JP3908364B2 - 展開型アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば人工衛星等の宇宙航行体に搭載されて気象観測等の各種の観測に供する合成開口レーダ等に用いるのに好適する展開型アンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、人工衛星に搭載される展開型アンテナ装置は、所望の観測性能を確保するために、搭載する衛星構体より大きな形状に構築される。そこで、このような展開型アンテナ装置は、複数のアンテナパネルを回動自在に連結して連設し、この複数のアンテナパネルの背面側には、折畳み展開自在に骨組み結合されるトラス構造体が折畳み展開機構を介して衛星構体に取付け配置される。
【0003】
ところで、このような展開型アンテナ装置は、宇宙空間までの輸送を考慮して、アンテナパネルを折畳み収容して、そのパネル面を衛星取付部に積重する如く組み付けて、宇宙空間まで輸送する方法が採られる。そして、宇宙空間に到達したアンテナパネルは、先ず、衛星取付部に対して直交するように立設された後、指向方向に対応するアンテナ駆動位置に移動させ、このアンテナ駆動位置において折畳み位置から展開されて所望の運用に供される。
【0004】
しかしながら、上記展開型アンテナ装置では、複数のアンテナパネルとトラス構造体を動作制御して、複数のアンテナパネルの折畳み展開を実現する構成上、複数のアンテナパネルの折畳み展開手段と、トラス構造体の折畳み展開手段との動作制御を同期して行うように有機的に結合させなければならないために、その構成が非常に複雑となると共に、その動作制御の信頼性が低いという問題を有する。
【0007】
また、係る事情は、合成開口レーダに限るものでなく、例えば複数の太陽電池パネルを屏風状に折畳み展開可能に組合わせ配置した太陽電池パドルにおいても同様である。この太陽電池パドルは、特に、最近の宇宙開発の分野において、その大容量化を図るために、大形化を促進することが強く要請されていることで、展開動作の信頼性の向上を図ることが重大な課題となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の展開型アンテナ装置では、構成が複雑となり、動作制御の信頼性が低いという問題を有する。
【0009】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、構成簡易にして、信頼性の高い動作制御を実現し得るようにした展開型アンテナ装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、相互間が回動自在に連結されて連設される複数のアンテナパネルと、この複数のアンテナパネルを宇宙航行体の取付面に対して略直交する第1の位置と所定の傾斜角を有したアンテナ駆動位置を形成する第2の位置との間に回動自在に支持する支持手段と、この支持手段を第2の位置方向に付勢する第1の付勢手段と、前記複数のアンテナパネルを展開位置及び折畳み位置に支持するものであって、前記支持手段に基端が直線移動自在に係合されたトラス構造体と、この複数のアンテナパネル及び前記トラス構造体を展開方向に付勢する第2の付勢手段と、このトラス構造体の基端を直線移動自在に支持するものであって、前記第2の付勢手段の付勢力に抗してトラス構造体及び前記アンテナパネルを折畳み位置に支持し、直線移動に連動して前記アンテナパネル及び前記トラス構造体が前記第2の付勢手段と協働して展開を制御する直線移動機構とを具備し、前記支持手段は、宇宙航行体の取付面に一端を回動自在に支持された第1のアーム部材と、該第1のアーム部材の他端に一端を回動自在に支持された第2のアーム部材と、該第2のアーム部材の他端に一端を回動自在に支持され他端に複数のアンテナパネルの中央部が回動自在に連結された第3のアーム部材とが、屈曲伸展するものであることを特徴とする展開型アンテナ装置である。
【0011】
上記構成によれば、複数のアンテナパネルは、支持手段(第1、第2、及び第3のアーム部材)により宇宙航行体の取付面に支持された状態で、折畳み収容位置から展開位置に移動調整される。そして、展開位置において、複数のアンテナパネルは、トラス構造体の基端が直線移動機構により展開方向に直線移動されると、第2の付勢手段の付勢力により該トラス構造体と共に、展開されてアンテナ駆動可能状態に設定される。これにより、複数のアンテナパネルは、折畳み位置から展開位置に至るまで支持手段(第1、第2、及び第3のアーム部材)に連結された状態で動作制御されて、所望の剛性が得られ、しかも、トラス構造体と同期して安定した信頼性の高い動作制御が可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2はこの発明の一実施の形態に係る展開型アンテナ装置を示すもので、それぞれパネル展開状態の側面方向(図3のC方向)及び背面方向(図3のD方向)から見た状態を示す。すなわち、宇宙航行体10には、その取付面に支持部材11が設けられ、この支持部材11は、後述する初期展開用の回動機構12を介して取付面と略平行な軸回りに回動自在に設けられる(図3参照)。
【0016】
また、支持部材11には、第1のアーム部材13の一端が回動軸13aを介して回動自在に支持され(図3参照)、この第1のアーム部材13の他端には、例えばカーボン繊維強化プラスチック(CFRP)製の第2のアーム部材14の一端が回動軸14aを介して回動自在に支持される。同様に、第2のアーム部材14の他端には、第3のアーム部材140の一端が回動軸14bを介して回動自在に支持される。
【0017】
第2のアーム部材14及び第3のアーム部材140には、図4に示すように直線移動機構を構成するラック15が矢印A,B方向に設けられ、このラック15には、ピニオン16が移動自在に歯合される。このピニオン16は、移動部材17に収納される。そして、この移動部材17には、駆動モータ及び減速歯車を含む駆動部材18が収容され、この駆動部材18には、上記ピニオン16が回転力伝達可能に連結され、その回転駆動に連動してピニオン16を回転駆動して、ラック15に沿って直線移動させ、移動部材17を同方向に移動案内する。
【0018】
上記第2のアーム部材14の他端の第3のアーム部材140には、その他端に、例えばフェーズドアレーアンテナを形成する四辺形状のアライミド繊維強化プラスチック(AFRP)製の第1のアンテナパネル19が2枚、挟持する如く配置されて、その一辺の略中央部がパネル回動ヒンジ20を介して回動自在に連結される。そして、この第1のアンテナパネル19の各他端には、略同様の四辺形状のアライミド繊維強化プラスチック(AFRP)製の第2のアンテナパネル21がそれぞれパネル回動ヒンジ22を介して回動自在に結合されて連設される。
【0019】
上記パネル回転ヒンジ20,22には、コイルバネが内蔵され、上記第1及び第2のアンテナパネル19,21に対して展開方向に付勢力を付与して、該第1及び第2のアンテナパネル19,21を折畳み位置から展開位置に回動付勢する。
【0024】
また、図1〜図4において、移動部材17には、例えば上記CFRP製のトラス構造体を形成する、例えば4本の第1のリンク部材27の一端が第1の回動ヒンジ28を介して回動自在にそれぞれ連結される。そして、これら第1のリンク部材27の各他端は、それぞれ上記第1のアンテナパネル19の他端に第2の回動ヒンジ29を介して回動自在に連結される。
【0025】
上記第1のリンク部材27の中間部には、それぞれ第2のリンク部材30の一端が第3の回動ヒンジ31を介して回動自在に連結される。これら第2のリンク部材30は、中間部が第4の回動ヒンジ32を介して回動自在に設けられており、その他端が第2のアンテナパネル21の中間部に第5の回動ヒンジ33を介して回動自在に連結される。
【0026】
上記第2のリンク部材30は、第1のリンク部材27が矢印A方向に移動されると、これに連動して、第4の回動ヒンジ32から第1及び第2のアンテナパネル19,21の折曲方向と逆(山、谷が逆向き)方向に折り曲り収容される。これにより、第1及び第2のリンク部材27,30は、第1及び第2のアンテナパネル19,21の折畳み展開動作に同期して、信頼性の高い安定した折畳み展開が可能となる。
【0027】
上記第4の回動ヒンジ32には、コイルバネが内蔵され、上記第2のリンク部材30に対して展開方向に付勢力を付与して、トラス構造体の折畳み位置から展開位置に回動付勢する。
【0028】
ここで、移動部材17に支持される第1の回動ヒンジ28は、上記パネル回動ヒンジ20に対して、間隔X(図4)だけ離間されて配置される。この間隔Xにより、第1及び第2のリンク部材27,30は、第1及び第2のアンテナパネル19,21の展開動作と同時に展開動作を開始して、同期展開される。
【0029】
また、上記第1のアンテナパネル19には、例えば一方に折畳み収容用の回動部34(図3)が、上記第2のアーム部材14に対応して設けられ、この回動部34は、回動軸34aを介してパネル搭載用取付部35に回動自在に取付けられる。この取付部35は、上記回動機構12を介して上記支持部材11に対応して回動可能に組付けられる。これにより、第1及び第2のアンテナパネル19,21は、上述したように折畳み収容された状態において、図示しない駆動源により、上記回動機構12が駆動されると、これに連動して支持部材11及び取付部35が回動されて、そのパネル面が宇宙航行体10の取付面上に積重された折畳み収容状態(図6)から取付面に略直交上に立設される(この位置が第1の位置であり、これを図5及び図3中において、破線で示す)。ここで、支持部材11及び取付部35は、宇宙航行体10の取付面に位置決めされて第1及び第2のアンテナパネル19,21が位置決めされる。
【0030】
この位置決め状態において、宇宙航行体10の取付面に略直交状に立設された第1及び第2のアンテナパネル19,21は、支持部材11の保持が解除され、回動軸14aに装着した図示しないモータを駆動すると、第1及び第2及び第3のアーム部材13,14,140が回動軸13a,14a,14bを介して回動されることにより、回動部34が取付部35に対して、回動軸34aを介して、図5及び図3中実線で示す展開初期位置(第2の位置)に回動される。なお、前述の図4は図5をE方向から見たアンテナパネル収容時の側面図である。
【0031】
上記構成において、第1及び第2のアンテナパネル19,21は、図6に示すように宇宙航行体10に対して、そのパネル面が取付面に積重するように収容された状態において、図示しないロック機構により、積重位置に位置決めされて、宇宙空間に輸送される。そして、宇宙空間に到達した状態で、先ず、上記ロック機構(図示せず)の位置決めが解除され、その後、回動機構が駆動されて、パネル折畳み状態で、図7に示すように第1及び第2のアンテナパネル19,21が宇宙航行体10の取付面に対して略直交する待機位置(第1の位置)に設定される。
【0032】
この待機位置において、第1のアーム部材13の保持が解除されると、第1のアーム部材13が支持部材11に対して回動軸13aを介して回動され、これに連動して第2のアーム部材14が第1のアーム部材13に対して回動軸14aを介して回動され、これに連動して第3のアーム部材140が第2のアーム部材14に対して回動軸14bを介して回動され、図5中の破線で示す折畳み初期位置(第1の位置)から実線で示す所定の角度傾斜された展開初期位置(第2の位置)に移動される。即ち、図5中の破線で示すように屈曲していた第1のアーム部材13、第2のアーム部材14、第3のアーム部材140が、図5中の実線で示すように伸展する。この際、第1及び第2のアンテナパネル19,21は、その回動部34が取付部35に対して回動軸34aを介して同方向に展開初期位置(第2の位置)まで回動される。
【0033】
この展開初期位置(第2の位置)において、直線駆動機構の駆動部材18(図4)が駆動され、そのピニオン16がラック15に対して矢印A方向に直線移動されて、移動部材17が同方向に移動される。これにより、第1のリンク部材27は、展開されると共に、第2のリンク部材30が第4の回動ヒンジ32の付勢力により図4に示すパネル折畳み状態から図8〜図10に示すように順に展開される。そして、展開完了位置に到達すると、移動部材17は、その図示しないラッチ機構により、ラッチされて位置決めされる。
【0034】
同時に、第1及び第2のアンテナパネル19,21は、上記第1及び第2のリンク部材27,30の展開に連動して、パネル回動ヒンジ20,22の付勢力により、展開初期位置から展開位置まで回動されて展開される(図4,図8〜図10参照)。
【0035】
このパネル展開動作時、上記第1及び第2のリンク部材27,30と第1及び第2のアンテナパネル19,21は、その展開速度が、移動部材17の移動速度により速度制御され、安定した展開動作が行われる。
【0036】
このように、上記展開型アンテナ装置は、第1及び第2のアンテナパネル19,21を、第2のアーム部材14にパネル回動ヒンジ20を介して展開自在に組み付けると共に、パネル支持構造を構成するトラス構造体の第1のリンク部材27を、第2のアーム部材14に移動部材17を介して直線移動自在に組み付けて、この第2のアーム部材14を第1のアーム部材13を介して宇宙航行体10の取付面に、折畳み収容位置、展開初期位置及び展開位置に移動自在に組み付けて、第1及び第2のアンテナパネル19,21を第1及び第2のアーム部材13,14を介して折畳み収容位置、展開初期位置を経由させて展開位置に移動させた状態で、移動部材17の直線移動に連動してトラス構造体の第1及び第2のリンク部材27,30と第1及び第2のアンテナパネル19,21を同期して展開させるように構成した。
【0037】
これによれば、第1及び第2のアンテナパネル19,21は、折畳み位置から展開位置に至るまで第1及び第2のアーム部材13,14に連結された状態で動作制御されて、所望の剛性が得られ、しかも、トラス構造体と同期して安定した信頼性の高い動作制御が可能となる。
【0038】
また、これによれば、移動部材17を第2のアーム部材14に対して直線駆動してトラス構造体の第1のリンク部材27の展開制御と共に、展開速度を制御していることにより、特別にダンパ機構を備えることなく、信頼性の高い展開動作が実現される。この結果、宇宙開発に最適なまでの小形・軽量化の促進を容易に図ることが可能となる。
【0039】
なお、上記実施の形態では、第1のリンク部材27の展開速度を制御する移動部材17を直線駆動する直線駆動機構をラック15及びピニオン16を用いて構成した場合で説明したが、これに限ることなく、各種の直線駆動機構を用いて構成可能である。
【0040】
また、上記実施の形態では、第1及び第2のアンテナパネル19,21を各2枚用いた4枚のパネル構造に適用した場合で説明したが、この枚数に限ることなく、2枚以上のパネル構造のものに適用可能であり、いずれの場合にも同様の効果が期待される。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、第1及び第2のアンテナパネル19,21の背面に第1及び第2のリンク部材27,30を用いたトラス構造体を設けて構成した場合で説明したが、このトラス構造体に限ることなく、各種のトラス構造体を用いて構成することが可能である。
【0044】
よって、この発明は上記実施の形態に限ることなく、その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることは勿論である。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、構成簡易にして、信頼性の高い動作制御を実現し得るようにした展開型アンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施の形態に係る展開型アンテナ装置の展開状態を示した図。
【図2】 図1のアンテナパネルの背面側のトラス構造体との配置関係を示した図。
【図3】 図1を側面から見た状態を示した図。
【図4】 図1のアンテナパネル及びトラス構造体の折畳み状態を示した図。
【図5】 図1の展開初期位置を示した図。
【図6】 図1のパネル折畳み収納状態を示した図。
【図7】 図1の展開待機位置を示した図。
【図8】 アンテナパネルとトラス構造体の展開途中を示した図。
【図9】 アンテナパネルとトラス構造体の展開途中を示した図。
【図10】 アンテナパネルとトラス構造体の展開完了状態を示した図。
【符号の説明】
10…宇宙航行体。
11…支持部材。
12…回動機構。
13,14,140…第1、第2、及び第3のアーム部材。
13a,14a,14b…回動軸。
15…ラック。
16…ピニオン。
17…移動部材。
18…駆動部材。
19,21…第1及び第2のアンテナパネル。
20,22…パネル回動ヒンジ。
27,30…第1及び第2のリンク部材。
28,29,31,32,33…第1乃至第5の回動ヒンジ。
34…回動部。
34a…回動軸。
35…取付部。
Claims (3)
- 相互間が回動自在に連結されて連設される複数のアンテナパネルと、
この複数のアンテナパネルを宇宙航行体の取付面に対して略直交する第1の位置と所定の傾斜角を有したアンテナ駆動位置を形成する第2の位置との間に回動自在に支持する支持手段と、
この支持手段を第2の位置方向に付勢する第1の付勢手段と、
前記複数のアンテナパネルを展開位置及び折畳み位置に支持するものであって、前記支持手段に基端が直線移動自在に係合されたトラス構造体と、
この複数のアンテナパネル及び前記トラス構造体を展開方向に付勢する第2の付勢手段と、
このトラス構造体の基端を直線移動自在に支持するものであって、前記第2の付勢手段の付勢力に抗してトラス構造体及び前記アンテナパネルを折畳み位置に支持し、直線移動に連動して前記アンテナパネル及び前記トラス構造体が前記第2の付勢手段と協働して展開を制御する直線移動機構と
を具備し、
前記支持手段は、宇宙航行体の取付面に一端を回動自在に支持された第1のアーム部材と、該第1のアーム部材の他端に一端を回動自在に支持された第2のアーム部材と、該第2のアーム部材の他端に一端を回動自在に支持され他端に複数のアンテナパネルの中央部が回動自在に連結された第3のアーム部材とが、屈曲伸展するものであることを特徴とする展開型アンテナ装置。 - 前記直線移動機構は、支持手段の司る第2の位置においてトラス構造体を直線移動制御することを特徴とする請求項1記載の展開型アンテナ装置。
- 前記トラス構造体は、ヒンジ結合部がアンテナパネルの折畳み方向と逆方向に折曲されて折畳み収容されることを特徴とする請求項1又は2記載の展開型アンテナ装置。
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