JP3907737B2 - アクリル酸エステル誘導体およびその製造方法並びにアクリル酸エステル系重合体 - Google Patents
アクリル酸エステル誘導体およびその製造方法並びにアクリル酸エステル系重合体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアクリル酸エステル誘導体およびその製造方法並びにアクリル酸エステル系重合体に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、親水性、生分解性、および生体適合性に特に優れたアクリル酸エステル系重合体、並びに、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用な新規なアクリル酸エステル誘導体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、側鎖に糖残基を含有する重合体は、親水性および生体適合性に優れていることが知られている。このため、例えば、表面処理剤、医療用材料等の種々の用途への適用が進められている。このような糖残基を含有する重合体として、例えば、特開昭 60-106802号公報、特開昭 60-192704号公報には、ポリスチレンをヒドロキシメチル化した後、これに、水酸基をアセチル基、ハロゲン原子等の保護基で保護した糖を付加し、次いで、糖の保護基をアルカリでケン化してなる重合体が開示されている。
【0003】
また、米国特許第 3,225,012号、米国特許第 3,356,652号および特公昭57-42641号公報には、水酸基をアセチル基、イソプロピリデン基等の保護基で保護した糖をオレフィン系単量体に付加し、これを重合させた後、糖の保護基を除去して得られる重合体が開示されている。
【0004】
ところが、上記各重合体は、何れも糖残基の保護基が完全に除去されておらず、その親水性および生体適合性が充分ではないという問題点を有している。さらに、重合体によっては、糖残基が均一に付加していない、或いは保護基の除去にあたってアルカリまたは酸を使用しているため、得られる重合体が劣化する等の問題点を有している。また、水酸基の保護基を除去すると重合体の水への親和力が大きくなり、高粘度の水溶液またはゲルとなるため、アルカリまたは酸による中和処理、および中和によって生成する塩の脱塩処理を充分に行うことができないという問題点も有している。
【0005】
そこで、上記問題点を解決するために、特開平2-275892号公報には、保護基を有しない糖残基を側鎖に含有する重合体が提案されている。該重合体は、(メタ)アクリル酸重合体が有するカルボキシル基にエステル結合を介して糖残基を側鎖として導入させてなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の重合体は、エステル結合を介して側鎖に糖残基が導入されている。このため、該重合体は、例えば塩基の存在下においてエステル結合が加水分解を受け、糖残基が脱離する虞れを有している。
【0007】
このため、糖残基を含有し、かつ、該糖残基が加水分解等によって脱離することのない、新規な重合体が求められている。即ち、本発明の目的は、糖残基を含有し、種々の用途に利用され得る、新規なアクリル酸エステル誘導体およびその製造方法並びにアクリル酸エステル系重合体を提供することにある。より詳しくは、本発明の目的は、親水性、生分解性、および生体適合性に特に優れたアクリル酸エステル系重合体、並びに、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用な新規なアクリル酸エステル誘導体およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の課題を解決するために、糖残基を含有し、かつ、該糖残基が加水分解等によって脱離することのないアクリル酸エステル系重合体を提供すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基以外の側鎖に該糖残基を含有する新規なアクリル酸エステル系重合体、並びに、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用な新規なアクリル酸エステル誘導体を得ることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0010】
【化7】
【0011】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表し、Gは糖残基を表す)
で表されるアクリル酸エステル誘導体に関するものである。
【0012】
また、本発明は、上記R1 が水素原子であり、R2 が水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または炭素数1〜8のアルキル基であるアクリル酸エステル誘導体に関するものである。
【0013】
また、本発明は、上記アクリル酸エステル誘導体を、ラジカル重合開始剤を用いて重合させることを特徴とするアクリル酸エステル系重合体の製造方法に関するものである。
【0014】
また、本発明は、さらに、共重合可能な単量体を共重合させることを特徴とする上記ア クリル酸エステル系重合体の製造方法に関するものである。
【0015】
さらに、本発明は、一般式(2)
【0016】
【化8】
【0017】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表す)
で表されるアクリル酸エステル類と、一般式(3)
【0018】
【化9】
【0019】
(式中、Gは糖残基を表す)
で表されるヘミアセタール水酸基を含有する糖類、および/または、一般式(4)
【0020】
【化10】
【0021】
(式中、Gは糖残基を表し、R3 は有機残基を表す)
で表されるアルキルグリコシド類とを反応させることを特徴とする前記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル誘導体の製造方法に関するものである。
【0022】
その上、本発明は、一般式(5)
【0023】
【化11】
【0024】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表し、Gは糖残基を表す)
で表される構造単位を有するアクリル酸エステル系重合体に関するものである。
【0025】
さらに、本発明は、数平均分子量が 1,000 〜 2,000,000 であることを特徴とする上記アクリル酸エステル系重合体に関するものである。
【0026】
上記アクリル酸エステル誘導体およびアクリル酸エステル系重合体は、エステル結合を介さずに側鎖に糖残基が導入されているため、耐加水分解性に優れており、塩基の存在下においても加水分解を受けず、糖残基が脱離しない。即ち、上記アクリル酸エステル系重合体は、側鎖に糖残基を安定して含有することができる。上記アクリル酸エステル系重合体は、親水性、生分解性、および生体適合性に特に優れ、例えば、表面処理剤、医療用材料、界面活性剤等の種々の用途に好適に用いることができる。また、上記の製造方法により、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用なアクリル酸エステル誘導体を容易に得ることができる。
【0027】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明にかかる前記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル誘導体は、特に限定されるものではないが、式中、R1 で示される置換基が水素原子または有機残基で構成され、R2 で示される置換基が水素原子、対イオン、または有機残基で構成され、Gで示される置換基が糖残基で構成される化合物である。そして、これら化合物のうち、R1 で示される置換基が水素原子であり、R2 で示される置換基が水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または炭素数1〜8のアルキル基である化合物がより好ましい。
【0028】
また、本発明にかかる前記一般式(5)で表される構造単位を有するアクリル酸エステル系重合体は、特に限定されるものではないが、式中、R1 で示される置換基が水素原子または有機残基で構成され、R2 で示される置換基が水素原子、対イオン、または有機残基で構成され、Gで示される置換基が糖残基で構成される重合体である。また、アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量(Mn)は 1,000〜2,000,000 の範囲内である。特に、数平均分子量 5,000〜1,500,000 のアクリル酸エステル系重合体は、通常のラジカル重合により容易に得られると共に、取り扱い易いので有用である。
【0029】
上記R1 、R2 で示される置換基のうち、有機残基とは、具体的には、炭素数1〜18の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基;炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜20のアルコキシアルキル基;炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基;アリール基を示す。
【0030】
上記R2 で示される置換基のうち、対イオンとは、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、ニッケル、錫、鉛、銀等の遷移金属;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアンモニウム化合物;等のイオン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0031】
また、上記Gで示される置換基とは、具体的には、全ての糖類、即ち、単糖やオリゴ糖、多糖等の糖類を基本骨格とする末端にヘミアセタール水酸基を含有する全ての糖類から1位の水酸基の水素原子が脱離した基、或いは、アルキル基とグリコシド結合した全ての糖類から1位のアセタール基のアルキル基が脱離した基を示す。尚、上記糖類が有する1位の水酸基(またはアセタール基)以外の水酸基は、その一部または全部がアセチル基等のエステル結合、イソプロピリデン基等のアセタール結合、ブロモ基等のハロゲン原子等により保護されていてもよい。また、前記一般式(4)中、R3 で示される置換基は、有機残基であればよく、特に限定されるものではない。
【0032】
上記糖類のうち、単糖としては、具体的には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルマンノサミン等の六炭糖類;キシロース、リボース、アラビノース等の五炭糖類;等が挙げられる。また、オリゴ糖としては、具体的には、例えば、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソロホース等の二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、マンノトリオース、マンニノトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース等が挙げられる。さらに、多糖としては、具体的には、例えば、セルロース、アミロース(デンプン)、キチン、キトサン(chitosan) 等が挙げられる。
【0033】
本発明にかかるアクリル酸エステル誘導体は、前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類と、前記一般式(3)で表される、末端にヘミアセタール水酸基を含有する全ての糖類とのアセタール化反応、および/または、該アクリル酸エステル類と、前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類、即ち、アルキル基とグリコシド結合した全ての糖類とのアセタール交換反応を、触媒の存在下で行うことによって、容易に製造することができる。
【0034】
即ち、前記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル誘導体は、例えば、前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類と、前記一般式(3)で表される糖類とを、触媒の存在下で反応させることによって、容易に得ることができる。また、該アクリル酸エステル誘導体は、例えば、上記のアクリル酸エステル類と、前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類とを、触媒の存在下で反応させることによって、容易に得ることができる。
【0035】
前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類は、特に限定されるものではないが、α−ヒドロキシアルキルアクリル酸エステルであり、具体的には、例えば、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、2-エチルヘキシル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、メチル−α-(1-ヒドロキシエチル) アクリレート、エチル−α-(1-ヒドロキシエチル) アクリレート、n-ブチル−α-(1-ヒドロキシエチル) アクリレート、2-エチルヘキシル−α-(1-ヒドロキシエチル) アクリレート等のアルキル−α−ヒドロキシアルキルアクリレート類;α−ヒドロキシメチルアクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ナトリウム;等が挙げられる。これらアクリル酸エステル類は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0036】
尚、アクリル酸エステル類の製造方法は、特に限定されるものではない。上記アクリル酸エステル類は、従来公知の方法、例えば、相当するアクリレート化合物とアルデヒド化合物とを塩基性イオン交換樹脂等の触媒の存在下で反応させる(例えば、特開平6-135896号公報等)ことにより、容易に得ることができる。
【0037】
前記一般式(3)で表されるヘミアセタール水酸基を含有する糖類は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、上記の糖類、即ち、単糖やオリゴ糖、多糖等の糖類を基本骨格とする末端にヘミアセタール水酸基を含有する全ての糖類が挙げられる。該糖類は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0038】
前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、メチルグルコシド、メチルガラクトシド、メチルマルトシド、メチルマンノシド、メチルキシロシド、メチルラクトシド、エチルグルコシド、エチルガラクトシド、エチルマンノシド、エチルキシロシド、プロピルグルコシド、イソプロピルグルコシド、ブチルグルコシド、ブチルガラクトシド、ブチルキシロシド、ブチルマンノシド等が挙げられる。上記アルキルグリコシド類は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0039】
アクリル酸エステル類に対する前記一般式(3)で表される糖類および/または前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、該アクリル酸エステル類1モルに対して、0.01モル〜10モルの範囲内がより好ましく、0.02モル〜5モルの範囲内がさらに好ましく、0.03モル〜2モルの範囲内が特に好ましく、0.05モル〜1モルの範囲内が最も好ましい。
【0040】
上記の触媒としては、酸性触媒がより好ましく、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸、およびその部分中和塩;タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸等のヘテロポリ酸、およびその部分中和塩;
メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸:ギ酸、酢酸、ラウリン酸、オレイン酸等の有機カルボン酸等のプロトン酸;
フッ化ホウ素、塩化ホウ素、塩化アルミニウム、二塩化錫、四塩化錫等のルイス酸;
ベースレジンがフェノール系樹脂またはスチレン系樹脂であり、ゲル型、ポーラス型およびマクロポーラス型のうちの何れかの形態を示し、かつ、スルホン酸基およびアルキルスルホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一種のイオン交換基を含有する酸性イオン交換樹脂;等が挙げられる。これら触媒は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の触媒のうち、プロトン酸等の酸性触媒が、アクリル酸エステル類と、前記一般式(3)で表される糖類および/または前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類との反応性をより高めることができるので好ましい。
【0041】
アクリル酸エステル類に対する触媒の添加量は、用いるアクリル酸エステル類や触媒の種類にもよるが、例えば、該アクリル酸エステル類に対する割合が、 0.001重量%〜20重量%の範囲内、好ましくは 0.005重量%〜15重量%の範囲内、より好ましくは0.01重量%〜10重量%の範囲内、さらに好ましくは 0.1重量%〜5重量%の範囲内となるようにすればよい。触媒の添加量が 0.001重量%よりも少ない場合には、触媒活性が充分に発揮され難く、反応時間が長くなり過ぎ、アクリル酸エステル誘導体を効率的に製造することができなくなるので好ましくない。一方、触媒の添加量を20重量%よりも多くしても、触媒量の増加に比例した、反応時間の短縮等の触媒効果のさらなる向上は望めず、添加した触媒の一部が無駄になり、経済的に不利となるので好ましくない。
【0042】
上記の反応を行う際の反応条件等は、特に限定されるものではないが、原料であるアクリル酸エステル類、並びに、生成物であるアクリル酸エステル誘導体は、分子内にビニル基等を含有しているので、重合し易い性質を有している。そこで、アクリル酸エステル類と、前記一般式(3)で表される糖類および/または前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類とを反応させる際には、該アクリル酸エステル類並びにアクリル酸エステル誘導体の重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(または重合禁止剤)や分子状酸素を添加することが好ましい。
【0043】
重合防止剤としては、具体的には、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p-ベンゾキノン、p-t-ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合防止剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記重合防止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エステル類に対する割合が、 0.001重量%〜5重量%の範囲内、より好ましくは 0.005重量%〜1重量%の範囲内、さらに好ましくは0.01重量%〜 0.1重量%の範囲内となるようにすればよい。重合防止剤の添加量が 0.001重量%よりも少ない場合には、上記の重合を充分に抑制することが困難となるので好ましくない。一方、重合防止剤の添加量を5重量%よりも多くしても、重合防止剤量の増加に比例した重合防止効果のさらなる向上は望めず、添加した重合防止剤の一部が無駄になり、経済的に不利となるので好ましくない。
【0044】
分子状酸素としては、例えば、空気を用いることができるが、この場合、反応系、つまり、アクリル酸エステル類中に空気を吹き込む(いわゆる、バブリング)ようにすればよい。尚、上記重合を充分に抑制するために、重合防止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
【0045】
上記反応は、溶媒中で行うことができるが、アクリル酸エステル類が液体状である場合には無溶媒で行うこともできる。上記の溶媒としては、具体的には、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の炭化水素類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、スルホラン;等が挙げられるが、上記反応を阻害するものでなければよく、特に限定されるものではない。これら溶媒は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。また、溶媒の使用量も特に限定されるものではない。
【0046】
上記の反応温度は、特に限定されるものではないが、前記した重合を抑制するために、0℃〜 200℃の範囲内が好ましく、30℃〜 120℃の範囲内が特に好ましい。反応温度が0℃よりも低い場合には、反応時間が長くなり過ぎ、アクリル酸エステル誘導体を効率的に製造することができなくなるので好ましくない。一方、反応温度が 200℃よりも高い場合には、前記した重合を抑制することができなくなるので好ましくない。反応時間は、上記反応が完結するように、反応温度や、アクリル酸エステル類、前記一般式(3)で表される糖類および/または前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類、および触媒の種類や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。また、反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0047】
上記の反応をより一層効率的に行うには、反応によって生成する水および/または低級アルコール(以下、アルコール類と称する)を反応系外に除去することが望ましい。上記アルコール類を反応系外に除去する方法としては、具体的には、例えば、減圧下で反応しながらアルコール類を留去する方法;共沸溶媒を用いてアルコール類を共沸させることにより留去する方法;アルコール類を吸収若しくは吸着する乾燥剤等の存在下で反応する方法;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら方法のうち、減圧下で反応しながらアルコール類を留去する方法、および、共沸溶媒を用いてアルコール類を共沸させることにより留去する方法がより好ましい。これら方法は、単独で実施してもよく、また、二種類以上を組み合わせて実施してもよい。
【0048】
上記の共沸溶媒としては、具体的には、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられるが、上記反応を阻害するものでなければよく、特に限定されるものではない。これら共沸溶媒は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。また、共沸溶媒の使用量も特に限定されるものではない。
【0049】
反応終了後、必要に応じて、反応溶液を中和剤を用いて中和してもよい。上記の中和剤としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら中和剤は、例えば、粉末状または顆粒状の固体、或いは水溶液として用いればよい。
【0050】
また、反応終了後の反応溶液には、例えば、ヘテロポリ酸および/またはその塩等の触媒や、微量の副生成物、或いは、原料に含まれていた不純物等が含まれている。そこで、例えばカラムクロマトグラフ法等によって精製することで、所望するアクリル酸エステル誘導体、即ち、本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体が容易に得られる。尚、上記精製手段は、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明にかかるアクリル酸エステル系重合体は、上記のアクリル酸エステル誘導体を単独で重合させるか、或いは、アクリル酸エステル誘導体と共重合可能な単量体(以下、単に単量体と記す)と共重合させることにより、容易に製造される。
【0052】
上記の単量体としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類:シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸のシクロアルキルエステル類:スチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル化合物類:アクリロニトリル等のニトリル類:等の疎水性オレフィン系化合物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸金属塩、N-ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類:等の親水性オレフィン系化合物;
ジビニルベンゼン、一般式(6)
【0053】
【化12】
【0054】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表す)
で表されるアクリル酸エステル類:等の多官能性オレフィン系化合物;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0055】
つまり、本発明にかかるアクリル酸エステル系重合体を構成する前記一般式(5)で示される構造単位以外の構造単位は、特に限定されるものではない。また、単量体の使用量、即ち、アクリル酸エステル誘導体と単量体との割合は、特に限定されるものではない。
アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法;イオン化放射線、電子線等の放射線や、紫外線を照射する重合方法;加熱による重合方法;等の従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0056】
上記の重合開始剤としては、具体的には、例えば、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、重合開始剤の使用量や重合反応の反応条件等は、特に限定されるものではない。得られるアクリル酸エステル系重合体の重合度は、数平均分子量が 1,000〜2,000,000 の範囲内となるような値が好ましく、 5,000〜1,500,000 の範囲内となるような値がさらに好ましい。尚、上記の重合反応は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0057】
以上のように、本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体は、前記一般式(1)で表される構造を有している。該アクリル酸エステル誘導体は、前記一般式(2)で表されるアクリル酸エステル類と、前記一般式(3)で表されるヘミアセタール水酸基を含有する糖類、および/または、前記一般式(4)で表されるアルキルグリコシド類とを反応させることにより、容易に製造することができる。また、本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体は、前記一般式(5)で表される構造単位を有しており、該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 1,000〜2,000,000 の範囲内である。
【0058】
上記アクリル酸エステル誘導体およびアクリル酸エステル系重合体は、エステル結合を介さずに側鎖に糖残基が導入されているため、耐加水分解性に優れている。即ち、塩基の存在下においても加水分解を受けず、糖残基が脱離しない。このことから、上記アクリル酸エステル系重合体は、側鎖に糖残基を安定して含有することができる。また、グリコシド結合は、生体内や自然界に存在する結合であり、上記アクリル酸エステル系重合体は、親水性、生分解性、および生体適合性に特に優れ、例えば、表面処理剤、医療用材料、吸水性樹脂、界面活性剤等の種々の用途に好適に用いることができる。また、上記の製造方法により、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用なアクリル酸エステル誘導体を容易に得ることができる。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0060】
〔実施例1〕
温度計、および攪拌装置を取り付けた 300mlの反応容器に、アクリル酸エステル類としてのエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、および重合防止剤としてのp-t-ブチルカテコール1.30gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのグルコース18.0gと、触媒としてのパラトルエンスルホン酸一水和物 0.7gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0061】
反応終了後、該反応溶液を中和剤である2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、所定の方法を用いて減圧濃縮した。得られた濃縮液をいわゆるカラムクロマトグラフ法を用いて分離、精製した。尚、カラムクロマトグラフィーには、クロロホルム:メタノール=9:1の溶液を展開溶媒として用いた。また、吸着剤には、シリカゲルを用いた。
【0062】
以上のようにして得た物質について、 1H−NMR、13C−NMR、および赤外吸収スペクトル(IR)を測定すると共に、元素分析を行うことにより、物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。反応生成物の 1H−NMRのチャートを図1に、13C−NMRのチャートを図2に、赤外吸収スペクトルを図3にそれぞれ示す。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は63モル%であった。
【0063】
上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。また、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0064】
〔実施例2〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、重合防止剤としてのヒドロキノン0.07g、および共沸溶媒としてのトルエン80gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース 9.0gと、触媒としての塩酸 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が75℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を90℃、 350mmHgで2時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水(アルコール類)は、トルエンと共沸させ、いわゆるディーン・スターク法(Dean and Stark method) を用いて反応系外に除去した。
【0065】
反応終了後、該反応溶液を中和剤である無水炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0066】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例1の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は68モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。
【0067】
〔実施例3〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、重合防止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル0.65g、および溶媒としてのクロロベンゼン 100gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのメチルグルコシド19.4gと、触媒としてのタングストリン酸 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をクロロベンゼンを還流させながら常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0068】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0069】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例1の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は60モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。
【0070】
〔実施例4〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、重合防止剤としてのp-t-ブチルカテコール0.10g、および共沸溶媒としてのシクロヘキサン10gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのガラクトース12.0gと、触媒としての三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体 2.6gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を95℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、シクロヘキサンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
反応終了後、該反応溶液を中和剤である2N−水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0071】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの収率は68モル%であった。
【0072】
上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。また、エチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0073】
〔実施例5〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、および重合防止剤としてのフェノチアジン0.03gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのエチルガラクトシド20.8gと、触媒としてのモリブドリン酸 1.6gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を80℃、常圧で 2.5時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0074】
反応終了後、該反応溶液を1N−水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0075】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例4の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの収率は62モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。
【0076】
〔実施例6〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.02g、およびシクロヘキサン15gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのN-アセチルグルコサミン22.1gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 3.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を90℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、シクロヘキサンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0077】
反応終了後、該反応溶液を1N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0078】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの収率は59モル%であった。
【0079】
上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。また、エチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0080】
〔実施例7〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、およびヒドロキノン0.65gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのキシロース22.5gと、触媒としてのイオン交換樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製;商品名 Dowex−50W)12.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で5時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0081】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0082】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートの収率は52モル%であった。
【0083】
上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。また、エチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0084】
〔実施例8〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、および重合防止剤としてのp-ベンゾキノン0.04gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのメチルキシロシド 8.2gと、触媒としてのモリブドケイ酸 0.8gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が75℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を90℃、 600mmHgで2時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成するメチルアルコール(アルコール類)は、反応系外に留去(除去)した。
【0085】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸ナトリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0086】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例7の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートの収率は58モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。
【0087】
〔実施例9〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、p-t-ブチルカテコール0.08g、および共沸溶媒としてのヘプタン10gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのマルトース18.0gと、触媒としての硫酸 0.5gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、ヘプタンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0088】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0089】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートの収率は50モル%であった。
【0090】
上記の反応条件並びに結果を、表1および表2にまとめた。また、エチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0091】
〔実施例10〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.30g、および共沸溶媒としてのo-キシレン75gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのラクトース17.1gと、触媒としてのイオン交換樹脂(三菱化学株式会社製;商品名 Diaion SK)13.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が70℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を95℃、 160mmHgで6時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、o-キシレンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0092】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0093】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートの収率は48モル%であった。
【0094】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、エチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0095】
〔実施例11〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、およびフェノチアジン0.25gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としてのマルトペンタオース41.4gと、塩酸 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を85℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0096】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸ナトリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0097】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、エチル−α-(マルトペンタオシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(マルトペンタオシドメチル) アクリレートの収率は42モル%であった。
【0098】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、エチル−α-(マルトペンタオシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表9にまとめた。
【0099】
〔実施例12〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、アクリル酸エステル類としてのn-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.39gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース13.5gと、イオン交換樹脂(商品名 Dowex−50W)15.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を95℃、常圧で5時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0100】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0101】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、n-ブチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は60モル%であった。
【0102】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、n-ブチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0103】
〔実施例13〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、およびp-t-ブチルカテコール0.20gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのエチルグルコシド26.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 0.8gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が75℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を90℃、 550mmHgで 2.5時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成するエチルアルコール(アルコール類)は、反応系外に留去(除去)した。
【0104】
反応終了後、該反応溶液を1N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0105】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例12の反応生成物と同じ物質、即ち、n-ブチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は66モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。
【0106】
〔実施例14〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、ヒドロキノン0.79g、およびクロロベンゼン85gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ガラクトース18.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をクロロベンゼンを還流させながら常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0107】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸ナトリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0108】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、n-ブチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの収率は61モル%であった。
【0109】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、n-ブチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0110】
〔実施例15〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、ヒドロキノン0.05g、および溶媒としてのベンゼン90gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのメチルガラクトシド14.6gと、触媒としてのタングストケイ酸 0.8gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をベンゼンを還流させながら常圧で 2.5時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0111】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸カリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0112】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例14の反応生成物と同じ物質、即ち、n-ブチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの収率は60モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。
【0113】
〔実施例16〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、p-ベンゾキノン0.06g、およびトルエン 110gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、N-アセチルグルコサミン16.6gと、塩酸 0.5gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が75℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を 100℃、 550mmHgで 1.5時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、トルエンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0114】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0115】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、n-ブチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの収率は60モル%であった。
【0116】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、n-ブチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0117】
〔実施例17〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、フェノチアジン0.08g、およびベンゼン70gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、キシロース15.0gと、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体 2.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をベンゼンを還流させながら常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0118】
反応終了後、該反応溶液を1N−水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0119】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、n-ブチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートの収率は53モル%であった。
【0120】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、n-ブチル−α-(キシロシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0121】
〔実施例18〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、n-ブチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート79.0g、およびヒドロキノンモノメチルエーテル0.10gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、マルトース22.5gと、イオン交換樹脂(商品名 Dowex−50W)15.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で6時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0122】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0123】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、n-ブチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記n-ブチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートの収率は42モル%であった。
【0124】
上記の反応条件並びに結果を、表3および表4にまとめた。また、n-ブチル−α-(マルトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0125】
〔実施例19〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、アクリル酸エステル類としてのメチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート58.0g、フェノチアジン0.06g、およびシクロヘキサン8gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース12.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 0.6gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、シクロヘキサンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0126】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸ナトリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0127】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、メチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記メチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は67モル%であった。
【0128】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、メチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0129】
〔実施例20〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート58.0g、ヒドロキノン0.03g、およびベンゼン85gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、アルキルグリコシド類としてのブチルグルコシド22.2gと、タングストリン酸 1.5gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をベンゼンを還流させながら常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0130】
反応終了後、該反応溶液を1N−水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0131】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例19の反応生成物と同じ物質、即ち、メチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記メチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は61モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。
【0132】
〔実施例21〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート58.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.58g、およびトルエン 100gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ガラクトース13.5gと、イオン交換樹脂(商品名 Dowex−50W)11.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液が75℃に達した時点で反応容器内の減圧を開始し、反応溶液を 100℃、 550mmHgで5時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、トルエンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0133】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0134】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、メチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記メチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの収率は60モル%であった。
【0135】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、メチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表10にまとめた。
【0136】
〔実施例22〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート58.0g、ヒドロキノン0.10g、およびトルエン20gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、N-アセチルグルコサミン17.7gと、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体 2.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 115℃、常圧で1時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、トルエンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0137】
反応終了後、該反応溶液を無水炭酸カリウムで中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0138】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、メチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記メチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの収率は62モル%であった。
【0139】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、メチル−α-(2-アセトアミド -2-デオキシグルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0140】
〔実施例23〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、メチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート58.0g、およびp-ベンゾキノン0.02gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ラクトース12.8gと、イオン交換樹脂(商品名 Diaion SK)10.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を90℃、常圧で6時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0141】
反応終了後、該反応溶液を濾過してイオン交換樹脂を濾別した。得られた濾液を実施例1と同様にして分離、精製した。
【0142】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、メチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記メチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートの収率は44モル%であった。
【0143】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、メチル−α-(ラクトシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0144】
〔実施例24〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、アクリル酸エステル類としてのα−ヒドロキシメチルアクリレート51.0g、p-ベンゾキノン0.10g、および溶媒としてのN,N-ジメチルホルムアミド 100gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース 9.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 1.5gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0145】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0146】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、α-(グルコシドメチル) アクリレートであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は38モル%であった。
【0147】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、α-(グルコシドメチル) アクリレートの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0148】
〔実施例25〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、アクリル酸エステル類としてのα−ヒドロキシメチルアクリル酸ナトリウム62.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.06g、およびN,N-ジメチルホルムアミド 100gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース12.0gと、硫酸12.4gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を95℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0149】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0150】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、α-(グルコシドメチル) アクリル酸ナトリウムであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記α-(グルコシドメチル) アクリル酸ナトリウムの収率は40モル%であった。
【0151】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、α-(グルコシドメチル) アクリル酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0152】
〔実施例26〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ナトリウム62.0g、p-ベンゾキノン0.13g、およびN,N-ジメチルホルムアミド 110gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ガラクトース 9.0gと、硫酸12.4gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 105℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0153】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0154】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、α-(ガラクトシドメチル) アクリル酸ナトリウムであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記α-(ガラクトシドメチル) アクリル酸ナトリウムの収率は42モル%であった。
【0155】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、α-(ガラクトシドメチル) アクリル酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0156】
〔実施例27〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ナトリウム62.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.31g、およびN,N-ジメチルホルムアミド 120gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、キシロース11.3gと、硫酸12.4gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で3時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0157】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0158】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、反応生成物である上記の物質が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体、即ち、α-(キシロシドメチル) アクリル酸ナトリウムであることを確認した。また、所定の方法により測定した上記α-(キシロシドメチル) アクリル酸ナトリウムの収率は35モル%であった。
【0159】
上記の反応条件並びに結果を、表5および表6にまとめた。また、α-(キシロシドメチル) アクリル酸ナトリウムの赤外吸収スペクトルの吸収波数並びに元素分析の測定値を、表11にまとめた。
【0160】
〔実施例28〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル 1.3g、およびクロロベンゼン 100gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、メチルグルコシド19.4gと、タングストリン酸 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液をクロロベンゼンを還流させながら常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0161】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0162】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例1の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は64モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表7および表8にまとめた。
【0163】
〔実施例29〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、およびヒドロキノン 1.3gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、メチルグルコシド19.4gと、モリブドリン酸 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0164】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化カリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0165】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例1の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は67モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表7および表8にまとめた。
【0166】
〔実施例30〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、およびp-t-ブチルカテコール 1.3gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、グルコース18.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 2.6gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を 100℃、常圧で2時間攪拌することにより反応を完了させた。
【0167】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を実施例1と同様にして濃縮、分離、精製した。
【0168】
以上のようにして得た物質について、実施例1と同様にして物質の同定を行った。その結果、得られた反応生成物は、実施例1の反応生成物と同じ物質、即ち、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートであった。また、所定の方法により測定した上記エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの収率は67モル%であった。上記の反応条件並びに結果を、表7および表8にまとめた。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
【表6】
【0175】
【表7】
【0176】
【表8】
【0177】
【表9】
【0178】
【表10】
【0179】
【表11】
【0180】
〔実施例31〕
実施例1の反応容器と同様の反応容器を用い、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート65.0g、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.50g、およびシクロヘキサン10gを仕込んで攪拌した。次に、上記の反応容器に、ヘミアセタール水酸基を含有する糖類としての溶性デンプン50.0gと、パラトルエンスルホン酸一水和物 1.0gとを添加した後、攪拌しながら徐々に加熱した。次いで、該反応溶液を95℃、常圧で4時間攪拌することにより反応を完了させた。また、反応によって生成する水は、シクロヘキサンと共沸させ、ディーン・スターク法を用いて反応系外に除去した。
【0181】
反応終了後、該反応溶液を2N−水酸化ナトリウム水溶液で中和した。得られた中和液を高速液体クロマトグラフィー(8020型・東ソー株式会社製)を用いて所定の分析条件で分析した。
【0182】
その結果、原料であるエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレートのピークが小さくなっており、代わりに、反応生成物、即ち、本発明にかかる新規なアクリル酸エステル誘導体であるエチル−α-(アミロシドメチル) アクリレートのピークが新たに出現した。尚、反応の前後において、反応溶液のヨウ素価に変化は認められなかった。
【0183】
〔実施例32〕
実施例1で得られたアクリル酸エステル誘導体であるエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、および重合開始剤としての過酸化ベンゾイル 0.002gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、上記の内容物を80℃に加熱することにより、エチル−α-(グルコシドメチル) アクリレートの重合反応を行って重合体を得た。
【0184】
以上のようにして得た重合体について、 1H−NMR、13C−NMR、および赤外吸収スペクトルを測定することにより、物質の同定を行った。その結果、上記の重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量(Mn)は 1,240,000であった。重合体の赤外吸収スペクトルを図4に示す。
【0185】
〔実施例33〕
実施例2で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、単量体としてのメチルメタクリレート 2.0g、および重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0186】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 1,087,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図5に示す。
【0187】
〔実施例34〕
実施例3で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、単量体としてのスチレン 2.1g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0188】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 1,115,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図6に示す。
【0189】
〔実施例35〕
実施例4で得られたアクリル酸エステル誘導体であるエチル−α-(ガラクトシドメチル) アクリレート 5.8g、および過酸化ベンゾイル 0.002gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の重合反応を行って重合体を得た。
【0190】
以上のようにして得た重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は39,000であった。重合体の赤外吸収スペクトルを図7に示す。
【0191】
〔実施例36〕
実施例2で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 4.0g、単量体としてのアクリル酸 1.0g並びにアクリル酸ナトリウム 3.0g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0192】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 210,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図8に示す。
【0193】
〔実施例37〕
実施例3で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 2.0g、実施例25で得られたアクリル酸エステル誘導体であるα-(グルコシドメチル) アクリル酸ナトリウム 1.0g、アクリル酸 2.0g、アクリル酸ナトリウム 5.0g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0194】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 240,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図9に示す。
【0195】
〔実施例38〕
実施例19で得られたアクリル酸エステル誘導体であるメチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 1.5g、アクリル酸 1.5g、アクリル酸ナトリウム 4.0g、および過酸化ベンゾイル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0196】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 290,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図10に示す。
【0197】
〔実施例39〕
実施例24で得られたアクリル酸エステル誘導体であるα-(グルコシドメチル) アクリレート 1.0g、単量体としてのエチルアクリレート 1.0g、アクリル酸 1.0g、アクリル酸ナトリウム 3.5g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.007gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0198】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 253,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図11に示す。
【0199】
〔実施例40〕
実施例25で得られたα-(グルコシドメチル) アクリル酸ナトリウム 0.8g、エチルアクリレート 1.3g、アクリル酸ナトリウム 6.2g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.01gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0200】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は 197,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図12に示す。
【0201】
〔実施例41〕
実施例28で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、および過酸化ベンゾイル 0.002gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の重合反応を行って重合体を得た。
【0202】
以上のようにして得た重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は42,000であった。重合体の赤外吸収スペクトルを図13に示す。
【0203】
〔実施例42〕
実施例29で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、メチルメタクリレート 2.0g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0204】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は56,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図14に示す。
【0205】
〔実施例43〕
実施例30で得られたエチル−α-(グルコシドメチル) アクリレート 5.8g、スチレン 2.1g、および 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.004gを試験管に入れ、窒素置換した後、該試験管を密栓した。次に、実施例32の重合反応と同様の共重合反応を行って共重合体を得た。
【0206】
以上のようにして得た共重合体について、実施例32と同様にして物質の同定を行った。その結果、上記の共重合体が本発明にかかる新規なアクリル酸エステル系重合体であることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した該アクリル酸エステル系重合体の数平均分子量は58,000であった。共重合体の赤外吸収スペクトルを図15に示す。
【0207】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、一般式(1)
【0208】
【化13】
【0209】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表し、Gは糖残基を表す)
で表されるアクリル酸エステル誘導体に関するものである。
【0210】
また、本発明は、以上のように、上記R1 が水素原子であり、R2 が水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または炭素数1〜8のアルキル基であるアクリル酸エステル誘導体に関するものである。
【0211】
また、本発明は、上記アクリル酸エステル誘導体を、ラジカル重合開始剤を用いて重合させるアクリル酸エステル系重合体の製造方法に関するものである。
【0212】
また、本発明は、さらに、共重合可能な単量体を共重合させる上記アクリル酸エステル系重合体の製造方法に関するものである。
【0213】
さらに、本発明は、以上のように、一般式(2)
【0214】
【化14】
【0215】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表す)
で表されるアクリル酸エステル類と、一般式(3)
【0216】
【化15】
【0217】
(式中、Gは糖残基を表す)
で表されるヘミアセタール水酸基を含有する糖類、および/または、一般式(4)
【0218】
【化16】
【0219】
(式中、Gは糖残基を表し、R3 は有機残基を表す)
で表されるアルキルグリコシド類とを反応させることを特徴とする前記一般式(1)で表されるアクリル酸エステル誘導体の製造方法に関するものである。
【0220】
その上、本発明は、以上のように、一般式(5)
【0221】
【化17】
【0222】
(式中、R1 は水素原子または有機残基を表し、R2 は水素原子、対イオン、または有機残基を表し、Gは糖残基を表す)
で表される構造単位を有するアクリル酸エステル系重合体に関するものである。
【0223】
さらに、本発明は、数平均分子量が 1,000 〜 2,000,000 である上記アクリル酸エステル系重合体に関するものである。
【0224】
上記アクリル酸エステル誘導体およびアクリル酸エステル系重合体は、エステル結合を介さずに側鎖に糖残基が導入されているため、耐加水分解性に優れている。即ち、塩基の存在下においても加水分解を受けず、糖残基が脱離しない。このことから、上記アクリル酸エステル系重合体は、側鎖に糖残基を安定して含有することができるという効果を奏する。上記アクリル酸エステル系重合体は、親水性、生分解性、および生体適合性に特に優れ、例えば、表面処理剤、医療用材料、吸水性樹脂、界面活性剤等の種々の用途に好適に用いることができる。また、上記の製造方法により、該アクリル酸エステル系重合体の合成に有用なアクリル酸エステル誘導体を容易に得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例(実施例1)において得られた反応生成物の 1H−NMRのチャートである。
【図2】 上記反応生成物の13C−NMRのチャートである。
【図3】 上記反応生成物の赤外吸収スペクトルである。
【図4】 上記反応生成物を重合させて得られた重合体、つまり、実施例32において得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図5】 本発明の他の実施例(実施例33)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図6】 本発明のさらに他の実施例(実施例34)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図7】 本発明のさらに他の実施例(実施例35)において得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図8】 本発明のさらに他の実施例(実施例36)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図9】 本発明のさらに他の実施例(実施例37)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図10】 本発明のさらに他の実施例(実施例38)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図11】 本発明のさらに他の実施例(実施例39)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図12】 本発明のさらに他の実施例(実施例40)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図13】 本発明のさらに他の実施例(実施例41)において得られた重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図14】 本発明のさらに他の実施例(実施例42)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
【図15】 本発明のさらに他の実施例(実施例43)において得られた共重合体の赤外吸収スペクトルである。
Claims (7)
- 一般式(1)
で表されるアクリル酸エステル誘導体。 - 上記R1 が水素原子であり、R2 が水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または炭素数1〜8のアルキル基である請求項1記載のアクリル酸エステル誘導体。
- 請求項1または2に記載のアクリル酸エステル誘導体を、ラジカル重合開始剤を用いて重合させることを特徴とするアクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- さらに、共重合可能な単量体を共重合させることを特徴とする請求項3に記載のアクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 一般式(2)
で表されるアクリル酸エステル類と、一般式(3)
で表されるヘミアセタール水酸基を含有する糖類、および/または、一般式(4)
で表されるアルキルグリコシド類とを反応させることを特徴とする一般式(1)
で表されるアクリル酸エステル誘導体の製造方法。 - 一般式(5)
で表される構造単位を有するアクリル酸エステル系重合体。 - 数平均分子量が 1,000〜2,000,000 であることを特徴とする請求項6に記載のアクリル酸エステル系重合体。
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