JP3909414B2 - マグネシウム合金鋳物とその製造方法、再生マグネシウム合金鋳物とその製造方法およびマグネシウム合金中のニッケル除去方法 - Google Patents
マグネシウム合金鋳物とその製造方法、再生マグネシウム合金鋳物とその製造方法およびマグネシウム合金中のニッケル除去方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、腐蝕原因となるNi量が少なく耐蝕性に優れるマグネシウム合金鋳物またはリサイクルした再生マグネシウム合金鋳物と、それらの製造方法並びにマグネシウム合金中のニッケル除去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム(Mg)は、実用金属中で最も軽量で比強度に優れると共に、資源が豊富で、リサイクル性にも優れる。このため、軽量化や環境負荷の低減等が強く求められる昨今、Mgは有望な金属材料であり、各種分野の各種製品にマグネシウム合金が使用されつつある。
例えば、自動車分野では、マグネシウム合金製のカバー類やホイールなどが開発されており、軽量化に伴う省エネルギー化や運動性能の向上等が図られている。また、電気機器分野でも、ノート型パソコンや携帯電話等のケースにマグネシウム(またはその合金)が使用され、モバイル機器のさらなる軽量化やリサイクル化が図られている。
【0003】
ところが、Mgは、非常に活性な金属であり、実用金属中で最も電位的に卑な金属(つまり、イオン化傾向が大きい金属)であり、Mg自体が耐蝕性を有する緻密な酸化被膜を形成することもない。このため、純マグネシウムは勿論、マグネシウム合金も非常に腐蝕し易い。
このような腐蝕原因は種々考えられるが、その主な理由の一つに不純物元素の存在がある。すなわち、鉄(Fe)、Ni、銅(Cu)等の腐食原因元素がマグネシウム合金等の中に不純物として存在していると、そこを起点として激しく腐蝕が進行する。それらの腐食原因元素の内、Fe等は除去可能であるが、Niは、一旦混入するとその除去は一般的に困難である。
【0004】
このため、Mg系の実用金属では、Ni量(Ni濃度)が厳しく規制されている。例えば、高純度材ではNi含有量が10ppm(0.001質量%)以下とされている。ちなみに、このような高純度材は、不純物の混入を極力避けたMg製錬において製造されているが、これを一般的な鋳造現場やリサイクル工場に導入して管理適用することは難しい。
なお、Mg−Al系の鋳造合金の場合、溶湯を低温で保持することで、溶湯中のNi含有量を0.2質量%(2000ppm)程度まで低減できることが報告されている。
また、下記の非特許文献1には、ジルコニウム(Zr)によってNi含有量が低減されるという報告もされている。
【0005】
【非特許文献1】
H.S.Tathgar,P.Bakke,T.A.Engh,Magnesium Alloys and their Applications 2000,(Edited by K.U.Kainer)(2000),767
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記前者の方法では、除去可能なNiは高々0.2質量%程度に過ぎない。この程度では依然としてマグネシウム合金の耐蝕性は極めて悪い。その溶湯を高純度マグネシウムによって希釈することで、Ni濃度を問題ないレベルにまで落すことも考えられるが、何百倍にも希釈する必要が生じて現実的ではない。
【0007】
また、上記後者(非特許文献1)の方法によるZrの添加はコスト高である。さらに、Zrを添加する際にジルコニウム塩化物を用いると、逆に、残留塩素によって耐蝕性の低下が懸念される。
このように、NiはMg中に溶解し易く、添加材や製造過程さらにはリサイクル過程で混入し易いにも拘らず、従来、マグネシウム合金中に混在したNiを十分に除去する有効な方法はなかった。このため、Niの混入したマグネシウム合金は、アルミニウム合金の添加材や鉄鋼の脱硫剤として転嫁されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、マグネシウム合金中のNi濃度を有効に低減できるマグネシウム合金中のニッケル除去方法を提供することを目的とする。また、それを利用して鋳造したマグネシウム合金鋳物や再生マグネシウム合金鋳物、さらにはそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、希土類元素がマグネシウム合金中のNi除去に非常に有効であることを発見し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
(マグネシウム合金鋳物の製造方法)
本発明のマグネシウム合金鋳物の製造方法は、マグネシウム(Mg)を主成分とし少なくとも希土類元素(R.E.)を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを備え、Ni濃度の低い耐蝕性に優れたマグネシウム合金鋳物が得られることを特徴とする。
【0010】
Niはマグネシウム合金の耐蝕性を著しく低下させる腐蝕原因元素であり、しかも、NiはMg中に溶解し易く、種々の工程や過程で混入し易い。従来、このNiを耐蝕性に有効なレベルまで低減することは困難であった。しかし、本発明によれば、そのNi量を極めて少ないレベルにまで低減して、耐蝕性に優れたマグネシウム合金鋳物を得ることができる。
しかも、本発明の製造方法によると、マグネシウム合金溶湯から除去されずに残存した僅かなNiも、R.E.と化合物を形成して、マグネシウム合金鋳物の耐蝕性に関して無害化される。従って、本発明の製造方法によれば、腐蝕原因元素であるNiの除去(Ni量の低減)と残存Niの無害化が同時になされ、耐蝕性が著しく向上したマグネシウム合金鋳物が得られることとなった。
【0011】
このような現象を生じるメカニズム等は必ずしも明らかではないが、現状、次のように考えられる。
マグネシウム合金中に存在するNiは、Mg−Ni化合物を形成する。この化合物は水素過電圧の低いカソード部を構成し、電蝕反応によってマグネシウム合金鋳物を激しく腐蝕させる。
ところが、本発明の溶湯調製工程でマグネシウム合金の溶湯中にR.E.を含有させると、R.E.はNiとの間でNi−R.E.系化合物を形成するようになる。この化合物は、Mg中での溶解度が小さくて、かつ、比重が大きい。このため、溶湯調製工程後の沈静保持工程で、その化合物は溶湯中に晶出して容易に沈降する。このNi−R.E.系化合物が沈降した上部側の溶湯は、Ni含有量が極めて低いものとなり、これを用いて鋳造工程を行えば、当然に、Ni含有量が非常に少ないマグネシウム合金鋳物が得られる。その結果当然に、前記Mg−Ni化合物の晶出は少なくなり、これに起因したマグネシウム合金鋳物の腐蝕もない。
【0012】
ここで、前記Ni−R.E.系化合物は、Mg中での溶解度がいくら小さいとはいえ、溶湯温度に応じた溶解量をもつ。すなわち、極微量ながらも溶湯中に残存することは避けられない。そして、鋳物中には、微量ながらNi−R.E.系化合物が晶出する。ここで、この化合物に起因した腐蝕も懸念されるが、実際には、この化合物はMg−Ni化合物と異なって水素過電圧が高く、Mgとの電位差も小さくなる傾向にある。このため、この化合物をカソード部とした腐蝕(電蝕)の進行は小さい。
このようなメカニズムによって、本発明の製造方法の場合、非常に耐蝕性に優れたマグネシウム合金鋳物が得られたと考えられる。なお、このような傾向は、マグネシウム合金の代表的な合金元素であるAlやMnを含有する場合に一層強く現れる。その際、上記Ni−R.E.系化合物はAl−Mn−Ni−R.E.系化合物となる。
【0013】
(マグネシウム合金鋳物)
本発明は、上記製造方法に限らず、それによって得られたマグネシウム合金鋳物として把握することもできる。
すなわち、本発明は、Mgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを経て得られ、Ni濃度が500ppm以下で耐蝕性に優れることを特徴とするマグネシウム合金鋳物としても良い。
【0014】
ここで、Ni含有量の下限は小さい程、マグネシウム合金鋳物の耐蝕性は向上する。高純度合金において規制されているように、Ni量は10ppm以下とするのが望ましい。しかし、本発明におけるマグネシウム合金鋳物では、R.E.によるNiの無害化効果が発現されるため、Ni含有量が10ppm以上であっても、マグネシウム合金鋳物の耐蝕性は十分に確保される。そこで、Ni含有量の下限を10ppmとすると、上述の作業性が向上して、耐蝕性に優れたマグネシウム合金鋳物が低コストで得られる。
【0015】
一方、その上限を500ppmとしたのはマグネシウム合金鋳物の耐蝕性を確保するためである。この上限は、300ppmさらには100ppmである程好ましい。
なお、本発明のマグネシウム合金鋳物中には、当然ながらR.E.も残存する。NiをNi−R.E.系化合物として無害化するためである。その残存量は溶湯調製工程で加えたR.E.によって異なるため一概にはいえないが、少なくとも上記Ni量以上(0.1〜2.0質量%)のR.E.の残存が好ましい。
【0016】
(再生マグネシウム合金鋳物の製造方法)
本発明は、上記マグネシウム合金鋳物の製造方法等の他、マグネシウム合金部材のリサイクルを考慮して、再生マグネシウム合金鋳物の製造方法としても把握できる。
すなわち、本発明は、再生原料を溶解させてMgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを備え、Ni濃度が低い再生マグネシウム合金鋳物が得られることを特徴とする再生マグネシウム合金鋳物の製造方法としても良い。
【0017】
環境への配慮や資源の有効利用等の観点から、マグネシウム合金等もリサイクルによって再生されて、有効に循環活用されるべきである。しかし、リサイクルを進めれば当然に、不純物であるNi等がそのリサイクル原料中に混入し易くなる。そこで、マグネシウム合金のリサイクル促進には、一旦混入したNiを低減・除去する方策が欠かせない。
そこで、本発明の製造方法を用いると、再生原料を使用した場合であっても、Ni濃度の低い再生マグネシウム合金鋳物が得られ、マグネシウム合金のリサイクル促進を図れる。
【0018】
(再生マグネシウム合金鋳物)
また、本発明は、その製造方法によって得られる再生マグネシウム合金鋳物としても把握できる。
すなわち、本発明は、再生原料を溶解させてMgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを経て得られ、Ni濃度が500ppm以下であることを特徴とする再生マグネシウム合金鋳物としても良い。
【0019】
本発明の再生マグネシウム合金鋳物は、リサイクル品でありながら、Ni含有量を非常に少なくできる。このため、アルミニウム合金への添加剤や鉄鋼の脱硫剤等としてではなく、マグネシウム合金部材への再利用が可能となる。
なお、この再生マグネシウム合金鋳物中にも、当然ながらR.E.が残存しているのが好ましい。NiをNi−R.E.系化合物として無害化するためである。
【0020】
(マグネシウム合金中のニッケル除去方法)
さらに本発明は、マグネシウム合金中のニッケル除去方法自体としても把握できる。
すなわち、本発明は、Mgを主成分とし少なくともR.E.を含有した溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持する沈静保持工程と、該沈静保持工程後の溶湯中のNi濃度が該溶湯調製工程後よりも低減していることを特徴とするマグネシウム合金中のニッケル除去方法としても良い。
【0021】
ここでいうニッケル除去とは、耐蝕性の観点からNi濃度(含有量)を問題のないレベルに低減することを意味する。Niを完全に除去することは不可能であるし、耐蝕性の観点から問題ないレベルにまで低減されれば十分だからである。
ところで、本明細書でいうマグネシウム合金鋳物とは、その形状等を問わない。板状、棒状、管状、塊状等いずれでも良い。また、インゴットのような原材料でも、中間素材でも、最終製品でも良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、以下に説明する内容は、本発明のマグネシウム合金鋳物の製造方法のみならず、再生マグネシウム合金鋳物の製造方法、マグネシウム合金中のニッケル除去方法、マグネシウム合金鋳物および再生マグネシウム合金鋳物のいずれにも適宜該当する。
(1)溶湯調製工程
溶湯調製工程は、Mgを主成分とし少なくともR.E.を含有した溶湯を調製する工程である。R.E.の添加方法は問わない。Mgを主成分とする溶湯を先ず調製しておいてから、そこにR.E.を添加しても良いし、溶解原料中にR.E.を予め配合しておいても良い。もっとも、高価なR.E.の使用量を少なくするには、溶湯中に残存するNi濃度等に応じてその添加量を調整できる方が好ましい。
【0023】
そこで、溶湯調製工程は、Mgを主成分とする溶湯中にR.E.を添加する添加工程と、この添加工程後の溶湯を撹拌する撹拌工程とからなると好適である。そして、このような添加工程および攪拌工程によってR.E.を溶湯中に含有させると、R.E.によるNi除去を繰返し行うことも容易となる。詳細は後述するが、本発明者が調査したところ、R.E.を複数回に分けて添加すると、少ないR.E.で多くのNiを除去できることが解っている。従って、R.E.の添加量を調整しつつ、添加工程、撹拌工程、後述の沈静保持工程および分離工程を繰返し行えば、高価なR.E.の使用量を低減できる。これにより、コストパフォーマンスに優れたNiの除去やNi量の少ないマグネシウム合金鋳物の製造が可能となる。
【0024】
R.E.を含有させる前の溶湯は、合金溶湯でも純マグネシウム溶湯でも良い。純マグネシウム溶湯の場合であっても、不純物として存在するNiの除去、無害化のためにR.E.を含有させる意味はある。勿論、高純度マグネシウムを製造する場合は、本発明に依るまでもなく、蒸留等の方法によれば良い。
本発明はR.E.を含有させる前の溶湯が合金溶湯の場合に最も有効である。マグネシウム系部材には、強度、耐熱性、耐蝕性等を向上させる観点から種々の合金元素を含有させたマグネシウム合金を使用することが多いからである。また、その合金元素の添加剤として安価なものを使用するとNi等の不純物が合金溶湯中に混入する機会も増えるが、本発明を利用すれば、このようなNiの混入した合金溶湯をも無駄にすることなく有効に活用できるからである。
【0025】
ところで、R.E.以外の合金元素としては、マグネシウム系部材に要求される特性に応じて、Al、Mn、Ca、Zn、Si、Sr、Ag、Sn、Zr等がある。このうち、AlやMnは、マグネシウム合金の強度を向上させるため、一般的な合金元素として使用されている。このAlおよびMnが合金溶湯中に存在する場合、溶湯中に存在するNiは、Al−Mn−Ni化合物として一部沈降することが知られている。これにより、Ni濃度を0.2質量%程度までに低下させることが可能である。従って、合金溶湯中にAlやMnを含有させて、本発明の前処理としてAl−Mn−Ni化合物の沈降を最初に行うと一層好ましい。
【0026】
R.E.を含有させる前の溶湯中にAlやMnが含まれていない場合には、最初にAlやMnを添加して前記前処理を行えば良い。このような前処理を行うことで、R.E.の使用量を低減させつつ、Niの除去および無害化といった効果を最大限に引出すことが可能となる。そこで例えば、前記添加工程でR.E.を添加する前の溶湯は、Alおよび/またはMnとNiとの化合物を沈降分離した後の溶湯であると好適である。
【0027】
なお、AlおよびMnによって、NiをAl−Mn−Ni化合物として沈降、除去させた場合、AlおよびMnの含有量が所望組成から変化することもある。このため、適宜、その減少分を見込んで最初からAlおよびMnを増量しておくか、新たにAlやMnを追加すれば良い。もっとも、不純物であるNi量を当初から想定することは困難であるため、先ずNiをAl−Mn−Ni化合物として除去しておき、その後にAlやMnを適宜追加すれば、AlやMnに関して所望組成のマグネシウム合金鋳物が得易い。
【0028】
ところで、本発明の溶湯調製工程では、R.E.を溶湯中に均一な状態で存在させて、R.E.にNiとの化合物を形成させ易くすることが必要である。そこで、撹拌等することは勿論であるが、溶湯調製工程を(液相線温度+50℃)以上さらには(液相線温度+75℃)以上の溶湯温度で行うと好ましい。なお、本明細書でいう液相線温度とは、R.E.添加前の溶湯の液相線温度である。以下、同様である。
溶湯中に含有させるR.E.は、具体的にいうと、Sc、Yの他、ランタノイド(原子番号57〜71)およびアクチノイド(原子番号69〜103)である。
詳細は後述するが、本発明者が調査研究したところ、Ni濃度を最も低減させるのはYであった。もっとも、その他のCe、La、Sc等も十分に効果的である。Ce、Laならば、入手が容易でYよりも安価なミッシュメタル(Mm)を使用できる。
【0029】
この溶湯中のR.E.の含有量は0.2〜5質量%が好ましい。少なすぎるとNiを十分に除去等できず、多すぎると高コストとなり好ましくない。その下限は0.5質量%、1.0質量%さらには1.5質量%である程好ましい。また、その上限は、4質量%、3質量%さらには2.5質量%である程好ましい。なお、本発明者が調査研究したところ、R.E.量を1.5〜2.5質量%とすると、Niを十分に除去できると共に残存Niを十分に無害化できた。この場合も、溶湯全体としてのR.E.量を意味しており、化合物を分離した上部溶湯中でのR.E.の含有量ではない。
【0030】
(2)沈静保持工程
沈静保持工程は、溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持し、NiをNi−R.E.系化合物として溶湯の下層へ沈降させるために行う工程である。
ここで、当然ならがNi濃度の低減を図るには、Ni−R.E.系化合物をより多く沈降させる程良い。この化合物の溶湯中での溶解度は、その溶湯温度が低い程小さくなる。つまり、溶湯温度が小さい程、多くの化合物が晶出して沈降し、Niの除去効果も向上する。
【0031】
そこで、この沈静保持工程は、液相線温度〜(液相線温度+50℃)の溶湯温度で行う工程であると好ましい。その上限が(液相線温度+50℃)を超えると、前記化合物の溶解度が大きく、Niの除去効果が小さくなる。一方、溶湯温度の下限を液相線温度未満とすることも可能である。しかしその場合、α−Mgの固相が晶出し始めるため、Ni−R.E.系化合物が沈降し難くなり、その除去が困難となり易い。そして溶湯温度を液相線温度〜(液相線温度+30℃)とすると一層好ましい。
この沈静保持工程では、Niを十分に除去するために、Ni−R.E.系化合物が沈降するのに十分な時間を確保するのが好ましい。例えば、その保持時間を10分間以上、15分間以上さらには20分間以上とすると好適である。
【0032】
(3)分離工程
分離工程は、沈静保持工程後の溶湯から沈降した化合物と化合物の上部側にある溶湯とを分離する工程である。本工程は必須工程ではなく、上記沈静保持工程で兼ねることもできるが、別に分離工程を設けることで、Ni濃度の極めて低い溶湯の取扱いが容易となる。さらに、その溶湯にR.E.を添加等して、沈静保持工程および分離工程を繰返し行っても良い。
なお、この分離工程は、前記沈静保持工程を行った溶湯温度以下で行うことが好ましい。Ni−R.E.系化合物の再溶解によってNi濃度を上昇させないためである。
【0033】
(4)鋳造工程
鋳造工程は、分離工程で分離した溶湯を用いて鋳造する工程である。この鋳造工程は、重力鋳造、加圧鋳造、高速鋳造等、いずれでも良い。鋳型も砂型、金型を問わない。なお、一般的にマグネシウム合金部材として薄肉のダイカスト鋳物が多いことから、この鋳造工程はダイカスト鋳造工程であると好適である。
【0034】
【実施例】
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(第1実施例)
R.E.添加の有無および沈静保持中の溶湯温度と、マグネシウム合金溶湯中のNi濃度との関係を次にようにして調べた。
(1)先ず、原料として純Mg(純度99.9%)、純Al(純度99.99%)、Mg−3.3%Mn合金、純Ni(純度99.9%)を用意した。これらの原料を秤量し、SUS430製の坩堝にて、Mg−6%Al−0.3%Mn−0.1%Ni(単位:質量%)の組成をもつ合金溶湯を溶製した。この合金溶湯を溶湯温度750℃に保持して、そこへミッシュメタル(Mm:Ce−La−Nd合金)を2.0質量%の割合で添加し(添加工程)、十分に攪拌した(撹拌工程)。この攪拌により、Mmは分解し合金溶湯中に十分に溶解するようになった。
【0035】
この撹拌後の合金溶湯を10分間、沈静保持した(沈静保持工程)。その後、坩堝の上部の溶湯を用いて(分離工程)、約150℃に予熱した直径30mm、高さ120mmの鋼製の金型に注湯し、自然冷却させた(鋳造工程)。こうしてマグネシウム合金鋳物を得た。なお、Mgの燃焼を防止するために、上記一連の工程中は溶湯面にSF6ガスを吹付けた状況で行った。
【0036】
次に、注湯後の坩堝を再び電気炉内に戻し、その溶湯温度を720℃にして10分間沈静保持した(沈静保持工程)。そして、上記の場合と同様に、坩堝上部の溶湯を用いて(分離工程)、同様に鋳造を行った(鋳造工程)。
この操作を、沈静保持工程中の溶湯温度(以下、「沈静保持温度」という。)を700℃、670℃および640℃とした場合について、順次、繰返し行った。
そして、各操作によって得られたマグネシウム合金鋳物の下面から約50mm上方の位置で切出した試料について、誘導結合プラズマ発光分析(IPC)を用いて組成分析を行い、Ni濃度を測定した。そして、各試料の分析結果から、マグネシウム合金溶湯中にMm(R.E.)を添加した場合の、沈静保持温度とNi除去率との関係を図1に示した。なお、Ni除去率は、溶製した溶湯中のNi量(配合量)と各沈静保持温度で鋳造した鋳物のNi濃度との差として次式により算出した。
【0037】
(数1)
(Ni除去率(%))={Ni量(配合量)−各鋳物のNi濃度}/Ni量(配合量) x100(%)
【0038】
(2)次に、R.E.を添加しない場合についても、上記同様の操作を繰返し行い、得られた各マグネシウム合金鋳物から同様に切出した試料について、組成分析を行った。この場合の沈静保持温度とNi濃度との関係を図2に示した。
なお、上記いずれの場合にも、沈静保持温度を640℃とした鋳造操作を終えた後に、さらに、坩堝を電気炉に戻して、沈静保持温度を700℃とする同様の鋳造操作を行った。そして、このとき得られたマグネシウム合金鋳物についても上記と同様の組成分析を行った。このような操作を繰返した後、坩堝に残った溶湯はいずれも当初の約1/3程度であった。
ちなみに、Mg−6%Al−0.3%Mn−0.1%Niの液相線温度は約610℃である。
【0039】
(3)図1、2から次のことが解る。
先ず、図2を観れば解るように、R.E.であるMmを添加しない場合には、溶湯の沈静保持温度をいくら変化させても、Ni除去率はほとんど変化せず、約10%前後となった。
次に、Mmを添加すると、沈静保持温度が750℃の場合であっても、Ni除去率は約20%であった。沈静保持温度を低下させると、ほぼ加速度的にNi除去率は上昇した。沈静保持温度を640℃としたときには、Ni除去率が約70%と、極めて少なくなった。合金の液相線温度は約610℃であり、640℃よりさらに沈静保持温度を下げることによって、Ni除去率を大きくできると考えられる。
【0040】
再び沈静保持温度を700℃に戻したときのNi濃度は、最初に沈静保持温度を700℃としたときのNi濃度とほぼ同じであった。そして、Mmを添加した場合の坩堝下部の化合物を分析したところ、それはAl−Mn−Ni−R.E.(Mm)化合物であることが明らかとなった。
本実施例により、合金溶湯中のNi濃度は沈静保持温度によってほぼ決定されることが明らかとなった。これは、Mmを添加した場合、Ni−R.E.系化合物(前記Al−Mn−Ni−Mm化合物)の溶解度が沈静保持温度に応じて変化するためであると考えられる。すなわち、沈静保持温度が低くなる程、Al−Mn−Ni−R.E.(Mm)化合物の溶解度が小さくなって、より多くの化合物が晶出する。そして、晶出した化合物は比重が大きいために沈降し、上部溶湯からNiの大部分が除去されて、Ni濃度が非常に低い溶湯が得られたと考えられる。
【0041】
(第2実施例)
第1実施例よりもNi濃度が高い場合について、第1実施例と同様にして、Ni除去率と沈静保持温度との関係を調べた。Mmを添加する前の合金組成はMg−6%Al−0.3%Mn−1.0%Niとした。また、ここに添加するMmは第1実施例と同様の2.0質量%とした。
【0042】
第1実施例と同様に、各合金溶湯の沈静保持温度を750℃、720℃、700℃、670℃および640℃と、順次変化させて、坩堝上部の合金溶湯を用いて鋳造を行った。沈静保持時間、金型形状等も第1実施例と同様である。
溶湯中にMmを添加した場合のNi除去率と沈静保持温度との関係を図3に、Mmを添加しなかった場合のものを図4にそれぞれ示した。
【0043】
図4から明らかなように、第1実施例の場合と異なって、Ni濃度が1.0%まで高くなると、Mmを添加せずに沈静保持温度を順次低下させるだけでも、Ni除去率は上昇した。例えば、沈静保持温度を640℃にすると、Ni除去率は約85%となった。
もっとも、図3から明らかなように、Mmを添加すると、Ni除去率はそれ以上に上昇し、例えば、沈静保持温度を640℃にしたときのNi除去率は約95%まで上昇した。なお、Mmを添加しない場合に、坩堝の下部に沈降した化合物の組成分析を行ったところ、Al−Mn−Ni化合物であることが確認された。
【0044】
以上のことから、Mg−Al系合金の場合、前処理として、(液相線温度+50℃)以下の沈静保持温度で一定時間溶湯を沈静保持させることで、R.E.の添加前のNi濃度を約0.15%以下まで低下させ得ることが明らかとなった。その後、溶湯温度を上昇させてR.E.を添加し、溶湯を攪拌して沈静保持工程、分離工程および鋳造工程を行うと、一層効果的でかつ低コストなニッケルの除去が可能となる。なお、最初にAl−Mn−Ni化合物を沈降させる場合、それによって消費されるAlやMnを補給するために、後工程で、AlやMnをR.E.(Mm等)と共に添加すると良い。
【0045】
なお、Mnを含有しないMg−Al合金であっても、Al−Ni化合物が形成されて上記と同様のことが生じる。但し、溶湯中のMn含有量が多いと、Al−Mn−Ni化合物やAl−Mn−Ni−Mm化合物の形成が容易となり、Ni除去がより効果的になされ得る。
【0046】
(第3実施例)
溶湯中へのMmの添加量の相違によって、マグネシウム合金鋳物中のNi除去率がどのように変化するかを調べた。
第1実施例と同様にして、Mg−6%Al−0.3%Mn−0.1%Niの合金溶湯を溶製した。ここへ、0.5%、1.0%、2.0%および5.0%のMmをそれぞれ添加し攪拌した。このときの溶湯温度は750℃とした。そして、Mmの添加量の異なる各マグネシウム合金鋳物を第1実施例と同様に鋳造し、Ni除去率とMm添加量との関係を調べた。この結果を図5に示す。なお、この図における沈静保持工程は、650℃x10分間とした。
【0047】
図5から、Mm量が多い程、Ni除去率が上昇することが明らかである。但し、Mmが2.0%を超えると、Ni除去率の上昇率は僅かとなった。従って、費用対効果の観点から、高価なMmの添加量は2%以下に抑制するのが好ましいことが解った。
【0048】
(第4実施例)
沈静保持時間の相違によって、マグネシウム合金鋳物中のNi濃度がどのように変化するかを調べた。沈静保持時間を、5分間、10分間、20分間および30分間と順次変化させたことと、第3実施例の結果に基づきMmの添加量を2%に固定したこと以外は、第3実施例と同様の鋳造を行った。なお、溶湯温度を添加・攪拌時の750℃から沈静保持温度である650℃まで下げるのに約10分間要した。上記沈静保持時間は、この溶湯温度が650℃に到達した時を起算時としている。
【0049】
それぞれの鋳物を第1実施例と同様に組成分析し算出して得られたNi除去率と、沈静保持時間との関係を図6に示す。これから明らかなように、沈静保持時間を長くする程、Ni除去率は上昇するが、10分以上に長くしてもNi除去率の上昇率は少ない。なお、沈静保持時間が0分でも、Ni除去率が約40%であるのは、溶湯温度を750℃から650℃に下げる間に、相当量のAl−Mn−Ni−Mm化合物の沈降が進行したためと思われる。従って、溶湯温度が650℃に到達した時から起算するのであれば、沈静保持時間を10〜20分間程度とし、溶湯温度が750℃の時から起算するのであれば、沈静保持時間を20〜30分間程度とすれば良い。
【0050】
(第5実施例)
溶湯中へのMmの添加の仕方によって、マグネシウム合金鋳物中のNi濃度がどのように変化するかを調べた。
先ず、第1実施例と同様にして、Mg−6%Al−0.3%Mn−0.1%Niの合金溶湯を溶製した。この溶湯を650℃で10分間沈静保持した。その後、坩堝上方の約4/5の溶湯を用いて鋳造した。得られた鋳物の一部を分析試料として除いた後、残りの鋳物全部を再溶解した。そして、750℃の溶湯にMmを0.5%添加し、十分に撹拝した。その後、この溶湯を650℃で10分間沈静保持した。その後、坩堝上方の約4/5の溶湯を用いて鋳造した。得られた鋳物の一部を分析試料として除いた後、残りの鋳物全部を再溶解した。この操作をMmの添加合計量が2.0%になるまで繰返し行った。こうして得られた、鋳物中のNi濃度から算出したNi除去率と、そのMm添加量(繰返し数)との関係を図7に示した。
【0051】
また、各繰返し時までに添加した合計量と同じMmを一度に添加した場合のNi除去率についても図7に同様に示した。
図7から、Mmを一度に添加せずに小分けにして添加したときの方が、Ni濃度が低下し易い傾向を示した。特に、この傾向はMmの添加量が0.5%〜1.5%となる範囲で顕著である。従って、このような操作を行えば、Mmの使用量を低減しつつNi濃度を低下させることが可能となり得る。
【0052】
(第6実施例)
R.E.の相違によるNi濃度の低減効果を調べた。
試料の製造および組成分析は、第4実施例の場合と同様にした。すなわち、R.E.の添加量は2.0%として、650℃x10分間の沈静保持を行った。使用したR.E.は、Nd、La、CeおよびYの単体である。各種R.E.を用いた場合の鋳物中のNi除去率を図8に示した。
これから明らかなように、Y>La>(Mm)>Ce>Ndの順でNi除去の効果が大きかった。特に、R.E.としてYを用いた場合、Ni濃度は大きく低下して、約40ppmとなった。なお、Mmのデータは、第3実施例または第4実施例のものを参考にした。
【0053】
(耐蝕性)
Mmを添加した上記実施例中の鋳物から切出した板状試験片を、室温中で5%NaCl水溶液中へ浸漬したところ、優れた耐蝕性を示した。
単純にマグネシウム合金鋳物中のNi濃度を低減したもの(Mg−6%Al−0.3%Mn−x%Ni:R.E.含まず)と、本発明を適用してNi濃度を低減したもの(R.E.含む)とについて、室温中で5%NaCl水溶液中へ浸漬したときの腐蝕速度の相違を調べた。この結果を図9に示す。図9中○は本発明の製造方法によって鋳造した鋳物の腐蝕速度を示す。なお、図中の「+0.5%Mm」は、本発明の溶湯調製工程でMmを0.5%添加したことを意味し、マグネシウム合金鋳物中のMm量を示すものではない。
【0054】
図9から解るように、Mm等のR.E.を全く含まない場合には、Ni濃度が0.001質量%(10ppm)程度にまで低下しないと、腐蝕速度はほぼ零とはならない。一方、本発明のようにMm等のR.E.を含有させた場合には、Ni濃度が0.010質量%(100ppm)程度でも腐蝕速度がほぼ零、つまり十分な耐蝕性を示すことが明らかとなった。従って、本発明のようにR.E.を使用してNi濃度を低減させると、R.E.を含有せず単にNi濃度が低い場合に比べて、約10倍のNi濃度まで優れた耐蝕性が維持されることが明らかとなった。
【0055】
この理由は、マグネシウム合金鋳物中に残存したNiがMg−Ni化合物を構成せずに、腐食に対して無害なAl−Mn−Ni−R.E.化合物を構成したためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】少量のNiを含む溶湯中へMmを添加した場合の沈静保持温度とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図2】少量のNiを含む溶湯中へMmを添加しなかった場合の沈静保持温度とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図3】多量のNiを含む溶湯中へMmを添加した場合の沈静保持温度とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図4】多量のNiを含む溶湯中へMmを添加しなかった場合の沈静保持温度とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図5】Mm添加量とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図6】溶湯の沈静保持時間とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図7】Mmを小分けして添加したときのMm添加量とNi除去率との関係および一度に所望量のMmを添加したときのMm添加量とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図8】添加するR.E.の種類とNi除去率との関係を示すグラフである。
【図9】Mmを添加した場合とMmを添加しなかった場合とについての、Ni濃度と腐蝕速度との関係を示すグラフである。
Claims (17)
- マグネシウム(Mg)を主成分とし少なくとも希土類元素(以下、「R.E.」という。)を含有して、不純物であるニッケル(Ni)と該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、
該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、
該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを備え、
Ni濃度の低い耐蝕性に優れたマグネシウム合金鋳物が得られることを特徴とするマグネシウム合金鋳物の製造方法。 - 前記溶湯調製工程は、(液相線温度+50℃)以上の溶湯温度で行う工程である請求項1に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記溶湯調製工程は、前記溶湯中のR.E.を0.2〜5質量%とする工程である請求項1に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記R.E.は、セリウム(Ce)、ランタン(La)、イットリウム(Y)またはスカンジウム(Sc)のいずれか1種以上である請求項1または3に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記溶湯調製工程は、さらにアルミニウム(Al)を含有した溶湯を調製する工程である請求項1に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記溶湯調製工程は、さらにマンガン(Mn)を含有した溶湯を調製する工程である請求項1または5に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記沈静保持工程は、液相線温度〜(液相線温度+50℃)の溶湯温度で行う工程である請求項1に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- 前記沈静保持工程は、保持時間を10分間以上とする工程である請求項1または7に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。
- さらに、前記沈静保持工程後に、該沈静保持工程で沈降した化合物と該化合物の上部側にある溶湯とを分離する分離工程を備え、
該上部側の溶湯を用いて前記鋳造工程を行う請求項1に記載のマグネシウム合金鋳物の製造方法。 - Mgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、
該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、
該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを経て得られ、
Ni濃度が500ppm以下で耐蝕性に優れることを特徴とするマグネシウム合金鋳物。 - 残存Niの少なくとも一部は、前記R.E.と化合物を形成している請求項10に記載のマグネシウム合金鋳物。
- 再生原料を溶解させてMgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、
該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、
該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを備え、
Ni濃度が低い再生マグネシウム合金鋳物が得られることを特徴とする再生マグネシウム合金鋳物の製造方法。 - 再生原料を溶解させてMgを主成分とし少なくともR.E.を含有して、不純物であるNiと該R . E . とからなるNi−R . E . 系化合物を形成した溶湯を調製する溶湯調製工程と、
該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持して該Ni−R . E . 系化合物を沈降させる沈静保持工程と、
該沈静保持工程後の上部側にあるNi含有量の少ない溶湯を用いて鋳造する鋳造工程とを経て得られ、
Ni濃度が500ppm以下であることを特徴とする再生マグネシウム合金鋳物。 - Mgを主成分とし少なくともR.E.を含有した溶湯を調製する溶湯調製工程と、
該溶湯調製工程後の溶湯を沈静保持する沈静保持工程と、
該沈静保持工程後の上部側にある溶湯中のNi濃度が該溶湯調製工程後よりも低減していることを特徴とするマグネシウム合金中のニッケル除去方法。 - 前記溶湯調製工程は、Mgを主成分とする溶湯中にR.E.を添加する添加工程と、該添加工程後の溶湯を撹拌する撹拌工程とからなる請求項14に記載のマグネシウム合金中のニッケル除去方法。
- 前記添加工程でR.E.を添加する前の溶湯は、Alおよび/またはMnとNiとの化合物を沈降分離した後の溶湯である請求項15に記載のマグネシウム合金中のニッケル除去方法。
- さらに、前記沈静保持工程後に、該沈静保持工程で沈降した化合物と該化合物の上部側にある溶湯とを分離する分離工程を備え、
前記添加工程、前記撹拌工程、前記沈静保持工程および該分離工程を繰返し行う請求項15に記載のマグネシウム合金中のニッケル除去方法。
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