JP3906952B2 - ボールねじの組替え治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールねじの組替え治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじは、ねじ軸にボールを介してナットが螺合される構造のもので、デフレクタをナットに固着した状態で組立てを行うデフレクタ組込み型ボールねじの場合、ナットに嵌入されたボール挿入治具によりナットの内面のねじ溝の循環路にボールが内側から挿入され、ボールを残したままボール挿入治具をナットから抜くのと連続してねじ軸を螺入して組立てを行う。
【0003】
こうして組立てられるボールねじの精度を確保するため、ねじ軸のねじ溝の測定データに基づいてナットを研削加工した上で、最適クリアランスを得られるボール径を選択するようにしていた。
【0004】
しかし諸々の測定誤差や3次元的な加工バラツキ等によってボール径の選択調整限界を越えてしまう場合があり、前記したように組立てられたボールねじの品質保証測定を行うと、きつすぎて円滑な動きができなかったり、逆にガタが生じている場合がある。
【0005】
このように満足する組付け精度の得られないボールねじは、結局ねじ軸,ナット,ボールに分解してそれぞれ別個に新たなボールねじの構成部品として利用するようにしていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
デフレクタ式ボールねじは、複数列のボール循環路がねじ軸とナットとの間に形成されており、各列の循環路に挿入されるボールに各列ごとに若干径の異なるボールを使用する場合があり、ボールねじを分解したとき、これら径の異なるボールが混じり合ってしまい、再使用するためには再度ボールを1個ごと測定し直さなければならない面倒がある。
【0007】
またある列のボールだけを交換したいような場合でも、列ごとにボールを抜き取ることができず結局全部分解することになり、ボールねじの組替え作業が面倒である。
【0008】
さらにねじ軸だけの交換で必要な組付け精度が得られそうな場合でも、ボールねじを分解した後は、再び最初から組立てを行わなければならず、組替え作業が効率的に行えない。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ボールねじの列ごとのボールの交換やねじ軸の交換が容易に行え効率的な組替え作業ができる簡単な構造の組替え治具を供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記目的を達成するために、本発明は、ねじ軸にボールを介してナットが螺合するボールねじの組替え治具において、円柱体と同円柱体に回動自在に嵌合する外筒とからなり、前記円柱体は、一端面の端面開口から軸方向にボール通路が穿孔され所定先端位置で屈曲して外周面に周面開口が形成され、前記外筒は、ボールねじのねじ溝の小径部に略等しい外径を有し、前記円柱体に対して所定相対回動位置で前記ボール通路の周面開口に合致する孔が、周壁の所定位置に形成されたボールねじの組替え治具とした。
【0011】
端面開口を下に向けた姿勢の該組替え治具の上端にねじ軸を連結して、ねじ軸に螺合したナットを回転させながら下降して組替え治具の外筒に嵌挿すると、ナットの内面のねじ溝に挿入されたボールはボールねじのねじ溝の小径部に略等しい外径を有する外筒で保持された状態となるので、外筒を円柱体に対して回動して所定回動位置に一致させると外筒の孔が円柱体の周面開口と合致し、ねじ溝に挿入されたボールが外筒の孔から周面開口に入り、ボール通路を通って端面開口から外へ落下して1つの循環路をなすねじ溝にあったボールを全て抜き取ることができる。
【0012】
この状態で新たなボールを逆のルートを通ってナットのねじ溝に挿入することが可能であり、挿入後ナットを元のねじ軸に螺入すれば、ボールだけの交換を円滑に速やかに行うことができる。
【0013】
さらに端面開口を下に向けた姿勢の該組替え治具の上端にねじ軸を連結して、ねじ軸に螺合したナットを回転させながら下降して組替え治具の外筒に嵌挿すると、ナットの内面のねじ溝に挿入されたボールはボールねじのねじ溝の小径部に略等しい外径を有する外筒で保持されるので、この状態でフリーとなったねじ軸を新たなねじ軸に交換し、再びナットを上昇させて新たなねじ軸に螺合させることができる。
【0014】
このようにボールねじのねじ軸だけを交換することが、簡単な作業で効率良く行うことができる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のボールねじの組替え治具において、前記円柱体には、前記ボール通路が周方向に間隔を存して複数本穿孔され、各ボール通路の先端の前記周面開口は軸方向に互いに異なる位置にあり、前記外筒には、複数の前記孔が前記ボール通路の各周面開口と同じ軸方向位置にそれぞれ対応して形成されたことを特徴とする。
【0016】
デフレクタ式ボールねじが、ねじ軸とナットとの間に介装されるボールの循環路を複数列備えている場合に、ねじ軸の代わりに該組替え治具をナットに嵌挿し各列の循環路に対応する軸方向位置に円柱体の周面開口と外筒の孔をそれぞれ対応させ、外筒を回動して1つの孔を円柱体の1つの周面開口に合わせると対応するナットのボール循環路のボールが外筒の孔から周面開口に入り、ボール通路を通って端面開口から外へ落下して1つの循環路のねじ溝にあったボールを全て抜き取ることができ、また外筒を回動して別の孔を別の周面開口に合わせると別の循環路のボールを抜き取ることができる。
【0017】
このように複数列の循環路を有するデフレクタ式ボールねじの場合に、各列の循環路を列ごとにボールを抜き取ることができ、また列ごとに新たなボールを逆のルートを通ってナットのねじ溝に挿入することが可能であり、ボールだけの交換を簡単に行うことができる。
【0018】
複数列の循環路に挿入されているボールが列ごとに若干径が異なる場合、列ごとにボールを抜き取ることができるので、分解時に径の異なるボールが混じり合うことを回避して分別回収することができ、再度ボール径を測定することなくすぐに再使用に供することができ作業効率を向上させることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載のボールねじの組替え治具において、前記円柱体の前記端面開口を有する端部にフランジが形成され、他端部に前記外筒の外径と同径の抜止部材がねじ止めされて設けられ、前記円柱体に回動自在に嵌合する前記外筒が、前記フランジと前記抜止部材とで両側から軸方向に関して位置決めされることを特徴とする。
【0020】
ボールねじの組替え治具において円柱体に外筒を軸方向位置を固定して回動自在に嵌合することが簡単な構造で構成することができる。
抜止部材が円柱体にねじ止めされるので、ねじを緩め抜止部材を取れば外筒を円柱体から取り外すことができ、円柱体だけを用いてナットのねじ溝の循環路にボールを挿入することも可能であり、複数列の循環路があっても同時に各列の循環路にボールを挿入することができる。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のボールねじの組替え治具において、前記抜止部材には、同軸にねじ軸を係合連結する係合手段が形成されたことを特徴とする。
【0022】
係合手段により抜止部材に係合してねじ軸を同軸に連結することが、確実にかつ容易にでき、組替え作業を効率良く行うことができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれかの項記載のボールねじの組替え治具において、前記円柱体の端面開口を有する端部に同軸にトルク測定手段を連結できる連結手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
連結手段を介して円柱体にトルク測定手段を連結することで、該ボールねじの組替え治具を用いて組立てられたボールねじの作動トルクを速やかにかつ簡単に測定して組替えの必要があるか否かを簡易的に判断することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図10に図示し説明する。本実施の形態に係るボールねじの組替え治具1の斜視図を図1に図示し、その分解斜視図を図2に、縦断面図を図3に、下面図を図4にそれぞれ図示する。
【0026】
組替え治具1は、主要構成部品として円柱体2と外筒12からなる。
円柱体2は、その一端部に円環状のフランジ3が形成され、円柱体2の同フランジ3側端面2aには、図3および図4に図示するように中心部に突起4が突出しており、他端面は図2に示すように周縁部を残して内側に底の浅い凹部2bが形成され、その凹部2bの中心部に有底のボルト穴2cが形成されている。
【0027】
円柱体2には、中心軸の周りに互いに90度の間隔を存して軸方向に指向した4本のボール通路5,6,7,8が穿孔されており、各ボール通路5,6,7,8は、フランジ3側の突起4の周りの端面2aに端面開口5a,6a,7a,8aを形成している。
【0028】
各ボール通路5,6,7,8は、端面開口5a,6a,7a,8aから軸方向へそれぞれ所定長さ順次延びて斜め遠心方向に屈曲して円柱体2の外周面2dに貫通して周面開口5b,6b,7b,8bを形成している。
【0029】
この周面開口5b,6b,7b,8bは、周方向には互いに90度の間隔を有し、軸方向には順次等間隔の所定位置にあり、ボールねじ50のナット52の内面に形成されるねじ溝のボール53が循環する4列の循環路に各周面開口5b,6b,7b,8bが対応する位置関係にある。
【0030】
フランジ3の外周面の上縁部に軸中心にして周面開口5b,6b,7b,8bに対応する各周方向位置に三角形状の指標95 ,96 ,97 ,9 8が刻設されている。
【0031】
一方外筒12は、内径が円柱体2の外径より僅かに大きく、外径がボールねじ50のねじ軸51のねじ溝の小径に略等しい薄肉の円筒であり、一端にフランジ13が設けられている。
フランジ13は、円柱体2のフランジ3と同じ外径で略同じ厚みを有する円環状をなしている。
【0032】
外筒12の周壁に軸方向に指向して1列に4つの円孔15,16,17,18が軸方向所定位置に設けられており、各円孔15,16,17,18のフランジ13の端面からの軸方向距離は、円柱体2のフランジ3の端面2aと反対の面からの周面開口5b,6b,7b,8bまでの軸方向距離とそれぞれ等しい。
フランジ13の外周面はしぼ加工が施され、その下縁部に軸中心にして1列の円孔15,16,17,18に対応する周方向位置に三角形状の指標19が刻設されている。
【0033】
円柱体2を外筒12内に挿入して円柱体2のフランジ3に外筒12のフランジ13を当接すると、円柱体2に対して外筒12が回動自在に嵌合するが、このように嵌合した状態で外筒12を回動し、外筒12側の指標19を円柱体2側の4つの指標95 ,96 ,97 ,98 のいずれかに合わせると、円孔15,16,17,18のいずれかの1つが対応する周面開口5b,6b,7b,8bの1つと合致する。
【0034】
例えば円柱体2に対して外筒12を回動して指標19を指標95 に合わせると、外筒12の円孔15が円柱体2の周面開口5bと合致し、ボール通路5が円孔15を介して外筒12の外方に抜ける。
【0035】
このように円柱体2に外筒12を嵌合した後、抜止部材21が円柱体2の端部にボルト23により固着される。
抜止部材21は、外径が外筒12の外径と等しく、一端面に円柱体2の凹部2bに係合する凸部21bが突出し(図3参照)、中心部に段部を介してボルト孔21cが穿設されている。
【0036】
抜止部材21の他端面には、周縁部21dの対向する部分が軸方向に突出した突起22,22が設けられている。
突起22は、ボールねじ50のねじ軸51の端部の係合溝に係合して連結する手段として用いられる。
【0037】
かかる抜止部材21が円柱体2の端部に、凹部2bと凸部21bを係合させてあてがわれ、ボルト23をボルト孔21,ボルト穴2cに螺合して固着する。
すると円柱体2に嵌合された外筒12は、抜止部材21により抜け止めされると同時に、円柱体2に対して周方向の回動を自在としてフランジ3と抜止部材21により両側を規制されて軸方向の位置決めがなされる。
【0038】
こうして簡単な構造のボールねじの組替え治具1が組付け構成される。
この組替え治具1を図5に示すように支持台30に支持させて使用する。
支持台30は、基台31の上にねじ軸51より長尺の一対の支柱32,32が立設され、支柱32,32の上端面にさらにガイド棒32a,32aが鉛直上方に突設されている。
【0039】
この左右の支柱32,32に架設される昇降支持板34は、両端をガイド棒32a,32aに貫通されて支柱32,32の上端面との間にスプリング33,33を介して昇降自在に支持される。
この昇降支持板34の中央部にナット52の外径よりいくらか大きい内径の円筒状のナット保持部材35が上下を貫通するようにして固着されており、同ナット保持部材35の一方の開口端部にナット52を締付け保持するチャック36が備えられている。
【0040】
また支柱32,32の途中の高さに水平板37が架設されており、同水平板37の中央部は貫通孔37aが形成されており、水平板37の下面で貫通孔37aの両側に一対のシリンダ38,38が下方に垂設され、両シリンダ38,38の下方に突出したシリンダロッド38a,38aの下端に昇降板39が固着されている。
この昇降板39の中央に円錐突起40が突設されている。
【0041】
以上の支持台30および組替え治具1で組立ておよび組替えを行うボールねじ50は、ねじ溝に4列のボールの循環路があるデフレクタ式ボールねじであり、4個のデフレクタはボール53の挿入前に予めナット52に組み込まれ、ボール53はナット52の内側から挿入する。
【0042】
いま図5に示すようにボールねじ50のデフレクタを組み込んだナット52をナット保持部材35のチャック36により保持し、本組替え治具1を抜止部材21を下にしてナット52に上から嵌入する。
【0043】
そしてボールねじ50のねじ軸51を水平板37の貫通孔37aに縦方向に貫通させ、下端を下方位置にある昇降板39の突起40に回転自在に支持させ、上端の係合部を前記上方の組替え治具1の抜止部材21の突起22に係合してねじ軸51の上に組替え治具1を鉛直方向に同軸に連結する。
【0044】
シリンダ38,38を駆動してねじ軸51とその上に連結された組替え治具1を昇降してナット52に対する組替え治具1の相対的位置を調節すると、外筒12の4つの円孔15,16,17,18をナット52の内面のねじ溝の4列の循環路と軸方向位置で一致させることができる。
【0045】
この状態で円柱体2に対して外筒12を回動して外筒12の指標19を円柱体2の指標95 ,96 ,97 ,98 の1つ、例えば指標95 に合わせると、円柱体2の上に向いた端面2aに開口した端面開口5aから延びるボール通路5が周面開口5b,円孔15を介してナット52のねじ溝の1列の循環路に連通するので、端面開口5aから適切なボール径のボール53を順次入れてロッドで押し込むようにして循環路にボール53を挿入することができる。
【0046】
次ぎに外筒12を回動して外筒12の指標19を円柱体2の指標96 に合わせれば、前記と同様にして次ぎの列の循環路にボール53を挿入することができ、このようにして4列の循環路に順次ボール53の挿入ができる。
【0047】
ナット52のねじ溝にボール53の挿入を終えた後、シリンダ38,38を駆動してねじ軸51とその上に連結された組替え治具1を上昇させ、ねじ軸51を回転させながらねじ軸51をボール53を介してナット52に螺合して組替え治具1に代わってねじ軸51を挿入しボールねじ50を組立てることができる。
【0048】
このボールねじ50の組立てを含むボールねじ50の適合製造手順および組替えの手順を図6のフローチャートに示し、同図ステップに従い以下説明する。
まずねじ軸51のねじ溝を転造加工し(ステップ1)、熱処理したのち、ねじ溝のBCD(ねじ軸と理論的接触点で接触する球の中心を包含する円筒径)とリードを測定する(ステップ2)。
【0049】
このねじ軸51の測定データに基づいてナット52の研削加工が行われる(ステップ3)。
高い精度の加工が期待できないねじ軸51を先に加工成形し、その測定データをもとに精密加工できるナット52の研削加工することで、ねじ軸51に適合したナット52を製造し組み合わせることが可能である。
【0050】
そして研削加工したナット52を熱処理してねじ溝のBCD,リードを測定する(ステップ4)。
このナット52の測定データと前記ねじ軸51の測定データをもとに誤差を吸収する最適ボール径のボール53を選択し(ステップ5)、前記したように組替え治具1を利用してボールねじ50の組立てを行う(ステップ6)。
【0051】
そして組立てられたボールねじ50のバックラッシュ測定やフリクション測定等の品質保証測定を行い(ステップ7)、良品か否かを判別する(ステップ8)。
良品ならば払出し(ステップ9)、良品でなければステップ10に飛んで組替え作業に入る。
【0052】
ステップ10では諸々の測定誤差や3次元的な加工バラツキ等によってボール径の選択調整限界すなわち想定した調整範囲を越えているか否かを判別し、調整範囲内にあればステップ11に進み、新たな最適ボール53を選択し、ボール53の交換を行う(ステップ12)。
【0053】
またステップ10で調整範囲を越えていればステップ13に飛んで、新たな最適ねじ軸51を選択し、ねじ軸51の交換を行う(ステップ14)。
このねじ軸51の交換と前記ボール53の交換における組み替え作業は、図7および図8に示すように組替え治具1を使用して行う。
【0054】
すなわち昇降支持板34を図5に示す状態とは上下反対にして支柱32,32の上端のガイド棒32a,32aに嵌装させ、ナット保持部材35の下端に中空円板状の底板41を固定し、組替え治具1を円柱体2のフランジ3を下にして底板41に載せ垂直に立てる。
【0055】
円柱体2の端面2aの周縁フランジ3部分が底板41に支持され、中央の4つの端面開口5a,6a,8a,9aは底板41の中空部に対応して下方に開口している。
なお組替え治具1の上端の抜止部材21にはその突起22を使用して前記した組立て時に同軸に係合されたボールねじ50のねじ軸51が、連結されている(図7参照)。
【0056】
かかる状態からナット52をねじ軸51に対して回転しながら下降して、ねじ軸51からから抜き、下方に連結された組替え治具1の外筒12に嵌装させ、図8に示すようにナット52を所定高さ位置でチャック36が掴むように保持する。
【0057】
このチャック36がナット36を保持する前の状態でねじ軸51の交換ができ、新たなねじ軸51を組替え治具1の抜止部材21に連結して再びナット52を上昇させ、ねじ軸51に螺合すれば、ステップ14のボールねじ50のねじ軸51だけの交換ができる。
【0058】
また図8に示す状態で、組替え治具1の外筒12を円柱体2に対して相対的に回動して外筒12の指標19を円柱体2の指標95 ,96 ,97 ,98 の所定の1つ、例えば指標96 に合わせると、図9▲2▼に示すように外筒12の円孔16が円柱体2の周面開口6bと合致し、下方に延びるボール通路6と連通するので、ナット52のねじ溝の下から第2列の循環路に挿入されていたボール53がボール通路6に流れ出し端面開口6aから落下して抜き取ることができる。
【0059】
外筒12を円柱体2に対して相対的に回動して外筒12の指標19を円柱体2の指標95 に一致させれば、図9▲1▼に示すように第1列の循環路からボール53を抜き取ることができ、同様に図9▲3▼は第3列の循環路、図9▲4▼は第4列の循環路からそれぞれ独立にボール53を抜き取ることができる。
【0060】
このようにナット52のねじ溝の各循環路のうち所要の循環路のボール53を選択的に抜き取ることが簡単にできる。
必要ならば全列の循環路から全てのボール53を抜き取ることができる。
そして再び図5に示すようにセットして新たなボール53を所要の循環路に挿入することができ、ボールの交換を行う(ステップ12)。
【0061】
以上のようにボール53の交換(ステップ12)またはねじ軸51の交換(ステップ12)が行われボールねじ50が新たに組立てられると、ステップ15に進み、ボールねじ50の簡易的なトルク測定が行われる。
このトルク測定においても組替え治具1が利用される。
【0062】
すなわち図10に図示するようにボールねじ50をシリンダ38,38により適当な高さ上昇させた昇降板39の円錐状をした突起40にボールねじ50のねじ軸51を回転自在に立設し、ねじ軸51に螺合したナット52をナット保持部材35のチャック36が保持する。
【0063】
そしてねじ軸51の上端には突起21を介して組替え治具1が連結しているので、、この組替え治具1の上端の円筒体1の端面2aに突出した突起4にトルクメータ45の作動部を嵌着して取り付ける。
【0064】
ナット52は、ナット保持部材35に保持されて回転を規制されているが、昇降板39とともに昇降可能であり、かつスプリング33,33を介して支持されており、ナット52の多少の上下変動があってもナット52およびナット保持部材35,昇降支持板34の荷重がねじ軸51との螺合部分に影響することを極力避けている。
この状態でトルクメータ45の本体部を回転すると、トルクメータ45の作動部と一体に組替え治具1を介してねじ軸51が回転する。
【0065】
ねじ軸51は、回転を規制されたナット52との間でボール53を介して回転し、ナット52は前記したように上下方向の荷重がねじ軸51に影響を与えることなく移動するので、ねじ軸51と一体の作動部にはボールねじ50の螺合による摩擦力が抵抗として働き、トルクメータ45の本体部との間で相対的な回転変位が生じ、この回転変位からトルクメータ45はボールねじ50のトルクを簡易的に測定することができる。
【0066】
こうして再組立てされたボールねじ50のトルクが測定されると(ステップ15)、ステップ16でトルク測定値が所定範囲内にあるか否かを判別し、所定範囲内にあればステップ7に戻って本格的に品質保証測定を行って、良品と判断されれば(ステップ8)、払い出される(ステップ9)。
【0067】
ステップ16でトルク測定値が所定範囲内にないと判別されたときは、ステップ17に進み、ボールねじ50は分解される。
分解に際しては、図7に示すように支持台30に組替え治具1を介してボールねじ50を連結支持し、図8に示すようにナット52を下降してねじ軸51から組替え治具1に移し、ねじ軸51を外し、次いで前記したようにナット52のねじ溝の4列の循環路に挿入されていたボール53を、列ごとに分けて抜き取ることができる。
【0068】
こうしてボールねじ50を構成するねじ軸51,ナット52,ボール53を別々に回収するのはもとより、ボール53は循環路の列ごとに分けて分別回収することができる(ステップ18)。
【0069】
したがって1ボールねじ50において、循環路に挿入されるボール53が列ごとにボール径が僅かに異なる場合に、列ごとに分別回収できるので、径の異なるボール53が混じり合って再度ボール径を測り直さなければならないようなことは避けることができ、すぐに再使用に供することができる。
【0070】
なおボールねじ50の組立てにおいて、組替え治具1の円柱体2は、外筒12がなくともナット52内に嵌挿されると、ナット52のねじ溝に挿入されたボール53をその周面で保持することができる外径を有しいるので、外筒12を外した円柱体2を図5の組替え治具1のように使用すれば上面となる端面2aの4つの端面開口5a,6a,7a,8aから同時にボールを押し込んでナット52の4列の循環路に挿入することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る組替え治具の斜視図である。
【図2】同分解斜視図である。
【図3】同組替え治具の縦断面図である。
【図4】同下面図である。
【図5】組立て作業時の支持台,組替え治具,ボールねじの一部断面とした側面図である。
【図6】ボールねじの適合製造手順および組替えの手順を示すフローチャートである。
【図7】ボールねじの組替えの1過程を示す一部断面とした側面図である。
【図8】ボールねじの組替えのさらに進んだ1過程を示す一部断面とした側面図である。
【図9】ナットのねじ溝の循環路に挿入されたボールを循環路の列ごとに抜き取る状態を示す組替え治具の断面図と下面図を列ごとに示した図である。
【図10】トルク測定時の支持台,組替え治具,ボールねじの一部断面とした側面図である。
【符号の説明】
1…組替え治具、2…円柱体、3…フランジ、4…突起、5,6,7,8…ボール通路、95 ,96 ,97 ,98 …指標、
12…外筒、13…フランジ、15,16,17,18…円孔、19…指標、
21…抜止部材、22…突起、23…ボルト、
30…支持台、31…基台、32…支柱、33…スプリング、34…昇降支持板、35…ナット保持部材、36…チャック、37…水平板、38…シリンダ、39…昇降板、40…突起、41…底板、45…トルクメータ、
50…ボールねじ、51…ねじ軸、52…ナット、53…ボール。
Claims (5)
- ねじ軸にボールを介してナットが螺合するボールねじの組替え治具において、
円柱体と同円柱体に回動自在に嵌合する外筒とからなり、
前記円柱体は、一端面の端面開口から軸方向にボール通路が穿孔され所定先端位置で屈曲して外周面に周面開口が形成され、
前記外筒は、ボールねじのねじ溝の小径部に略等しい外径を有し、前記円柱体に対して所定相対回動位置で前記ボール通路の周面開口に合致する孔が、周壁の所定位置に形成されたことを特徴とするボールねじの組替え治具。 - 前記円柱体には、前記ボール通路が周方向に間隔を存して複数本穿孔され、各ボール通路の先端の前記周面開口は軸方向に互いに異なる位置にあり、
前記外筒には、複数の前記孔が前記ボール通路の各周面開口と同じ軸方向位置にそれぞれ対応して形成されたことを特徴とする請求項1記載のボールねじの組替え治具。 - 前記円柱体は、前記端面開口を有する端部にフランジが形成され、他端部に前記外筒の外径と同径の抜止部材がねじ止めされて設けられ、
前記円柱体に回動自在に嵌合する前記外筒は、前記フランジと前記抜止部材とで両側から軸方向の位置決めがなされることを特徴とする請求項1または請求項2記載のボールねじの組替え治具。 - 前記抜止部材には、同軸にねじ軸を係合連結する係合手段が形成されたことを特徴とする請求項3記載のボールねじの組替え治具。
- 前記円柱体の端面開口を有する端部に同軸にトルク測定手段を連結できる連結手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項記載のボールねじの組替え治具。
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