JP3907318B2 - 伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法 - Google Patents
伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを別個に伝送するパルス信号を受信し、これを変換して高いタイミング精度で元の2値電気信号を再生するための、伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在ICテスタ内の信号伝送は全て電気信号で行っているが、最大伝送距離および周波数特性においてより優れており、かつ伝送媒体(光ファイバ)が細く軽量であると言う長所から、特にテスタ本体とテストヘッド間の信号伝送に対しては光伝送を使用した方が有利であると考えられている。
【0003】
しかしながら、テスタ本体とテストヘッド間の信号には、多数のパルス幅が混在する上に非常に高いタイミング精度が要求されるため、一般のデジタルデータ伝送と同様の方法を光伝送に置き換えることは困難である。従って、この様な信号を光で伝送するためには、伝送波形を光伝送により適した形に変換して伝送し、受信時には変換された波形を識別して元の伝送波形に変換し直す必要がある。
【0004】
送信時の波形を光伝送により適した形に変換するための方法として、既に同一出願人によるPCT出願(PCT/JP98/00246)が存在する。この出願に記載されたシステムでは、伝送すべき信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを検出し、このタイミングに基づく両極性パルスを形成する。次にこの両極性パルスを基にして、立上がりおよび立下がりのタイミングを示す光強度変調信号を形成して、これを光ファイバによって伝送するものである。
【0005】
この様に、信号の立上がりおよび立下がりのタイミングのみを光伝送することによって、ICテスタ内の信号の様に多数のパルス幅が混在する上に高いタイミング精度が要求される信号であっても、安定した光伝送を行うことができる。
図1は、上記の光伝送方式を説明するための波形図である。伝送すべき信号波形の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す両極性パルスである光強度信号図1(a)は、オフセット光を含んだ形で光ファイバによって伝送される。このオフセット光は、通常状態で発光素子を弱く発光させておくことによって、発光時の立上がりの遅れを取り除く為のものである。
【0006】
受信側では、伝送された光強度信号図1(a)を受光し光電変換してDC成分(オフセット光)を取り除くことにより、元の信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す両極性パルス図1(b)を得る。この両極性パルス図1(b)を信号処理することにより、立上がりおよび立下がり信号図1(c)を得て、元の2値信号を再現する。
【0007】
両極性パルス図1(b)から立上がりおよび立下がりエッジを識別し、2値の電気信号に変換し直して出力する簡単な方法として、図2に示すヒステリシスコンパレータ1を用いたものがある。一般にヒステリシスコンパレータは、入力信号の立上がりエッジに対する識別レベルと立下がりエッジに対する識別レベルを異なったレベルに設定できることに加えて、一度何れかのエッジを識別すると、次に逆のエッジを識別するまで前のエッジに対応した出力を保持する機能を持っている。
【0008】
従って、ヒステリシスコンパレータ1において、立上がりおよび立下がりエッジ用の識別レベルをそれぞれ予め設定して置くことによって、ヒステリシスコンパレータの上記機能そのものを使用し、入力側に導入された両極性パルスから出力側において元の2値信号を容易に再現することができる。
なお、図1に示した両極性パルスを伝送する方式とは異なって、信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す符号反転パルス対を光伝送に利用した信号伝送方式を図3に示す。この方式に関しては、同一出願人による特許出願特願平9−9271号「光伝送システムおよび光伝送方式」に詳細に示されている。
【0009】
伝送される光強度信号図3(a)は、符号反転パルス対の符号反転のタイミングで、元の信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す。この符号反転パルス対は、受信側で光電変換され、DC成分(オフセット光)が除去されて、符号反転パルス対図3(b)が形成される。このパルス対の符号反転タイミングを識別することにより、元の伝送すべき波形の立上がりおよび立下がりタイミングを示す、立上がり信号および立下がり信号図3(c)が形成される。
【0010】
なお、符号反転パルス対から立上がりおよび立下がりエッジを検出して元の2値信号を再現する為に、図2に示したヒステリシスコンパレータを同様に使用することが出来る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
2値信号の再生のためにヒステリシスコンパレータを用いる方法は、それが簡単な回路で実現できる点で非常に有利であるが、識別レベルの設定に関してタイミング精度を劣化させる重要な問題が生じる。
以下にこの問題を、特に図1の両極性パルスを用いた信号伝送方式に関して詳細に説明するが、図3に示す符号反転パルス対を用いた信号伝送方式に関しても全く同じ問題が発生することは明らかである。
【0012】
図4(a)は、ヒステリシスコンパレータ1の入力側で受信された両極性パルス信号の波形と、ヒステリシスコンパレータ1の立上がりおよび立下がりエッジ識別レベルL1 、L2 を示している。また図4(b)は、図4(a)で設定された識別レベルを基にしてヒステリシスコンパレータ1によって再生された出力側2値信号、即ち再生信号Sを示す。
【0013】
図4(a)に示す様に、実際の受信信号には通常ある程度のノイズレベルおよびリンギングが加わっているため、識別レベルL1 、L2 の設定が低すぎる場合には、ノイズおよびパルス信号に続くリンギングが識別レベルを越える確率が増加し、両極性パルス以外のところで誤ってエッジを識別してしまう可能性が高くなる。従って、上記の装置で各エッジをより確実に(少ない誤り率で)識別させるためには、図3(a)に示す様に、立上がりエッジ用の識別レベルL1 と立下がりエッジ用の識別レベルL2 との差を十分大きく確保して置く必要がある。
【0014】
しかしながら光伝送では、伝送する光強度信号の振幅を元の信号波形に関して精度良く設定することは困難であり、また光強度信号の振幅は時間的に不安定でもある。そのため、識別レベルを固定して受信信号のエッジを検出すると送信側のタイミングを正確に再現することができず、上記のように識別レベルの差が大きいほど逆に不正確さが増大すると言う事態が発生する。以下にその理由を、図5を参照して説明する。
【0015】
図1(b)および(c)から理解される様に、2値信号の立上がりおよび立下がりタイミングは、正確にはそれぞれ対応した両極性パルスにおいて、受信パルスのレベルがその最大値または最小値に対して予め決められた特定の割合(例えば50%)に達するタイミングに対応する。このタイミングは、受信信号の振幅の変化にかかわらず一定であり、従って正確に送信時のタイミングを伝えることができる。
【0016】
図5(a)に太い実線で示す理想的な受信信号Saの立上がりエッジが50%に達する時のタイミングをA1 とする。今、常に理想的な受信信号が伝送されて来るのであれば、識別レベルL1 をその50%レベルに固定しておいてもタイミングA1 を正確に検出でき、このタイミングA1 に基づいて図5(b)に示す理想的な再生パルス信号Paを生成することができる。ところが、受信信号の振幅が理想的な振幅より低くなっている場合、即ち図5(a)の受信波形Scの場合では、固定された識別レベルL1 によって識別されるタイミングは、50%レベルとは異なるタイミングC1 となってしまい、再生されるパルス信号はタイミングC1 で立上がる信号Pcとなる。その結果、本来のタイミングからのずれ即ちスキューが発生する。
【0017】
また受信信号の振幅が、何らかの原因で時間的に変動し、図5(a)の波形Sbとなった場合には、エッジが識別されるタイミングはさらにずれてタイミングB1 となり、再生されるパルス信号PbはタイミングB1 で立上がる信号となる。その結果、スキューの時間的な変動が発生する。
この様なスキューおよび特にスキューの変動は、そのまま直接タイミング精度を劣化させる原因となるため、高いタイミング精度が要求されるICテスタの信号伝送においては重大な問題である。
【0018】
なお図6に、入力信号が図3に示す符号反転パルス対である場合に、再生パルス信号においてタイミングのずれが発生する様子を示す。この場合は、図3から理解される様に、2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングは、正確にはそれぞれ対応した符号反転パルス対におけるパルス符号の極性が反転するタイミングである。即ち図6の例では、ゼロレベルを識別レベルとした時のタイミングA2 に相当している。
【0019】
ところが図示する様に識別レベルL1 およびL2 がゼロレベルから大きく離れている場合には、識別されるタイミングは図6のタイミングC2 となり、本来のタイミングからのずれ、即ちスキューが発生する。また受信する符号反転パルス対の振幅が何らかの原因で時間的に変動し、図6(a)の点線に示す様な波形となった場合には、エッジが識別されるタイミングは更にずれてタイミングB2 とる。この結果、スキューの時間的な変動が発生する。
【0020】
以上の様に、入力信号が図3に示す符号反転パルス対の場合でも、エッジの識別レベルが本来の識別レベル(この場合、ゼロレベル)から離れていると、再生される信号のタイミング精度が劣化すると言う重大な問題が発生する。
この様なタイミング精度の劣化を解消する一つの方法として、両極性パルスあるいは符号反転パルス対の立上がりおよび立下がり時間を十分に高速化し(図5(a)または図6(a)の受信パルス信号のエッジの傾きを急にして)、図5(b)または図6(b)に示すタイミングのずれを小さくしていく方法が有効であるが、そのためには発光素子の特に立下がり時間を短くすることが必要であり、また受光素子や受信側の増幅器にも高速動作の可能な回路または素子が必要となる。ところが、発光素子の立下がり時間を短くすることは非常に困難であり、かつ高速動作可能な受光素子および増幅器を用いることによって装置の製造コストが大幅に増加すると言う欠点を有しており、その実現性には問題がある。
【0021】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものであり、装置の大幅なコスト上昇を伴うことなく、光伝送された信号から高いタイミング精度で元の2値の電気信号を再生することが可能な新規な伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号を受信し、受信したパルス信号の立上がりおよび立下がりエッジをそれぞれ識別するための識別レベルを有し、かつ受信したパルス信号から一旦立上がりおよび立下がりエッジの何れか一方を識別すると識別したエッジに対応する出力を立上がりおよび立下がりエッジの他方を識別するまで維持する機能を備えたヒステリシスコンパレータと、このヒステリシスコンパレータの出力を遅延するための遅延回路と、受信したパルス信号と遅延回路によって遅延されたヒステリシスコンパレータ出力とを同相および逆相差動入力端子にそれぞれ入力して両者の差動を検出し再生信号として出力する差動レシーバICとを具備し、遅延回路における遅延量を調節することにより、差動レシーバICにおけるそれぞれの差動入力のタイミングを調節し、異なる振幅を有する受信したパルス信号に対して再生信号におけるタイミング誤差を実質的に無視しうる程度に減少させた伝送波形変換受信回路を提供する。
【0023】
本発明ではさらに、上記の伝送波形変換受信回路において、ヒステリシスコンパレータと差動レシーバIC間にヒステリシスコンパレータの出力における立上がりおよび立下がりエッジのレベル調整を行うレベル調整回路を設け、差動入力のタイミング調節としてレベル調整回路のレベル調整をも含むようにする。
さらにまた、受信したパルス信号を第2の遅延回路によって遅延して差動レシーバICに入力し、差動入力のタイミング調節のための遅延量の調節を遅延回路およびこの第2の遅延回路の差の遅延量で行う様にする。
【0024】
さらにまた、ヒステリシスコンパレータはその正論理出力が差動レシーバICの同相入力端子に接続され、その場合には受信したパルス信号は差動レシーバICの逆相入力端子に接続されている。
あるいはまた、ヒステリシスコンパレータはその負論理出力が差動レシーバICの逆相入力端子に接続され、その場合には受信したパルス信号は差動レシーバICの同相入力端子間に接続されている。
【0025】
また本発明の上記目的は、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号をヒステリシスコンパレータによって受信してこの受信パルス信号から立上がりおよび立下がりエッジのタイミングを検出し2値信号を形成するステップと、形成された2値信号を適宜遅延するステップと、遅延された2値信号と、受信パルス信号とを差動レシーバICの同相および逆相差動入力端子に入力して両者の差動を検出することにより元の2値信号を再生するステップとを具備し、遅延ステップにおける遅延量は、異なる振幅を有する受信パルス信号に対応する再生2値信号のタイミング誤差が実質的に無視しうる程度となるように調整される、伝送波形変換受信方法によって達成される。
【0026】
さらに上記方法は、形成された2値信号の立上がりおよび立下がりエッジの勾配を調整するステップを備えている。
以上の様な構成を有する本発明の回路および方法によれば、ヒステリシスコンパレータの出力信号を遅延して差動レシーバICの差動入力端子に入力することによって、この出力信号を最終的なタイミング検出の識別レベルとして用いることができる。
【0027】
従って、他方の差動入力端子に立上がりおよび立下がりのタイミング検出を実行する受信パルス信号を導入し、上記の遅延量を適宜調節することによって、受信信号の中の必要なエッジをゼロレベルに近いレベルで検出することができる。その結果、振幅の異なる受信パルス信号の再生信号におけるタイミング誤差を実質的に無視しうる程度に減少することができる。
【0028】
なお、ヒステリシスコンパレータと差動レシーバIC間にレベル調整回路を設けて、ヒステリシスコンパレータの出力信号における立上がりおよび立下がり速度(エッジの勾配)を調整することによって、さらに識別のタイミングを調整することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の回路および方法では、光伝送され光電変換された入力パルス信号をタイミング精度を劣化させることなく元の2値信号に変換するために、まず第1の段階で任意に設定された識別レベルにより受信パルス信号のエッジを識別することによりこのパルス自体の存在を確認し、次に第2の段階でなるべく理想的な識別レベルを基に受信パルス信号の立上がりまたは立下がりエッジを識別し、そのタイミングを2値の電気信号の再生に利用する、2段階識別機構を採用したことをその大きな特徴とする。
【0030】
図7に、本発明の一実施形態にかかる伝送波形変換受信回路を示す。この回路は、その一経路において、光電変換された受信パルス信号を予め決められた基準レベルと比較し正および負の論理出力QおよびバーQを出力するヒステリシスコンパレータ10と、このコンパレータ10の正論理出力を遅延するための第1の遅延回路12と、遅延された信号のレベルを調整するためのレベル調整回路14および回路12、14を介したコンパレータ10の正論理出力をその差動入力端子(同相入力側)に入力する差動レシーバIC16を含んでいる。
【0031】
本回路の他の経路では、入力された受信パルス信号を第2の遅延回路(素子)18によって適宜遅延した後、差動レシーバIC16の差動入力端子(逆相入力側)に入力する構成を有している。なお差動レシーバIC16として、ICテスターのドライバICを利用し、これに直接接続しても良い。ヒステリシスコンパレータ10は、図2に示した一般的なヒステリシスコンパレータであり、従って受信パルス信号の立上がりおよび立下がりエッジの識別レベルをそれぞれ別個に設定することができる。また、一旦何れかのエッジを識別すると、それに対応する出力を次に逆のエッジを識別するまで保持する機能を有している。
【0032】
本回路では、ヒステリシスコンパレータ10において、予め決められたエッジの識別レベルによって受信パルス信号の何れかのエッジを検出して出力Q、バーQを反転し、パルス自体の存在を検出すると共に、この段階でタイミング誤差を含んだ2値信号を一旦再生する。
次に、このようにして一旦再生された2値信号を遅延し、レベル調整して差動レシーバIC16またはICテスターのドライバICの差動入力に入力することにより、第2の遅延回路18を介して差動レシーバIC16に入力される受信パルス信号に対する最終的なタイミングの識別レベルを構成する。第1および第2の遅延回路12、18の遅延量およびレベル調整回路14でのレベル調整を適宜行うことによって、タイミング誤差をなるべく含まないタイミングで、元の2値信号を再生することができる。
【0033】
以下に、図8および9の波形図を参照して、図7に示す回路の動作を詳細に説明する。なおこの動作説明においては、本回路に図1(b)に示す両極性パルスが入力されるものとし、前述の2段階の識別機構の前段において受信パルス信号の前方エッジを検出し、後段において後方エッジを再検出する場合について述べる。
【0034】
図8において、各波形図8(a)、(b)、(c)および(d)は、図7の各点(a)、(b)、(c)および(d)における信号波形を示す。
まず図8(a)に示す(正・負の)両極性パルスは、ヒステリシスコンパレータ10の入力側において2つの経路に分岐される。1つの経路では、一般的なヒステリシスコンパレータ10に入力され、そこで第1の段階として入力パルス信号の前方エッジが検出されてコンパレータ出力QおよびバーQを反転させる。つまりこの段階で、タイミング誤差を含んだ2値信号が一旦再生される。図8(c)に点線でこの様にして再生された2値信号を示す。なお図8(c)は、この様にして再生された2値信号が、受信パルス信号の振幅変動に対して識別タイミングのずれを生じていることを示している。
【0035】
出力信号Qは、途中で第1の遅延回路(または遅延素子)12によって遅延され、さらにレベル調整回路14によって信号のレベルが調整されて、図8(c)の実線で示す信号波形が形成される。
分岐したもう一方の経路では、入力された両極性パルスは第2の遅延回路(又は遅延素子)18によって適宜遅延されて、図8(b)に示す波形の信号となる。第1、第2の遅延回路12、18の遅延量は、図8(b)、(c)に示す様に、遅延された受信パルス信号の後方エッジと図8(c)の符号反転タイミングとが適度に近接するように設定される。なお、図8(b)と(c)とにおけるエッジの勾配は正負の符号が逆であるため、両者は図8(c)の符号反転エッジ以外のタイミングで交差することはない。
【0036】
図8(b)および(c)に示す波形を差動レシーバIC16の差動入力にそれぞれ入力して、(c)−(b)の差動で2値信号を再生すると、図8(d)の再生波形が得られる。なお図8(d)では、再生波形中にタイミング誤差が残っている様子が描かれているが、後述するようにこの誤差は図8(a)に示すものよりも遙に小さいことが見いだされる。また、後述するように、各遅延回路の遅延量およびレベル調整回路の調整レベルを適宜設定することにより、このタイミングの誤差、即ちスキューをゼロまたは実質的に無視しうる程度に減少させることが可能である。
【0037】
以下に図9を参照して、図8(d)の波形においてどの様にしてタイミング誤差すなわちスキューが減少したかに関して説明する。
図9では、説明を簡単にするために、正の受信パルス信号からタイミングを検出する場合に関してのみ示している。図9の波形(1)は、振幅が異なる2つの受信パルス信号の様子を示している。ここで、この2つの受信パルスを立上がりエッジ用識別レベルL1 で識別したときの時間差、つまりスキューをΔTsとする。ヒステリシスコンパレータ10の出力波形である図9の波形(2)には、そのスキュー(ΔTs)がそのままタイミング誤差として反映されていることがわかる。なお図9の波形(2)は図8の波形(c)に相当する。
【0038】
図7のレベル調整回路14によって、図9の波形(2)における立上がりエッジの勾配を適度に調整し、立上がり速度(Tr)をt3(秒/ボルト)とし、かつ第1、第2の遅延回路12、18で遅延量を調整することにより、図9の波形(3)に示す様に、受信パルス(元の正のパルス)のかなり低いレベルで両エッジを交差させることが出来、その結果スキューが大幅に改善される。なお図9の波形(3)は、波形(2)における立上がりエッジの勾配を適度に調整し、もう一度元の正のパルスと重ね合わせた図である。
【0039】
図9の波形(3)はまた、差動レシーバICの同相・逆相入力の様子をそのまま同じタイミングで書いたものであり、大小それぞれの振幅の場合の入力波形の交点が識別タイミングとなる。波形(3)に簡略化して示した例を見ても、識別タイミングの誤差が大幅に減少していることが容易に理解される。
図9(3)に示すスキュー改善の効果を定量的に示すために、そのタイミングの様子を図9の波形(3−1)に拡大して示す。なお波形(3−1)は、波形(3)の円形部分を拡大して示すものである。
【0040】
(3−1)の波形図において、受信し遅延された正極性パルスが消滅するタイミングを原点Oに取り、受信信号の振幅が小さい場合の同相入力波形(太線)の符号反転タイミングまでの時間差をtdとする。更に、受信信号振幅が小さい時の正のパルスの立下がり速度(Tf)をt1(秒/ボルト)、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)をt2(秒/ボルト)とすると、受信信号振幅が小さい時の差動識別タイミング(Ts1)は、td ×t1/(t1+t3)となり、受信信号振幅が大きいときの差動識別タイミング(Ts2)は、(ΔTs+td)×t2/(t2+t3)となる。
【0041】
従って、受信信号の振幅が異なる場合の最終的な差動識別タイミングの差(ΔTs' )は、
【0042】
【数1】
となる。t1>t2なのでΔTs' <ΔTsとなり、tdおよびt3またはその何れか一方を調整することで分子を小さくして結果的にΔTs' を小さくすることが可能である。前述したように、tdは正極性パルスがゼロとなる点から受信信号の振幅が小さい場合の同相入力波形(太線)の符号反転エッジまでの時間差であり、この値は図7の回路における第1、第2の遅延回路12、18の遅延量を変更することにより調整が可能である。また、t3は同相入力波形の立上がり速度であり、この値はレベル調整回路14によって調整される。
【0043】
tdおよびt3の条件を最適化することによって、分子をゼロにすることも可能である。図9の波形図(4)に、最適化された条件における同相入力波形と逆相入力波形の関係を示す。なおこの様な最適条件は、両極性パルスの波形が歪んでいる場合や同相入力波形のレベルや立上がり速度(t3)に制限がある場合には、必ずしも実現されないことがある。
【0044】
また、受信信号がヒステリシスコンパレータ10に導入されることによって必然的に信号の遅延が生じるため、この遅延のみにより差動レシーバIC16の両差動入力のタイミングが十分にスキューを改善することができる場合には、遅延回路12、18は省略可能である。また同様にレベル調整回路14に関しても、調整レベルがゼロ、即ちこの回路を省略できる場合も存在する。
【0045】
図7に示す回路において、差動レシーバICの同相入力・逆相入力を反対にして、その出力において論理を反転させても同様の波形が得られることは明らかである。また図7の回路は、上述したように、受信した両極性パルスの後方エッジを再生パルス信号の生成タイミング検出に用いる場合に適するように構成されているが、一方、両極性パルスの前方エッジをタイミング検出に利用するためには、図7においてヒステリシスコンパレータ10の出力Qに代わって出力バーQを差動レシーバIC16の逆相入力端子(−)に導入することによって、可能である。
【0046】
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる伝送波形変換受信回路を示す。この回路は、ヒステリシスコンパレータ10の出力Qに代わって出力バーQを差動レシーバIC16の逆相入力端子(−)に導入した点で、図7の回路と相違している。従って上述したように、両極性パルスの前方エッジのタイミング検出を行う場合に適用可能な回路である。しかしながらこの場合には、図7の回路によって受信パルスの後方エッジのタイミングを検出する場合と異なって、両極性パルスのスキューを完全にキャンセルすることはできない。
【0047】
一方、図10の回路は、図3に示した符号反転パルス対を受信する場合、受信信号の振幅変動に対する識別タイミングの誤差を減少させることが可能である。以下に、符号反転パルス対を受信した場合に関して、図10に示す回路の動作を説明する。
図11は、図10に示す各位置(a)〜(d)の信号波形を示す。図11(a)では、ヒステリシスコンパレータ10の入力端子に伝送された符号反転パルス対と、これを検出するためのヒステリシスコンパレータ10における識別レベルL1 、L2 を示している。今、図11(a)において識別レベルL1 、L2 の差を大きく取っているため、受信(入力)信号の振幅変動に対して識別タイミングのずれが生じている様子も示している。
【0048】
図11(b)は、図11(a)の波形を、遅延回路18によって一定時間遅延させたものである。図11(c)は、図11(a)に示すヒステリシスコンパレータ10の識別レベルによって、図11(a)の波形から2値信号を再生したものである。この再生波形には、図11(a)での識別タイミングのずれが反映している。図11(b)の遅延量は、図11(b)の符号反転タイミングと、図11(c)の反転タイミングが適度に接近するように設定されている。図11(b)と図11(c)の符号反転エッジの勾配は、正負の符号が逆になるように設定されているため、これらの波形は図11(c)の符号反転エッジ以外のタイミングで交差することがない。従って、図11(b)波形から図11(c)の波形の差を、差動レシーバIC16によって取ることにより2値信号を再生すると、図11(d)の波形が得られる。
【0049】
図11(d)の波形には、タイミング誤差が残っている様子を示しているが、後述の説明からわかるようにこの誤差は図11(a)のものに比べて遙に小さい。あるいは、後述するように回路のパラメータを適当に調整することによって、このタイミング誤差をゼロとする事も可能である。
差動レシーバIC16の出力(図11の波形(d))において、タイミング誤差を減少させあるいはゼロとするための回路パラメータの設定を、図12を参照して説明する。なお図12では、説明を簡単にするために、立下がりエッジのタイミングを検出する場合に関してのみ示している。
【0050】
図12の波形(1)は、振幅が異なる2つの受信パルス信号を示している。今、ヒステリシスコンパレータ10の立下がり識別レベルL2 の値をVL とし、受信信号振幅が小さい時の符号反転パルス対の立下がり速度(Tf)をt1(秒/ボルト)、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)をt2(秒/ボルト)とし、この2つのパルスを立下がりエッジ用識別レベルで識別した時の時間差、つまりスキューをΔTs(=VL ×(t1−t2))としておく。ヒステリシスコンパレータ10の出力波形である図12の波形(2)には、そのスキュー(ΔTs)がそのままタイミング誤差として反映されていることがわかる。図12の波形(2)の反転波形が図11の波形(c)に相当する。図12の波形(2)の論理を反転してレベルを適度に変換し、立上がり速度(Tr)をt3(秒/ボルト)とした後で、もう一度元の符号反転パルス対と重ねあわせた図が、図12の波形(3)である。この波形は、差動レシーバICの同相・逆相入力の様子をそのまま同じタイミングで書いたものであり、大小それぞれの振幅の場合の入力波形の交点が識別タイミングとなる。図12の波形(3)に簡単に示した例を見ても、識別タイミングの誤差が減少していることが容易に理解できる。
【0051】
図12(3)に示すスキュー改善の効果を定量的に示すために、そのタイミングの様子を図12の波形(3−1)に拡大して示す。なお波形(3−1)は、波形(3)の円形部分を拡大して示すものである。
(3−1)の波形図において、受信し遅延された符号反転パルス対の符号反転タイミングを原点Oに取り、受信信号の振幅が小さい場合の逆相入力波形(太線)の符号反転タイミングまでの時間差をtdとする。更に、受信信号振幅が小さい時の符号反転パルス対の立下がり速度(Tf)はt1 であり、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)はt2(秒/ボルト)であるので、受信信号振幅が小さい時の差動識別タイミング(Ts1)は、td×t1/(t1+t3)となり、受信信号振幅が大きいときの差動識別タイミング(Ts2)は、(td−ΔTs)×t2/(t2+t3)となる。
【0052】
従って、受信信号の振幅が異なる場合の最終的な差動識別タイミングの差(ΔTs' )は、
【0053】
【数2】
となる。従って、−(2・t2+t3)・(t1+t3)<td・t3/VL <t3・(t1+t3)のとき、ΔTs’<ΔTsとなって、スキューが改善される。t1、t2は受信信号の波形によって決まる値であるため、変更することができない。一方、tdは図10の回路において遅延回路12、18の遅延量を調節することによって可変であり、またt3もレベル調整回路14の抵抗値を調節することによって可変であるので、これらの値を調整することによって、上述のΔTs’<ΔTsとなる条件を実現することができる。
【0054】
なお、−t2・(t1+t3)=td・t3/VL の場合に、ΔTs’がゼロになることが可能である。この最適条件での同相入力波形と逆相入力波形の関係を、図12の波形図(4)に示す。
以上の説明は、立下がりエッジのタイミング検出に関してなされているが、立上がりエッジのタイミング検出の場合も波形を上下反転させるだけで同様に説明することができる。しかしながら、符号反転パルス対の波形が歪んでいる場合または逆相入力波形のレベルおよび立上がり速度(t3)に制限が有る場合は、必ずしも最適に上記の条件が実現されるとは限らない。
【0055】
第1の実施形態にかかる回路に関して説明したのと同様に、図10の回路で差動レシーバICの同相入力・逆相入力を逆にして出力段で論理を反転するようにしても同様の波形が得られることは明らかである。また、遅延回路12、18およびレベル調整回路が省略可能であることも、第1の実施形態の場合と同様である。
【0056】
【発明の効果】
以上、種々の実施形態を示して説明したように、本発明の伝送波形変換受信回路によれば、簡単な回路構成で、受信信号の振幅の変動に影響されず高いタイミング精度で光伝送前の2値信号を再生する回路を実現することができる。またそのための回路エレメントとして、何ら特別の仕様のものを必要としないので、その実用上の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】伝送波形である光強度信号から受信信号として両極性パルスを得て、これを伝送前の2値信号に再生するための手順を示す波形図。
【図2】図1の2値信号再生のために使用される従来回路。
【図3】伝送波形である光強度信号から受信信号として符号反転パルス対を得て、これを伝送前の2値信号に再生するための手順を示す波形図。
【図4】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図5】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図6】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる回路図。
【図8】図7の回路の動作説明に供する波形図。
【図9】図7の回路の動作説明に供する波形図。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる回路図。
【図11】図10の回路の動作説明に供する波形図。
【図12】図10の回路の動作説明に供する波形図。
【符号の説明】
10…ヒステリシスコンパレータ
12…遅延回路
14…レベル調整回路
16…差動レシーバIC
18…遅延回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを別個に伝送するパルス信号を受信し、これを変換して高いタイミング精度で元の2値電気信号を再生するための、伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在ICテスタ内の信号伝送は全て電気信号で行っているが、最大伝送距離および周波数特性においてより優れており、かつ伝送媒体(光ファイバ)が細く軽量であると言う長所から、特にテスタ本体とテストヘッド間の信号伝送に対しては光伝送を使用した方が有利であると考えられている。
【0003】
しかしながら、テスタ本体とテストヘッド間の信号には、多数のパルス幅が混在する上に非常に高いタイミング精度が要求されるため、一般のデジタルデータ伝送と同様の方法を光伝送に置き換えることは困難である。従って、この様な信号を光で伝送するためには、伝送波形を光伝送により適した形に変換して伝送し、受信時には変換された波形を識別して元の伝送波形に変換し直す必要がある。
【0004】
送信時の波形を光伝送により適した形に変換するための方法として、既に同一出願人によるPCT出願(PCT/JP98/00246)が存在する。この出願に記載されたシステムでは、伝送すべき信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを検出し、このタイミングに基づく両極性パルスを形成する。次にこの両極性パルスを基にして、立上がりおよび立下がりのタイミングを示す光強度変調信号を形成して、これを光ファイバによって伝送するものである。
【0005】
この様に、信号の立上がりおよび立下がりのタイミングのみを光伝送することによって、ICテスタ内の信号の様に多数のパルス幅が混在する上に高いタイミング精度が要求される信号であっても、安定した光伝送を行うことができる。
図1は、上記の光伝送方式を説明するための波形図である。伝送すべき信号波形の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す両極性パルスである光強度信号図1(a)は、オフセット光を含んだ形で光ファイバによって伝送される。このオフセット光は、通常状態で発光素子を弱く発光させておくことによって、発光時の立上がりの遅れを取り除く為のものである。
【0006】
受信側では、伝送された光強度信号図1(a)を受光し光電変換してDC成分(オフセット光)を取り除くことにより、元の信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す両極性パルス図1(b)を得る。この両極性パルス図1(b)を信号処理することにより、立上がりおよび立下がり信号図1(c)を得て、元の2値信号を再現する。
【0007】
両極性パルス図1(b)から立上がりおよび立下がりエッジを識別し、2値の電気信号に変換し直して出力する簡単な方法として、図2に示すヒステリシスコンパレータ1を用いたものがある。一般にヒステリシスコンパレータは、入力信号の立上がりエッジに対する識別レベルと立下がりエッジに対する識別レベルを異なったレベルに設定できることに加えて、一度何れかのエッジを識別すると、次に逆のエッジを識別するまで前のエッジに対応した出力を保持する機能を持っている。
【0008】
従って、ヒステリシスコンパレータ1において、立上がりおよび立下がりエッジ用の識別レベルをそれぞれ予め設定して置くことによって、ヒステリシスコンパレータの上記機能そのものを使用し、入力側に導入された両極性パルスから出力側において元の2値信号を容易に再現することができる。
なお、図1に示した両極性パルスを伝送する方式とは異なって、信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す符号反転パルス対を光伝送に利用した信号伝送方式を図3に示す。この方式に関しては、同一出願人による特許出願特願平9−9271号「光伝送システムおよび光伝送方式」に詳細に示されている。
【0009】
伝送される光強度信号図3(a)は、符号反転パルス対の符号反転のタイミングで、元の信号の立上がりおよび立下がりのタイミングを示す。この符号反転パルス対は、受信側で光電変換され、DC成分(オフセット光)が除去されて、符号反転パルス対図3(b)が形成される。このパルス対の符号反転タイミングを識別することにより、元の伝送すべき波形の立上がりおよび立下がりタイミングを示す、立上がり信号および立下がり信号図3(c)が形成される。
【0010】
なお、符号反転パルス対から立上がりおよび立下がりエッジを検出して元の2値信号を再現する為に、図2に示したヒステリシスコンパレータを同様に使用することが出来る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
2値信号の再生のためにヒステリシスコンパレータを用いる方法は、それが簡単な回路で実現できる点で非常に有利であるが、識別レベルの設定に関してタイミング精度を劣化させる重要な問題が生じる。
以下にこの問題を、特に図1の両極性パルスを用いた信号伝送方式に関して詳細に説明するが、図3に示す符号反転パルス対を用いた信号伝送方式に関しても全く同じ問題が発生することは明らかである。
【0012】
図4(a)は、ヒステリシスコンパレータ1の入力側で受信された両極性パルス信号の波形と、ヒステリシスコンパレータ1の立上がりおよび立下がりエッジ識別レベルL1 、L2 を示している。また図4(b)は、図4(a)で設定された識別レベルを基にしてヒステリシスコンパレータ1によって再生された出力側2値信号、即ち再生信号Sを示す。
【0013】
図4(a)に示す様に、実際の受信信号には通常ある程度のノイズレベルおよびリンギングが加わっているため、識別レベルL1 、L2 の設定が低すぎる場合には、ノイズおよびパルス信号に続くリンギングが識別レベルを越える確率が増加し、両極性パルス以外のところで誤ってエッジを識別してしまう可能性が高くなる。従って、上記の装置で各エッジをより確実に(少ない誤り率で)識別させるためには、図3(a)に示す様に、立上がりエッジ用の識別レベルL1 と立下がりエッジ用の識別レベルL2 との差を十分大きく確保して置く必要がある。
【0014】
しかしながら光伝送では、伝送する光強度信号の振幅を元の信号波形に関して精度良く設定することは困難であり、また光強度信号の振幅は時間的に不安定でもある。そのため、識別レベルを固定して受信信号のエッジを検出すると送信側のタイミングを正確に再現することができず、上記のように識別レベルの差が大きいほど逆に不正確さが増大すると言う事態が発生する。以下にその理由を、図5を参照して説明する。
【0015】
図1(b)および(c)から理解される様に、2値信号の立上がりおよび立下がりタイミングは、正確にはそれぞれ対応した両極性パルスにおいて、受信パルスのレベルがその最大値または最小値に対して予め決められた特定の割合(例えば50%)に達するタイミングに対応する。このタイミングは、受信信号の振幅の変化にかかわらず一定であり、従って正確に送信時のタイミングを伝えることができる。
【0016】
図5(a)に太い実線で示す理想的な受信信号Saの立上がりエッジが50%に達する時のタイミングをA1 とする。今、常に理想的な受信信号が伝送されて来るのであれば、識別レベルL1 をその50%レベルに固定しておいてもタイミングA1 を正確に検出でき、このタイミングA1 に基づいて図5(b)に示す理想的な再生パルス信号Paを生成することができる。ところが、受信信号の振幅が理想的な振幅より低くなっている場合、即ち図5(a)の受信波形Scの場合では、固定された識別レベルL1 によって識別されるタイミングは、50%レベルとは異なるタイミングC1 となってしまい、再生されるパルス信号はタイミングC1 で立上がる信号Pcとなる。その結果、本来のタイミングからのずれ即ちスキューが発生する。
【0017】
また受信信号の振幅が、何らかの原因で時間的に変動し、図5(a)の波形Sbとなった場合には、エッジが識別されるタイミングはさらにずれてタイミングB1 となり、再生されるパルス信号PbはタイミングB1 で立上がる信号となる。その結果、スキューの時間的な変動が発生する。
この様なスキューおよび特にスキューの変動は、そのまま直接タイミング精度を劣化させる原因となるため、高いタイミング精度が要求されるICテスタの信号伝送においては重大な問題である。
【0018】
なお図6に、入力信号が図3に示す符号反転パルス対である場合に、再生パルス信号においてタイミングのずれが発生する様子を示す。この場合は、図3から理解される様に、2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングは、正確にはそれぞれ対応した符号反転パルス対におけるパルス符号の極性が反転するタイミングである。即ち図6の例では、ゼロレベルを識別レベルとした時のタイミングA2 に相当している。
【0019】
ところが図示する様に識別レベルL1 およびL2 がゼロレベルから大きく離れている場合には、識別されるタイミングは図6のタイミングC2 となり、本来のタイミングからのずれ、即ちスキューが発生する。また受信する符号反転パルス対の振幅が何らかの原因で時間的に変動し、図6(a)の点線に示す様な波形となった場合には、エッジが識別されるタイミングは更にずれてタイミングB2 とる。この結果、スキューの時間的な変動が発生する。
【0020】
以上の様に、入力信号が図3に示す符号反転パルス対の場合でも、エッジの識別レベルが本来の識別レベル(この場合、ゼロレベル)から離れていると、再生される信号のタイミング精度が劣化すると言う重大な問題が発生する。
この様なタイミング精度の劣化を解消する一つの方法として、両極性パルスあるいは符号反転パルス対の立上がりおよび立下がり時間を十分に高速化し(図5(a)または図6(a)の受信パルス信号のエッジの傾きを急にして)、図5(b)または図6(b)に示すタイミングのずれを小さくしていく方法が有効であるが、そのためには発光素子の特に立下がり時間を短くすることが必要であり、また受光素子や受信側の増幅器にも高速動作の可能な回路または素子が必要となる。ところが、発光素子の立下がり時間を短くすることは非常に困難であり、かつ高速動作可能な受光素子および増幅器を用いることによって装置の製造コストが大幅に増加すると言う欠点を有しており、その実現性には問題がある。
【0021】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものであり、装置の大幅なコスト上昇を伴うことなく、光伝送された信号から高いタイミング精度で元の2値の電気信号を再生することが可能な新規な伝送波形変換受信回路および伝送波形変換受信方法を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号を受信し、受信したパルス信号の立上がりおよび立下がりエッジをそれぞれ識別するための識別レベルを有し、かつ受信したパルス信号から一旦立上がりおよび立下がりエッジの何れか一方を識別すると識別したエッジに対応する出力を立上がりおよび立下がりエッジの他方を識別するまで維持する機能を備えたヒステリシスコンパレータと、このヒステリシスコンパレータの出力を遅延するための遅延回路と、受信したパルス信号と遅延回路によって遅延されたヒステリシスコンパレータ出力とを同相および逆相差動入力端子にそれぞれ入力して両者の差動を検出し再生信号として出力する差動レシーバICとを具備し、遅延回路における遅延量を調節することにより、差動レシーバICにおけるそれぞれの差動入力のタイミングを調節し、異なる振幅を有する受信したパルス信号に対して再生信号におけるタイミング誤差を実質的に無視しうる程度に減少させた伝送波形変換受信回路を提供する。
【0023】
本発明ではさらに、上記の伝送波形変換受信回路において、ヒステリシスコンパレータと差動レシーバIC間にヒステリシスコンパレータの出力における立上がりおよび立下がりエッジのレベル調整を行うレベル調整回路を設け、差動入力のタイミング調節としてレベル調整回路のレベル調整をも含むようにする。
さらにまた、受信したパルス信号を第2の遅延回路によって遅延して差動レシーバICに入力し、差動入力のタイミング調節のための遅延量の調節を遅延回路およびこの第2の遅延回路の差の遅延量で行う様にする。
【0024】
さらにまた、ヒステリシスコンパレータはその正論理出力が差動レシーバICの同相入力端子に接続され、その場合には受信したパルス信号は差動レシーバICの逆相入力端子に接続されている。
あるいはまた、ヒステリシスコンパレータはその負論理出力が差動レシーバICの逆相入力端子に接続され、その場合には受信したパルス信号は差動レシーバICの同相入力端子間に接続されている。
【0025】
また本発明の上記目的は、再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号をヒステリシスコンパレータによって受信してこの受信パルス信号から立上がりおよび立下がりエッジのタイミングを検出し2値信号を形成するステップと、形成された2値信号を適宜遅延するステップと、遅延された2値信号と、受信パルス信号とを差動レシーバICの同相および逆相差動入力端子に入力して両者の差動を検出することにより元の2値信号を再生するステップとを具備し、遅延ステップにおける遅延量は、異なる振幅を有する受信パルス信号に対応する再生2値信号のタイミング誤差が実質的に無視しうる程度となるように調整される、伝送波形変換受信方法によって達成される。
【0026】
さらに上記方法は、形成された2値信号の立上がりおよび立下がりエッジの勾配を調整するステップを備えている。
以上の様な構成を有する本発明の回路および方法によれば、ヒステリシスコンパレータの出力信号を遅延して差動レシーバICの差動入力端子に入力することによって、この出力信号を最終的なタイミング検出の識別レベルとして用いることができる。
【0027】
従って、他方の差動入力端子に立上がりおよび立下がりのタイミング検出を実行する受信パルス信号を導入し、上記の遅延量を適宜調節することによって、受信信号の中の必要なエッジをゼロレベルに近いレベルで検出することができる。その結果、振幅の異なる受信パルス信号の再生信号におけるタイミング誤差を実質的に無視しうる程度に減少することができる。
【0028】
なお、ヒステリシスコンパレータと差動レシーバIC間にレベル調整回路を設けて、ヒステリシスコンパレータの出力信号における立上がりおよび立下がり速度(エッジの勾配)を調整することによって、さらに識別のタイミングを調整することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の回路および方法では、光伝送され光電変換された入力パルス信号をタイミング精度を劣化させることなく元の2値信号に変換するために、まず第1の段階で任意に設定された識別レベルにより受信パルス信号のエッジを識別することによりこのパルス自体の存在を確認し、次に第2の段階でなるべく理想的な識別レベルを基に受信パルス信号の立上がりまたは立下がりエッジを識別し、そのタイミングを2値の電気信号の再生に利用する、2段階識別機構を採用したことをその大きな特徴とする。
【0030】
図7に、本発明の一実施形態にかかる伝送波形変換受信回路を示す。この回路は、その一経路において、光電変換された受信パルス信号を予め決められた基準レベルと比較し正および負の論理出力QおよびバーQを出力するヒステリシスコンパレータ10と、このコンパレータ10の正論理出力を遅延するための第1の遅延回路12と、遅延された信号のレベルを調整するためのレベル調整回路14および回路12、14を介したコンパレータ10の正論理出力をその差動入力端子(同相入力側)に入力する差動レシーバIC16を含んでいる。
【0031】
本回路の他の経路では、入力された受信パルス信号を第2の遅延回路(素子)18によって適宜遅延した後、差動レシーバIC16の差動入力端子(逆相入力側)に入力する構成を有している。なお差動レシーバIC16として、ICテスターのドライバICを利用し、これに直接接続しても良い。ヒステリシスコンパレータ10は、図2に示した一般的なヒステリシスコンパレータであり、従って受信パルス信号の立上がりおよび立下がりエッジの識別レベルをそれぞれ別個に設定することができる。また、一旦何れかのエッジを識別すると、それに対応する出力を次に逆のエッジを識別するまで保持する機能を有している。
【0032】
本回路では、ヒステリシスコンパレータ10において、予め決められたエッジの識別レベルによって受信パルス信号の何れかのエッジを検出して出力Q、バーQを反転し、パルス自体の存在を検出すると共に、この段階でタイミング誤差を含んだ2値信号を一旦再生する。
次に、このようにして一旦再生された2値信号を遅延し、レベル調整して差動レシーバIC16またはICテスターのドライバICの差動入力に入力することにより、第2の遅延回路18を介して差動レシーバIC16に入力される受信パルス信号に対する最終的なタイミングの識別レベルを構成する。第1および第2の遅延回路12、18の遅延量およびレベル調整回路14でのレベル調整を適宜行うことによって、タイミング誤差をなるべく含まないタイミングで、元の2値信号を再生することができる。
【0033】
以下に、図8および9の波形図を参照して、図7に示す回路の動作を詳細に説明する。なおこの動作説明においては、本回路に図1(b)に示す両極性パルスが入力されるものとし、前述の2段階の識別機構の前段において受信パルス信号の前方エッジを検出し、後段において後方エッジを再検出する場合について述べる。
【0034】
図8において、各波形図8(a)、(b)、(c)および(d)は、図7の各点(a)、(b)、(c)および(d)における信号波形を示す。
まず図8(a)に示す(正・負の)両極性パルスは、ヒステリシスコンパレータ10の入力側において2つの経路に分岐される。1つの経路では、一般的なヒステリシスコンパレータ10に入力され、そこで第1の段階として入力パルス信号の前方エッジが検出されてコンパレータ出力QおよびバーQを反転させる。つまりこの段階で、タイミング誤差を含んだ2値信号が一旦再生される。図8(c)に点線でこの様にして再生された2値信号を示す。なお図8(c)は、この様にして再生された2値信号が、受信パルス信号の振幅変動に対して識別タイミングのずれを生じていることを示している。
【0035】
出力信号Qは、途中で第1の遅延回路(または遅延素子)12によって遅延され、さらにレベル調整回路14によって信号のレベルが調整されて、図8(c)の実線で示す信号波形が形成される。
分岐したもう一方の経路では、入力された両極性パルスは第2の遅延回路(又は遅延素子)18によって適宜遅延されて、図8(b)に示す波形の信号となる。第1、第2の遅延回路12、18の遅延量は、図8(b)、(c)に示す様に、遅延された受信パルス信号の後方エッジと図8(c)の符号反転タイミングとが適度に近接するように設定される。なお、図8(b)と(c)とにおけるエッジの勾配は正負の符号が逆であるため、両者は図8(c)の符号反転エッジ以外のタイミングで交差することはない。
【0036】
図8(b)および(c)に示す波形を差動レシーバIC16の差動入力にそれぞれ入力して、(c)−(b)の差動で2値信号を再生すると、図8(d)の再生波形が得られる。なお図8(d)では、再生波形中にタイミング誤差が残っている様子が描かれているが、後述するようにこの誤差は図8(a)に示すものよりも遙に小さいことが見いだされる。また、後述するように、各遅延回路の遅延量およびレベル調整回路の調整レベルを適宜設定することにより、このタイミングの誤差、即ちスキューをゼロまたは実質的に無視しうる程度に減少させることが可能である。
【0037】
以下に図9を参照して、図8(d)の波形においてどの様にしてタイミング誤差すなわちスキューが減少したかに関して説明する。
図9では、説明を簡単にするために、正の受信パルス信号からタイミングを検出する場合に関してのみ示している。図9の波形(1)は、振幅が異なる2つの受信パルス信号の様子を示している。ここで、この2つの受信パルスを立上がりエッジ用識別レベルL1 で識別したときの時間差、つまりスキューをΔTsとする。ヒステリシスコンパレータ10の出力波形である図9の波形(2)には、そのスキュー(ΔTs)がそのままタイミング誤差として反映されていることがわかる。なお図9の波形(2)は図8の波形(c)に相当する。
【0038】
図7のレベル調整回路14によって、図9の波形(2)における立上がりエッジの勾配を適度に調整し、立上がり速度(Tr)をt3(秒/ボルト)とし、かつ第1、第2の遅延回路12、18で遅延量を調整することにより、図9の波形(3)に示す様に、受信パルス(元の正のパルス)のかなり低いレベルで両エッジを交差させることが出来、その結果スキューが大幅に改善される。なお図9の波形(3)は、波形(2)における立上がりエッジの勾配を適度に調整し、もう一度元の正のパルスと重ね合わせた図である。
【0039】
図9の波形(3)はまた、差動レシーバICの同相・逆相入力の様子をそのまま同じタイミングで書いたものであり、大小それぞれの振幅の場合の入力波形の交点が識別タイミングとなる。波形(3)に簡略化して示した例を見ても、識別タイミングの誤差が大幅に減少していることが容易に理解される。
図9(3)に示すスキュー改善の効果を定量的に示すために、そのタイミングの様子を図9の波形(3−1)に拡大して示す。なお波形(3−1)は、波形(3)の円形部分を拡大して示すものである。
【0040】
(3−1)の波形図において、受信し遅延された正極性パルスが消滅するタイミングを原点Oに取り、受信信号の振幅が小さい場合の同相入力波形(太線)の符号反転タイミングまでの時間差をtdとする。更に、受信信号振幅が小さい時の正のパルスの立下がり速度(Tf)をt1(秒/ボルト)、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)をt2(秒/ボルト)とすると、受信信号振幅が小さい時の差動識別タイミング(Ts1)は、td ×t1/(t1+t3)となり、受信信号振幅が大きいときの差動識別タイミング(Ts2)は、(ΔTs+td)×t2/(t2+t3)となる。
【0041】
従って、受信信号の振幅が異なる場合の最終的な差動識別タイミングの差(ΔTs' )は、
【0042】
【数1】
となる。t1>t2なのでΔTs' <ΔTsとなり、tdおよびt3またはその何れか一方を調整することで分子を小さくして結果的にΔTs' を小さくすることが可能である。前述したように、tdは正極性パルスがゼロとなる点から受信信号の振幅が小さい場合の同相入力波形(太線)の符号反転エッジまでの時間差であり、この値は図7の回路における第1、第2の遅延回路12、18の遅延量を変更することにより調整が可能である。また、t3は同相入力波形の立上がり速度であり、この値はレベル調整回路14によって調整される。
【0043】
tdおよびt3の条件を最適化することによって、分子をゼロにすることも可能である。図9の波形図(4)に、最適化された条件における同相入力波形と逆相入力波形の関係を示す。なおこの様な最適条件は、両極性パルスの波形が歪んでいる場合や同相入力波形のレベルや立上がり速度(t3)に制限がある場合には、必ずしも実現されないことがある。
【0044】
また、受信信号がヒステリシスコンパレータ10に導入されることによって必然的に信号の遅延が生じるため、この遅延のみにより差動レシーバIC16の両差動入力のタイミングが十分にスキューを改善することができる場合には、遅延回路12、18は省略可能である。また同様にレベル調整回路14に関しても、調整レベルがゼロ、即ちこの回路を省略できる場合も存在する。
【0045】
図7に示す回路において、差動レシーバICの同相入力・逆相入力を反対にして、その出力において論理を反転させても同様の波形が得られることは明らかである。また図7の回路は、上述したように、受信した両極性パルスの後方エッジを再生パルス信号の生成タイミング検出に用いる場合に適するように構成されているが、一方、両極性パルスの前方エッジをタイミング検出に利用するためには、図7においてヒステリシスコンパレータ10の出力Qに代わって出力バーQを差動レシーバIC16の逆相入力端子(−)に導入することによって、可能である。
【0046】
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる伝送波形変換受信回路を示す。この回路は、ヒステリシスコンパレータ10の出力Qに代わって出力バーQを差動レシーバIC16の逆相入力端子(−)に導入した点で、図7の回路と相違している。従って上述したように、両極性パルスの前方エッジのタイミング検出を行う場合に適用可能な回路である。しかしながらこの場合には、図7の回路によって受信パルスの後方エッジのタイミングを検出する場合と異なって、両極性パルスのスキューを完全にキャンセルすることはできない。
【0047】
一方、図10の回路は、図3に示した符号反転パルス対を受信する場合、受信信号の振幅変動に対する識別タイミングの誤差を減少させることが可能である。以下に、符号反転パルス対を受信した場合に関して、図10に示す回路の動作を説明する。
図11は、図10に示す各位置(a)〜(d)の信号波形を示す。図11(a)では、ヒステリシスコンパレータ10の入力端子に伝送された符号反転パルス対と、これを検出するためのヒステリシスコンパレータ10における識別レベルL1 、L2 を示している。今、図11(a)において識別レベルL1 、L2 の差を大きく取っているため、受信(入力)信号の振幅変動に対して識別タイミングのずれが生じている様子も示している。
【0048】
図11(b)は、図11(a)の波形を、遅延回路18によって一定時間遅延させたものである。図11(c)は、図11(a)に示すヒステリシスコンパレータ10の識別レベルによって、図11(a)の波形から2値信号を再生したものである。この再生波形には、図11(a)での識別タイミングのずれが反映している。図11(b)の遅延量は、図11(b)の符号反転タイミングと、図11(c)の反転タイミングが適度に接近するように設定されている。図11(b)と図11(c)の符号反転エッジの勾配は、正負の符号が逆になるように設定されているため、これらの波形は図11(c)の符号反転エッジ以外のタイミングで交差することがない。従って、図11(b)波形から図11(c)の波形の差を、差動レシーバIC16によって取ることにより2値信号を再生すると、図11(d)の波形が得られる。
【0049】
図11(d)の波形には、タイミング誤差が残っている様子を示しているが、後述の説明からわかるようにこの誤差は図11(a)のものに比べて遙に小さい。あるいは、後述するように回路のパラメータを適当に調整することによって、このタイミング誤差をゼロとする事も可能である。
差動レシーバIC16の出力(図11の波形(d))において、タイミング誤差を減少させあるいはゼロとするための回路パラメータの設定を、図12を参照して説明する。なお図12では、説明を簡単にするために、立下がりエッジのタイミングを検出する場合に関してのみ示している。
【0050】
図12の波形(1)は、振幅が異なる2つの受信パルス信号を示している。今、ヒステリシスコンパレータ10の立下がり識別レベルL2 の値をVL とし、受信信号振幅が小さい時の符号反転パルス対の立下がり速度(Tf)をt1(秒/ボルト)、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)をt2(秒/ボルト)とし、この2つのパルスを立下がりエッジ用識別レベルで識別した時の時間差、つまりスキューをΔTs(=VL ×(t1−t2))としておく。ヒステリシスコンパレータ10の出力波形である図12の波形(2)には、そのスキュー(ΔTs)がそのままタイミング誤差として反映されていることがわかる。図12の波形(2)の反転波形が図11の波形(c)に相当する。図12の波形(2)の論理を反転してレベルを適度に変換し、立上がり速度(Tr)をt3(秒/ボルト)とした後で、もう一度元の符号反転パルス対と重ねあわせた図が、図12の波形(3)である。この波形は、差動レシーバICの同相・逆相入力の様子をそのまま同じタイミングで書いたものであり、大小それぞれの振幅の場合の入力波形の交点が識別タイミングとなる。図12の波形(3)に簡単に示した例を見ても、識別タイミングの誤差が減少していることが容易に理解できる。
【0051】
図12(3)に示すスキュー改善の効果を定量的に示すために、そのタイミングの様子を図12の波形(3−1)に拡大して示す。なお波形(3−1)は、波形(3)の円形部分を拡大して示すものである。
(3−1)の波形図において、受信し遅延された符号反転パルス対の符号反転タイミングを原点Oに取り、受信信号の振幅が小さい場合の逆相入力波形(太線)の符号反転タイミングまでの時間差をtdとする。更に、受信信号振幅が小さい時の符号反転パルス対の立下がり速度(Tf)はt1 であり、受信信号振幅が大きい時の立下がり速度(Tf)はt2(秒/ボルト)であるので、受信信号振幅が小さい時の差動識別タイミング(Ts1)は、td×t1/(t1+t3)となり、受信信号振幅が大きいときの差動識別タイミング(Ts2)は、(td−ΔTs)×t2/(t2+t3)となる。
【0052】
従って、受信信号の振幅が異なる場合の最終的な差動識別タイミングの差(ΔTs' )は、
【0053】
【数2】
となる。従って、−(2・t2+t3)・(t1+t3)<td・t3/VL <t3・(t1+t3)のとき、ΔTs’<ΔTsとなって、スキューが改善される。t1、t2は受信信号の波形によって決まる値であるため、変更することができない。一方、tdは図10の回路において遅延回路12、18の遅延量を調節することによって可変であり、またt3もレベル調整回路14の抵抗値を調節することによって可変であるので、これらの値を調整することによって、上述のΔTs’<ΔTsとなる条件を実現することができる。
【0054】
なお、−t2・(t1+t3)=td・t3/VL の場合に、ΔTs’がゼロになることが可能である。この最適条件での同相入力波形と逆相入力波形の関係を、図12の波形図(4)に示す。
以上の説明は、立下がりエッジのタイミング検出に関してなされているが、立上がりエッジのタイミング検出の場合も波形を上下反転させるだけで同様に説明することができる。しかしながら、符号反転パルス対の波形が歪んでいる場合または逆相入力波形のレベルおよび立上がり速度(t3)に制限が有る場合は、必ずしも最適に上記の条件が実現されるとは限らない。
【0055】
第1の実施形態にかかる回路に関して説明したのと同様に、図10の回路で差動レシーバICの同相入力・逆相入力を逆にして出力段で論理を反転するようにしても同様の波形が得られることは明らかである。また、遅延回路12、18およびレベル調整回路が省略可能であることも、第1の実施形態の場合と同様である。
【0056】
【発明の効果】
以上、種々の実施形態を示して説明したように、本発明の伝送波形変換受信回路によれば、簡単な回路構成で、受信信号の振幅の変動に影響されず高いタイミング精度で光伝送前の2値信号を再生する回路を実現することができる。またそのための回路エレメントとして、何ら特別の仕様のものを必要としないので、その実用上の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】伝送波形である光強度信号から受信信号として両極性パルスを得て、これを伝送前の2値信号に再生するための手順を示す波形図。
【図2】図1の2値信号再生のために使用される従来回路。
【図3】伝送波形である光強度信号から受信信号として符号反転パルス対を得て、これを伝送前の2値信号に再生するための手順を示す波形図。
【図4】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図5】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図6】従来の回路の問題点の説明に供する波形図。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる回路図。
【図8】図7の回路の動作説明に供する波形図。
【図9】図7の回路の動作説明に供する波形図。
【図10】本発明の第2の実施形態にかかる回路図。
【図11】図10の回路の動作説明に供する波形図。
【図12】図10の回路の動作説明に供する波形図。
【符号の説明】
10…ヒステリシスコンパレータ
12…遅延回路
14…レベル調整回路
16…差動レシーバIC
18…遅延回路
Claims (9)
- 再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号を受信し、該受信したパルス信号の立上がりおよび立下がりエッジをそれぞれ識別するための識別レベルを有し、前記受信したパルス信号から一旦立上がりおよび立下がりエッジの何れか一方を識別すると該識別したエッジに対応する出力を前記立上がりおよび立下がりエッジの他方を識別するまで維持する機能を備えたヒステリシスコンパレータと、
前記ヒステリシスコンパレータの出力を遅延するための遅延回路と、
前記受信したパルス信号と前記遅延回路によって遅延された前記ヒステリシスコンパレータ出力とを同相および逆相差動入力端子にそれぞれ入力して両者の差がゼロとなるタイミングを検出し再生信号として出力する差動レシーバICとを具備し、
前記遅延回路における遅延量を調節することにより、前記差動レシーバICにおける前記それぞれの差動入力のタイミングを調節し、異なる振幅を有する前記受信したパルス信号に対して前記再生信号におけるタイミング誤差を実質的に無視しうる程度に減少させたことを特徴とする、伝送波形変換受信回路。 - 前記ヒステリシスコンパレータと前記差動レシーバIC間に前記ヒステリシスコンパレータの出力における立上がりおよび立下がりエッジのレベル調整を行うレベル調整回路を設け、前記差動入力のタイミング調節は該レベル調整回路のレベル調整をも含む事を特徴とする、請求項1に記載の伝送波形変換受信回路。
- 前記受信したパルス信号を第2の遅延回路によって遅延して前記差動レシーバICに入力し、差動入力のタイミング調節のための前記遅延量の調節を前記遅延回路および該第2の遅延回路の差の遅延量で行う事を特徴とする、請求項1または2に記載の伝送波形変換受信回路。
- 前記ヒステリシスコンパレータはその正論理出力が前記差動レシーバICの同相入力端子に接続されている事を特徴とする、請求項1、2または3の何れか1項に記載の伝送波形変換受信回路。
- 前記受信したパルス信号は前記差動レシーバICの逆相入力端子に入力される事を特徴とする、請求項1、2、3または4の何れか1項に記載の伝送波形変換受信回路。
- 前記ヒステリシスコンパレータはその負論理出力が前記差動レシーバICの逆相入力端子に接続されている事を特徴とする、請求項1、2または3の何れか1項に記載の伝送波形変換受信回路。
- 前記受信したパルス信号は前記差動レシーバICの同相入力端子に入力される事を特徴とする、請求項1、2、3または6の何れか1項に記載の伝送波形変換受信回路。
- 再生すべき元の2値信号の立上がりおよび立下がりのタイミングをそれぞれ別個に伝送するパルス信号をヒステリシスコンパレータによって受信して該受信パルス信号から立上がりおよび立下がりエッジのタイミングを検出し2値信号を形成するステップと、
前記形成された2値信号を適宜遅延するステップと、
前記遅延された2値信号と、前記受信パルス信号とを差動レシーバICの同相および逆相差動入力端子に入力して両者の差動を検出することにより前記元の2値信号を再生するステップとを具備し、
前記遅延ステップにおける遅延量は、異なる振幅を有する前記受信パルス信号に対応する前記再生2値信号のタイミング誤差が実質的に無視しうる程度となるように調整されることを特徴とする、伝送波形変換受信方法。 - 前記形成された2値信号の立上がりおよび立下がりエッジの勾配を調整するステップをさらに備えた事を特徴とする、請求項8に記載の伝送波形変換受信方法。
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