JP4012337B2 - 熱現像画像記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像画像記録材料、より詳細には、熱現像条件の変動に対して安定な熱現像画像記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱現像により画像を形成する方法は、例えば米国特許第3,152,904号、同3,457,075号、およびD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials) Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワーズ(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に記載されている。このような感光材料は、還元可能な非感光性の銀源(例えば有機銀塩)、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀)、および銀の還元剤を通常有機バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している。感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。
ここで得られる黒色画像はマイクロフィルム用記録材料や、レントゲン用等の医療用記録材料として用いられる。また印刷製版用記録材料としても有用なものである。これらの記録材料は従来写真の原理を用いたものが使われており、画像形成の際に処理液を用いて現像する方法が広く用いられている。しかし近年、環境問題に対する対応が急務となっており、溶液系処理化学薬品の使用をなくしより簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することが必要不可欠となっている。
近年写真製版分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・スキャナーまたはレーザー・イメージセッターにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる写真製版用途の感光性熱現像材料に関する技術が必要とされている。
【0003】
熱現像感光材料においては従来の処理液を用いる現像方式に比べてその現象処理時の条件を厳密に設定することが難しい。たとえば現像する際に露光済みの感光材料を加熱するのであるが、その温度分布にむらがあると処理後の画質に大きな差が生じてしまう。特に超硬調な画質が要求される印刷製版用感光材料においては、硬調化剤を用い露光部の情報を増幅するため少しの現像進行のずれが非常に大きな銀の黒色画像の濃度の差となって出力されてしまうことになる。そのような現像処理条件によるばらつきを抑えるためには、露光部でのみ効果的に現像を促進する技術の開発が望まれている。このような現像促進効果は現像処理時間を短縮することができるという側面も持ち、より迅速な画像の形成にも効果を期待することができる。
いわゆるドライシルバー方式において印刷製版用途に適した超硬調画像を作成する試みとしては以下のような報告例が知られている。米国特許第5464738号及び同5512411号には、還元剤としてスルホニルヒドラジド化合物を用いる事が記されている。また米国特許第5496695号及び同5536622号にはヒンダードフェノール化合物を還元剤に用いて、さらにある種の構造のヒドラジン化合物を硬調化剤に用いることが記されている。さらに、米国特許第5545515号にはヒンダードフェノール化合物を還元剤に用いて、アクリロニトリル化合物を超硬調化剤に用いることが記されている。しかしながら、これらの化合物を用いても現像に高い温度を必要としたり現像に要する時間が長くなるなど、改善すべき問題点が残されている。
ドライシルバーの還元剤としてはすでに種々知られている。特開平7-13295号、特開平7-5621号、米国特許3667958号、同5350669号等に記載されている。そのなかには複数の還元剤を併用すること、例えばポリヒドロキシベンゼン類とヒドロキシルアミン類の併用使用等の例が報告されている。しかしこれらの手法を用いても現在要求される性能を実現することは難しい。
また還元剤として電子吸引基で置換されたアミノ基を置換基として持つフェノール化合物(例えばスルホンアミドフェノール化合物)を用いる例についても既に報告されている。例えば特開昭49-80386号、特開平5-257227、あるいは特開平10-221806に報告されているように2,6-ジクロロ-4-ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp-ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール化合物を還元剤として単独で用いる方法などが知られている。ただしこれらの使用法では現像が遅く、上記のような現像の遅れに起因する画質の悪化を避けることはできない。またカブリが大きくなる傾向があり好ましくない。
熱現像感光材料における現像促進技術ついてはこれまでにいくつかの報告が為されている。例えば、米国特許第5,637,449号、同5,545,505号、同5,545,507号、同5,496,695号などが知られている。しかしながらこれらの方法を用いても現像促進の効果は満足すべき程度には達しておらず、依然として上記のような現像の遅れに起因する画質の悪化と言う問題は残っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの従来技術の問題点を解決することを課題とした。すなわち、本発明は熱現像条件の変動に対して安定な熱現像画像記録材料を提供することを解決すべき課題とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1) 支持体の少なくとも一方の同一面上に、(a)有機銀塩;(b)下記の(d)に記載した化合物を除く還元剤;(c)バインダー;並びに(d)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(1)で表される2つまたは3つの化合物が連結基で結合してなるビス体およびトリス体、および下記一般式(1)で表される2つ以上の化合物が高分子鎖に結合してなる高分子化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
【化1】
[式(1)において、R 1 、R 2 、R 3 、X 1 、X 2 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただしX 1 、X 2 の少なくとも一方は−NR 4 R 5 で表される基である。R 4 、R 5 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R 4 、R 5 の少なくとも一方は−C(=O)−R 6 もしくは−P(=O)(−R 7 )−R 8 で表される基である。R 6 は電子吸引性基が置換したアルキル基を表し、R 7 、R 8 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれる基である。これらの置換基はそれぞれ隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。]
(2)感光性ハロゲン化銀を有する熱現像感光記録材料である、(1)に記載の熱現像画像記録材料。
(3) 前記(b)の還元剤としてヒンダードフェノール化合物を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱現像画像記録材料。
(4)さらに超硬調化剤を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
(5)前記超硬調化剤として下記一般式(2)、(3)または(4)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物を用いることを特徴とする(4)に記載の熱現像画像記録材料。
【化2】
[式(2)においてR 9 、R 10 、R 11 は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基またはシリル基を表す。式(2)においてR 9 とZ、R 10 とR 11 、R 9 とR 10 、あるいはR 11 とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(3)においてR 12 は、置換基を表す。式(4)においてY 1 、Y 2 はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。式(4)においてY 1 とY 2 、あるいはAとBは 、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
(6)前記(b)の還元剤が、ビスフェノールであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
(7) 前記熱現像画像記録材料が、銀画像を形成するための熱現像画像記録材料であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の熱現像画像記録材料の実施態様および実施方法について詳細に説明する。
本発明の熱現像画像記録材料は、少なくとも一層の画像形成層を有するものであり、還元可能な銀塩である有機銀塩と還元剤とバインダーとを含有し、好ましくは感光性ハロゲン化銀を含み、更に好ましくは超硬調化剤を含む熱現像画像記録材料である。
このような熱現像画像記録材料において、式(1)で表されるフェノール化合物を補助現像剤として含有させることで、これらの化合物により現像を促進し、非画像部の熱カブリを上昇させることなく、かつ熱現像条件の変動に対して安定な画像を得ることができる。
【0008】
まず、本発明に用いられる式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R1、R2、R3が置換基を表すとき、置換基の例としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、ヨウ素原子)、直鎖、分岐または環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、tert−アミル、1,3−テトラメチルブチル、シクロヘキシル)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2-ブテニル、3-ペンテニル)、アルキニル基(例えば、プロパルギル、3-ペンチニル)、アリール基(例えば、フェニル、p-メチルフェニル、ナフチル)、アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(カルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイル)、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、2-ナフチルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(例えば、4-ピリジルオキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシ)、アミノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ)、ニトロ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基(例えば、1-イミダゾリル、モリホリル、3-ピラゾリル)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基、ウレイド基(例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイド)、ホスホリルアミノ基(例えば、ジエチルホスホリルアミノ)、イミド基(例えば、スクシンイミド、フタルイミド、トリフルオロメタンスルホンイミド)、メルカプト基、ジスルフィド基、スルホ基、スルフィノ基、スルホニルチオ基、チオスルホニル基、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、スルホニル基(例えば、メシル、トシル、フェニルスルホニル)、スルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニル)、ヘテロ環チオ基(例えば、2-イミダゾリルチオ)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル)、ホスフィニル基(例えば、ジエチルホスフィニル、ジフェニルホスフィニル)、ホスホニル基(例えばジエチルホスホニル、ジフェニルホスホニル)などである。
【0009】
R1、R2、R3で好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、イミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、メルカプト基、ジスルフィド基、スルホ基、スルフィノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ヘテロ環チオ基等がある。
R1、R2、R3でより好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヘテロ環基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、イミド基、カルバモイル基、メルカプト基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルファモイル基である。
R1、R2、R3で特に好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基である。
【0010】
X1、X2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。ただしX1、X2の少なくとも一方は−NR4R5で表される基である。R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R4、R5の少なくとも一方は−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基である。R6は電子吸引性基が置換したアルキル基を表し、R7、R8は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれる基である。これらの置換基はそれぞれ隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。X1、X2で水素原子、−NR4R5で表される基以外の置換基の例としてはR1、R2、R3で表される置換基の例と同じ範囲のものが挙げられる。
−NR4R5で表される基以外のX1、X2で好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、ニトロ基、ヘテロ環基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、メルカプト基、ジスルフィド基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、ヘテロ環チオ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基等がある。
−NR4R5で表される基以外のX1、X2でより好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルホ基、スルホニル基、スルファモイル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基である。
【0011】
−NR4R5で表される基以外のX1、X2で特に好ましいものは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基である。
X1、X2の少なくとも一方は−NR4R5で表される基である。R4、R5はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表すが、R4、R5の少なくとも一方は−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基である。R6は電子吸引性基が置換したアルキル基を表し、R7、R8は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれる基である。R4、R5で表される置換基の例としてはR1、R2、R3で表される置換基の例と同じ範囲のものが挙げられる。
【0012】
−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基以外のR4、R5で好ましいものは水素原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、イミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、スルホ基、スルフィノ基、スルホニル基、スルフィニル基などが挙げられる。
−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基以外のR4、R5でより好ましいものは水素原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、イミド基、カルバモイル基、スルホニル基である。
−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基以外のR4、R5で特に好ましいものは水素原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基である。
【0013】
R4、R5の少なくとも一方は−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8で表される基である。R6は電子吸引性基が置換したアルキル基を表す。ここでいう電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σp値が正の値である置換基であり、好ましくはσp値が0.2以上であり、上限としては1.0以下の置換基を表す。σp値が0.2以上の電子吸引性基の具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、2つ以上のハロゲン原子で少なくとも置換されたアルキル基、2つ以上のハロゲン原子で少なくとも置換されたアルコキシ基、2つ以上のハロゲン原子で少なくとも置換されたアリールオキシ基、2つ以上のハロゲン原子で少なくとも置換されたアルキルアミノ基、2つ以上のハロゲン原子で少なくとも置換されたアルキルチオ基、σp値が0.2以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。
【0014】
R6は好ましくは電子吸引性基が置換したメチル基であり、その具体例としては、クロロメチル基、ジクロロメチル基、パークロロアルキル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、パーブロモアルキル基、カルボキシル基置換パーフルオロアルキル基、アシルメチル基、カルボキシメチル基、アシルオキシメチル基、カルバモイルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルキルスルホニルメチル基、アリールスルホニルメチル基、シアノメチル基、ホスホノメチル基、ホスフィノメチル基、スルファモイルメチル基、スルホニルオキシメチル基、チオカルボニルメチル基、2,4,6−トリクロロフェニルメチル基、パーフルオロフェノキシ基、ヘテロ環置換メチル基などが挙げられる。R6としてより好ましくは、クロロメチル基、ジクロロメチル基、パークロロアルキル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、パーブロモアルキル基、カルボキシル基置換パーフルオロアルキル基、アシルメチル基、カルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルキルスルホニルメチル基、アリールスルホニルメチル基、シアノメチル基、スルファモイルメチル基などが挙げられる。R7、R8は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基から選ばれる基であり、好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0015】
式(1)で表される化合物の中でより好ましいものはR1、R2、R3が水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、t-ブチル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基を表し、X1、X2の一方が水素原子、ハロゲン原子、メチル基、トリフルオロメチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基より選ばれ、他方が−NR4R5で表される基(この時、R4、R5の一方は水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基より選ばれ、他方は−C(=O)−R6もしくは−P(=O)(−R7)−R8を表す。この時、R6はパークロロアルキル基、パーフルオロアルキル基、パーブロモアルキル基、カルボキシル基置換パーフルオロアルキル基、アシルメチル基、カルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルキルスルホニルメチル基、アリールスルホニルメチル基、シアノメチル基、スルファモイルメチル基より選ばれ、R7、R8はアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基より選ばれる)の時である。
これらの置換基はさらに上記に記したような置換基で置換されていても良い。またこれらの置換基が酸性度の高い水素原子を持つものであれば、そのプロトンが解離して塩を形成していても良い。その対カチオンとしては、金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンが用いられる。このように活性水素を解離させた状態は、化合物の現像時における揮散性が問題となるケースには有効な対処法となりうる。
一般式(1)で表される化合物1分子中に該フェノール構造が1つだけ存在する場合には、置換基の総炭素数は好ましくは1〜200個、より好ましくは1〜150個、さらに好ましくは1〜100個である。
【0016】
本発明において(d)の化合物として使用しうるものは、一般式(1)で表される化合物そのものだけでなく、一般式(1)で表される2つまたは3つの化合物が連結基で結合してなるビス体およびトリス体、および一般式(1)で表される2つ以上の化合物が高分子鎖に結合してなる高分子化合物も含まれる。これらのように分子量を大きくすれば、化合物の現像時における揮散性が問題となるケースには有効な対処法となりうる。
ビス体およびトリス体は、一般式(1)で表される2つまたは3つの化合物が連結基で結合されている構造を有する。このとき2つまたは3つの一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。連結基は、−O−、−S−、−N(Rn)−、−CO−、−C(=S)−、−SO2−、−SO−、−P(O)−、アルキレン基、アリーレン基(前記Rnは水素原子、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す)などの単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基である。なお、トリス体には、1つの連結基によって一般式(1)で表される3つの化合物が放射状に連結されている化合物も含まれる。
上記高分子化合物には、一般式(1)で表される2つ以上の化合物が高分子鎖に結合してなるものであって、本発明の所期の効果を過度に阻害しない構造を有するものが広く含まれる。高分子鎖に結合する一般式(1)の化合物はすべて同一であっても、異なっていてもよい。また、高分子鎖に結合する一般式(1)の化合物は上記ビス体またはトリス体であってもよい。高分子化合物全体の平均分子量としては500000以下のものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明に用いられる式(1)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。こうした吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基が挙げられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる式(1)で表される化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
本発明に用いられる式(1)で表される化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平3−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独国特許4006032号等に記載の化合物が挙げられる。
ここまで説明した式(1)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示す。ただし本発明で使用する化合物はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
【表10】
【0029】
【表11】
【0030】
【表12】
【0031】
【表13】
【0032】
【表14】
【0033】
本発明で用いる式(1)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することができる。個々の化合物によってその合成法は最適なものが選ばれるため、一般的となりうる合成法を挙げることができないが、その中でも有用な合成ルートの例を後述する《製造例》に示す。
式(1)で表される化合物の使用量は、用いる還元剤に対して0.01モル%〜100モル%、好ましくは0.1モル%〜50モル%、より好ましくは1モル%〜20モル%である。
式(1)で表される化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
【0034】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることができる。
本発明で用いる式(1)で表される化合物は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
【0035】
本発明の熱現像画像記録材料は好ましくは超硬調化剤を含む。超硬調化剤の種類は特に限定されないが、好ましくは、下記式(2)〜式(4)で表される置換アルケン誘導体、置換イソオキサゾール誘導体、および特定のアセタール化合物を挙げることができる。以下、式(2)、式(3)および式(4)について説明する。
式(2)においてR9、R10、R11は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基またはシリル基を表す。式(2)においてR9とZ、R10とR11、R9とR10、あるいはR11とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(3)においてR12は置換基を表す。式(4)においてY1、Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環オキシ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。式(4)においてY1とY2、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0036】
式(2)で表される化合物について詳しく説明する。
式(2)においてR9、R10、R11は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、Zは電子吸引性基またはシリル基を表す。式(2)においてR9とZ、R10とR11、R9とR10、あるいはR11とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
R9、R10、R11が置換基を表す時、置換基の例としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(N−置換の含窒素ヘテロ環基を含む)、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基またはその塩、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、アシルチオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0037】
式(2)においてZで表される電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルカンアミド基、スルホンアミド基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、ヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子吸引性基で置換されたアリール基等である。ここにヘテロ環基としては、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基で、例えばピリジル基、キノリル基、キノキサリニル基、ピラジニル基、ベンゾトリアゾリル基、イミダゾリル基、ベンツイミダゾリル基、ヒダントイン−1−イル基、スクシンイミド基、フタルイミド基等がその例として挙げられる。
【0038】
式(2)においてZで表される電子吸引性基は、さらに置換基を有していてもよく、その置換基としては、式(2)のR9、R10、R11が置換基を表す時に有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。
式(2)においてR9とZ、R10とR11、R9とR10、あるいはR11とZは、互いに結合して環状構造を形成していてもよいが、この時形成される環状構造とは、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環である。
【0039】
次に式(2)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。
式(2)においてZで表されるシリル基として好ましくは、具体的にトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリメチルシリルジメチルシリル基等である。
式(2)においてZで表される電子吸引性基として好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、さらに好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基またはカルバモイル基である。
【0040】
式(2)においてZで表される基は、電子吸引性基がより好ましい。
式(2)においてR9、R10、R11で表される置換基として好ましくは、総炭素数0〜30の基で、具体的には上述の式(2)のZで表される電子吸引性基と同義の基、およびアルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、または置換もしくは無置換のアリール基等が挙げられる。
さらに式(2)においてR9は、好ましくは電子吸引性基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、水素原子またはシリル基である。
【0041】
R9が電子吸引性基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、スルファモイル基、カルボキシ基(またはその塩)、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基が好ましい。特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基である。
R9がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数6〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、任意の置換基が挙げられるが、中でも電子吸引性の置換基が好ましい。
式(2)においてR9は、より好ましくは、電子吸引性基またはアリール基を表す時である。
【0042】
式(2)においてR10およびR11で表される置換基として好ましくは、具体的に、上述の式(2)のZで表される電子吸引性基と同義の基、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、置換もしくは無置換のフェニル基等である。
式(2)においてR10およびR11は、さらに好ましくは、どちらか一方が水素原子で、他方が置換基を表す時である。その置換基として好ましくは、アルキル基、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基(特にパーフルオロアルカンアミド基)、スルホンアミド基、置換もしくは無置換のフェニル基、またはヘテロ環基等であり、さらに好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基であり、特に好ましくはヒドロキシ基(またはその塩)、アルコキシ基、またはヘテロ環基である。
【0043】
式(2)においてZとR9、あるいはまたR10とR11とが環状構造を形成する場合もまた好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環もしくは非芳香族のヘテロ環であり、好ましくは5員〜7員の環状構造で、置換基を含めたその総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。
式(2)で表される化合物の中で、より好ましいものの1つは、Zがシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミノ基、またはカルバモイル基を表し、R9が電子吸引性基またはアリール基を表し、R10またはR11のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。
さらにまた式(2)で表される化合物の中で特に好ましいものの1つは、ZとR9とが非芳香族の5員〜7員の環状構造を形成していて、R10またはR11のどちらか一方が水素原子で、他方がヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、またはヘテロ環基を表す化合物である。この時、R9と共に非芳香族の環状構造を形成するZとしては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基等が好ましく、またR9としては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基等が好ましい。
【0044】
次に式(3)で表される化合物について説明する。
式(3)においてR12で表される置換基としては、式(2)のR9〜R11の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。
式(3)においてR12で表される置換基は、好ましくは電子吸引性基またはアリール基である。R12が電子吸引性基を表す時、好ましくは、総炭素数0〜30の以下の基、即ち、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、ホスホリル基、イミノ基、または飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、さらにシアノ基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環基が好ましい。特に好ましくはシアノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはヘテロ環基である。
R12がアリール基を表す時、好ましくは総炭素数0〜30の、置換もしくは無置換のフェニル基であり、置換基としては、式(2)のR9、R10、R11が置換基を表す時にその置換基として説明したものと同じものが挙げられる。
式(3)においてR12は、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ヘテロ環基、または置換もしくは無置換のフェニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ヘテロ環基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0045】
次に式(4)で表される化合物について詳しく説明する。
式(4)においてY1、Y2はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、A、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環チオ基、ヘテロ環オキシ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Y1とY2、あるいはAとBは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
式(4)においてY1、Y2で表される置換基としては、式(2)のR9〜R11の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。具体的には、アルキル基(パーフルオロアルキル基、トリクロロメチル基等を含む)、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、ホルミル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルバモイル基、チオカルボニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、ヒドロキシ基(またはその塩)、メルカプト基(またはその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、シリル基等が挙げられる。
【0046】
これらの基はさらに置換基を有していてもよい。またY1とY2は、互いに結合して環状構造を形成していてもよく、この場合に形成される環状構造としては、非芳香族の炭素環でも、非芳香族のヘテロ環であってもよい。
式(4)においてY1、Y2で表される置換基は、好ましくは総炭素数1〜40の、より好ましくは総炭素数1〜30の基であり、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトロ基、パーフルオロアルキル基、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、ヘテロ環基、アルキルチオ基、アルコキシ基、またはアリール基等が挙げられる。
【0047】
式(4)においてY1、Y2は、より好ましくはシアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシル基、ホルミル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、トリフルオロメチル基、ヘテロ環基、または置換されたフェニル基等であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルチオ基、アシルアミノ基、チオカルボニル基、ホルミル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ヘテロ環基、または任意の電子吸引性基で置換されたフェニル基等である。
Y1とY2が、互いに結合して非芳香族の炭素環、または非芳香族のヘテロ環を形成している場合もまた好ましい。この時、形成される環状構造は5員〜7員環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。環状構造を形成するY1およびY2としては、アシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基-、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基等が好ましい。
【0048】
式(4)においてA、Bはそれぞれ独立に、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アニリノ基、ヘテロ環チオ基、ヘテロ環オキシ基、またはヘテロ環アミノ基を表し、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
式(4)においてA、Bで表される基は、好ましくは総炭素数1〜40の、より好ましくは総炭素数1〜30の基であり、さらに置換基を有していてもよい。式(4)においてA、Bは、これらが互いに結合して環状構造を形成している場合がより好ましい。この時形成される環状構造は5員〜7員環の非芳香族のヘテロ環が好ましく、その総炭素数は1〜40、さらには3〜30が好ましい。この場合に、A,Bが連結した例(−A−B−)を挙げれば、例えば−O−(CH2)2−O−、−O−(CH2)3−O−、−S−(CH2)2−S−、−S−(CH2)3−S−、−S−Ph−S−、−N(CH3)−(CH2)2−O−、−N(CH3)−(CH2)2−S−、−O−(CH2)2−S−、−O−(CH2)3−S−、−N(CH3)−Ph−O−、−N(CH3)−Ph−S−、−N(Ph)−(CH2)2−S−等である。
【0049】
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、ハロゲン化銀に対して吸着する吸着性の基が組み込まれていてもよい。こうした吸着基としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオ尿素基、チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201048号、同59−201049号、特開昭61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基が挙げられる。またこれらハロゲン化銀への吸着基は、プレカーサー化されていてもよい。その様なプレカーサーとしては、特開平2−285344号に記載された基が挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマーが組み込まれているものでもよい。特にバラスト基が組み込まれているものは本発明の好ましい例の1つである。バラスト基は8以上の炭素数を有する、写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、その中にカチオン性基(具体的には、4級のアンモニオ基を含む基、または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基等)、エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、あるいは塩基により解離しうる解離性基(カルボキシ基、スルホ基、アシルスルファモイル基、カルバモイルスルファモイル基等)が含まれていてもよい。特にエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基の繰り返し単位を含む基、あるいは(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基が含まれているものは、本発明の好ましい例の1つである。これらの基の具体例としては、例えば特開平7−234471号、特開平5−333466号、特開平6−19032号、特開平6−19031号、特開平5−45761号、米国特許4994365号、米国特許4988604号、特開平3−259240号、特開平7−5610号、特開平7−244348号、独国特許4006032号等に記載の化合物が挙げられる。
次に本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、式(2)〜式(4)で表される化合物の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0055】
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
式(2)〜式(4)で表される化合物の添加量は、銀1モルに対し1×10-6〜1モルが好ましく、1×10-5〜5×10-1モルがより好ましく、2×10-5〜2×10-1モルが最も好ましい。
式(2)〜式(4)で表される化合物は公知の方法により容易に合成することができるが、例えば、米国特許5545515号、米国特許5635339号、米国特許5654130号、国際公開WO−97/34196号、あるいは特願平9−354107号、特願平9−309813号、特願平9−272002号に記載の方法を参考に合成することができる。
【0056】
本発明に用いられる式(2)〜式(4)で表される化合物は、1種のみ用いても、2種以上を併用しても良い。またヒドラジン誘導体あるいは4級窒素原子を含む化合物から選ばれるものを併用使用してもよい。ヒドラジン誘導体あるいは4級窒素原子を含む化合物については特開平10-221806号に記載されている化合物等を用いることができる。これらの化合物を併用する場合には式(2)〜式(4)で表される化合物に対して100モル%以下の量を使用する。好ましくは50モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。
これらヒドラジン誘導体あるいは4級窒素原子を含む化合物は、水または適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体あるいは4級窒素原子を含む化合物の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
これらヒドラジン誘導体あるいは4級窒素原子を含む化合物は、支持体に対して画像形成層側の層、即ち画像形成層あるいはこの層側の他のどの層に添加してもよいが、画像形成層あるいはそれに隣接する層に添加することが好ましい。
【0057】
また、本発明は超硬調画像形成のために、前記の超硬調化剤とともに硬調化促進剤を併用することができる。例えば、米国特許第5,545,505号に記載のアミン化合物、具体的にはAM-1〜AM-5、同5,545,507号に記載のヒドロキサム酸類、具体的にはHA-1〜HA-11、同5,558,983号に記載のヒドラジン化合物、具体的にはCA-1〜CA-6、特開平9−297368号に記載のオニュ−ム塩類、具体的にはA-1〜A-42、B-1〜B-27、C-1〜C-14などを用いることができる。前記の超硬調化剤、およびこれらの硬調化促進剤の合成方法、添加方法、添加量等は、それぞれの前記引用特許に記載されているように行うことができる。
【0058】
本発明の熱現像画像記録材料には有機銀塩のための還元剤を含む。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤や下記に示すような熱現像に用いられる還元剤が有用である。還元剤は、画像形成層を有する面の銀1モルに対して5〜50モル%含まれることが好ましく、10〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤の添加層は画像形成層を有する面のいかなる層でも良い。画像形成層以外の層に添加する場合は銀1モルに対して10〜50モル%と多めに使用することが好ましい。また、還元剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
【0059】
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の還元剤が特開昭46-6074号、同47-1238号、同47-33621号、同49-46427号、同49-115540号、同50-14334号、同50-36110号、同50-147711号、同51-32632号、同51-1023721号、同51-32324号、同51-51933号、同52-84727号、同55-108654号、同56-146133号、同57-82828号、同57-82829号、特開平6-3793号、米国特許3,667,9586号、同3,679,426号、同3,751,252号、同3,751,255号、同3,761,270号、同3,782,949号、同3,839,048号、同3,928,686号、同5,464,738号、独国特許2321328号、欧州特許692732号などに開示されている。例えば、フェニルアミドオキシム、2-チエニルアミドオキシムおよびp-フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2'-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオニル-β-フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル)ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル-4-メチルフェニルヒドラジンの組合せなど);フェニルヒドロキサム酸、p-ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ-アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;エチル-α-シアノ-2-メチルフェニルアセテート、エチル-α-シアノフェニルアセテートなどのα-シアノフェニル酢酸誘導体;2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、6,6'-ジブロモ-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチルおよびビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタンに例示されるようなビス-β-ナフトール;ビス-β-ナフトールと1,3-ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2',4'-ジヒドロキシアセトフェノンなど)の組合せ;3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロンなどの、5-ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2-フェニルインダン-1,3-ジオンなど;2,2-ジメチル-7-t-ブチル-6-ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6-ジメトキシ-3,5-ジカルボエトキシ-1,4-ジヒドロピリジンなどの1,4-ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4-エチリデン-ビス(2-t-ブチル-6-メチルフェノール)、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサンおよび2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなど);アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1-アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど);ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3-ピラゾリドンおよびある種のインダン-1,3-ジオン;クロマノール(トコフェロールなど)などがある。
【0060】
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物と併用する還元剤としては、フェノール化合物でそのベンゼン環上に一つだけ水酸基を持ち、水酸基のオルト位に少なくとも一つの置換基を有する化合物(所謂ヒンダードフェノール化合物)が好ましく用いられる。具体例としては米国特許5496695号、特開平9-274274、特開平9-304876等に記載されている化合物群が挙げられる。
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物と併用する還元剤としては次のような化合物がより好ましく使用される。例えば2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、6,6'-ジブロモ-2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビナフチル、ビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン、4,4'-エチリデンビス(2-メチル-1-ナフトール)、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4'-エチリデン-ビス(2-t-ブチル-6-メチルフェノール)、4,4'-ベンジリデン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4'-ベンジリデンビス(2-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジメトキシ-4-メチルフェノールなどが挙げられる。
【0061】
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物と併用する還元剤として特に好ましくはビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン、1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサンなどが用いられる。
本発明で用いる還元剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
【0062】
ここに示す熱現像画像記録材料においてはカブリ防止剤が用いられる。熱現像写真用ハロゲン化銀感光材料のカブリ低減に向け多くの検討がなされており、例えば、米国特許第3,589,903号には水銀塩が開示されている。その他に、米国特許第4,152,160号にはベンゼン酸およびフタル酸等のカルボン酸、米国特許第4,784,939号にはベンゾイルベンゼン酸化合物、米国特許第4,569,906号にはインダンまたはテトラリンカルボン酸、米国特許第4,820,617号にはジカルボン酸、米国特許第4,626,500号にはヘテロ芳香族カルボン酸が開示されている。米国特許第4,546,075号、同4,756,999号、同4,452,885号、同3,874,946号および同3,955,982号にはハロゲン化化合物が開示されている。米国特許第5,028,523号にはハロゲン分子またはヘテロ原子環と化合したハロゲン原子が開示されている。米国特許第4,103,312号およびGB1502670号にはパラジウム化合物、米国特許第4,128,428号には鉄類の金属、米国特許第4,123,374号、同4,129,557号および同4,125,430号には置換トリアゾール類、米国特許第4,213,784号、同4,245,033号および特開昭51-26019号には硫黄化合物、米国特許第4,002,479号にはチオウラシル類、特開昭50-123331号にはスルフィン酸、米国特許第4,125,403号、同4,152,160号、同4,307,187号にはチオスルホン酸の金属塩、特開昭53-20923号および特開昭53-19825号にはチオスルホン酸の金属塩とスルフィン酸の併用、特公昭62-50810号、特開平7-209797号および特開平9-43760号にはチオスルホン酸エステル類が開示されている。また、特開昭51−42529号、特公昭63−37368号にジスルフィド化合物が開示されている。
特公昭54−165号、EP-605981A号、同631176A号、US4,546,075号、米国特許第4、756、999号、同4、452、885号、同3、874、946号および同3、955、982号にはポリハロゲン化化合物が開示されている。特開平10−197989号には、ポリハロゲン化化合物と特定のカルボン酸誘導体を併用し、カブリを抑制する記載が開示されている。
また、特開昭51−26019号、同57−207244号、同60−207140号、米国特許第2910377号、米国特許第3074809号、特開平2−251838号にはサリチル酸あるいはその誘導体が開示されている。
【0063】
ここではポリハロゲン化化合物、サリチル酸誘導体、またはチオスルホン酸誘導体がカブリ防止剤として用いられる。これらの化合物は単独で用いても良いし、同種類の化合物を複数併用して用いてもよいし、ポリハロゲン化化合物とサリチル酸誘導体というように別の種類の化合物を組み合わせて用いてもよい。
カブリ防止剤として用いられる化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、サンドグラインダーミル、マントンゴーリン、マイクロフルイダイザーあるいは超音波によって分散し用いることができる。
次に本発明に用いられるカブリ防止剤の具体例を以下に示す。ただし、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。
【0064】
【化8】
【0065】
【化9】
【0066】
【化10】
【0067】
熱現像画像記録材料は還元可能な銀塩、すなわち本発明においては有機銀塩を含む。本発明に還元可能な銀塩として用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0〜10.0の範囲の錯安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5〜70重量%を構成することができる。好ましい有機銀塩はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されることはない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0068】
メルカプト基またはチオン基を含む化合物の銀塩およびこれらの誘導体を使用することもできる。これらの化合物の好ましい例としては、3-メルカプト-4-フェニル-1,2,4-トリアゾールの銀塩、2-メルカプトベンズイミダゾールの銀塩、2-メルカプト-5-アミノチアジアゾールの銀塩、2-(エチルグリコールアミド)ベンゾチアゾールの銀塩、S-アルキルチオグリコール酸(ここでアルキル基の炭素数は12〜22である)の銀塩などのチオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩などのジチオカルボン酸の銀塩、チオアミドの銀塩、5-カルボキシル-1-メチル-2-フェニル-4-チオピリジンの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2-メルカプトベンズオキサゾールの銀塩、米国特許第4,123,274号に記載の銀塩、例えば3-アミノ-5-ベンジルチオ-1,2,4-チアゾールの銀塩などの1,2,4-メルカプトチアゾール誘導体の銀塩、米国特許第3,301,678号に記載の3-(3-カルボキシエチル)-4-メチル-4-チアゾリン-2-チオンの銀塩などのチオン化合物の銀塩を含む。さらに、イミノ基を含む化合物も使用することができる。これらの化合物の好ましい例としては、ベンゾトリアゾールの銀塩およびそれらの誘導体、例えばメチルベンゾトリアゾール銀などのベンゾトリアゾールの銀塩、5-クロロベンゾトリアゾール銀などのハロゲン置換ベンゾトリアゾールの銀塩、米国特許第4,220,709号に記載のような1,2,4-トリアゾールまたは1-H-テトラゾールの銀塩、イミダゾールおよびイミダゾール誘導体の銀塩などを含む。例えば、米国特許第4,761,361号および同第4,775,613号に記載のような種々の銀アセチリド化合物をも使用することもできる。
【0069】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、短軸と長軸を有する針状結晶が好ましい。本発明においては短軸0.01μm以上0.20μm以下、長軸0.10μm以上5.0μm以下が好ましく、短軸0.01μm以上0.15μm以下、長軸0.10μm以上4.0μm以下がより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の百分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。
【0070】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、好ましくは脱塩をすることができる。脱塩を行う方法としては特に制限はなく公知の方法を用いることができるが、遠心濾過、吸引濾過、限外濾過、凝集法によるフロック形成水洗等の公知の濾過方法を好ましく用いることができる。
本発明では、高S/Nで、粒子サイズが小さく、凝集のない有機銀塩固体分散物を得る目的で、画像形成媒体である有機銀塩を含み、かつ感光性銀塩を実質的に含まない水分散液を高速流に変換した後、圧力降下させる分散法を用いることが好ましい。
そして、このような工程を経た後に、感光性銀塩水溶液と混合して感光性画像形成媒体塗布液を製造する。このような塗布液を用いて熱現像感光材料を作製するとヘイズが低く、低カブリで高感度の熱現像感光材料が得られる。これに対し、高圧、高速流に変換して分散する時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下しやすくなる。また、分散媒として水ではなく、有機溶剤を用いると、ヘイズが高くなり、カブリが上昇し、感度が低下しやすくなる。一方、感光性銀塩水溶液を混合する方法にかえて、分散液中の有機銀塩の一部を感光性銀塩に変換するコンバージョン法を用いると感度が低下しやすくなる。上記において、高圧、高速化に変換して分散される水分散液は、実質的に感光性銀塩を含まないものであり、その含有量は非感光性の有機銀塩に対して0.1モル%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0071】
本発明において、上記のような分散法を実施するのに用いられる固体分散装置およびその技術については、例えば『分散系レオロジーと分散化技術』(梶内俊夫、薄井洋基 著、1991、信山社出版(株)、p357〜p403)、『化学工学の進歩第24集』(社団法人 化学工学会東海支部 編、1990、槙書店、p184〜p185)、等に詳しいが、本発明での分散法は、少なくとも有機銀塩を含む水分散物を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させ、この後に分散液に急激な圧力低下を生じさせることにより微細な分散を行う方法である。
本発明が関連する高圧ホモジナイザーについては、一般には、(a)分散質が狭間隙を高圧、高速で通過する際に生じる『剪断力』、(b)分散質が高圧下から常圧に解放される際に生じる『キャビテーション力』、等の分散力によって微細な粒子への分散が行われると考えられている。この種の分散装置としては、古くはゴーリンホモジナイザーが挙げられるが、この装置では高圧で送られた被分散液が円柱面上の狭い間隙で、高速流に変換され、その勢いで周囲の壁面に衝突し、その衝撃力で乳化・分散が行われる。使用圧力は一般には100〜600kg/cm2、流速は数m〜30m/秒の範囲であり、分散効率を上げるために高流速部を鋸刃状にし衝突回数を増やすなどの工夫を施したものも考案されている。これに対して、近年更に高圧、高流速での分散が可能となる装置が開発されてきており、その代表例としてはマイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社)、ナノマイザー(特殊機化工業(株))などが挙げられる。
【0072】
本発明に適した分散装置としては、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社製マイクロフルイダイザーM−110S−EH(G10Zインターラクションチャンバー付き)、M−110Y(H10Zインターラクションチャンバー付き)、M−140K(G10Zインターラクションチャンバー付き)、HC−5000(L30ZまたはH230Zインターラクションチャンバー付き),HC−8000(E230ZまたはL30Zインターラクションチャンバー付き)等が挙げられる。
これらの装置を用い、少なくとも有機銀塩を含む水分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させることにより所望の圧力を印加し、この後に配管内の圧力を大気圧に急速に戻す等の方法で分散液に急激な圧力降下を生じさせることにより本発明に最適な有機銀塩分散物を得ることが可能である。
【0073】
有機銀塩分散においては、流速、圧力降下時の差圧と処理回数の調節によって所望の粒子サイズに分散することが可能であるが、写真特性と粒子サイズの点から、流速が200m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が900〜3000kg/cm2の範囲が好ましく、流速が300m/秒〜600m/秒、圧力降下時の差圧が1500〜3000kg/cm2の範囲であることが更に好ましい。分散処理回数は必要に応じて選択でき、通常は1回〜10回の処理回数が選ばれるが、生産性の点からは1回〜3回程度の処理回数が選ばれる。高圧下でこのような水分散液を高温にすることは、分散性、写真特性の点から好ましくなく、90℃を越えるような高温では粒子サイズが大きくなりやすくなると共に、カブリが高くなる傾向がある。従って、本発明では前記の高圧、高流速に変換する前の工程もしくは、圧力降下させた後の工程、あるいはこれらの両工程に冷却工程を含み、このような水分散の温度が冷却工程により5〜90℃の範囲に保たれていることが好ましく、更に好ましくは5〜80℃の範囲、特に5〜65℃の範囲に保たれていることが好ましい。特に、1500〜3000kg/cm2範囲の高圧の分散時には前記の冷却工程を設置することが有効である。冷却器は、その所要熱交換量に応じて、二重管や二重管にスタチックミキサーを使用したもの、多管式熱交換器、蛇管式熱交換器等を適宜選択することができる。また、熱交換の効率を上げるために、使用圧力を考慮して、管の太さ、肉厚や材質など好適なものを選べばよい。冷却器に使用する冷媒は、熱交換量から、20℃の井水や冷凍機で処理した5〜10℃の冷水、また必要に応じて-30℃のエチレングリコール/水等の冷媒を使用することもできる。
【0074】
分散操作では、水性溶媒可溶な分散剤(分散助剤)の存在下で有機銀塩を分散することが好ましい。分散助剤としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、マレイン酸モノエステル共重合体、アクリロメチルプロパンスルホン酸共重合体などの合成アニオンポリマー、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルセルロースなどの半合成アニオンポリマー、アルギン酸、ペクチン酸などのアニオン性ポリマー、特開平7-350753号に記載の化合物、あるいは公知のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤やその他のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の公知のポリマー、あるいはゼラチン等の自然界に存在する高分子化合物を適宜選択して用いることができるが、ポリビニルアルコール類、水溶性のセルロース誘導体が特に好ましい。
【0075】
分散助剤は、分散前に有機銀塩の粉末またはウェットケーキ状態の有機銀塩と混合し、スラリーとして分散機に送り込むのは一般的な方法であるが、予め有機銀塩と混ぜ合わせた状態で熱処理や溶媒による処理を施して有機銀塩粉末またはウェットケーキとしても良い。分散前後または分散中に適当なpH調整剤によりpHコントロールしても良い。
機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させても良い。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用しても良く、通常有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
調製された分散物は、保存時の微粒子の沈降を抑える目的で撹拌しながら保存したり、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状にした状態)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で防腐剤を添加することもできる。
【0076】
本発明において有機銀塩は所望の量で使用できるが、記録材料1m2当たりの塗布量で示して、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
本発明の熱現像画像記録材料を光熱記録材料として用いる場合には、さらに感光性ハロゲン化銀を用いることができる。この場合、用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0077】
本発明における感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができる。本発明で用いることのできる具体的な方法としては、調製された有機銀塩中にハロゲン含有化合物を添加することにより有機銀塩の銀の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する方法、ゼラチンあるいは他のポリマー溶液の中に銀供給化合物およびハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀粒子を調製し有機銀塩と混合する方法を用いることができる。本発明において好ましくは後者の方法を用いることができる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm以上0.15μm以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0078】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1〜2:1、より好ましくは50:1〜3:1がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0079】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表の第VII族あるいは第VIII族(第7族〜第10族)の金属または金属錯体を含有することが好ましい。周期律表の第VII族あるいは第VIII族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくはロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し10-9モル〜10-2モルの範囲が好ましく、10-8モル〜10-4モルの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7-225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。
本発明に好ましく用いられるロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、またはロジウム錯塩で配位子としてハロゲン、アミン類、オキザラト等を持つもの、例えば、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム(III)錯塩、テトラクロロジアコロジウム(III)錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアンミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩等が挙げられる。これらのロジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ化水素酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0080】
これらのロジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-8モル〜5×10-6モルの範囲が好ましく、特に好ましくは5×10-8モル〜1×10-6モルである。
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
本発明に好ましく用いられるレニウム、ルテニウム、オスミウムは特開昭63-2042号、特開平1-285941号、同2-20852号、同2-20855号等に記載された水溶性錯塩の形で添加される。特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
[ML6]n-
ここでMはRu、Re、またはOsを表し、Lは配位子を表し、nは0、1、2、3または4を表す。
この場合、対イオンは重要性を持たず、アンモニウムもしくはアルカリ金属イオンが用いられる。
【0081】
また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
[ReCl6]3- [ReBr6]3- [ReCl5(NO)]2-
[Re(NS)Br5]2- [Re(NO)(CN)5]2- [Re(O)2(CN)4]3-
[RuCl6]3- [RuCl4(H2O)2]- [RuCl5(H2O)]2-
[RuCl5(NO)]2- [RuBr5(NS)]2-
[Ru(CO)3Cl3]2- [Ru(CO)Cl5]2- [Ru(CO)Br5]2-
[OsCl6]3- [OsCl5(NO)]2- [Os(NO)(CN)5]2-
[Os(NS)Br5]2- [Os(O)2(CN)4]4-
【0082】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-9モル〜1×10-5モルの範囲が好ましく、特に好ましくは1×10-8モル〜1×10-6モルである。
これらの化合物の添加は、ハロゲン化銀乳剤粒子の製造時および乳剤を塗布する前の各段階において適宜行うことができるが、特に乳剤形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましい。
これらの化合物をハロゲン化銀の粒子形成中に添加してハロゲン化銀粒子中に組み込むには、金属錯体の粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性塩または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、あるいは粒子形成中に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入する方法などがある。特に粉末もしくはNaCl、KClと一緒に溶解した水溶液を、水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0083】
粒子表面に添加するには、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属錯体の水溶液を反応容器に投入することもできる。
本発明に好ましく用いられるイリジウム化合物としては種々のものを使用できるが、例えばヘキサクロロイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、トリオキザラトイリジウム、ヘキサシアノイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。これらのイリジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0084】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に、コバルト、鉄、ニッケル、クロム、パラジウム、白金、金、タリウム、銅、鉛、等の金属原子を含有してもよい。コバルト、鉄、クロム、さらにルテニウムの化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオン、ヘキサシアノクロム酸イオン、ヘキサシアノルテニウム酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体は均一に含有させても、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
上記金属はハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-4モルが好ましい。また、上記金属を含有させるには単塩、複塩、または錯塩の形の金属塩にして粒子調製時に添加することができる。
【0085】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤は化学増感されることが好ましい。化学増感の方法としては、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、貴金属増感法などの知られている方法を用いることができ、単独または組み合わせて用いられる。組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。
本発明に用いられる硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化するが、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モルであり、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0086】
本発明に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。不安定型セレン化合物としては特公昭44-15748号、同43-13489号、特開平4-25832号、同4-109240号、同4-324855号等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4-324855号中の一般式(VIII)および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
本発明に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成させる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5-313284号に記載の方法で試験することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P-Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。具体的には、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、同第1,396,696号、カナダ特許第800,958号、特開平4-204640号、特開平4−271341号、同4-333043号、同5-303157号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.) 635(1980),ibid 1102(1979),ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.) 1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Serenium and Tellunium Compounds),Vol.1(1986)、同Vol.2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5-313284号中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物が好ましい。
【0087】
本発明で用いられるセレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
本発明に用いられる貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられるが、特に金増感が好ましい。本発明に用いられる金増感剤としては具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。
【0088】
本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許EP293,917号に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0089】
本発明の熱現像画像記録材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。
感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0090】
画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと光学濃度が高くなることがある。また、色調剤は黒色銀画像を形成させる上でも有利になることがある。色調剤は画像形成層を有する面に銀1モル当たりの0.1〜50%(モル)の量含まれることが好ましく、0.5〜20%(モル)含まれることがさらに好ましい。また、色調剤は現像時のみ有効に機能を持つように誘導化されたいわゆるプレカーサーであってもよい。
有機銀塩を利用した熱現像画像記録材料においては広範囲の色調剤が特開昭46-6077号、同47-10282号、同49-5019号、同49-5020号、同49-91215号、同49-91215号、同50-2524号、同50-32927号、同50-67132号、同50-67641号、同50-114217号、同51-3223号、同51-27923号、同52-14788号、同52-99813号、同53-1020号、同53-76020号、同54-156524号、同54-156525号、同61-183642号、特開平4-56848号、特公昭49-10727号、同54-20333号、米国特許3,080,254号、同3,446,648号、同3,782,941号、同4,123,282号、同4,510,236号、英国特許1380795号、ベルギー特許841910号などに開示されている。色調剤の例は、フタルイミドおよびN-ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン-5-オン、ならびにキナゾリノン、3-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、1-フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4-チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N-ヒドロキシ-1,8-ナフタルイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート);3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2,4-ジメルカプトピリミジン、3-メルカプト-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾールおよび2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N-(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N-ジメチルアミノメチル)フタルイミドおよびN,N-(ジメチルアミノメチル)-ナフタレン-2,3-ジカルボキシイミド);ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N'-ヘキサメチレンビス(1-カルバモイル-3,5-ジメチルピラゾール)、1,8-(3,6-ジアザオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)および2-トリブロモメチルスルホニル)-(ベンゾチアゾール));ならびに3-エチル-5[(3-エチル-2-ベンゾチアゾリニリデン)-1-メチルエチリデン]-2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4-(1-ナフチル)フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノンおよび2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体(例えば、4-(1-ナフチル)フタラジン、6-クロロフタラジン、5,7-ジメトキシフタラジン、6-iso-ブチルフタラジン、6-tert-ブチルフタラジン、5,7-ジメチルフタラジン、および2,3-ジヒドロフタラジンなどの誘導体)もしくは金属塩;フタラジンおよびその誘導体とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III)酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III)酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオン、8-メチル-1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンおよび6-ニトロ-1,3-ベンズオキサジン-2,4-ジオンなどのベンズオキサジン-2,4-ジオン;ピリミジンおよび不斉-トリアジン(例えば、2,4-ジヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシ-4-アミノピリミジンなど)、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6-ジメルカプト-1,4-ジフェニル-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン、および1,4-ジ(o-クロロフェニル)-3,6-ジメルカプト-1H,4H-2,3a,5,6a-テトラアザペンタレン)などがある。
【0091】
本発明で用いる色調剤は、溶液、粉末、固体微粒子分散物などいかなる方法で添加してもよい。固体微粒子分散は公知の微細化手段(例えば、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミルなど)で行われる。また、固体微粒子分散する際に分散助剤を用いてもよい。
本発明の熱現像画像記録材料における画像形成層(感光性層、乳剤層)のバインダーとしては、よく知られている天然または合成樹脂、例えば、ゼラチン、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートなどから任意のものを選択することができる。当然ながら、コポリマーおよびターポリマーも含まれる。好ましいポリマーは、ポリビニルブチラール、ブチルエチルセルロース、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリスチレンおよびブタジエン-スチレンコポリマーである。必要に応じて、これらのポリマーを2種またはそれ以上組合せて使用することができる。そのようなポリマーは、成分をその中に保持するのに十分な量で使用される。すなわち、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で使用される。効果的な範囲は、当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を保持する場合の目安として、バインダー対有機銀塩の割合は、15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。
【0092】
本発明の熱現像画像記録材料における画像形成層のうち少なくとも1層は以下に述べるポリマーラテックスを全バインダーの50wt%以上含有する画像形成層であることが好ましい。(以降この画像形成層を「本発明における画像形成層」、バインダーに用いるポリマーラテックスを「本発明で用いるポリマーラテックス」と表す。)また、ポリマーラテックスは画像形成層だけではなく、保護層やバック層に用いてもよく、特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像画像記録材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いる必要がある。ただしここで言う「ポリマーラテックス」とは水不溶な疎水性ポリマーが微細な粒子として水溶性の分散媒中に分散したものである。分散状態としてはポリマーが分散媒中に乳化されているもの、乳化重合されたもの、ミセル分散されたもの、あるいはポリマー分子中に部分的に親水的な構造を持ち分子鎖自身が分子状分散したものなどいずれでもよい。なお本発明で用いるポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などに記載されている。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0093】
本発明で用いるポリマーラテックスとしては通常の均一構造のポリマーラテックス以外、いわゆるコア/シェル型のラテックスでもよい。この場合コアとシェルはガラス転移温度を変えると好ましい場合がある。
本発明においてバインダーとして用いられるポリマーラテックスのポリマーのガラス転移温度(Tg)は保護層、バック層と画像形成層とでは好ましい範囲が異なる。画像形成層にあっては熱現像時に写真有用素材の拡散を促すため、40℃以下であり、さらには-30〜40℃が好ましい。保護層やバック層に用いる場合には種々の機器と接触するために25〜70℃のガラス転移温度が好ましい。
本発明で用いるポリマーラテックスの最低造膜温度(MFT)は-30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜70℃程度が好ましい。最低造膜温度をコントロールするために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は可塑剤ともよばれポリマーラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物(通常有機溶剤)で、例えば前述の「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0094】
本発明で用いるポリマーラテックスに用いられるポリマー種としてはアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはこれらの共重合体などがある。ポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでも、また架橋されたポリマーでも良い。またポリマーとしては単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでも良いし、2種以上のモノマーが重合したコポリマーでも良い。コポリマーの場合はランダムコポリマーでもブロックコポリマーでも良い。ポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜100000程度が好ましい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは製膜性が悪く好ましくない。
【0095】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層のバインダーとして用いられるポリマーラテックスの具体例としては以下のようなものがある。メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマーのラテックス、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマーのラテックス、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーのラテックスなど。また、このようなポリマーは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。例えばアクリル樹脂の例として、セビアンA-4635、46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリエステル樹脂としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂としてはHYDRAN AP10、20、30、40(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂としてはLACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、 Nipol Lx416、410、438C、2507(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂としてはG351、G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂としてはL502、L513(以上旭化成工業(株)製)、アロンD7020、D504、D5071(以上三井東圧(株)製)など、オレフィン樹脂としてはケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。これらのポリマーは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドして用いても良い。
【0096】
本発明における画像形成層は全バインダーの50重量%以上として上記ポリマーラテックスを用いることが好ましいが、70重量%以上として上記ポリマーラテックスを用いることがより好ましい。
本発明における画像形成層には必要に応じて全バインダーの50重量%以下の範囲でゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加しても良い。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30重量%以下、さらには15重量%以下が好ましい。
【0097】
本発明における画像形成層は水系の塗布液を塗布後乾燥して調製することが好ましい。ただし、ここで言う「水系」とは塗布液の溶媒(分散媒)の60重量%以上が水であることをいう。塗布液の水以外の成分はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなどの水混和性の有機溶媒を用いることができる。具体的な溶媒組成の例としては、水のほか、以下のようなものがある。水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/エタノール=90/10、水/イソプロパノール=90/10、水/ジメチルホルムアミド=95/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メタノール/ジメチルホルムアミド=90/5/5。(ただし数字は重量%を表す。)
本発明における画像形成層の全バインダー量は0.2〜30g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明における画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0098】
本発明の熱現像画像記録材料は、増感色素を含むことができる。本発明で用いる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので有ればいかなるものでも良い。増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。本発明に使用される有用な増感色素は例えばRESEARCH DISCLOSURE Item17643IV-A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種レーザーイメージャー、スキャナー、イメージセッターや製版カメラの光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。
赤色光への分光増感の例としては、He-Neレーザー、赤色半導体レーザーやLEDなどのいわゆる赤色光源に対しては、特開昭54-18726号に記載のI-1からI-38の化合物、特開平6-75322号に記載のI-1からI-35の化合物および特開平7-287338号に記載のI-1からI-34の化合物、特公昭55-39818号に記載の色素1〜20、特開昭62-284343号に記載のI-1からI-37の化合物および特開平7-287338号に記載のI-1からI-34の化合物などが有利に選択される。
【0099】
750〜1400nmの波長領域の半導体レーザー光源に対しては、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノールおよびキサンテン色素を含む種々の既知の色素により、スペクトル的に有利に増感させることができる。有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核およびイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核およびピラゾロン核などの酸性核も含む。上記のシアニンおよびメロシアニン色素において、イミノ基またはカルボキシル基を有するものが特に効果的である。例えば、米国特許3,761,279号、同3,719,495号、同3,877,943号、英国特許1,466,201号、同1,469,117号、同1,422,057号、特公平3-10391号、同6-52387号、特開平5-341432号、同6-194781号、同6-301141号に記載されたような既知の色素から適当に選択してよい。
【0100】
本発明に用いられる色素の構造として特に好ましいものは、チオエーテル結合含有置換基を有するシアニン色素(例としては特開昭62-58239号、同3-138638号、同3-138642号、同4-255840号、同5-72659号、同5-72661号、同6-222491号、同2-230506号、同6-258757号、同6-317868号、同6-324425号、特表平7-500926号、米国特許5,541,054号に記載された色素)、カルボン酸基を有する色素(例としては特開平3-163440号、同6-301141号、米国特許5,441,899号に記載された色素)、メロシアニン色素、多核メロシアニン色素や多核シアニン色素(特開昭47-6329号、同49-105524号、同51-127719号、同52-80829号、同54-61517号、同59-214846号、同60-6750号、同63-159841号、特開平6-35109号、同6-59381号、同7-146537号、同7-146537号、特表平55-50111号、英国特許1,467,638号、米国特許5,281,515号に記載された色素)が挙げられる。
また、J-bandを形成する色素として米国特許5,510,236号、同3,871,887号の実施例5記載の色素、特開平2-96131号、特開昭59-48753号が開示されており、本発明に好ましく用いることができる。
【0101】
これらの増感色素は単独に用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。有用な増感色素、強色増感を示す色素の組合せおよび強色増感を示す物質はResearch Disclosure 176巻17643(1978年12月発行)第23頁IVのJ項、あるいは特公昭49-25500号、同43-4933号、特開昭59-19032号、同59-192242号等に記載されている。
増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加させるには、それらを直接乳剤中に分散してもよいし、あるいは水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルセルソルブ、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド等の溶媒の単独もしくは混合溶媒に溶解して乳剤に添加してもよい。
【0102】
また、米国特許3,469,987号明細書等に開示されているように、色素を揮発性の有機溶剤に溶解し、この溶液を水または親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭44-23389号、同44-27555号、同57-22091号等に開示されているように、色素を酸に溶解し、この溶液を乳剤中に添加したり、酸または塩基を共存させて水溶液として乳剤中へ添加する方法、米国特許3,822,135号、同4,006,025号明細書等に開示されているように界面活性剤を共存させて水溶液あるいはコロイド分散物としたものを乳剤中に添加する方法、特開昭53-102733号、同58-105141号に開示されているように親水性コロイド中に色素を直接分散させ、その分散物を乳剤中に添加する方法、特開昭51-74624号に開示されているように、レッドシフトさせる化合物を用いて色素を溶解し、この溶液を乳剤中へ添加する方法を用いることもできる。また、溶解に超音波を用いることもできる。
【0103】
増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよい。例えば米国特許2,735,766号、同3,628,960号、同4,183,756号、同4,225,666号、特開昭58-184142号、同60-196749号等の明細書に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/および脱塩前の時期、脱塩工程中および/または脱塩後から化学熟成の開始前までの時期、特開昭58-113920号等の明細書に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後、塗布までの時期の乳剤が塗布される前ならばいかなる時期、工程において添加されてもよい。また、米国特許4,225,666号、特開昭58-7629号等の明細書に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類を変えて添加してもよい。
本発明における増感色素の使用量としては感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10-6〜1モルが好ましく、10-4〜10-1モルがさらに好ましい。
【0104】
本発明の熱現像画像記録材料には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、Ar-SM0、Ar-S-S-Arで表されるものが好ましい。式中、M0は水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環基または縮合芳香環基である。好ましくは、これらの基中の複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl)、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、アルコキシ(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)およびアリール(置換基を有していてもよい)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール、6-エトキシ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2'-ジチオビス-ベンゾチアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4,5-ジフェニル-2-イミダゾールチオール、2-メルカプトイミダゾール、1-エチル-2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトキノリン、8-メルカプトプリン、2-メルカプト-4(3H)-キナゾリノン、7-トリフルオロメチル-4-キノリンチオール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-ピリジンチオール、4-アミノ-6-ヒドロキシ-2-メルカプトピリミジンモノヒドレート、2-アミノ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、4-ヒドキロシ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプトピリミジン、4,6-ジアミノ-2-メルカプトピリミジン、2-メルカプト-4-メチルピリミジンヒドロクロリド、3-メルカプト-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、3-(5-メルカプトテトラゾール)-ベンゼンスルフォン酸ナトリウム、N-メチル-N'-[3-(5-メルカプトテトラゾリル)フェニル]ウレア、2-メルカプト-4-フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層(画像形成層)中に銀1モル当たり0.0001〜1モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1モル当たり0.001〜0.3モルの量である。
【0105】
本発明における画像形成層(感光性層)には、可塑剤および潤滑剤として多価アルコール(例えば、米国特許第2,960,404号に記載された種類のグリセリンおよびジオール)、米国特許第2,588,765号および同第3,121,060号に記載の脂肪酸またはエステル、英国特許第955,061号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
本発明の熱現像画像記録材料には画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。
表面保護層のバインダーとしてはいかなるポリマーでもよいが、カルボン酸残基を有するポリマーを100mg/m2以上5g/m2以下含むことが好ましい。ここでいうカルボキシル残基を有するポリマーとしては天然高分子(ゼラチン、アルギン酸など)、変性天然高分子(カルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチンなど)、合成高分子(ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルメタクリレート/アクリレート共重合体、ポリスチレン/ポリメタクリレート共重合体など)などが挙げられる。このようなポリマーのカルボキシ残基の含有量としてはポリマー100g当たり10mmol以上1.4mol以下であることが好ましい。また、カルボン酸残基はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオンなどと塩を形成してもよい。
【0106】
表面保護層としては、いかなる付着防止材料を使用してもよい。付着防止材料の例としては、ワックス、シリカ粒子、スチレン含有エラストマー性ブロックコポリマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン)、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートやこれらの混合物などがある。また、表面保護層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
本発明における画像形成層もしくは画像形成層の保護層には、米国特許第3,253,921号、同第2,274,782号、同第2,527,583号および同第2,956,879号に記載されているような光吸収物質およびフィルター染料を使用することができる。また、例えば米国特許第3,282,699号に記載のように染料を媒染することができる。フィルター染料の使用量としては露光波長での吸光度が0.1〜3が好ましく、0.2〜1.5が特に好ましい。
【0107】
本発明の熱現像画像記録材料の感光性層には色調改良、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料を用いることができる。画像形成層に用いる染料および顔料はいかなるものでもよいが、例えばカラーインデックス記載の顔料や染料があり、具体的にはピラゾロアゾール染料、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料、インドアニリン染料、インドフェノール染料、フタロシアニンをはじめとする有機顔料、無機顔料などが挙げられる。本発明に用いられる好ましい染料としてはアントラキノン染料(例えば特開平5-341441号記載の化合物1〜9、特開平5-165147号記載の化合物3-6〜18および3-23〜38など)、アゾメチン染料(特開平5-341441号記載の化合物17〜47など)、インドアニリン染料(例えば特開平5-289227号記載の化合物11〜19、特開平5-341441号記載の化合物47、特開平5-165147号記載の化合物2-10〜11など)およびアゾ染料(特開平5-341441号記載の化合物10〜16)が挙げられる。これらの染料の添加法としては、溶液、乳化物、固体微粒子分散物、高分子媒染剤に媒染された状態などいかなる方法でも良い。これらの化合物の使用量は目的の吸収量によって決められるが、一般的に記録材料1m2当たり1μg以上1g以下の範囲で用いることが好ましい。
【0108】
本発明における熱現像画像記録材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層の画像形成層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面画像記録材料であることが好ましい。
本発明においてバック層は、所望の範囲での最大吸収が約0.3以上2.0以下であることが好ましい。所望の範囲が750〜1400nmである場合には、750〜360nmにおいての光学濃度が0.005以上0.5未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001以上0.3未満の光学濃度を有するハレーション防止層であることが好ましい。所望の範囲が750nm以下である場合には、画像形成前の所望範囲の最大吸収が0.3以上2.0以下であり、さらに画像形成後の360〜750nmの光学濃度が0.005以上0.3未満になるようなハレーション防止層であることが好ましい。画像形成後の光学濃度を上記の範囲に下げる方法としては特に制限はないが、例えばベルギー特許第733,706号に記載されたように染料による濃度を加熱による消色で低下させる方法、特開昭54-17833号に記載の光照射による消色で濃度を低下させる方法等が挙げられる。
【0109】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、こうした染料は所望の範囲で目的の吸収を有し、処理後に可視領域での吸収が充分少なく、上記バック層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でも良い。例えば以下に挙げるものが開示されているが本発明はこれに限定されるものではない。単独の染料としては特開昭59-56458号、特開平2-216140号、同7-13295号、同7-11432号、米国特許5,380,635号記載、特開平2-68539号公報第13頁左下欄1行目〜同第14頁左下欄9行目、同3-24539号公報第14頁左下欄〜同第16頁右下欄記載の化合物があり、処理で消色する染料としては特開昭52-139136号、同53-132334号、同56-501480号、同57-16060号、同57-68831号、同57-101835号、同59-182436号、特開平7-36145号、同7-199409号、特公昭48-33692号、同50-16648号、特公平2-41734号、米国特許4,088,497号、同4,283,487号、同4,548,896号、同5,187,049号がある。
【0110】
本発明においてバック層の好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン-無水マレイン酸)、コポリ(スチレン-アクリロニトリル)、コポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水または有機溶媒またはエマルジョンから被覆形成してもよい。
【0111】
本発明の熱現像画像記録材料が片面画像記録材料である場合、搬送性改良のために画像形成層の表面保護層および/またはバック層またはバック層の表面保護層にマット剤を添加しても良い。マット剤は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子である。マット剤としては任意のものを使用でき、例えば米国特許第1,939,213号、同2,701,245号、同2,322,037号、同3,262,782号、同3,539,344号、同3,767,448号等の各明細書に記載の有機マット剤、同1,260,772号、同2,192,241号、同3,257,206号、同3,370,951号、同3,523,022号、同3,769,020号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界で良く知られたものを用いることができる。例えば具体的にはマット剤として用いることのできる有機化合物の例としては、水分散性ビニル重合体の例としてポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素-ホルムアルデヒド-澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微少カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなど好ましく用いることができる。無機化合物の例としては二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1μm〜30μmの粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。一方、マット剤は感光材料のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0112】
本発明においてバック層にマット剤を添加するのは好ましい態様であり、バック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、さらに好ましくは700秒以下50秒以上である。
本発明において、マット剤は記録材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。また、乳剤面保護層のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が500秒以上10,000秒以下が好ましく、特に500秒以上2,000秒以下が好ましい。
【0113】
本発明で用いる熱現像写真用乳剤は、支持体上に一またはそれ以上の層を構成する。一層の構成は有機銀塩、ハロゲン化銀、現像剤およびバインダー、ならびに色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含まなければならない。二層の構成は、第1乳剤層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩およびハロゲン化銀を含み、第2層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。しかし、全ての成分を含む単一乳剤層および保護トップコートを含んでなる二層の構成も考えられる。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各乳剤層(感光性層)の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
米国特許第4,460,681号および同第4,374,921号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backside resistive heating layer)を感光性熱現像写真画像系に使用することもできる。
【0114】
本発明の熱現像画像記録材料の画像形成層(感光性層)、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としては、米国特許4,281,060号、特開平6-208193号などに記載されているポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などに記載されているエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などに記載されているビニルスルホン系化合物類などが用いられる。
本発明には塗布性、帯電改良などを目的として界面活性剤を用いても良い。界面活性剤の例としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、フッ素系などいかなるものも適宜用いられる。具体的には、特開昭62-170950号、米国特許5,380,644号などに記載のフッ素系高分子界面活性剤、特開昭60-244945号、特開昭63-188135号などに記載のフッ素系界面活性剤、米国特許3,885,965号などに記載のポリシロキサン系界面活性剤、特開平6-301140号などに記載のポリアルキレンオキサイドやアニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0115】
本発明における熱現像用写真乳剤は、一般的には種々の支持体上に被覆させることができる。典型的な支持体は、ポリエステルフィルム、下塗りポリエステルフィルム、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、硝酸セルロースフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリ(ビニルアセタール)フィルム、ポリカーボネートフィルムおよび関連するまたは樹脂状の材料、ならびにガラス、紙、金属などを含む。可撓性基材、特に、バライタおよび/または部分的にアセチル化されたα-オレフィンポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテンコポリマーなどの炭素数2〜10のα-オレフィンのポリマーによりコートされた紙支持体が、典型的に用いられる。このような支持体は透明であっても不透明であってもよいが、透明であることが好ましい。これらのうちでも75〜200μm程度の2軸延伸したポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
一方、プラスチックフィルムを80℃以上の処理の熱現像機に通すと一般にフィルムの寸法が伸縮する。処理後の材料を印刷製版用途として使用する場合、この伸縮は精密多色印刷を行う時に重大な問題となる。よって、本発明では二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像中に発生する熱収縮歪みをなくす工夫をした、寸法変化の小さいフィルムを用いることが好ましい。例えば、熱現像用写真乳剤を塗布する前に100℃〜210℃の範囲で熱処理したポリエチレンテレフタレートなどが好ましく用いられる。ガラス転移温度の高いものも好ましく、ポリエーテルエチルケトン、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリカーボネート等が使用できる。
【0116】
本発明の熱現像画像記録材料は、帯電防止のため、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第2,861,056号および同第3,206,312号に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3,428,451号に記載のような不溶性無機塩、特開昭60-252349号、同57-104931号に記載されている酸化スズ微粒子などを含む層を有してもよい。
本発明の熱現像画像記録材料を用いてカラー画像を得る方法としては特開平7-13295号10頁左欄43行目〜11左欄40行目に記載の方法がある。また、カラー染料画像の安定剤としては英国特許第1,326,889号、米国特許第3,432,300号、同第3,698,909号、同第3,574,627号、同第3,573,050号、同第3,764,337号および同第4,042,394号に例示されている。
【0117】
本発明で用いる熱現像写真乳剤は、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、フローコーティングまたは、米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作により被覆することができる。所望により、米国特許第2,761,791号および英国特許第837,095号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
本発明の熱現像画像記録材料の中に追加の層、例えば移動染料画像を受容するための染料受容層、反射印刷が望まれる場合の不透明化層、保護トップコート層および光熱写真技術において既知のプライマー層などを含むことができる。本発明の記録材料はその記録材料一枚のみで画像形成できることが好ましく、受像層等の画像形成に必要な機能性層が別の記録材料とならないことが好ましい。
【0118】
本発明の熱現像画像記録材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した画像記録材料を昇温して現像される。用いられる熱現像機の好ましい態様としては、熱現像画像記録材料をヒートローラーやヒートドラムなどの熱源に接触させるタイプとして特公平5-56499号、特許公報第684453号、特開平9-292695号、特開平9-297385号および国際公開WO95/30934号に記載の熱現像機、非接触型のタイプとして特開平7-13294号、国際公開WO97/28489号、同97/28488号および同97/28487号に記載の熱現像機がある。特に好ましい態様としては非接触型の熱現像機である。好ましい現像温度としては80〜250℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料の前述の熱現像時の寸法変化による処理ムラを防止する方法として、80℃以上115℃未満(好ましくは113℃以下)の温度で画像が出ないようにして5秒以上加熱した後、110℃以上(好ましくは130℃以下)で熱現像して画像形成させる方法(いわゆる多段階加熱方法)が有効である。
【0119】
本発明の熱現像画像記録材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。
本発明の熱現像画像記録材料は露光時のヘイズが低く、干渉縞が発生しやすい傾向にある。この干渉縞発生防止技術としては、特開平5-113548号などに開示されているレーザー光を熱現像画像記録材料に対して斜めに入光させる技術や、国際公開WO95/31754号などに開示されているマルチモードレーザーを利用する方法が知られており、これらの技術を用いることが好ましい。
本発明の熱現像画像記録材料を露光するにはSPIE vol.169 Laser Printing 116-128頁(1979)、特開平4-51043号、WO95/31754号などに開示されているようにレーザー光が重なるように露光し、走査線が見えないようにすることが好ましい。
【0120】
本発明の熱現像画像記録材料が、感光性ハロゲン化銀を含まない場合、本発明の熱現像画像記録材料は、加熱によって潜像形成することが出来る。加熱は、感熱ヘッドなどを使用して直接加熱する方法でも、画像記録材料中に特定の波長を吸収して熱に変換する素材(染料、顔料など)を存在させておき、間接的に加熱する方法でも良い。この時使用される光源は、上記記載のレーザー光が好ましい。さらに、これらを組合せることも可能である。また、加熱によって潜像形成する場合、第一段階の加熱で潜像を形成し、第二段階で画像を形成するという2段階の工程を有しても良いし、第一段階の加熱で画像形成まで行うことも出来る。
【0121】
本発明の熱現像画像記録材料の熱現像処理に用いられる熱現像機の一構成例を図1に示す。図1は熱現像機の側面図を示したものである。図1の熱現像機は熱現像画像記録材料10を平面状に矯正及び予備加熱しながら加熱部に搬入する搬入ローラー対11(下部ローラーがヒートローラー)と熱現像後の熱現像画像記録材料10を平面状に矯正しながら加熱部から搬出する搬出ローラー対12を有する。熱現像画像記録材料10は搬入ローラー対11から搬出ローラー対12へと搬送される間に熱現像される。この熱現像中の熱現像画像記録材料10を搬送する搬送手段は画像形成層を有する面が接触する側に複数のローラー13が設置され、その反対側のバック面が接触する側には不織布(たとえばポリフェニレンサルファイトやテフロンから成る)等が貼り合わされた平滑面14が設置される。熱現像画像記録材料10は画像形成層を有する面に接触する複数のローラー13の駆動により、バック面は平滑面14の上を滑って搬送される。加熱手段はローラー13の上部及び平滑面14の下部に熱現像画像記録材料10の両面から加熱されるように加熱ヒーター15が設置される。この場合の加熱手段としては板状ヒーター等が挙げられる。ローラー13と平滑面14とのクリアランスは平滑面の部材により異なるが、熱現像画像記録材料10が搬送できるクリアランスに適宜調整される。好ましくは0〜1mmである。
【0122】
ローラー13の表面の材質及び平滑面14の部材は、高温耐久性があり、熱現像画像記録材料10の搬送に支障がなければ何でも良いが、ローラー表面の材質はシリコンゴム、平滑面の部材は芳香族ポリアミドまたはテフロン(PTFE)製の不織布が好ましい。加熱手段としては複数のヒーターを用い、それぞれ加熱温度を自由に設定することが好ましい。
なお、熱現像処理部の上流の予備加熱部は、熱現像温度よりも低く(例えば10〜30℃程度程度低く)、熱現像画像記録材料中の水分量を蒸発させるのに十分な温度および時間に設定することが望ましく、熱現像画像記録材料10の支持体のガラス転移温度(Tg)よりも高い温度で、現像ムラが出ないように設定することが好ましい。
また、熱現像処理部の下流にはガイド板16が設置され、さらに、徐冷部が設置される。ガイド板は熱伝導率の低い素材が好ましく、熱現像画像記録材料に変形が起こらないようにするために冷却は徐々に行うのが好ましい。
以上、図示例に従って説明したが、これに限らず、例えば特開平7−13294号に記載のものなど、本発明に用いられる熱現像機は種々の構成のものであってよい。また、本発明において、好ましく用いられる多段階加熱方法の場合は、上述のような装置において、加熱温度の異なる熱源を2個以上設置し、連続的に異なる温度で加熱するようにすればよい。
【0123】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
まず、一般式(1)で表される化合物のうち例示化合物81、90、5、22の製造方法について製造例で説明する。
《製造例1》(例示化合物81の合成)
2,6−ジクロロ−4−アミノフェノール8.9gをアセトニトリル100mlに溶解し、トリエチルアミン5.1mlを加え、氷冷した。これにトリフルオロ酢酸無水物7.7gを滴下した後、50℃で6時間加熱撹拌した。反応溶液を室温まで放冷後、酢酸エチル200mlと希塩酸100mlを加え、生成物を抽出し、有機層を乾燥、濃縮した。この粗生成物に酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒を加えることで析出した固体をろ取することで例示化合物81を7.2g得た。
《製造例2》(例示化合物90の合成)
例示化合物81の合成において、トリフルオロ酢酸無水物を用いる代わりに、テトラフルオロコハク酸無水物を用いる以外は同様の方法で例示化合物90を得た。
《製造例3》(例示化合物5の合成)
2,6−ジクロロ−4−アミノフェノール8.9gをアセトニトリル100mlに溶解し、ピリジン3.9mlを加え、氷冷した。この溶液にジフェニルホスフィン酸クロリド11.8gをゆっくり滴下した後、室温で1時間攪拌した。反応溶液に酢酸エチル200mlと希塩酸100mlを加えて生成物を抽出した後、有機層を乾燥、濃縮した。この粗生成物に酢酸エチル20mlを加え、析出した固体をろ取することで例示化合物5を14.5g得た。
《製造例4》(例示化合物22の合成)
例示化合物5の合成において、ジフェニルホスフィン酸クロリドを用いる代わりにジエチルホスホン酸クロリドを用いる以外は同様の方法で例示化合物22を得た。
【0124】
実施例1及び実施例2に用いた化合物を以下に示す。
【化11】
【0125】
《実施例1》
1.ハロゲン化銀乳剤の調製(乳剤A)
水700mlにフタル化ゼラチン11gおよび臭化カリウム30mg、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mgを溶解して温度55℃にてpHを5.0に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で6分30秒間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.5gを含む水溶液476mlと臭化カリウムを1モル/リットルで含むハロゲン塩水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で28分30秒間かけて添加した。その後pHを下げて凝集沈降させて脱塩処理をし、化合物Aを0.17g、脱イオンゼラチン(カルシウム含有量として20ppm以下)を23.7g加え、pH5.9、pAg8.0に調整した。得られた粒子は平均粒子サイズ0.11μm、投影面積変動係数8%、(100)面比率93%の立方体粒子であった。
こうして得たハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウム76μモルを添加し、3分後にチオ硫酸ナトリウム154μモルを添加して、100分熟成した。
その後、40℃に温度を保ち、ハロゲン化銀1モルに対して2.7×10?3モルの増感色素A、8.2×10?3モルの化合物−Aを攪拌しながら添加し、20分後に30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤Aの調製を終了した。
【0126】
2.有機酸銀分散物の調製<有機酸銀A>
アラキジン酸6.1g、ベヘン酸37.6g、蒸留水700ml、tert-ブタノール70ml、1N-NaOH水溶液123mlを混合し、75℃で1時間撹拌し反応させ、65℃に降温した。次いで、硝酸銀22gの水溶液112.5mlを45秒かけて添加し、そのまま5分間放置し、30℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして取り扱い、乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-217)2.0gおよび水を添加し、全体量を500gとしてからホモミキサーにて予備分散した。
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cm2に調節して、三回処理し、有機酸銀分散物Aを得た。こうして得た有機酸銀分散物に含まれる有機酸銀粒子は平均短径0.04μm、平均長径0.8μm、変動係数30%の針状粒子であった。粒子サイズの測定は、Malvern Instruments Ltd.製MasterSizerXにて行った。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで所望の分散温度に設定した。こうして、ベヘン酸銀含有率85モル%の有機酸銀Aを調製した。
【0127】
3. 1,1- ビス (2- ヒドロキシ -3,5- ジメチルフェニル )-3,5,5- トリメチルヘキサンの固体微粒子分散物の調製
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン70gに対してクラレ(株)製MPポリマーのMP-203を14gと水266mlを添加してよく撹拌してスラリーとしした後、0.5mmのジルコニアシリケートビーズを960g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散した後、化合物−2を完成量当たり100ppm添加して還元剤固体微粒子分散物を調製した。粒子径は、粒子の80wt%が0.3μm以上1.0μm以下であった。この還元剤固体微粒子分散物は、以下HP分散物と呼ぶ。
【0128】
4.本発明用の化合物の固体微粒子分散物の調製
前記表1に記載した例示化合物5 25gに対してクラレ(株)製MPポリマーのMP−203を5.0g、化合物−1を0.25gと水70gを添加し、良く撹拌してスラリーとし、その後0.5mmのジルコニアシリケートビーズ200gをスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/16Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散した後、化合物−2を完成量あたり100ppm添加し、10分間撹拌して固体微粒子分散物を調製した。得られた分散物の平均粒子径は0.36μm、最大粒子径は2.1μmであった。
【0129】
5.ポリハロゲン化合物の固体微粒子分散物の調製
前記化合物−3を30gに対してクラレ(株)製MPポリマーのMP-203を5.0g、化合物−1を0.21gと、水65gを添加し良く撹拌し、その後、0.5mmのジルコニアシリケートビーズを200g用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/16Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて5時間分散し、その後、水20ml及び化合物−2を完成量当たり100ppm添加し10分間攪拌して固体微粒子分散物を調製した。得られた分散物の平均粒子径は、0.35μm、最大粒子径は1.85μmであった。化合物−4についても上記と同様な方法で分散し固体微粒子分散物を調製した。
【0130】
6.化合物−6の固体微粒子分散物の調製
前記化合物−6を7.5gに対してクラレ(株)製MPポリマーのMP-203を3.0gと水90gを添加し良く撹拌しスラリーとした。その後化合物−3の固体分散物と同様にして分散物を調製した。
【0131】
7.硬調化剤の固体微粒子分散物の調製
前記化合物−7 10gに対してクラレ(株)製ポバールPVA-217 2.5gと水87.5ml添加してよく撹拌してスラリーとし、その後、化合物−3の固体微粒子分散物の調製と同様にして固体微粒子分散物を調製した。
【0132】
8.乳剤層塗布液の調製
上記で作成した有機酸銀微結晶分散物の銀1モルに対して、以下のバインダー、素材、およびハロゲン化銀乳剤Aを添加して、水を加えて、乳剤層塗布液とした。
バインダー;ラックスター3307B 固形分として470g
(大日本インキ化学工業(株)製;SBRラテックスでガラス転移温度17℃)
HP分散物 表15に添加量を記載
本発明用化合物 表15に量と種類を記載
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 0.5g
6-メチルベンゾトリアゾール 1.36g
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製PVA-235) 12.1g
化合物−3の固体分散物 固形分として33.6g
化合物−4の固体分散物 固形分として 8.8g
化合物−5(水溶液) 1.1g
化合物−6の固体分散物 固形分として10.5g
燐酸二水素ナトリウム 0.36g
6-iso-プロピルフタラジン 16.5g
染料A 0.50g
ハロゲン化銀乳剤A Ag量として0.05mol
【0133】
9.乳剤面保護層塗布液の調製
固形分27.5wt%のポリマーラテックス(メチルメタクリレート/スチレン/2-エチルヘキシルアクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=59/9/26/5/1の共重合体でガラス転移温度55℃)109gに水3.75gを加え、造膜助剤としてベンジルアルコール4.5g、化合物−8を0.45g、化合物−9を0.125g、4-メチルフタル酸を1.70g、化合物−10を0.59gおよびポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA-235)0.285gを加え、さらに水を加えて150gとし、塗布液とした。
【0134】
10.バック/下塗り層のついた PET 支持体の作成
(1)支持体
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従い、IV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるような厚みの未延伸フイルムを作成した。
これを周速の異なるロールを用い、3.3倍に縦延伸、ついでテンターで4.5倍に横延伸を実施した。このときの温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後、テンターのチャック部をスリットした後、両端にナール加工を行い、4.8kg/cm2で巻きとった。このようにして、幅2.4m、長さ3500m、厚み120μmのロールを得た。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
支持体の片面に下塗り層(a)と下塗り層(b)を順次塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥した。ついで、下塗り層(a)と下塗り層(b)を塗布した反対側の面に導電層と保護層を順次塗布し、それぞれ180℃、30秒間乾燥してバック/下塗り層のついたPET支持体を作成した。
このようにして作成したバック/下塗り層のついたPET支持体を150℃に設定した全長30mの熱処理ゾーンに入れ、張力14g/cm2、搬送速度20m/分で自重搬送した。その後、40℃のゾーンに15秒間通し、10kg/cm2の巻き取り張力で巻き取った。
【0139】
11.熱現像画像記録材料の調製
前記バック/下塗り層のついたPET支持体の下塗り層の上に前記の乳剤層塗布液を塗布銀量1.8g/m2になるように塗布した。また、前記乳剤層塗布液のHP化合物の添加量を変えた塗布液も調製し同様に支持体上に塗布した。HP化合物の塗布量は、表15に示す。さらにその上に、前記乳剤面保護層塗布液をポリマーラテックスの固形分の塗布量が2.0g/m2になるように塗布した。
【0140】
12.写真性能の評価
(露光処理)
得られた塗布サンプルを780nmにピークを有する干渉フィルターおよびステップウェッジを介して、発光時間10-6秒のキセノンフラッシュ光で露光した。
(熱現像処理)
露光済みのサンプルを図1の熱現像機にて117℃で20秒間、119℃で20秒間、121℃で20秒間熱現像処理を行った。なお、図1のドラム式熱現像機は、ランプの配光を最適化し、幅方向の温度制御を±1℃で行った。また、ガイド板16付近において熱現像画像記録材料の温度が90℃以下にならないように雰囲気温度を調整した。
(写真性能の評価)
得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmax、カブリ(Dmin)、感度(Dminより1.5高い濃度を与える露光量の比の逆数の相対値)、で評価した。感度(S1.5)についてはサンプルNo.101の感度を100とした。感度差(ΔS1.5)は、117℃現像と121℃現像でのS1.5の感度差(露光量の対数の差)で現した。得られた結果を表15に示す。
【0141】
【表15】
【0142】
(結果)
表15の結果から、試料No.101、102に対して103、104では、感度は高くなるがカブリの増加が非常に大きく、感度変化も大きい。試料No.105〜114では、カブリの増加が非常に小さく、かつ、高感度が得られ、現像温度変動による感度変化も小さい。
【0143】
《実施例2》
実施例1の乳剤層塗布液の調製時に有機酸銀分散物の銀1モル当たり前記化合物−7の硬調化剤固体微粒子分散物を1.1g添加し、本発明用の一般式(1)の例示化合物分散物及びHP分散物を表16に示す通りに添加した以外は、実施例1と同様にして調製し、同様に感光材料塗布を行い性能評価した。性能評価は、実施例1と同様な評価の他に階調(コントラスト)も会わせて行った。なお、コントラストは露光量の対数を横軸として、濃度0.3と3.0の点を結ぶ直線の傾きで表した(表16において、γで示す欄に記載)。結果を表16に示す。
【0144】
【表16】
【0145】
(結果)
表16の結果から、試料No.201、202に対して203では、十分な感度及びDmaxが得られない。試料No.204、205では、感度は高くなるがカブリの増加が非常に大きい。試料No.206〜219では、カブリの増加が非常に小さく、高感度が得られ、かつ、現像温度変動による感度変化も小さい。
【0146】
【発明の効果】
本発明によれば、十分に小さいDminを保ちながら高感度を有し、かつ、熱現像条件の変動に対して感度変化が小さく、また、硬調化剤との組み合わせで使用する場合には、十分に小さいDminを保ちながら、超硬調で、Dmaxが高く、熱現像条件の変動に対して感度変動が小さく処理安定性が高い印刷製版用に適した熱現像超硬調記録材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる熱現像機の一構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
10 熱現像画像記録材料
11 搬入ローラー対
12 搬出ローラー対
13 ローラー
14 平滑面
15 加熱ヒーター
16 ガイド板
A 予備加熱部
B 熱現像処理部
C 徐冷部
Claims (7)
- 支持体の少なくとも一方の同一面上に、(a)有機銀塩;(b)下記の(d)に記載した化合物を除く還元剤;(c)バインダー;並びに(d)下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(1)で表される2つまたは3つの化合物が連結基で結合してなるビス体およびトリス体、および下記一般式(1)で表される2つ以上の化合物が高分子鎖に結合してなる高分子化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を有することを特徴とする熱現像画像記録材料。
- 感光性ハロゲン化銀を有する熱現像感光記録材料である、請求項1に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記(b)の還元剤としてヒンダードフェノール化合物を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の熱現像画像記録材料。
- さらに超硬調化剤を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記超硬調化剤として下記一般式(2)、(3)または(4)で表される化合物のうちの少なくとも一つの化合物を用いることを特徴とする請求項4に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記(b)の還元剤が、ビスフェノールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
- 前記熱現像画像記録材料が、銀画像を形成するための熱現像画像記録材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱現像画像記録材料。
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