JP3908353B2 - ポリウレタンおよびポリウレタン材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリウレタンおよびポリウレタン材料に関する。さらに詳しくは、本発明はシュウ酸のビス第4級アンモニウム塩又はモノ第4級アンモニウム塩を用いたポリウレタンおよびポリウレタン材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の進歩に伴い、高分子材料の帯電防止技術や導電性付与技術に対する要求が厳しさを増してきており、また、電子機器の小型軽量携帯化に伴い、一次電池や二次電池あるいはコンデンサなどの電解質として、高分子固体電解質を用いる技術が要望されている。
高分子材料に帯電防止性や導電性を付与したものとして、例えば金属,金属酸化物,カーボンブラックなどの導電性フィラーを高分子材料に混入することにより、所定の抵抗値に調整した高分子エラストマーや高分子フォームなどが知られている。しかしながら、これらは、電気抵抗の位置ばらつきが大きく、かつ電気抵抗の電圧依存性も大きいという欠点があった。
一方、過塩素酸ナトリウムのような電解質をポリウレタンやNBRなどの高分子材料に混入することにより、抵抗のばらつきや電圧依存性が実質的にない高分子材料を得ることができるが、このような高分子材料においては、低温低湿時と高温高湿時の電気抵抗が著しく異なる上、長時間通電し続けると漸次電気抵抗が増大していくという問題があった。このようなポリウレタンやNBRなどに電解質を混入した高分子材料に、長時間通電し続けると漸次電気抵抗が増大する理由は、電解質が分極し、高分子材料の分子運動による脱分極が間に合わないためと考えられる。
ところで、第4級アンモニウム塩は、過塩素酸ナトリウム,過塩素酸リチウム,ホウフッ化リチウムなどの無機電解質に比べて、連続通電の際にも電気抵抗の上昇が比較的小さく、特に第4級アンモニウムの塩化物やアルキル硫酸塩が好ましいが、これらは、上記無機電解質と比較すると、低温低湿時と高温高湿時の電気抵抗の変化がさらに大きいという欠点を有している。
したがって、電気抵抗の位置ばらつき及び電気抵抗の電圧依存性が小さく、かつ低温低湿時と高温高湿時の電気抵抗の変動が小さい上、長時間連続通電しても電気抵抗の上昇が少ないなど、優れた特性を有する電解質の開発が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下で、前記の優れた特性を有し、スポンジなどとして好適に用いられるポリウレタンおよびポリウレタン材料を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の優れた特性を有する電解質を開発すべく鋭意研究を重ね、まず、ポリウレタンなどの高分子材料に、酢酸ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムをヘキサンで希釈した界面活性剤や、分子量100〜500程度の第4級アンモニウムをマレイン酸又はフタル酸の塩とし、γ−ブチロラクトン溶液とした電解コンデンサ用電解液を、有効成分換算で0.01〜20重量%程度添加することにより導電性を付与したものが、連続通電前後の電気抵抗の変化及び低温低湿時と高温高湿時の電気抵抗の変動を、共に抑制しうることを知見した。
ところが、上記カルボン酸の第4級アンモニウム塩は、ポリウレタンを製造する際にウレタン反応の初期ゲル化反応を著しく促進するが、最終的な反応完結を阻害するという欠点がある。ウレタン反応を初期には促進し、完結時には阻害する理由については必ずしも明確ではないが、該第4級アンモニウム塩の酸成分である酢酸,マレイン酸又はフタル酸が、ウレタン反応と並行して無水化し、水を発生するとともに、生成した酸無水物が解重合反応を促進するためであると推定される。
【0005】
そこで、本発明者らは、カルボン酸の第4級アンモニウム塩とウレタン反応の関係について、さらに研究を重ねたところ、酸成分がシュウ酸である場合、無水化反応を起こさず、ウレタン反応に悪影響を及ぼさないことを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)又は(II)
【0006】
【化4】
【0007】
(式中、R1は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるシュウ酸の第4級アンモニウム塩をポリウレタン原料に配合してウレタン化反応させることにより得られたポリウレタン、
(2)第4級アンモニウムが、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム又はテトラメチルアンモニウムである上記(1)記載のポリウレタン、
(3)前記シュウ酸の第4級アンモニウム塩がシュウ酸と、一般式(III)
【0008】
【化5】
【0009】
(式中、R1 は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基、R 2 、R 3 、及びR 4 は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す)
で表される第4級アンモニウムヒドロキシドとを反応させたものである上記(1)または(2)記載のポリウレタン、および前記一般式(I)又は( II) で表わされる第4級アンモニウム塩をポリウレタンに配合してなるポリウレタン材料を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリウレタンおよびポリウレタン材料の原料として用いられるシュウ酸の第4級アンモニウム塩は、一般式(I)
【0011】
【化6】
【0012】
で表されるビス第4級アンモニウム塩(以下、単にビス塩ということがある。)、又は一般式(II)
【0013】
【化7】
【0014】
で表されるモノ第4級アンモニウム塩(以下、単にモノ塩ということがある。)である。
上記一般式(I),(II) において、R1 は炭素数1〜30のアルキル基,炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を示す。ここで、炭素数1〜30のアルキル基は直鎖状,分岐状,環状のいずれであってもよく、その例としてはメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ヘキシル基,オクチル基,ノニル基,デシル基,ドデシル基,テトラデシル基,ヘキサデシル基,オクタデシル基,エイコシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロオクチル基,シクロドデシル基などが挙げられる。また炭素数6〜30のアリール基としては、例えばフェニル基,ナフチル基などが挙げられ、炭素数7〜30のアラルキル基としては、例えばベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基などが挙げられる。なお、上記アリール基及びアラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基,低級アルコキシ基,ハロゲンなどの適当な不活性基が導入されていてもよい。
また、R2 ,R3 及びR4 は、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基を示す。このアルキル基は、直鎖状,分岐状,環状のいずれであってもよく、その例としてはメチル基,エチル基.プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基などが挙げられる。R2 ,R3 及びR4 はたがいに同一であってよく、異なっていてもよい。
【0015】
前記一般式(I)で表されるシュウ酸ビス第4級アンモニウム塩としては、例えばシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム),シュウ酸ビス(ベンジルトリエチルアンモニウム),シュウ酸ビス(テトラブチルアンモニウム),シュウ酸ビス(テトラプロピルアンモニウム),シュウ酸ビス(テトラエチルアンモニウム)及びシュウ酸ビス(テトラメチルアンモニウム)などを好ましく挙げることができる。これらの中で特にシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)が好適である。
一方、前記一般式(II) で表されるシュウ酸モノ第4級アンモニウム塩としては、例えばシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム),シュウ酸モノ(ベンジルトリエチルアンモニウム),シュウ酸モノ(テトラブチルアンモニウム),シュウ酸モノ(テトラプロピルアンモニウム),シュウ酸モノ(テトラエチルアンモニウム)及びシュウ酸モノ(テトラメチルアンモニウム)などを好ましく挙げることができる。これらの中で特にシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)が好適である。
【0016】
マレイン酸やフタル酸などの二塩基酸は容易に無水化反応を起こし、酸無水物を生じる。また、立体配置が1分子では無水化しえないマロン酸や、一塩基酸である酢酸も2分子が会合して酸無水物を生成する。これに対し、シュウ酸は酸無水物を生成しないので、その第4級アンモニウム塩は、ウレタン反応に悪影響を及ぼすことがない。
前記シュウ酸のビス第4級アンモニウム塩は中性塩であり、シュウ酸のモノ第4級アンモニウム塩は酸性塩である。例えばシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)水溶液のpHは約7であり、シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)水溶液のpHは約3である。
また、シュウ酸のビス第4級アンモニウム塩とモノ第4級アンモニウム塩とは性状が異なる。例えばシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)は著しい吸湿性を示すが、シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)はあまり吸湿性は高くない。したがって、シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)は吸湿剤として用いることができる。他のシュウ酸の第4級アンモニウム塩についても同様の結果が得られ、モノ第4級アンモニウム塩はあまり吸湿性は高くないが、ビス第4級アンモニウム塩は著しい吸湿性を示し、吸湿剤として用いることができる。
【0017】
シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)を窒素気流中で温度を上げていくと、240℃付近で熱分解するが、室温から熱分解までの間に溶融などの相転移は起こさない。これに対し、シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)を同様に窒素気流中で温度を上げていくと、130℃付近で融点を示し、230℃付近で熱分解する。
図3は、後述の実施例2で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の示差熱サーモグラムであり、その溶融潜熱は約123J/gである。溶融状態のシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)は、電池又はコンデンサ用溶融塩電解質などとして用いることができる。
なお、上記モノ塩およびビス塩とも、水,アセトニトリル,メタノール,ジメトキシエタン,γ−ブチロラクトン,炭酸プロピレン,炭酸エチレンの如き極性溶媒に溶解させたり、ポリウレタン,エピクロルヒドリンゴム,アクリルゴム,NBR等の極性ポリマーに配合することにより、電池又はコンデンサ用電解質として用いることができる。
シュウ酸の他の第4級アンモニウム塩についても、融点や熱分解温度などは多少異なるが、同様の結果が得られる。また、1分子のシュウ酸成分は、熱分解して2分子の二酸化炭素を発生するので、消火作用も期待される。
【0018】
本発明のシュウ酸のビス第4級アンモニウム塩及びモノ第4級アンモニウム塩は、いずれもポリウレタンやNBRなどの極性高分子材料に配合することにより、帯電防止効果や導電性付与効果を示す。しかも、連続通電しても、イオンの分極による電気抵抗の上昇が少なく、かつ低温低湿時と高温高湿時の電気抵抗の変動が小さい上、電気抵抗の位置ばらつきや電圧依存性も小さい。したがって、本発明のシュウ酸のビス第4級アンモニウム塩やモノ第4級アンモニウム塩は、高分子材料の帯電防止剤や導電性付与剤として用いることができる。この際、その配合量については特に制限はないが、高分子材料に対し、0.01〜20重量%の割合で配合するのが有利である。なお、ポリウレタン原料に配合してウレタン反応を行う場合には、シュウ酸のモノ第4級アンモニウム塩はウレタン反応の進行を遅延させる傾向があり、またシュウ酸成分がイソシアネートと反応しやすいので、これを考慮して、イソシアネートの配合量を増加するなどの処置をとるのが望ましい。
本発明の一般式(I)または(II) で表されるシュウ酸の第4級アンモニウム塩は、本発明の方法によれば、シュウ酸と、一般式(III)
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R1 〜R4 は前記と同じである。)
で表される第4級アンモニウムヒドロキシドとを反応させることにより製造することができる。
この反応においては、溶媒として、例えばメタノールやエタノールなどの低級アルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトンなどのケトン類、さらにはジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒が好ましく用いられる。これらは一種用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。シュウ酸と第4級アンモニウムヒドロキシドの使用割合については、シュウ酸のビス第4級アンモニウム塩を製造する場合には、シュウ酸と第4級アンモニウムヒドロキシドを、実質上モル比1:2の割合で用いればよく、また、シュウ酸のモノ第4級アンモニウム塩を製造する場合には、シュウ酸と第4級アンモニウムヒドロキシドを、実質上モル比1:1の割合で用いればよい。反応温度は特に制限はなく、通常は室温で充分であるが、必要ならば適当に加熱してもよい。
【0021】
反応終了後、生成したシュウ酸の第4級アンモニウム塩を、常法、例えば貧溶媒を添加して析出させたのち、ろ過などの手段により取り出し、充分に貧溶媒で洗浄後、乾燥処理することにより、目的のシュウ酸の第4級アンモニウム塩を得ることができる。乾燥処理方法としては特に制限はなく、風乾,真空乾燥,加熱乾燥,真空加熱乾燥など、いずれの方法も用いることができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の製造
シュウ酸10.78g(0.120モル)をアセトンに溶解し、総量を100gとしたシュウ酸のアセトン溶液を、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの40重量%のメタノール溶液(東京化成社製)100g(ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド0.261モル)と混合したのち、アセトン1500gを添加して、白色の沈殿を生成させた。
次いで、この沈殿物を吸引ろ過法によりろ取し、アセトン500gに分散させたのち、ろ取し、80℃で24時間真空乾燥処理することにより、シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)33.9g(0.0941モル)を得た。収率は78.4%(対シュウ酸)であった。
このシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図1に示す。また、このものは融点はなく、約240℃で熱分解する(窒素気流中)。
さらに、上記シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)のプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル(溶媒:重水と重メタノールの3:1混合溶媒、ともに重化率99.8%)を図2に、同位体炭素核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル(溶媒:重水と重メタノールの3:1混合溶媒、ともに重化率99.8%)を図3に示す。
次いで、上記シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)について、25℃,55%の環境下で吸湿による重量増加を測定した。サンプル量は1.43gであったが、10分後に1.51g(105.6%)、30分後に1.57g(109.8%)、60分後に1.67g(116.8%)、120分後に1.74g(121.7%)に増加した。
【0023】
(2)シュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の評価
グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとをランダム付加して得られた分子量5000のポリエーテルポリオール80重量部、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール20重量部、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート16.4重量部、反応性シリコーン系界面活性剤4重量部、ジブチルチンジラウレート0.01重量部、および上記(1)で得られたシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)0.3重量部を、ミキサーで気泡を混入させながら混合し、厚さ5.5mm,120mm四方のポリウレタンスポンジシートを作製した。
次に、上記シートの電気抵抗をアドバンテスト社製RT−42測定箱とR8340A高抵抗計を用い、電圧1000Vで測定したところ、測定時の温度,湿度がそれぞれ15℃,10%で3.8×109 Ω、20℃,50%で4.0×108 Ω、32.5℃,85%で4.1×107 Ωであった。
さらに、上記シートをRT−42測定箱を用いて、温度20℃,湿度50%の環境で1000Vの電圧を印加したまま50時間連続して通電したのち、上記と同様の方法で電気抵抗を測定したところ、測定時の温度,湿度がそれぞれ15℃,10%で4.0×109 Ω、20℃,50%で4.0×108 Ω、32.5℃,85%で4.0×107 Ωであった。
【0024】
比較例1
(1)マレイン酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の製造
マレイン酸13.90g(0.120モル)をアセトンに溶解し、総量を100gとしたマレイン酸のアセトン溶液を、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの40重量%のメタノール溶液(東京化成社製)100g(ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド0.261モル)と混合したのち、アセトン1500gを添加した。混合液は2相に分離したので、下相を分液ロートで分取した。この液体をアセトン500g中に分散させ、再度分液ロートで分取し、マレイン酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)を得た。
【0025】
(2)マレイン酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の評価
グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとランダム付加して得られた分子量5000のポリエーテルポリオール80重量部、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール20重量部、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート16.4重量部、反応性シリコーン系界面活性剤4重量部、および上記(1)で得られたマレイン酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)0.3重量部を、ミキサーで気泡を混入させながら混合し、厚さ5.5mm,120mm四方のポリウレタンスポンジシートを作製しようとしたが、実施例1と異なり、ウレタン反応触媒であるジブチルチンジラウレートを配合していないにもかかわらず、極めて短時間でゲル化が生じ、スポンジ状サンプルを作製できなかった。
【0026】
実施例2
(1)シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の製造
シュウ酸21.56g(0.239モル)をアセトンに溶解し、総量を100gとしたシュウ酸のアセトン溶液を、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドの40重量%のメタノール溶液(東京化成社製)100g(ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド0.261モル)と混合したのち、アセトン1500gを添加して、白色の沈殿を生成させた。
次いで、この沈殿物を吸引ろ過法によりろ取し、アセトン500gに分散させたのち、ろ取し、80℃で24時間真空乾燥処理することにより、シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)46.80g(0.208モル)を得た。収率は87.0%(対シュウ酸)であった。
このシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)を図4に示す。また、示差熱サーモグラムを図5に示す。このものの融点は約130℃(窒素気流中)であり、約230℃で熱分解(窒素気流中)し、溶融潜熱は約123J/gであった。
さらに、上記シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)のプロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル(溶媒:重水と重メタノールの3:1混合溶媒、ともに重化率99.8%)を図6に、同位体炭素核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトル(溶媒:重水と重メタノールの3:1混合溶媒、ともに重化率99.8%)を図7に示す。
【0027】
(2)シュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の評価
グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとをランダム付加して得られた分子量5000のポリエーテルポリオール80重量部、分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール20重量部、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート16.6重量部、反応性シリコーン系界面活性剤4重量部、ジブチルチンジラウレート0.01重量部、および上記(1)で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)0.3重量部を、ミキサーで気泡を混入させながら混合し、厚さ5.5mm,120mm四方のポリウレタンスポンジシートを作製した。
次に、上記シートの電気抵抗をアドバンテスト社製RT−42測定箱とR8340A高抵抗計を用い、電圧1000Vで測定したところ、測定時の温度,湿度がそれぞれ15℃,10%で2.2×109 Ω、20℃,50%で2.2×108 Ω、32.5℃,85%で2.3×107 Ωであった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のシュウ酸の第4級アンモニウム塩は、ビス第4級アンモニウム塩及びモノ第4級アンモニウム塩ともに、高分子材料の帯電防止剤や導電性付与剤として好適に用いられ、電気抵抗の環境変動を改善し、かつ連続通電においても抵抗変動を抑制することができる。また、モノ第4級アンモニウム塩は比較的低い温度で溶融し、電池又はコンデンサ用電解質として使用することができる。さらにビス第4級アンモニウム塩は著しい吸湿性を示すので、吸湿剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の赤外吸収スペクトル図である。
【図2】 実施例1で得られたシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)のプロトン核磁気共鳴スペクトル図である。
【図3】 実施例1で得られたシュウ酸ビス(ベンジルトリメチルアンモニウム)の同位体炭素核磁気共鳴スペクトル図である。
【図4】 実施例2で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の赤外吸収スペクトル図である。
【図5】 実施例2で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の示差熱サーモグラムである。
【図6】 実施例2で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)のプロトン核磁気共鳴スペクトル図である。
【図7】 実施例2で得られたシュウ酸モノ(ベンジルトリメチルアンモニウム)の同位体炭素核磁気共鳴スペクトル図である。
Claims (4)
- 第4級アンモニウムが、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム又はテトラメチルアンモニウムである請求項1記載のポリウレタン。
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