JP3908304B2 - 靴 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステッチダウン式製法により製造される靴に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のステッチダウン式製法により製造される靴としては、アッパーが甲革及び裏革の両方を有し、このアッパーが、すなわち甲革と裏革の両方が外側につり込まれて中入れ底と縫い付けられ、表底が中入れ底に対して接着により取り付けられているものが一般である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような靴にあっては、中底を有していないため、歩行に際して足に衝撃が加わり易く、また、湿気を帯び易く、足の蒸れが生じ易い。更に、歩行、屈伸に対して型くずれし易い等の不都合がある。また、中底がなく、アッパーを外側につり込んでいるため、足型に対する誤差が生じ易いと共に、外部から水が侵入し易いという問題もある。
【0004】
このため、図4に示すように、ステッチダウン式製法でありながら、中底1を配設することにより、上記した問題を解消した靴が知られている。なお、この図において、3は、甲革4及び裏革5からなるアッパー、6は、表底である。
【0005】
しかしながら、このようにステッチダウン式製法において、中底1を配設した靴にあっては、上記のような利点を有する反面、次のような問題がある。
【0006】
すなわち、中底1の追加により、材料費が嵩むのは否めない。また、このような靴を製造する場合には、まず、甲革4と裏革5とを一緒に中底1に対して内側につり込む総裏つり込みを行わなければならない。そして、その後に、図5に示すように、甲革4のつり込み部分を裏革5のつり込み部分から引き剥がして外側に出し、この外側に出した部分を中入れ底2に対して縫い付ける作業を行う必要がある。
【0007】
この場合、裏つり込み及び裏つり込み後に甲革4だけを引き剥がして外側に出す作業は全て手作業であり非常に手間がかかる。しかも、この作業を靴の全周にわたって行わなければならないため、作業性に劣り、生産性の点でも問題がある。
【0008】
本発明は上記した課題を解消するためになされたものであり、中底を有するステッチダウン式製法により製造される靴であって、中底を有することによる利点を奏しつつ、材料費を低減できると共に、製造に係わる作業性を向上できる靴を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため本発明のステッチダウン式製法により製造される靴は、表底及び中底を有すると共に、アッパーが甲革及び裏革の両方を有するステッチダウン式製法により製造される靴において、前記中底として、爪先部から踏まず部付近までの長さを有するものが用いられ、前記裏革のうち前記中底に対応する部分のみが内側につり込まれ、前記裏革のうち前記中底に対応しない部分及び前記甲革の全周縁部が中入れ底又は前記表底に対して外側につり込まれていることを特徴とする。
【0010】
この場合、中入れ底を有し、前記アッパーが前記中入れ底と縫い付けられ、前記表底が前記中入れ底に対して接着により取り付けられている構成が好ましい。また、中入れ底を有しないものにおいて、前記表底が、前記アッパーに対して縫い付けられて取り付けられている構成とすることもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の一の実施の形態にかかる靴の側面断面図、図2は、図1中A−A矢視断面図、図3は、図1中B−B矢視断面図である。
【0012】
これらの図において、靴は、中底10を有すると共に、アッパー11が甲革12及び裏革13の両方を有するステッチダウン式製法により製造される。前記中底10は、従来、靴の爪先部から踵部までの長さを有するものが用いられているが、この実施の形態では、爪先部から踏まず部付近までの長さに設定されている。
【0013】
前記アッパー11における裏革13のうち中底10に対応する部分のみが内側につり込まれている。また、裏革13のうち中底10に対応しない部分、つまり、踏まず部付近から踵部までの部分及び甲革12の全周縁部は、中入れ底14に対して外側につり込まれ、これらの部分が、中入れ底14と縫い付けられている。なお、裏革13のうち中底10に対応して内側につり込まれる部分とこれとは逆に外側につり込まれる部分との境界部には、つり込み作業の前に、切り込み(図示せず)を設けておくことが好ましい。また、表底15は、中入れ底14に対して接着、縫着等により取り付けられる。
【0014】
かかる構成の靴を製造するに際しては、アッパー11のうち中底10に対応する部分の甲革12と裏革13を一緒に中底10に対して内側につり込む一方、裏革13のうち中底10に対応しない部分及び甲革12の全周縁部を、中入れ底14に対して外側につり込む作業を行う。
【0015】
そして、中底10に対して内側につり込んだ甲革12及び裏革13のうち甲革12だけを外側に出して、中入れ底14に対して外側につり込む作業を行う。
【0016】
かかるアッパー11のうち中底10に対応する部分の甲革12と裏革13を一緒に中底10に対して内側につり込む作業は、アッパー11のうち爪先部から踏まず部付近までの長さの中底10に対応する部分のみ行われるため、従来の総裏つり込みと比較して手間と時間がかからず、また、この作業の後に、甲革12だけを外側に出して、中入れ底14に対して外側につり込む手作業は、甲革12の爪先部から踏まず部付近までの部分に対してだけ行えば良いから、甲革12の全周にわたって行う必要がなく、手間の削減を図れる。
【0017】
以上のつり込み作業の後、中入れ底14に対して外側につり込んだ甲革12及び裏革13を中入れ底14と縫い付けると共に、表底15を中入れ底14に対して接着等により取り付ければ良い。
【0018】
かかる靴においては、中底10を設けたことにより、次のような利点を有する。すなわち、爪先部から踏まず部付近までの間に中底10があるため、歩行に際して衝撃を吸収できると共に、中底10により靴内の湿気を吸収でき、足の蒸れが少ない。
【0019】
また、裏革13のうち中底10に対応する部分のみを内側につり込んで、裏革13で中底10を包み込んでいるため、足型に対して誤差が少なく成形加工できると共に、歩行、屈伸に対して型くずれし難く、長期の使用に対して老朽化、破損が少なく、雨天時の使用等に際して、外側からの水の侵入を防止できる。従って、ステッチダウン式製法における従来の総裏つり込みの場合とほぼ同様の機能を奏することができる。その一方、中底10に対し、裏革13と共に、一旦内側につり込んだ甲革12を手作業により剥がして外側に出す部分が、甲革12の全周ではなく一部であるため、作業も容易である。
【0020】
なお、上述した実施の形態では、中入れ底14を有するものにおいて、裏革13のうち中底10に対応しない部分及び甲革12の全周縁部を中入れ底14に対して外側につり込む構成とし、アッパー11を中入れ底14と縫い付け、表底15を中入れ底14に対して接着等により取り付けるようにしたが、中入れ底を有しないものにおいて、裏革のうち中底に対応しない部分及び甲革の全周縁部を表底に対して外側につり込む構成とし、この表底を、アッパーに対して直接縫い付けて取り付けるようにしても良い。
【0021】
【発明の効果】
本発明の靴は、ステッチダウン式製法において、足への衝撃の緩和、足の蒸れの減少、かつ歩行、屈伸に対して型くずれが少ない等という中底を有する靴の利点を奏しつつ、中底の材料費を低減できると共に、つり込み作業において手間の削減を図れ、作業性の向上を図れる結果、生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の靴の一の実施の形態を示す側面断面図である。
【図2】図2は、図1中A−A矢視断面図である。
【図3】図3は、図1中B−B矢視断面図である。
【図4】図4は、従来のステッチダウン式製法により製造される靴の側面断面図である。
【図5】図5は、同上の従来の靴の問題点を説明する断面図である。
【符号の説明】
10 中底
11 アッパー
12 甲革
13 裏革
14 中入れ底
15 表底
Claims (3)
- 表底及び中底を有すると共に、アッパーが甲革及び裏革の両方を有するステッチダウン式製法により製造される靴において、
前記中底として、爪先部から踏まず部付近までの長さを有するものが用いられ、前記裏革のうち前記中底に対応する部分のみが内側につり込まれ、前記裏革のうち前記中底に対応しない部分及び前記甲革の全周縁部が中入れ底又は前記表底に対して外側につり込まれていることを特徴とするステッチダウン式製法により製造される靴。 - 中入れ底を有し、前記アッパーが前記中入れ底と縫い付けられ、前記表底が前記中入れ底に対して接着により取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の靴。
- 前記表底が、前記アッパーに対して縫い付けられて取り付けられていることを特徴とする、中入れ底を有しない請求項1記載の靴。
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-
1996
- 1996-09-04 JP JP25222396A patent/JP3908304B2/ja not_active Expired - Fee Related
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