JP3910858B2 - 自然環境改善用ブロック製品及び浮設体、並びに自然環境改善方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川や排水路、人工湖沼等において、水面緑化、水質浄化、及び水中の人工藻場形成を同時に実現でき、各効果を相乗的に向上することができる自然環境改善用ブロック製品及び浮設体、並びに自然環境改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、河川における岸辺や中洲等に植生するヨシ、ホテイアオイ等の水辺植物は、汚濁の主な原因である窒素やリンを吸収したり、有機物を分解する等の働きを有していることが知られている。即ち河川や排水路では、不法に投棄されるゴミや工業廃水等が原因となって富栄養化が促進され、植物プランクトンが異常発生したり、汚濁が著しいものとなっているため、前記水辺植物は極めて重要な機能を果たしている。さらに、水辺植物は自然環境の保全ばかりでなく、景観や安らぎを与えるという心理的効果の面でも大きな期待が持てる。
一方、水中に生息する海草や藻には無数の微生物が定着し、この微生物を餌とする小生物、小生物を餌にする小魚、小魚を餌にする大型の魚が集まり、さらに小生物や大小の魚類の死骸は微生物にとっての栄養分となる。即ち藻場は生物連鎖の場を提供するという重要な機能を果たしている。
しかし、これらの水辺植物や藻場は、自然環境保全に重要な機能を果たすにもかかわらず、水害対策や水利用等を目的とした河川改修工事の犠牲となって著しく減少しており、そのため前述の自然環境保全の効果も果たされず、機能一点張りの人工的、無機的な領域が拡大していた。
【0003】
水辺植物を植生させる目的では、河川等の水流で流されないように木杭を川底に打ち込んだり或いは石積み等で仕切り壁を形成し、その仕切り壁の内側に土砂を入れて人工的に中洲を造成し、この人工中洲に水辺植物を植生させる方法が一部実施されている。
また、藻場を形成する目的では、帯状に形成した木綿、麻、パルプ等の天然セルローズやレーヨン等の再生セルローズ、合成樹脂、合成繊維あるいは天然繊維を所定長さの紐状、糸状あるいは帯状に形成して浮遊体である係留物或いはロープやネット等の係止体に取り付けた構造が一部実施されている。
しかし、人工中州を形成しても人工藻場の形成には寄与しないし、人工藻場を形成しても水辺植物が植生できる筈もない。そのため、それぞれの工法を河川等に施工する場合には、膨大な面積が必要であった。さらに、前述のような人工中州を河川に施工する場合、形成される人工中州によって水が流れる幅空間が狭められるので、水流が速くなり、隣接して人工藻場を形成した場合に強い水圧を受けるため、生物連鎖の場としての効果が半減してしまうという問題も生ずる。また、水面の係留物(浮遊体)が水流の影響を受けて流される虞もある。
さらに、前記人工中州を形成する工法では、水位の変動の激しい人工湖沼等には全く適用できず、底部がコンクリートで形成された排水路などには仕切り壁が立設し難いという問題もあった。さらに、この方法では、仕切り壁を設ける作業、土砂を入れる作業、土砂に水辺植物を植生させる作業の三つの工程を必要とし、しかもその殆どの作業が水中で行われるため、極めて施工性が悪かった。
また、前記人工藻場を形成する工法では、人工海草を形成する素材として合成樹脂や合成繊維を用いた場合、生体親和性および生物親和性が低く、しかも産業廃棄物となることもあり、天然繊維を用いた場合、生体親和性および生物親和性には優れているものの、腐敗し易く耐久性が悪いという問題があった。さらに、この方法では、水面に配した係留物(浮遊体)が鳥類や施工を知らない第三者により取り除かれてしまう虞もあった。
【0004】
そこで、網目20メッシュ以上(0.84mm以下)のシートを植裁基盤とし、その植裁基盤の端部にフロートを連結し、フロートから炭素繊維フィラメントを吊下げることにより、水面緑化と水中の藻場形成を同時に実現しようとする方法も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記メッシュシートを植裁基盤とする方法では、植裁基盤上に植裁土壌を載置(盛り土)しているに過ぎないため、下面から細粒分が流出し易かった。また、植物と植裁基盤との一体性が図られていないので、植物が高く成長できず、植裁土壌が風雨による波等にさらわれる(オーバーフローする)際に植物も一緒にさらわれることがあった。
本発明者らは、水面緑化、水質浄化、及び水中の人工藻場形成を同時に且つ容易な施工にて実現でき、各効果を相乗的に向上でき、且つ継続することができる工法、それに用いられるブロック製品、浮遊体を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、表面に植裁土壌の収容部が設けられた比重が0.5〜1.0の多孔質コンクリートブロックから成り、多孔質コンクリートブロックの骨材の15%粒径(F15)は、植裁土壌の85%粒径(B85)より小さいことを特徴とする自然環境改善用ブロック製品に関するものである。上記ブロック製品を河川や排水路等に浮設するための浮設体とするには、上記多孔質コンクリートブロック表面に設けられた収容部に植裁土壌を収容し、該植裁土壌に、根がブロック内に侵入するような水生(水辺)植物類等の植物を植裁し、ブロック下面には適宜手段にて多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体を吊設して浮設体とすれば良い。
【0007】
また、本発明は、上記自然環境改善用浮設体を用いた自然環境改善方法をも提案するものであり、前記浮設体の多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体が河川や排水路等の水中に配されるように浮設することを特徴とする。
尚、本発明における自然環境改善とは、水面緑化、水質浄化、水中の人工藻場形成による水中の生物環境の向上を指す。また、河川や排水路以外には、例えばダム調整池、防災調整池、公園、ゴルフ場等の人工湖沼、その他、汚水の流入する閉鎖水域等への運用が可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の浮設体に使用する多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体は、藻草等の微生物付着担体となるものであって、柔軟性及び可撓性に富み水中でばらけて自由に泳動できる多数の炭素繊維フィラメントが結束されたり圧縮されたり編まれたり織られたりして成形されたものである。
この炭素繊維は、生体親和性および生物親和性が高く、プラスの電荷を帯び易く、主としてマイナスの電荷を帯び易い微生物が付着し易いため、微生物の定着度が高い。また、強度、弾性、耐薬品性等において優れた特性を有し、腐敗することもなく、高い耐久性を有する。そのため、従来の合成樹脂や合成繊維、天然繊維を用いた場合のような各種の問題を生ずることなく、微生物付着担体として微生物を定着させ、微生物が小生物を、小生物が小魚を、小魚が大型の魚を藻場へ呼び込み、小生物や大小の魚類の死骸が微生物にとっての栄養分となる,という生物連鎖の場が提供される。
また、柔軟かつ可撓な炭素繊維フィラメントが結束されたり編まれたり織られたりして所定形状に成形された成形体は、水中下では天然の海草や藻のように揺動して小生物や魚類の格好の生息場所を提供する。
【0009】
前記多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体は、両端部が結束されたストランド状、ネット状、組紐状、ふさ付きストランド状、枝付ストランド状、ちょうちん型ストランド状、ほうき型ストランド状、秋田のかんとう型ストランド状、フェルト状等、水中で各炭素繊維フィラメントがばらけて広がる所定の形態に成形しても良い。このような形態は、水中において、成形体を構成する炭素繊維フィラメントがそれぞれ泳動して、炭素繊維フィラメントの露出表面積が大きくなり、それに伴い、微生物の定着できる面積が大きくなるため、望ましい。
【0010】
本発明の浮遊体に使用する多孔質コンクリートブロックは、表面に植裁土壌の収容部(一般的には凹部)が設けられているが、その収容部及び全体の形状や寸法については特に限定するものではない。成形(製造)性、取扱(搬送)性、浮力等を考慮し、適宜に形状や寸法を設定すれば良い。
このように収容部を設けることにより、少なくとも側方から植裁土壌が流出する(オーバーフローする)ことを防止することが出来る。
【0011】
また、多孔質コンクリートブロックは、以下のような発泡樹脂骨材を用いることにより、比重が0.5〜1.0の軽量ブロックとしたものであり、河川や排水路等の水面から水没することなく浮設することができる。
発泡樹脂骨材は、嵩比重が0.03〜0.5であれば特にその樹脂の種類を限定するものではないが、例えば発泡スチロール、特に暗渠用のフィルターとして市販されている熱減容発泡スチロールを使用することが好ましい。この熱減容発泡スチロールは、緩衝材等として広く使用されている発泡スチロールの生産時に発生する端材を粉砕し、熱を加えて収縮させたリサイクル素材であり、この熱減容発泡スチロールを使用することにより本発明は省資源化に貢献するものとなる。尚、熱減容発泡スチロールは、比重0.1〜0.5程度までの調整が可能であり、粒径は1〜15mm程度までの範囲で分級が可能であるが、粒径2.5〜10mmのものを用いる。
上記発泡樹脂骨材の粒径が2.5mmより小さい場合、用いるセメント等の結合材の量が増えるため、作製されるブロックの比重が大きくなって水面に浮設させる場合に十分な浮力が得られない。また、粒径が10mmより大きい場合、強度が低くなって耐久性及び取扱性が悪くなる。尚、従来のガラス発泡骨材等の吸水量の大きい材料では、当初は水面に浮かんだとしても使用中に吸水した場合に比重が大きくなり、水面に浮設させる場合に十分な浮力が得られない。
【0012】
上記多孔質コンクリートブロックは、前記発泡樹脂骨材に、セメント等の結合材及び水をそれぞれ適宜に配合し、空隙率20〜50%、比重0.5〜1.0となるように作製される。比重が0.5より小さい場合は、発泡樹脂骨材に対する結合材が少な過ぎるのであって発泡樹脂骨材が十分に結合材に被覆されず、耐光性が低いものとなる。比重が1.0以上の場合は植栽当初は水面に浮いていても、水生植物等の水辺植物の成長や枯死した植物の堆積等による荷重のため水面に浮遊できずに水没してしまう。
この多孔質コンクリートブロックにおいて、その体積の20〜50%を占める連続する微細空隙は、表面の収容部に収容した植裁土壌の細粒分が厚み方向(下方向)へ流出しようとするが、途中で自らが微細空隙を閉塞する状態となり、例えば前述のメッシュシートを植裁基盤として用いる方法のように細粒分が下面から流出することがない。また、微細空隙は収容部に植栽した植物の根が植裁土壌からブロック内部に侵入し、この状態で水分や栄養分を吸収して茎から上の部分を保持させ、直立状に植物を植栽することを可能とし、結果的に植物とブロックとの一体性を向上する。尚、前述のメッシュシートを植裁基盤として用いる方法でも、表面に植裁された植物の根はメッシュシートのメッシュから下方へ根を伸ばしているが、軽微な力、例えば風雨の力で容易に脱落、抜け出てしてしまう。これに対し、本発明の植裁基盤である多孔質コンクリートブロックでは、植物の根は複雑に入り組んだ微細空隙内にからんでいるので、風雨等の力に対する抵抗力が大きく、安定に植裁されるものとなる。
また、炭素繊維フィラメントからなる成形体には、活性化汚泥が付着し易いため、この活性化汚泥の肥料成分を、多孔質コンクリートブロックの毛細管現象により下部より吸い上げ、それを呼び水として植裁植物の根がブロック内に侵入することを促進する。植裁植物の根はブロック内に侵入し、炭素繊維フィラメントに付着した活性化汚泥より、窒素、リン等の植物に必要な栄養素を吸収し、植物を成長せしめる。また、汚泥自体も植裁植物の値からの肥料成分の吸収により減容化させることができる。このような植物の生長と水中の浄化作用効果はそれぞれ相乗効果をなし、相互に有効に働くことにより自然環境が改善される。
さらに、多孔質コンクリートブロックは、骨材として発泡樹脂骨材を用いたので、従来のパーライト等の無機系の軽量骨材を用いた場合に比べて断熱性が高いという利点もある。浮力体となる発泡スチロール等の発泡樹脂骨材は、その表面をセメント等の結合材で被覆されているため、紫外線による劣化が防止され、耐光性が高いものとなる。
また、多孔質コンクリートブロックは、工場二次製品であるため、生産性、施工性に優れているという利点もある。軽量であることは、現場までの搬送、現場での設置等の作業性が良いという効果も得られる。
【0013】
多孔質コンクリートブロックの収容部に収容される植裁土壌についても特に限定するものではないが、ブロックの骨材の15%粒径(F15)が植裁土壌の85%粒径(B85)より小さい(F15<5×B85)場合には前述の植裁土壌の流出を防止する効果をより一層高めるため望ましい。即ち相対的にブロックの骨材が大き過ぎる(植裁土壌の土粒子が小さ過ぎる)場合、植裁土壌の細粒分が収容部の下面側から流出してしまうこともある。
【0014】
さらに、前記の多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体を、ブロック製品(多孔質コンクリートブロック)下面に吊設するための構成は、特に限定するものではない。
例えば多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体の上端を掛止するための掛止金具等を、多孔質コンクリートブロックの成形時に埋設して一体成形させても良いし、ブロック成形後に固定しても良いし、或いは掛止金具を用いずにブロックに穴を穿設して炭素繊維フィラメントからなる成形体を結びつけるようにしても良いし、その他どのような構成でも良い。また、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体は、上端に限らず複数箇所を掛止するようにしても良い。
【0015】
こうして作成される本発明の自然環境改善用浮設体は、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体が河川や排水路等の水中に配される(即ち水没する)ように多孔質コンクリートブロックを水面に浮設すると共に、多孔質コンクリートブロック表面の収容部に植裁土壌を収容して水生植物等の植物を植裁するだけの簡易な施工により、植裁土壌の細粒分が流出することがなく、植物の根が植裁土壌からブロックの微細空隙にからんで一体化するので、ブロック(植裁基盤)との一体性が高くなり、水面緑化及び水質浄化、並びに水中の人工藻場形成を果たすことができる。
尚、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体は、岸辺や水底から延在させた係留ロープとして用いても良い。
【0016】
多孔質コンクリートブロック表面の収容部に植裁する植物としては、生息できるものであれば特にその種類を限定するものではないが、茎及び葉が水面から上に位置して根が深く植裁土壌及びブロック内(空隙)に侵入して絡み付くような抽水植物を主とする水辺植物を植裁することが、植物とブロックとの一体性の面で望ましい。即ち比較的大径の骨材を用いてブロックを形成した場合、ガマの穂等の根径の大きな植物を植裁すれば良く、比較的小径の骨材を用いてブロックを形成した場合、クレソン等の根径の小さな植物を植裁すれば良い。逆に植裁する植物を主として考えるならば、ガマの穂等の根径の大きな植物を植裁しようとする場合、比較的大径の骨材を用いてブロックを形成すれば良く、クレソン等の根径の小さな植物を植裁しようとする場合、比較的小径の骨材を用いてブロックを形成すれば良い。一例を挙げると、平均粒径20mmの骨材を用いて作成した多孔質コンクリートブロックの空隙は3mm程度であり、ガマの穂等の植物を植裁させると、根がブロック内の空隙に深く侵入して絡み付き、強い一体性が得られる。また、メンテナンスの頻度や水質浄化の効率からは、根が細かく、株が横に広がる中型の多年草が望ましい。良く知られたものではクレソン、ミント、セリなどが挙げられる。
湖沼や人工湖沼等において、本発明のブロック製品を水面を移動可能に浮設しても良いが、河川や排水路等においては水流があるため、岸辺等から延在させた係留ロープにて所定箇所に係留させるようにしても良い。
また、この浮設体を湖沼や人工湖沼等の岸部から遠く離れた位置に係留させる際には、湖底に配した(或いは打ち込んだ)アンカーに係留ロープを連結して係留すれば良く、その際、係留ロープは水位の変更に対応できるようにしておけば良い。前述のようにこのような係留ロープとして多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体を用いるようにしても良い。
【0017】
特に湖沼や人工湖沼等の湖底に配したアンカーに係留ロープを連結して係留する場合において、アンカーとして、比重が1.0以上の多孔質コンクリートブロックを用いることにより、水質浄化の目的の接触酸化法にて用いられる礫や木炭などと同様に接触材としての効果、即ち生物膜による浄化も実施される。さらに、魚礁として利用することもでき、或いは食物連鎖による汚濁有機物の取り込みも期待できる。
【0018】
そして、このように水中に多数の炭素繊維フィラメントが配され、水面に多孔質コンクリートブロックが浮設されるように本発明の浮設体を施工することにより、それぞれ単独に施工した場合に比べて水面緑化、水質浄化、水中の人工藻場形成において相乗的に効果が向上することが見出された。
即ち水面緑化及び水質浄化の効果は、本来多孔質コンクリートブロック部分のみに帰属される効果である。本発明では、多孔質コンクリートブロックの下面から多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体が吊設されて人工藻場を形成しているので、水中の栄養塩類が多孔質コンクリートブロックの略中央下面に集められて高栄養塩類帯を形成している。そのため、収容部(の植裁土壌)に植裁された植物の根がその高栄養塩類帯に接触し易く、植物の成長速度が速くなる。特に根が深く浸透していない植物でも、多孔質コンクリートブロックの毛細管力により栄養塩類が微細空隙を通って上方へ移動するので、このような植物の生育促進にも寄与し、総じて水面緑化が促進される。また、この水生植物の栄養塩類の吸収は、水中からの栄養塩類の除去にもなるので、水質浄化も果たされる。
さらに、水中の人工藻場形成の効果は、本来多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体のみに帰属する効果であるが、最も水流の速い水面を多孔質コンクリートブロックが覆うので、水流が緩み、微生物(特に好気性の微生物)が定着し易くなり、この微生物を餌とする小生物も、小生物を餌にする小魚も、小魚を餌にする大型の魚もそれぞれ集まり易く、好適な生物連鎖の場が形成される。これに対し、例えば前述のメッシュシートを植裁基盤として用いる方法のように小径のフロートに炭素繊維フィラメントを吊設した場合には水面近くでは水流が速すぎ、水流が最も遅い水底付近では好気性の微生物が生息できない。嫌気性の微生物に基づく生物連鎖の場が主に水底付近に形成される点では同様である。
その結果、例えば人工湖沼等は水位の変更が激しいため、従来デッドスペースとして見過ごされてきたが、本発明の浮設体は極めて軽量であるため水位が変更しても安定に浮設或いは係留され、緑化スペースとして有効に利用することができる。そのため、本発明の浮設体による緑化は、緑化のための新たな土地(確保)を必要としないので、自然環境の保全に多大な貢献をなし、産業振興や宅地造成との兼ね合いにおいても多大な貢献をなすものであり、極めて実用的価値が高い。
【0019】
また、浮設体に付着する微生物膜とその表面に生息させた水生植物とがそれぞれの水質浄化作用によって湖沼表層の水質の改善にも寄与する。したがって、本発明の浮設体による水浄化は、例えばダム調整池、防災調整池、公園、ゴルフ場等の人工湖沼、その他、汚水の流入する閉鎖水域等への運用が効果的である。
前記水質浄化作用において、ブロック製品に付着する微生物膜は、礫間浄化と同様の水質浄化機能を有するものとなる。
前記水質浄化作用において、水生植物は、窒素とリンを吸収するため水質が浄化される。さらに詳しくは、水生植物による汚濁負荷の吸収作用、水生植物の根や茎の回りに付着した生物膜や底泥界面における吸着,硝化,脱窒,分解等の作用等があり、また水生植物の根や茎が、水中の窒素やリンを栄養分として吸収し、低湿地に生息する脱窒菌が水中の脱窒作用を促進し、底泥がリンを吸着し、汚濁水が水生植物の茎と接触することで汚濁物質が沈澱し、茎に付着、生息する微生物が有機物を分解する。
さらに、水生植物の生息ばかりでなく、魚類の浮産卵礁、昆虫類の生息場所としても機能し、自然に近い環境を形成する。特に複数のブロック製品を近接させて密集状に連結すると、ブロック製品どうしの間隙が水流が緩められた場となるので、魚類、その他の大小さまざまな水生動物が生息して食物連鎖により水質を浄化することができる。勿論、単一のブロックでも連続する微細空隙内が、微小な水生動物が生息する場となる。
また、特に複数のブロック製品を近接密集状に連結して係留させた場合には、太陽光線を遮蔽することによって生物プランクトンの異常発生を抑制するという利点もある。
尚、水生植物に多年草を使用した場合、植え替えは不要となる。但し、使用環境によって異なるものの、冬季に枯死した葉や茎の堆積によって、上載荷重が増加し、浮力が失われることが考えられるため、植物の繁殖期に入る前にブロック製品の喫水深を確認し、それが施工当初に比べ著しく増加している場合には堆積物を除去する必要がある。
【0020】
また、本発明の浮設体における多孔質コンクリートブロックは水面に浮設されており、前記従来の人工中州のように水が流れる幅空間を狭めないため、水流も速くならない。また、多数の炭素繊維フィラメントはその下方の水中に配されているので、別々に配する場合のように膨大な施工面積を必要としない。さらに、多数の炭素繊維フィラメントは、多孔質コンクリートブロックに吊設されているので、従来の係留物(浮遊体)のように鳥類や施工を知らない第三者に取り除かれる虞もない。
【0021】
【実施例】
〈ブロック製品の作製〉
下記(1)に示す原材料、(2)に示す配合にて、図1に示す形状の多孔質コンクリートブロックからなるブロック製品1を作製した。全体の縦横寸法は300×300mm、厚み寸法は100mmである。また収容部2の開口面の縦横寸法は200×200mm、底面の縦横寸法は150×150mm、深さ寸法は50mmである。
(1)使用原材料
・ 骨材(発泡樹脂骨材):熱減容発泡ポリスチロール(白井商事株式会社製,嵩比重0.223、粒径2.5〜10mm)尚、詳細な性状は表1に示した。
【表1】
・ 結合材:早強セメント
・ 樹脂混和剤:SBR系混和剤、トマックスーパー、固形分50%
・ 高性能減水剤:高性能減水剤、マイティー150
・ 木炭:木質炭素、ビノス、有限会社松井工業製、粒径約2.5mm以下
(2)配合
【表2】
【0022】
〈浮設体の作製及び人工貯水池への施工〉
前記ブロック製品1の表面の収容部2に用土3を収容し、該用土の中央に植物(ガマ)4を植裁し、さらに下面に図示しない掛止金具(真鍮製,外径20mm)を4本固定し、各掛止金具には、外径調整が自由に行えるナイロン製バンド〈図示せず〉を具備させ、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体5を取り付けて浮設体6とした。尚、前記発泡樹脂骨材の15%粒径(F15)が用土の85%粒径(B85)より小さくなるように用土を分級、使用した。
図2に示すように作製した浮設体6を、炭素繊維フィラメントからなる成形体5が水中に配されるように深さ1.5mの人工貯水池7に施工した。
【0023】
〈水質浄化試験及び植物生育試験〉
前記のように浮設体6を施工したものを実施例とし、人工貯水池の水質を測定して1.5ヶ月経過後の水質と比較した。また、植物の生育長さを測定した。結果は、表2に示した。
尚、炭素繊維フィラメントからなる成形体5を吊設しない浮設体を比較例として同様に試験を行い、結果を表3に併せて示した。
【表3】
【0024】
上表3に示すように本発明の実施例では、水質浄化及び植物生育に著しく高い効果を有することが確認された。また、比較例との比較により、相乗効果があることも確認された。さらに、試験後の浮遊体を水上に引き上げて確認すると、植裁したガマの穂の根がブロック内に深く侵入して極めて強固に絡み付いていた。
【0025】
以上本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の自然環境改善用ブロック製品は、極めて軽量な多孔質コンクリートブロックであり、従来のメッシュシートを植裁基盤とする方法に比べて、それ自体が浮力体であって、適度な厚みを有して複雑な微細空隙を有するものであり、しかもその表面には植裁土壌を収容する収容部を有する構成であり、後述する浮設体の植裁基盤として極めて好適に用いることができる。
さらに、発泡スチロール等の発泡樹脂骨材の表面をセメント等の結合材で被覆されているため、紫外線による劣化が防止され、耐光性が高く、しかも工場二次製品であるため、生産性、施工性に優れているという利点もある。さらに、軽量であることで設置、搬送等の作業性が良いという利点もある。特に暗渠用のフィルターとして市販されている熱減容発泡スチロールを使用する場合、リサイクル素材を有効利用することになるので、省資源化に貢献するものとなる。
【0027】
また、本発明の自然環境改善用浮設体は、多孔質コンクリートブロックからなる植裁基盤のみ、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体のみを配した場合に比べて、或いは従来のメッシュシートを植裁基盤とする方法に比べて、水面緑化、水質浄化、水中の人工藻場形成において相乗的に効果が向上でき、且つその効果が継続できるものである。
本発明の浮設体は、多孔質コンクリートブロックを植裁基盤とするので、植裁土壌の細粒分下方からの流出が防止され、さらに表面に植裁土壌の収容部を設けたので、側方からオーバーフローすることも防止される。
炭素繊維フィラメントからなる成形体により、植裁基盤の下面に水中から栄養塩類が集められ、収容部の直下に高栄養塩類帯が形成されるため、収容部に植栽した植物の根が植裁土壌からブロック内部に侵入し、この状態で水分や栄養分を吸収して植物の生育が促進される。
生育が促進された植物は、根がブロック内部の微細空隙に深く侵入するため、茎から上の部分を保持させ、直立状に植物を植栽することを可能とし、結果的に植物とブロックとの一体性を向上することができる。
【0028】
したがって、本発明の植栽コンクリートブロックは、人工湖沼等の水面に係留させたり、ビル等の建築物の屋上に配設することにより、産業振興や宅地造成、災害対策等を阻害することなく緑地面積を拡大することができ、景観を向上させることができる。
特に人工湖沼等の水面緑化に好適であり、水位が激しく変更しても水面に安定に係留されるので、その表面に生息させた水生植物が水没したりすることなく安定な生息条件を供給することができる。そして、従来見過されてきた人工湖沼等の水面を緑化ベースとして利用でき、その景観を向上できる。この人工湖沼等は水位の変更が激しく従来はデッドスペースであったことを考慮すると、本発明の植栽コンクリートブロックによってなされる緑化方法は、緑化するための新たな土地(確保)を必要としないため自然環境の保全に多大な貢献をなすことは勿論、産業振興や宅地造成等との兼ね合いにおいても多大な貢献をなし、極めて実用的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブロック製品の一実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明の浮遊体を人工貯水池に施工した状態を模式的に示す側断面図である、
【符号の説明】
1 多孔質コンクリートブロック
2 収容部
3 植裁土壌
4 植物
5 炭素繊維フィラメントからなる成形体
6 浮設体
7 人工貯水池
Claims (3)
- 表面に植裁土壌の収容部が設けられた比重が0 . 5〜1 . 0の多孔質コンクリートブロックから成り、多孔質コンクリートブロックの骨材の15%粒径(F15)は、植裁土壌の85%粒径(B85)より小さいことを特徴とする自然環境改善用ブロック製品。
- 比重が0 . 5〜1 . 0の多孔質コンクリートブロック表面に設けられた収容部に植裁土壌を収容し、該植裁土壌に、根がブロック内に侵入するような植物を植裁し、ブロック下面には多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体を吊設したこと を特徴とする自然環境改善用浮設体。
- 請求項2に記載の浮設体を、多数の炭素繊維フィラメントからなる成形体が河川や排水路等の水中に配されるように浮設することを特徴とする自然環境改善方法。
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