JP3911070B2 - 繊維板及び繊維板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は繊維板及びその製造方法に関し、詳しくは、新聞紙、雑誌、段ボールなどの古紙を主原料とする繊維板の製造方法及びかかる方法により製造される繊維板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
工場、オフィス、一般家庭などから排出される多量の古紙は、環境保護、資源の有効活用などの見地から、近年、種々の用途に再利用されるようになっている。そして、その再利用方法の一つとして、古紙から建材用の繊維板(古紙ボード)を製造する方法が知られている。
【0003】
ところで、古紙などを原料とする繊維板の製造方法としては、例えば、古紙を湿式で解繊、解砕して異物を除去した後、これを洗浄して脱水し、得られた脱水原料に、水及び結合剤(接着剤),撥水剤,定着剤などの薬剤を添加、混合した後、この繊維板原料を脱水しつつ成形する方法がある。
【0004】
しかし、上記従来の方法により繊維板を製造する場合、古紙や製紙廃棄物を湿式で解繊、解砕してスラリー化するようにしているので、
( 1 )製造される繊維板の量に対して、原料(スラリー)の取扱量が多くなり、設備が大型化する、
( 2 )原料スラリーから固形物(繊維)を分離した後の廃液や、分離固形物(繊維)を洗浄した後の洗浄液を処理することが必要となり、ランニングコストや設備コストが大きくなる、
( 3 )湿式の繊維板の製造方法においては、通常、原料スラリーに結合剤を添加することが行われるが、結合剤をできるだけ均一に原料中に分散させることが所望の強度を有する繊維板を得るために不可欠であることから結合剤の添加工程では厳密な条件管理が必要となり製造コストの増大を招く、
( 4 )所定の形状(繊維板形状)に成形する工程で、水分を除去することが必要となるため成形に時間がかかり、生産効率を向上させることが困難であるとともに、製造可能な繊維板の厚みが制約される
というような問題点がある。
【0005】
また、このような問題点を解決するために、古紙片や、古紙を乾式解繊した古紙原料にポリイソシアネート化合物を結合剤として添加し、所定の条件で加熱成形する乾式の繊維板の製造方法も提案されているが、比重、曲げ強度、剥離強度、吸水率などに関し、古紙を原料とする繊維板の場合、木材チップを原料とする木質ボードとは異なり、十分な特性を得るためには、ポリイソシアネート化合物の配合割合を大きくすることが必要になり、コストの増大を招くという問題点がある。
【0006】
本願発明は、上記問題点を解決するものであり、乾式で繊維板を製造することが可能で、湿式の製造方法に比べて、設備の小型化を図ることができるとともに、排水処理が不要で、しかも、成形工程での乾燥負荷が少なく、設備コストやランニングコストを低減することが可能な繊維板の製造方法及び該製造方法から得られる経済性に優れた繊維板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願(請求項1)の繊維板の製造方法は、
(a)古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、(b)ポリイソシアネート化合物2〜15重量%(乾量基準)と、(c)融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%(乾量基準)とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧して、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0の成形体とすることを特徴としている。
【0008】
なお、本願発明において、乾式解繊するとは、「古紙を回転刃により粗破砕した後、これに温水を噴霧して湿らせ、回転ピンにより2つの固定刃間に押し込むことにより、ふやけた被解繊材料(古紙)をピンの衝撃でささくれさせ、その部分をさらに他の被解繊材料(古紙)と絡み合わせ、擦れ合わせることにより繊維を解きほぐすこと」を意味するものであり、例えば、住倉工業株式会社製の乾式紙片解繊機などを用いることにより行うことができる。
【0009】
本願発明の繊維板の製造方法のように、古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%と、ポリイソシアネート化合物2〜15重量%とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧して、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0の成形体とすることにより、乾式解繊した古紙原料(解繊ファイバー)を密に絡みあわせ、かつ、ポリイソシアネート化合物を接着剤として機能させるとともに、樹脂原料を結合剤として機能させ、古紙原料(解繊ファイバー)中のファイバーどうしを確実に接着、結合させて、製品である繊維板の曲げ強度及び剥離強度を向上させることが可能になる。また、結合剤として添加した樹脂原料が溶融して解繊ファイバー中に入り込み、吸水率を減少させて撥水性を向上させることが可能になる。
【0010】
なお、繊維板の代表的な物性である曲げ強度には、繊維板の比重、解繊された古紙原料の性状、接着剤、結合剤の種類及び量が大きく関与する。
すなわち、繊維板の曲げ強度を向上させようとすると、解繊後の古紙原料(解繊ファイバー)の接触面積を増大させることが必要になる。そして、接触面積を増大させようとすると、骨格部と骨格部から派生した細毛よりなる解繊ファイバーの細毛の割合を増やすことが必要になり、そのためには、古紙を十分に解繊することが必要になる。さらに、この古紙原料の解繊の度合い(細毛の割合)を直接に測定することは困難であるが、解繊ファイバー中の細毛の割合とかさ密度には相関関係があり、解繊が十分に行われるほど、解繊ファイバーのかさ密度が小さくなることが知られている。なお、古紙原料の種類と、解繊した後の解繊ファイバー(解繊素材)のかさ密度の関係を表1に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
表1に示すように、OA紙及びコート本は、解繊ファイバー(解繊素材)のかさ密度が0.030g/cm3を越えているが、雑誌(漫画本)、新聞紙、及び段ボールは、解繊ファイバー(解繊素材)のかさ密度が0.030g/cm3以下になること、すなわち、本発明の繊維板の製造方法の古紙原料となり得ることがわかる。
【0013】
そして、本願発明の繊維板の製造方法においては、かさ密度が0.030g/cm3以下の十分に解繊された古紙原料(解繊ファイバー)を用いているので、解繊後の古紙原料(解繊ファイバー)の接触面積を増大させて、製品である繊維板の曲げ強度を向上させることが可能になる。
なお、本願発明において、古紙を乾式解繊した古紙原料のかさ密度は、解繊された古紙原料を、10メッシュのふるいを通して自然落下させた古紙原料について測定した値である。
【0014】
また、解繊後の古紙原料の接触部分(ファイバーどうしが接触している部分)が、接着剤(ポリイソシアネート化合物)によって接着されることにより、繊維板の強度が向上する。また、接着剤の添加量を増やすことにより、接着面積を増大させることが可能になり、繊維板の強度をさらに向上させることができる。
なお、本願発明において、ポリイソシアネート化合物の含有率を2〜15重量%としたのは、含有率が2重量%未満になると、十分な接着効果を得ることができず、また、15重量%を越えると強度向上の効果が顕著ではなくなり、いたずらにコストの増大を招くことによる。
【0015】
なお、製品である繊維板の比重を増大させると、ファイバーどうしが互いに強く押しつけられることになることから、接触面積及び接着面積の増大につながり、製品の強度を増大させることになる。
【0016】
また、本願発明において、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料とは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの種々の樹脂を切断あるいは粉砕して、微細化した原料を意味する概念であり、具体的な形状や寸法などに特別の制約はないが、できるだけ微細化して表面積を大きくすることが製品の強度向上の見地から望ましい。
【0017】
なお、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの樹脂原料は、ポリイソシアネート化合物(接着剤)ほどの接着強度を有しないが、安価であるため、高価なポリイソシアネート化合物の添加量を低減することが可能になる。すなわち、樹脂原料はポリイソシアネート化合物のような接着性を有しないが、極性がなく、特に粉末が球状である場合には分散性が良好で、繊維板中に均一に充填されて応力分散効果を発揮するため、曲げ強度や剥離強度を向上させる機能を果たす。また、加熱・加圧して成形する工程で、溶融して、古紙原料繊維中に入り込み、バインダーとしての機能を発揮するとともに、上述のように、繊維板の吸水性を低減させるという機能を果たす。
【0018】
また、樹脂原料として廃棄物を使用することも可能であり、その場合には、廃棄物を循環使用して、環境保護、資源の有効活用を図ることができるというメリットがある。
【0019】
なお、本願発明において、熱可塑性樹脂の含有量を2〜30重量%としたのは、含有量が2重量%未満になると効果の割には工程が複雑になり、また、30重量%を越えると、例えばホットプレスなどによる成形が困難になることによる。
【0020】
また、熱可塑性樹脂として、融点160℃以下のものを用いるようにしたのは、融点が160℃以上のものを用いた場合、160℃以下の温度で加熱・加圧する工程で、熱可塑性樹脂が溶融せず、結合剤としての機能を発揮できないことによる。
【0021】
また、繊維板原料を加熱・加圧する際の温度を160℃以上としたのは、結合剤である接着剤である熱可塑性樹脂の溶融温度や、ポリイソシアネート化合物の硬化温度などを考慮するとともに、加熱・加圧の時間を短縮して、生産性を向上させることが可能になることなどを考慮したものである。
【0022】
また、加熱・加圧することにより成形を行った後の成形体(繊維板)の含水率が10重量%以下になるようにしたのは、成形体の含水率を製品である繊維板の平衡含水率に近付け、成形後の変形を防止するためである。
【0023】
また、成形体(繊維板)の比重を0.6〜1.0の範囲としたのは、成形体の比重が0.6未満になると曲げ強度などの製品品質を安定的に確保することが困難となり、また、1.0を越えると製品重量が大きくなり、取扱作業が困難になることによる。なお、製品である繊維板の比重を増大させると、ファイバーどうしが互いに強く押しつけられ、接触面積及び接着面積が増大して、製品の曲げ強度が増大することは前述の通りである。
【0024】
なお、本願発明において、ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2以上のイソシアネート基を有する公知の化合物を意味するものである。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、前記ポリイソシアネートの異性体などが例示される。また、これらのポリイソシアネートは、水と混合し、エマルジョン化して用いることも可能である。
【0025】
なお、本願発明の繊維板の製造方法においては、通常は、前記各条件の範囲内で所定の条件を選択することにより、他の特性を犠牲にすることなく、曲げ強度180kgf/cm2以上、剥離強度3.0kgf/cm2以上の要件を満たすことができる。
【0026】
また、本願(請求項2)の繊維板の製造方法は、前記古紙原料が、(a)新聞紙、(b)漫画本、週刊誌などの雑誌、(c)段ボールの少なくとも一つであって、填料の含有率が乾量基準で10重量%以下の古紙を主成分とするものであることを特徴としている。
新聞紙、雑誌、及び段ボールの少なくとも一つであって、かつ、填料の含有率が乾量基準で10重量%以下の古紙を主成分とする古紙原料を用いることにより、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0で、曲げ強度及び剥離強度が大きく、吸水率の小さい物理的特性に優れた繊維板を得ることが可能になる。
【0027】
なお、炭酸カルシウムなどの填料の多いコピー用紙、コート紙などは、ファイバーが填料に阻害されてバラバラにほぐされにくく、解繊された古紙原料中の細毛の割合を大きくすることが困難であるため、本願発明において古紙原料として用いるのには適していない。一方、填料の少ない、新聞紙、雑誌(漫画本)、段ボールなどは本願発明の古紙原料に適している。
【0028】
また、本願(請求項3)の繊維板の製造方法は、前記古紙を乾式解繊する工程で、含水率が20重量%以下の古紙を用いることを特徴としている。
古紙を乾式解繊する工程で、含水率が20重量%以下の古紙を用いることにより、乾燥工程が不要になり、製造工程を簡略化することが可能になる。
【0029】
また、本願(請求項4)の繊維板の製造方法は、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系熱可塑性樹脂であることを特徴としている。
ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂は、燃焼時に有害ガスを発生するようなことがなく、このポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることにより、安全性を犠牲にすることなく、結合剤として必要な作用を行わせることが可能になる。
【0030】
また、本願(請求項5)の繊維板の製造方法は、前記古紙原料と、前記ポリイソシアネート化合物と、前記樹脂原料とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧する前に、15kgf/cm2以上の圧力で予備プレスを行うことを特徴としている。
繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧する前に、15kgf/cm2以上の圧力で予備プレスを行うことにより、繊維板原料を構成する古紙原料(解繊ファイバー)を、予め互いに絡み合わせるとともに、ポリイソシアネート化合物(接着剤)及び樹脂原料(結合剤)により古紙原料(解繊ファイバー)を接着、結合させやすくなり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
なお、予備プレスの圧力を15kgf/cm2以上としたのは、圧力を15kgf/cm2以上とすることにより、後工程への搬送に適した強度が得られること及びホットプレスなどによる成形工程に供するのに望ましい厚さにまで圧縮できることによる。
【0031】
また、本願(請求項6)の繊維板の製造方法は、古紙を乾式解繊する際に、古紙の含水率が10重量%未満のときには、解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるように水をスプレーすることを特徴としている。
乾式解繊時に古紙含水率が10重量%未満である場合には、温度が上昇して解繊時に発生する微細な紙粉に着火するおそれがあるが、解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるように水をスプレーすることにより、乾式解繊時の温度の上昇を防止して、着火を阻止することが可能になる。
【0032】
また、本願(請求項7)の繊維板は、(a)古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、(b)ポリイソシアネート化合物2〜15重量%(乾量基準)と、(c)融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%(乾量基準)とを含有する繊維板原料を、加熱・加圧することにより形成され、かつ、含水率が10重量%以下、比重が0.6〜1.0であることを特徴としている。
【0033】
乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料と、ポリイソシアネート化合物と、熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料とを所定の割合で含有する繊維板原料を、加熱・加圧することにより形成された、含水率が10重量%以下、比重が0.6〜1.0の繊維板は、古紙原料が密に絡み合い、かつ、ポリイソシアネート化合物が接着剤として機能するとともに、樹脂原料が結合剤として機能するため、古紙原料が確実に接着、結合した状態となっており、曲げ強度、剥離強度、撥水性(吸水性の低さ)などに関し、優れた特性が実現されている。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を示してその特徴とするところをさらに詳しく説明する。
図1は本願発明の一実施形態にかかる繊維板(古紙ボード)の製造方法を示すフローシートである。
【0035】
この実施形態の繊維板の製造方法は、図1に示すように、主要な工程として、古紙原料を粗粉砕する粉砕工程Aと、粗粉砕された古紙原料に、必用に応じて水をスプレーする水スプレー工程Bと、粗粉砕された古紙原料を乾式解繊する乾式解繊工程Cと、接着剤としてポリイソシアネート化合物を添加する接着剤添加工程Dと、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料を添加する樹脂原料添加工程Eと、樹脂原料及びポリイソシアネート化合物が添加された古紙原料(繊維板原料)を所定の形状、厚さに積層する(広げる)積層工程Fと、積層された古紙原料(繊維板原料)を予備的にプレスする予備プレス工程Gと、予備プレスされた繊維板原料を所定の温度に加熱しながら加圧して成形を行う成形工程(ホットプレス工程)Hと、成形された成形体を冷却するとともに水分調整を行う冷却・調湿工程Iと、成形体の養生を行う養生工程Jと、成形体を最終製品(繊維板)にまで仕上げる製品仕上工程Kとを備えている。
【0036】
粉砕工程Aは、新聞紙、雑誌、段ボールなどの古紙原料を、乾式解繊機に供給できる形状になるまで粗粉砕する工程である。
なお、粗粉砕された古紙原料が供給される場合には、粉砕が不要な場合もある。
【0037】
水スプレー工程Bは、古紙原料の含水率が10重量%未満である場合に、乾式解繊工程Cにおいて、温度が上昇して解繊時に発生する紙粉に着火するおそれがあるため、解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるような割合で水をスプレーする工程であり、これにより、乾式解繊時の温度の上昇により古紙原料に着火することがなくなる。但し、古紙原料の含水率が高い場合には水をスプレーすることが不要な場合もある。
【0038】
また、乾式解繊工程Cは、樹脂原料の含有量が調整された古紙原料を乾式解繊する工程であり、この工程で、古紙原料と樹脂原料とが均一に混合される。なお、この乾式解繊工程Cでは、大気空気により解繊対象物である古紙原料中の水分がある程度除去される。
【0039】
また、接着剤添加工程Dは、接着剤としてポリイソシアネート化合物を添加、混合する工程である。なお、ポリイソシアネートとしては、ここでは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
【0040】
樹脂原料添加工程Eは、結合剤として、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料を添加する工程であり、古紙原料が必要量の熱可塑性樹脂を含有している場合には、省略することも可能である。また、古紙原料が必要量の熱可塑性樹脂をある程度含有している場合には、合計含有量が2〜30重量%(乾量基準)となるような割合で熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料が添加される。
なお、この実施形態では、ポリエチレン樹脂を微細化したもの(平均粒径100〜1000μm)を樹脂原料として用いた。
【0041】
さらに、積層工程Fは、樹脂原料及びポリイソシアネート化合物が添加された古紙原料(繊維板原料)を所定の形状、厚さに積層する(広げる)工程である。
【0042】
また、予備プレス工程Gは、所定の形状、厚さに積層された繊維板原料を予備的にプレスする工程であり、15kgf/cm2以上の圧力でプレスが行われる。
【0043】
成形工程(ホットプレス工程)Hは、予備プレスされた繊維板原料を所定の温度に加熱しながら加圧して、成形を行う工程であり、この工程で、樹脂原料(熱可塑性樹脂)が溶融して結合剤としての機能を発揮するとともに、ポリイソシアネート化合物が硬化して接着剤としての機能を発揮する。
【0044】
また、冷却・調湿工程Iは、成形工程Hで成形された成形体を冷却するとともに水分調整を行う工程であり、この工程で、樹脂原料(熱可塑性樹脂)が硬化し、成形体が所定の形状に固定される。
【0045】
養生工程Jは成形体の養生を行う工程であり、また、製品仕上工程Kは、成形体を切断、トリミングして、所定の寸法の最終製品(繊維板)に仕上げる工程である。
【0046】
次に、漫画本から繊維板を製造する方法について説明する。
まず、粉砕工程Aにおいて、漫画本を粉砕する。次いで、古紙原料の含水率が10重量%未満である場合には、水スプレー工程Bにおいて、乾式解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるような割合で水をスプレーする。
【0047】
そして、乾式解繊工程Cにおいて、樹脂原料の含有量が調整された漫画本を、かさ密度が0.030g/cm3以下(例えば、0.022g/cm3)になるまで乾式解繊する。
それから、接着剤添加工程Dにおいて、ポリイソシアネート化合物(MDI)を2〜15重量%(乾量基準)の割合となるように添加する。
【0048】
そして、樹脂原料添加工程Eにおいて、結合剤として、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料(ここでは球状のポリエチレン樹脂)を2〜30重量%(乾量基準)の割合となるように添加する。
【0049】
次に、積層工程Fにおいて、樹脂原料及びポリイソシアネート化合物が添加された古紙原料(繊維板原料)を所定の形状、厚さの板状に積層した後、予備プレス工程Gにおいて、15kgf/cm2以上の圧力で予備的にプレスする。
【0050】
それから、予備プレスされた繊維板原料を、成形工程Hにおいて、160℃以下の所定の温度に加熱しながら加圧して、成形を行う。
【0051】
その後、成形体を、冷却・調湿工程Iにおいて、冷却するとともに水分調整を行う。
【0052】
その後、成形体は、養生工程J、製品仕上工程Kを経て、最終製品(繊維板)に仕上げられる。
【0053】
上記実施形態においては、漫画本(古紙)を乾式解繊し、かさ密度を0.022g/cm3に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、ポリイソシアネート化合物2〜15重量%と、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧して、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0の成形体とするようにしているので、乾式解繊した古紙原料(解繊ファイバー)を密に絡みあわせ、かつ、ポリイソシアネート化合物を接着剤として機能させるとともに、樹脂原料を結合剤として機能させ、古紙原料(解繊ファイバー)中のファイバーどうしを確実に接着、結合させて、製品である繊維板の曲げ強度及び剥離強度を向上させることができる。また、結合剤として添加した樹脂原料が溶融して解繊ファイバー中に入り込むことから、吸水率が減少して撥水性が向上する。
【0054】
なお、上記実施形態の条件の範囲内において製造した繊維板について、特性試験を行った結果、例えば、ポリイソシアネート化合物添加量(MDI)7.0重量%(乾量基準)、樹脂原料(ポリエチレン樹脂)添加量2〜30重量%(乾量基準)、比重0.6〜1.0、含水率10重量%以下の範囲で、曲げ強度180kgf/cm2以上、剥離強度3.0kgf/cm2以上の要件を満たすことが確認された。
【0055】
なお、図2に繊維板の比重と曲げ強度の関係、図3に樹脂原料(ポリエチレン樹脂)の添加量と剥離強度の関係を示す。
なお、図2より、繊維板の比重が大きくなると曲げ強度が向上し、また、図3より、ポリエチレンの添加量が増大すると剥離強度が向上することがわかる。
【0056】
また、表2に、漫画本(古紙)を乾式解繊し、かさ密度を0.022g/cm3に調整した古紙原料(解繊ファイバー)に、ポリイソシアネート化合物(MDI)7重量%、樹脂原料(ポリエチレン樹脂)5重量%を添加した繊維板原料を成形ボックスに手作業で投入し、15kg/cm2でプリプレスした後、160℃以下の温度で成形して得た繊維板の物性を示す。なお、参考までに、JIS規格参考値を併せて示す。
【0057】
【表2】
【0058】
上記実施形態では、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂)を用いているので、燃焼時に有害ガスを発生するようなことがなく、安全性を確保しつつ、結合剤として必要な作用を行わせることができる。
【0059】
また、本願発明においては、接着剤としてポリイソシアネート化合物を用いているので、ホルマリンなどの有害物質の発生を招くことなく、十分な接着強度を確保して、機械的強度や撥水性などの特性を向上させることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、古紙原料として、漫画本を用いた場合について説明したが、新聞紙、段ボールなどを古紙原料として用いることも可能であり、その場合も上記実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0061】
本願発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0062】
【発明の効果】
上述のように、本願発明の繊維板の製造方法においては、繊維板の製造方法のように、古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、ポリイソシアネート化合物2〜15重量%と、融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧して、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0の成形体とするようにしているので、乾式解繊した古紙原料(解繊ファイバー)を密に絡みあわせ、かつ、ポリイソシアネート化合物を接着剤として機能させるとともに、樹脂原料を結合剤として機能させ、古紙原料(解繊ファイバー)中のファイバーどうしを確実に接着、結合させて、製品である繊維板の曲げ強度及び剥離強度を向上させることができる。また、結合剤として添加した樹脂原料が溶融して解繊ファイバー中に入り込み、吸水率を減少させて撥水性を向上させることができる。
【0063】
なお、本発明の各条件の範囲内で所定の条件を選択することにより、他の特性を犠牲にすることなく、曲げ強度180kgf/cm2以上、剥離強度3.0kgf/cm2以上の要件を満たすことが可能になり、実用上必要な特性を備えた繊維板を効率よく製造することができる。
【0064】
また、本願の請求項2の場合のように、新聞紙、雑誌、及び段ボールの少なくとも一つであって、かつ、填料の含有率が乾量基準で10重量%以下の古紙を主成分とする古紙原料を用いることにより、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0で、曲げ強度及び剥離強度が大きく、吸水率の小さい物理的特性に優れた繊維板を得ることができる。
【0065】
また、本願の請求項3の場合のように、古紙を乾式解繊する工程で、含水率が20重量%以下の古紙を用いることにより、乾燥工程が不要になり、製造工程を簡略化することができる。
【0066】
また、本願の請求項4の場合のように、熱可塑性樹脂として、ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることにより、燃焼時に有害ガスを発生するようなことがなく、安全性を確保しつつ、結合剤として必要な作用を行わせることができる。
【0067】
また、本願の請求項5の場合のように、繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧する前に、15kgf/cm2以上の圧力で予備プレスを行うことにより、繊維板原料を構成する古紙原料(解繊ファイバー)を、予め互いに絡み合わせるとともに、ポリイソシアネート化合物(接着剤)及び樹脂原料(結合剤)により古紙原料(解繊ファイバー)を接着、結合させやすくなり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。
【0068】
また、本願の請求項6の場合のように、乾式解繊時に古紙含水率が10重量%未満である場合に、乾式解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるように水をスプレーすることにより、乾式解繊時の温度上昇を防止して、着火することを阻止し、安全性を向上させることができる。
【0069】
また、本願発明の繊維板は、乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料と、ポリイソシアネート化合物と、熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料とを所定の割合で含有する繊維板原料を、加熱・加圧することにより形成された、含水率が10重量%以下、比重が0.6〜1.0の繊維板であり、古紙原料が密に絡み合い、かつ、ポリイソシアネート化合物が接着剤として機能するとともに、樹脂原料が結合剤として機能するため、古紙原料が確実に接着、結合した状態となっており、曲げ強度、剥離強度、撥水性(吸水性の低さ)などに関し、優れた特性が実現されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の一実施形態にかかる繊維板の製造方法を示すフローシートである。
【図2】 本願発明の一実施形態にかかる繊維板の製造方法により製造した繊維板の比重と曲げ強度の関係を示す図である。
【図3】 本願発明の一実施形態にかかる繊維板の製造方法により製造した繊維板の樹脂原料(ポリエチレン樹脂)の添加量と剥離強度の関係を示す図である。
【符号の説明】
A 粉砕工程
B 水スプレー工程
C 乾式解繊工程
D 接着剤添加工程
E 樹脂原料添加工程
F 積層工程
G 予備プレス工程
H 成形工程(ホットプレス工程)
I 冷却・調湿工程
J 養生工程
K 製品仕上工程
Claims (7)
- (a)古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、(b)ポリイソシアネート化合物2〜15重量%(乾量基準)と、(c)融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%(乾量基準)とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧して、含水率10重量%以下、比重0.6〜1.0の成形体とすることを特徴とする繊維板の製造方法。
- 前記古紙原料が、(a)新聞紙、(b)漫画本、週刊誌などの雑誌、(c)段ボールの少なくとも一つであって、填料の含有率が乾量基準で10重量%以下の古紙を主成分とするものであることを特徴とする請求項1記載の繊維板の製造方法。
- 前記古紙を乾式解繊する工程で、含水率が20重量%以下の古紙を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維板の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の繊維板の製造方法。
- 前記古紙原料と、前記ポリイソシアネート化合物と、前記樹脂原料とを含有する繊維板原料を、160℃以上の温度で加熱・加圧する前に、15kgf/cm2以上の圧力で予備プレスを行うことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の繊維板の製造方法。
- 古紙を乾式解繊する際に、古紙の含水率が10重量%未満のときには、解繊後の古紙原料の含水率が10〜15重量%になるように水をスプレーすることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の繊維板の製造方法。
- (a)古紙を乾式解繊し、かさ密度を0.030g/cm3以下に調整した古紙原料(解繊ファイバー)と、(b)ポリイソシアネート化合物2〜15重量%(乾量基準)と、(c)融点160℃以下の熱可塑性樹脂を微細化した樹脂原料2〜30重量%(乾量基準)とを含有する繊維板原料を、加熱・加圧することにより形成され、かつ、含水率が10重量%以下、比重が0.6〜1.0であることを特徴とする繊維板。
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