JP3909202B2 - ポンプ内蔵ゲート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水路と河川の境界部などに設置されるポンプ内蔵ゲートに関する。
【0002】
【従来の技術】
洪水時において、河川(外水域)の水が水路(内水域)に逆流するのを防止するとともに、内水域の水を外水域へ排水するために、内水域と外水域の境界部に設置されるポンプ内蔵ゲートとして、図3,図4および図5に示すものが知られている。このポンプ内蔵ゲートは、水路1に立設した水門柱2と水路1の床に横設した床部材3とによりコンクリート製のゲート4を構築し、水門柱2に設けられている戸当り2aに止水ゲート扉体5の左右両側部の前面を当接させるとともに、止水ゲート扉体5の左右両端部をゲート4に設けた案内溝4A,4Aに摺動可能に嵌め込むことで、ゲート4によって止水ゲート扉体5を昇降自在に支持し、この止水ゲート扉体5に、たとえば横軸ポンプによってなる2台のゲートポンプ6,6が内蔵されている。また、止水ゲート扉体5には、スピンドル8の下端部が一体に結合され、このスピンドル8の上端側はギヤーボックス10Aや操作ハンドル10Bおよび電動機(図示省略)などを備えた開閉手段10に組込まれている。
【0003】
前記構成において、ゲート4の放流用開口部7を止水ゲート扉体5で閉じた状態で、ゲートポンプ6,6を運転することにより、水路1における上流側の水路1Aの水はゲートポンプ6,6の吸込口6Aから吸込まれ、吐出口6Bから下流側の水路1Bに吐出(排水)される。また、開閉手段10により止水ゲート扉体5を吊り上げて、放流用開口部7を開放することによって、水路1における上流側の水路1Aから下流側の水路1Bに自然流下させることができる。なお、図中9はフラップ弁を示し、このフラップ弁9によって下流側の水路1Bから上流側の水路1Aへの逆流を防止している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来のポンプ内蔵ゲートでは、水門柱2の頂部フロアー2Aに開閉手段10を設置し、この開閉手段10の出力を、スピンドル8を介して止水ゲート扉体5に伝達して、該止水ゲート扉体5を昇降させて、放流用開口部7を開閉するように構成されているので、開閉手段10が路面上に大きく露出することになる。このため、ポンプ内蔵ゲート設置場所の外観を低下させるとともに、邪魔になるなどの問題点を有している。
【0005】
このような問題点は、図6に示すように、開閉手段10を路面GL下に設置することによって解決することができる。しかし、従来の開閉手段10では、止水ゲート扉体5を吊り上げて、放流用開口部7を開放した場合に、スピンドル8が止水ゲート扉体5の吊り上げ代に相当して開閉手段10の上方に大きく突出することになるので、開閉手段10を路面GL下に設置したポンプ内蔵ゲートでは、頂部フロアー2Aの位置を、路面GLからスピンドル8の突出を許容できるレベルまで深くする必要がある。このため、ポンプ内蔵ゲートの設置深度が深くなり、それだけ土木構築費用が高くなる。また、開閉手段10は、止水ゲート扉体5直上の湿度の高い劣悪な環境下にが設置されているので、特に、開閉手段10の構成部材である電動機に組込まれている電気的な部品に悪影響をおよぼして開閉手段10の寿命が短くなるおそれを有している。
【0006】
一方、図3〜図6に示す従来のポンプ内蔵ゲートでは、止水ゲート扉体5の左右両端部をゲート4に設けた案内溝4A,4Aに摺動可能に嵌め込むことで、ゲート4によって止水ゲート扉体5を昇降自在に支持しているので、開閉手段10により止水ゲート扉体5を吊り上げて、放流用開口部7を開放する場合の摺動摩擦抵抗が大きくなる。このため、高出力の電動機を備えた開閉手段10が必要になるので、ポンプ内蔵ゲートのイニシャルコストおよびランニングコストが高くなる問題点を有している。
【0007】
そこで、本発明は、開閉手段を路面下に設置する構造において、設置深度を浅くして、土木構築費用の削減を図り、かつ開閉手段の延命を達成でき、しかも開閉手段による止水ゲート扉体吊り上げ時の摩擦抵抗を小さくすることにより、高出力電動機の使用を不要にして、イニシャルコストおよびランニングコストを低く抑えることができるポンプ内蔵ゲートを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るポンプ内蔵ゲートは、水路に設けたゲートの放流用開口部がポンプを内蔵した止水ゲート扉体の昇降運動によって開閉されるポンプ内蔵ゲートにおいて、前記止水ゲート扉体を昇降させる開閉手段が路面下に設置され、前記開閉手段は、たわみ変形可能な媒介節と少なくとも1つの滑車とからなる滑車装置と、前記たわみ変形可能な媒介節を巻き取りまたは繰り出す駆動源とを備え、前記開閉手段の少なくとも駆動源は前記止水ゲート扉体の直上から隔壁を介して離隔した位置に設置され、前記たわみ変形可能な媒介節は、前記隔壁を貫通して巻き取りまたは繰り出すことを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項に記載の発明に係るポンプ内蔵ゲートは、前記止水ゲート扉体の幅方向両側に回転子が回転自在に取付けられ、この回転子が前記ゲートに設けた案内溝にころがり接触可能に嵌め込まれている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、止水ゲート扉体を吊り上げて、放流用開口部を開放しても、開閉手段の上方に他部材が突出することはない。このため、開閉手段の路面下設置位置を浅くすることができるので、ポンプ内蔵ゲートの設置深度を浅く設定することができる。
【0011】
また、開閉手段の少なくとも駆動源を止水ゲート扉体直上の湿度の高い劣悪な環境下から離れた位置に設置することができる。
【0012】
請求項に記載の発明によれば、止水ゲート扉体吊り上げ時の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、前記従来例と同一部分には同一符号を付して重複した構造および作用説明は省略する。
図1は本発明の一実施の形態を示す縦断側面図、図2は図1の路面下の平面図であり、これらの図において、止水ゲート扉体5を昇降させる開閉手段10が一対の滑車装置11,11と、駆動源12とを備えている。
【0014】
一対の滑車装置11,11は、それぞれ、止水ゲート扉体5の上側に回転自在に取付けられた動滑車13と、頂部フロアー2Aの下側に回転自在に取付けられた定滑車14と、動滑車13および定滑車14に巻き掛けられるたわみ変形可能な媒介節としてワイヤロープ15とを備えており、駆動源12は、電動機16と、電動機16の回転を減速して出力する減速機17と、減速機17の出力によって減速回転する駆動軸18と、この駆動軸18の端部に回転自在に設置された巻取り・繰り出しドラム19とを備えている。また、巻取り・繰り出しドラム19にワイヤロープ15の基端部が固着され、ワイヤロープ15の先端部は頂部フロアー2Aの下面に固着されているとともに、駆動源12は隔壁20を介して止水ゲート扉体5の直上から離隔した位置、つまり上流側の水路1Aの上位に構築した駆動源収容室21に設置されている。
【0015】
一方、止水ゲート扉体5の幅方向両側には、上下二か所に分割して水平軸線を有するローラ22,22が回転自在に取付けられ、これらローラ22,22がゲート4に設けた垂直案内溝4A,4Aにころがり接触可能に嵌め込まれている。
【0016】
このような構成であれば、駆動源12の電動機16を起動して、巻取り・繰り出しドラム19を巻取り方向に回転させると、ワイヤロープ15が巻取り・繰り出しドラム19に巻取られ、この巻取り量に応じて動滑車13と止水ゲート扉体5を吊り上げて、放流用開口部7を開放することができる。また、動滑車13と止水ゲート扉体5が吊り上げられた放流用開口部7の開放状態で、巻取り・繰り出しドラム19を繰り出し方向に回転させると、ワイヤロープ15が巻取り・繰り出しドラム19から繰り出され、この繰り出し量に応じて動滑車13と止水ゲート扉体5を吊り下げて、放流用開口部7を閉じることができる。
【0017】
本発明のポンプ内蔵ゲートによれば、開閉手段10が一対の滑車装置11,11と駆動源12とで構成されているので、止水ゲート扉体5を吊り上げて、放流用開口部7を開放しても、開閉手段10の上方に他部材が突出することはない。つまり、図6に示すギヤーボックス10Aや操作ハンドル10Bおよび電動機(図示省略)などを備えた従来のポンプ内蔵ゲートの開閉手段10に組込まれて、放流用開口部7を開放した場合に、開閉手段10の上方に大きく突出するスピンドル8あるいはこのスピンドル8を覆うスピンドルカバー8Aのような他部材が存在しない。このため、開閉手段10の路面GL下設置位置を浅くすることができるので、ポンプ内蔵ゲートの設置深度を浅く設定することができる。したがって、土木構築費用を削減することができる。
【0018】
また、開閉手段10における駆動源12は、隔壁20を介して止水ゲート扉体5の直上から離隔した位置に設置されている。つまり、止水ゲート扉体5直上の湿度の高い劣悪な環境から離隔した上流側の水路1Aの上位に構築されている駆動源収容室21に設置されているので、電動機16や減速機17などに組込まれている電気的な部品に悪影響がおよぶのを回避して、開閉手段10の延命を達成することができるばかりでなく、電気的故障による開閉不能な状態の発生を回避できるので信頼性が向上する。
【0019】
さらに、止水ゲート扉体5の幅方向両側に回転自在に取付けられたローラ22,22がゲート4に設けた垂直案内溝4A,4Aにころがり接触可能に嵌め込まれているので、止水ゲート扉体5吊り上げ時の摩擦抵抗が従来の摺動摩擦抵抗と比較して小さくなる。このため、高出力電動機の使用を不要にして、イニシャルコストおよびランニングコストを低く抑えることができる。
【0020】
なお、前記実施の形態では、止水ゲート扉体5に2台のゲートポンプ6,6を内蔵した構成で説明しているが、ゲートポンプ6の内蔵台数は1台または3台以上であってもよい。また、滑車装置11を1つの動滑車13と1つの定滑車14を備えた複滑車で構成しているが、1つの定滑車のみで構成した単滑車または1つの動滑車と複数の定滑車を備えた複滑車あるいは複数の動滑車と複数の定滑車を備えた複滑車によって滑車装置11を構成してもよい。さらに、ワイヤロープ15に代えてリングチェーンを用いてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るポンプ内蔵ゲートは構成されているので、以下のような格別の効果を奏する。
【0022】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、止水ゲート扉体を吊り上げて、放流用開口部を開放しても、開閉手段の上方に他部材が突出することはない。このため、開閉手段の路面下設置位置を浅くすることができるので、ポンプ内蔵ゲートの設置深度を浅く設定して、土木構築費用を削減することができる。
【0023】
また、開閉手段の少なくとも駆動源を止水ゲート扉体直上の湿度の高い劣悪な環境下から離れた位置に設置することができるので、電気的な部品に悪影響がおよぶのを回避して、開閉手段の延命を達成し、信頼性を向上させることができる。
【0024】
さらに、請求項に記載の発明によれば、止水ゲート扉体吊り上げ時の摩擦抵抗を小さくすることができるので、高出力電動機の使用を不要にして、イニシャルコストおよびランニングコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】 図1の路面下の平面図である。
【図3】 従来例の縦断側面図である。
【図4】 図3のA−A矢視図である。
【図5】 図3のB−B矢視図である。
【図6】 比較例の縦断側面図である。
【符号の説明】
1 水路
4 ゲート
4A 案内溝
5 止水ゲート扉体
6 ゲートポンプ(ポンプ)
7 放流用開口部
10 開閉手段
11 滑車装置
12 駆動源
14 定滑車
15 ワイヤーロープ(たわみ変形可能な媒介節の一例)
22 ローラ(回転子)

Claims (2)

  1. 水路に設けたゲートの放流用開口部がポンプを内蔵した止水ゲート扉体の昇降運動によって開閉されるポンプ内蔵ゲートにおいて、前記止水ゲート扉体を昇降させる開閉手段が路面下に設置され、前記開閉手段は、たわみ変形可能な媒介節と少なくとも1つの滑車とからなる滑車装置と、前記たわみ変形可能な媒介節を巻き取りまたは繰り出す駆動源とを備え、前記開閉手段の少なくとも駆動源は前記止水ゲート扉体の直上から隔壁を介して離隔した位置に設置され、前記たわみ変形可能な媒介節は、前記隔壁を貫通して巻き取りまたは繰り出すことを特徴とするポンプ内蔵ゲート。
  2. 前記止水ゲート扉体の幅方向両側に回転子が回転自在に取付けられ、この回転子が前記ゲートに設けた案内溝にころがり接触可能に嵌め込まれている請求項1に記載のポンプ内蔵ゲート。
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