JP3910029B2 - 水管橋の端末支持構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、橋梁形式で河川等を横断する水管橋の端末支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
主に通水管を桁の主要部材とした河川等に設置される水管橋は、支間長が短い場合はパイプ自体の断面強度で橋梁としての構造を保持するパイプビーム形式とすることができるが、支間長が長くなると補剛桁を設置したり、トラス構造に代表される断面補剛をしたり、あるいは図7のローゼといった橋梁に類する形式の構造が採用される。このような構造の水管橋の支点部を支持する支持形式については、パイプビーム形式のなかでも比較的小規模の水管橋では、片側端のみを固定支持する一端固定他端支持形式、あるいは両端部をコンクリート防護による固定支持とした両端固定支持形式のいずれかが採用され、支間長が長く大規模になると殆どが単純支持形式とされる。
【0003】
図8に中規模以上として設置される水管橋の他の例の外観斜視図を示す。図示の水管橋は、単純支持形式の例であり、通水管は支間距離が長いためトラス補剛部材により通水管のみの断面の剛性不足を補強してたわみ量が設計基準値以内となるように構成されている。トラス補剛部は、鋼管をトラス状に組み合わせて形成され、各支間の支持部位置で通水管を接続して設置されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、水管橋は特殊な構造物という印象が強く、過去に設置された経験、実績を重視し、水管の口径、支間長等の条件により構造形式が画一的に決定される傾向にあり、新形式を模索する姿勢が積極的とは言い難い面がある。又、構造計算をする場合、安全性を確保するための計算基準が定められており、これにより許容値として与えられるのは構造物としてのたわみと応力であるが、それらの値を考慮した形状決定においてたわみによる制約の方が支配的である傾向が強い。従って、より経済的な設計を行うためには、たわみを軽減できる構造形式及び支持形式を検討する必要がある。
【0005】
特に支持形式については、両端固定支持形式にするか、あるいは、一端固定他端支持形式、もしくは単純支持形式にするかはたわみに大きく影響を与え、前者はたわみを軽減し支点部、径間部において応力を分散できる支持形式であるため、経済設計をするには有効である。しかし、温度の変化による伸縮が内部応力として作用するため、その影響が小さい小規模、短支間の水管橋にのみ採用されるに過ぎない。
【0006】
従って、支持形式としては基本的に両端固定形式相当とするが、温度による内部応力の影響を除去できる形式を検討すれば、たわみを軽減しかつ中間部の応力を分散することが可能となるが、このような提案は今までになされたことがなく、通水管の口径、支間長等の条件から画一的に決められているのが現状である。
【0007】
この発明は、上記の問題に留意して、小規模の水管橋に適用される両端固定支持構造と同様の機能を有し、支間距離の長い中規模程度の水管橋にも適用でき、かつ補剛材を省略して通水管を支持し、通水管自体で橋梁を構成するシンプルで簡易な構成であり、経済的コストで水管橋を設置できる水管橋の端末支持構造を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決する手段として、通水管を所定の支間位置に支持部で支持して水管橋を形成し、支間の一端はコンクリート防護部のような固定支持部で支持し、他端を通水管の軸方向に移動自在、かつ曲げによる回転に対しては固定の可動支持部で支持するように構成した水管橋の端末支持構造としたのである。
【0009】
かかる構成としたこの発明の水管橋の端末支持構造は、中規模程度までの長い支間距離の水管橋に適用でき、それぞれの支間における端末支持の構成は両端固定支持と同等の機能を有する。通水管の支間の一端は固定支持部により固定され、他端は可動支持部により通水管の軸方向に移動自在、かつ曲げによる回転に対しては固定となるように支持されている。従って、通水管に温度上昇による伸びが生じても他端はその伸びを吸収するように支持部が移動して内部応力を生じることがない。
【0010】
一方、他端の支持部が移動しても通水管の曲げによる回転に対しては固定支持と同様に通水管は支持される。このため、各支間中央でのたわみ量、応力は両端固定支持と同じ条件であるため、他の支持形式に比べて最小限に抑えられている。従って、一般に中規模程度の水管橋に対し画一的に適用される支持構造の場合に比べると、設計基準に基づいて要求されるたわみ制限値が本発明の水管橋では小さいため、同等のたわみ制限値の範囲では支間距離が長く設定できることとなる。
【0011】
さらに、支間距離を長く設定する際に通水管に対する補剛部材などを必要とせず、通水管自体の剛性でたわみ制限値を満足できる。従って、支間距離が長くなっても、補剛部材を必要とせず、通水管自体で橋梁を構成でき、水管橋全体の構造がシンプルで簡易となり、当然使用される補剛材は大幅に減少し、かつ工事費も大きく減少するため、設備コストが経済的なものとなる。
【0012】
【実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態の水管橋の1支間部分の概略構成を示している。図示の水管橋は、中規模程度のものであり、その主要部分を示しており、支点A1 は河川の土手の上に設けた橋台11上に、支点A2 は河川中に設けた橋脚21の上にそれぞれ設けられ、両支点A1 〜A2 間が所定の支間距離となる位置に設置され、これらのA1 、A2 により通水管1が支持されて水管橋が形成されている。通水管1L 、1M は通水管1に接続される通水管である。なお、図示の水管橋は、前述した従来例の中規模の水管橋と同程度の支間距離であるが、トラス構造による補剛部材は設けられていない。
【0013】
図示のように支点A2 では通水管1の端は、従来と同様に、橋脚21上にコンクリートブロック22により固定支持されている。このため、通水管1の端は軸方向へも、回転に対しても完全に拘束されている。これに対し、支点A1 では通水管1の端は、図示の例では2つの支持部12a、12bを有する可動支持部12により通水管1の軸方向に対して移動自在でかつ回転に対して固定支持となるように支持されている。なお、通水管1は陸上の通水管1L と伸縮管であるベローズ継手2を介して接続されている。上記支点A1 の支持部12の詳細構造について図2〜図5に示す。
【0014】
図示のように、支点A1 の2つの支持部12a、12bは互いに近接して設けられ、一方の支持部12aは通水管1と溶接により一体に挿通固定され、かつコンクリート橋台11に対し固定手段13aにより移動自在に設置され、設置の後軸方向にのみ移動可能である。
【0015】
固定手段13aは、コンクリート脚台に固定された据付板11a上にスペーサ15aを置き、その上に設置される支持部12aの脚部12aL にこの脚部に形成されている長穴を介して挿通された固定ボルト、ナット14aにより脚部12aL を長穴の範囲で軸方向に移動自在に締結するように形成されている。この場合、固定ボルト、ナット14aによる締結は、緩み止めされ、脚部12aL が移動し得る程の力で締結されている。据付板11aは、据付高さ調整のための無収縮モルタルが用いられている。
【0016】
もう一方の支持部12bも、通水管1と溶接により一体に挿通固定され、かつコンクリートの橋台11に対し固定手段13bにより移動自在に設置されている。この固定手段13bは、据付板11b上に基板16を置き、その上に所定の間隔で対向して置いた一対のスペーサ15b、15bを挟んで挾持板16’を重ね、基板16、挾持板16’を一対の固定ボルト、ナット14b、14bにより据付板11b、橋台11に対し締結し、スペーサ15bと15bの間の隙間に支持部12bの脚部12bL の端を移動自在に挾持するように形成されている。
【0017】
上記隙間はスペーサ15bと15bの間で、かつ基板16と挾持板16’との間に形成されるものであり、この隙間に挿通される脚部12bL の端の上面に設けた上板の上にテフロン(R)製の摺動部材17が接着剤で固定されている。脚部12bL はその下面が基板16上で摺動自在であり、かつ摺動部材17は挾持板16’との間に殆ど隙間がなく、しかも挾持板16’に対し摺動自在である。18は、脚部12bL の内側端に沿って設けられたガイド部材であり、脚部12bL が幅方向に移動するのを規制すると共に、通水管1の軸方向への移動を案内する役目をする。
【0018】
なお、一対の支持部12a、12bは、それぞれの一対の脚部12aL 、12aL 、及び12bL 、12bL について一対の固定手段13a、13a、及び13b、13bを互いに対称な形で備えている。又、脚部12aL 、12bL の移動できる範囲はスペーサ15bと15bの対置されている間隔内であり、図3中に支持部12a、12bの移動端として1点鎖線及び2点鎖線で示す範囲内である。
【0019】
図4は図3の矢視IV−IVから見た断面図であるが、図中固定手段13bは左側では点線で、右側では実線で便宜的に示している。図5は、固定手段13bの分解斜視図を示す。支持部12bの脚部12bL 上にテフロン(R)製の摺動部材17が設けられているのが分かる。
【0020】
上記の構成とした実施形態の水管橋は、一端固定他端可動形式の支持部で支持されていながら、両端固定支持と同等の機能が得られ、以下ではこれを摺動型固定ビーム形式の水管橋と称する。前述したように、支点A2 はコンクリートブロックで完全に固定しているのに対し、支点A1 では通水管1は2点支持され、かつ軸方向に移動自在、回転に対しては固定支持と同等に支持されている。このため、通水管1が温度上昇で伸長した場合、その伸びは支点A1 側へ伸びる。
【0021】
このとき、支点A1 の支持部12aと通水管1は橋台11に対し自由に移動して伸びる。支持部12bも通水管1の伸びに伴って移動する。支持部12bはその脚部12bL が据付板11bの基板16と挾持板16’との間で所定の範囲内移動自在であるから、通水管が温度上昇で伸びても内部応力が増加することなく支持部12bの移動によって伸び変化を受入れ、かつ支持状態は温度上昇の前後で変化しない。
【0022】
なお、上記支点A1 における2点支持で、軸方向に移動自在、回転に対しては固定支持と同等に支持するというのは次のような作用を意味する。支点A1 とA2 の間の通水管1は、自重及び管内に含まれる水の重量で中央付近を下に凸の状態に曲がろうとする。このとき、支点A1 では支持部12aにより鉛直下方への重量を支持する。しかし、支持部12aに隣接して通水管1を支持する支持部12bでの端部は上記曲げにより持上げられようとするため、支持部12bではこの持上げ力を抑止するように支持する。このように、支持部12aと12bは通水管1の曲げによる回転に対し互いに連動して通水管1を固定支持と同様に支持しているのである。但し、曲げによる通水管1の軸方向長さの変化に対しては支持部12a、12bは共に移動自在である。又、支点A2 での固定支持については説明するまでもない。
【0023】
上記一端固定、他端は2つの支点A1 とA2 による支持形態の水管橋を従来の支持形式の水管橋と比較すると、次のような構造上の差異が生じる。
【0024】
(1)両端固定支持形式では温度上昇による内部応力の増大が問題となるため、短い支間距離の小規模水管橋にしか適用できなかったのに対し、実施形態の水管橋では温度上昇による内部応力の増大がないため、支間距離を長く(例えば支間長35m)した少なくとも中規模程度の水管橋に適用できる。
【0025】
(2)支間距離の長い中規模程度までの水管橋を構成する場合でも、両端の支持は基本的に両端固定と同等の機能を有するから、支間中央での最大たわみ量が支間距離が長くなると一般に採用される単純支持形式の場合に比べて1/5、中間部の応力は1/3に減少する。従って、単純支持形式では必要とされた補剛部材を必要とせず、通水管の剛性だけで水管橋を構成できる。
【0026】
(3)可動支持部12では応力が増大し、かつ曲げモーメントによる鉛直反力が作用するため、これに対応できる構造、強度の可動支持部12を構成しなければならない。しかし、許容支間距離が長くなるため支持部材の数量を単純支持形式の場合と比べても少なくすることができるため、使用される鋼材量を大幅に削減し、かつ工事費を減少させ、経済的コストで水管橋を設置することができる。
【0027】
図6に可動支持部12の構造の部分変形例を示す。(a)図の例は、固定手段13b’の形状が異なっている。この固定手段13b’は一体型の中空部材から形成されており、その中空部に支持部12bの脚部12bが挿入され、水平方向には所定範囲内で摺動自在である。脚部12bの上、下面にはテフロン(R)製の摺動部材17、17が取り付けられている。但し、下面の摺動部材17は設けなくてもよい。この固定手段13b’も、中空部材を固定支持することにより曲げによる回転に対し固定支持となるように形成されている。
【0028】
なお、図示省略しているが、支持部12aは第1実施形態と同様に近接して設けられている。又、支持部12bには鉛直反力が上向きに作用するから、支持部12bを橋台11上に固定する際に引き抜かれないようコンクリート材でコーナ部を押える、あるいは突出部をコーナ部に係止して浮き上りを防止するとよい。
【0029】
(b)図の例は、支持部12b’の構造が第1実施形態と異なっている。この例でも図示省略しているが、支持部12aは第1実施形態と同様に設けられている。支持部12b’は、橋台11上に形成されたコンクリートブロック11K 内の軸受部にテフロン(R)製の摺動部材17を設けたものから成る。通水管はL字形の通水管1L と軸受部に続く拡径部12bh 内でベローズ継手2’を介して接続され、この通水管1を支持部12b’の軸受部で軸方向へ移動自在に支持されている。
【0030】
この場合も、支持部12b’は上記構成により曲げによる回転に対し固定支持となるように形成されている。L字形の通水管1L は、コンクリートブロック11K から橋台11内へ屈曲して設けられているが、第1実施形態と同様に水平に設けてもよいことは勿論である。
【0031】
上述した(a)図、(b)図のいずれの例も、上記支持部12b又は12b’と図示しない支持部12aとが協働して第1実施形態と全く同じ機能を果たすことについては詳しく説明するまでもなく明らかである。
【0032】
又、図示していないが、小規模で支間距離が短い場合は、上記可動支持部12は2つの支持部12a、12bの一方の12bだけとし、その支持部構造は回転を拘束しつつ伸びを吸収できる構造のものとすることもできる。この場合、図6の(a)図、(b)図の支持部12b、12b’は、単独で通水管1の伸縮に対し軸方向へ移動自在、かつ曲げによる回転に対して固定となる機能を保持するためには図示の支持部12b、12b’の軸方向長さをこれに対応できる長さに設定して構成することとなる。
【0033】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、この発明の水管橋端末支持構造は、各支間の一端を固定支持部、他端を軸方向に可動支持、曲げによる回転に対しては固定支持となる可動支持部でそれぞれ支持するように構成したから、両端固定支持と同等の機能を有し、たわみ量が小さいため支間距離の長い中規模程度までの水管橋に適用でき、かつ補剛部材を必要としないため、通水管自体で水管橋を構成でき、又全体の構成がシンプルで簡易となり、使用鋼材が減少するため工事費が大幅に減少され、経済的コストで水管橋を設置できるなど種々の利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の水管橋の主要部分の側面図
【図2】支点A1 の外観斜視図
【図3】同上の側面図
【図4】図3の矢視IV−IVからの断面図
【図5】固定手段の外観斜視図
【図6】支持部構造の部分変形例の断面図
【図7】従来例の中規模以上の水管橋の外観斜視図
【図8】従来例の中規模以上の水管橋の他の例の側面図、断面図及び外観斜視図
【符号の説明】
1、1L 、1M 通水管
2 ベローズ
11 コンクリート脚台
11a、11b 据付板
12 可動支持部
12a 支持部
12b 支持部
12aL 、12bL 脚部
13a、13b 固定手段
14a、14b 固定ボルト、ナット
15a、15b スペーサ
16 基板
16’ 挾持板
17 摺動部材

Claims (6)

  1. 通水管を所定の支間位置に支点A 、A で支持して水管橋を形成し、支間の一端はコンクリート防護部のような固定支持部で支持し、他端を通水管の軸方向に移動自在、かつ曲げによる回転に対しては固定の可動支持部12で支持するように構成し、上記他端の可動支持部12は、同一橋脚台上に互いに近接して設けられる複数の可動支持部12a、12bから形成し、これら可動支持部12a、12bはそのうちの1の可動支持部が他の可動支持部と連動して通水管1の曲げによる回転に対して固定支持し、軸方向には全ての可動支持部12が移動自在に支持するように設けた水管橋の端末支持構造。
  2. 前記他端の可動支持部12のうちの1の可動支持部を、この可動支持部の脚部を一体型の中空部材に摺動自在に挿入し、この中空部材を固定手段として曲げによる回転に対し固定支持となるように形成したことを特徴とする請求項に記載の水管橋の端末支持構造。
  3. 前記他端の可動支持部12のうちの1の可動支持部を、通水管を挿通自在に支持する軸受部材から形成したことを特徴とする請求項に記載の水管橋の端末支持構造。
  4. 前記他端の可動支持部12を、この可動支持部12の脚部を一体型の中空部材に水平方向に所定長さ範囲内で摺動自在に挿入してこの中空部材を固定手段として形成し、所定長さを曲げによる回転に対して固定支持となる有効長さに設定したことを特徴とする請求項1に記載の水管橋の端末支持構造。
  5. 前記他端の可動支持部12を、通水管を挿通自在に支持する所定長さの軸受部材から形成し、所定長さを通水管の曲げによる回転に対し固定支持となる有効長さに設定したことを特徴とする請求項1に記載の水管橋の端末支持構造。
  6. 前記他端の可動支持部12で支持される通水管の端と隣接する支間の通水管の端とを伸縮継手で接続するように構成したことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の水管橋の端末支持構造。
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