JP3907821B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像画像記録材料に関するものであり、特に写真製版用に適した熱現像感光材料に関し、さらに詳しくはスキャナー、イメージセッター用感光材料に関し、さらに詳しくは、高感度、硬調でかつ自然保存による感度変動が改善された熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
写真感光材料の露光方法の一つに、原図を走査し、その画像信号に基づいてハロゲン化銀写真感光材料上に露光を行い、原図の画像に対応するネガ画像もしくはポジ画像を形成するいわゆるスキャナー方式による画像形成方法が知られている。
【0003】
さらにスキャナーからフィルムに出力した後、返し工程に経ずに直接刷版に焼き付けるケースやソフトなビームプロファイルを有するスキャナー光源に対しては超硬調な特性を有するスキャナー感材が求められている。
【0004】
支持体上に感光層を有し、画像露光することで画像形成を行う感光材料は、数多く知られている。それらの中でも、環境保全や画像形成手段が簡易にできるシステムとして、熱現像により画像を形成する技術が挙げられる。
【0005】
近年写真製版分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮明さを有する黒色画像を形成することができる写真製版用途の感光性熱現像材料に関する技術が必要とされている。これら感光性熱現像材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0006】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号、同3,457,075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials) Neblette 第8版、スタージ(Sturge) 、V.ウォールワース(Walworth) 、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に記載されている。このような感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
【0007】
従来からこのタイプの熱現像感材は知られているが、これらの感材の多くはトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メタノールなどの有機溶剤を溶媒とする塗布液を塗布することにより感光層を形成している。有機溶媒を溶媒として用いることは、製造工程での人体への悪影響だけでなく溶剤の回収その他のためコスト上も不利である。
【0008】
そこで、このような心配のない水溶媒の塗布液を用いて感光層(以降「水系感光層」ともいう。)を形成する方法が考えられている。例えば特開昭49−52626号、特開昭53−116144号などにはゼラチンをバインダーとする例が記載されている。また特開昭50−151138号にはポリビニルアルコールをバインダーとする例が記載されている。
【0009】
さらに特開昭60−61747号にはゼラチンとポリビニルアルコールを併用した例が記載されている。これ以外の例として特開昭58−28737号には水溶性ポリビニルアセタールをバインダーとする感光層の例が記載されている。
【0010】
確かにこのようなバインダーを用いると水溶媒の塗布液を用いて感光層を形成することができて環境面、コスト面のメリットは大きい。
【0011】
しかしながら、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水溶性ポリアセタールなどのポリマーをバインダーとして用いると、有機銀塩との相溶性が悪く、塗布面質上実用に耐える塗布物が得られないばかりでなく、現像部の銀色調が本来好ましいとされる黒色からかけ離れた茶色や黄色になったり、露光部の黒化濃度が低く未露光部の濃度が高い等商品価値の著しく損なわれたものしか得られなかった。
【0012】
そこで、環境面、コスト面で優れた水系感光材料で、塗布面質がよく、現像時に良好な銀色調であり、かつ充分な写真性能を有する熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0013】
さらに、上記水系感光層を用いることで、従来より広く知られているハロゲン化銀写真感光材料に用いられる技術の応用が可能になった。すなわち、あらかじめ、所望の性能を持たせた感光性ハロゲン化銀乳剤を調製し、有機銀塩と混合調製することが可能となり、有機溶剤系での感光性ハロゲン化銀調製法に対して、設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0014】
一方、近年急激に進歩している半導体レーザーの技術は医療用画像出力装置の小型化を可能としてきた。当然、半導体レーザーを光源として利用できる感赤外線性光熱ハロゲン化銀写真材料の技術も開発され、分光増感技術については特公平3−10391号、特公平6−52387号、特願平5−341432号、特開平6−194781号、特開平6−301141号等に開示されており、さらにハレーション防止技術については特開平7−13295号、米国特許第5,380,635号に開示されている。赤外線露光を前提とした感光材料では増感色素、ハレーション防止染料の可視吸収を大幅に少なくすることができ、実質的に色のない感光材料を容易に作ることができる。
【0015】
しかし、赤外線を吸収し分光増感する色素は一般的にHOMOが高いため強い還元能を有し、感光材料中の銀イオンを還元し、感光材料のカブリを悪化させる傾向にある。特に、高温、高湿といった条件での保存や、長期の保存では著しい性能変化が伴う場合がある。また保存性の劣化を防ぐためにHOMOの低い色素を用いると、相対的にLUMOも低くなり分光増感効率が低下し、感度が低くなる。このような感度、保存性、性能変動に対する問題は、湿式写真感光材料だけでなく、熱現像感光材料においてはさらに顕著となる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の解決しようとする課題は、写真製版用、特に赤外光を光源とするスキャナー、イメージセッター用として、高感度、硬調かつ自然保存による感度変動が改善された写真特性の得られる熱現像感光材料を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この課題は下記手段によって達成された。
(1)支持体上に、非感光性有機銀塩、非感光性有機銀塩の還元剤、非感光性有機銀塩とは独立に形成された感光性ハロゲン化銀およびバインダーを有する熱現像感光材料において、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のバインダーの50重量%以上でガラス転移温度−30℃以上40℃以下のポリマーラテックスが用いられ、下記一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を少なくとも一種および下記一般式(S)で表わされる増感色素を少なくとも一種、画像形成層を有する側に含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【化4】
【化5】
〔一般式( IIa) 中、Rは水素原子、ヒドロキシ基、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロ環基を表す。 k 1 は0〜3の整数である。一般式( IIa) および( IIb) 中、R 1 およびR 2 はそれぞれ一価の置換基を表す。Yはハロゲン化銀への吸着促進基を表す。Lは二価の連結基を表す。 k 2 は0〜4の整数である。nは0または1である。一般式( IIb) 中、 k 3 は0〜4の整数である。〕
一般式(S)
【化6】
〔一般式(S)中、Z 1 とZ 2 は各々S、OあるいはSeを表わし、R 1 とR 17 は各々アルキルあるいはスルホアルキル基であり、少なくとも1つはF、Cl、Br、Iあるいはアルコキシ、アリールオキシあるいはエステル基で置換されてもよい。R 2 〜R 5 、R 13 〜R 16 は各々H、Cl、Br、F、ニトロ基、シアノ基あるいはケト、スルホ、カルボキシ、エステル、スルフォンアミド、アミド、ジアルキルアミノ、アルキル、アルケニル、複素環、アリール、アルコキシ、あるいはアリールオキシ基であり置換されていてもよい。あるいはR 2 はR 3 と一緒に、R 3 はR 4 と一緒に、R 4 はR 5 と一緒に、R 13 はR 14 と一緒に、R 14 はR 15 と一緒に、R 15 はR 16 と一緒にベンゼン環(置換されていてもよい)を形成してもよい。R 6 〜R 12 はH、アルキル基、置換されたアルキル基、Cl、F、Br、I、置換されていないアミノ基、置換基は5員環あるいは6員環の複素環を形成してもよい。あるいはR 6 はR 8 と一緒に、R 8 はR 10 と一緒に、R 10 はR 12 と一緒に、R 9 はR 11 と一緒に5員環あるいは6員環の炭素環あるいは複素環(置換されていてもよい)を形成してもよい、R 7 はR 9 と一緒に5員環の複素環、6員環の複素環あるいは5員環の炭素環(置換されていてもよい)を形成してもよい。R 1 はR 6 と一緒に、R 12 はR 17 と一緒に5員環あるいは6員環の複素環(置換されていてもよい)を形成してもよい。Xは色素のイオン電荷を中性にするイオンを表わす。〕
(2)画像形成層および/またはその隣接層に少なくとも一種の超硬調化剤を含有する(1)の熱現像感光材料。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱現像感光材料は、非感光性有機銀塩と該非感光性有機銀塩の還元剤、これとは別個に調製された感光性ハロゲン化銀とを含有し、画像形成層の主バインダーにガラス転移温度Tg40℃以下のポリマーのラテックスが用いられており、かつ感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層は溶媒(分散媒)の60重量%以上が水である塗布液を用いて塗布形成されたものであり、一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を含有する。画像形成層にポリマーラテックスを用いることによって、上述のように、水を主成分とする溶媒(分散媒)を用いた水系塗布が可能になり、環境面、コスト面で有利になる。また、ポリマーラテックス中のポリマーのTgは40℃以下であるので、熱現像時に写真有用素材の拡散が促進され、良好な写真性が得られる。また一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を含有させることによって、赤色〜赤外域、とりわけ実用的に好ましい赤外域での強色増感効果が十分に得られ、かつ保存による感度の変化が抑制される。また超硬調化剤を含有させた感光材料で、一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を含有させると、より硬調な感光材料が得られる。
【0026】
まず、本発明で用いる一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物の上位概念にあたる、一般式(I)で表される化合物について詳細に説明する。Zは、後に詳述するXとともに5ないし7員環を形成するに必要な単なる結合または非金属原子群を表す。Zが単なる結合であるときZで形成される環は5員環である。また6または7員環を形成する際のZで表される非金属原子群は、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子のうちの少なくとも一種を含む非金属原子群であり、例えば以下に示される基が挙げられる。
【0027】
【化9】
【0028】
Zとして好ましくは、単なる結合、−CH=、−N=、−O−、−S−であり、より好ましくは単なる結合、−O−、−S−であり、更に好ましくは単なる結合、−S−であり、特に好ましくは単なる結合である。
Zで形成される環として好ましくは5または6員環であり、より好ましくは5員環である。Zで形成される環の好ましい具体例としてはピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピラジン、オキサジン、チアジン、アゼピン等が挙げられ、好ましくはピロール、チアジンであり、より好ましくはピロールである。
【0029】
Zで形成される環は、Q1 、Q2 で形成される縮合芳香族炭化水素環または縮合芳香族ヘテロ環のほかに置換基を有してもよく、置換基としては、Zで表される非金属原子群のところで例示した基中に示されるアルキル基等の置換基、あるいはXのところで述べるRと重複するものもあるが、例えばアルキル基(シクロアルキル基、アラルキル基を含む。好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(チオキソタイプのものも含む。好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、チオベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンセンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えばイミダゾリル、ピリジル、フリル、ピペリジル、モルホリノなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。
【0030】
置換基として好ましくは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボニルアミノ基(アシルアミノ基、アルコキシないしアリールオキシカルボニルアミノ基、ウレイド基をまとめていう。)、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基である。
【0031】
Q1 およびQ2 はそれぞれZで完成される環に縮合する芳香族炭化水素環(アレーン)または芳香族ヘテロ環を形成するに必要な非金属原子群を表す。
Q1 、Q2 で形成されるアレーンまたは芳香族ヘテロ環は単環であっても、縮環した多環であってもよい。
【0032】
Q1 、Q2 で形成されるアレーンとして好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアレーン(例えばベンゼン、ナフタレン等)であり、より好ましくは炭素数6〜20のベンゼン、更に好ましくは6〜15のベンゼンである。Q1 、Q2 で形成されるアレーンは、Zで完成される環との縮合位置以外の位置にさらにアレーン以外の縮合環を有していてもよく、このような縮合環の具体例としては例えばチオフェン、フラン、ピラン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンなどが挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0033】
Q1 、Q2 で形成される芳香族ヘテロ環は、N、OおよびSのうちの少なくとも一つの原子を含む芳香族ヘテロ環であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子を含む5または6員の芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくは窒素原子を1ないし2原子含む5または6員の芳香族ヘテロ環である。
芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えばチオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンなどが挙げられ、好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンであり、より好ましくはピリジンである。
【0034】
Q1 、Q2 で形成される芳香族ヘテロ環が、Zで完成される環以外に縮合環を有する場合の縮合環の具体例としては、例えばベンゼン、チオフェン、フラン、ピラン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンなどが挙げられ、好ましくはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンであり、より好ましくはベンゼンである。
【0035】
Q1 、Q2 で形成されるアレーンまたは芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンであり、より好ましくはベンゼン、ピリジンであり、特に好ましくはベンゼンである。
【0036】
Q1 、Q2 で形成されるアレーンまたは芳香族ヘテロ環は置換基を有してもよく、置換基としては、例えばZで形成される環の置換基と同様のものを挙げることができる。Q1 、Q2 で形成されるアレーンまたは芳香族ヘテロ環の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基や、アルコキシないしアリールオキシカルボニル基、更にはウレイド基のようなカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、ヒドラジノ基、イミノ基(イミノ基の炭素原子が環を形成するものであってもよい)、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホルニアミノ基、ヒドラジノ基、イミノ基である。
【0037】
Xは−N=、−N(R)−(Rは水素原子、ヒドロキシ基、脂肪族炭化水素基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)、−O−または−S−を表し、好ましくは−N(R)−、−S−であり、より好ましくは−N(R)−である。
【0038】
Rで表される脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜12)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜12)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜12)であり、好ましくはアルキル基である。
【0039】
Rで表されるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等)であり、より好ましくは炭素数6〜20のフェニル基、更に好ましくは6〜12のフェニル基である。
【0040】
Rで表されるヘテロ環基は、N、OおよびSのうちの少なくとも一つの原子を含む3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらのヘテロ環は単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0041】
ヘテロ環基として好ましくは、5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくは窒素原子を含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくは窒素原子を1ないし2原子含む5ないし6員の芳香族ヘテロ環基である。
【0042】
ヘテロ環基の具体例としては、例えばピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルフォリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどから誘導される一価の基が挙げられる。ヘテロ環基として好ましくは、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンから誘導される一価の基であり、より好ましくは、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、インドール、インダゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンから誘導される一価の基であり、更に好ましくは、イミダゾール、ピリジン、キノリン、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールから誘導される一価の基である。
【0043】
Rで表される脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基は置換基を有してもよく、置換基としては例えばZで形成される環の置換基と同様のものを挙げることができる。Rで表される脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基である。
【0044】
Rとして好ましくは、水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基である。
【0046】
また、一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物で表される化合物は、分子内に耐拡散性基またはハロゲン化銀への吸着促進基を有してもよく、好ましくはハロゲン化銀への吸着促進基を有するものである。
【0047】
耐拡散性基とは、写真用のカプラー等における耐拡散性基、いわゆるバラスト基と呼ばれるものである。バラスト基とは、本発明の一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物が特定の層に添加される際、このものが容易に他の層へ拡散するのを防止しうる基であり、総炭素数8以上、好ましくは8〜100、より好ましくは8〜60、更に好ましくは10〜40の基のことである。バラスト基として好ましくは、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル、アルケニル、アラルキルなど)、アリール基、ヘテロ環基およびこれらの基とエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、アミノ基、スルホニル基、ホスホニル基などの基との組み合わせからなる基である。また、バラスト基はポリマーであってもよい。バラスト基の具体例としては、例えばResearch Disclosure 1995/2,37938、82〜89頁、特開平1−280747号、同1−283548号等に記載のものが挙げられる。
【0048】
ハロゲン化銀への吸着促進基としては具体的には4−チアゾリン−2−チオン、4−イミダゾリン−2−チオン、2−チオヒダントイン、ローダニン、チオバルビツール酸、1,2,4−トリアゾリン−3−チオン、1,3,4−オキサゾリン−2−チオン、ベンズイミダゾリン−2−チオン、ベンズオキサゾリン−2−チオン、ベンズチアゾリジン−2−チオン、チオトリアジン、1,3−イミダゾリン−2−チオンのような環状チオアミド基、脂肪族メルカプト基、芳香族メルカプト基、ヘテロ環メルカプト基(−SH基が結合した炭素原子の隣が窒素原子の場合はこれと互変異性体の関係にある環状チオアミド基と同義であり、この基の具体例は上に列挙したものと同じである。)、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、チアゾリン、ベンズオキサゾール、オキサゾール、オキサゾリン、チアジアゾール、オキサチアゾール、トリアジン、アザインデンのような窒素、酸素、硫黄および炭素の組み合わせからなる5員ないし6員の含窒素ヘテロ環が挙げられる。
【0049】
これらは更に適当な置換基で置換されていてもよい。置換基としては例えばZで形成される環の置換基として挙げたものが適用できる。
【0050】
本発明では、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を採用する。
【0054】
本発明で採用する化合物は、一般式(IIa)または(IIb) で表される化合物である。一般式(IIa)、(IIb)については以下に再掲する。
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
一般式(IIa)、(IIb) 中、Rは一般式(I)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。Yはハロゲン化銀への吸着促進基を表す(Yで表されるハロゲン化銀への吸着促進基としては前述の基が挙げられる)。Lは二価の連結基を表す。nは0または1を表す。R1 、R2 はそれぞれ一価の置換基を表し、一般式(I)中のQ1 、Q2 のところの置換基と同様のものを挙げることができる。k1 は0〜3の整数であり、k2 およびk3 はそれぞれ0〜4の整数である。
【0058】
Lで表される二価の連結基としてはC、N、S、Oのうち少なくとも一種を含む原子または原子団である。具体的には、例えばアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−N(RO ) −(R0 は水素原子、ヒドロキシ基、脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基を表す。)、−N=、−CO−、−SO2 −などの単独またはこれらの組み合わせから成るものである。これらは可能な場合には置換基で置換されていてもよい。置換基としては例えばZで形成される環の置換基と同様のものが挙げられる。
【0059】
一般式(IIa) で表される化合物のうち、更に好ましくは一般式(IIa-1)で表される化合物である。
【0060】
【化14】
【0061】
一般式(IIa−1)中、Rは一般式(I)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。R1 、R2 、k1 、k2 、Lは一般式(IIa)、(IIb)におけるそれと同義である。L′はアルキレン基を表す。L′で表されるアルキレン基は、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは炭素数2〜4、特に好ましくは2または3のアルキレン基である。L′で表されるアルキレン基は置換基を有してもよく、置換基としては例えばZで形成される環の置換基と同様のものが挙げられる。好ましいアルキレン基の具体例としてはエチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレンが挙げられ、より好ましくはエチレン、トリメチレン、プロピレンであり、更に好ましくはエチレン、プロピレンであり、特に好ましくはエチレンである。
【0062】
一般式(IIa−1)で表される化合物のうち、特に好ましくは一般式(IIa−2)で表される化合物である。
【0063】
【化15】
【0064】
一般式(IIa−2)中、Rは一般式(I)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。R1 、R2 、k1 、k2 、L′は一般式(IIa−1)におけるそれと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0065】
以下に一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化7】
【0067】
【化8】
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化9】
【0072】
【化10】
【0073】
【化23】
【0074】
以下に本発明の一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物の合成について具体例を示す。合成例1.例示化合物21の合成3−ホルミル−9−メチルカルバゾール2.23g(0.01モル)、3−エチルロダニン1.85g(0.015モル)および酢酸ナトリウム2.21g(0.027モル)を酢酸20mlに溶解し、80℃で6時間加熱攪拌した。室温まで冷却した後、析出した結晶を濾取し、メタノールで再結晶することにより、目的化合物21を2.58g(7.33ミリモル)得た。収率;73% 融点;190〜192℃
【0075】
合成例2.例示化合物22の合成
3−アミノ−9−エチルカルバゾール63.1g(0.30モル)をアセトニトリル400mlに溶解し、5℃以下に氷冷した。窒素雰囲気下、トリエチルアミン41.9ml(0.30モル)を加えた後、クロロギ酸フェニル47.0g(0.30モル)を反応液が10℃をこえないようにゆっくり滴下した。滴下終了後5℃以下で30分攪拌した後、室温に上げ3時間攪拌した。不溶物を濾別した後、溶液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)にて精製した後、塩化メチレン/n−ヘキサンで再結晶することにより、目的化合物22を49.6g(0.150モル)得た。
収率;50% 融点;142〜143℃
【0076】
合成例3.例示化合物23の合成
化合物22、6.61g(0.02モル)をジメチルアセトアミド20mlに溶解し、攪拌下エチレンジアミン0.60g(0.01モル)を加えた。50〜60℃にて4時間攪拌した後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した後、メタノールで再結晶することにより、目的化合物23を5.10g(9.58ミリモル)得た。
収率;96% 融点;>250℃
【0077】
合成例4.例示化合物24の合成
3−アミノ−9−エチルカルバゾール10.5g(0.05モル)および無水フタル酸7.4g(0.05モル)をアセトニトリル50mlに溶解し、室温で4時間攪拌した。析出した結晶を濾取した後、メタノールで再結晶することにより、目的化合物24を12.0g(0.033モル)得た。
収率;66% 融点;210〜212℃
【0078】
合成例5.例示化合物25の合成
3−アミノ−9−エチルカルバゾール10.5g(0.05モル)および無水o−スルホ安息香酸9.2g(0.05モル)をアセトニトリル50mlに溶解し、室温で4時間攪拌した。析出したペースト結晶を濾取した後、メタノールで再結晶することにより、目的化合物25を9.0g(0.023モル)得た。
収率;46% 融点;204〜206℃(分解)
【0079】
合成例6.例示化合物26の合成
化合物22、3.30g(0.01モル)をアセトニトリル10mlに溶解し、攪拌下ヒドラジン−水和物0.55g(0.011モル)を加えた。1時間還流した後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾取した後、メタノールで再結晶することにより、目的化合物26を1.82g(6.79×10-3モル)得た。
収率;68% 融点;>250℃
【0080】
合成例7.例示化合物27の合成
3−アミノ−9−エチルカルバゾール10.5g(0.05モル)をアセトニトリル50mlに溶解し、5℃以下に氷冷した。イソシアン酸1−ナフチル8.50g(0.05モル)を反応液が10℃をこえないようにゆっくり滴下した。滴下終了後5℃以下で30分間攪拌した後、室温に上げ一夜放置した。析出した固体を濾取した後、ジメチルホルムアミド/メタノールで再結晶することにより、目的化合物27を12.2g(0.032モル)得た。
収率;64% 融点;>250℃(分解)
【0081】
合成例8.例示化合物28の合成
化合物22、3.30g(10.0ミリモル)および2−アミノアントラセン2.0g(10.3ミリモル)をアセトニトリル10ml/ジメチルアセトアミド2mlに溶解した後、イミダゾール(10.3ミリモル)を加えた。50℃にて6時間攪拌した後、室温まで冷却し、析出した固体を濾取した後、ジメチルホルムアミド/メタノールで再結晶することにより、目的化合物28を2.10g(4.89ミリモル)得た。
収率;49% 融点;>250℃(分解)
【0082】
合成例9.例示化合物29の合成
化合物22、3.30g(10.0ミリモル)およびN,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン1.30g(10.0ミリモル)をジメチルアセトアミド10mlに溶解した後、トリエチルアミン1.0g(10.0ミリモル)を加えた。50℃にて6時間攪拌後、室温まで冷却し、水を約100ml加えた。析出した固体を濾取した後、メタノールで再結晶することにより、目的化合物29を2.88g(7.85ミリモル)得た。
収率;79% 融点;143〜144℃
【0083】
合成例10.例示化合物31の合成
3−アミノ−9−エチルカルバゾール6.31g(0.03モル)、2,3−ジヒドロチアゾール〔2,3−b〕ベンゾチアゾリウム ブロミド8.22g(0.03モル)をジメチルホルムアミド100mlに溶解した後、トリエチルアミン4.19ml(0.03モル)を加えた。50℃にて3時間攪拌後、室温まで冷却し、メタノール/水(200ml/50ml)を加えた。析出した固体を濾取した後、ジメチルホルムアミドで再結晶することにより、目的化合物31を7.50g(19.6ミリモル)得た。
収率;65% 融点;208〜210℃
【0084】
本発明の一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物は、画像形成層である感光性層でも、その他の非感光性層でも添加することができる。添加層として好ましくは画像形成層である感光性層である。
【0085】
本発明の一般式( IIa) または (IIb)で表される化合物は所望の目的により異なるが、Ag1モル当たりの添加量で示して10-4〜1モル/Ag、好ましくは10-3〜0.3モル/Ag、更に好ましくは10-3〜0.1モル/Ag添加することが好ましい。また一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物は一種のみを用いても二種以上を併用してもよい。
【0086】
次に、本発明の一般式(S)で表される増感色素について説明する。
【0087】
【化11】
【0088】
〔一般式(S)中、Z1 とZ2 は各々S、OあるいはSeを表わし、R1 とR17は各々アルキルあるいはスルホアルキル基であり、少なくとも1つはF、Cl、Br、Iあるいはアルコキシ、アリールオキシあるいはエステル基で置換されてもよい。R2 〜R5 、R13〜R16は各々H、Cl、Br、F、ニトロ基、シアノ基あるいはケト、スルホ、カルボキシ、エステル、スルフォンアミド、アミド、ジアルキルアミノ、アルキル、アルケニル、複素環、アリール、アルコキシ、あるいはアリールオキシ基であり置換されていてもよい。あるいはR2 はR3 と一緒に、R3 はR4 と一緒に、R4 はR5 と一緒に、R13はR14と一緒に、R14はR15と一緒に、R15はR16と一緒にベンゼン環(置換されていてもよい)を形成してもよい。R6 〜R12はH、アルキル基、置換されたアルキル基、Cl、F、Br、I、置換されていないアミノ基、置換基は5員環あるいは6員環の複素環を形成してもよい。あるいはR6 はR8 と一緒に、R8 はR10と一緒に、R10はR12と一緒に、R9 はR11と一緒に5員環あるいは6員環の炭素環あるいは複素環(置換されていてもよい)を形成してもよい、R7 はR9 と一緒に5員環の複素環、6員環の複素環あるいは5員環の炭素環(置換されていてもよい)を形成してもよい。R1 はR6 と一緒に、R12はR17と一緒に5員環あるいは6員環の複素環(置換されていてもよい)を形成してもよい。Xは色素のイオン電荷を中性にするイオンを表わす。
【0089】
以下に一般式(S)で表される増感色素の典型的な例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0090】
【化25】
【0091】
【化26】
【0092】
【化27】
【0093】
【化28】
【0094】
【化29】
【0095】
【化30】
【0096】
【化31】
【0097】
本発明に用いられる一般式(S)で表される増感色素は以下の文献に記載の方法に基づいて合成することができる。
a)エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニン・ダイ・アンド・リレィテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds) 」(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ John Wiley & Sons社−ニューヨーク、ロンドン−、1964年刊)
【0098】
b)デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry) 」、第8章、第4節、第482から515項(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JohnWiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊)
【0099】
c)ジュルナール・オルガニチエスコイ・ヒミー(Zh. Org. Khim.)第17巻第1号第167〜169頁(1981年)、第15巻第2号第400〜407頁(1979年)、第14巻第10号第2214〜2221頁(1978年)、第13巻第11号第2440〜2443頁(1977年)、第19巻第10号第2134〜2142頁(1983年)、ウクラインスキー・ヒミチエスキー・ジュルナール(UKr.Khim.Zh) 第40巻第6号第625〜629頁(1974年)、ヒミヤ・ゲテロチクリチエスキフ・ソエデイネーニー(Khim.Geterotsikl.soedin.)第2号第175〜178頁(1976年)、露国特許420643号、同341823号、特開昭59−217761号、米国特許4334000号、同3671648号、同3623881号、同3573921号、欧州特許288261A1号、同102781A2号、特公昭49−46930号。
【0100】
本発明に用いられる増感色素はハロゲン化銀1モル当たり1×10-6モル〜1×10-1モル、好ましくは、1×10-6モル〜10-3モルの割合でハロゲン化銀写真乳剤中に含有される。
【0101】
本発明に用いる増感色素は、直接乳剤中で分散することができる。また、これらはまず適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒などの中に溶解され、溶液の形で乳剤へ添加することもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。また、本発明のメチン色素の添加方法としては米国特許3469987号明細書などに記載のように、色素を揮発性の有機溶媒に溶解し、この溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号などに記載のように、水不溶性色素を添加することなしに水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤へ添加する方法、米国特許3822135号明細書に記載のように、界面活性剤に色素を溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のように、レッドシフトさせる化合物を用いて溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭50−80826号に記載のように色素を実質的に水を含まない酸に溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法などが用いられる。その他、乳剤への添加には米国特許2912343号、同3342605号、同2996287号、同3429835号などに記載の方法も用いられる。また本発明のメチン色素は適当な支持体上に塗布される前にハロゲン化銀乳剤中に一様に分散してもよい。また、化学増感の前に添加、またハロゲン化銀粒子形成の後半の時期に添加するのがよい。
【0102】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯安定定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70重量%を構成することができる。好ましい有機銀塩はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されることはない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀及び樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0103】
本発明においては、上記に挙げられる有機酸銀ないしは有機酸銀の混合物の中でも、ベヘン酸銀含有率85モル%以上の有機酸銀を用いることが好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。ここでベヘン酸銀含有率とは、使用する有機酸銀に対するベヘン酸銀のモル分率を示す。本発明に用いる有機酸銀中に含まれるベヘン酸銀以外の有機酸銀としては上記に挙げた物を好ましく用いることができる。
【0104】
本発明に好ましく用いられる有機酸銀は、上記に示した有機酸のアルカリ金属塩(Na塩、K塩、Li塩等が挙げられる)溶液または懸濁液と硝酸銀を反応させることで調製される。本発明の有機酸アルカリ金属塩は、上記有機酸をアルカリ処理することによって得られる。本発明の有機酸銀は任意の好適な容器中で回文式でまたは連続式で行うことができる。反応容器中の攪拌は粒子の要求される特性によって任意の攪拌方法で攪拌することができる。有機酸銀の調製法としては、有機酸アルカリ金属塩溶液あるいは懸濁液の入った反応容器に硝酸銀水溶液を徐々にあるいは急激に添加する方法、硝酸銀水溶液の入った反応容器に予め調製した有機酸アルカリ金属塩溶液あるいは懸濁液を徐々にあるいは急激に添加する方法、予め調製した硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液を反応容器中に同時に添加する方法のいずれもが好ましく用いることができる。
硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は調整する有機酸銀の粒子サイズの制御のために任意の濃度の物を用いることができ、また任意の添加速度で添加することができる。硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液の添加方法としては、添加速度一定で添加する方法、任意の時間関数による加速添加法あるいは減速添加法にて添加することができる。また反応液に対し、液面に添加してもよく、また液中に添加してもよい。予め調製した硝酸銀水溶液および有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液を反応容器中に同時に添加する方法の場合には、硝酸銀水溶液あるいは有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液のいずれかを先行させて添加することもできるが、硝酸銀水溶液を先行させて添加することが好ましい。先行度としては総添加量の0から50%が好ましく、0から25%が特に好ましい。また特開平9-127643号公報等に記載のように反応中の反応液のpHないしは銀電位を制御しながら添加する方法も好ましく用いることができる。
添加される硝酸銀水溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は粒子の要求される特性によりpHを調整することができる。pH調整のために任意の酸やアルカリを添加することができる。また、粒子の要求される特性により、例えば調整する有機酸銀の粒子サイズの制御のため反応容器中の温度を任意に設定することができるが、添加される硝酸銀水溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液も任意の温度に調整することができる。有機酸アルカリ金属塩溶液または懸濁液は液の流動性を確保するために、50℃以上に加熱保温することが好ましい。
【0105】
本発明に用いる有機酸銀は第3級アルコールの存在下で調製されることが好ましい。第3級アルコールとしては好ましくは総炭素数15以下の物が好ましく、10以下が特に好ましい。好ましい第3級アルコールの例としては、tert-ブタノール等が挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
【0106】
本発明に用いられる第3級アルコールの添加時期は有機酸銀調整時のいずれのタイミングでも良いが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、本発明の第3級アルコールの使用量は有機酸銀調製時の溶媒としてのH2O に対して重量比で0.01〜10の範囲で任意に使用することができるが、0.03〜1の範囲が好ましい。
【0107】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、短軸と長軸を有する針状結晶が好ましい。本発明においては短軸0.01μm以上0.20μm以下、長軸0.10μm以上5.0μm以下が好ましく、短軸0.01μm以上0.15μm以下、長軸0.10μm以上4.0μm以下がより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0108】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、好ましくは脱塩をすることができる。脱塩を行う方法としては特に制限はなく公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。
【0109】
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。
【0110】
そして、このような工程を経た後に、感光性銀塩水溶液と混合して感光性画像形成媒体塗布液を製造する。このような塗布液を用いて熱現像感光材料を作製するとヘイズが低く、低カブリで高感度の熱現像感光材料が得られる。これに対し、高圧、高速流に変換して分散する時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下する。また、分散媒として水ではなく、有機溶剤を用いると、ヘイズが高くなり、カブリが上昇し、感度が低下しやすくなる。一方、感光性銀塩水溶液を混合する方法にかえて、分散液中の有機銀塩の一部を感光性銀塩に変換するコンバージョン法を用いると感度が低下する。
上記において、高圧、高速化に変換して分散される水分散液は、実質的に感光性銀塩を含まないものであり、その含水量は非感光性の有機銀塩に対して0.1モル%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0111】
本発明において、上記のような分散法を実施するのに用いられる固体分散装置およびその技術については、例えば『分散系レオロジーと分散化技術』(梶内俊夫、薄井洋基 著、1991、信山社出版(株)、p357〜p403)、『化学工学の進歩第24集』(社団法人 化学工学会東海支部 編、1990、槙書店、p184〜p185)、等に詳しいが、本発明での分散法は、少なくとも有機銀塩を含む水分散物を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させ、この後に分散液に急激な圧力低下を生じさせることにより微細な分散を行う方法である。
【0112】
本発明が関連する高圧ホモジナイザーについては、一般には、(a) 分散質が狭間隙を高圧、高速で通過する際に生じる『剪断力』、(b) 分散質が高圧下から常圧に解放される際に生じる『キャビテーション力』、等の分散力によって微細な粒子への分散が行われると考えられている。この種の分散装置としては、古くはゴーリンホモジナイザーが挙げられるが、この装置では高圧で送られた被分散液が円柱面上の狭い間隙で、高速流に変換され、その勢いで周囲の壁面に衝突し、その衝撃力で乳化・分散が行われる。使用圧力は一般には100 〜600kg/cm2 、流速は数m〜30m/秒の範囲であり、分散効率を上げるために高流速部を鋸刃状にして衝突回数を増やすなどの工夫を施したものも考案されている。これに対して、近年更に高圧、高流速での分散が可能となる装置が開発されてきており、その代表例としてはマイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社)、ナノマイザー(特殊機化工業(株))などが挙げられる。
【0113】
本発明に適した分散装置としては、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社製マイクロフルイダイザーM−110S−EH(G10Zインターラクションチャンバー付き)、M−110Y(H10Zインターラクションチャンバー付き)、M−140K(G10Zインターラクションチャンバー付き)、HC−5000(L30ZまたはH230Zインターラクションチャンバー付き)、HC−8000(E230ZまたはL30Zインターラクションチャンバー付き)等が挙げられる。
【0114】
これらの装置を用い、少なくとも有機銀塩を含む水分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させることにより所望の圧力を印加し、この後に配管内の圧力を大気圧に急速に戻す等の方法で分散液に急激な圧力降下を生じさせることにより本発明に最適な有機銀塩分散物を得ることが可能である。
【0115】
分散操作に先だって、原料液を予備分散することが好ましい。予備分散する手段としては公知の分散手段(例えば、高速ミキサー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、バンバリーミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル、トロンミル、高速ストーンミル)を用いることができる。機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0116】
本発明の有機銀塩分散においては、流速、圧力降下時の差圧と処理回数の調節によって所望の粒子サイズに分散することが可能であるが、写真特性と粒子サイズの点から、流速が200m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が900〜3000kg/cm2の範囲が好ましく、流速が300m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が1500〜3000kg/cm2の範囲であることが更に好ましい。分散処理回数は必要に応じて選択できるが、通常は1回〜10回の処理回数が選ばれるが、生産性の点からは1回〜3回程度の処理回数が選ばれる。高圧下でこのような水分散液を高温にすることは、分散性、写真特性の点から好ましくなく、90℃を越えるような高温では粒子サイズが大きくなりやすくなると共に、カブリが高くなる傾向がある。従って、本発明では前記の高圧、高流速に変換する前の工程もしくは、圧力降下させた後の工程、あるいはこれらの両工程に冷却工程を含み、このような水分散の温度が冷却工程により5〜90℃の範囲に保たれていることが好ましく、更に好ましくは5〜80℃の範囲、特に5〜65℃の範囲に保たれていることが好ましい。特に、1500〜3000kg/cm2の範囲の高圧の分散時には前記の冷却工程を設置することが有効である。冷却器は、その所要熱交換量に応じて、二重管や二重管にスタチックミキサーを使用したもの、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器等を適宜選択することができる。また、熱交換の効率を上げるために、使用圧力を考慮して、管の太さ、肉厚や材質など好適なものを選べばよい。冷却器に使用する冷媒は、熱交換量から、20℃の井水や冷凍機で処理した5〜10℃の冷水、また必要に応じて-30 ℃のエチレングリコール/水等の冷媒を使用することもできる。
【0117】
本発明の分散操作では、水性溶媒可溶な分散剤(分散助剤)の存在下で有機銀塩を分散することが好ましい。分散助剤としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロメチルプロパンスルホン酸共重合体などの合成アニオンポリマー、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロースなどの半合成アニオンポリマー、アルギン酸、ペクチン酸などのアニオン性ポリマー、特開平7-350753号に記載の化合物、あるいは公知のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤やその他のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の公知のポリマー、或いはゼラチン等の自然界に存在する高分子化合物を適宜選択して用いることができるが、ポリビニルアルコール類、水溶性のセルロース誘導体が特に好ましい。
【0118】
分散助剤は、分散前に有機銀塩の粉末またはウェットケーキ状態の有機銀塩と混合し、スラリーとして分散機に送り込むのは一般的な方法であるが、予め有機銀塩と混ぜ合わせた状態で熱処理や溶媒による処理を施して有機銀塩粉末またはウェットケーキとしても良い。分散前後または分散中に適当なpH調整剤によりpHコントロールしても良い。
【0119】
機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0120】
調製された分散物は、保存時の微粒子の沈降を抑える目的で攪拌しながら保存したり、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状にした状態)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で防腐剤を添加することもできる。
【0121】
本発明の有機銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ(体積荷重平均直径)は、例えば液中に分散した固体微粒子分散物にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径)から求めることができる。平均粒子サイズ0.05μm以上10.0μm以下の固体微粒子分散物が好ましい。より好ましくは平均粒子サイズ0.1 μm以上5.0 μm以下、更に好ましくは平均粒子サイズ0.1 μm以上2.0 μm以下である。
【0122】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。具体的には、体積荷重平均直径の標準偏差を体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が80%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下である。
有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。
【0123】
本発明に用いる有機銀塩固体微粒子分散物は、少なくとも有機銀塩と水から成るものである。有機銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、有機銀塩の全体に占める割合は5〜50重量%であることが好ましく、特に10〜30重量%の範囲が好ましい。前述の分散助剤を用いることは好ましいが、粒子サイズを最小にするのに適した範囲で最少量使用するのが好ましく、有機銀塩に対して1〜30重量%、特に3〜15重量%の範囲が好ましい。
本発明では有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1〜30モル%の範囲が好ましく、更に3〜20モル%、特に5〜15モル%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0124】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0125】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0126】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、たとえば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0127】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100 }面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数{100 }面の比率は増感色素の吸着における{111 }面と{100 }面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0128】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モルから1×10-3モルの範囲が好ましく、1×10-8モルから1×10-4モルの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7-225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。
【0129】
本発明に用いられるロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。たとえば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、またはロジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト等を持つもの、たとえば、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム(III)錯塩、テトラクロロジアコロジウム(III)錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアンミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩等が挙げられる。これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(たとえば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(たとえばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0130】
これらのロジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-8モル〜5×10-6モルの範囲が好ましく、特に好ましくは5×10-8モル〜1×10-6モルである。
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
【0131】
本発明に用いられるレニウム、ルテニウム、オスミウムは特開昭63-2042号、特開平1-285941号、同2-20852号、同2-20855号等に記載された水溶性錯塩の形で添加される。特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6〕n-
ここでMはRu、Re、またはOsを表し、Lは配位子を表し、nは0、1、2、3または4を表す。
この場合、対イオンは重要性を持たず、アンモニウムもしくはアルカリ金属イオンが用いられる。
また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0132】
〔ReCl6 〕3- 〔ReBr6 〕3- 〔ReCl5(NO) 〕2-
〔Re(NS)Br5 〕2- 〔Re(NO)(CN)5 〕2- 〔Re(O)2(CN)4 〕3-
〔RuCl6 〕3- 〔RuCl4(H2O)2 〕- 〔RuCl5(H2O)〕2-
〔RuCl5(NO) 〕2- 〔RuBr5(NS) 〕2-
〔Ru(CO)3Cl3〕2- 〔Ru(CO)Cl5 〕2- 〔Ru(CO)Br5 〕2-
〔OsCl6 〕3- 〔OsCl5(NO) 〕2- 〔Os(NO)(CN)5 〕2-
〔Os(NS)Br5 〕2- 〔Os(O)2(CN)4 〕4-
【0133】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り1×10-9モル〜1×10-5モルの範囲が好ましく、特に好ましくは1×10-8モル〜1×10-6モルである。
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
これらの化合物をハロゲン化銀の粒子形成中に添加してハロゲン化銀粒子中に組み込むには、金属錯体の粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性塩または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、あるいは粒子形成中に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入する方法などがある。特に粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
粒子表面に添加するには、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0134】
本発明で用いられるイリジウム化合物としては種々のものを使用できるが、例えばヘキサクロロイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、トリオキザラトイリジウム、ヘキサシアノイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。これらのイリジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0135】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に、コバルト、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、白金、金、タリウム、銅、鉛、等の金属原子を含有してもよい。コバルト、鉄、クロム、さらにルテニウムの化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオン、ヘキサシアノクロム酸イオン、ヘキサシアノルテニウム酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体の含有相は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
上記金属はハロゲン化銀1モルあたり1×10-9〜1×10-4モルが好ましい。また、上記金属を含有せしめるには単塩、複塩、または錯塩の形の金属塩にして粒子調製時に添加することができる。
【0136】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0137】
本発明のハロゲン化銀乳剤に金増感を施す場合に用いられる金増感剤としては、金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、金増感剤として通常用いられる金化合物を用いることができる。代表的な例としては塩化金酸、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどがあげられる。
金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当り10-7モル以上10-3モル以下、より好ましくは10-6モル以上5×10-4以下である。
【0138】
本発明のハロゲン化銀乳剤は金増感と他の化学増感とを併用することが好ましい。他の化学増感の方法としては、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、貴金属増感法などの知られている方法を用いることができる。金増感法と組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、セレン増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。
【0139】
本発明に好ましく用いられる硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化するが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルであり、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0140】
本発明に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。不安定型セレン化合物としては特公昭44-15748号、同43-13489号、特開平4-25832号、同4-109240号、同3-121798号等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4-324855号中の一般式(VIII) および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0141】
本発明に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成させる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5-313284号に記載の方法で試験することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P-Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。具体的には、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、同第1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4-204640号、同3-53693号、同3-131598号、同4-129787号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.) 635(1980),ibid 1102(1979),ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.) 1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai) 編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Serenium and Tellunium Compounds),Vol 1(1986)、同 Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5-313284号中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0142】
本発明で用いられるセレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
本発明のハロゲン化銀乳剤は、欧州特293,917号に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
本発明に用いられる感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。
【0143】
本発明の感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上0.5 モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3 モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0144】
本発明の熱画像形成材料には有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1モルに対して5〜50モル%含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は画像形成層を有する面のいかなる層でも良い。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1モルに対して10〜50モル%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0145】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤が特開昭46-6074号、同47-1238号、同47-33621号、同49-46427号、同49-115540号、同50-14334号、同50-36110号、同50-147711号、同51-32632号、同51-1023721号、同51-32324号、同51-51933号、同52-84727号、同55-108654号、同56-146133号、同57-82828号、同57-82829号、特開平6-3793号、米国特許3,667,9586号、同3,679,426号、同3,751,252号、同3,751,255号、同3,761,270号、同3,782,949号、同3,839,048号、同3,928,686号、同5,464,738号、独国特許2321328号、欧州特許692732号などに開示されている。例えば、フェニルアミドオキシム、2-チエニルアミドオキシムおよびp-フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル-β-フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル-4-メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p-ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ-アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6-ジクロロ-4-ベンゼンスルホンアミドフェノールなど);エチル-α-シアノ-2-メチルフェニルアセテート、エチル-α-シアノフェニルアセテートなどのα-シアノフェニル酢酸誘導体;2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、6,6'-ジブロモ-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルおよびビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタンに例示されるようなビス-β-ナフトール;ビス-β-ナフトールと1,3-ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2',4'-ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロンなどの、5-ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6-ジクロロ-4-ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp-ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2-フェニルインダン-1,3-ジオンなど; 2,2-ジメチル-7-t-ブチル-6-ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6-ジメトキシ-3,5-ジカルボエトキシ-1,4-ジヒドロピリジンなどの1,4-ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4-エチリデン-ビス(2-t-ブチル-6-メチルフェノール) 、1,1,-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサンおよび2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1-アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3-ピラゾリドンおよびある種のインダン-1,3-ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。特に好ましい還元剤としては、ビスフェノール、クロマノールである。
【0146】
本発明の還元剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0147】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させるうえでも有利になることがある。色調剤は画像形成層を有する面に銀1モルあたりの0.1〜50%モルの量含まれることが好ましく、0.5〜20%モル含まれることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0148】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の色調剤が特開昭46-6077号、同47-10282号、同49-5019号、同49-5020号、同49-91215号、同49-91215号、同50-2524号、同50-32927号、同50-67132号、同50-67641号、同50-114217号、同51-3223号、同51-27923号、同52-14788号、同52-99813号、同53-1020号、同53-76020号、同54-156524号、同54-156525号、同61-183642号、特開平4-56848号、特公昭49-10727号、同54-20333号、米国特許3,080,254号、同3,446,648号、同3,782,941号、同4,123,282号、同4,510,236号、英国特許1380795号、ベルギー特許841910号などに開示されている。色調剤の例は、フタルイミドおよびN-ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン-5-オン、ならびにキナゾリノン、3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、1-フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4-チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N-ヒドロキシ-1,8-ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジメルカプトピリミジン、3-メルカプト-4,5--ジフェニル-1,2,4-トリアゾールおよび2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N-(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N-ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N-(ジメチルアミノメチル)-ナフタレン-2,3-ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N'-ヘキサメチレンビス(1-カルバモイル-3,5-ジメチルピラゾール)、1,8-(3,6-ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2-トリブロモメチルスルホニル)-(ベンゾチアゾール));ならびに3-エチル-5〔(3- エチル-2-ベンゾチアゾリニリデン)-1-メチルエチリデン〕-2- チオ-2,4-オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4-(1-ナフチル)フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノンおよび2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(たとえば、4-(1-ナフチル)フタラジン、6-クロロフタラジン、5,7-ジメトキシフタラジン、6-iso-ブチルフタラジン、6-tert-ブチルフタラジン、5,7-ジメチルフタラジン、および2,3-ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩、;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオン、8-メチル-1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンおよび6-ニトロ-1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンなどのベンズオキサジン-2,4-ジオン;ピリミジンおよび不斉−トリアジン(例えば、2,4-ジヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシ-4-アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6-ジメルカプト-1,4-ジフェニル-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン、および1,4-ジ(o-クロロフェニル)-3,6-ジメルカプト-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン)などがある。
【0149】
本発明の色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0150】
本発明の画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50重量%以上として用いた画像形成層である。(以降この画像形成層を「本発明の画像形成層」、バインダーに用いるポリマーラテックスを「本発明のポリマーラテックス」と表す。)また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いる必要がある。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なお本発明のポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
本発明のポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
本発明のバインダーに用いるポリマーラテックスのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、-30〜40℃である。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
本発明のポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は-30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
本発明のポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などがある。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでも良い。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでも良いし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでも良い。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでも良い。ポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜100000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは製膜性が悪く好ましくない。
本発明の熱現像感光材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては以下のようなものがある。メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなど。また、このようなポリマーは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA-4635,46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、 Nipol Lx416、410、438C、2507、(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いても良い。
【0151】
本発明の画像形成層は全バインダーの50重量%以上 100重量% 以下として上記ポリマーラテックスが用いられるが、70重量%以上として上記ポリマーラテックスが用いられることが好ましい。
本発明の画像形成層には必要に応じて全バインダーの50重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加しても良い。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30重量%以下、さらには5重量%以下が好ましい。
【0152】
本発明の画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60重量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は重量%を表す。)
【0153】
本発明の画像形成層は全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0154】
本発明の感光性熱現像画像形成材料は、硬調な画像を得るために感光層あるいは他の隣接層中に造核剤を含有する。本発明に用いられる造核剤としては、置換アルケン誘導体、置換イソオキサゾール誘導体、特定のアセタール化合物、およびヒドラジン誘導体が好ましく用いられる。
【0155】
本発明で用いられる置換アルケン誘導体、置換イソオキサゾール誘導体、および特定のアセタール化合物について説明する。
一般式(1)、一般式(2)、および一般式(3)
【0156】
【化32】
【0157】
一般式(1)に於いてR1 、R2 、R3 は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基またはシリル基を表す。一般式(1)に於いてR1 とZ、R2 とR3 、R1 とR2 、或いはR3 とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(2)に於いてR4 は、置換基を表す。一般式(3)に於いてX、Yはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。一般式(3)に於いてXとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0158】
一般式(1)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(1)に於いてR1 、R2 、R3 は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基またはシリル基を表す。一般式(1)に於いてR1 とZ、R2 とR3 、R1 とR2 、或いはR3 とZは、互いに結合して環状構造を形成していても良い。
R1 、R2 、R3 が置換基を表す時、置換基の例としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(Nー置換の含窒素ヘテロ環基を含む)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基(またはその対塩)、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。
【0159】
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0160】
一般式(1)に於いてZで表される電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基等である。ここにヘテロ環基としては、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基で、例えばピリジル基、キノリル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ヒダントイン−1―イル基、スクシンイミド基、フタルイミド基等がその例として挙げられる。
一般式(1)に於いてZで表される電子吸引性基は、さらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、一般式(1)のR1 、R2 、R3 が置換基を表す時に有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
【0161】
一般式(1)に於いてR1 とZ、R2 とR3 、R1 とR2 、或いはR3 とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよいが、この時形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環である。
【0162】
次に一般式(1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。
【0163】
一般式(1)に於いてZで表されるシリル基として好ましくは、具体的にトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリメチルシリルジメチルシリル基等である。
【0164】
一般式(1)に於いてZで表される電子吸引性基として好ましくは、総炭素数0から30の以下の基、即ち、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、さらに好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基またはカルバモイル基である。
【0165】
一般式(1)に於いてZで表される基は、電子吸引性基がより好ましい。
【0166】
一般式(1)に於いてR1 、R2 、およびR3 で表される置換基として好ましくは、総炭素数0から30の基で、具体的には上述の一般式(1)のZで表される電子吸引性基と同義の基、およびアルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、または置換もしくは無置換のアリール基等が挙げられる。
【0167】
さらに一般式(1)に於いてR1 は、好ましくは電子吸引性基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアシルアミノ基、水素原子、またはシリル基である。
R1 が電子吸引性基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、カルボキシ基(またはその塩)、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基が好ましい。特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基である。
R1 がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数6から30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、任意の置換基が挙げられるが、中でも電子吸引性の置換基が好ましい。
【0168】
一般式(1)に於いてR1 は、より好ましくは、電子吸引性基またはアリール基を表す時である。
【0169】
一般式(1)に於いてR2 およびR3 で表される置換基として好ましくは、具体的に、上述の一般式(1)のZで表される電子吸引性基と同義の基、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のフェニル基等である。
【0170】
一般式(1)に於いてR2 およびR3 は、さらに好ましくは、どちらか一方が水素原子で、他方が置換基を表す時である。その置換基として好ましくは、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基(特にパーフルオロアルカンアミド基)、スルホンアミド基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはヘテロ環基等であり、さらに好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、アルコキシ基、またはヘテロ環基である。
【0171】
一般式(1)に於いてZとR1 、或いはまたR2 とR3 とが環状構造を形成する場合もまた好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環であり、好ましくは5員〜7員の環状構造で、置換基を含めたその総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。
【0172】
一般式(1)で表される化合物の中で、より好ましいものの1つは、Zがシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基、またはカルバモイル基を表し、R1 が電子吸引性基またはアリール基を表し、R2 またはR3 のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。さらにまた一般式(1)で表される化合物の中で特に好ましいものの1つは、ZとR1 とが非芳香族の5員〜7員の環状構造を形成していて、R2 またはR3 のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。この時、R1 と共に非芳香族の環状構造を形成するZとしては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基等が好ましく、またR1 としては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基等が好ましい。
【0173】
次に一般式(2)で表される化合物について説明する。
一般式(2)に於いてR4 は置換基を表す。R4 で表される置換基としては、一般式(1)のR1 〜R3 の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。
R4 で表される置換基は、好ましくは電子吸引性基またはアリール基である。R4 が電子吸引性基を表す時、好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、ホスホリル基、イミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環基が好ましい。特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはヘテロ環基である。
R4 がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、一般式(1)のR1 、R2 、R3 が置換基を表す時にその置換基として説明したものと同じものが挙げられる。
R4 は、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ヘテロ環基、または置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ヘテロ環基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0174】
次に一般式(3)で表される化合物について詳しく説明する。
一般式(3)に於いてX、Yはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環チオ基、ヘテロ環オキシ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。XとY、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0175】
一般式(3)に於いてX、Yで表される置換基としては、一般式(1)のR1 〜R3 の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。具体的には、アルキル基(パーフルオロアルキル基、トリクロロメチル基等を含む)、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルバモイル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、シリル基等が挙げられる。
【0176】
これらの基はさらに置換基を有していてもよい。またXとYは、互いに結合して環状構造を形成していてもよく、この場合に形成される環状構造としては、非芳香族の炭素環でも、非芳香族のヘテロ環であってもよい。
【0177】
一般式(3)に於いてX、Yで表される置換基は、好ましくは総炭素数1から40の、より好ましくは総炭素数1から30の基であり、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアリール基等が挙げられる。
一般式(3)に於いてX、Yは、より好ましくはシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、ホルミル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、ヘテロ環基、または置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、ホルミル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ヘテロ環基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等である。
【0178】
XとYが、互いに結合して非芳香族の炭素環、または非芳香族のヘテロ環を形成している場合もまた好ましい。この時、形成される環状構造は5員〜7員環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。環状構造を形成するXおよびYとしては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基等が好ましい。
【0179】
一般式(3)に於いてA、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環チオ基、ヘテロ環オキシ基、またはヘテロ環アミノ基を表し、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(3)に於いてA、Bで表される基は、好ましくは総炭素数1から40の、より好ましくは総炭素数1から30の基であり、さらに置換基を有していてもよい。
【0180】
一般式(3)に於いてA、Bは、これらが互いに結合して環状構造を形成している場合がより好ましい。この時形成される環状構造は5員〜7員環の非芳香族のヘテロ環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。この場合に、A、Bが連結した例(−A−B−)を挙げれば、例えば-O-(CH2)2-O-,-O-(CH2)3-O-,-S-(CH2)2-S-,-S-(CH2)3-S-,-S-ph-S-,-N(CH3)-(CH2)2-O- ,-N(CH3)-(CH2)2-S- ,-O-(CH2)2-S-,-O-(CH2)3-S-,-N(CH3)-ph-O- ,-N(CH3)-ph-S- ,-N(ph)-(CH2)2-S-等である。
【0181】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。こうした吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基があげられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0182】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。特にバラスト基が組み込まれているものは本発明の好ましい例の1つである。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0183】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。特にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、あるいは(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基が含まれているものは、本発明の好ましい例の1つである。これらの基の具体例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平3−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独国特許4006032号等に記載の化合物が挙げられる。
【0184】
次に本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0185】
【化33】
【0186】
【化34】
【0187】
【化35】
【0188】
【化36】
【0189】
【化37】
【0190】
【化38】
【0191】
【化39】
【0192】
【化40】
【0193】
【化41】
【0194】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、化合物の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0195】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、支持体に対して画像記録層側の層、即ち画像形成層あるいは他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物の添加量は、銀1モルに対し1×10-6〜1モルが好ましく、1×10-5〜5×10-1モルがより好ましく、2×10-5〜2×10-1モルが最も好ましい。
【0196】
一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができるが、例えば、米国特許5545515号、米国特許5635339号、米国特許5654130号、国際特許WO−97/34196号、或いは特願平9−309813号、特願平9−272002号に記載の方法を参考に合成することができる。
【0197】
本発明の一般式(1)〜一般式(3)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用しても良い。また上記のものの他に、米国特許5545515号、米国特許5635339号、米国特許5654130号、国際特許WO−97/34196号、米国特許5686228号に記載の化合物、或いはまた特願平8−279962号、特願平9−228881号、特願平9−273935号、特願平9−309813号、特願平9−296174号、特願平9−282564号、特願平9−272002号、特願平9−272003号、特願平9−332388号に記載された化合物を併用して用いても良い。
【0198】
さらに本発明に於いては、下記に挙げるヒドラジン誘導体を組み合わせて用いることもできる。
【0199】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体は、下記一般式(H)によって表わされる化合物が好ましい。
一般式(H)
【0200】
【化42】
【0201】
式中、R2は脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表し、R1は水素原子またはブロック基を表し、G1は-CO-,-COCO-,-C=S-,-SO2- ,-SO-,-PO(R3)-基(R3はR1に定義した基と同じ範囲内より選ばれ、R1と異なっていてもよい。)、チオカルボニル基、またはイミノメチレン基を表す。A1、A2はともに水素原子、あるいは一方が水素原子で他方が置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアシル基を表す。m1は0または1であり、m1が0の時、R1は脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表す。
【0202】
一般式(H)において、R2で表わされる脂肪族基は好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。
一般式(H)において、R2で表わされる芳香族基は単環もしくは縮合環のアリール基で、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。R2で表わされるヘテロ環基としては、単環または縮合環の、飽和もしくは不飽和の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基で、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンズイミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ピペリジン環、トリアジン環、モルホリノ環、ピペリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
【0203】
R2として好ましいものはアリール基もしくはアルキル基である。
【0204】
R2は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、N-置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。
【0205】
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0206】
R2が有していてもよい置換基として好ましいものは、R2が芳香族基またはヘテロ環基を表す場合、アルキル基(活性メチレン基を含む)、アラルキル基、ヘテロ環基、置換アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、チオウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(その塩を含む)、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、スルホ基(その塩を含む)、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
またR2が脂肪族基を表す場合は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、イミド基、チオウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基(その塩を含む)、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、スルホ基(その塩を含む)、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が好ましい。
【0207】
一般式(H)において、R1は水素原子またはブロック基を表すが、ブロック基とは具体的に、脂肪族基(具体的にはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基)、芳香族基(単環もしくは縮合環のアリール基)、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヒドラジノ基を表す。
R1で表わされるアルキル基として好ましくは、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2−カルボキシテトラフルオロエチル基、ピリジニオメチル基、ジフルオロメトキシメチル基、ジフルオロカルボキシメチル基、3-ヒドロキシプロピル基、3-メタンスルホンアミドプロピル基、フェニルスルホニルメチル基、o−ヒドロキシベンジル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、4-エチルフェノキシメチル基、フェニルチオメチル基、t-ブチル基、ジシアノメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、メトキシカルボニルジフェニルメチル基、シアノジフェニルメチル基、メチルチオジフェニルメチル基などが挙げられる。アルケニル基として好ましくは炭素数1から10のアルケニル基であり、例えばビニル基、2-エトキシカルボニルビニル基、2-トリフルオロ-2-メトキシカルボニルビニル基等が挙げられる。アルキニル基として好ましくは炭素数1から10のアルキニル基であり、例えばエチニル基、2-メトキシカルボニルエチニル基等が挙げられる。アリール基としては単環もしくは縮合環のアリール基が好ましく、ベンゼン環を含むものが特に好ましい。例えばフェニル基、パーフルオロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-メタンスルホンアミドフェニル基、2-カルバモイルフェニル基、4,5-ジシアノフェニル基、2-ヒドロキシメチルフェニル基、2,6-ジクロロ-4- シアノフェニル基、2-クロロ-5- オクチルスルファモイルフェニル基などが挙げられる。
ヘテロ環基として好ましくは、少なくとも1つの窒素、酸素、および硫黄原子を含む5〜6員の、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは縮合環のヘテロ環基で、例えばモルホリノ基、ピペリジノ基(N-置換)、イミダゾリル基、インダゾリル基(4-ニトロインダゾリル基等)、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリジニオ基(N-メチル-3-ピリジニオ基等)、キノリニオ基、キノリル基などがある。
アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基としては置換もしくは無置換のフェノキシ基が好ましく、アミノ基としては無置換アミノ基、及び炭素数1〜10のアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基(4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環アミノ基を含む)が好ましい。アミノ基の例としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イルアミノ基、プロピルアミノ基、2-ヒドロキシエチルアミノ基、アニリノ基,o-ヒドロキシアニリノ基、5-ベンゾトリアゾリルアミノ基、N-ベンジル-3-ピリジニオアミノ基等が挙げられる。ヒドラジノ基としては置換もしくは無置換のヒドラジノ基、または置換もしくは無置換のフェニルヒドラジノ基(4-ベンゼンスルホンアミドフェニルヒドラジノ基など)が特に好ましい。
【0208】
R1で表される基は置換されていても良く、その置換基の例としては、R2の置換基として例示したものがあてはまる。
【0209】
一般式(H)に於いてR1はG1-R1 の部分を残余分子から分裂させ、-G1-R1部分の原子を含む環式構造を生成させる環化反応を生起するようなものであってもよく、その例としては、例えば特開昭63-29751号などに記載のものが挙げられる。
【0210】
一般式(H)で表されるヒドラジン誘導体は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。かかる吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108 号、同4,459,347 号、特開昭59-195233 号、同59-200231号、同59-201045号、同59-201046号、同59-201047号、同59-201048号、同59-201049号、特開昭61-170733号、同61-270744号、同62-948号、同63-234244号、同63-234245号、同63-234246号に記載された基があげられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2-285344号に記載された基が挙げられる。
【0211】
一般式(H)のR1またはR2はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1-100530号に記載のものが挙げられる。
【0212】
一般式(H)のR1またはR2は、置換基としてヒドラジノ基を複数個含んでいてもよく、この時一般式(H)で表される化合物は、ヒドラジノ基に関しての多量体を表し、具体的には例えば特開昭64-86134号、特開平4-16938号、特開平5-197091号、WO95-32452号、WO95-32453号、特願平7-351132号、特願平7-351269号、特願平7-351168号、特願平7-351287号、特開平9-179229号等に記載された化合物が挙げられる。
【0213】
一般式(H)のR1またはR2は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。これらの基が含まれる例としては、例えば特開平7-234471号、特開平5-333466号、特開平6-19032号、特開平6-19031号、特開平5-45761号、米国特許4,994,365号、米国特許4,988,604号、特開平3-259240号、特開平7-5610号、特開平7-244348号、独特許4,006,032号等に記載の化合物が挙げられる。
【0214】
一般式(H)に於いてA1、A2は水素原子、炭素数20以下のアルキルまたはアリールスルホニル基(好ましくはフェニルスルホニル基、又はハメットの置換基定数の和が-0.5以上となるように置換されたフェニルスルホニル基)、炭素数20以下のアシル基(好ましくはベンゾイル基、又はハメットの置換基定数の和が-0.5以上となるように置換されたベンゾイル基、あるいは直鎖、分岐、又は環状の置換もしくは無置換の脂肪族アシル基(ここに置換基としては、例えばハロゲン原子、エーテル基、スルホンアミド基、カルボンアミド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等が挙げられる))である。
A1、A2としては水素原子が最も好ましい。
【0215】
次に本発明において、特に好ましいヒドラジン誘導体について述べる。
【0216】
R2はフェニル基または炭素数1〜3の置換アルキル基が好ましい。
R2がフェニル基を表す時、その好ましい置換基としては、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホンアミド基、チオウレイド基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、アルコキシカルボニル基、またはクロル原子が挙げられる。
R2が置換フェニル基を表す時、その置換基に、直接または連結基を介して、バラスト基、ハロゲン化銀への吸着基、4級のアンモニオ基を含む基、4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基、エチレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、ニトロ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)、もしくは多量体を形成しうるヒドラジノ基(-NHNH-G1-R1 で表される基)の少なくとも1つが置換されていることがより好ましい。
R2が炭素数1〜3の置換アルキル基を表す時、R2はより好ましくは置換メチル基であり、さらには、二置換メチル基もしくは三置換メチル基が好ましく、その置換基としては具体的に、メチル基、フェニル基、シアノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、クロル原子、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基が好ましく、特に置換もしくは無置換のフェニル基が好ましい。
R2が置換メチル基を表す時、より好ましい具体例としては、t-ブチル基、ジシアノメチル基、ジシアノフェニルメチル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、ジフェニルメチル基、メトキシカルボニルジフェニルメチル基、シアノジフェニルメチル基、メチルチオジフェニルメチル基、シクロプロピルジフェニルメチル基などが挙げられるが、中でもトリチル基が最も好ましい。
一般式(1) に於いてR2は、最も好ましくは置換フェニル基である。
【0217】
一般式(H)に於いてm1は1または0を表すが、m1が0の時、R1は脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表す。m1が0の時、R1は特に好ましくはフェニル基または炭素数1〜3の置換アルキル基であり、これは先に説明したR2の好ましい範囲と同じである。
m1は好ましくは1である。
【0218】
R1で表わされる基のうち好ましいものは、R2がフェニル基を表し、かつG1が-CO-基の場合には、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基であり、最も好ましくは水素原子またはアルキル基である。ここでR1がアルキル基を表す時、その置換基としてはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシ基が特に好ましい。
R2が置換メチル基を表し、かつG1が-CO-基の場合には、R1は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アミノ基(無置換アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基)であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基である。
G1が-COCO-基の場合には、R2に関わらず、R1はアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が好ましく、特に置換アミノ基、詳しくはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環アミノ基が好ましい。
またG1が-SO2 -基の場合には、R2に関わらず、R1はアルキル基、アリール基または置換アミノ基が好ましい。
【0219】
一般式(H)に於いてG1は好ましくは-CO-基または-COCO-基であり、特に好ましくは-CO-基である。
【0220】
次に一般式(H)で示される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0221】
本発明に用いられるヒドラジン誘導体としては、上記のものの他に、下記のヒドラジン誘導体も好ましく用いられる。(場合によっては組み合わせて用いることもできる。)本発明に用いられるヒドラジン誘導体はまた、下記の特許に記載された種々の方法により、合成することができる。
【0222】
特公平6-77138号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁、4頁に記載の化合物。特公平6-93082号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜18頁に記載の1〜38の化合物。特開平6-230497号に記載の一般式(4)、一般式(5)および一般式(6)で表される化合物で、具体的には同公報25頁、26頁に記載の化合物4-1〜化合物4-10、28頁〜36頁に記載の化合物5-1〜5-42、および39頁、40頁に記載の化合物6-1〜化合物6-7。特開平6-289520号に記載の一般式(1)および一般式(2)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜7頁に記載の化合物1-1)〜1-17)および2-1)。特開平6-313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6頁〜19頁に記載の化合物。特開平6-313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3頁〜5頁に記載の化合物。特開平7-5610号に記載の一般式(I)で表される化合物で、具体的には同公報5頁〜10頁に記載の化合物I-1〜I-38。特開平7-77783号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II-1〜II-102。特開平7-104426号に記載の一般式(H)および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8頁〜15頁に記載の化合物H-1〜H-44。特開平9-22082 号に記載の、ヒドラジン基の近傍にアニオン性基またはヒドラジンの水素原子と分子内水素結合を形成するノニオン性基を有することを特徴とする化合物で、特に一般式(A)、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、一般式(E)、一般式(F)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物N-1〜N-30。特願平7-191007号に記載の一般式(1)で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物D-1〜D-55。
さらに1991年3月22日発行の「公知技術(1〜207頁)」(アズテック社刊)の25頁から34頁に記載の種々のヒドラジン誘導体。特開昭62-86354号(6頁〜7頁)の化合物D-2およびD-39。
【0223】
【表1】
【0224】
【表2】
【0225】
【表3】
【0226】
【表4】
【0227】
【表5】
【0228】
【表6】
【0229】
【表7】
【0230】
【表8】
【0231】
【表9】
【0232】
【表10】
【0233】
【表11】
【0234】
【表12】
【0235】
【表13】
【0236】
【表14】
【0237】
【表15】
【0238】
【表16】
【0239】
【表17】
【0240】
【表18】
【0241】
【表19】
【0242】
【表20】
【0243】
【表21】
【0244】
【表22】
【0245】
【表23】
【0246】
本発明のヒドラジン系造核剤は、適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0247】
本発明のヒドラジン造核剤は、支持体に対して画像形成層側の該画像形成層あるいは他のバインダー層のどの層に添加してもよいが、該画像形成層あるいはそれに隣接するバインダー層に添加することが好ましい。
本発明の造核剤添加量は、銀1モルに対し1×10-6〜1×10-2モルが好ましく、1×10-5〜5×10-3モルがより好ましく、2×10-5〜5×10-3モルが最も好ましい。
【0248】
また、本発明は超硬調画像形成のために、前記の造核剤とともに硬調化促進剤を併用することができる。例えば、米国特許第5,545,505号に記載のアミン化合物、具体的にはAM-1〜AM-5、同5,545,507に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA-1〜HA-11、同5,545,507に記載のアクリロニトリル類、具体的にはCN-1〜CN-13、同5,558,983に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA-1〜CA-6、特願平8-132836に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA-1〜A-42、B-1〜B-27、C-1〜C-14などを用いることができる。
これらの硬調化促進剤の合成方法、添加方法、添加量等は、それぞれの前記引用特許に記載されているように行うことができる。
【0249】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤または/および有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なかぶりの生成に対して更に保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038号および同第2,694,716号に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437号および同第2,444,605号に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663号に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135号に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652号に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448号に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405号に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839号に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263号および同第2,597,915号に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665号および同第4,442,202号に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557号および同第4,137,079号、第4,138,365号および同第4,459,350号に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985号に記載のリン化合物などがある。
【0250】
本発明に好ましく用いられるかぶり防止剤は有機ハロゲン化物であり、例えば、特開昭50-119624号、同50-120328号、同51-121332号、同54-58022号、同56-70543号、同56-99335号、同59-90842号、同61-129642号、同62-129845号、特開平6-208191号、同7-5621号、同7-2781号、同8-15809号、米国特許第5,340,712号、同5,369,000号、同5,464,737号に開示されているような化合物が挙げられる。
【0251】
本発明のカブリ防止剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0252】
本発明を実施するために必要ではないが、乳剤層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的に好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。本発明に使用する水銀の添加量としては、塗布された銀1モル当たり好ましくは1×10-9モル〜1×10-3モル、さらに好ましくは1×10-8モル〜1×10-4モルの範囲である。
【0253】
本発明における熱現像感光材料は高感度化やカブリ防止を目的として安息香酸類を含有しても良い。本発明の安息香酸類はいかなる安息香酸誘導体でもよいが、好ましい構造の例としては、米国特許4,784,939号、同4,152,160号、特願平8-151242号、同8-151241号、同8-98051号などに記載の化合物が挙げられる。本発明の安息香酸類は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。本発明の安息香酸類の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。本発明の安息香酸類の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明の安息香酸類の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10-6モル以上2モル以下が好ましく、1×10-3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0254】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、Ar-SM 、Ar-S-S-Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、6-エトキシ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2'-ジチオビス-(ベンゾチアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジフェニル-2-イミダゾールチオール、2-メルカプトイミダゾール、1-エチル-2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトキノリン、8-メルカプトプリン、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリノン、7-トリフルオロメチル-4-キノリンチオール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-ピリジンチオール、4-アミノ-6-ヒドロキシ-2-メルカプトピリミジンモノヒドレート、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-ヒドキロシ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプトピリミジン、4,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプト-4-メチルピリミジンヒドロクロリド、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、3-(5-メルカプトテトラゾール)-ベンゼンスルフォン酸ナトリウム、N-メチル-N'-{3-(5- メルカプトテトラゾリル)フェニル}ウレア、2-メルカプト-4-フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0255】
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層中に銀1モル当たり0.0001〜1.0モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1モル当たり0.001〜0.3モルの量である。
【0256】
本発明における感光性層には、可塑剤および潤滑剤として多価アルコール(例えば、米国特許第2,960,404号に記載された種類のグリセリンおよびジオール)、米国特許第2,588,765号および同第3,121,060号に記載の脂肪酸またはエステル、英国特許第955,061号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0257】
本発明においては、画像形成上に保護層を設けることが好ましく、保護層のバインダーとしては、ガラス転移温度が25℃以上70℃以下のポリマーのラテックスを用いることが好ましい。この場合保護層の全バインダーの50重量%以上、好ましくは70重量%以上として前述のポリマーラテックスを用いることが好ましい。本発明ではこのような保護層を少なくとも1層設けることが好ましい。このような保護層のバインダー構成や塗設方法等については画像形成層と同様である。保護層用のポリマーラテックスとしてはアクリル系、スチレン系、アクリル/スチレン系、塩化ビニル系、塩化ビニリデン系のポリマーラテックスが好ましく用いられ、具体的にはアクリル樹脂系のVONCORT R3370、4280、Nipol Lx857、メチルアクリレート/2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/スチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、塩化ビニル樹脂のNipol G576、塩化ビニリデン樹脂のアロンD5071が好ましく用いられる。
【0258】
本発明に用いられる保護層用の全バインダー量は0.2〜5.0g/m2、より好ましくは0.5〜4.0g/m2の範囲である。
【0259】
本発明の表面保護層としては、いかなる付着防止材料を使用してもよい。付着防止材料の例としては、ワックス、シリカ粒子、スチレン含有エラストマー性ブロックコポリマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン)、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートやこれらの混合物などがある。また、表面保護層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0260】
本発明における画像形成層もしくは画像形成層の保護層には、米国特許第3,253,921号、同第2,274,782号、同第2,527,583号および同第2,956,879号に記載されているような光吸収物質およびフィルター染料を含む写真要素において使用することができる。また、例えば米国特許第3,282,699号に記載のように染料を媒染することができる。フィルター染料の使用量としては露光波長での吸光度が0.1〜3が好ましく、0.2〜1.5が特に好ましい。
【0261】
本発明の感光性層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。本発明の感光性層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えばカラーインデックス記載の顔料や染料があり、具体的にはピラゾロアゾール染料、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料、インドアニリン染料、インドフェノール染料、フタロシアニンをはじめとする有機顔料、無機顔料などが挙げられる。本発明に用いられる好ましい染料としてはアントラキノン染料(例えば特開平5-341441号記載の化合物1〜9、特開平5-165147号記載の化合物3-6〜18および3-23〜38など)、アゾメチン染料(特開平5-341441号記載の化合物17〜47など)、インドアニリン染料(例えば特開平5-289227号記載の化合物11〜19、特開平5-341441号記載の化合物47、特開平5-165147号記載の化合物2-10〜11など)およびアゾ染料(特開平5-341441号記載の化合物10〜16)が挙げられる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でも良い。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に1m2当たり1×10-6g以上1g以下の範囲で用いることが好ましい。
【0262】
本発明における熱現像写真感光性材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0263】
本発明においてバック層は、所望の範囲での最大吸収が約0.3以上2.0以下であることが好ましい。所望の範囲が750〜1400nmである場合には、750〜360nmにおいての光学濃度が0.005以上0.5未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001以上0.3未満の光学濃度を有するハレーション防止層であることが好ましい。所望の範囲が750nm以下である場合には、画像形成前の所望範囲の最大吸収が0.3以上2.0以下であり、さらに画像形成後の360〜750nmの光学濃度が0.005以上0.3未満になるようなハレーション防止層であることが好ましい。画像形成後の光学濃度を上記の範囲に下げる方法としては特に制限はないが、例えばベルギー特許第733,706号に記載されたように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54-17833号に記載の光照射による消色で濃度を低下させる方法等が挙げられる。
【0264】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、該染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でも良い。例えば以下に挙げるものが開示されているが本発明はこれに限定されるものではない。単独の染料としては特開昭59-56458号、特開平2-216140号、同7-13295号、同7-11432号、米国特許5,380,635号記載、特開平2-68539号公報第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目、同3-24539号公報第14頁左下欄から同第16頁右下欄記載の化合物があり、処理で消色する染料としては特開昭52-139136号、同53-132334号、同56-501480号、同57-16060号、同57-68831号、同57-101835号、同59-182436号、特開平7-36145号、同7-199409号、特公昭48-33692号、同50-16648号、特公平2-41734号、米国特許4,088,497号、同4,283,487号、同4,548,896号、同5,187,049号がある。
【0265】
本発明においてバック層の好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン-無水マレイン酸)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、コポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0266】
本発明における片面感光材料は、搬送性改良のために感光性乳剤層の表面保護層及び/またはバック層またはバック層の表面保護層にマット剤を添加しても良い。マット剤は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子である。マット剤としては任意のものを使用でき、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同1,260,772号、同2,192,241号、同3,257,206号、同3,370,951号、同3,523,022号、同3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界で良く知られたものを用いることができる。例えば具体的にはマット剤として用いることのできる有機化合物の例としては、水分散性ビニル重合体の例としてポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素-ホルムアルデヒド-澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微少カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなど好ましく用いることができる。無機化合物の例としては二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。一方、マット剤は感材のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0267】
本発明においてバック層にマット剤を添加するのは好ましい態様であり、バック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、さらに好ましくは700秒以下50秒以上である。
【0268】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。また、乳剤面保護層のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が500秒以上10,000秒以下が好ましく、特に500秒以上2,000秒以下が好ましい。
ある。
【0269】
本発明に用いる熱現像写真用乳剤は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層の構成は有機銀塩、ハロゲン化銀、現像剤およびバインダー、ならびに色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含まなければならない。二層の構成は、第1乳剤層(通常は基材に隣接した層)中に有機銀塩およびハロゲン化銀を含み、第2層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。しかし、全ての成分を含む単一乳剤層および保護トップコートを含んでなる二層の構成も考えられる。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0270】
米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backside resistive heating layer)を感光性熱現像写真画像系に使用することもできる。
【0271】
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としては、米国特許4,281,060号、特開平6-208193号などに記載されているポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などに記載されているエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などに記載されているビニルスルホン系化合物類などが用いられる。
【0272】
本発明には塗布性、帯電改良などを目的として界面活性剤を用いても良い。界面活性剤の例としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、フッ素系などいかなるものも適宜用いられる。具体的には、特開昭62-170950号、米国特許5,380,644号などに記載のフッ素系高分子界面活性剤、特開昭60-244945号、特開昭63-188135号などに記載のフッ素系界面活性剤、米国特許3,885,965号などに記載のポリシロキサン系界面活性剤、特開平6-301140号などに記載のポリアルキレンオキサイドやアニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0273】
本発明における熱現像用写真乳剤は、一般的には種々の支持体上に被覆させることができる。典型的な支持体は、ポリエステルフィルム、下塗りポリエステルフィルム、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、硝酸セルロースフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリ(ビニルアセタール)フィルム、ポリカーボネートフィルムおよび関連するまたは樹脂状の材料、ならびにガラス、紙、金属などを含む。可撓性基材、特に、部分的にアセチル化された、もしくはバライタおよび/またはα-オレフィンポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテンコポリマーなどの炭素数2〜10のα-オレフィンのポリマーによりコートされた紙支持体が、典型的に用いられる。該支持体は透明であっても不透明であってもよいが、透明であることが好ましい。これらのうちでも75〜200μm程度の2軸延伸したポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
一方、プラスチックフィルムを80℃以上の処理の熱現像機に通すと一般にフィルムの寸法が伸縮する。処理後の材料を印刷製版用途として使用する場合、この伸縮は精密多色印刷を行う時に重大な問題となる。よって、本発明では二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像中に発生する熱収縮歪みをなくす工夫をした、寸法変化の小さいフィルムを用いることが好ましい。例えば、熱現像用写真乳剤を塗布する前に100℃〜210℃の範囲で熱処理したポリエチレンテレフタレートなどが好ましく用いられる。ガラス転移点の高いものも好ましく、ポリエーテルエチルケトン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリカーボネート等が使用できる。
【0274】
本発明における熱現像感光材料は、帯電防止のため、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第2,861,056号および同第3,206,312号に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3,428,451号に記載のような不溶性無機塩、特開昭60-252349号、同57-104931号に記載されている酸化スズ微粒子などを含む層を有してもよい。
【0275】
本発明における熱現像感材を用いてカラー画像を得る方法としては特開平7-13295号10頁左欄43行目から11左欄40行目に記載の方法がある。また、カラー染料画像の安定剤としては英国特許第1,326,889号、米国特許第3,432,300号、同第3,698,909号、同第3,574,627号、同第3,573,050号、同第3,764,337号および同第4,042,394号に例示されている。
【0276】
本発明における熱現像写真乳剤は、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、フローコーティングまたは、米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作により被覆することができる。所望により、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0277】
本発明における熱現像写真材料の中に追加の層、例えば移動染料画像を受容するための染料受容層、反射印刷が望まれる場合の不透明化層、保護トップコート層および光熱写真技術において既知のプライマー層などを含むことができる。本発明の感材はその感材一枚のみで画像形成できることが好ましく、受像層等の画像形成に必要な機能性層が別の感材とならないことが好ましい。
【0278】
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した感光材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像感光材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5-56499号、特許公報第684453号、特開平9-292695号、特開平9-297385号および国際特許WO95/30934号に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7-13294号、国際特許WO97/28489号、同97/28488号および同97/28487号に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましい。
本発明の熱現像感光材料の前述の熱現像時の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満の温度で画像が出ないようにして5秒以上加熱した後、110℃以上で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が有効である。
【0279】
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。
本発明の感光材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞発生防止技術としては、特開平5-113548などに開示されているレーザー光を感光材料に対して斜めに入光させる技術や、WO95/31754などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
本発明の感光材料を露光するにはSPIE vol.169 Laser Printing 116-128頁(1979)、特開平4-51043、WO95/31754などに開示されているようにレーザー光が重なるように露光し、走査線が見えないようにすることが好ましい。
【0280】
以下に実施例をもって本発明の効果を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0281】
【実施例】
<実施例1>《ハロゲン化銀乳剤の調製》
(乳剤A)水700mlにフタル化ゼラチン11gおよび臭化カリウム30mg、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mgを溶解して温度55℃にてpHを5.0に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1モル/リットルで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、化合物Aを0.17g、脱イオンゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)23.7g加え、pH5.9、pAg8.0に調製した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数8%、(100)面比率93%の立方体粒子であった。こうして得たハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μモルを添加し、3分後にチオ硫酸ナトリウム154μモルを添加して、100分熟成した。その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1モルに対して、表24に記載の増感色素を12.8×10-4モル、表24に記載の一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を6.4×10-3モルを攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。
【0282】
【化43】
【0283】
《有機酸銀分散物の調製》
<有機酸銀A>
アラキン酸6.1g、ベヘン酸37.6g、蒸留水700ml、tert-ブタノール70ml、1N-NaOH水溶液123mlを混合し、75℃で1時間攪拌し反応させ、65℃に降温した。次いで、硝酸銀19.2gの水溶液112.5ml を45秒かけて添加し、そのまま5分間放置し、30℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして取り扱い、乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-205)5gおよび水を添加し、全体量を500gとしてからホモミキサーにて予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、三回処理し、有機酸銀分散物Aを得た。こうして得た有機酸銀分散物に含まれる有機酸銀粒子は平均短径0.04μm、平均長径0.8μm、変動係数30%の針状粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。こうして、ベヘン酸銀含有率85モル%の有機酸銀Aを調製した。
【0284】
《1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサンの固体微粒子分散物の調製》
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン20gに対してクラレ(株)製MPポリマーのMP-203を3.0gと水77ml添加してよく攪拌して、スラリーとして3時間放置した。その後、0.5mmのジルコニアビーズを360g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて3時間分散し還元剤固体微粒子分散物を調製した。粒子径は、粒子の80重量%が0.3μm以上1.0μm以下であった。
【0285】
《トリブロモメチルフェニルスルホンの固体微粒子分散物の調製》
トリブロモメチルフェニルスルホン30gに対してヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5g、化合物C0.5gと、水88.5gを添加し良く攪拌してスラリーとして3時間放置した。その後、還元剤固体微粒子分散物の調製と同様にして被り防止剤の固体微粒子分散物を調製した。粒子径は、粒子の80重量%が0.3μm以上1.0μm以下であった。
【0286】
《乳剤層塗布液の調製》
上記で作成した有機酸銀微結晶分散物の銀1モルに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、乳剤層塗布液とした。
【0287】
【0288】
【化44】
【0289】
《乳剤面保護層塗布液の調製》
固形分27.5%のポリマーラテックス(メチルメタクリレート/スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレートメタアクリル酸=59/9/26/5/1の共重合体でガラス転移温度55℃)109gにH2O 3.75gを加え、造膜助剤としてベンジルアルコール4.5g、化合物D 0.45g、化合物E 0.125g、化合物F 0.0125モル、およびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA-217)2.25gを加え、さらにH2Oを加えて、150gとし、塗布液とした。
【0290】
【化45】
【0291】
《バック/下塗り層のついたPET支持体の作成》
(1) 支持体
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、IV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出した後急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フイルムを作成した。
これを周速の異なるロールを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2 で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロールを得た。
支持体の片側に下塗り層(a)と下塗り層(b)を順次塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥した。ついで、下塗り層(a)と下塗り層(b)を塗布した反対側の面に導電層と保護層を順次塗布し、それぞれ180℃、30秒乾燥してバック/下塗り層のついたPET支持体を作製した。
このようにして作製したバック/下塗り層のついたPET支持体を160℃設定した全長30m熱処理ゾーンに入れ、張力14g/cm2 、搬送速度20m/分で自動搬送した。その後、40℃のゾーンに15秒間通し、10kg/cm2の巻き取り張力で巻き取った。
【0292】
【化46】
【0293】
《熱現像感光材料の調製》
前記バック/下塗り層のついたPET支持体の下塗り層の上に前期の乳剤層塗布液を塗布銀量1.6g/m2になるように塗布した。さらにその上に、前記乳剤面保護層塗布液をポリマーラテックスの塗布量が2.0g/m2になるように乳剤塗布液と共に同時重層塗布した。
【0294】
《写真性能の評価》
(露光処理)
得られた塗布サンプルを780nmにピークを有する干渉フィルターおよびステップウェッジを介して、発光時間10-6秒のキセノンフラッシュ光で露光した。
(熱現像処理)
露光済みのサンプルを図1の熱現像機にて115℃で20秒間熱現像処理を行った。
(写真性能の評価)
得られた画像の評価をマクベスTD904濃度計(可視濃度)により行った。測定の結果は、Dmin、感度(Dminより1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)、コントラストで評価した。感度については写真材料4の感度を100とした。コントラストは露光量の対数を横軸として、濃度0.3と1.0の点を結ぶ直線の傾きで表した。
【0295】
各感材について上記評価を実施した結果を表24に示す。
【0296】
【表24】
【0297】
【化47】
【0298】
本発明のサンプルは、低カブリで高コントラスト、かつ高感度の性能が得られることがわかる。
【0299】
<実施例2>
実施例1で用いた熱現像機を、特開平7−13294号の図3に記載の熱現像機と同様の構造で、熱源を2種類並べた構造のものを作成して、連続して2段階の加熱ができるようにした。この熱現像機を用いて以下の熱現像処理を行ったところ、本発明の試料において良好な結果を得た。
(1)処理(a);
90℃10秒処理後(画像が出ない条件、115℃30秒処理
(2)処理(c);
105℃10秒処理(画像が出ない条件)後、115℃30秒処理
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ハロゲンランプ
2 ヒートドラム
3 送りローラ
4 エンドレスベルト
5 熱現像感光材料
6 出口
7 ガイド板
8 送りローラ対
9 平面ガイド板
10 送りローラ対
11 冷却ファン
Claims (2)
- 支持体上に、非感光性有機銀塩、非感光性有機銀塩の還元剤、非感光性有機銀塩とは独立に形成された感光性ハロゲン化銀およびバインダーを有する熱現像感光材料において、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層のバインダーの50重量%以上でガラス転移温度−30℃以上40℃以下のポリマーラテックスが用いられ、下記一般式( IIa) または (IIb) で表される化合物を少なくとも一種および下記一般式(S)で表わされる増感色素を少なくとも一種、画像形成層を有する側に含有することを特徴とする熱現像感光材料。
一般式(S)
- 画像形成層および/またはその隣接層に少なくとも一種の超硬調化剤を含有する請求項1の熱現像感光材料。
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