JP3906620B2 - 車両用回転電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は乗用車、トラック等に搭載される車両用回転電機に関し、例えば交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の回転電機は、軽量化のためにアルミ製のフレームが多用される。その一方で、振動環境に耐えることが求められている。
【0003】
例えば、従来の車両用回転電機としての交流発電機では、以下に述べるような構成と、固定構造が採られていた。
【0004】
図5は従来の交流発電機の構成と固定構造を示す。アルミニウム材よりなる一対のフレームは、ドライブ(以下D)フレーム4と、リア(以下R)フレーム5とを有する。駆動プーリ側のDフレーム4には、放射状に延びる2カ所のステー410、420が設けられる。反プーリ側のRフレーム5には1カ所のステー510が設けられる。ステー410とステー510とは対をなす。そして、ステー410と、ステー510とには、これらに1本のボルトを貫通させて配置すべく、同軸上に貫通穴が形成される。ステー410の貫通穴は、ステー410に形成した比較的大径の穴に嵌入した硬質な金属としての鉄製のブッシュ460により提供される。ブッシュ460は、ステー410の貫通穴に径方向に関しては移動不能に嵌入され、軸方向には移動可能である。ブッシュ460の一方の端面は、ステー510のドライブ側端面に接し、他方の端面は、ボルト81の締め付け面として提供される。これらブッシュ460とステー510の貫通穴とによって、第一取付穴が形成される。ステー420には、雌ねじが形成された第ニ取付穴としての貫通穴が形成される。それら貫通穴にエンジンへの搭載のためのボルト81、82が配置される。以上のような構成は、例えば特開平1−202140に示される。
【0005】
取付作業は、以下の手順でなされる。第一取付穴にボルト81を通してエンジン側の取付部9にボルト81をねじ込む。これにより発電機を仮固定した状態で、第一取付穴のボルト81を支点として、駆動ベルトに所定のテンションを確保する位置まで発電機全体を回転移動させる。所要のテンションを得た位置で、エンジンから延びるアジャスティングバー91にボルト82を通し、第二取付穴にねじ込む。そして、両ボルト81、82を所定トルクで本締めする。これにより、発電機のエンジンへの搭載固定が完了する。
【0006】
第一取付穴のブッシュ460は、アルミニウム材で作られたDフレーム4およびステー410の変形を防止する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成では、発電機の矢印V方向の振動の支点はステー510の端面5100とエンジン9との接触部となる。その結果、アルミニウム製のステーの端面5100あるいはエンジン9側の座面90が磨耗し、ボルト81による固定力が低下する。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、長期間にわたって安定した固定を実現することを目的とする。
【0009】
本発明は、磨耗を低減することを目的とする。
【0010】
本発明は、Dフレームの強固な固定と、両フレームに与えるひずみの低減と、磨耗の低減とを図ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、軸方向の一方に伝達部材を有する回転子と、前記回転子の外周に対向配置された固定子と、前記回転子と固定子とを支持する一対の椀形状のアルミニウム製のフレームと、前記フレームから延びる複数のステーと、前記ステーに設けられたボルト貫通用の穴とを有する車両用回転電機において、前記伝達部材側のドライブフレームから延びる第一ステーと、前記伝達部材から離れた側のリアフレームから延び、前記第一ステーと揃えられる第二ステーと、前記第二ステーを貫通して軸方向両側に突出し、前記第一ステーの端面と当接して配置されるとともに、前記第一ステーに設けた貫通穴とともに取付穴を形成する鉄製のブッシュとを備え、前記ブッシュは前記伝達部材とは反対側の端面につば部を有していることを特徴とする車両用回転電機という技術的手段が採用される。
【0012】
かかる構成によると、反伝達部材側のリアフレームのステーの端面は直接にエンジン等の支持部と接触しない。鉄製のブッシュがエンジン等の支持部と当接する。このため、リアフレームのステー端面の磨耗を防止できる。ブッシュにつば部を設けて接触面を広くすることができ、鉄製ブッシュと接触するエンジン側の部材の磨耗を防止することができる。
【0013】
なお、前記ドライブフレームから延びる第三ステーを備えることを特徴とするという技術的手段を採用することができる。かかる構成は、第三ステーをエンジンから延びるアジャスティングバーに固定する構造、あるいは第三ステーを第一、第二ステーと同様にしてエンジンに締め付け固定する構造に利用できる。
【0015】
なお、前記ブッシュは、前記第二ステーを貫通する円筒状ブッシュと、当該円筒状ブッシュと前記第一ステーとの間に配置された環状スペーサとを有するという技術的手段を採用することができる。環状スペーサにより、ブッシュと第一ステーとの当接面における磨耗を低減することができる。例えば環状スペーサは、円筒状ブッシュの第一ステー側端面よりも大きい直径をもって構成することができる。このような大径のスペーサは、接触面を拡大し、磨耗を低減する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は車両用回転電機として、発電機あるいは電動機に利用することができる。例えば、エンジンに搭載固定されてエンジンによって回転駆動される車両用交流発電機に利用できる。また、エンジンに搭載固定されて、補助動力を供給する電動機にも利用できる。さらに、発電機又は電動機として選択的に機能しうる回転電機にも利用できる。以下、この発明の車両用回転電機を車両用交流発電機に適用した実施例を図に基づいて説明する。
【0020】
(第一実施形態)
図1、図2、図3は第一実施形態を示す。図1は本実施形態の車両用交流発電機のエンジンへの搭載固定状態を示す側面図である。図2は図1の車両用交流発電機の取り付けステー部を含む下方半分の断面を示す部分断面図である。図3はベルトとの関係を示す正面図である。
【0021】
車両用交流発電機1は、界磁子として働く回転子2と、電機子として働く固定子2と、前記回転子2と固定子3を支持する一対のフレーム4、5と、前記固定子3に接続され、交流電力を直流に変換する整流器35等から構成されている。
【0022】
回転子2は、両フレーム4、5に回転可能に軸支されたシャフト21を有する。このシャフト21上には、ランデル型鉄心が配置される。ランデル型鉄心は、一対のポールコア22、22と、前後の冷却ファン23、23と、界磁コイル24と、スリップリング25とを有する。シャフト21の入力端であるドライブ端には、動力を伝達する伝達部材としてのプーリ6が固定される。プーリ6には、図3に示すようにベルト7が掛けられる。こうして、回転子2は、自動車に搭載された走行用のエンジンによりベルト7を介して回転駆動される。
【0023】
固定子3は、固定子鉄心31と固定子コイル32と、固定子鉄心31と固定子コイル32との間を電気絶縁するインシュレータ33とを有する。この固定子3は、プーリ側であるドライブ側のドライブ(D)フレーム4の開口端と、反プーリ側であるリア側のリア(R)フレーム5の開口端とに嵌合し、挟持して支持されている。
【0024】
Dフレーム4とRフレーム5は、アルミニウム合金製であって、アルミニウム製と呼びうる。これら両フレーム4、5は、それらの間に固定子2と回転子3とを保持し、全体として円柱状をなすように、略椀形状に成形されている。両フレーム4、5は、それらの開口端に固定子3を挟持して、複数の通しボルト10によって固定される。
【0025】
Dフレーム4には、ほぼ12時と、6時の方向に対応して、径方向外側に向けて延びだすステー41、42が一体成形されている。両ステー41、42は、図3に示すように正面から見ると、Dフレーム4の外周に外接するようにして延びる2辺をもった三角形をなしている。さらにステー41、42の先端部には、円筒状の頭部が形成される。これら頭部の軸は回転子のシャフト21と平行である。ステー41の頭部には、締付手段としてのボルト81を受け入れる貫通穴が形成される。ステー42の頭部には、締付手段としてのボルト82を受け入れる貫通穴が形成される。なお、ステー42に形成される貫通穴には、ボルト82と螺合する雌ねじが刻設されている。
【0026】
Rフレーム5にはほぼ6時の位置にステー51が径方向外側に向けて延びだして一体成形されている。ステー51は、ステー41とほぼ同様の三角形をなしている。ステー51の先端部には比較的短い円筒状の頭部が設けられる。頭部には、比較的大きい貫通穴が形成されている。
【0027】
この実施形態では、第一ステーとしてのステー41と第二ステーとしてのステー51とがボルト81による締め付け方向である軸方向に関して互いに重複するように揃えられて、これらステーに第一取付穴が設けられ、両ステーは共に1本のボルト81でエンジン9に固定される。ステー51には、ブッシュが装備される。このブッシュは、ステー51に打ち込みにより嵌入された円筒状のブッシュ55と、環状のスペーサ56とを有する。
【0028】
ブッシュ55は、フレーム4、5を構成するアルミニウムよりも硬質の金属である鉄系合金製であって、鉄製と呼びうる。ブッシュ55の軸方向長さは、ステー51の頭部よりも長く、ブッシュ55はステー51の頭部の軸方向両側に突出している。ブッシュ55の一端には、つば部550が設けられている。つば部550は、エンジン側であるリア側に位置している。ブッシュ55の他端側は、ステー41の頭部と対面する。このブッシュ55は、ステー51の貫通穴内において所定値以上の力を受けると軸方向に移動しうる。ただし、ブッシュ55の径方向に関してはステー51との相対的な変位はほとんどない。
【0029】
ステー41の頭部の端面には、鉄製の環状のスペーサ56が配置されている。このスペーサ56は、ブッシュ55の端面よりも大きい直径を有している。スペーサ56は、ステー41の頭部のエンジン側であって、ブッシュ55と対向する端面に固定されている。スペーサ56は、ステー41の頭部の端面に形成された凹部に大径部が嵌入されている。ステー41の頭部端面のアルミ材を、スペーサ56の大径部に覆い被さるように変形させることにより、スペーサ56は、頭部の端面に保持固定される。
【0030】
この実施形態では、ステー41とスペーサ56とブッシュ55とに設けられた貫通穴が同一軸上に配置されることで、第一取付穴が形成される。また、第三ステーとしてのステー42に設けた雌ねじを有する貫通穴も第ニ取付穴を形成する。これらの取付穴に配置されるボルト81、82は、十分に大きな直径をもった頭部ないしはワッシャを有しており、座面としての部材との接触面が十分に確保されている。
【0031】
次に車両用交流発電機の取付手順を説明する。まず、ステー41とステー42とを貫通する取付穴にボルト81が挿入される。ボルト81は、エンジン9の取付部に形成されたボルト穴にねじ込まれる。ボルト81を完全にねじ込むことなく、発電機1の全体がボルト81を中心に揺動可能な状態に仮固定される。次に、ボルト81を中心として図3の矢印Tに示すようにして発電機1を回転移動させ、ベルト7に所定のテンションを加える。この状態を維持しながら、エンジン9に取り付けられたアジャスティングバー91を貫通させてボルト82を締め付けて、ステー42をアジャスティングバー91に固定する。その後、ボルト81を本締めする。
【0032】
この結果、ステー41の頭部とスペーサ56とブッシュ55とエンジン9とが軸方向に締め付けられる。よって、ステー51には直接には軸方向の締め付け力が作用しない。また、ブッシュ55の一端にはつば部550が設けられるので、エンジン9側の座面90との接触面積が十分に確保される。このため、座面の磨耗が抑制される。また、ブッシュ55の他端においても、スペーサ56によりステー41の頭部との接触面積が十分に確保される。このため、ステー41の頭部の磨耗が抑制される。一方、Dフレーム4は、ブッシュによることなくボルト81によって軸方向に締め付けられるため、強固に固定される。この結果、プーリ6に掛けられるベルト7の張力、振動に耐え得る強固な固定が得られる。なお、エンジン9として図示し、説明した部材は、エンジンを構成するクランクケースなどエンジン本体部品でもよいし、エンジン本体部品に固定された所要形状のブラケットであってもよい。一方、アジャスティングバー91は、エンジン本体部品から腕状に延び出すように取り付けられる部品であって、エンジン本体部品あついはブラケットであるエンジン9に比べて低剛性である。
【0033】
以上により、発電機1に軸方向の振動が作用した場合でも、振動の支点となる第一取付穴に関連する座面の磨耗を防止できる。しかも、ベルト7に起因して大きい荷重、振動を受けるDフレーム4を強固に固定することができる。
【0034】
(第二実施形態)
図4に示すようにステー42もエンジン9の取り付け座面92にボルト83を使って、直接取り付けてもよい。これにより、アジャスティングバー91を廃止できる。アジャスティングバー91の強度不足に起因する発電機1の前後振動を低減でき、磨耗防止の効果を高めることができる。
【0035】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、ステーを、Dフレーム4の上下に2個、Rフレ−ムの下に1個としたが、更にステーの数を増加して、より確実で強固な固定を得る構成に本発明を適用することができる。
【0036】
また、ブッシュ55は、軸方向に1カ所のスリットを持ち、スプリングバックの効果によりRフレームの取付穴と嵌合させてもよい。
【0037】
また、スペーサ56は、大径部と小径部とをもたない一定径の平ワッシャ形状とすることができる。さらに、スペーサ56は、環状とする他、C字状としてもよい。また、スペーサ56はDフレームにかしめ固定、もしくは鋳込みによって固定してもよく、さらに固定することなく別体としておいてボルト挿通時に組み立てる構成としてもよい。
【0038】
また、スペーサ56を備えない構成が採用できる。この場合、ブッシュ55の端面に十分な面積を確保するか、あるいは、ステー41の頭部の端面にアルマイト処理などの表面処理による硬化処理を加える。また、ブッシュ55のつば部550を第一ステー41側に配置し、ブッシュ55の座面90側にスペーサ56を配置してもよい。さらに、ブッシュ55よりも円筒部の軸方向長さが短いブッシュを2本使用し、第二ステー42の貫通穴の両側からそれらを挿入して貫通穴内で当接させ、両端につば部550と同様のつば部を有する2分割型のブッシュを第二ステー42に設ける構成を採用できる。
【0039】
一方、円筒状ブッシュ55を備える第二ステーをDフレームに設け、スペーサ56を保持した第一ステーをRフレームに設ける構成を採用してもよい。かかる構成でも、両フレーム間の磨耗は低減できる。
【0040】
また、プーリ6に代えてギヤを用いることができる。さらに、車両用電動機に本発明を適用する場合には、伝達部材は回転子の回転を出力する部材となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した車両用交流発電機の第一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の下半分を示す部分断面図である。
【図3】車両用交流発電機の搭載状態を示す正面図である。
【図4】第二実施形態を示す側面図である。
【図5】従来の車両用交流発電機を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 回転子
3 固定子
4 ドライブ(D)フレーム
41、42 ステー
5 リア(R)フレーム
51 ステー
55 ブッシュ
56 スペーサ
81、82 ボルト

Claims (2)

  1. 軸方向の一方に伝達部材を有する回転子と、前記回転子の外周に対向配置された固定子と、前記回転子と固定子とを支持する一対の椀形状のアルミニウム製のフレームと、前記フレームから延びる複数のステーと、前記ステーに設けられたボルト貫通用の穴とを有する車両用回転電機において、
    前記伝達部材側のドライブフレームから延びる第一ステーと、
    前記伝達部材から離れた側のリアフレームから延び、前記第一ステーと揃えられる第二ステーと、
    前記第二ステーを貫通して軸方向両側に突出し、前記第一ステーの端面と当接して配置されるとともに、前記第一ステーに設けた貫通穴とともに取付穴を形成する鉄製のブッシュとを備え、
    前記ブッシュは前記伝達部材とは反対側の端面であるエンジン側につば部を有している筒状ブッシュと、前記第一ステーの頭部のエンジン側であって、前記筒状ブッシュと対向する端面に設けられた前記筒状ブッシュの端面よりも大きい環状スペーサとを有し、
    前記第一ステー及び前記ブッシュの取付穴に挿入されたボルトによって、第一ステーの頭部と環状スペーサと筒状ブッシュとエンジンとが軸方向に締付けられることを特徴とする車両用回転電機。
  2. 前記ドライブフレームから延びる第三ステーを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用回転電機。
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