収納する工程と、チャンバ内を所定の真空状態に設定する工程と、所定の真空状態において真空カートリッジから液晶装置を取り出す工程と、チャンバ内にあらかじめセットされた液晶漕の液晶に液晶装置の液晶注入口を浸す工程と、液晶注入口を液晶に浸した状態でチャンバ内を大気圧を含む所定の加圧状態に設定し、セル内に液晶を注入する注入工程と、を含み、注入工程において先頭の真空カートリッジに収納されていた液晶装置に液晶が注入されている間に、搬送工程における後続の真空カートリッジに収納されている液晶装置のセル内の減圧が平行して行われることを特徴とする。
【0015】
この液晶装置の製造方法によれば、注入工程において先頭の真空カートリッジに収納されていた液晶装置に液晶が注入されている間に、搬送工程における後続の真空カートリッジに収納されている液晶装置のセル内の減圧が平行して行われるため、最も時間がかかるセル内の真空引きを搬送中に効率良く行うことができる。
これにより、複数のパネルへの連続した液晶注入が可能となり、サイクルタイムが短く作業効率が良好な液晶装置の製造方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、2つの基板を貼り合わせることによって形成されるパネルのセル内に液晶を注入するための液晶注入方法において、パネルが装填される内部空間を有する真空カートリッジを順次搬送し、搬送される各真空カートリッジ内にパネルを1枚ずつセットし、パネルがセットされた真空カートリッジ内を真空引きして所定の真空状態に設定し、真空カートリッジ内にセットされたパネルのセル内が所定の真空度に達するまで、真空引きされた真空カートリッジを待機させ、パネルのセル内が所定の真空度に達した真空カートリッジをチャンバ内に搬入し、真空カートリッジが搬入され前記チャンバを所定の真空状態に設定し、所定の真空状態に設定された前記チャンバ内で、真空カートリッジ内からパネルを取り出し、所定の真空状態に設定されたチャンバ内で、パネルのセルに通じる注入口を、チャンバ内に設けられた液晶槽の液晶に接触させ、前記注入口を液晶槽の液晶に接触させた状態で、チャンバを大気圧もしくは所定の加圧雰囲気下に晒して、パネルのセル内に圧力差により液晶を注入することを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、1つのチャンバ内で複数のステップを順次に行なうのではなく、真空カートリッジを用いることによりシステムが搬送系と処理系(チャンバ)とに分けられているため、チャンバで液晶注入作業を行なっている間に、最も時間がかかるセル内の真空引きを真空カートリッジ内で平行して行なうことができる。したがって、短いサイクルタイムで枚葉処理を行なうことができるとともに、液晶注入工程をライン工程に組み込むことができる。また、枚葉処理化可能であるため、バッチ処理用の大型の真空チャンバが不要となる。
【0018】
また、本発明の液晶注入方法は、上記構成において、チャンバ内へ1つの真空カートリッジが搬入される度に、真空引きされた他の真空カートリッジが新たに待機されることを特徴とする。この構成によれば、最も時間がかかるセル内の真空引きを行なっている間に、パネルを真空雰囲気下に晒す工程およびセル内へ液晶を注入する工程が平行して行なわれるため、短いサイクルタイムでバッチ処理を行なうことができるとともに、液晶注入工程をライン工程に組み込むことができる。
【0019】
また、本発明の液晶注入方法は、上記構成において、順次個別に真空引きされた複数の真空カートリッジを一括して待機させ、待機されている複数の真空カートリッジを順次個別にチャンバ内に搬入して液晶の注入作業を行なうことを特徴とする。この構成によれば、サイクルタイムを効率良く短くすることができる。
【0020】
また、本発明の液晶注入方法は、上記構成において、前記チャンバは、所定の真空状態に設定される真空室と、所定の真空雰囲気下で真空室からパネルを受け入れる液晶槽を備えた注入室とから成り、前記パネルは、所定の真空状態に設定された前記真空室内で、真空カートリッジ内から取り出された後、所定の真空状態に設定された注入チャンバ内で、セルに通じる注入口が液晶槽の液晶に接触され、その接触状態で、注入チャンバが大気圧もしくは所定の加圧雰囲気下に晒されることによってセル内に圧力差により液晶が注入されることを特徴とする。この構成によれば、泡飛びを低減できるとともに、真空チャンバでパネルを抜き取ってこのパネルを注入チャンバに受け渡すまでの時間で脱泡されるため、液晶注入作業を効率的且つ円滑に行なうことが可能になる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
【0022】
一般に、比較的小型の液晶パネルを有する液晶装置の製造工程においては、図6および図7に示す多数個取りの製造方法を用いる場合が多い。この製造方法においては、まず、2枚の母基板11,12を図示しないシール材によって貼り合わせて図6の(a)に示す大判パネル110を形成する。次に、この大判パネル110の母基板11,12のそれぞれの表面上に図示X方向に延びるスクライブ溝60x(母基板11に同様に形成されたスクライブ溝は図示せず)を形成し(1次スクライブ)、これらのスクライブ溝60xに沿って折割力を加えることによって母基板11,12をそれぞれ破断させ(1次ブレイク)、図6の(b)に示す短冊パネルPを形成する。
【0023】
この短冊パネルPを形成すると、母基板11,12を破断させた部分にシール材の開口部が露出するので、この開口部から液晶を注入し、その後、開口部を封止材等によって閉鎖する。
【0024】
次に、図6の(c)に示すように、短冊パネルPを構成する2枚の短冊基板のそれぞれにスクライブ溝60y(片方の短冊基板に形成されたスクライブ溝は図示せず)を形成し(2次スクライブ)、これらのスクライブ溝60yに沿って折割力を加えることによって2枚の短冊基板を共に破断させ(2次ブレイク)、図6の(d)に示す液晶パネルを形成する。
【0025】
図8および図9は、前述のように形成された液晶パネルの概略構造を示すものである。液晶パネルは、基板141と基板142とがシール材143によって貼り合わせられ、シール材143の内側であって基板141,142の間に液晶144が封入されている。ここで、液晶注入口143aは封止材145によって封鎖されている。
【0026】
基板141の内面上には透明電極146および配向膜147が形成され、透明電極146はシール材143の外側へ出て基板張出部141a上に引き出された配線となっている。また、基板142の内面上には透明電極148および配向膜149が形成され、透明電極148は図示しない上下導通部(例えば異方性導電体として形成されたシール材143の一部によって構成される。)を介して基板張出部141a上の配線に接続されている。
【0027】
基板張出部141aの表面上には、液晶駆動回路を構成した半導体チップ150が実装される。半導体チップ150は、透明電極146,148に導通した基板張出部141a上の配線と、基板張出部141aの端部に形成された入力端子151とに共に導通接続された状態となっている。ここで、液晶装置の構造に応じて、フレキシブルは配線基板を入力端子151に導通接続したり、基板張出部141aの表面をシリコーン樹脂等の封止材によって封止したりするなどの処理が行なわれる。
【0028】
図1は、前述した液晶装置の製造工程のうち、短冊パネルpの基板間に液晶を注入する工程で使用される本実施形態に係る液晶注入システム1を示している。図示のように、システム1は、短冊パネルPが装填された真空カートリッジCを搬送する搬送系2と、搬送系2によって搬送されたカートリッジC内のパネルPに液晶を注入する注入処理を行なう処理系4とを有している。
【0029】
パネルPは、図4に示されるように、2枚の基板が液晶注入用の注入口aを有する複数の開曲線状のシール材bによって貼り合わされることにより、複数のセル構造(空セルc)を形成している(したがって、液晶パネルを複数個取ることができる)。また、カートリッジCは、開閉可能に例えば蝶着された断面が凹状の2つの筐体12,14によって箱型に形成されている。カートリッジCは、1枚の短冊パネルPを収容可能な最小限の内容積を有しており、カートリッジC内部の雰囲気を外部に対して遮断してカートリッジC内を所定の真空度に維持可能なバルブとしての真空カプラ10を備えている。
【0030】
搬送系2は、パネル装填ステーション6と、真空引きステーション7と、待機ステーション8とから成る。また、搬送ベルト9がパネル装填ステーション6と真空引きステーション7とにわたって延びている。この搬送ベルト9は、その動作が制御部11によって制御され、図示しないカートリッジステージから供給されるカートリッジCを支持して各ステーション6,7へと搬送する。
【0031】
パネル装填ステーション6には、搬送アーム16が設けられている。この搬送アーム16は、図示しない第1のパネルステージから1枚ずつパネルPを受け取って、このパネルPを、搬送ベルト9上に支持された開状態の真空カートリッジC内にセットする。なお、搬送アーム16の動作は制御部11によって制御される。
【0032】
真空引きステーション7には、図示しない真空ポンプに接続された真空引き装置18が設けられている。この真空引き装置18は、例えば昇降することによって搬送ベルト9上のカートリッジCの真空カプラ10と着脱自在に接続する吸引コネクタ18aを有している。なお、真空引き装置18の動作は制御部11によって制御される。
【0033】
待機ステーション8は、例えばループを成して昇降するエレベータとして構成されている。待機ステーション8はカートリッジCを支持する所定数のステージ19を有しており、これらのステージ19は、搬送ベルト9からカートリッジCを受け取る例えば下側のカートリッジ搬入位置と、処理系4の後述する第1の作業アーム25にカートリッジCを受け渡す例えば上側の搬出位置との間で、図示しない昇降機構によりループ状に昇降動作される。なお、昇降機構によるステージ19の昇降動作は制御部11によって制御される。
【0034】
処理系4は、内部を所定の真空度に設定可能なハウジング20を有している。ハウジン20内は、開閉可能な第2のゲートG2によって、真空チャンバ22と注入チャンバ24とに区画されている。また、ハウジング20は、真空チャンバ22に対してカートリッジCが搬出入される開閉可能な第1の開閉ゲートG1と、注入チャンバ24からパネルPが搬出される開閉可能な第3のゲートG3とを有している。更に、ハウジング20には、真空ポンプ21に通じる排気管29が接続されている。
【0035】
真空チャンバ22はカートリッジCを支持する支持台30を有している。また、真空チャンバ22は、例えばその天井部に形成された第1の搬送レール23に沿って移動可能な第1の作業アーム25を有している。第1の搬送レール23は、例えば、真空チャンバ22から待機ステーション8に向けて延びている。また、第1の搬送レール23上を移動する第1の作業アーム25は、真空チャンバ22内でカートリッジCからパネルPを取り出すとともに、待機ステーション8のステージ19と真空チャンバ22との間でカートリッジCを搬送する。
【0036】
また、注入チャンバ24内には、液晶で満たされた液晶槽26が設けられている。また、注入チャンバ24は、例えばその天井部に形成された第2の搬送レール28に沿って移動可能で且つ昇降可能な第2の作業アーム27を有している。第2の搬送レール28は、例えば、注入チャンバ22から第3のゲートG3を超えて延びている。また、第2の搬送レール28上を移動して昇降する第2の作業アーム27は、第1の作業アーム25からパネルPを受け取ってパネルPの注入口aを液晶槽26内の液晶に接触させるとともに、液晶が注入されたパネルPを注入チャンバから外側の大気雰囲気へと搬出して図示しない次のライン工程の第2のパネルステージに受け渡す。
【0037】
なお、作業アーム25,27の動作、ゲートG1,G2,G3の開閉動作、真空ポンプ21の動作は、制御部11によって制御される。
【0038】
次に、図2および図3のフローチャートを参照しながら、上記構成の液晶注入システム1の動作の一例について説明する。なお、以下の一連の動作は全て制御部11によって自動制御される。
【0039】
まず、搬送系2の動作について図2を参照しながら説明する。
【0040】
例えばシステム1のスタートスイッチが押されると、図示しないカートリッジステージから搬送ベルト9上に真空カートリッジCが開かれた状態で供給される(ステップS1)。続いて、搬送ベルト9は、供給されたカートリッジCを支持しながらパネル装填ステーション6へと搬送する(ステップS2)。カートリッジCがパネル装填ステーション6に搬送されると、搬送アーム16は、図示しない第1のパネルステージから1枚ずつパネルPを受け取って、このパネルPを、搬送ベルト9上に支持された開状態の真空カートリッジC内にセットする(ステップS3)とともに、真空カートリッジCの2つの筐体12,14を閉じてカートリッジCを密封する。
【0041】
パネルPがセットされた密閉状態の真空カートリッジCは、その後、搬送ベルト9によって再び搬送されて、真空引きステーション7へと送られる(ステップS4)。真空引きステーション7の所定の位置にカートリッジCが位置されると、真空引き装置18が作動して、吸引コネクタ18aがカートリッジCの真空カプラ10に接続される。この状態で、図示しない真空ポンプにより、カートリッジC内が例えば1分間真空引きされる(ステップS5)。このような真空引き動作によって、カートリッジC内が所定の真空度(例えば10−2〜10−3Torr)に達したら、吸引コネクタ18aがカートリッジCの真空カプラ10から取り外される。この時、真空カプラ10の弁作用により、カートリッジC内の真空度は維持される。
【0042】
真空引きが完了したカートリッジCは、再び、搬送ベルト9により搬送されて、待機ステーション8へと送られる。この時、例えば処理系4の真空チャンバ22内にカートリッジCが搬入されたか否かが検知され、あるいは、待機ステーション8のステージ19に空きがあるか否かが検知され(ステップS6)、その結果が肯定的である場合には、空きステージ19に真空引きが完了したカートリッジCが装填される(ステップS7)。また、否定的である場合には、処理系4の真空チャンバ22内にカートリッジCが搬入されるまで(待機ステーション8のステージ19に空きができるまで)待機する。なお、ステージ19へのカートリッジCの装填は、搬送ベルト9の駆動もしくは図示しない装填装置によって行われる。
【0043】
待機ステーション8では、処理系4の真空チャンバ22内にカートリッジCが搬入される毎に、カートリッジCが装填されたステージ19が処理系4に向けて上昇される。この動作により、空きステージ19が搬送ベルト9と対向する下側のカートリッジ搬入位置に位置されるとともに、次に注入処理されるべきパネルPを有するカートリッジC(真空チャンバ22内に搬入される段階では、既にパネルPのセルc内が所定の真空度(例えば10−2〜10−3Torr)に達しているカートリッジC)が真空チャンバ22の第1のゲートG1と対向する上側のカートリッジ搬出位置に位置される。
【0044】
本実施形態では、カートリッジCが待機ステーション8に待機されている間(カートリッジCが真空引きされてから処理系4に搬入されるまでの間)に、セルc内が所定の真空度に達するように待機時間および処理間隔(待機ステーション8のカートリッジCを真空チャンバ22内に搬入する時間間隔…サイクルタイム)が設定されている。すなわち、例えばセルc内が5分の待機状態で所定の真空度に達し且つ真空チャンバ22内が1分で所定の真空度に達する場合には、1分のサイクルタイムを実現するために、5つのカートリッジCを常に待機ステーション8に待機させるようにしている(セルc内が10分の待機状態で所定の真空度に達する場合には、1分のサイクルタイムを実現するために、10個のカートリッジCを常に待機ステーション8に待機させておけば良い)。
【0045】
次に、処理系4の動作について図3を参照しながら説明する。
【0046】
例えばシステム1のスタートスイッチが押されると、セルc内が所定の真空度に達したパネルPを有するカートリッジCが、待機ステーション8のカートリッジ搬出位置に位置されているか否かが検知される(ステップS1)。その結果が否定的である場合には待機状態に設定されるとともに、肯定的である場合には、第1の搬送レール23に沿って移動する第1の作業アーム25によって、カートリッジ搬出位置に位置するカートリッジCが、ステージ19上から、開放された第1のゲートG1を通じて、真空チャンバ22内に搬入される(ステップS2)。
【0047】
カートリッジCが真空チャンバ22内に搬入されると、第1のゲートG1が閉じられ(ステップS3)、第1の作業アーム25によってカートリッジCが支持台30上に支持される。その状態で、今度は、真空ポンプ21が作動して、真空チャンバ22内が例えば1分間真空引きされる(ステップS4)。この時、開放された第2のゲートG2を通じて、注入チャンバ24内も真空引きされる(無論、この真空引き段階では、第3のゲートG3は閉じられている)。
【0048】
このような真空引き動作によって、真空チャンバ22および注入チャンバ24内が所定の真空度(例えば10−2〜10−3Torr)に達したら(ステップS5)、第1の作業アーム25によってカートリッジC内からパネルPが取り出される(ステップS6)。その後、第1の作業アーム25は、第2の搬送レール28に沿って移動する第2の作業アーム27にパネルPを受け渡す(ステップS7)。
【0049】
パネルPが第2の作業アーム27に受け渡されて注入チャンバ24内に搬入されたら、第2のゲートG2が閉じられる(ステップS8)。第2のゲートG2が閉じられると、第2の作業アーム27が下降して、第2の作業アーム27によって保持されたパネルPの注入口aが真空下で液晶槽26内の液晶に接触される(ステップS9)。
【0050】
注入口aが液晶に接触されると、第3のゲートG3が開放され(ステップS10)、注入チャンバ24内が大気に開放される。これにより、注入チャンバ24内の大気圧とセルc内の真空圧との圧力差によって、液晶が各注入口aを通じて各セルc内に注入されていく。そして、この状態のまま待機し(ステップ11)、セルc内が完全に液晶で満たされたら(ステップS12)、第2の作業アーム27が上昇され、液晶で満たされたパネルPは、第2の作業アーム27により、開放された第3のゲートG3を通じて注入チャンバ24から搬出され、図示しない次のライン工程の第2のパネルステージに引き渡される(ステップS13)。その後、第3のゲートG3が閉じられ、第2のゲートG2が開放されて、次のパネルPの処理に備える(ステップS14)。なお、真空チャンバ22内に残された空のカートリッジCは、パネルPが注入チャンバ24内に搬入されて第2のゲートG2が閉じられた段階で、開放される第1のゲートG1を通じて、第1の作業アーム25等により図示しないカートリッジステージへと引き渡される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の液晶注入システム1は、パネルPを1枚ずつ真空カートリッジC内にセットするパネル装填ステーション6と、パネルPがセットされた真空カートリッジC内を真空引きして所定の真空状態に設定する真空引きステーション7と、真空カートリッジC内にセットされたパネルPのセル内が所定の真空度に達するまで、真空引きされた真空カートリッジCを待機させる待機ステーション8とを有する搬送系2を備えるとともに、所定の真空雰囲気下で真空カートリッジC内からパネルを取り出して液晶注入処理を行なう処理系4を備えている。しかも、搬送系2と処理系4とで処理が平行して連続的に行なわれるように、真空カートリッジCが各系2,4に搬送される。すなわち、1つのチャンバ内で複数のステップを順次に行なうのではなく、カートリッジCを用いることによりシステム1を搬送系2と処理系4とに分け、処理系4で液晶注入作業を行なっている間に、最も時間がかかるセルc内の真空引きをカートリッジC内で平行して行なうようにしている。したがって、短いサイクルタイムで枚葉処理を行なうことができるとともに、液晶注入工程をライン工程に組み込むことができる。また、枚葉処理化可能であるため、バッチ処理用の大型の真空チャンバが不要となる。
【0052】
また、一般に、液晶槽26を真空雰囲気下に晒すと、液晶の中に空気が入って泡が飛ぶため、脱泡されるまで注入作業を待つ必要があるが、本実施形態のように、真空ポンプ21の吸引力が直接に作用する真空チャンバ22から注入チャンバ24を分けると、泡飛びを低減できるとともに、真空チャンバ22でパネルPを抜き取ってこのパネルPを第1の作業アーム25から第2の作業アーム27に受け渡すまでの時間で脱泡されるため、液晶注入作業を効率的且つ円滑に行なうことが可能になる。しかしながら、真空チャンバ22と注入チャンバ24とに分けることなく、カートリッジCからのパネルPの取り出しおよび液晶注入作業を1つのチャンバ内で行なっても良い。
なお、本実施形態において、液晶注入を真空中で所定の高温下で行なうと、液晶が効率良く注入される。また、本実施形態では、注入チャンバ24が大気に開放される(晒される)が、 所定の加圧雰囲気に晒されるようになっていても良い。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の液晶注入システムおよび液晶注入方法は、大型のチャンバを必要とすることなく枚葉処理が可能で、サイクルタイムが短く作業効率が良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶注入システムの概略構成図である。
【図2】図1のシステムの搬送系の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1のシステムの処理系の動作を示すフローチャートである。
【図4】パネルの平面図である。
【図5】従来の液晶注入システムの概略構成図である。
【図6】液晶装置の製造方法の主要工程におけるパネル外観を示す概略斜視図である。
【図7】液晶装置の製造方法の主要工程を示す概略工程図である。
【図8】液晶パネルの構造を示す平面図である。
【図9】液晶パネルの構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…液晶注入システム
2…搬送系
4…処理系
6…パネル装填ステーション
7…真空引きステーション
8…待機ステーション
22…真空チャンバ
24…注入チャンバ
26…液晶槽
C…真空カートリッジ
P…パネル

Claims (4)

  1. 一対の基板と、前記一対の基板間に液晶を封入するためのセルとを有するパネルに液晶を注入するとともに、複数の前記パネルに連続して前記液晶の注入を行うための液晶注入システムであって、
    前記パネルを所定の数量ずつ収納するとともに、前記パネルが収納された環境を所定の真空状態に設定し、前記設定された真空状態を維持する複数の真空カートリッジと、
    前記パネルが収納された複数の真空カートリッジを真空状態に設定された順番に沿って順次搬送する搬送手段と、
    前記搬送手段から送り出される先頭の前記真空カートリッジを収納するとともに、前記真空カートリッジが収納された環境を前記所定の真空状態から、大気圧を含む所定の加圧状態までに可変するチャンバと、
    液晶が入った液晶漕があらかじめセットされた前記チャンバ内に前記先頭の真空カートリッジが搬送されると、前記チャンバ内を前記所定の真空状態に設定し、前記所定の真空状態において前記真空カートリッジから前記パネルを取り出した後、前記空パネルの液晶注入口を前記液晶漕の液晶に浸した状態で前記チャンバ内を前記所定の加圧状態にすることにより、前記セル内に液晶を注入する注入処理手段と、を少なくとも備え、
    前記注入処理手段において前記先頭の真空カートリッジに収納されていた前記パネルに液晶が注入されている間に、前記搬送手段における後続の真空カートリッジに収納されている前記パネルのセル内の減圧が平行して行われることを特徴とする液晶注入システム。
  2. 前記真空カートリッジには、前記液晶注入口を一辺に揃えた状態で複数の前記パネルが隣接された短尺パネルとして、それぞれ収納され、
    前記搬送手段には、前記真空カートリッジを待機させるとともに、前記真空カートリッジを順次搬送するための複数のステージが移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液晶注入システム。
  3. 前記チャンバは、
    前記所定の真空雰囲気下において前記真空カートリッジ内から前記パネルを取り出すための真空チャンバと、
    あらかじめ前記液晶槽がセットされるとともに、前記所定の真空雰囲気下において前記真空チャンバから前記パネルを受け入れた後、内部を前記所定の加圧状態にすることにより前記セル内に液晶を注入させるための注入チャンバとを含んで構成されることを特徴とする請求項1、または2に記載の液晶注入システム。
  4. 一対の基板と、前記一対の基板間に液晶を封入するためのセルとを有する液晶装置に液晶を注入するとともに、複数の前記液晶装置に連続して前記液晶の注入を行うための液晶装置の製造方法であって、
    前記液晶装置を所定の数量ずつ真空カートリッジに収納する工程と、
    前記真空カートリッジ内を所定の真空状態に設定するとともに、前記設定された真空状態を維持する工程と、
    前記液晶装置が収納された複数の真空カートリッジを真空状態に設定された順番に沿って順次搬送する搬送工程と、
    前記搬送工程から送り出される先頭の前記真空カートリッジをチャンバに収納する工程と、
    前記チャンバ内を前記所定の真空状態に設定する工程と、
    前記所定の真空状態において前記真空カートリッジから前記液晶装置を取り出す工程と、
    前記チャンバ内にあらかじめセットされた液晶漕の液晶に前記液晶装置の液晶注入口を浸す工程と、
    前記液晶注入口を前記液晶に浸した状態で前記チャンバ内を大気圧を含む所定の加圧状態に設定し、前記セル内に液晶を注入する注入工程と、を含み、
    前記注入工程において前記先頭の真空カートリッジに収納されていた前記液晶装置に液晶が注入されている間に、前記搬送工程における後続の真空カートリッジに収納されている前記液晶装置のセル内の減圧が平行して行われることを特徴とする液晶装置の製造方法。
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