JP3906727B2 - 校正用インクジェット記録シート及び該シートの利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式に用いられるインクジェットインクを受理するためのインクジェット記録シートに関する。詳しくは、各種出版分野の見本作成や校正刷りに好適に用いられるインクジェット記録シートに関する。
さらに詳しくは、インクジェット記録方式で、顔料を含有する水性インクを印字(以下、吐出ともいう)した場合に、印字後速やかに水分を解放し得、インク本来の色を短時間で発現でき、その後その色を長期にわたって維持し得るインクジェット記録シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
各種出版(書籍、雑誌、新聞等)分野においては、校正・見本用、あるいはデザイン検討・確認用の刷り物(以下、校正刷り等という)を作成した後、印刷物を得る。特にカラー印刷の場合、校正刷りにおける色相や質感等は、原稿と実際の印刷物(以下、本刷りともいう)との色調の相違を確認・調整したり、カラー印刷の効果を確認・調整したりするうえで極めて重要である。
【0003】
従来は、実際の印刷機(以下、本機ともいう)や小型の印刷機を用いて校正刷り等を得てきた。
しかし、このような方法の場合、本刷りに至るまでに長時間を要したり、実際の印刷用紙や印刷インキを多量に消費したり、また費用もかさむ。
【0004】
近年、インクジェット方式において解像度の向上、色再現技術の向上、印刷の高速化が計られ、銀塩写真に近い画像が短時間かつ低コストで得られるようになってきた。
そこで、このようなインクジェット方式が、印刷分野における校正やデザイン部門でのデザインイメージの見本作成等に利用されようになりつつある。
【0005】
インクジェット方式による校正のメリットとしては以下のようなことが挙げられる。
1.プリンターが比較的安価で、メンテナンスが容易。
2.色再現性の幅が広い。
3.データをデジタルで処理し得る、等である。
つまり、インクジェット方式で校正刷りを行うと、校正が簡便化されるだけではなく、色再現性の幅が広いので、実際の印刷物に非常に近い校正刷りを得ることができる。
【0006】
ところで、インクジェット方式に用いられるインクには、大きく分けて染料インクと顔料インクとがある。
染料インクは、顔料インクよりも一般に色の再現範囲が広く、発色も鮮やかであるという特徴があるが、耐光性がやや劣る傾向にある。
現在、一般家庭や会社などで使われている小型インクジェットプリンター用のインクのほとんどが、この染料タイプである。
【0007】
一方、顔料インクは、色の再現範囲が染料インクほど広くはないが、インクの耐候性は染料インクよりも優れている。そのため、顔料インクは、屋外の看板やポスターの製作など耐候性が求められる用途に使われている。
【0008】
色再現範囲が広く、その使用環境が屋内であるという点からは、校正用には染料インクの方が好ましいと考えられる。
しかし、染料インクの場合、印字後その濃度が時間の経過と共に低下する。
【0009】
ところで、原稿と校正刷りとを照合して色調等を調整する校正作業は、印字後わずか10分足らずの間に行われる。そして、1週間程度経った後に、その調整に基づいて実際の印刷物が印刷されることも多い。つまり、本刷りの際には、色調等調整後の校正刷りが見本として使われる。
従って、印字後色調等を調整した校正刷りと、本刷りの際に見本として使用される校正刷りとは、色調、質感等が変化しないことが要求される。
【0010】
さらに一度本刷りをした後、例えばシーズン毎に何度も本刷りが繰り返されることもあり、最初の本刷りの際に使用された見本(=校正刷り)が、2度目以降の本刷りの際にも繰り返し見本として使用される。
従って、校正刷りには、最初の本刷り後1年以上の長期渡りその色調等が変化しないことが要求される。本刷り用の見本として使用される校正刷りには、普通に消費される印字物よりも色調変化、質感変化に対する要求は、極めて厳しい。
【0011】
よって、屋内で使用されるとはいうものの、校正刷り用には、耐光性に優れる顔料インクの方が染料インクよりも好ましい。
【0012】
ところで、インクジェット用のインクには、溶剤型と水性型とがあり、環境に対する配慮等から水性型のインクが多く使用されるようになりつつある。
一般に、水性型のインクは、溶剤型に比して印字後の乾燥には時間を要し、印字後10分足らずでは印字面はまだ十分乾いてはおらず、多くの場合「濡れ色」を呈する。一般に「濡れ色」を呈する状態は、十分乾燥した状態と比べると色調が鮮やかに濃く見える。
【0013】
しかし、上記したように校正刷りの場合、印字後10分足らずで原稿との照合に使用され、その校正刷りが本刷りの見本となる。
従って、校正刷りには、原稿との照合時に、外観上は十分乾燥した状態と同等であることが要求される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、顔料を含有する水性インク用いて、インクジェット記録方式で校正刷りをした際に、印字後10分後と一週間後、さらに一週間後と一年後との色調等の変化がほとんどない印字物(記録物)を提供し得る、インクジェット記録シートを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、それ単独では耐水性の極めて悪く、ほとんど水溶性に近い塗膜しか形成できない特定の親水性樹脂を、ポリウレタンウレア樹脂とフィラーと組み合わせることによって、印字されたインク中の水分を受容層内部に抱き込まず、速やかにインクジェット記録シート外に解放し得ることを見出し、本発明を完成した。即ち、第1の発明は、基材シートの少なくとも一方の面に、インクジェットインク受容層が設けられてなる校正用インクジェット記録シートであって、前記インク受容層100重量%が、乾燥塗膜の浸水塗膜残存率が10%以下の塗膜を形成し得る加水分解縮合性シラン含有カチオン性親水性樹脂21〜37重量%、ポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタンウレア樹脂15〜33重量%、及びフィラーであるシリカ24〜37重量%を含有してなり、印字10分後の印字濃度に対する、印字1週間後の印字濃度の変化率が5%未満であり、かつ、印字1週間後の印字濃度に対する、印字1年後の印字濃度の変化率が10%未満であることを特徴とする校正用インクジェット記録シートであり、
【0016】
第2の発明は、表面の、測定角度60°での光沢度が10以下であることを特徴とする第1の発明に記載の校正用インクジェット記録シートである。
【0017】
さらに、第3の発明は、第1又は第2の発明に記載の校正用インクジェット記録シートの受容層上に、インクジェット記録方式で、顔料を含有する水性インクを印字してなる記録物であり、第4の発明は、第3の発明に記載の記録物を用いて校正する方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明にいう耐水性とは、樹脂溶液又は樹脂分散液を10cm×10cmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルム上に乾燥膜厚が約25μmとなるように塗工・乾燥して樹脂塗膜を得、次いで得られた塗膜をPETフィルムごと純水中に30秒間浸漬した後、100℃で3分間乾燥させ、浸漬前後の塗膜の重量変化から以下のようにして耐水性を求める。
耐水性(%)=W1×100/W0
W0:浸漬前の塗膜重量
W1:浸漬後の塗膜重量
【0019】
耐水性が10%以下とは、浸漬後に浸漬前の塗膜の重量の10%以下を維持できることを意味する。従って、本発明にいう耐水性は、浸水塗膜残存率ということもできる。耐水性が0%というのは、水中に溶解してしまうことを意味する。
【0020】
本発明に用いる親水性樹脂は、この耐水性が10%以下のものであり、加水分解性縮合性シラン含有カチオン性の樹脂である。
【0021】
水性のインクジェット用インクは一般にアニオン性であるので、インクを受容しこれを固定するという観点から、本発明に用いられる親水性樹脂は、カチオン性であることが好ましい。
【0022】
加水分解縮合性シランを有し、カチオン性の親水性樹脂は種々の方法で得ることができる。
例えばカチオン性の単量体と、加水分解縮合性シランを有する単量体とを必須成分として共重合することにより得ることができる。
【0023】
カチオン性の単量体としては、第3級アミノ基もしくはその塩基を有する単量体、または第4級アンモニウム塩基を有するか、もしくは第4級アンモニウム塩基を形成し得る単量体が挙げられる。
例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のカチオン性のアクリル系単量体、及びこれらの塩が挙げられる。
【0024】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、
ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、
ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
その他、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール等やこれらの塩も使用できる。
塩としては、ハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0026】
加水分解縮合性シランを有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリロキシ基を有する加水分解縮合性シラン、ビニル基を有する加水分解縮合性シラン、アリル基を有する加水分解縮合性シラン等が挙げられ、(メタ)アクリロキシアルコキシシランや、ビニルアルコキシシランが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリロキシ基を有する加水分解縮合性シランのうち(メタ)アクリロキシアルキルアルコキシシランとしては、
β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、
β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
(メタ)アクリロキシ基を有する加水分解縮合性シランのうちその他のものとしては、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
尚、「(メタ)アクリロキシ」とは、「アクリロキシ又はメタクリロキシ」の意である。
【0028】
ビニル基を有する加水分解縮合性シランのうち、ビニルアルコキシシランとしては、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン、
ビニルトリブトキシシラン、
ビニルメトキシジメチルシラン、
ビニルエトキシジメチルシラン、
ビニルイソブトキシジメチルシラン、
ビニルジメトキシメチルシラン、
ビニルジエトキシメチルシラン、
ビニルジメトキシエチルシラン、
ビニルジエトキシエチルシラン、
ビニルジフェニルエトキシシラン、
γ−(ビニルフェニルアミノプロピル)トリメトキシシラン、
γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、
γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、
ジビニルジメトキシシラン、
ジビニルジエトキシシラン
ジビニルジ(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0029】
またビニル基を有するその他の加水分解縮合性シランとしては、
ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、
ジビニルジ(β−メトキシエトキシ)シラン、
ビニルジアセトキシメチルシラン、
ビニルトリアセトキシシラン、
ビニルトリフェノキシシラン、
ビニルビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、
ビニルメチルジクロロシラン、
ビニルジメチルクロロシラン、
ビニルトリクロロシラン、
ビニルメチルフェニルクロロシラン等が挙げられる。
【0030】
アリル基を有するその他の加水分解縮合性シランとしては、
アリルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアリルアルコキシシランや、
アリルジアセトキシメチルシラン、
アリルトリアセトキシシラン、
アリルビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、
アリルメチルジクロロシラン、
アリルジメチルクロロシラン、
アリルトリクロロシランメタフェニルジクロロシラン等が挙げられる。
【0031】
本発明において用いられる親水性樹脂は、上記したようなカチオン性単量体及び加水分解縮合性シランを有する単量体以外にも、種々の単量体を共重合に使用して、単独では「乾燥塗膜の浸水塗膜残存率10%以下」の塗膜しか形成し得ない樹脂とすることができる。例えば、親水性単量体やその他の単量体を使用することができる。
【0032】
親水性単量体としては、イオン性単量体と非イオン性単量体とがある。
イオン性単量体としては、
カルボキシル基含有単量体[(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、クロトン酸等の遊離のカルボキシル基または当該カルボキシル基の酸無水物基を有する単量体、及びこれらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩)]、
【0033】
不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物と、炭素数1から20程度の直鎖または分岐鎖アルコールとのハーフエステル[マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシルなど]、
【0034】
ヒドロキシル基含有単量体[(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシC2-6アルキルエステルなど]、
【0035】
アミド基含有単量体[(メタ)アクリルアミド、α―エチル(メタ)アクリルアミド、N―メチル(メタ)アクリルアミド、N―ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなど]、
【0036】
スルホン酸基含有単量体[スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など] などが例示できる。これらのイオン性単量体も単独或いは2種類以上使用できる。尚、アミド基単量体は、カチオン性付与にも寄与する。
【0037】
親水性単量体のうち、非イオン性単量体としては、
エーテル基含有単量体[ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類]、
ポリオキシアルキレン基含有単量体[ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。これらの非イオン性単量体も単独或いは2種類以上使用できる。また、上記のイオン性単量体併用することもできる。
【0038】
好ましい親水性単量体は、
ヒドロキシル基含有単量体[(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど]、
ポリオキシアルキレン単位を有する単量体[ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]である。
【0039】
その他の単量体としては、例えば
アルキルエステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n―ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステルなど]、
シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、
芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α―メチルスチレンなど]、
ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど]、
アリルエステル類[酢酸アリルなど]、
ハロゲン含有単量体[塩化ビニルデン、塩化ビニルなど]、
シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]、
等が挙げられる。
【0040】
さらに、
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N―メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有単量体、
(メタ)メタクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルエーテル、1−アリルオキシー3,4−エポキシブタン、1−(3−ブテニルオキシ)−2,3−エポキシプロパン、4−ビニルー1−シクロヘキセンー1,2−エポキシド等のエポキシ基含有単量体、
(メタ)アクリル酸2−(1−アジリジニル)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−アジリジニル)プロピル、(メタ)アクリル酸3−(1−アジリジニル)プロピル等のアジリジニル基含有単量体等も使用することができる。
これらその他の単量体は、通常、成膜性や被膜特性を調製するために使用される。これらその他の単量体も単独または2種類以上組み合わせて使用できる。
【0041】
このような加水分解縮合性シランを有するカチオン性の親水性樹脂は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、分散重合等種々の方法で得ることができる。
【0042】
例えば、溶液重合の場合、有機溶媒に溶解した溶液状態で親水性樹脂を得ることもできる。
あるいは前記単量体を共重合した後、共重合体中の第3級アミノ基を各種の酸で中和し、塩を形成し、これを水性媒体に分散したり、共重合体中の第3級アミノ基にエピクロルヒドリン、塩化メチル、ベンジルクロライド等のアルキル化剤を反応させて第4級アンモニウム塩を形成し、これを水性媒体に分散したりして、親水性樹脂の水性分散体を得ることもできる。
【0043】
また、乳化重合の場合であれば、ノニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤を含む乳化重合系で前記単量体を乳化重合し、親水性樹脂の水性分散体を得ることもできる。
また、界面活性剤を用いずに、常法に従い保護コロイドの存在下に乳化重合することもできる。
【0044】
本発明において用いる親水性樹脂は、溶液状態、分散状態いずれの形態でも使用することができるが、水性媒体に親水性樹脂が分散している分散体(水性エマルジョンともいう)の形態が好ましく、分散している親水性樹脂粒子の平均粒子径は、1〜200nm、であることが好ましく、3〜100nmであることがより好ましく、5〜50nm程度であることがさらに好ましい。
【0045】
また、本発明にて用いるポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタンポリウレア樹脂は、特開平11−291613号公報、特開平11−216943号、公報特開平11−216946号公報、特開2000−118123号公報等に開示されるように、ヒドロキシ化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、および必要に応じてイソシアネート基と反応しうる基とイオン性官能基とを有する化合物等を反応させることにより得ることができる。
ポリエチレングリコール鎖は、ヒドロキシ化合物、アミン化合物等いずれかの成分によって導入されればよい。本発明においても各成分については、上記公報等に記載されるものが同様に例示される。
本発明のインクジェット記録シートのインク受容層には、ポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタンポリウレア樹脂が5〜40重量%含まれることが好ましい。さらに好ましくは10〜35重量%含まれることが好ましい。これは、ポリウレタンウレア樹脂が含まれることによって、記録シートの膜強度が向上するからであり、含まれない場合には膜強度が弱くなるからである。
【0046】
ポリウレタンウレアを合成するには、ヒドロキシ化合物、イソシアネート化合物、アミン化合物、必要に応じてイソシアネート基と反応しうる基とイオン性官能基とを有する化合物等を従来公知の方法に従って室温〜140℃、好ましくは40〜100℃で反応させる。
合成方法としては、これらの化合物を一括仕込みで反応させるワンショット法や、両末端イソシアネートプレポリマーを生成した後に、鎖延長剤及び/または反応停止剤で高分子量化・分子量調節するプレポリマー法があるが、特に好ましいのは後者の方法である。
【0047】
プレポリマー法によるポリウレタンウレアの合成は、例えば、ヒドロキシ化合物やアミン化合物等の活性水素化合物(活性水素基を有する化合物)、イソシアネート化合物、さらに必要に応じてイソシアネート基と反応しうる基とイオン性官能基とを有する化合物をイソシアネート基過剰で反応させて得られる両末端イソシアネートプレポリマーに、鎖延長剤および/または反応停止剤を反応させ、高分子量化・分子量調節して行う。
すなわち、活性水素基(水酸基またはアミノ基)に対して過剰のイソシアネート基を反応させて両末端イソシアネートプレポリマーを生成したのち、アミン化合物を鎖延長剤として反応させてウレア結合を生成せしめることにより高分子量化・分子量調節を行う。このウレア結合を生成することにより、ポリウレタン系樹脂、特にポリエチレンオキサイド鎖を有するポリウレタン系樹脂特有の表面のタックを低減することができ、しかもインキ受容層の膜強度を向上させることができる。
【0048】
本発明において好適に用いられるポリウレタンウレア樹脂の重量平均分子量は、1.5×104 〜1.0×105 の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が1.5×104 未満のポリウレタンウレア樹脂を上記親水性樹脂と併用すると、インキ受容層の表面のタックが強く、ブロッキングの原因となり易くなる傾向にある。また、1.0×105 より大きいと溶剤への溶解性が低下し、粘度が著しく増加し、ゲル状態となり易く、塗工時に均一な膜を形成しにくくなることがある。表面のタック及び溶解性のバランスから、重量平均分子量は1.8×104 〜5.0×104 の範囲にあることがより好ましい。
【0049】
また本発明において好適に用いられるポリウレタンウレア樹脂は、エチレンオキサイド(EO)鎖を5〜80重量%の範囲で含むことが好ましく、EO鎖を40〜70重量%の範囲で含むことがさらに好ましい。
【0050】
本発明において使用するフィラーとしては、ケイソウ土、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカなどの無機フィラー、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂等を粒状に成型した樹脂フィラーが挙げられるが、その中でもシリカが好ましい。
インクジェットインクの吸収性、発色性の点からは表面処理が施されていなく、平均粒子径が1〜20μm程度のシリカが好ましい。
【0051】
シリカ等のフィラーの含有量としては、受容層100重量%に対し10〜50重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは、20〜45重量%含まれることが好ましい。シリカ等のフィラーを含有しない場合、樹脂のみでインクを吸収するこことなり、受容層に印字されたインク中の水分が、速やかに受容層外に揮散しない。残存水分が徐々に揮散する結果、印字濃度の経時変化が著しく大きくなる傾向にある。
【0052】
本発明においては、印字濃度の経時変化を抑えるために上記フィラーが添加される。さらにフィラーを添加することによって表面光沢度は低くなる。本発明のインクジェット記録シートは、校正用として用いるので、実際の印刷物と同等の光沢度が必要となる。実際の印刷物の多くは、その測定角度60°での光沢度が10以下である。そのため、インクジェット記録シートの、測定角度60°での表面光沢度も10以下であることが好ましい。
【0053】
本発明により得られた記録シート上に、インクジェットプリンターにて印字した記録物は、印刷(本刷り)の校正用として用いられる。校正用として用いる場合、印字部分の経時による濃度低下は少ないことが望まれる。さらに、実際の印刷物と同等以上の印字濃度が出なければ、校正用としては使用することはできない。
そのため、好ましい印字濃度の低下率は、印字10分後を基準にすると、1週間後の濃度の低下率が5%以内、さらに長期保存を考えた場合、1週間後の印字濃度を基準にして、1年後の濃度変化率が5%以内であることが望まれる。
【0054】
インク受容層を設ける基材シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックフィルムや、上質紙、グラシン紙、コート紙等の一般的な紙をあげることができる。
この他に、各種不織布、合成紙、あるいはこれらを組み合わせた複合シート等にも設けることが可能である。
特に、基材表面の表面自由エネルギーは20〜70mN/mの範囲であることが好ましく、基材表面にコロナ処理、プラズマ処理あるいは、基材との密着性に優れた樹脂をコーティング処理して密着性を改善しても差し支えない。
本発明においては、校正用として用いるため、上質紙、グラシン紙、コート紙等の一般的な紙が特に好ましい。
【0055】
インク受容層は、前記基材シートの少なくとも一方の面に、インク受容層用組成物を、従来公知のコーティング方法により塗布し、設ければ良く、基材の片面あるいは両面に5〜100μm程度の厚さ(乾燥時)で形成される。インク吸収性、密着性、コスト等のバランスからより好ましくは10〜60μmの厚さで形成される。
【0056】
コーティング方式としては、例えばスプレー、スピンコーター、ダイコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ディップコーター、コンマコーター等が挙げられる。
【0057】
以下に、実施例を挙げて本発明の記録シートの具体的な構成を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜4)
表1に示す親水性樹脂溶液等、ポリウレタンウレア樹脂溶液、シリカを混合、攪拌し、得られた塗工液を上質紙(NPiフォームDX70:日本製紙製)上に、バーコーターを用いて、乾燥膜厚が約30μmになるように塗工し、80℃で乾燥させてインクジェット記録用シートを得た。
【0058】
(印字試験)上記方法により得られたインクジェット記録シートを、水性顔料タイプのインクジェットプリンター(MC7000:EPSON社製)にて、Yellow,Magenta,Cyan,Blackの4種類4色を印字し、印字10分後の濃度を、反射濃度計(RD-918:Macbeth社製)を用いて測定。さらに、1週間後の反射濃度、1年後の反射濃度も上記機器を用いて測定した。このときの印字環境及び印字物の保存環境は、25℃,50%,暗所である。
【0059】
(表面光沢度測定)記録シートの表面光沢度はBYK.GARDNER社のmicro-TRI-gloss表面光沢度計を用いて測定し、60°の測定角度で測定した。
【0060】
(印字濃度変化率)上記印字濃度測定方法より得られた値を用いて以下の式から求めた。
|100−(1週間後の印字濃度値/10分後の印字濃度値)×100|
|100−(1年後の印字濃度値/1週間後の印字濃度値)×100|
【0061】
印字濃度の変化率は上記式よりYellow,Magenta,Cyan,Blackの4種類4色について求め、その中で最も印字濃度変化率が大きかったCyanについての値に基づいて以下の通り評価した。
0以上3%未満…◎
3以上5%未満…○
5以上10%未満…△
10%以上…×
【0062】
(膜強度)インクジェット記録シートを完全に手で折り曲げたときの、塗膜の状態を目視にて評価した。
○…変化なし △…やや割れ目が入る ×…塗膜が割れる
【0063】
(インクジェト印字性)インクジェット印字性は、インクジェットプリンター(EPSON社製MC7000)を用いて印字し、インクの吸収性、印字品位を評価した。
◎…極めて良好 ○…良好 △…乾燥、滲み、発色においてやや不良 ×…乾燥、滲み、発色において不良
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明により、顔料を含有する水性インク用いて、インクジェット記録方式で校正刷りをした際に、印字後10分後と一週間後と、及び一週間後と一年後との色調変化のほとんどない印字物(記録物)を提供し得る、インクジェット記録シートを提供することができた。
Claims (4)
- 基材シートの少なくとも一方の面に、インクジェットインク受容層が設けられてなる校正用インクジェット記録シートであって、前記インク受容層100重量%が、乾燥塗膜の浸水塗膜残存率が10%以下の塗膜を形成し得る加水分解縮合性シラン含有カチオン性親水性樹脂21〜37重量%、ポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタンウレア樹脂15〜33重量%、及びフィラーであるシリカ24〜37重量%を含有してなり、印字10分後の印字濃度に対する、印字1週間後の印字濃度の変化率が5%未満であり、かつ、印字1週間後の印字濃度に対する、印字1年後の印字濃度の変化率が10%未満であることを特徴とする校正用インクジェット記録シート。
- 表面の、測定角度60°での光沢度が10以下であることを特徴とする、請求項1記載の校正用インクジェット記録シート。
- 請求項1又は2記載の校正用インクジェット記録シートの受容層上に、インクジェット記録方式で、顔料を含有する水性インクを印字してなる記録物。
- 請求項3記載の記録物を用いて校正する方法。
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