JP3907096B2 - ポリオレフィン系樹脂押出発泡体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂押出発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂に代表されるシート状乃至板状の無架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する方法として、押出機内で溶融したポリオレフィン系樹脂に揮発性発泡剤を圧入混練した後、発泡性組成物を押出機内から大気中に押出して発泡させる方法が知られている。
【0003】
この方法で得られる高発泡倍率のポリオレフィン系樹脂押出発泡体としては、見掛け密度が15〜90g/L程度のものが知られている。しかし、これらの見掛け密度が小さいポリオレフィン系樹脂押出発泡体を得ようとすると、得られた押出発泡体にコルゲートと呼ばれる周期的な厚みのむらが現われ、更にこのコルゲートは発泡体全体の波うち現象や、気泡の大小による帯状のしま模様としても現われる。かかるコルゲートは発泡体の密度が小さくなるほど、厚みが厚くなるほど、そして気泡径が小さくなるほど顕著に現れる傾向がある。
【0004】
上記コルゲートの発生は発泡体の外観や物性を悪くするので、商品価値を低下させる原因となっていた。またこの種の発泡体は任意のサイズに切断された後、積み重ねて包装された形態で出荷されるというケースが多いにもかかわらず、コルゲートの大きな発泡体ほど、単位枚数当たりの積み重ね高さが高くなり、保管スペースや運搬スペース等が必要以上に大きくなってしまうという問題があった。又、コルゲートの大きな発泡体は、積み重ね時の状態が不安定となって崩れ易くなるために、1包装当たりに要求される枚数分を1つにまとめて積み重ねることができなくなったり、積み重ねスペースが更に必要になったりするという問題があった。また、発泡体を積層接着して厚物の発泡体として使用する場合に、コルゲートが発生した発泡体は、接着不良、厚みむらの拡大という問題も引き起こしていた。
【0005】
そこで、本出願人は先に特願2000-173777にて、見掛け密度が小さく平均気泡径が大きい発泡シートの表面に、見掛け密度が大きく平均気泡径が小さい発泡シートを共押出多層発泡法により積層することにより、コルゲートの発生が無く、平滑性、外観共に良好な多層ポリエチレン系樹脂押出発泡体を製造することを提案した。
【0006】
しかしながら、特願2000-173777記載の多層ポリエチレン系樹脂押出発泡体においては、表面を形成している発泡シートの見掛け密度を大きくしなければならないのに対し、多層発泡体全体として目的とする小さな見掛け密度の発泡体を確保するためには、多層発泡体内部の見掛け密度を必要以上に小さくしなければならなかった。又、見掛け密度を小さくするとコルゲートが発生しやすくなるので、コルゲートを防止するために発泡体内部の平均気泡径を必要以上に大きくしなければならなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記制約により、特願2000-173777記載の多層発泡体は、厚み方向の見掛け密度及び平均気泡径が不均一で、全体の見掛け密度が小さくても、表面が硬く発泡体全体の柔軟性に欠けるものであった。又、全体の見掛け密度を小さく設定するに従い、製造上の困難性が増えるという問題もあった。更に、部分的な集中荷重が加えられると、内部の平均気泡径が大きな気泡が音を出して破泡してしまい緩衝性が大きく低下するという課題もあった。
【0008】
本発明者らはコルゲートを防止するために共押出多層発泡法によらない方法での検討を行った。その結果、ダイから押出発泡された直後の発泡体を表面から冷却しながら形状を整えれば、厚みが2mm以上、見掛け密度が90g/L以下の発泡体でありながら、コルゲートの発生が全くないか、あっても殆ど無視できる程度の発泡体を製造できることを見出した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明のポリエチレン系樹脂押出発泡体は、
(1)平均厚みが2mm以上、見掛け密度が90g/L以下のポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって、平均気泡数が350個/cm3以上、発泡体の押出方向に沿った任意の位置において、押出方向と直交する方向に1cmおきに発泡体の厚みを測定したときに、周期的な厚み厚薄が認められないか、または厚み厚薄が認められる場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値が、いずれも1.07以下であり、該ポリオレフィン系樹脂押出発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体、
(2)平均厚みが2mm以上、見掛け密度が90g/L以下(但し、60g/L以上を除く。)のポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって、平均気泡数が350個/ cm 3 以上、発泡体の押出方向に沿った任意の位置において、押出方向と直交する方向に1cmおきに発泡体の厚みを測定したときに、周期的な厚み厚薄が認められないか、または厚み厚薄が認められる場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値が、いずれも1.07以下であり、該ポリオレフィン系樹脂押出発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体、
(3)前記(1)または(2)記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体を積層接着してなる多層のポリオレフィン系樹脂押出発泡体、
(4)見掛け密度が異なるポリオレフィン系樹脂押出発泡体を積層接着してなる前記(3)記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体、
(5)連続気泡率が40〜100%である前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体、
を要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体1の一実施例を、図2に二枚の発泡体1を積層接着した本発明の多層のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の実施例を、図3に三枚の発泡体1を積層接着した本発明の多層のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の実施例を示す。
【0011】
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の基材樹脂はポリオレフィン系樹脂であり、該基材樹脂の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上がポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体や、エチレン成分が50モル%を超えるエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等のエチレン系共重合体が挙げられる。特にそのなかでも、密度が900〜945g/L、及びメルトインデックス:MI(190℃/21.18N)が0.01〜10g/10分のエチレン単独重合体またはエチレン系共重合体が好ましい。
【0013】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体(但し、プロピレン成分が50モル%以上である。)が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他の共重合成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどの、エチレンまたは炭素数4〜10のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらにまた二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
上記のポリプロピレン系樹脂の中でも押出発泡に好適な樹脂としては、一般のポリプロピレン系樹脂と比較して溶融張力が高いポリプロピレン系樹脂が好ましい。具体的には、例えば、特開昭62−121704号公報に記載されているような(1)1未満の枝分かれ指数と著しい歪み硬化伸び粘度とを有するポリプロピレンや、特開平5−506875号公報に記載されているような(2)(a)Z平均分子量(Mz)が1.0×10以上であるか、またはZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が3.0以上であり、(b)かつ平衡コンプライアンスJが1.2×10−3/N以上であるか、または単位応力当たりの剪断歪み回復Sr/Sが毎秒5.0×10−4/N以上であるポリプロピレンを用いたポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0015】
また、本発明においては、(3)スチレン等のラジカル重合性単量体およびラジカル重合開始剤や添加剤などを含む配合物を、ポリプロピレン系樹脂が溶融し、かつラジカル重合開始剤の反応温度以上において溶融混練することによって改質されたポリプロピレン系樹脂、あるいは(4)ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂であってもよい。さらにこれら基材樹脂の中でも沸騰したキシレンに対する不溶解成分の割合が低いものが好ましい。
【0016】
上記不溶解成分の割合は、重量を精秤したポリプロピレン系樹脂またはその発泡シートを試料とし、約140℃の沸騰したキシレン中に試料を入れ8時間加熱還流した後、100メッシュの金網で速やかに濾過し、ついで金網上に残った沸騰キシレン不溶解成分を20℃のオーブン中で24時間乾燥したのち、不溶解成分の重量G(g)を測定し、下記式(1)により求められる。不溶解成分の割合が0〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは、0〜5重量%、更に好ましくは0〜2重量%である。不溶解成分の割合が低い樹脂程リサイクル性に優れておりコスト低減に繋がる点で好ましいものである。
【0017】
【数1】
Figure 0003907096
【0018】
本発明の発泡体1の平均厚みは、2mm以上であり、好ましくは2.5〜50mm、より好ましくは3〜30mmである。発泡体1の平均厚みが2mm未満の場合は、本発明が目的とする周期的な厚み厚薄が認められないか、周期的な厚み厚薄が極めて小さい発泡体1を得ることができない虞がある。
【0019】
発泡体1全体の見掛け密度は、90g/L以下であり、好ましくは15〜90g/L、より好ましくは20〜40g/Lである。見掛け密度が90g/Lを超えると、緩衝性や柔軟性が要求される包装材料等の用途において商品価値が低くなる虞がある。
【0020】
上記発泡体1の見掛け密度は、発泡体1から幅方向に10mm、押出方向に50mm、厚みを発泡体厚みとしたサンプルを20個切り出し、このサンプルの幅、長さ、厚みをノギスにより正確に測定して、20個のサンプルの合計体積(L)を算出する。次いで、20個のサンプルの合計重量(g)を測定し、この値を合計体積で除した値を見掛け密度とする。
【0021】
発泡体1の平均気泡数は350個/cm以上であり、平均気泡数が500〜3000個/cmであることが好ましく、700〜3000個/cmであることがより好ましい。平均気泡数が350個/cm未満であると、外観が悪く、表面および発泡体全体の柔軟性が低下する虞がある。
【0022】
本明細書において発泡体1の平均気泡数は以下のように測定される。
まず、厚み方向、幅方向及び押出方向の平均気泡径を測定する。厚み方向の平均気泡径(a)及び幅方向の平均気泡径(b)は、発泡体の幅方向垂直断面(発泡体の押出方向と直交する垂直断面)を、押出方向の平均気泡径(c)は、発泡体の押出方向垂直断面(発泡体を幅方向中央部において押出方向に沿って発泡体の幅方向と直交するように二等分した垂直断面)を顕微鏡等を用いてスクリーンまたはモニタ等に拡大投影し、投影画像上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数をカウントし、直線の長さ(但し、この長さは拡大投影した投影画像上の直線の長さではなく、投影画像の拡大率を考慮した真の直線の長さを指す。)をカウントされた気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求める。
【0023】
但し、厚み方向の平均気泡径(a)の測定は幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所において厚み方向に全厚に亘る直線を引き各々の直線の長さと該直線と交差する気泡の数から各直線上に存在する気泡の平均径(直線の長さ/該直線と交差する気泡の数)を求め、求めれられた3箇所における平均径の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(a)とする。
【0024】
また、幅方向の平均気泡径(b)は幅方向垂直断面の中央部及び両端部の計3箇所において発泡体1を厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を幅方向に引き、長さ3000μmの直線と「該直線と交差する気泡の数−1」から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/「該直線と交差する気泡の数−1」)を求め、求められた3箇所における平均径の算術平均値を幅方向の平均気泡径(b)とする。
【0025】
また、押出方向の平均気泡径(c)は、発泡体1の押出方向長さが200cm以下の場合は、押出方向垂直断面の押出方向における中央部及び両端部の計3箇所において発泡体1を厚み方向に二等分する位置に、長さ3000μmの直線を押出方向に引き、該長さ3000μmの直線と「該直線と交差する気泡の数−1」から各直線上に存在する気泡の平均径(3000μm/「該直線と交差する気泡の数−1」)を求め、求められた3箇所における平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(c)とする。
【0026】
尚、発泡体1の押出方向長さが200cmを越える場合は、押出方向長さが200cmの発泡体1を切出し、該発泡体1の押出方向垂直断面の押出方向における中央部及び両端部の計3箇所において気泡の平均径を求め、求めれられた3箇所における平均径の算術平均値を押出方向の平均気泡径(c)とする。
【0027】
次に、上記の通りに求められた平均気泡径(a)、(b)及び(c)の算術平均値を発泡体1の平均気泡径とする。更に、求められた発泡体1の平均気泡径(μm)に基づき下記式(2)にて発泡体1の平均気泡数が算出される。
【0028】
【数2】
Figure 0003907096
【0029】
本発明の発泡体1は、上記の構成を有するとともに、発泡体1の押出方向に沿った任意の位置において、押出方向と直交する方向に1cmおきに発泡体1の厚みを測定したときに、周期的な厚み厚薄が認められないか、または厚み厚薄が認められる場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値が、いずれも1.07以下である。即ち、本発明の発泡体1においては、周期的な厚みむらが全く認められないか、厚みむらがあっても殆ど無視し得る程度のものである。
【0030】
本明細書における周期的な厚み厚薄とは、発泡体1の押出方向と直交する方向(発泡体1の幅方向)において、厚みが厚い箇所と、厚みが薄い箇所が交互に且つほぼ一定の間隔(通常は2〜7cm間隔)で現れる厚み厚薄のことを意味する。通常、この厚み厚薄がコルゲートと称されている。
【0031】
本発明においては、発泡体1の押出方向に沿った任意の位置において発泡体1の幅方向に発泡体1を切断し、その切断面において発泡体1の幅方向に1cm間隔で厚みを測定する。その測定結果より、周期的な厚み厚薄が認められるか否かを判断し、周期的な厚み厚薄が認められた場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値を求める。
但し、周期的な厚み厚薄が認められない場合は、コゲートが発生していないことを意味し、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値は求めることができない。
【0032】
上記厚み厚薄の1周期内の厚みの最大値を最小値で除した値は、以下のようにして求められる。
発泡体1の幅方向に周期的に現われる厚み厚薄は、厚みの山と谷が交互にほぼ一定の間隔で現れる。かかる発泡体1において、図5に示すように、発泡体1の一方の端縁部に最も近い位置にある山の頂点P1における厚みをT1、この山の隣の山の頂点P2における厚みをT2とし、P1からP2までを厚みの厚薄の1周期とする。
【0033】
次に、第1の周期内で最も厚みの薄い谷部の厚みt1を測定する。さらにP2と、この山の更に隣の山の頂点P3までを第2の周期とし、P3における厚みと第2周期内で最も厚みの薄い谷部の厚みt2を測定する。第3の周期、第4の周期等、周期的な厚み厚薄の周期の全てについて同様の測定を行う。これらの結果から、各周期毎に厚みの最大値を最小値で除した値を求める。即ち、第1の周期ではT1、T2のいずれか大きい方をt1で除した値を求め、第2の周期ではT2とT3のいずれか大きい方を、t2で除した値を求める。このように全ての周期において、2つの山の頂点における厚みの大きい方の値を、厚みの最も薄い谷部の厚みで除した値を求める。本発明の発泡体1は、周期的な厚み厚薄が存在しないことが通常であるが、存在する場合であっても、厚みの厚薄の全ての周期において、上記値が1.07以下、更に好ましくは1.05以下である。
【0034】
尚、発泡体1の幅方向両端部分の近傍において、製品幅を揃えるために切断され排除される部分は、前述の各周期毎の厚みの最大値と最小値を求める対象から除外する。よって、前述の各周期毎の厚みの最大値と厚みの最小値は、発泡体1製品の全幅を対象に測定される。
【0035】
本発明の発泡体1は50%圧縮強度(kgf/cm)を発泡体1の密度(g/cm)にて割った値が24〜35(kgf・cm/g)であることが好ましい。該値が24(kgf・cm/g)未満の場合は、圧縮強度、曲げ強度等の物理的強度が弱い発泡体となり、商品価値が低下する虞がある。該値が35(kgf・cm/g)を越える場合は、圧縮強度、曲げ強度等の物理的強度が強すぎてマンドレル上を通過させて冷却する際にマンドレル状のカールが最終製品に残り、取り扱いにくいものとなる虞がある。
【0036】
尚、本発明の発泡体は前記特願2000−173777の発泡体に比較すると、全体の見掛け密度が同一であっても、圧縮強度が優れている。これは、本発明の発泡体1の見掛け密度が全体的に均一であるのに対し、特願2000−173777の発泡体においては、厚み方向中心付近の芯層発泡体の見掛け密度が表層発泡体の見掛け密度より小さいことが原因である。
【0037】
本発明の押出発泡体1を得るには、次に説明する押出発泡法が採用される。
【0038】
押出発泡法においては、まず押出機にポリオレフィン系樹脂を主成分とする基材樹脂及び気泡調節剤を供給し、基材樹脂を加熱溶融させてから、押出機内に発泡剤を圧入して溶融したポリオレフィン系樹脂に発泡剤を含浸させた後、このポリオレフィン系樹脂の発泡性組成物を押出機先端に設けたサーキュラーダイより押出して筒状に発泡させる。
【0039】
この時、従来周知のサーキュラーダイを用いて見掛け密度が15〜90g/L程度の発泡シートを得ようとすると、発泡性組成物がダイのリップ部(大気圧への開放部)を通過した時点でコルゲートが発生し始め、発泡に伴いコルゲートは更に成長し、発泡体1の最終形状にもそのコルゲートは残留する。
【0040】
本発明の発泡体を得るためのコルゲートを発生させない方法の一例として、図4に示す様に、リップ部から押出された筒状発泡体5を押出し直後に、サイジング面2aと2bに囲まれたサイジング部にて押圧して、その形状を整えつつ冷却を行う方法が挙げられる。
【0041】
尚、図4において6は断熱材を示し、断熱材6はサイジング部の温度がダイ温度の影響を受けて上昇しすぎることを防止する機能を有する。
【0042】
このように発泡性組成物を発泡させて筒状発泡体5を形成する際に、サイジング部にて押圧することにより三次元に発泡しようとする発泡力のうち、筒状発泡体5の円周方向に働く力を抑制しつつ厚み方向に働く力に変換すると共に、筒状発泡体5を厚み方向に押圧することにより、コルゲートの発生を防止することができると考えられる。
【0043】
ここで、問題となるのはサイジング部のサイジング面2a,2bと筒状発泡体5との滑りである。この両者の間に適当な滑り性が無いと、筒状発泡体5表面の気泡がサイジング部2のサイジング面との摩擦により破壊され、外観及び物性が損なわれる。一方、筒状発泡体5とサイジング部のサイジング面2a,2bにおける適当な摩擦抵抗が無いと、筒状発泡体5を押圧することができないので筒状発泡体5が幅方向に自由に発泡することとなり、コルゲートの発生が抑えられない。
【0044】
よって、適度な滑り性と抵抗を与えながら押圧するために、リップ出口直後に設けた環状スリット部4より微小量の水を流すことが好ましい。また、サイジング部4のサイジング面2a、2bには適度な抵抗をつくるため、サンドブラスト処理等を行うのが好ましい。更に、注入する水には滑り性、均一な水の膜をつくるため界面活性剤等を添加することが好ましい。
【0045】
このように押出成形された筒状発泡体5をマンドレルと呼ばれる円柱状の冷却装置側面上を通過させた後に押出方向に沿って切断すると、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0046】
本発明の発泡体を押出発泡法で製造する場合に用いる発泡剤としては、従来よりポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられていると同様の無機発泡剤、揮発性発泡剤等が使用できる。無機発泡剤としては例えば、酸素、窒素、二酸化炭素、空気、水等が挙げられ、揮発性発泡剤としては例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類、その他、ジメチルカーボネート、メタノール、エタノール等が挙げられる。またアゾジカルボンアミド等の分解型発泡剤も使用することができる。上記した発泡剤は、2種以上を混合して使用することが可能である。これらのうち、特にノルマルブタン、イソブタンまたはこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
【0047】
前記押出機に供給される基材樹脂中には通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
上記発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする密度に応じて調整する。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節する。一般的には、発泡剤としてブタンを用い、気泡調整剤としてタルクを用いた場合、ブタンの添加量は樹脂100重量部当たり2〜15重量部、好ましくは3〜12重量部、より好ましくは5〜12重量部であり、タルクの添加量は樹脂100重量部当たり、0.2〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは1〜2.5重量部である。
【0049】
ブタンを発泡剤として使用し、気泡調整剤としてタルクを使用する場合、押出発泡体1を形成するための発泡性組成物中におけるブタンの添加量が、樹脂100重量部当たり2重量部未満であると、発泡体1全体の見掛け密度を90g/L以下とすることが困難となり、15重量部を超えると、コルゲートを抑制できなくなる虞れがある。また押出発泡体1を形成するための発泡性組成物中におけるタルクの割合が、樹脂100重量部当たり0.2重量部未満であると、平均気泡数を350個/cm以上にコントロールすることが困難になり、5重量部を超えると発泡効率が低くなる虞がある。
【0050】
本発明の発泡体1は、図1に示した発泡体1を図2、3に示すように2層以上積層したものとすることができる。このような積層発泡体とすることにより高厚みのものが容易に得られ、各種用途に適応するものとなる。本発明の押出発泡体1はサーキュラーダイから押出して得る方法を採用することにより、広幅のもの、具体的には800〜2000mm幅のものが容易に得られる。
【0051】
しかしながら、目的とする発泡体1の厚み設計を厚くすると、サーキュラーダイから押出して得られる発泡体は内径と外径の差が大きな筒状発泡体5となるので、該筒状発泡体5を切り開いて得られるものは、押出し方向と直交する幅方向に腕曲したものとなり易い。この現象をなるべく防止するため図1に示す単層の発泡体1は厚みを2〜40mmとすることが好ましく、該厚みを超えるような厚いものが要求される場合には、図2、3に示されるように2層以上積層したものとすることが好ましい。
【0052】
また、2層以上積層することにより得られた本発明の押出発泡体は同じ気泡径、見掛け密度等のものを積層することもできれば、厚み、気泡径、見掛け密度、色、基材樹脂、機能性添加剤処方等の異なる異種のものを積層することもできる。
【0053】
上記多層のポリオレフィン系樹脂発泡体を得るための発泡体1同士の貼り合せにおいては、特開平7−227930に記載の熱風ラミネートによる方法、ホットメルト系接着剤等により接着する方法が好適に採用できる。
【0054】
本発明の発泡体1は、ASTM−D2856−70の手順Cに従って測定された連続気泡率が通常40%未満のものである。但し、本発明の発泡体1の連続気泡率は、得られる発泡体1の用途等に応じて適宜選択することができる。特に発泡体1にしなやかさを求める場合には、発泡体1の連続気泡率は40〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましい。
【0055】
連続気泡率が40%以上の発泡体1は、発泡温度を通常よりも高く設定することにより得ることができる。また、発泡体1の連続気泡率は、発泡体1に細い針を突き刺すことにより容易に高めることができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
押出機内において、ポリエチレン樹脂(NUC社製:低密度ポリエチレン、MI:0.2g/10分、密度:917g/L)、発泡剤としてイソブタンとノルマルブタンとの重量比3:7の混合発泡剤、及び気泡調整剤としてタルクを、表1に示す割合で加熱溶融混練し、発泡性組成物を調製した。尚、表1に示す発泡剤、気泡調整剤の添加量は、樹脂100重量部当たりに対する値である。
【0057】
上記発泡性組成物を押出樹脂温度115℃に調整してから、サーキュラーダイ(ダイリップ部直径40mm、ダイギャップ(ダイリップ部間隔)0.7mm)から、吐出量290kg/時間で押出してダイリップ部(大気圧への開放部)から放出した。
【0058】
この時、図4に示すように、サンドブラスト処理が施されたサイジング面で囲まれる空間に発泡性組成物を放出して、サイジング面で押圧しながら筒状発泡体を形成した。この時、ダイリップ部の出口から0.8mmの位置に設けた環状スリット部から注水することにより、筒状発泡体が押出方向長さ50mmのサイジング面を滑らかに滑るように調節した。
尚、サイジング面どうしの間隔は目的とする発泡体の厚みを考慮して8.5mmに設定し、サイジング部設定温度は70℃、注水量は2ml/分、注水部付近の設定ダイ温度は110℃に設定した。
【0059】
上記筒状発泡体をマンドレル上を通過させて冷却した後、押出方向に沿って切り開き、シート状の押出発泡体を得た。
【0060】
【表1】
Figure 0003907096
【0061】
実施例2
表1に示す、発泡剤添加量、タルク添加量、押出樹脂温度、押出圧力、ダイギャップ、サイジング面間距離で行なった以外は、実施例1と同様に押出発泡体を製造した。
【0062】
実施例3
表1に示す、発泡剤添加量、タルク添加量、押出樹脂温度、押出圧力、ダイギャップ、サイジング面間距離、注水量で行なった以外は、実施例1と同様に押出発泡体を製造した。
【0063】
実施例1〜3において得られた押出発泡体の全体の厚み、幅、見掛け密度、平均気泡数を測定し、これらの値を表2に示した。また押出発泡体の押出方向に沿った任意の位置を無作為に選択し、この位置において押出方向と直交する方向に1cm間隔で発泡体の厚みを測定し、厚みの周期的なむらの有無を調べ、その結果を表2に示した。
【0064】
【表2】
Figure 0003907096
【0065】
比較例1、2
押出機内で、ポリエチレン樹脂(NUC社製:低密度ポリエチレン、MI:0.2g/10分、密度917g/L)、表3に示す発泡剤量、タルク添加量、押出樹脂温度、押出圧力、吐出量、ダイギャップで行なったこと、組成物を押出機先端のサーキュラーダイから押出した直後に、サイジング面どうしで囲まれた空間で押圧しないこと以外は、実施例1と同様に、押出発泡体を製造した。
【0066】
比較例3
クロスバーを介して一つの環状ダイに連結された2台の押出機の一方の押出機内において、実施例1と同様のポリエチレン樹脂、発泡剤、タルクを、表3に示す割合で押出機内で加熱溶融混練し、表層形成用の発泡性組成物Aを調製した。一方、別の押出機内で実施例1と同様のポリエチレン樹脂、ブタン、タルクを表3に示す割合で溶融混練し、芯層形成用の発泡性組成物Bを調製した。尚、表3に示す発泡剤、気泡調整剤の添加量は、樹脂100重量部当たりに対する値である。
【0067】
上記2台の押出機内においてそれぞれ調製した、発泡性組成物Aと発泡性組成物Bを、発泡性組成物Aを発泡せしめて形成される表層が発泡性組成物Bを発泡せしめて形成される芯層の内外両面側に形成されるように、両押出機内の発泡性組成物A、Bをサーキュラーダイ内において合流させた後、ダイリップ部直径が100mmのダイから押出して筒状発泡体を形成し、次いでこの筒状発泡体をマンドレル上を通過させて冷却した後、押出方向に沿って切り開き、押出発泡体を得た。
【0068】
【表3】
Figure 0003907096
【0069】
比較例1〜3において、得られた押出発泡体の厚み、幅、見掛け密度、平均気泡数を測定し、これらの値を表4に示した。
【0070】
比較例1〜3で得られた押出発泡体の厚みの周期的なむらの有無を調べた。比較例1、2において得られた押出発泡体は、厚みに周期的なむらが認められたので、厚み厚薄の1周期内の厚みの最大値を最小値で除した値を全ての周期について測定し、そのうちの最大の値を表5に示した。
尚、比較例3において得られた押出発泡体は、厚みに周期的なむらが認められなかった。
【0071】
【表4】
Figure 0003907096
【0072】
【表5】
Figure 0003907096
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体は、厚みが2mm以上、全体の密度が90g/L以下であっても、コルゲートが発生することがなく、更に波うち現象や帯状のしま模様もなく外観良好なものであった。又、圧縮強度に優れ集中荷重に対する緩衝性低下の課題も解消され、更に、表面および発泡体全体の柔軟性においても優れたものである。
【0074】
また、本発明の本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体は、コルゲートが発生していないので発泡体同士の積層接着性においても優れており、積層された押出発泡体は、良好な物性の高厚みのポリオレフィン系樹脂押出発泡体となる。
【0075】
また、単層または多層のポリオレフィン系樹脂押出発泡体に針穴加工を施す等の方法により得られる連続気泡率が40〜100%のポリオレフィン系樹脂押出発泡体は、特に柔軟性に優れクッション材等に好適な素材となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の異なる実施例を示す縦断面図である。
【図3】本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の更に異なる実施例を示す縦断面図である。
【図4】本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造装置ダイ部の縦断面図である。
【図5】発泡体幅方向垂直断面の厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値及び最小値の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1 ポリオレフィン系樹脂押出発泡体
2a サイジング部のサイジング面
2b サイジング部のサイジング面
3 リップ部
4 環状スリット
5 筒状発泡体
6 断熱材

Claims (5)

  1. 平均厚みが2mm以上、見掛け密度が90g/L以下のポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって、平均気泡数が350個/cm3以上、発泡体の押出方向に沿った任意の位置において、押出方向と直交する方向に1cmおきに発泡体の厚みを測定したときに、周期的な厚み厚薄が認められないか、または厚み厚薄が認められる場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値が、いずれも1.07以下であり、該ポリオレフィン系樹脂押出発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  2. 平均厚みが2mm以上、見掛け密度が90g/L以下(但し、60g/L以上を除く。)のポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって、平均気泡数が350個/ cm 3 以上、発泡体の押出方向に沿った任意の位置において、押出方向と直交する方向に1cmおきに発泡体の厚みを測定したときに、周期的な厚み厚薄が認められないか、または厚み厚薄が認められる場合には、厚み厚薄の1周期内における厚みの最大値を最小値で除した値が、いずれも1.07以下であり、該ポリオレフィン系樹脂押出発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  3. 請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体を積層接着してなる多層のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  4. 見掛け密度が異なるポリオレフィン系樹脂押出発泡体を積層接着してなる請求項記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
  5. 連続気泡率が40〜100%である請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
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