JP3907046B2 - ポリウレタンエラストマー部材及び紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法 - Google Patents

ポリウレタンエラストマー部材及び紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム成形性及び低温特性を良好に維持し、且つ機械的特性の優れたポリウレタンエラストマー部材及びこれを用いた摩擦係数変化が少ない紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種金融端末機器の給紙・搬送用のロールにおいては、高摩擦係数の維持が求められる。これらの給紙搬送ロールは、一般に、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)あるいは塩素化ポリエチレンゴム、ポリノルボーネン、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの材料で製造され、単一素材では、紙粉等の影響による摩擦係数の低下等を防ぐために、筒状に成形した後、表面を象面研磨したり、表面に凹凸を形成したりしたものが必要である。
【0003】
一方、ポリウレタンは分子設計により、高い機械強度や高硬度でもゴム弾性を有する特性、低温特性が良好など単一素材で目的に添うゴムを作製することが可能な材料である。しかしながら、分子設計による新規ポリウレタンの合成は、ポリオールまたはイソシアネートの合成から始める必要があること、目的に沿った特性を出すために、犠牲にする特性が出てしまうことなどの問題が生じ、また摩擦係数の維持性を持つポリウレタン素材を合成するのは難しいといった問題がある。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑み、高強度でありながら耐寒性、耐熱性、ゴム弾性のバランスが取れた上でさらに耐加水分解性を付与させたポリウレタンエラストマー部材及びこれを用いた紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、種々検討を重ねた結果、既存のポリウレタンを特性に添って選択し、ブレンド比率、及び相溶性等を考慮してブレンドして特定の条件下で共架橋することにより、ゴム成形性及び低温特性を良好に維持し、且つ機械的特性の優れたポリウレタンエラストマー及びこれを用いた摩擦係数変化が少ない紙葉類給紙搬送部材を比較的簡便に得ることができることを知見し本発明を完成させた。
【0006】
かかる本発明の第1の態様は、30℃以上に融点を有するε−カプロラクトン系ポリオールからなる第1のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ架橋部位を有する第1のポリウレタンゴムと、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合により得られると共に側鎖としてメチル基のみを有し10℃以下に融点を有する第2のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ前記第1のポリウレタンゴムと共通する架橋部位を有する第2のポリウレタンゴムとをブレンドして共架橋してなることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、下記式のアルキル側鎖濃度が0.1〜4mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0007】
【数2】
アルキル側鎖濃度(mmol/g)
=(側鎖のアルキル基のモル数)/(ポリウレタンの重量)
【0008】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記第1のポリウレタンゴムと前記第2のポリウレタンゴムとが、重量比で5:95〜95:5の範囲でブレンドされたことを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムはそれぞれ、前記第1のポリエステルポリオール又は前記第2のポリエステルポリオールと共に、架橋部位となる二重結合を有する短鎖のジオールを添加して重付加されたものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムはそれぞれ、前記第1のポリエステルポリオール又は前記第2のポリエステルポリオールと共に、架橋部位を形成するイソシアネートにより重付加されたものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムのそれぞれに由来するガラス転移点が観察されることを特徴とするポリウレタンエラストマーにある。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記第2のポリエステルポリオールが、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合する際にラクトン類を共重合したもの又は脱水縮合したものにラクトン類を重付加したものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0016】
本発明の第8の態様は、第1〜7の何れかの態様において、前記ジオール成分が、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種であり、前記二塩基酸が、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、及びフタル酸から選択される少なくとも一種であることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材にある。
【0018】
本発明の第9の態様は、第1〜8の何れかの態様のポリウレタンエラストマー部材からなることを特徴とする紙葉類給紙搬送部材にある。
本発明の第10の態様は、30℃以上に融点を有するε−カプロラクトン系ポリオールからなる第1のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ架橋部位を有する第1のポリウレタンゴムを製造する工程と、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合により得られると共に側鎖としてメチル基のみを有し10℃以下に融点を有する第2のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加して前記第1のポリウレタンゴムと共通する架橋部位を有する第2のポリウレタンゴムを製造する工程と、前記第1のポリウレタンゴムと前記第2のポリウレタンゴムとをブレンドして共架橋してポリウレタンエラストマー部材を製造する工程とを具備することを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法にある。
本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記第2のポリウレタンゴムの前記式のアルキル側鎖濃度が0.5〜5mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法にある。
本発明の第12の態様は、第10又は11の態様において、前記ポリウレタンエラストマー部材の前記式のアルキル側鎖濃度が0.1〜4mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法にある。
【0019】
本発明では、30℃以上に融点を有する第1のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなる第1のポリウレタンゴムと、10℃以下に融点を有する第2のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなる第2のポリウレタンゴムとブレンドし、これを共架橋してポリウレタンエラストマーとする。
【0020】
ここで、上述した第1のポリウレタンゴムは、融点が高くアルキル側鎖を実質的に有さないポリオールからなるので、伸張結晶性を有するポリウレタンであり、機械的強度に優れるものである。一方、第2のポリウレタンゴムは、融点が低く所定の範囲のアルキル側鎖を有するポリオールからなるので、低温時の非晶安定性に優れたポリウレタンゴムとなる。
【0021】
本発明のポリウレタンエラストマーは、このような単にブレンドして構成されるものではなく、第1のウレタンゴムと第2のウレタンゴムとを共架橋することにより、第1のウレタンゴムにより機械的強度を維持したまま、第2のウレタンゴムの低温特性が発揮される。
【0022】
ここで、このように両者の特性を発揮させるように共架橋するためには、まず第1に、架橋前の両者のブレンド状態を考慮する必要がある。すなわち、ある程度は相溶するが完全には相溶せずにある程度相分離しているものを用いる必要があり、このような相溶状態で共架橋した場合には、架橋後、両者のそれぞれの成分に由来するTgが観察される。ある程度の相溶性を持つためには、例えば、両者のポリウレタンゴムのSP値の差が2.5以下程度が好ましいと考えられる。
【0023】
また、第2に、第1のポリウレタンゴムと第2のポリウレタンゴムとは、共通の架橋部位を有する必要がある。すなわち、両者の架橋反応に関する反応性がほぼ一致しているのが好ましい。
【0024】
このような架橋部位は、ポリエステルポリオールを付加重合するイソシアネート成分、又はこの付加重合の際に添加される短鎖ポリオールにより形成される。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた場合には、このイソシアネートが付加した部位が架橋部位となり、また、二重結合を有する短鎖ジオール、例えば、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールを添加して重付加した場合には、短鎖ジオールが付加した部位が架橋部位となる。
【0025】
なお、共架橋する手段は架橋部位の反応性に依存して決定され、例えば、MDIを用いて架橋部位を形成した場合には過酸化物架橋となり、また、二重結合を有する短鎖ジオール用いて形成した架橋部位は、硫黄等により架橋される。
【0026】
このような第1のポリウレタンゴムと第2のポリウレタンゴムとをブレンドし、共架橋する場合、両者の配合比により、所望の特性を容易に設計することができる。
【0027】
このように両者の配合比は求める特性により変化するが、全体のアルキル側鎖濃度が0.1〜4mmol/gとなるようにするのが好ましく、一般的には、両者の重量比は、5:95〜95:5の範囲となる。
【0028】
ここで、第1のポリウレタンゴムとなる第1のポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリ−ε−カプロラクトン系ジオールを挙げることができる。ここで、第1のポリウレタンゴムは、実質的にアルキル側鎖を有さないものが好ましい。
【0029】
一方、第2のポリウレタンゴムとなる第2のポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどのジオールと、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などを挙げることができる。具体的には、3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールアゼレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールセバケート、2−メチル−1,8−オクタンジオールアジペート、2−メチル−1,8−オクタンジオールアゼレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールセバケートを挙げることができる。数種類のジオールおよび二塩基酸を組み合わせることも差し支えない。ここで、第2のポリウレタンゴムは、例えば、アルキル側鎖濃度が0.5〜5mmol/gであるものから選択される。
【0030】
本発明ではこのように特定の混練型ポリウレタンを用いることにより、既存のポリウレタンを特性に合わせて選択し、ブレンド比率、及び相溶性等を考慮してブレンドすることにより、ゴム成形性及び低温特性を良好に維持し、且つ機械的特性の優れたポリウレタンエラストマー及びこれを用いた摩擦係数変化が少ない紙葉類給紙搬送部材を提供することができる。
【0031】
本発明のポリウレタンエラストマーを得る場合、混練型ポリウレタンに硬化剤を混練して熱硬化(架橋)する。かかる硬化剤として、一般の合成ゴム用の有機過酸化物、硫黄、有機含硫黄化合物、イソシアネートなどを挙げることができる。ここで、一般的には有機過酸化物を用い、有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどを挙げることができる。有機過酸化物の配合量は、ポリオール及びイソシアネートの合計100重量部に対して0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度である。また、硫黄、有機含硫黄化合物を硬化剤として用いることができるのは、上述した重合開始剤または鎖延長剤が不飽和結合を有している場合であり、例えば、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオールの場合である。ここで、有機含硫黄化合物としては、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、TETD(テトラエチルチウラムジスルフィド)、DPTT(ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド)などのチウラム系加硫促進剤、4,4'−ジチオモルホリンなどを挙げることができる。
【0032】
なお、このように混練・硬化する際には、一般的に用いられている添加剤、すなわち、カーボンブラック、シリカ等の補強材、ワックス等の粘着防止剤などを用いる。
【0033】
また、本発明で用いるポリウレタンには、通常通りにポリカルボジイミドなどの加水分解防止剤をポリウレタン100重量部に対して、0.2〜3重量%程度用いてもよい。
【0034】
なお、混練型ポリウレタンの反応条件は、一般的には、70℃〜120℃で、30〜180分である。熱硬化条件は、硬化剤として有機過酸化物を用いる場合には使用する有機過酸化物の分解特性により求めるが、通常は150〜180℃で3〜60分の条件に設定するのが好適である。
【0035】
また、本発明のロールの製造には、電熱プレス、押出、射出等各種成形方法が採用できる。
【0036】
本発明のポリウレタンエラストマーは、機械的特性に優れ且つ低温特性も良好であるので、各種用途に用いることができる。また、特に紙葉類給紙搬送部材に用いると、耐摩耗性及び低温特性に優れる他、摩擦係数が長期に亘ってほぼ一定に維持されるという効果を奏する。なお、本発明の紙葉類給紙搬送部材は、象面研磨したものであってもよく、紙粉が付着し難く、かつ表面に堆積しにくいという相乗効果を得ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0038】
(実施例1)
第1のポリウレタンゴムとして、エチレングリコールを開始剤とした分子量1020のポリ−ε−カプロラクトンジオール(水酸基価110、融点34℃)100重量部に、MDI(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート)24.3重量部を加え、100℃で3時間反応させてポリウレタンゴムを得た。このポリウレタンゴムのエステル基濃度は6.6mmol/gで、アルキル側鎖濃度は0mmol/gであった。
【0039】
また、第2のポリウレタンゴムとして、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸との重縮合により得られる、分子量4000のポリエステルジオール(水酸基価28.1、融点−50℃以下)を6.2重量部のMDIで鎖長延長させ、100℃で3時間反応させてポリウレタンゴムを合成した。ポリウレタンゴムのエステル基濃度は8.0mmol/g、アルキル側鎖濃度は4.2mmol/gであった。
【0040】
第1のポリウレタンゴムと第2のポリウレタンゴムとを6:1で配合したブレンドのポリウレタンゴム100重量部に対し、カーボンブラック10重量部と、トリメリット酸トリブチル(TBTM)20重量部と、ジクミルパーオキサイド(パークミルD:日本油脂(株)製)1.5重量部とを添加し、160℃で20分間プレス成形を行い、ポリウレタンエラストマーを得た。ポリウレタンエラストマー中のアルキル側鎖濃度は0.6mmol/gである。
【0041】
(実施例2)
第1のポリウレタンゴムと第2のポリウレタンゴムとを5:5で配合した以外は実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーを得た。ポリウレタンエラストマー中のアルキル側鎖濃度は2.1mmol/gである。
【0042】
(実施例3)
第1のポリウレタンゴムと第2のポリウレタンゴムとを1:6で配合した以外は実施例1と同様にしてポリウレタンエラストマーを得た。ポリウレタンエラストマー中のアルキル側鎖濃度は3.6mmol/gである。
【0043】
(比較例1)
実施例1の第1のポリウレタンゴム100重量部に対し、カーボンブラック10重量部と、トリメリット酸トリブチル(TBTM)20重量部と、ジクミルパーオキサイド(パークミルD:日本油脂(株)製)1.5重量部を添加し、160℃で20分間プレス成形を行い、ポリウレタンエラストマーを得た。ポリウレタンエラストマー中のアルキル側鎖濃度は0mmol/gである。
【0044】
(比較例2)
実施例1の第2のポリウレタンゴム100重量部に対し、カーボンブラック10重量部と、トリメリット酸トリブチル(TBTM)20重量部と、ジクミルパーオキサイド(パークミルD:日本油脂(株)製)1.5重量部を添加し、160℃で20分間プレス成形を行い、ポリウレタンエラストマーを得た。ポリウレタンエラストマー中のアルキル側鎖濃度は4.2mmol/gである。
【0045】
(比較例3)
EPDMゴム100重量部に、パラフィン系プロセスオイル100重量部、補強剤としてホワイトカーボン25重量部、酸化亜鉛5重量部、及び加硫促進剤4重量部を添加してゴム組成物を生成し、165℃で25分間プレス成形を行い、紙葉搬送ゴムロールを得た。
【0046】
(比較例4)
分子量70万の塩素化ポリエチレン100重量部に、可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)を80重量部、補強剤としてカーボンブラック20重量部、ホワイトカーボン15重量部、マグネシア10重量部、及び加硫促進剤としてエチレンチオウレア2.5重量部を添加してゴム組成物を生成し、175℃で25分間プレス成形を行い、紙葉搬送ゴムロールを得た。
【0047】
(試験例1)
各実施例及び比較例のテストサンプルについて、23℃での反発弾性(Rb)を評価した。この結果は、表1に示す。反発弾性はJIS K6255に準拠したリュプケ式反発弾性試験装置により求めた。
【0048】
また、各実施例および比較例の成形物を用い、JIS K6253に準じて、硬度(Hs:JIS Aスケール)、JIS K6251に準じて、引張強さ(Tb:MPa)および伸び(Eb:%)を測定した。この結果を表1に示す。
【0049】
さらに、複素たて弾性係数E*(JIS K6394)を測定し、耐寒性評価を行った。この結果は図1に示す。図1は、23℃のE*に対する変化率[(E*(t℃)/E*(23℃))−1]×100(%)]を示し、100%のときには23℃の2倍になったことを示す。また、E*100%を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0003907046
【0051】
実施例1〜3は給紙搬送用ロールとして充分な強度を有していた。また、実施例3は、比較例1及び2のブレンド比に応じて算出した値よりも大きな機械的強度を有するものであった。複素たて弾性係数E*が常温(23℃)の2倍に達する点(E*100%)は、比較例1および比較例4より優れた値を示した。実施例1〜3における反発弾性(Rb)はいずれも70%以上の非常に高い値を示し、給紙搬送部材としては好適であることがわかった。さらに、圧縮永久ひずみは非常に小さく、高荷重の設定においても好適に使用できることも確認できた。
【0052】
(試験例2)
各実施例及び比較例の給紙搬送用ロールについて、30万枚の通紙試験を行い、所定枚数通紙後の摩擦係数(μ)を測定した。この結果を表1に示す。また、実施例1、3及び比較例1〜4の経時変化を図2に示した。
【0053】
この結果、実施例1〜3の給紙搬送用ロールは、30万枚の通紙試験後においても高い摩擦係数を維持していた。また、比較例より長期に亘って摩擦係数の変化が少なく、安定していることがわかった。
【0054】
(試験例3)
実施例2及び比較例1、2について、DSCを測定した。DSCの測定は以下の機器で行い、結果を図3に示す。
示差走査熱量計 DSC6200:セイコーインスツルメンツ(株)製
【0055】
この結果より、実施例2のポリウレタンエラストマーでは、ブレンドしたA、Bのポリウレタンゴムのぞれぞれに由来する二つのガラス転移点Tgが観察されることが確認された。これは、ポリウレタンAとポリウレタンBとが分子レベルでは相溶せず、ある程度の大きさをもって相溶していることを示しているものと思われる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、ゴム成形性及び低温特性を良好に維持し、且つ機械的特性の優れたポリウレタンエラストマー部材及びこれを用いた摩擦係数変化が少ない紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例の複素たて弾性係数E*の温度依存性を示す図である。
【図2】本発明の実施例及び比較例の通紙枚数に対する摩擦係数の変化を示す図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例のDSCの測定結果を示す図である。

Claims (12)

  1. 30℃以上に融点を有するε−カプロラクトン系ポリオールからなる第1のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ架橋部位を有する第1のポリウレタンゴムと、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合により得られると共に側鎖としてメチル基のみを有し10℃以下に融点を有する第2のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ前記第1のポリウレタンゴムと共通する架橋部位を有する第2のポリウレタンゴムとをブレンドして共架橋してなることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  2. 請求項1において、下記式のアルキル側鎖濃度が0.1〜4mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
    Figure 0003907046
  3. 請求項1又は2において、前記第1のポリウレタンゴムと前記第2のポリウレタンゴムとが、重量比で5:95〜95:5の範囲でブレンドされたことを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムはそれぞれ、前記第1のポリエステルポリオール又は前記第2のポリエステルポリオールと共に、架橋部位となる二重結合を有する短鎖のジオールを添加して重付加されたものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムはそれぞれ、前記第1のポリエステルポリオール又は前記第2のポリエステルポリオールと共に、架橋部位を形成するイソシアネートにより重付加されたものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、前記第1のポリウレタンゴム及び前記第2のポリウレタンゴムのそれぞれに由来するガラス転移点が観察されることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、前記第2のポリエステルポリオールが、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合する際にラクトン類を共重合したもの又は脱水縮合したものにラクトン類を重付加したものであることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  8. 請求項1〜7の何れかにおいて、前記ジオール成分が、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選択される少なくとも一種であり、前記二塩基酸が、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、及びフタル酸から選択される少なくとも一種であることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材
  9. 請求項1〜8の何れかのポリウレタンエラストマー部材からなることを特徴とする紙葉類給紙搬送部材。
  10. 30℃以上に融点を有するε−カプロラクトン系ポリオールからなる第1のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加してなり且つ架橋部位を有する第1のポリウレタンゴムを製造する工程と、ジオール成分と二塩基酸との脱水縮合により得られると共に側鎖としてメチル基のみを有し10℃以下に融点を有する第2のポリエステルポリオールをイソシアネートで重付加して前記第1のポリウレタンゴムと共通する架橋部位を有する第2のポリウレタンゴムを製造する工程と、前記第1のポリウレタンゴムと前記第2のポリウレタンゴムとをブレンドして共架橋してポリウレタンエラストマー部材を製造する工程とを具備することを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法。
  11. 請求項10において、前記第2のポリウレタンゴムの下記式のアルキル側鎖濃度が0.5〜5mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法。
    Figure 0003907046
  12. 請求項10又は11において、前記ポリウレタンエラストマー部材の前記式のアルキル側鎖濃度が0.1〜4mmol/gの範囲にあることを特徴とするポリウレタンエラストマー部材の製造方法。
JP2002121311A 2002-04-23 2002-04-23 ポリウレタンエラストマー部材及び紙葉類給紙搬送部材並びにポリウレタンエラストマー部材の製造方法 Expired - Fee Related JP3907046B2 (ja)

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