JP3911519B2 - 腸内ガス中の有毒ガスの測定方法及び装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒトの肛門から放散される腸内ガス(屁、Flatus)に含まれる有毒ガスを計測する方法及び装置に係わり、有毒ガスを定量測定して腸内細菌の有り様を推測したり、肝臓疾患の予防・診断に資するものに関する。
【0002】
肝臓は沈黙の臓器と言われており、体内に生じる有毒物の解毒作用を黙々とこなしている。即ち、蛋白質など窒素含有食物は消化器官でアミノ酸やモノマーに分解されて小腸から吸収されるが、未分解の高分子物質成分などは大腸に至り、腸内の嫌気性細菌の作用を受けてアンモニアやアミン、硫化水素などの有毒ガス(有臭ガス)を発生する。そして、その大部分は門脈を通じて肝臓に送られ尿素などの無毒物に変換されて腎臓から排出される。しかし、肝臓の機能が衰えたりアンモニアが多すぎて肝臓の処理能力を越えたりした場合、血液中に高濃度のアンモニアが残る。血中アンモニアは神経毒であり、その濃度が増えれば肝性昏睡や脳障害(肝性脳症)をもたらす。
【0003】
このような事態に対処するためには、肝機能の増強を図ることは勿論であるが、腸内でのアンモニアその他の有毒ガスの発生を押さえるために、腸内細菌のコントロールが重要になる。例えば、ラクツロースやラチトールなどの治療薬を投与し、腸内細菌の作用で生成される有機酸がアンモニアを中和することにより、血中のアンモニアを低減させることが実用化されている。
【0004】
現在、血中アンモニア濃度は血液分析により測定されているが、アンモニアは揮発成分であるため測定までの経過時間により誤差が生じる。また、採血は患者の苦痛を伴うためそう再々行なうことは好ましくない。
【0005】
そこで本発明者らは、大腸内部の環境を反映する腸内ガスに着目し、腸内ガスに含まれるアンモニアなどの有毒ガスを直接測定する技術の開発に挑戦した。
【0006】
ところで、臨床検査分野においては尿や血液を対象とする技術は高度に発達しているが、呼気、ゲップ或いは腸内ガス(おなら、屁)等人体から発散される気体試料については、臨床検査分野における利用は現在全くと言っていいほどなされていない。これは、腸内ガス等の取扱が液体試料と異なって極めて面倒であり、また、その重要性が十分に認識されていないことによる。
【0007】
もっとも、呼気や腸内ガスについては以前から細々とではあるが基礎的研究が行われており、人体内での各種反応の結果200種以上の成分がそれぞれに含まれていることが判っている。しかし、現段階においては手軽な検査機器も無く、且つ検査方法も確立していないため、単なる学術的な研究の範囲に留まっている。
【0008】
このうち、呼気については肺で血液のガス交換が行われるため、呼気は血液の補完的な試料と見ることもできる。しかし、腸内ガスは腸内に棲息するバクテリア(腸内細菌)の産生物を含むため、尿や血液とは異なった人体に関する情報が得られる可能性がある。即ち、臭いものの例えとしてよく用いられる屁(放散された腸内ガス)の臭いの元は、アンモニアや硫化水素、インドール、スカトール等の腐敗ガスであり、これらを産生する細菌(いわゆる悪玉菌)は当然に他の多くの有害不揮発成分も産生しており、これらが腸から吸収されて人体に悪影響を与えることは想像に難くない。最近、これらの悪玉菌が成人病の原因になるとも言われている。もっとも、腸内における菌群は、500種、100兆個も存在すると言われるが、その働きは全く多様で、現在でも不明な点が多い。
【0009】
しかも、アンモニアや硫化水素は極めて水によく溶けるため、呼気中の水分に溶解され、呼気分析ではその正確な測定は困難である。
【0010】
ただ、屁は捕らえどころのないものの例えとしても良く用いられるように、その採取は極めて困難である。これは、腸内ガスの放出がコントロール出来ないし、放出されれば直ちに空気中に拡散してしまうことによる。更に、腸内ガス中の有臭成分は微量であるうえ空気で希釈されるので濃度が極めて低く、小型軽量な装置で採取したサンプル中の有臭成分を正確に定量することは困難である。しかも、希釈の程度も把握できず、有臭成分の濃度の正確な測定は殆ど不可能である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このような観点から、本発明者らは腸内ガス成分の測定技術を開発した(特開平8−62211)。これは、腸内ガスの主要成分として検知可能なガスが含まれていることに着目し、この成分ガスを指標ガスとして採用し、この指標ガスを検知した時点で腸内ガスの放散があったと認識して試料の採取を開始するようにするとともに、指標ガスの濃度から、有臭成分の濃度を推測しようとするものである。
【0012】
即ち、 腸内ガスの成分は、個人差や身体の状態によって変化が大きいが、大まかに窒素23〜80%、酸素0.1〜2.3%、炭酸ガス5.1〜29%、メタン0.1〜26%、水素0.06〜47%程度と言われている。また有臭成分は全体で1%以下であり、アンモニアや硫化水素、インドール、スカトール等の悪玉菌に起因する有臭ガスの他に、善玉菌であるビフィズス菌などが産生する酢酸などが含まれている。そして、前記測定技術は、指標ガスとして炭酸ガスを採用したものである。
【0013】
しかし、炭酸ガスは煙草の煙中などにも含まれているので指標ガスとしては信頼性に欠けるし、腸内ガス内での濃度(約5〜30%)もバラツキが大きいなどの問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、更に研究を続け本発明を完成させたものである。即ち本発明は、指標ガスとして一般には空気中に含まれていない水素を採用するとともに、腸内ガスには殆ど含まれていない酸素に着目し、腸内ガスを含む周囲雰囲気ガス体中の酸素を較正ガスとし採用したものである。
【0015】
そして、指標ガス(水素ガス)を検知すると同時或いはその後速やかに腸内ガスを含む周囲雰囲気ガス体をガス濃度測定器により採取して該ガス体中に含まれる有毒ガスの濃度を測定するとともに、較正ガス(酸素)濃度を測定し、腸内ガス中の有毒ガスの定量測定を可能とするものである。
【0016】
本発明の腸内ガス中の有毒ガスの測定方法は、(1)まず、トイレでの排便中や就寝中に生体から発生する水素ガス濃度を常時監視しておく。水素ガスは通常の生活環境には存在しないので、水素ガスが検知されると放屁があったことが推測される。次いで、(2)水素ガスを検知すると同時或いはその後速やかにトイレの便器や、ベッド内の周囲雰囲気ガス体をガス濃度測定部において採取して該周囲雰囲気ガス体中に含まれる有毒ガスの濃度を測定する。(3)この周囲雰囲気ガス体は、腸内ガスそのままではなく空気で希釈されている。そこで、腸内ガスには殆ど含まれていない酸素ガスに着目し、周囲雰囲気ガス体中の酸素濃度を別途測定して腸内ガスの希釈率を計算する。(4)前記測定された有毒ガスの濃度と腸内ガスの希釈率から、腸内ガスに含まれる有毒ガス(アンモニアガスや硫化水素等)の真の濃度を測定する。
【0017】
放屁(腸内ガスの放出)は、覚醒中には意識的に押さえる(我慢する)ことができる。しかし、尿とは異なり、意識的に放出することは困難である。また、腸内ガスを尿のように容器に採取することも不可能である。しかし、トイレでの用便は、殆どが腸内ガスの放出を伴う。また、便から発生する臭気も、腸内ガスと略同じ組成である。従って、便器内部にガス採取口を設置しておけば、腸内ガスの測定は容易に行なわれる。また、就寝中には、人は無意識で放屁している。そこで、布団の内側、特に肛門に近い部分にガス採取口を設置しておいても、腸内ガスの測定が確実に行なわれる。
【0018】
また本発明方法は、前述したようにして腸内ガス中の有毒ガス、ことにアンモニアガスの濃度を測定することにより、腸内細菌の有り様を推測したり肝臓疾患の予防・診断を行なう方法を提供する。
【0019】
即ち、腸内ガス中に、アンモニアガスなどの有毒ガスが高濃度に含まれていれば、腸内細菌のフローラが偏っており所謂悪玉菌が多く存在することが推測される。そこで、食生活を改めたり、所謂善玉菌と言われる乳酸菌を投与したりすることが必要になる。一方、肝臓の機能が低下しているとして、肝臓疾患の治療が必要であるなど、予防や診断に資することもできる。
【0020】
次に、本発明装置について説明する。本発明の腸内ガス中の有毒ガスの測定装置は、腸内ガス放散検知部、腸内有毒ガス濃度測定部、酸素濃度測定器、及び制御・演算処理部を含んで構成される。
【0021】
腸内ガス放散検知部は、周囲雰囲気ガス体を吸引する吸引ポンプとその前方に配置される水素ガス検知器から構成される。吸引ポンプは、メインスイッチ投入後は常時作動するもので、ダイヤフラム式などの空気ポンプが用いられる。水素ガス検知器は、水素選択性ガスセンサーを使用する。そしてこのガス検知器で常時監視しており、水素ガス濃度が急増した時点で腸内ガスの放散があったと認識する。
【0022】
腸内有毒ガス濃度測定部は、周囲雰囲気ガス体を一定量吸引する吸引手段と、その前方又は後方に配置されるガス検知管などのガス濃度測定器から構成される。ガス濃度測定器としては、ガス検知管やガスクロマトグラフィーなど、微量のアンモニアガスや硫化水素ガスを高精度に測定する機器が使用される。また、アンモニアや硫化水素などの有毒ガスと選択的に反応して高精度に定量測定できるガス検知器があれば、利用可能である。この場合、ガス検知器の種類によっては、吸引する周囲雰囲気ガス体の量は一定量でなくても良い場合がある。また、ガス検知管を用いる場合には検知管装着部が必要になるし、カラムで分離測定する場合には、一定量の周囲雰囲気ガス体を計量するサンプル計量管、該計量管内の周囲雰囲気ガス体をカラムに送り込む送出手段、カラムで分離された周囲雰囲気ガス体中の有臭成分を検出する検出器等が必要になる。
【0023】
これらのガス濃度測定器の内、ガス検知管は、機器の構成や取扱も簡単でしかも高精度に測定でき、特に好ましいものである。但し、ガス検知管は本来目視で呈色長さを見て濃度を読み取るものであるため、そのままでは測定後自動的に電気的信号を出力することはできない。そこで、測定後のガス検知管を光学的手段で観察して、腸内有毒ガス濃度を算出する有毒ガス濃度算出部が別途必要になる。そして、この有毒ガス濃度算出部からの出力を前記制御・演算処理部に入力する必要がある。
【0024】
或いは、腸内ガス放散検知部、腸内有毒ガス濃度測定部、及び酸素濃度測定器を含む部分(採取系)と、有毒ガス濃度算出部を含む部分(測定演算系)を別体に構成し、前者により得られる腸内ガスの希釈倍率を含む情報を、後者に入力するようにしてもよい。
【0025】
また、腸内ガス吸引後のガス検知管を目視で観察して腸内有毒ガス濃度を測定し、得られた数値を前記制御・演算処理部に手入力するようにすることもできる。この場合、有毒ガス濃度算出部が不要になり、装置がより簡略化される。
【0026】
酸素濃度測定器は、腸内ガス放散検知部近傍或いは検知管装着部の前方に組み込まれる。酸素ガス濃度計は、例えば、ジルコニア式又はダンベル式磁気酸素濃度計を使用する。酸素濃度の測定は、腸内ガス放散検知部で腸内ガスの放散があったと認識された場合に即時に行い、制御・演算処理部に酸素濃度を出力する。或いは、酸素ガス濃度計で酸素濃度を常時監視しておき、腸内ガス放散検知部で腸内ガスの放散があったと認識された場合に、制御・演算処理部に酸素濃度を出力するようにしてもよい。尚、ガス検知管による濃度測定のように、試料採取にある程度時間がかかるような場合には、この間続けて酸素濃度を測定し、腸内ガス希釈率の平均を算出してこれを用いるようにしてもよい。
【0027】
制御・演算処理部の主要部はマイクロコンピュータであり、前記水素ガス検知器からの検知信号を入力した時点で、前記吸引手段に作動信号を出力するとともに、ガス濃度測定器及び酸素濃度測定器からの測定信号を演算処理して有臭成分の濃度や成分比を算出し、該算出結果を記憶したり、或いは或いは表示装置(ディスプレイ)や記録装置(プリンター)などの出力装置に信号を出力するなど装置全体の作動プログラムを管理するものである。
【0028】
装置を採取系と測定演算系に分ける場合、前者の制御・演算処理部は制御が主目的となり、後者の制御・演算処理部は、演算及び表示装置(ディスプレイ)や記録装置(プリンター)などへの出力が主目的となる。
【0029】
本発明装置では更に試料採取部を設けてもよい。試料採取部は、チューブ状の試料採取管及び装置内の配管から構成され、周囲雰囲気ガス体を腸内ガス放散検知部や腸内有毒ガス濃度測定部に供給するものであるが、腸内ガス放散検知部や腸内有毒ガス濃度測定部の先端部分を延長して試料採取管としてもよい。この試料採取管は、その先端の吸引口を肛門の近傍、例えば洋便器の便座部分に配置して使用する。或いはベッドで寝ている患者の臀部にテープ等で固定してもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を図面に示す好適な実施の1形態に基づいて更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る腸内ガス中の有毒ガス測定装置1の一例を示す概略図で、濃度測定にガス検知管を用い、採取系と測定演算系を一体に構成したものを示す。この測定装置1は、試料採取部2、腸内ガス放散検知部3、腸内有毒ガス濃度測定部4、有毒ガス濃度算出部5、酸素濃度測定器6、制御・演算処理部7、出力装置としてのプリンター8から構成されている。
【0031】
試料採取部2は、周囲雰囲気ガス体を腸内ガス放散検知部3に供給するチューブ状の試料採取管21と、腸内有毒ガス濃度測定部に供給するチューブ状の試料採取管22からなる。尚、1度にアンモニアと硫化水素を測定する場合には、試料採取管22が2系列必要になる。そして、各試料採取管は、その先端の吸引口を肛門の近傍、例えば洋便器の便座部分に固定したり、ベッドで寝ている患者の臀部にテープ等で固定する。
【0032】
腸内ガス放散検知部3は、試料採取管21を通って供給される周囲雰囲気ガス体Gを吸引する吸引ポンプ31と、その前方に配置される水素ガス検知器32から構成される。吸引ポンプ31は、メインスイッチ投入後は常時作動するもので、ダイヤフラム式ポンプを用いている。そして、このガス検知器32で臀部の周囲雰囲気ガス体Gを常時監視しており、水素ガス濃度が急増した時点で腸内ガスの放散があったと認識し、その旨の信号を制御・演算処理部7に出力する。以後は、吸引ポンプ31は停止してもよい。
【0033】
腸内有毒ガス濃度測定部4は、試料採取管22を通って供給される周囲雰囲気ガス体Gを吸引する吸引ポンプ41と、該吸引ポンプ41の前方に設置される検知管装着部42から構成される。検知管装着部42には、ガス検知管43を毎回セットする。尚、図では吸引ポンプ41や検知管装着部42は2系列のものを示したが、1種類のガスのみを測定する場合には、1系列でよい。
【0034】
有毒ガス濃度算出部5は、ガス検知管載置部51と、光学的読み取り手段52、及び信号出力部53からなる。そして、この有毒ガス濃度算出部5からの出力を前記制御・演算処理部7に入力する。尚、ガス検知管43を目視で観察する場合には、この有毒ガス濃度算出部5は不要になる。
【0035】
酸素濃度測定器6は、ジルコニア式磁気酸素濃度計を用い、腸内ガス放散検知部3の水素ガス検知器43の後部に組み込まれている。そして、この酸素ガス濃度計6で酸素濃度を常時監視しており、腸内ガス放散検知部で腸内ガスの放散があったと認識された場合に、制御・演算処理部7に酸素濃度を出力する。この場合、試料採取にある程度時間がかかるので、この間続けて酸素濃度を測定し、腸内ガス希釈率の平均を算出してこれを用いるようにしてもよい。
【0036】
制御・演算処理部7の主要部はマイクロコンピュータ71であり、前記水素ガス検知器32からの検知信号を入力した時点で、前記吸引ポンプ41に作動信号を出力するとともに、有毒ガス濃度算出部5及び酸素濃度測定器6からの測定信号を演算処理して有臭成分の濃度や成分比を算出し、該算出結果を記憶したり、或いは或いは表示装置(ディスプレイ)や記録装置(プリンター)8などの出力装置に信号を出力するなど装置全体の作動プログラムを管理するものである。
【0037】
図2は、腸内ガス放散検知部3、腸内有毒ガス濃度測定部4、及び酸素濃度測定器6を含む測定部分9と、有毒ガス濃度算出部5を含む算出部分10を別体に構成した他の例を示す。そして、前者即ち測定部分9により得られる腸内ガスの希釈倍率を含む情報を、後者即ち算出部分10に入力するようにしたものである。この入力は、オンラインで行ってもよく、或いはオフラインで手入力により行なってもよい。符号11は、算出部分10の制御・演算処理部である。
【0038】
尚、図1、図2何れの場合においても、ガス検知管による測定を何度か繰り返し(同一人に限らない)、有毒ガス濃度算出は後刻まとめて行なうようにすることもできる。この場合、ガス検知管番号や測定時刻の管理情報を、制御・演算処理部7、11に入力する必要がある。
【0039】
図3は、腸内有毒ガス濃度測定部4Aとして、ガスクロマトグラフィーを採用した場合の概略図を示す。この場合、有毒ガスを分離するカラム44、一定量の周囲雰囲気ガス体を計量するサンプル計量管45、該計量管内の周囲雰囲気ガス体をカラムに送り込む送出手段46、カラムで分離された周囲雰囲気ガス体中の有臭成分を検出する検出器47等が必要になる。
【0040】
次に、本発明装置の使用方法について図1の装置を例にとって説明する。図4はその一例で、トイレ便器12の便座13の部分に、上記試料採取管21、22を束ねて配置したものである。この方法は、便意を催した場合に放屁が多いと言う経験則に基づいたものである。被測定者は、まず装置1のメインスイッチを投入する。臀部が便座上にきたことを赤外線センサー等で検知して自動的にメインスインチを投入するようにしてもいよ。すると、吸引ポンプ31が稼働をはじめ、肛門の周囲雰囲気ガス体Gをゆっくり吸引しはじめる。吸引速度は、例えば1リットル/分程度である。その間、水素ガス検知器32は常時水素ガス濃度を測定している。通常、空気中の水素ガス濃度はppm 単位である。それが、単位時間当たりの変化が急激な増大すると、制御・演算処理部7は腸内ガスの放散(放屁)があったと認識する。
【0041】
すると、制御・演算処理部7からの指令で腸内有毒ガス濃度測定部4の吸引ポンプ41が作動しはじめ、検知管装着部42にセットしたガス検知管43に一定量の周囲雰囲気ガス体Gを吸引する。測定が終わると、ガス検知管43を有毒ガス濃度算出部5のガス検知管載置部51に載置し、光学的読み取り手段52により有毒ガスの濃度を読み取って制御・演算処理部7に出力する。
【0042】
一方、水素ガスを検知すると同時に、酸素濃度測定器6により周囲雰囲気ガス体G中の酸素濃度を測定し、制御・演算処理部7に出力する。そして、この濃度から周囲雰囲気ガス体Gの希釈率を求め、前記で求めた有毒ガスの濃度を補正して、有毒ガスの定量測定を行なう。
【0043】
制御・演算処理部7で求められた有毒ガスの濃度は、プリンター8から出力される。この際、結果を数値で表してもよいが、チャート式で図式化すると測定結果がより確実に把握できる。このチャートには、アンモニアガス、硫化水素等の有毒ガス成分から、腸内細菌の有り様や肝臓疾患の程度などを記載するようにしてもよい。
【0044】
本発明装置は、上記した便器に取り付ける以外に、例えばベットに寝ている患者の臀部等肛門の近傍に、本発明装置の試料採取管21、22の吸入口をバンド等で固定し、就寝中或いは静養中に放散される腸内ガスの分析を行うようにしてもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、ヒトの腸内ガスを分析して腸内ガスに含まれる微量な有毒ガス成分濃度を測定する方法であって、水素ガスを検知することにより腸内ガスの放散を検知して、速やかに周囲雰囲気ガス体中に含まれる有毒ガスの濃度を測定しする一方、周囲雰囲気ガス体中の酸素を較正ガスとして濃度測定し、酸素濃度により有毒ガス濃度を較正して腸内ガス中の有毒ガスを定量測定するものである。
【0046】
従って、以下のような特徴を有する。
1)いつ体外へ放出されるかわからず、また制御不能に放散される腸内ガスを、タイミングよくサンプリングして分析することができる。
2)腸内ガスを分析することにより、その中に微量含まれている有臭成分ガスが簡単・確実に分析できる。また、酸素ガス濃度を測定することにより、希釈率が分かり、従って、アンモニアや硫化水素などの有毒ガスの濃度の定量測定が可能になる。
3)腸内ガス中の有害成分を分析することにより、これらを産生する菌種、特に悪玉菌の種類、更にはその量や割合が推定できる。
4)従って、従来の血液や尿、或いは呼気等から得られる情報以外に、人体特に大腸系統の情報が得られる利点がある。また、腸内ガスの成分は食物や生活態度により大きく影響を受けると言われており、それらについての客観的なデータを得ることができ、食生活の改善や治療の進展状態等をチエックする上で大きな役割を果たす。
5)更に、肝臓疾患の予防や診断に資することが可能となる。
6)一方、血液分析と異なり、患者に苦痛、恐怖感、圧迫感を与えない。そのため、繰り返し測定や連続観察に対する患者の負担が完全に解消する。また、トイレ中で或いは就寝中に自動的にサンプリングが行なえるので、患者に羞恥心を与える心配もない。
7)ガス検知管を用いる場合、高感度且つ短時間測定ができるので、装置の小型化、操作の簡便化、測定の迅速化が図れるし、検査コストが極めて安い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る腸内ガス中の有毒ガスの定量測定装置のブロック図の一例である。
【図2】本発明に係る腸内ガス中の有毒ガスの定量測定装置の他の例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る腸内ガス中の有毒ガスの定量測定装置の更に異なる他の例を示すブロック図である。
【図4】本発明腸内ガス中の有毒ガスの定量測定装置の使用状態の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 有毒ガス測定装置
2 試料採取部
21 試料採取管
22 試料採取管
3 腸内ガス放散検知部
31 吸引ポンプ
32 水素ガス検知器
4 腸内有毒ガス濃度測定部
4A 腸内有毒ガス濃度測定部
41 吸引ポンプ
42 検知管装着部
43 ガス検知管
43 カラム
44 サンプル計量管
45 送出手段
46 検出器
5 有毒ガス濃度算出部
51 ガス検知管載置部
52 光学的読み取り手段
53 信号出力部
6 酸素濃度測定器
7 制御・演算処理部
71 マイクロコンピュータ
8 プリンター
9 測定部分
10 算出部分
11 制御・演算処理部
12 トイレ便器
13 便座
G 周囲雰囲気ガス体
Claims (8)
- 体外へ放散された腸内ガス中の水素を指標ガスとして検知すると同時或いはその後速やかに、腸内ガスを含む周囲雰囲気ガス体中に含まれる有毒ガスの濃度を測定するとともに、周囲雰囲気ガス体中の酸素を較正ガスとして濃度測定し、酸素濃度により有毒ガス濃度を較正することを特徴とする、腸内ガス中の有毒ガスの定量測定方法。
- 有毒ガスの濃度測定に、ガス検知管を用いるものである、請求項1記載の腸内ガス中の有毒ガスの定量測定方法。
- 定量測定した有毒ガス濃度から、腸内細菌の有り様を推測したり肝臓疾患の予防・診断を行なう方法。
- アンモニアガス、硫化水素等の有毒ガス成分の測定結果を基に、検査報告書の形式をチャート式で図式化するものである、請求項3記載の肝臓疾患の診断方法。
- 周囲雰囲気ガス体を吸引する吸引ポンプとその前方に配置される指標ガス検知器から構成される腸内ガス放散検知部と、周囲雰囲気ガス体を一定量吸引する吸引手段とその前方又は後方に配置されるガス濃度測定器を含む腸内有毒ガス濃度測定部と、腸内ガス放散検知部近傍或いはガス濃度測定器の前方に組み込まれる酸素濃度測定器と、前記指標ガス検知器からの検知信号を入力した時点で前記吸引手段に作動信号を出力するとともに、酸素濃度測定器からの測定信号を入力して周囲雰囲気ガス体に対する腸内ガスの希釈倍率を算出して該算出結果を記憶表示する制御・演算処理部を含んで構成されることを特徴とする、腸内ガス中の有毒ガスの測定装置。
- ガス濃度測定器としてガス検知管を用い、測定後のガス検知管を光学的手段で観察して腸内有毒ガス濃度を算出する有毒ガス濃度算出部と、該算出結果を入力するとともに、腸内ガスの希釈倍率から腸内有毒ガス濃度を定量表示する制御・演算処理部を含んで構成されるものである、請求項5記載の腸内ガス中の有毒ガスの測定装置。
- 腸内ガス放散検知部、腸内有毒ガス濃度測定部、及び酸素濃度測定器を含む部分と、有毒ガス濃度算出部を含む部分を別体に構成し、前者により得られる腸内ガスの希釈倍率を含む情報を、後者に入力するものである、請求項6記載の腸内ガス中の有毒ガスの測定装置。
- ガス濃度測定器としてガス検知管を用い、測定後のガス検知管を目視で測定した腸内有毒ガス濃度を、制御・演算処理部に入力する手段を設けたものである、請求項6記載の腸内ガス中の有毒ガスの測定装置。
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