JP3911415B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はX線照射によって被検体の断層像を得るX線CT(Computerized Tomography )装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線CT装置は、被検体(患者)にX線を照射し、臓器、血液、灰白質等の人体組織のX線吸収率の差をX線検出器により検出し、これをコンピュータ処理することによって撮影対象部位の断層面(スライス位置における面、すなわちスライス面)の画像(X線断層像)を得る(再構成する)ものである。
【0003】
X線CT装置には、X線断層像の再構成にあたり、通常のX線CT検査において使用される通常表示モードの他に、リアルタイム表示モード(Smart View)機能を備えており、使用目的に応じて使い分けられている。
【0004】
リアルタイム表示モードとは、例えば、アキシャルスキャン中に医師が被検体である患者に穿刺した際に、その穿刺の状態を観察するために用いるモードであり、穿刺した針を動かしたときでも、針の動きに追従してリアルタイムに表示を更新することが可能である。
【0005】
X線CT装置は、当該リアルタイム表示モードに対応するデータ処理として、部分データ再構成処理(Segment Recon)を備えている。部分データ再構成処理とは、X線管及び検出器を備えるガントリが、被検体の周りを(180+α)度回転した際に得られた投影データに基づいてX線断層像の再構成を行う処理をいう。ここで、「+α」度は、ファン角(Fan−Angle)と呼ばれるもので、X線断層像の再構成には最低限180度分の平行ビームデータを抽出するに足りる投影データの採取が必要であるが、かかる180度分の平行ビームデータを抽出するためには、+α度分だけ余分に投影データを採取する必要があるわけである。
【0006】
部分データ再構成処理(Segment Recon)は、(180+α)度分の投影データ採取を行うことでX線断層像の再構成をすることができるため、スキャン開始時の投影データ採取の時間を短縮でき(すなわち、1枚目の再構成に要する時間を短縮でき)、リアルタイム表示モードに適した処理方法であるといえる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、リアルタイム表示モードにおける処理方法である部分データ再構成処理(Segment Recon)は、再構成するのに使用する投影データの量が少ないため、1フレーム目のX線断層像を再構成する時間は短いが、画質が悪いうえ、部分データ再構成処理(Segment Recon)特有の“接線アーチファクト”や“Tube−Detector角度に依存するアーチファクト”が発生するという問題がある。接線アーチファクトとは、再構成されたX線断層像の各部分(例えば、骨や各内臓など)の画像において、各部分の端部に線状に発生するノイズである。
【0008】
また、Tube−Detector角度に依存するアーチファクトとは、部分データ再構成処理(Segment Recon)において投影データを採取するにあたり、スキャン開始時のX線管および検出器の被検体に対する回転角度に依存して発生する画像ノイズをいう。被検体の断面形状が真円であれば、Tube−Detectorの角度に依存してアーチファクトが発生することはないが、例えば、被検体の断面が楕円形状を有していた場合、短軸方向からスキャンを開始するか、長軸方向からスキャンを開始するかによってアーチファクトの発生の程度が変わるもので、部分データ再構成処理(Segment Recon)を使用した場合にのみ発生するものである。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、X線CT装置のリアルタイム表示モードにおいてスキャン開始時の1枚目のX線断層像再構成にかかる時間を維持しつつ、画質の向上およびアーチファクトの低減を図ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、例えば本発明のX線CT装置は以下の構成を備える。すなわち、
X線発生源と、当該X線発生源からのX線を検出するX線検出部とを一体的に被検体の周りを回転させる回転部とを有するX線CT装置であって、
前記被検体の周りを1回転する間に検出された各ビューごとの透過X線データに基づいて、断層像を再構成する全データ再構成手段と、
前記被検体の周りを1回転未満の所定の回転角度を回転する間に検出された各ビューごとの透過X線データに基づいて、断層像を再構成する部分データ再構成手段と、
スキャン開始後の再構成する断層像が何枚目であるかをカウントし、該カウント値に応じて、前記全データ再構成手段と、部分データ再構成手段とを切り換える切換手段とを備える。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明にかかる実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
<X線CT装置のシステム構成>
図3は、本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置のシステム構成図である。
【0013】
図3に図示の如く、X線CT装置は、被検体(患者)へのX線照射と載置された被検体を透過したX線を検出するためのガントリ装置320と、ガントリ装置320に対して指示信号を送信し各種設定を行うとともに、ガントリ装置320から出力されてきた投影データに基づいてX線断層像を再構成し、表示する操作コンソール300、および被検体を載置し、ガントリ装置内部へ搬送する搬送装置340とにより構成されている。
【0014】
320に示すガントリ装置は、その全体の制御を司るメインコントローラ322を始め以下の構成を備える。
【0015】
321は操作コンソール300との通信を行うためのインターフェース、332はガントリ回転部であり、内部には、X線を発生するX線管324(X線管コントローラ323により駆動制御される)、X線の照射範囲を規定するコリメータ327、コリメータ327のX線照射範囲を規定するスリット幅の調整、及びコリメータ327のZ軸(図面に垂直な方向)の位置を調整するコリメータモータ326が設けられている。かかるコリメータモータ326の駆動はコリメータコントローラ325により制御される。
【0016】
また、332に示すガントリ回転部は、被検体を透過したX線を検出するX線検出部331、及びX線検出部331より得られた投影データを収集するデータ収集部330も備える。X線管324及びコリメータ327と、X線検出部331とは互いに空洞部分333をはさんで対向する位置に設けられ、その関係が維持された状態でガントリ回転部332が矢印335の向きに回転するようになっている。この回転は、回転モータコントローラ328からの駆動信号により所定の制御周期で回転速度制御される回転モータ329によって行われる。
【0017】
また、搬送装置340は、被検体を実際に載置する天板342と天板342を保持するテーブル343とを有し、天板342は天板モータ341によってZ軸方向に駆動され(すなわち、天板の搬送方向=Z軸方向)、天板モータ341の駆動は天板モータコントローラ334からの駆動信号に基づいて所定の制御周期で搬送速度制御される。
【0018】
メインコントローラ322は、I/F321を介して受信した各種指示信号の解析を行い、それに基づいて上記のX線管コントローラ323、コリメータコントローラ325、回転モータコントローラ328、天板モータコントローラ334、そして、データ収集部330に対し、各種制御信号を出力することになる。また、メインコントローラ322は、データ収集部330で収集された投影データを、I/F321を介して操作コンソール300に送出する処理も行う。
【0019】
操作コンソール300は、所謂ワークステーションであり、図示に示す如く、装置全体の制御を司るCPU305、ブートプログラム等を記憶しているROM306、主記憶装置(メモリ)として機能するRAM307をはじめ、以下の構成を備える。
【0020】
HDD308は、ハードディスク装置であって、ここにOS、ガントリ装置320に各種指示信号を与えたり、ガントリ装置320より受信した投影データに基づいてX線断層像を再構成するための診断プログラムが格納されている。また、VRAM301は表示しようとするイメージデータを展開するメモリであり、ここにイメージデータ等を展開することでCRT302に表示させることができる。303および304は各種設定を行うためのキーボードとマウスである。また、309はガントリ装置320と通信を行うためのインターフェースである。<再構成処理の概要>
図4は、本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置のHDD308に格納された診断プログラムにおけるX線断層像の再構成処理の流れを示す図である。
はじめにスキャン処理を行い、投影データを得る(ステップS401)。ステップS402では、対数変換、X線検出部331の備える各検出素子の特性を補正するオフセット補正等の種々の前処理演算を行う。
【0021】
次にステップS403では、X線断層像の再構成を行おうとするフレームが、1フレーム目のX線断層像であるのか(すなわち、フレーム数が2フレーム未満なのか)、2フレーム目以降のX線断層像であるのかを判断する。
【0022】
フレーム数が2フレーム未満であった場合には、ステップS404−1に進み、部分データ再構成処理を実施し、フレーム数が2フレーム以上であった場合には、ステップS404−2に進み、全データ再構成処理を実施する。なお、部分データ再構成処理および全データ再構成処理の詳細については、図5乃至図8において詳細に説明する。
【0023】
次にステップS405において、バックプロジェクション処理が実施された後、Window level値、Window width値に従ってCT値を256階調程度の表示用のデータに変換して(ステップS406)、CRT等のモニタにX線断層像を表示出力する(ステップS407)。
<部分データ再構成処理の詳細>
図1は、部分データ再構成処理(Segment Recon)の機能を端的に表した概念図である。図1の(A)において、101はX線管であり、104に示す軌跡に沿って被検体103の周囲を矢印102の方向に回転しながら、所定の照射角θで被検体103にX線を照射する。図1の(B)は、部分データ再構成処理において、スキャン開始時に1枚目(1フレーム目)のX線断層像を再構成するまでの、X線管の動きを表したものである。図中の0度の位置においてX線照射および検出器による検出を開始し、(180+α)度の位置まで回転すると、1フレーム目のX線断層像が得られる。図1(C)は、X線管が180+α度回転した場合に、被検体103を透過するX線の透過パス(図中の矢印)を示したものである。(180+α)度回転することで、180度分の平行ビームが得られる。
【0024】
図5は、上記ステップS404−1における部分データ再構成処理の詳細を示す図である。なお、図中に記載の、View(ビュー)とは、X線検出部331による任意の角度での投影データの採取をいい、総View数とは、スキャン開始からの投影データの採取回数(すなわちViewの数)をいう。また、VWNとは、ガントリ回転部332が被検体の周りを1回転する間に、採取するView数をいい、FAVWNとは、ガントリ回転部332がファン角α度回転する間に採取するView数をいう(したがって、FAVWN=VWN×α/360)。なお、VWN、FAVWNはX線CT装置ごとに予め決まった値である。
【0025】
ステップS501では、スキャン開始からの総View数をカウントする。スキャン開始後の総View数が(VWN/2+FAVWN)になれば、部分データ再構成処理により1フレーム目のX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したことになる。1フレーム目のX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したらステップS502に進む。
【0026】
ステップS502では、ファンビーム(FAN Beam)データから平行ビーム(Parallel Beam)データへの変換処理(Fan−Para変換処理)を行う。ファンビームデータから平行ビームデータへの変換処理の概要は図6に示す通りである。
【0027】
図6(A)は、収集した投影データを、横軸にX線検出部331の各チャネルを、縦軸にView方向をとって配列したもの(以下、profile)であり、該profileはメモリに保存されている。本図では、説明の便宜上、X線検出部331のチャネル数は1000とし、ガントリ回転部332が被検体の周りを1度回転するごとに、1つのViewを採取することとする(VWN=360)。すなわち、例えば1行目のデータ1−0乃至データ1000−0は、X線検出部331の各チャネルが、View方向0度において収集した投影データであり、2行目のデータ1−1乃至データ1000−1は、View方向1度において収集した投影データであることを示す。また、ファン角(Fan−Angle)αは60度とし、ファン角(Fan−Angle)に対応するView数は60とする(FAVWN=60)。図6(A)は、180+α=240Viewの投影データを採取したことを表している。
【0028】
図6(B)は、図6(A)に示す投影データ(ファンビームデータ)を平行ビームデータに変換処理したことを示す図である。所定の角度における平行ビームデータを得るためには、複数のView方向におけるファンビームデータから、所定の投影チャネルのデータを抽出しなければならない。本例においては、View方向0度において得られたチャネル1のデータ(データ1−0)と、View方向1度において得られたチャネル2のデータ(データ2−1)とは、透過パスが異なる互いに平行なビームである。以下同様に、データ3−2乃至データ1000−40(図中の網掛けされたデータ)は互いに平行で、透過パスが異なるビームである。
【0029】
したがって、これらのデータを図6(B)に示すように一行に配列しなおすことで、当該行は、所定の角度における平行ビームデータを得たこととなる。同様にデータ1−1、1−2・・・においても平行ビームデータを取り出すことが可能である(図6(B)は、240Viewの投影データから180の平行ビームデータを取りだしたことを表す)。このようにしてFan−Para変換されたprofile(すなわち、平行ビームデータ)は、バックプロジェクション処理部(不図示、上記診断プログラム上の一機能)へ送信され(ステップS503)、バックプロジェクション処理が実施される(ステップS405)。
<全データ再構成処理の詳細>
全データ再構成処理(Full Recon)とは、X線管および検出器を備えるガントリが、被検体の周りを360度回転した際に得られた投影データに基づいてX線断層像の再構成を行う処理をいう。部分データ再構成処理に比べて1フレーム目のX線断層像を再構成するために採取された投影データの量が多いため、スキャン開始時の投影データ採取に時間がかかるが、部分データ再構成処理(Segment Recon)と比べて、画質(Image Quality)が優れているという利点がある。
【0030】
図2は、全データ再構成処理(Full Recon)の機能を端的に表した概念図である。図2(A)は図1(A)と同様であるため説明は省略する。図2(B)は、全データ再構成処理(Full Recon)において、スキャン開始時に1フレーム目のX線断層像を再構成するまでの、X線管の動きを表したものである。図中の0度の位置においてX線照射および検出器による検出を開始し、360度の位置まで回転すると、1フレーム目のX線断層像が得られる。図2(C)は、X線管が360度回転した場合に、被検体103を透過するX線の透過パス(図中の実線矢印、点線矢印)を示したものである。360度回転することで、180度分の平行ビームが同一透過パスにおいて2本ずつ(図2(C)に示す実線の矢印群と、それに対応し、方向が反対の点線の矢印群)得られる。
【0031】
図7は、上記ステップS404−2における全データ再構成処理の詳細を示す図である。
【0032】
ステップS701では、X線断層像の再構成を行おうとするフレームが、2フレーム目のX線断層像であるのか、3フレーム目以降のX線断層像であるのかを判断する。2フレーム目のX線断層像であった場合には、ステップS702に進み、スキャン開始後の総View数がVWN以上になるまで待つ。総View数がVWN以上になったら、全データ再構成処理による1フレームのX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したことになるため、ステップS703に進む。
【0033】
ステップS703では、VWN分のデータについてFan−Para変換処理を行う(実際は、スキャン開始後の(VWN/2+FAVWN)分のFan−Para変換処理は、すでにステップS502において実施済であるので、ステップS703では、残りの(VWN/2−FAVWN)分のFan−Para変換処理を行う)。
【0034】
ステップS703でFan−Para変換処理して得られた360度分の平行ビームデータは、バックプロジェクション処理部へ送信される(ステップS704)。
【0035】
一方、ステップS701で、X線断層像の再構成を行うフレームが3フレーム目以降であると判断された場合には、ステップS705に進む。ステップS705では、X線断層像の再構成に使用されていない新たなView数がVWN/FR以上となったか否かを判断する。すなわち、3フレーム目以降のX線断層像は、ガントリ回転部が既定の回転角度(360/FR)回転し、新たにVWN/FRのView数が追加されることで、全データ再構成処理によるX線断層像の再構成が可能となる。なお、1/FRとは、フレームの更新レートをいう。
【0036】
ステップS705において、新たなX線断層像を再構成するのに必要なView数を採取したら、ステップS706に進み、当該新たに採取した投影データについてFan−Para変換処理を行う。その結果、新たなX線断層像を再構成するのに必要な平行ビームデータが得られる。
【0037】
次にステップS707では、差分演算処理を行う。図8は差分演算処理の内容を端的に示した図である。801はFan−Para変換処理した後の平行ビームデータを示す。802に示す領域はNフレーム目(Nは2以上の任意の値)のX線断層像を再構成するために使用する平行ビームデータを表し、803はN+1フレーム目のX線断層像を再構成するために使用する平行ビームデータを表す。N+1フレーム目のX線断層像を再構成するにあたっては、Nフレーム目のX線断層像を再構成するのに使用した平行ビームデータ802のうち、805に示す領域の平行ビームデータを流用するとともに、804に示す領域の平行ビームデータ(N+1フレーム目のX線断層像を再構成するのに不要な平行ビームデータ)を削除し、806に示す領域の平行ビームデータ(新たに採取した平行ビームデータ)を追加すればよい。すなわち、806に示す領域の平行ビームデータから、804に示す領域の平行ビームデータを減算した平行ビームデータをバックプロジェクション処理部へ送信すればよい。
【0038】
このように、差分演算処理とは、新たな平行ビームデータ(VWN/FR分の平行ビームデータ)と、1フレーム前のX線断層像を再構成するのに使用した平行ビームデータのうち、採取順の古い平行ビームデータVWN/FR分との差分を計算する処理をいう。当該差分演算処理は、バックプロジェクション処理における処理負荷を軽減することができる。
【0039】
すなわち、バックプロジェクション処理では、802に示す領域の平行ビームデータを互いに重畳するため、X線断層像の更新にあたっては、806に示す新たな平行ビームデータを重畳し、804に示す採取順の古い平行ビームデータを削除する処理を行わなければならない(加算処理と減算処理の双方を実施しなければならない)。しかし、予め差分演算処理により、806に示す新たな平行ビームデータと、804に示す採取順の古い平行ビームデータとの差分を演算したうえで、バックプロジェクション処理部に送信すれば、バックプロジェクション処理では、加算処理を行うだけで済み、バックプロジェクション処理での処理負荷が軽減される。
【0040】
図7に戻る。差分演算処理された平行ビームデータは、バックプロジェクション処理部に送信され(ステップS708)、バックプロジェクション処理が実施される(ステップS405)。
【0041】
次に図9のタイムチャートを用いて、Smart Viewモードで、X線断層像を再構成した場合の流れについて説明する。
【0042】
上述のように、ガントリ1回転分のView数をVWN、Fan−AngleのView数をFAVWN、フレームの更新レートを1/FRとすると、1フレーム目を作成するために必要なView数(Nprofile)は、
Nprofile=VWN/2+FAVWN
となる。したがって、1フレーム目のX線断層像は(VWN/2+FAVWN)のView数が採取され再構成されることで表示される(図9の901)。
【0043】
次に2フレーム目のX線断層像は、総View数がVWNになることで、全データ再構成処理により再構成される(図9の902)。これ以降は、ガントリ1回転分のView数を用いて(すなわち、Full Recon)でX線断層像の再構成が可能となる。この結果、2フレーム目からは、接線アーチファクトやTube−Detector角度に依存するアーチファクトのない高い画質のX線断層像が得られる。一旦View数がVWNに到達したら、それ以降は、フレームの更新レートが一定であれば、Segment Reconであっても、Full Reconであっても差分演算処理における処理負荷は同様(本例の場合には、VWN/FRのViewを追加して、同数のViewを削除する)であるため、リアルタイム性に差異はない。一方、上述のように、Full Reconを用いた場合、X線断層像の再構成に使用するView数が多いため、画質の良いX線断層像が得られるという効果がある。
【0044】
以上のように、X線断層像のリアルタイム表示モードでの再構成処理を行うにあたり、フレーム数をカウントし、カウントしたフレーム数に応じて部分データ再構成処理を用いるか、全データ再構成処理を用いるかを切り換えることで、1フレーム目のX線断層像再構成までの時間を維持する一方、2フレーム目以降のX線断層像の画質の向上およびアーチファクトの低減を実現できる。
【0045】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、本願発明にかかる処理方法を、Fan−Para変換を行うX線CT装置に適用した場合について述べた。しかし、本願発明はFan−Para変換処理を行わないX線CT装置にも適用可能である。そこで、本実施形態においては、Fan−Para変換を行わないX線CT装置に適用した場合について、以下にその詳細について述べる。
<Fan−Para変換を行わないX線CT装置>
Fan−Para変換を行わないX線CT装置とは、ファンビームデータを直接再構成する方式のX線CT装置をいい、Fan−Para変換を行うX線CT装置に比べて、X線検出部の簡素化を図ることができるという利点がある。すなわち、Fan−Para変換を行うX線CT装置の場合、1View分の投影データを採取するために、X線検出部を16分割して、それぞれタイミングをずらして採取する必要がある。このため、X線検出部のコストがかかるという問題がある。
【0046】
これに対して、Fan−Para変換を行わない場合には、X線検出部において1Viewを一括採取することが可能である。
【0047】
一方で、Fan−Para変換を行わないX線CT装置は、その代替として、Segment Reconを使用した場合、Segment Weighting(詳細は後述)と呼ばれる処理を実施する必要があり、X線CT装置の処理負荷が増加してしまう。このため、従来のように、リアルタイム表示モードにおいて部分データ再構成処理を行った場合、画質が悪いことに加え、当該処理負荷の増加に起因してフレーム数が進むにつれてリアルタイム性が低下してくるという問題が新たに発生する。
【0048】
これに対して本願発明を用いれば、1フレーム目のX線断層像の再構成に要する時間を維持しつつ、フレーム数が増加しても、リアルタイム性を低下させることなく、しかも画質を従来よりも向上させることが可能となる。
<再構成処理の詳細および部分データ再構成処理の詳細>
図10は、本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置に格納された診断プログラムにおけるX線断層像の再構成処理の流れを示す図であり、図4と同様であるため、説明は省略する。
【0049】
図11は、図10に示した部分データ再構成処理(ステップS1004−1)の処理の詳細を示したフローチャートである。
【0050】
ステップS1101では、スキャン開始からの総View数をカウントする。スキャン開始後の総View数が(VWN/2+FAVWN)になれば、部分データ再構成処理により1フレーム目のX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したこととなる。1フレーム目のX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したらステップS1102に進む。
【0051】
ステップS1102では、採取した投影データに対してSegment Weighting処理を行う。ここで、図12を用いてSegment Weighting処理について説明する。図12の(A)は、収集した投影データを、横軸にX線検出部の各チャネルを、縦軸にView方向をとって配列したprofileであり、該profileはメモリに保存されている。上記第1の実施形態においても述べたように、画像を再構成するにあたっては、例えば、データ1−0、データ2−1・・・のように図中の色塗りした部分のデータ(平行ビームを形成する投影データ)より下側に図示した投影データ(180+α)度分(本実施形態でも、第1の実施形態同様、FR=360、α=60、FAVWN=60とすると、240度分)が必要であり、その他の投影データは当該フレームの画像の再構成にあたっては不要である。
【0052】
そこで、かかる不要な投影データを削除すべく、図12(B)に示すSegment Weightingテーブルを用いて、当該テーブルの係数を、採取した投影データに乗算する。すなわち、当該フレームの画像の再構成に用いる投影データ部分は係数1.0を、使用しない投影データ部分には係数0.0乗算する(なお、本例においては、係数1.0と係数0.0の2種類の係数からなるSegment Weightingテーブルの例を示したが、これに限らず、係数1.0と係数0.0の境界部分については、その中間値を用いてもよい)。
【0053】
図11に戻る。Segment Weighting処理されたprofileは、バックプロジェクション処理部に送信され(ステップS1103)、バックプロジェクション処理される。
<全データ再構成処理の詳細>
図13は、上記ステップS1004−2における全データ再構成処理の詳細を示す図である。
【0054】
ステップS1301では、X線断層像の再構成を行おうとするフレームが、2フレーム目のX線断層像であるのか、3フレーム目以降のX線断層像であるのかを判断する。2フレーム目のX線断層像であった場合には、ステップS1302に進み、スキャン開始後の総View数がVWN以上になるまで待つ。総スキャン数がVWN以上になれば、全データ再構成処理による1フレームのX線断層像を再構成するのに必要な投影データを採取したことになるため、ステップS1303に進む。。
【0055】
ステップS1303では、Segment Weighting処理を実施する。図14は、全データ再構成処理により、2フレーム目のX線断層像を再構成するために用いるSegment Weightingテーブルの一例である。全データ再構成処理の場合、部分データ再構成処理と異なり、すべてのViewを均等に使用するので、Segment Weightingテーブルは1.0(すなわち、Segment Weighting処理を行う必要がないこと)となる。
【0056】
Segment Weighting処理されたファンビームデータは、バックプロジェクション処理部に送信され(ステップS1304)、バックプロジェクション処理が実施される。
【0057】
一方、ステップS1301で、X線断層像の再構成を行おうとするフレームが3フレーム目以降であると判断された場合には、ステップS1305に進む。ステップS1305では、X線断層像の再構成に使用されていない新たなView数がVWN/FR以上となったか否かを判断する。すなわち、3フレーム目以降のX線断層像は、ガントリ回転部が既定の回転角度(360/FR)回転し、新たにVWN/FRのView数が追加されることで、全データ再構成処理によるX線断層像の再構成が可能となる。なお、1/FRとは、フレームの更新レートをいう。
【0058】
次に図15のタイムチャートを用いて、Smart Viewモードで、X線断層像を再構成した場合の流れについて説明する。
【0059】
上述のように、ガントリ1回転分のView数をVWN、ファン角に対応するView数をFAVWN、フレームの更新レートを1/FRとすると、1フレーム目を作成するために必要なView数(Nprofile)は、
Nprofile=VWN/2+FAVWN
となる。したがって、1フレーム目のX線断層像は(VWN/2+FAVWN)のView数が採取され再構成されることで表示される(図15の1501)。
【0060】
次に2フレーム目のX線断層像は、総View数がVWNになることで、全データ再構成処理により再構成される(図15の1502)。これ以降は、ガントリ1回転分のView数を用いて(すなわち、Full Recon)でX線断層像の再構成が可能となる。この結果、2フレーム目からは、高い画質のX線断層像が得られる。なお、上述のように、Full ReconによるX線断層像の再構成にあたっては、Segment Weighting処理を省略でき、すべての投影データを再構成に使用する。このため、X線CT装置の処理負荷を低減でき、Segment Reconのように、フレーム数が進行した場合のリアルタイム性が低下することがない。一方、上述のように、Full Reconを用いた場合、X線断層像の再構成に使用するView数が多いため、画質の良いX線断層像が得られるという効果がある。
【0061】
このように、本願発明にかかるデータ処理方法は、Fan−Para変換を行うX線CT装置のみならず、Fan−Para変換を行わないX線CT装置にも適用可能であることを示した。しかも、Fan−Para変換を行わないX線CT装置を用いることで得られるX線検出部のコスト削減というメリットを享受しつつ、Fan−Para変換を行わないX線CT装置に内包していたSmartReconモードにおけるSegment Recon使用時の問題点をも解決できるという付帯的な効果が得られる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、X線CT装置のリアルタイム表示モードにおいてスキャン開始時の1枚目のX線断層像再構成にかかる時間を維持しつつ、画質の向上およびアーチファクトの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なX線CT装置における部分データ再構成モードの機能を端的に表した概念図である。
【図2】一般的なX線CT装置における全データ再構成モードの機能を端的に表した概念図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置のシステム構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置に格納された診断プログラムにおけるX線断層像の再構成処理の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置における部分データ再構成処理の詳細を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置におけるFan−Para変換処理の概要を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置における全データ再構成処理の詳細を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置における差分演算処理の概要を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態にかかるX線CT装置におけるX線断層像の再構成処理を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置に格納された診断プログラムにおけるX線断層像の再構成処理の流れを示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置における部分データ再構成処理の詳細を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置におけるSegment Weighting処理の概要を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置における全データ再構成処理の詳細を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置における全データ再構成処理により、2フレーム目のX線断層像を再構成するために用いるSegment Weightingテーブルの一例を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態にかかるX線CT装置におけるX線断層像の再構成処理を示す図である。
Claims (6)
- X線発生源及び該X線発生源からのX線を検出するX線検出器を一体的に被検体の周りを回転させる回転部を有するX線CT装置であって、
前記被検体の周りを1回転する間に検出された各ビューごとの透過X線データに基づいて、断層像を再構成する全データ再構成手段と、
前記被検体の周りの1回転未満の所定の回転角度を回転する間に検出された各ビューごとの透過X線データに基づいて、断層像を再構成する部分データ再構成手段と、
スキャン開始後に再構成する断層像が何枚目であるかをカウントし、該カウント値が1枚目であるときは前記部分データ再構成手段を用いて再構成をし、該カウント値が2枚目であるときは前記部分データ再構成手段から前記全データ再構成手段に切り換えて、該カウント値が2枚目以上であるときは前記全データ再構成手段を用いて再構成する切換手段とを備え、
前記全データ再構成手段及び前記部分データ再構成手段は、検出された各ビューごとの透過X線データであるファンビームデータを平行ビームデータに変換する変換処理手段を更に備えることを特徴とするX線CT装置。 - 前記所定の回転角度は、前記検出された透過X線データに基づいて180度分の前記平行ビームデータを抽出するのに必要なビューの数である第1のビュー数を採取可能な角度であることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
- 前記部分データ再構成手段は、スキャン開始後に透過X線データを検出した各ビューの数をカウントし、前記第1のビュー数を超えたら1枚目の断層像を再構成することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
- 前記全データ再構成手段は、スキャン開始後に透過X線データを検出した各ビューの数をカウントし、前記被検体の周りを1回転する間に検出されるビューの数である第2のビュー数を超えたら2枚目の断層像を再構成することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のX線CT装置。
- 前記全データ再構成手段は、3枚目以降の断層像を再構成するにあたり、既定の回転角度に応じたビュー数になったときに新たな断層像を再構成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のX線CT装置。
- 前記全データ再構成手段は、3枚目以降の断層像を再構成するにあたり、新たに検出された透過X線データに基づいて抽出された平行ビームデータと、直前の断層像の再構成に用いられた平行ビームデータのうち採取順の古い平行ビームデータとの差分を演算する差分演算処理手段を更に備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のX線CT装置。
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