JP3907933B2 - 根粒菌接種資材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてマメ科植物を栽培する際に用いると、該マメ科植物の生育を高めることができる根粒菌の接種資材、その製造方法及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
土壌細菌であるリゾビウム(Rhizobium)属細菌、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、アゾリゾビウム(Azorhizobium)属細菌などの根粒菌類は、ダイズ、インゲン、クローバーなどマメ科植物の根に共生して根粒と呼ばれる器官を形成し(図1)、大気中の窒素ガスをアンモニアに変換するいわゆる生物的窒素固定を行うことができる。変換したアンモニアを植物に窒素栄養として供給し、その代わりに植物からは糖などの養分を供給されている(図2)。植物に窒素養分を供給できることから、根粒菌が共生すると、その植物の生育は高められる。この性質を利用して、マメ科植物(食用作物、飼料作物)を栽培する際に、生物的窒素固定能力の高い根粒菌を人工的に土壌に接種し、根粒を形成させて窒素肥料の代替をさせることが、世界の作物生産現場で一般的に行われている。また、最近は、資源・エネルギー枯渇の懸念から、低投入・資源循環型作物生産の重要性が高まっている。そのような生産システムの一つとしても、根粒菌を利用したマメ科作物の栽培が推奨されている。
【0003】
これら根粒菌類の実際の使用にあたっては、これら根粒菌類を他の土壌微生物から保護し、かつ、これら根粒菌類に適当な生育の場を与えて、植物への感染が起こりやすいようにするために、担体(キャリアー)と混合したり、あるいは担体に内包させた接種剤として用いることが検討されている。かかる根粒菌類の担体材料として、例えば土壌、クレー、砂、石炭、カオリン粉末、ミズゴケ、ピート、親水性ポリマー、パルプ及びセルロース等が検討されてきた。栽培の現場でこの根粒菌類を土壌に接種する際には、通常、人工的に培養された根粒菌を前記担体に保持し、栽培の現場への運搬・保存の後、土壌に接種されていた。そして、担体には、保存性、生残性、根粒形成能力と共に経済性が要求されるが、現在実際に担体として用いられているピートは、根粒菌の菌数を維持するためには滅菌状態、4℃の低温状態が要求され、取扱い上、また経済的にも使用者にとって必ずしも有利なものとはいえなかった。
【0004】
また、根粒菌類等の担体の改良などに関しては、以下の技術が知られている。特開平6−141848号公報には、窒素固定能の高い優良な根粒菌を、現実の作物用の土壌に施用したときに、充分な根粒形成活性を有し、土着の根粒菌株と競合した場合でも、より優位に着生する根粒菌の接種資材及び接種方法として、窒素固定能の高い根粒菌と滅菌した土壌と水溶性高分子物質とを含有し、水分25〜45重量%の粒状であることを特徴とし、更にこの接種資材を共生作物に施用することが記載されている。特開平8−109110号公報には、マメ科植物に対し優れた成長促進効果及び収量増加効果を有し、かつ、保存安定性に優れた微生物製剤として、50%〜90%の水分を含み、石炭灰を含む有機物担体に、アゾスピリラム菌及び根粒菌をそれぞれ担体1g当たり105〜108個細胞づつ担持させ、これをマメ科植物の栽培に用いる培土に施用するマメ科植物用微生物製剤が記載されている。特開平11−171716号公報には、植物への感染性に優れ、しかも極めて簡易に作製できる植物根共生微生物接種剤として、接種剤の担体として微生物生産性高分子物質を選択し、これにより植物根共生微生物を内包して植物へ接種することにより、植物根共生微生物は土壌微生物から十分に保護され、かつ、生育の場が与えられ、その植物への感染率は大きく上昇すること、しかも、この高分子物質を生産する微生物と植物根共生微生物とを同時に液体培養することで、植物根共生微生物の培養・増殖工程と、この植物根共生微生物を高分子物質で内包する工程とをわずか1段階で行えることが記載されている。
【0005】
その他、土壌団粒化剤に関しては以下の技術が知られている。例えば、特開平11−335662号公報には、水溶液中で、(メタ)アクリル酸を含有する水溶性モノマーを、分散重合させる事により得られる、蒸留水で10倍に希釈した状態の液を顕微鏡にて400倍に拡大して観察した場合においてポリマー粒子が観察され、アルカリを添加してPHを7.0に調整した場合に水溶液となる性質を有するポリマー分散液からなる土壌団粒化剤が記載されている。また、特開平10−165920号公報には、フライアッシュまたは/および製紙スラジの焼却灰を主成分とし、前記焼却灰に、石膏,シリカヒューム,アルミナ・けい酸塩を主体とするモンモリロナイト等の天然鉱物,アルカリ金属炭酸塩,および陰イオン界面活性剤を均一配合して成り、Si成分がSiO2換算量で45〜55重量%,Al成分がAl2O3換算量で20〜30重量%,Ca成分がCaO換算量で5〜15重量%,およびMg成分がMgO換算量で5〜15重量%含有されている泥状物の団粒化剤が記載されている。さらに、特開平7−246375号公報には、流動床ボイラ灰を粗粒と微粉とに分級し、この粗粒を粘土質土壌の団粒化材として回収することを特徴とする粘土質土壌の団粒化材の製造方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
マメ科作物を栽培する際に、マメの根に共生して大気中の窒素をアンモニアに変換し、マメに供給する能力のある微生物(根粒菌)が、窒素肥料の代替として広く利用されている。根粒菌は培養タンク等で純粋培養された後に、担体に混合され、根粒菌資材として農業現場で用いられるが、その保存にあたっては、根粒菌数を減少させないために、滅菌状態の維持、低温保存、キャリアー中の水分含有率の維持などが必要とされていた。かかるマメ科植物の栽培の現場で根粒菌を土壌に接種する際に使用される根粒菌接種資材としては、▲1▼特別な施設を用いなくても長期保存が可能である。室温で保存できればより好ましい(保存性)、▲2▼接種された土壌中で、根粒菌が高い生菌数を維持できる(生残性)、▲3▼接種菌が土着根粒菌(土壌中にもともと住み着いている根粒菌。窒素固定能力が低い場合が多い。)との競争に勝ってマメの根に根粒を形成できる(競争的根粒形成能力)、▲4▼安価である(経済性)等の条件を満たす接種資材が希求されていた。本発明の課題は、上記条件を充足する根粒菌接種資材、すなわち、滅菌状態や低温状態を必要とせず常温で保存することができ、接種された土壌中での生残性及び根粒形成能力に優れた根粒菌接種資材を安価に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
土壌は一般的に砂、シルト、粘土、有機物などの粒子から構成されているが、これらがバラバラに存在するのではなく、静電気力により、また多糖類、微生物菌体などを介して結合して高次構造を形成し、その構造は団粒構造と呼ばれている。かかる団粒構造の内部には、原生動物が侵入できない微細な孔隙が多数形成されている。さらに、水分や微生物菌体を吸着する粘土鉱物、微生物の基質となる有機物が含まれているため、団粒構造の内部は、特に乾燥に弱い土壌細菌の長期生残の場として機能していることが知られている(図3及び図4)。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために、保存が簡単で、しかも作物生育促進効果の高い根粒菌接種資材について鋭意研究し、上記団粒構造の有する性質に着目し、特に団粒構造が著しく発達し、原生動物が進入できない微細孔が多数形成されている火山灰土壌の団粒を根粒菌の担体として用いて、さらに、土壌団粒に保持された根粒菌を飢餓生存期に達するまで培養することにより、根粒菌の優れた保存性、接種後の土壌での根粒菌の優れた生残性、優れた生残性に基づく高い根粒形成能力等を備えた根粒菌接種資材が得られることを見い出し、得られた根粒菌接種資材を用いて実際にインゲンを栽培し、顕著に優れた生育促進効果を確認し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、(1)火山灰に由来する土壌団粒からなる団粒形成率が60重量%以上の担体に、土壌団粒の最大容水量の40〜60%になるように、根粒菌懸濁液を接種・混合して根粒菌を保持させ、土壌団粒に保持された根粒菌を飢餓生存期に達するまで培養した後、根粒菌を保持した土壌団粒を15〜25℃で水分含量を3〜10%まで乾燥することを特徴とする根粒菌接種資材の製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、(2)乾燥を、非無菌条件下で行うことを特徴とする上記(1)記載の根粒菌接種資材の製造方法や、(3)根粒菌が、インゲン根粒菌、ダイズ根粒菌、又はラッカセイ根粒菌であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の根粒菌接種資材の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載のマメ科植物用の根粒菌接種資材の製造方法により得られる根粒菌接種資材や、(5)上記(4)記載の根粒菌接種資材を用いることを特徴とするマメ科植物の栽培方法や、(6)根粒菌接種資材をマメ科種子の直下に施用することを特徴とする上記(5)記載のマメ科植物の栽培方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の根粒菌接種資材の製造方法としては、団粒の形成率が60重量%以上の担体に根粒菌を保持させる製造方法であれば特に制限されるものではなく、団粒の形成率が60重量%以上の担体としては、団粒の形成率が60重量%以上の土壌の他、前記特開平11−335662号公報、特開平10−165920号公報、特開平7−246375号公報等に記載の公知の団粒化剤により製造された団粒の形成率が60重量%以上の団粒化物など60重量%以上の団粒構造を有するものであればどのようなものでもよいが、70重量%以上、特に80重量%以上が好ましい。かかる好ましい担体としては、他の種類の土壌に比べて一般に団粒の形成率が高い土壌である火山灰に由来する土壌団粒を具体的に挙げることができる。団粒の形成率が60重量%以上の担体の場合、発達した団粒構造中に多数の微細な孔隙が形成され、この孔隙が根粒菌の安定な住み場所となり、接種に用いる前の根粒菌の保存性や土壌に接種した後の根粒菌の生残性に有利に作用する。他方、団粒の形成率が60重量%未満の担体の場合、団粒構造の内部に保持しうる生存根粒菌数が減少するばかりでなく、根粒菌が生存・増殖に必要とする空気や水分の担持量も少なくなり、かかる担体に根粒菌を保持させた接種材料をマメ科植物栽培土壌に施しても根粒菌の生残性や根粒形成率が充分でない。
【0013】
本発明において用いられる根粒菌としては、マメ科植物の根に感染して根粒を形成するグラム陰性細菌であり、マメ科植物に対して生育促進作用を有するものであれば特に制限されず、具体的にはリゾビウム(Rhizobium)属、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium)属、アゾリゾビウム(Azorhizobium)属に属する微生物が挙げることができ、より具体的には、リゾビウム トロピシ(R. tropici)、リゾビウム メリロッテイ(R. meliloti)、リゾビウム トリフォリイ(R. trifolii)、リゾビウム レグミノサルム(R. leguminosarum)、リゾビウム ファゼオリイ(R. phaseoli)、リゾビウム ルピニ(R. lupini)、リゾビウム フレデイ(R. fredii)、リゾビウム ロッテイ(R. loti)、リゾビウム アラキス(R. arachis)ブラジリゾビウム ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、アゾリゾビウム カウリノダンス(Azorhizobium caulinodans)を例示することができる。
【0014】
上記根粒菌の培養に用いる培地は、これらの微生物の増殖に適した培地であれば特に制限されないが、液体培地が好ましい。根粒菌の増殖用液体培地としては、K2HPO4(リン酸水素二カリウム)0.5g、MgSO4・7H2O(硫酸マグネシウム)0.2g、NaCl(塩化ナトリウム)0.1g、酵母エキス0.4g、マンニトール10.0g、蒸留水1リットル(pH6.8)からなる酵母エキス・マンニトール培地(YM培地)培地を具体的に例示することができ、これらの培地に、上記根粒菌を104〜106個細胞/Lの割合で接種後、30℃で1〜7日間、毎分150〜200回の振盪培養を行い、その後、遠心分離機で集菌し根粒菌体を得ることができる。
【0015】
担体に上記根粒菌を保持させるには、担体と根粒菌又はその懸濁液を混合すればよく、根粒菌懸濁液は、例えば、集菌した根粒菌を滅菌水に懸濁することにより調製することができる。根粒菌懸濁液を用いて土壌団粒等の担体に根粒菌を保持させる場合、滅菌した土壌団粒等の担体の最大容水量の40〜60重量%になるように、根粒菌懸濁液を接種・混合することが好ましい。土壌団粒の滅菌には、例えばオートクレーブ滅菌(121℃、1時間)や乾熱殺菌(200℃、3時間)を例示することができ、また、根粒菌懸濁液は根粒菌の培養液をそのまま使用してもよいが、上記のように、集菌した根粒菌を滅菌水に懸濁することにより調製してもよい。根粒菌は生育に酸素や水分を必要とすることから、土壌団粒にはある程度の空気や水分の存在が必要であり、上記のように、担体の最大容水量の40〜60重量%、より好ましくは50重量%前後になるように、根粒菌懸濁液を接種・混合することにより、適量の空気と適量の水分の両条件を満たすことができる。最大容水量40重量%未満の場合、通気は良好なものの水分不足となり、また最大容水量60重量%を超える場合、水分は良好なものの酸素不足となり、根粒菌の生育が低下するおそれがある。したがって、担体の最大容水量の40〜60重量%、特に50重量%前後になるように根粒菌懸濁液を接種・混合し、この水分・通気条件を保持して根粒菌を培養することにより、土壌団粒等の担体に高い菌数の根粒菌を保持させることができる。担体が保持する根粒菌数は多い程よいが、担体の最大容水量の40〜60重量%になるように根粒菌懸濁液を接種・混合するところから、通常、担体1g当たり根粒菌が104〜108個程度保持されることになる。
【0016】
上記担体に保持された根粒菌は飢餓生存期に達するまで培養することが好ましい。例えば、担体に保持された根粒菌を30℃の定温下で静置して根粒菌を増殖させると2週間程度で飢餓生残期にまで達せしめることができる。ここで飢餓生存期とは、増殖期にある細菌とは生理状態の異なる状態で、長期間生残できる飢餓生残(Starvation Survival)状態になる時期をいい、例えば、根粒菌等の細菌を飢餓(貧栄養)条件下で培養することにより、該細菌を飢餓生残状態にすることができる。そして、飢餓生存期に達した細菌は熱ストレス耐性、酸化ストレス耐性などの性質を備えるようになる。また、飢餓生存期に達した根粒菌は、土壌のような貧栄養な環境に導入されたときのショックや、土壌中のAl3+、Mn2+等の金属イオンの毒性による死滅を逃れ、その後良好な生残性を維持することができる。
【0017】
根粒菌、特に飢餓生存期に達した根粒菌を保持した接種材料をそのまま使用してもよいが、例えば飢餓生存期に達した根粒菌を保持した土壌団粒を乾燥してから使用すると、その後の使用・取扱いが簡便になり有利である。飢餓生存期に達した根粒菌を保持した土壌団粒等を乾燥させてから使用する場合における乾燥は、温和な条件で緩慢に乾燥することが好ましく、具体的な乾燥条件としては、例えば15〜25℃で5〜15日間の、好ましくは20℃で10日間の自然乾燥や通風乾燥を好適に例示することができる。かかる条件で乾燥させることにより、乾燥後の土壌団粒中での根粒菌の生存菌数を高く維持した、例えば水分含量3〜10重量%、好ましくは4〜6重量%の乾燥接種材料を作製することができる。また、かかる乾燥は、滅菌条件下で行うことが好ましいが、無菌環境を作り出す特別な機器・部屋を必要とすることなく、通常の開放作業スペースで行うこともできる。
【0018】
本発明はまた、担体に保持された根粒菌を飢餓生存期に達するまで培養することを特徴とする根粒菌接種資材の製造方法に関する。この根粒菌接種資材の製造方法における根粒菌の保持担体は特に制限されるものではなく、従来公知の根粒菌の保持担体を使用することができるが、前記の団粒形成率が60重量%以上の担体、特に火山灰に由来する土壌団粒が好ましい。また、この根粒菌接種資材の製造方法においても、前記の根粒菌接種資材の製造方法と同様に、滅菌した担体に根粒菌を接種・混合することや、滅菌した担体の最大容水量の40〜60重量%になるように、根粒菌懸濁液を接種・混合することや、飢餓生存期に達した根粒菌を保持した担体を温和な条件で緩慢に乾燥する、すなわち15〜25℃で5〜15日間で乾燥することが好ましい。また同様に、乾燥を非無菌条件下で行うこともできる。
【0019】
本発明の根粒菌接種資材は、上記根粒菌接種資材の製造方法により得られる根粒菌接種資材であれば特に制限されるものではないが、水分含量が3〜10重量%、特に4〜6重量%のものが好ましい。例えば、pH6.0程度の土壌団粒をオートクレーブ滅菌し、別に液体培地を用いて培養した根粒菌を滅菌水に懸濁し、前記滅菌済みの土壌団粒に混合し、30℃の定温下に2週間程度置いて、土壌団粒に保持された根粒菌を飢餓生残期にまで達せしめ、その後20℃の定温下で10日間かけて徐々に乾燥させることにより作製することができる。本発明の根粒菌接種資材(土壌団粒)のpH範囲は特に制限されないが、根粒菌の生育は一般的にpH6〜7が至適であること、インゲンマメ等のマメ科植物の栽培は一般的に弱酸性土壌(pH6〜6.5)が至適であることからして、pH5〜7、特にpH6付近が好ましい。
【0020】
また、本発明は根粒菌接種資材を用いるマメ科植物の栽培方法に関する。かかる栽培方法の対象となるマメ科植物としては、ダイズ、エンドウ、インゲン、ソラマメ、ラッカセイ、アズキ等マメ科の植物であればどのようなものでもよいが、これらの中ではダイズ、ラッカセイ、インゲンが好適である。なお、根粒菌は通常、宿主特異性を有しているので、マメ科植物の種類に応じて菌種を選択すればよい。例えば、ダイズにはダイズ根粒菌であるブラジリゾビウム ジャポニクムや、リゾビウム フレディが、インゲンにはインゲン根粒菌であるリゾビウム トロピシやリゾビウム ファゼオリイが、ラッカセイにはリゾビウム アラキスが、各々好適である。
【0021】
本発明の根粒菌接種資材を用いてマメ科植物を栽培する方法としては、培土への散布、播種部位への接種、種子にコーティングしての播種等が挙げられるが、種子の直下に施用することができるように接種することが好ましい。また、培土は、畑土、水田土壌、人工培土などいずれでもよく、適用する植物に応じて適宜設定すればよい。例えば、エダマメの様なダイズには砂や人工培土が好ましい。また、植物を栽培する際に、苗床から本圃に移植する場合には、苗床及び本圃のいずれかに本発明の根粒菌接種資材を使用してもよく、両方に使用してもよい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかかる実施例により何ら制限されるものではない。
実施例A[材料と方法]
A−1(供試菌と培地)
根粒菌としては、インゲン根粒菌であるリゾビウム トロピシCIAT899Rを使用した。このリゾビウム トロピシCIAT899Rは、リゾビウム トロピシCIAT899から選抜したストレプトマイシン及びスペクチノマイシンに耐性を有する菌株である。また、根粒菌の増殖用液体培地としては、K2HPO4(リン酸水素二カリウム)0.5g、MgSO4・7H2O(硫酸マグネシウム)0.2g、NaCl(塩化ナトリウム)0.1g、酵母エキス0.4g、マンニトール10.0g、蒸留水1リットル(pH6.8)からなる酵母エキス・マンニトール培地(YM培地)培地を用い、根粒菌の生菌数測定用培地としては、K2HPO40.5g、MgSO4・7H2O0.2g、NaCl0.1g、酵母エキス0.4g、マンニトール10.0g、寒天15g、ストレプトマイシン2g、スペクチノマイシン1g、シクロヘキシミド0.1g、蒸留水1リットル(pH6.8)からなる抗生物質添加酵母エキス・マンニトール・寒天培地(抗生物質添加YMA培地)を用いた。
【0023】
A−2(供試土壌団粒)
根粒菌保持担体用の火山灰土壌団粒としては、東京大学農学部構内の弥生圃場より採取した土壌を用いた。また、インゲン培土としては、日本の土壌の一例として一志土壌と、熱帯土壌を模した土壌の一例して三重大土壌をそれぞれ用いた。上記一志土壌は、日本に存在する各種の土壌の中で代表的な土壌の一つである灰色低地土(河川の流域に広がる、河川の運搬物に由来する土壌)であり、三重県一志郡一志町内の田畑輪換(水稲と畑作物を交互に栽培している)圃場から採取した。また、上記三重大土壌は、砂の含量がやや高く、土壌のpHが5.3と低く、我が国以外で本発明の根粒菌資材を用いることが想定される熱帯地域(タイやベトナム)の土壌の性質と類似している土壌であり、三重大学構内より採取した。
【0024】
A−3(土壌団粒中の生菌数測定)
土壌団粒に保持された根粒菌の生菌数は、土壌団粒0.5gを滅菌したガラス製試験管にとり、滅菌水道水4.5mlを加え、ボルテックスミキサー(井内盛栄堂社製「HM−10」)で1分間撹拌し、この土壌懸濁液1mlを別の滅菌試験管にとり、9mlの滅菌水道水を加え、ボルテックスミキサーで軽く撹拌する操作を順次繰り返し、10倍希釈液を109希釈段階程度まで作製し、次いで、各希釈段階の希釈液0.1mlを上記の抗生物質添加酵母エキス・マンニトール・寒天培地表面に滴下し、表面に均一に塗布した後、30℃で1週間培養し、生育した根粒菌のコロニー数を計測し、もとの土壌団粒中の根粒菌の生菌数として算出した。また、土壌に接種された根粒菌の生残菌数は、根粒菌を接種し、畑土壌の水分条件(最大容水量の60重量%)下、30℃で保温静置した培土0.5gを滅菌したガラス試験管にとり、滅菌水道水4.5mlを加え、ボルテックスミキサーで1分間撹拌し、以後、上記土壌団粒に保持された根粒菌の生菌数の測定と同様にして、算出した。
【0025】
A−4(土壌中の接種根粒菌の占有率)
根粒菌接種資材を用いてインゲンマメに根粒菌を接種して栽培したときに、インゲンの根に形成される多数の根粒は、接種した根粒菌によって形成された根粒と、土壌に元来存在する土着の根粒菌が形成した根粒とからなり、そのうち接種した根粒菌によって形成された根粒の割合を接種根粒菌の占有率といい、接種根粒菌の占有率は、インゲンの根から根粒を採取し、95%エタノールに1分間浸漬して表面を殺菌し、次いで、根粒1つ1つについて以下の操作を行うことにより算出した。根粒を滅菌ピンセットでつまみ、滅菌爪楊枝を突き刺して、根粒内部の根粒菌を爪楊枝の先端に付着させ、その爪楊枝を上記酵母エキス・マンニトール・寒天培地(抗生物質を含まない)に軽く突き刺し、根粒菌を寒天培地に植菌する。次に、同じ爪楊枝を上記の抗生物質を含む酵母エキス・マンニトール・寒天培地に軽く突き刺し、根粒菌を植菌する。これら抗生物質添加あるいは無添加の寒天培地を30℃で数日間培養する。その結果、抗生物質添加あるいは無添加の寒天培地の両方に根粒菌が生育した場合、抗生物質耐性の根粒菌が生育していたことになり、接種した根粒菌が形成した根粒であると判断することができ、他方、抗生物質無添加の寒天培地にのみ生育し、抗生物質を添加した寒天培地では生育していない場合、抗生物質耐性をもっていない根粒菌が生育していたことになり、土壌に元来生息していた根粒菌が形成した根粒であると判断することができる。
【0026】
A−5(地上部の窒素の測定)
生育したインゲンの地上部窒素の測定は、地上部を乾燥、粉砕し、有機物を燃焼させて窒素と炭素の含量を側定することができるN/Cアナライザー(ヤナコ分析工業社製「MT−700」)を用いて行った。
【0027】
A−6(ピート接種資材の調製)
市販の北米産ピートモスを粉砕し、ふるいを用いて、0.001〜0.004mmの画分を分取した。これを耐熱性のポリエチレンバッグに入れ、pHを7.0にするのに必要な量の炭酸カルシウムを加えて良く混合し、121℃で15分間オートクレーブした。根粒菌をYM培地で培養した後、培養液を遠心分離し、菌体を集菌し、滅菌水に懸濁した。この菌体懸濁液をピート50gに対して75mlの割合でオートクレーブしたピートに加え、よく混合し、混合直後の根粒菌数が1gピート当たり約108になるように調整した。このピート−菌体の混合物をポリエチレンバッグの口を閉じた状態で22℃で1カ月間静置培養し、その後は4℃で保存した。
【0028】
実施例B[結果]
B−1(耐水性団粒形成率の測定)
東京大学弥生圃場より採取した火山灰土壌団粒(2mmのふるいを通したもの)の耐水性団粒形成率を水中篩別法により測定した。結果を表1に示す。表1から、土壌粒子のサイズとして0.005mmよりも大きい画分がほぼすべて団粒構造を有しており、団粒形成率が約88重量%にも達し、団粒構造が良く発達していることがわかる。
【0029】
【表1】
【0030】
B−2(土壌団粒担持根粒菌の培養日数の検討)
東京大学弥生圃場より採取した火山灰土壌団粒(2mmのふるいを通したもの)を自然乾燥した。この乾燥土壌団粒をオートクレーブ滅菌(121℃、1時間)し、別に酵母エキス・マンニトール培地を用いて培養しておいたインゲン根粒菌を滅菌水に懸濁し、1.0×105/mlの根粒菌懸濁液を調製し、上記土壌団粒に0.52ml/gの割合で添加して、土壌団粒の水分が最大容水量の50重量%となるように混合した。その後、30℃の定温下で3日、6日、14日それぞれ静置し、土壌団粒に担持させた根粒菌を増殖させた。3日及び6日の静置培養後の根粒菌は対数増殖期にあり、14日の静置培養後の根粒菌は飢餓生残期にあった。静置培養後の土壌団粒の乾燥は20℃で3日間かけて行い、乾燥後の土壌団粒中の根粒菌の生残菌数をそれぞれ測定した。結果を表2に示す。表2より、根粒菌が団粒中で対数増殖期(3日、6日)にあるときに団粒を乾燥するよりも、14日間培養し、根粒菌が飢餓生残期に達した後に団粒を乾燥した場合の方が、乾燥後の団粒中での根粒菌の生残菌数が高いことがわかった。なお、表2中のcfu:colony forming unitは生菌数を意味する。
【0031】
【表2】
【0032】
B−3(根粒菌担持土壌団粒の乾燥温度の検討)
次に、上記飢餓生残期まで培養した土壌団粒を用いて、該土壌団粒の乾燥温度が乾燥後の生存根粒菌数に及ぼす影響について調べた。14日間培養して飢餓生残期まで達した根粒菌担持土壌団粒を、20℃で3日間、あるいは30℃で1日間かけて乾燥させた後、土壌団粒中の根粒菌の生残菌数をそれぞれ測定した。結果を表3に示す。表3より、飢餓生残期まで培養した土壌団粒を20℃の下で乾燥させた場合の方が、30℃の下で乾燥させた場合よりも、乾燥後の団粒中での根粒菌の生残菌数がはるかに高いことがわかった。
【0033】
【表3】
【0034】
B−4(根粒菌担持土壌団粒の乾燥時間の検討)
続いて、根粒菌担持土壌団粒の乾燥速度が乾燥後の生存根粒菌数に及ぼす影響について調べた。14日間培養して飢餓生残期まで達した根粒菌担持土壌団粒を、20℃で3日間、あるいは20℃で10日間かけて乾燥させた後、土壌団粒中の根粒菌の生残菌数をそれぞれ測定した。3日間かけて乾燥する場合は、土壌団粒をビーカーに入れ、口を開けて乾燥し、10日間かけて乾燥する場合は、土壌団流を三角フラスコに入れ、口を開けて乾燥した。乾燥後の水分含量はそれぞれ4.7重量%、5.2重量%であった。乾燥後の根粒菌の生残数の結果を表4に示す。表4より、培養後の土壌団流の乾燥を20℃で10日間かけて緩やかに行った場合の方が、3日間かけて乾燥させた場合よりも乾燥による菌数の減少がはるかに小さく、乾燥後の団粒での根粒菌の生残菌数を高く維持するために有効であることがわかった。
【0035】
【表4】
【0036】
B−5(火山灰土壌団粒を用いて作製した資材中での根粒菌生残数の経時変化)火山灰土壌団粒を担体として作製した根粒菌接種資材を乾燥し、室温条件で長期間保存した際の根粒菌の生残菌数を経時的に測定し、接種資材としての第一条件を満たしているかを調べた。前記のように、火山灰土壌団粒を乾燥させ、オートクレーブ滅菌した後、最大容水量の50%になるように、滅菌蒸留水に懸濁した根粒菌を保持させ、飢餓生残期まで30℃で培養した後、20℃で10間かけてゆっくりと乾燥させ、非滅菌雰囲気下、それぞれ20℃、30℃、37℃で所定日数保存した。また、乾燥後に破壊した団粒については20℃で保存した。経時的に、抗生物質添加酵母エキス・マンニトール・寒天培地を用いて生残根粒菌数を測定した。結果を図5に示す。
【0037】
図5に示されるように、培養後土壌団粒を乾燥させても団粒中の菌数はあまり低下せず、さらに、長期間の保存の後にも高い菌数を保っていた。37℃下保存では、生残率が少し低下した。また、団粒をホモジナイザーにより粉砕して団粒中の毛管孔隙を減少させると生残率が103オーダー程度減少した。これらの結果から、根粒菌の長期間の良好な生残結果は、団粒の乾燥前に菌を飢餓培養したことにより、根粒菌が保存期間中飢餓生残状態にあったこと、及び、乾燥条件下の保存期間中でも団粒の毛管孔隙が根粒菌生残領域として機能していることに起因していると考えられる。この実験により、乾燥・室温条件で接種資材を保存した際の根粒菌の良好な生残性が確認され、接種資材としての上記の第一条件を満たしていることがわかった。
【0038】
B−6(接種資材を土壌に混合したときの根粒菌の生残試験)
火山灰土壌団粒を担体として作製した根粒菌接種資材を土壌に混合したときの土壌中での根粒菌の生残性を、根粒菌体のみを土壌に接種した場合と比較し、根粒菌接種資材を用いることが土壌中での根粒菌の生残性に有利に作用するかどうかについて調べた。培土としては、いずれも2mmのふるいを通した一志土壌(灰色低地土、pH7.4)と三重大土壌(砂丘未熟土、pH5.3)を用い、飢餓培養した根粒菌体のみを土壌に混合した比較区と、団粒を担体とした根粒菌資材を土壌に混合した試験区について、畑状態水分(最大容水量の60%)下、30℃でインキュベートし、それぞれ0日目、3日目、7日目、14日目、35日目における土壌中の根粒菌の生残数を測定した。結果を図6に示す。
【0039】
一志土壌と三重大土壌のいずれの土壌においても、根粒菌の生残性は、火山灰土壌団粒を担体とすることによって著しく高まった。このことは、団粒が根粒菌体を原生動物による捕食や接種時のショックから守る効果が高いことを示している。また団粒では、0日から3日目にかけて、菌数の増加(三重大土壌)又はほぼ横這い(一志土壌)現象が観察され、これは、乾燥団粒が土壌に添加されて湿潤した際に、団粒中で根粒菌が増殖したためと考えられ、団粒を用いることのもう一つの有利な点といえる。
【0040】
B−7(室内ポット栽培試験)
本発明の火山灰土壌団粒を担体として作製した根粒菌接種資材と、ピートモスを使用したピート接種資材とを用い、人工気象器内でインゲンを栽培し、根粒形成数、形成部位、接種菌の占有率、地上部の生育、地上部の窒素含量を測定した。また、培土としては、5mmのふるいを通した、土着インゲン根粒菌が生息している三重大学構内から採取した三重大土壌(砂丘未熟土、全炭素1.5%、全窒素0.14%)を用い、インゲンマメ(Red Kidney Bean)(Phaseolus vulgaris cv. Mokcham)の栽培には、直径12.5cm、深さ10cmの小ポットを用いた。25℃、16時間明−8時間暗条件で開花・結実期まで1ヶ月栽培した。根粒菌無接種の場合を「対照区」とし、火山灰土壌団粒資材5mlを播種の際に種子の直下に置いた場合を「直下試験区」とし、根粒菌を含まない火山灰土壌団粒5mlを播種の際に種子の直下に置いた場合を「直下比較区」とし、火山灰土壌団粒資材を表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「まぶし試験区」とし、根粒菌を含まない団粒を表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「まぶし比較区」とし、ピート接種資材を表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「ピート試験区」とし、根粒菌を含まないピートを表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「ピート比較区」とし、それぞれの設定区について、栽培後の地上部重量(g)、根粒数、根粒における接種根粒菌の占有率(%)、地上部の窒素含有率(%)を測定した。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
火山灰土壌団粒を担体として用いた資材を種子の直下に施用してインゲンを栽培した「直下試験区」において、地上部の生育が著しく高まった。種子にまぶして用いた「まぶし試験区」も「ピート試験区」と同程度の地上部重量及び窒素含量の増加が見られた。また、表4から、火山灰土壌団粒を担体とした根粒菌接種資材を用いると、ピートを担体とした資材を用いる場合よりも、良好な作物生育促進効果が得られることがわかった。
【0043】
B−8(野外ポット試験)
室内ポット試験で有用性が示された火山灰土壌団粒資材を用いてインゲンを野外でポット栽培し、気温・地温・土壌水分などが大きく変動する野外条件における、火山灰土壌団粒資材の有効性について調べた。培土としては、一志土壌(灰色低地土、全炭素2.2%、全窒素0.21%)と三重大土壌(砂丘未熟土、全炭素1.5%、全窒素0.14%)を用い、1999年8月26日から10月1日にかけて、野外条件(気温20〜36℃)下で、インゲンマメ(Red Kidney Bean)(Phaseolus vulgaris cv. Mokcham)を栽培した。根粒菌無接種を「対照区」とし、団粒資材10mlを播種の際に種子の直下に置いた場合を「直下区」とし、火山灰土壌団粒資材をポット内の土壌の表層5cmの範囲に10ml/100ml土壌の割合で混合した場合を「10%区」とし、火山灰土壌団粒資材をポット内の土壌の表層5cmの範囲に1ml/100ml土壌の割合で混合した場合を「1%区」とし、火山灰土壌団粒資材を表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「まぶし区」とし、前記ピート接種資材を表面を湿らせた種子にまぶしてから播種した場合を「ピート区」とし、各試験区とも3連で栽培し、栽培後、それぞれの設定区について、地上部の新鮮重と根の新鮮重を測定した。結果を表6に示す。また、サンプリング前のインゲンの生育状況を図7及び図8に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
野外ポット試験は、本発明の接種資材のタイやベトナムでの利用を想定して、気温の高い時期に行った。一志土壌を培土とした場合、火山灰土壌団粒資材は、野外の条件下において、「直下区」、「まぶし区」、「10%区」のいずれの設定区においても「ピート区」と同等以上の効果を示すこと、さらに、「直下区」の場合、「ピート区」をはるかにしのぐ生育促進効果が得られることがわかった。また、三重大土壌を培土とした場合、火山灰土壌団粒資材は、野外の条件下において、「直下区」、及び「10%区」の設定区において「ピート区」と同等以上の効果を示すことがわかった。
【0046】
【発明の効果】
本発明の根粒菌接種資材は、乾燥させた状態で、特別な施設を用いることなく室温下での長期保存が可能であり、滅菌状態で低温下での保存が必要なピート接種資材と比べて、その取り扱いが極めて簡便である。また、本発明の根粒菌接種資材は施用した際の生残性、競争的根粒形成能力等に優れ、室内あるいは野外でのインゲン等のマメ科植物栽培において、ピート資材と比べて少なくとも同等の効果を示し、特に、播種した種子の直下で施用した際には、ピート資材よりもはるかに良好な生育促進効果を有する。かかる直下での施用は、現場では、団粒資材を筋状に施用し、その上に種子を置いて土をかぶせることにより、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】根粒菌がマメ科植物の根と共生して形成した根粒を示す図である。
【図2】ダイズの根粒における物質代謝の概略を示す図である。
【図3】団粒構造と微生物分布を説明する図である。
【図4】団粒構造と内部の細菌の分布を説明する図である。
【図5】根粒菌を保持した火山灰土壌団粒を長期間保存したときのインゲン根粒菌の生残菌数の経時変化を示す図である。
【図6】本発明の火山灰土壌団粒を担体とした根粒菌接種資材を土壌に混合したときの根粒菌の生残数の経時変化を示す図である。
【図7】本発明の火山灰土壌団粒を担体とした根粒菌接種資材を用いたインゲン野外ポット栽培の結果を示す図である。
【図8】図7と同様に、本発明の火山灰土壌団粒を担体とした根粒菌接種資材を用いたインゲン野外ポット栽培の結果を示す図である。
Claims (6)
- 火山灰に由来する土壌団粒からなる団粒形成率が60重量%以上の担体に、土壌団粒の最大容水量の40〜60%になるように、根粒菌懸濁液を接種・混合して根粒菌を保持させ、土壌団粒に保持された根粒菌を飢餓生存期に達するまで培養した後、根粒菌を保持した土壌団粒を15〜25℃で水分含量を3〜10%まで乾燥することを特徴とする根粒菌接種資材の製造方法。
- 乾燥を、非無菌条件下で行うことを特徴とする請求項1記載の根粒菌接種資材の製造方法。
- 根粒菌が、インゲン根粒菌、ダイズ根粒菌、又はラッカセイ根粒菌であることを特徴とする請求項1又は2記載の根粒菌接種資材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか記載のマメ科植物用の根粒菌接種資材の製造方法により得られる根粒菌接種資材。
- 請求項4記載の根粒菌接種資材を用いることを特徴とするマメ科植物の栽培方法。
- 根粒菌接種資材をマメ科種子の直下に施用することを特徴とする請求項5記載のマメ科植物の栽培方法。
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