JP3905780B2 - ブリルアンスペクトル分布測定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブリルアンスペクトル(Brillouin spectrum)の空間的分布を測定するブリルアンスペクトル分布測定方法および装置に関する。特に、本発明は、空間分解能を向上させた測定技術を提供するものであって、被測定媒質の物性の空間的分布を測定可能であるばかりでなく、被測定媒質を光ファイバなどの光導波路としたときには、光導波路に加わった応力による歪みや、光導波路の置かれた環境における温度などの空間的分布、すなわち光導波路の長さに沿った分布を測定することが可能となるため、分布センサへの応用も可能である。
【0002】
【従来の技術】
媒質にコヒーレントな単色光を入射したとき、音響波との非線型相互作用により周波数がシフトした後方散乱光が観測される。これをブリルアン散乱と呼ぶ。また、この散乱光のスペクトルは、次式(1)に示すように、ローレンツ型の形状を示す。
S b(ν) ∝ (Δνb)2 / { 4(ν−νb)2 + (Δνb)2 } (1)
ここでνは入射光とブリルアン散乱光の周波数差、νbは散乱光のスペクトル強度が最大となり、その中心でもある位置での周波数差(ブリルアン周波数シフトと呼ぶ)、また、Δνbはブリルアン散乱光のスペクトルの半値全幅である。媒質が石英系光ファイバであって、入射光の波長が1.55μmの場合は、νb〜11GHz、Δνb〜20MHz である。
【0003】
なお、上式(1)のブリルアン散乱光のスペクトルS b(ν)は、後述するブリルアン光増幅の光周波数特性を示すブリルアン利得スペクトルgb(F-f )と同一のプロファイルであるため、ここでは、以後、これら両者ともブリルアンスペクトルと呼ぶこととする。
【0004】
このブリルアンスペクトルは、光ファイバに加わった応力による歪みや、光ファイバの置かれた環境の温度により変化することが知られている。例えば、石英ガラスを材料とした光ファイバのブリルアン周波数シフトνbは、歪みに対して、約500MHz / %、また温度に対して、約1MHz / ℃、の依存性を示す。したがって、これらの空間的な変化を、すなわち光ファイバの長さに沿ったブリルアンスペクトルの変化を検出することにより、光ファイバをセンサとした、歪み・温度分布測定が実現されている。また、その測定系の空間(距離)分解能よりも短いピッチでνbが変化している場合には、見かけ上、ブリルアンスペクトルの半値全幅であるΔνbが広がるため、Δνbの変化を検出することにより、歪み・温度などの変化幅を測定することも可能となっている。
【0005】
これまで、光ファイバのブリルアンスペクトルの空間的分布を測定可能な技術として、BOTDR(Brillouin optical time domain reflectometry:ブリルアン光時間領域反射測定法)またはBOTDA(Brillouin optical time domain analysis:ブリルアン光時間領域解析)が実現されている(文献[1] T. Horiguchi et al.,“Development of a distributed sensing technique using Brillouin scattering”, J. Lightwave Technol., vol.13, no.7, pp.1296-1302, July 1995)。
【0006】
BOTDRは、コヒーレントな単色光の光パルスを光ファイバに入射し、その光パルスによって発生する後方ブリルアン散乱光のスペクトルを、時間の関数として分光測定する技術である。光パルスを入射後、後方ブリルアン散乱光が再び入射ファイバ端に戻ってくるまでの遅延時間は、そのファイバ端から、後方ブリルアン散乱光が発生した光ファイバ中の位置までの距離に比例するため、光ファイバの長さ方向に沿った、ブリルアン散乱光のスペクトル分布、すなわちブリルアンスペクトル分布が測定可能となる。
【0007】
また、BOTDAも同様に、コヒーレントな単色光の光パルスを光ファイバに入射するが、BOTDAの場合は、入射した光パルスによって発生したブリルアン利得を利用してブリルアンスペクトルを測定する。ブリルアン利得は、入射光パルスよりも、ブリルアン周波数シフトと呼ばれる量、すなわちνbだけ、周波数がシフトした周波数の近傍のみで発生し、その利得のスペクトル形状は、上記BOTDRで測定する後方ブリルアン散乱光のスペクトルと同一であることが知られている。そのため、光ファイバの他の端から、光パルスとの周波数差がほぼνbのプローブ光を入射させると、このプローブ光は対向して伝搬する光パルスによって光増幅されるので、この光増幅により増加したプローブ光のパワー変化を、その光パルスとプローブ光の周波数差を変えて測定することにより、ブリルアンスペクトルが測定される。
【0008】
光増幅されたプローブ光が、光パルス入射ファイバ端で測定されるまでの遅延時間は、プローブ光が光パルスとで出会い、光増幅される光ファイバ中の位置までの距離に比例するため、プローブ光の光増幅によるパワー変化を、上記BOTDRのときと同様に、時間の関数として測定することにより、光ファイバの長さ方向に沿った、ブリルアンスペクトルの分布が測定可能となる。
【0009】
しかしながら、BOTDRまたはBOTDAの距離分解能Δzrtdは光パルス幅Tで制限されるもので、次式(2)で与えられる。
Δzrtd = vT / 2 (2)
ここでvは、光ファイバ中の光速であり、約2×108m/sである。たとえば、T=1μsのとき、Δzrtd =100mとなる。これよりも距離分解能を良くするためには、光パルス幅Tをさらに細くし、また光信号の受信系の帯域Bを1/T以上に広げる必要があるが、このとき、BOTDRまたはBOTDAで検出する光信号強度は、光パルス幅Tに比例して減少し、さらに、受信系の雑音が帯域Bの拡大とともに増加するため、信号パワーと雑音パワーの比であるS/Nが劣化する。
【0010】
加えて、測定されるブリルアンスペクトルは、光ファイバに入射する光パルスのスペクトルと上式(1)のスペクトルとの重ね合わせ積分となるため、その半値全幅は、Δνb + (2/T ) に広がる。ちなみに、前述のように、Δνb =20MHzとすると、Δzrtd =100m, 1mのとき、それぞれ、Δνb + (2/T )=22MHz, 220MHz、となる。すなわち、距離分解能を100mから1mに向上させたとき、測定されるブリルアンスペクトルの半値全幅は10倍広がり、その中心周波数であるブリルアン周波数シフトを精度良く測定することが困難となる。
【0011】
さらに、ブリルアンスペクトルの半値全幅が、光パルスのスペクトルの半値全幅で殆ど決定されてしまうため、ブリルアンスペクトルの半値全幅の変化量から、Δzrtd よりも短いピッチで変化するブリルアン周波数シフトの変化幅を測定することも困難となる。
【0012】
このような理由から、これまでのBOTDRおよびBOTDAの距離分解能は、実効上、1m程度が限界であった。
【0013】
これに対し、最近、位相変調(Phase Modulation)された連続光(Continuous Wave)を使用して、ブリルアンスペクトルの分布を測定する方法が提案された(文献[2] K. Hotate and T. Hasegawa,“Measurement of Brillouin Gain Spectrum Distribution along an Optical Fiber Using a Correlation-Based Technique − Proposal, Experiment and Simulation −”, IEICE TRANS. ELECTRON., vol.E83-C, no.3, pp.405-412, March 2000)。この方法(以後PMCW(Phase Modulation Continuous Wave)法と略称することとする)では、被測定光ファイバのブリルアンスペクトル幅よりも狭い発振線幅を有するコヒーレントな連続光を、所定の周波数で位相変調し、その位相変調された連続光を2分岐し、分岐された一方の光を周波数シフトさせてポンプ光を生成し、そのポンプ光を光ファイバの一端から入射させる。さらに、他方の分岐された光をプローブ光とし、そのプローブ光を光ファイバの他端から入射させる。ポンプ光とプローブ光の位相の相関は、両光が光ファイバ中で出会う位置によって異なり、相関が高い位置では、ブリルアン利得が大きくなり、相関が低い位置では、ブリルアン利得は小さくなる。
【0014】
その相関が高い位置は周期的に複数個現れるが、位相変調の変調周波数fmおよび、ポンプ光とプローブ光の相対遅延時間を適当に選ぶことにより、光ファイバ中で一箇所のみ、相関を高くすることが可能である。そこで、ポンプ光の中心周波数とプローブ光の中心周波数の周波数差を、光ファイバのブリルアン周波数シフトの近傍で掃引すると、相関が高くなる位置で、ブリルアン利得が選択的に大きくなるため、このブリルアン利得により光増幅されたプローブ光のパワー変化を測定することにより、相関が高くなる位置におけるブリルアンスペクトルを測定することができる。さらに、相関が高くなる位置は、位相変調の変調周波数fmにより変えられるため、ブリルアンスペクトルの分布測定が実現される。
【0015】
位相変調信号を、m sin(2πfmt)、とすると、PMCW法の距離分解能は次式(3)で与えられる。
Δzrpm = (Δνb / fm) / (v / 2πmfm) (3)
一例として、v = 2×108m/s、Δνb = 20MHz、fm = 7.5MHz、 mfm = 360MHz、とすると、Δzrpm = 25cmを得る。
【0016】
なお、上記のPMCW法で測定される、相関が最大となる点におけるブリルアンスペクトルの幅は、上記のように距離分解能を高くしても、BOTDRやBOTDAのように広がることはない。それは、ブリルアン散乱の元となる、ポンプ光とプローブ光のビート信号のスペクトルは、両光の相関が最大となる位置においては広がらず、デルタ関数状となるからである。PMCW法はこのような特長を有するため、BOTDRやBOTDAに比べて、高距離分解能化を容易に達成できる。
【0017】
以上のように、上述のPMCW法は非常に優れた方法であるが、以下に示す少なくとも2つの解決すべき課題を有している。
【0018】
第1の課題は、分布測定におけるクロストークの発生である。上記のようにポンプ光とプローブ光の位相相関を光ファイバ中の一点において選択的に高くできるが、その一点を除いた他の位置における位相相関は完全にはゼロでなく、また無視できない値を有するために、分布測定におけるクロストークが発生し、測定位置のブリルアンスペクトルと、漏れ込んだ他の個所のブリルアンスペクトルとの区別が困難となる。
【0019】
第2の課題は、ブリルアンスペクトルの周波数軸上の拡散である。上述の説明では、PMCW法で測定されるブリルアンスペクトルの幅は、高距離分解能測定を行ったときにおいても広がらないとした。しかし、それは、ポンプ光とプローブ光の位相相関が高くなる一点のみであり、その位置から離れるに従い、位相相関は徐々に低下し、それとともに両光のビートスペクトル、すなわちそれを反映したブリルアンスペクトルは広がってゆく。従って、上式(3)によって定まる距離分解能の範囲においても、ブリルアンスペクトルの幅は一定値Δνbではなく、最大その数倍程度まで増加している。ブリルアンスペクトルの中心周波数であるブリルアン周波数シフトの分布を測定する応用では、このブリルアンスペクトルの幅の増加は問題とならない。しかし上述した、距離分解能よりも短いピッチでブリルアン周波数シフトνbが変化しているときに観測されるブリルアンスペクトル幅Δνbの変化量を利用したセンサへの応用では、この位相相関が低下することによるブリルアンスペクトル幅の増加が問題となる。
【0020】
このような課題の解決法として、逆畳み込み積分を行う方法が提案されている(前述の文献[2])。すなわち、上記第1の課題に関しては、測定されたブリルアンスペクトル分布に対して、光ファイバの長さ方向に関する逆畳み込み積分を計算機を使用して行うことにより、クロストークを除去する方法が提案されている。また、上記第2の課題に関しては、測定されたブリルアンスペクトル分布に対して、周波数に関する逆畳み込み積分を計算機を使用して行うことにより、本来のブリルアンスペクトル幅を再生させる方法が提案されている。しかしながら、このような計算機を使用した信号処理技術は一定の効果が得られるものの、雑音などの影響を受けた多数の測定データを使用して数値計算処理を行うため、処理データの発散など、予期せぬ結果を得ることがあり、問題の本質的な解決には至っていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、光パルスを使用した従来のBOTDRやBOTDAでは、距離分解能が1m程度が実効上の限界であった。また、この限界を打ち破るものとして提案された、従来のPMCW法は、1m以下の距離分解能が実現可能ではあるが、測定位置とその他の位置のブリルアンスペクトルのクロストークの問題や、被測定媒質の本来のブリルアンスペクトル幅を再生できないという問題を、複雑な数値処理をしないと解決できなかった。
【0022】
本発明は、上記のような従来技術での課題を解決するためになされたもので、その目的は、1m以下の距離分解能で、クロストークがなく、かつ、被測定媒質の本来のブリルアンスペクトル幅を広げることなく、高精度にブリルアンスペクトルの位置に関する分布を測定することができるブリルアンスペクトル分布測定方法および装置を提供することにある。
【0023】
さらに、本発明の付随する目的は、ブリルアンスペクトルの温度あるいは歪み依存性を利用した、光ファイバの長さ方向に沿った温度あるいは歪み分布の高距離分解能で、かつ高精度な測定が可能となるように図ることにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、または、その連続発振光の一部の光を、周波数シフト、または、変調することにより、互いのスペクトルの中心周波数が上記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ離れた2つの連続発振光を発生させ、この2つの光を、被測定媒質中で対向して伝搬させ、可変光遅延器により、この2つの光の相対遅延時間を被測定媒質中の所望の位置でほぼゼロとすることにより、他の位置よりもその所望の位置でブリルアン光増幅を効率的に発生させることを可能とした。
【0025】
すなわち、本発明の請求項1のブリルアンスペクトル分布測定方法は、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、または、該連続発振光から分岐した連続発振光を、周波数シフト、または、光強度変調あるいは光位相変調することにより、互いのスペクトルの中心周波数が前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ離れた2つの連続発振光を発生させ、これらを第1の光と第2の光とし、該第1の光と該第2の光を被測定媒質中で対向して伝搬させ、該第1の光と該第2の光の相対遅延時間を変化させて、前記被測定媒質中の所望の位置z0Tで該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該所望の位置z0Tでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差を変化させて、前記被測定媒質から出射した第1あるいは第2の光の、前記ブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記所望の位置z0Tにおけるブリルアンスペクトルを測定することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項2のブリルアンスペクトル分布測定方法は、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、または、該連続発振光から分岐した連続発振光を、周波数シフト、または、光強度変調あるいは光位相変調することにより、互いのスペクトルの中心周波数が前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ離れた2つの連続発振光を発生させ、これらを第1の光と第2の光とし、前記被測定媒質とブリルアンスペクトルが既知である参照媒質とを光学的に接続した複合媒質を形成して、該複合媒質中で前記第1の光と前記第2の光を対向して伝搬させ、該第1の光と該第2の光の相対遅延時間を変化させて、前記被測定媒質中の所望の位置z0Tで該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該所望の位置z0Tでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差νcを変化させて、前記被測定媒質から出射した前記第1の光あるいは前記第2の光の、前記ブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記所望の位置z0Tにおいて前記相対遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルPT(νc)を測定し、かつ、前記第1の光と前記第2の光との相対遅延時間、または前記第1の光と前記第2の光の一部の光との相対遅延時間を変化させて、前記参照媒質中の位置z0Rで、該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該位置z0Rでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差νcを変化させて、前記複合媒質から出射した前記第1あるいは前記第2の光の、前記位置z0Rでのブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記位置z0Rにおいて前記相対遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルPR(νc)を測定し、測定した前記ブリルアンスペクトルPT(νc)と測定した前記ブリルアンスペクトルPR(νc)の関係を利用して、前記所望の位置z0Tにおける補正されたブリルアンスペクトルを求めることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項3のブリルアンスペクトル分布測定装置は、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を出力する光源と、該連続発振光を分岐して第21の光と第22の光を出力する光分岐器と、該第21の光と該第22の光の間の相対遅延時間を所望の値に変化させる可変光遅延器と、前記光源の出力光、または該出力光を分岐した前記第21の光、または前記第22の光を、光周波数軸上で所定の量だけシフトさせた光を発生させる光周波数変換器と、前記第21の光と前記第22の光から、前記可変光遅延器と前記光周波数変換器によって発生させた、所望の相対遅延時間を有し、かつ前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ互いの中心周波数が離れたスペクトルを有する2つの光を、それぞれ第1の光と第2の光としたとき、該第1の光および該第2の光が前記被測定媒質中で対向して伝搬するように、前記第1の光および前記第2の光を、前記被測定媒質中に入射させ、前記被測定媒質を伝搬後、該被測定媒質から出力する前記第1の光または前記第2の光の少なくとも一部を取り出す光学的手段と、該光学的手段により取り出された光のパワーを検出する光検出手段と、前記可変光遅延器により前記第1の光と前記第2の光の相対遅延時間がほぼゼロとなる前記被測定媒質中の位置を変化させ、かつ前記光周波数変換器を使用して前記第1の光のスペクトルの中心周波数と前記第2の光のスペクトルの中心周波数との差νcを変化させることにより得られる前記光検出手段の出力データを基に前記被測定媒質のブリルアンスペクトル分布を測定するデータ処理手段とを有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項4のブリルアンスペクトル分布測定装置は、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を出力する光源と、該連続発振光を分岐して第21の光と第22の光を出力する光分岐器と、該第21の光と該第22の光の間の相対遅延時間を所望の値に変化させる可変光遅延器と、前記光源の出力光、または該出力光を分岐した前記第21の光、または前記第22の光を、光周波数軸上で所定の量だけシフトさせた光を発生させる光周波数変換器と、前記被測定媒質とブリルアンスペクトルが既知である参照媒質とを光学的に接続することにより形成した複合媒質と、前記第21の光と前記第22の光から、前記可変光遅延器と前記光周波数変換器によって発生させた、所望の相対遅延時間を有し、かつ、前記複合媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ互いの中心周波数が離れたスペクトルを有する2つの光を、それぞれ第1の光と第2の光としたとき、該第1の光および該第2の光が前記複合媒質中で対向して伝搬するように、前記第1の光および前記第2の光を、前記複合媒質中に入射させ、前記複合媒質を伝搬後、該複合媒質から出力する前記第1の光または前記第2の光の少なくとも一部を取り出す光学的手段と、該光学的手段により取り出された光のパワーを検出する光検出手段と、前記可変光遅延器により前記第1の光と前記第2の光の相対的遅延時間がほぼゼロとなる複合媒質中の位置を変化させ、かつ前記光周波数変換器を使用して前記第1の光のスペクトルの中心周波数と前記第2の光のスペクトルの中心周波数との差νcを変化させることにより、前記被測定媒質中の位置z0Tおよび前記参照媒質中の位置 z0Rにおいて、前記第1の光と前記第2の光の相対的遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルを、前記光検出手段の出力データを基に測定し、該測定したそれぞれのブリルアンスペクトルを、PT(νc)およびPR(νc)としたとき、該PT(νc)と該PR(νc)の関係を利用して、前記位置z0Tにおける補正されたブリルアンスペクトルを求め、前記被測定媒質のブリルアンスペクトル分布を測定するデータ処理手段とを有することを特徴とする。
【0029】
ここで、好ましくは、前記光学的手段は、前記第1の光と前記第2の光とを合流する光合流器と、前記被測定媒質の片端から他端に達した前記第2の光または前記第1の光を反射させて再び該片端に向けて該被測定媒質を伝搬させるための光反射器と、前記光合流器の出力である合流した前記第1の光と前記第2の光とを前記被測定媒質の前記片端から入射し、かつ該片端から出射する前記第2の光または前記第1の光を前記光検出手段側へ導く光分岐器とを含む。
【0030】
また、好ましくは、前記光学的手段は、前記第1の光と前記第2の光とを合流する光合流器と、前記複合媒質の片端から他端に達した第2の光または前記第1の光を反射させて再び該片端に向けて該複合媒質を伝搬させるための光反射器と、前記光合流器の出力である合流した前記第1の光と前記第2の光とを前記複合媒質の前記片端から入射し、かつ該片端から出射する前記第2の光または前記第1の光を前記光検出手段側へ導く光分岐器とを含む。
【0031】
また、好ましくは、前記可変光遅延器で遅延された前記第21の光を周波数fSDの変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第1の光変調器と、
前記光検出手段の出力電気信号を、周波数fSDの前記変調信号と同期して検波するための同期検波受信器とを更に有する。
【0032】
また、好ましくは、前記可変光遅延器に置き換えて、前記光分岐器からの一方の出力光である前記第21の光を分岐するための第2の光分岐器と、該第2の光分岐器の一方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第1の可変光遅延器と、該第1の可変光遅延器により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD1の変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第1の光変調器と、前記第2の光分岐器の他方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第2の可変光遅延器と、該第2の可変光遅延器により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD2 (≠ fSD1)の変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第2の光変調器と、前記第1の光変調器の出力光と、前記第2の光変調器の出力光とを合流して第1の光として出力する光合流器とを有し、かつ、前記光検出手段の出力電気信号を、周波数fSD1 、fSD2の前記変調信号と同期して検波するための同期検波受信器を有することを特徴とする。
【0033】
また、好ましくは、前記光学的手段は、前記第2の光または前記第1の光は通過させて前記光検出手段に導き、他の波長の光は遮断する光フィルタを含む。
【0034】
【発明の実施の形態】
(本発明の原理と作用)
本発明の具体的な実施形態を説明する前に、本発明をより理解し易くするため、本発明の原理および作用について説明する。
【0035】
本発明では、前述したように、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を使用するが、その原理の理解を容易にするために、はじめに、連続発振光として単色光を使用したときの光ファイバ中のブリルアン光増幅について説明する。
【0036】
図1に示したように、光ファイバの一端から第1の光を、他端から第2の光を入射する。また、光の伝搬方向は、z軸で表す。今、両光は周波数Fおよびf ( ただし、F > f とする)、伝搬定数はKおよびkの単色光であり、第1の光は、+z方向に、第2の光は、−z方向に伝搬しているものとすると、それぞれ光の電界は、E1 exp[ i (2πFt - Kz )] および、E2 exp[ i (2πft + kz )] で表される。このとき、光ファイバ中には、電歪効果により周波数が、F-f、である音響波が誘起され、その波は、第1の光と第2の光のビート信号に比例し、E1 E2 * exp{ i [2π(F-f )t - (K + k ) z ]} で表される。ただし、ここで比例係数は簡単のために省略した(以後同様とする)。また*は複素共役を表す。
【0037】
光ファイバ中の音響波の速度をVaとすると、次式(4)の位相整合条件を満足するとき、効率的に音響波が発生する。
K + k = 2π(F-f ) / Va (4)
式(4)を満足する周波数差、F-f をνbとすると、これをブリルアン周波数シフトと呼称する。この周波数がνbである音響波は光弾性効果により、光ファイバの屈折率をその長さ方向に変調するため、第1の光と同じ方向(+z方向)に進み、かつそのピッチがVa / (F-f ) である回折格子が光ファイバ中に瞬時的に形成されたことになる。この移動する回折格子により、周波数Fの第1の光の一部は、周波数F-fだけドップラーシフトを受けて後方散乱され、周波数fの光となって第2の光に重畳される。これは、見方を変えると、第2の光は第1の光によって増幅されたことになる。これをブリルアン光増幅という。
【0038】
ブリルアン光増幅のより詳しい理論の教えるところによれば、ブリルアン光増幅の利得係数は、F-fが、νbを中心とした±Δνb / 2 の範囲にあるとき大きくなり、そのプロファイル(ブリルアン利得スペクトル)は次式(5)で与えられるローレンツ型を示す。
gb(F-f )= g0 (Δνb)2 / { 4 [(F-f )−νb]2 + (Δνb)2 } (5)
ここでg0は、F-f =νb、としたときのブリルアン光増幅の利得係数のピーク値、Δνbは、前述したようにブリルアンスペクトルの半値全幅である。前述したように、上式(5)によるブリルアン利得スペクトルと、上式(1)によるブリルアン散乱光のスペクトルは同一のプロファイルを有している。また、光ファイバが石英ガラス製のとき、光源の波長を1.55μmとすると、νb〜11GHz、Δνb〜20MHzであることも既に説明した。
【0039】
次に、以上説明した単色光を使用したときのブリルアン光増幅の理論を基にして、本発明によるところの、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅Δνb以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を使用したときのブリルアン光増幅について説明する。今、本発明で使用する連続発振光のスペクトルの一例を、図2に示す。ここで、第1の光と第2の光は共に同一の連続発振光源(図5〜図10の符号1を参照)から得たものであり、そのスペクトルの半値全幅はともにΔνS ( >Δνb) とする。ただし、周波数シフタあるいは光変調器などの光周波数変換器によって、それぞれのスペクトルの中心周波数、Fcおよびfc は、νc = Fc - fc だけの差をもたせるものとする。また、その周波数差、νcは、光周波数変換器により可変であるとする。
【0040】
まず、第1の光の周波数Fの電界成分E1(F )と、第2の光の周波数fの成分E2(f )だけについて考える。このときは、単色光の場合と同様に考えることができるため、F-f 〜νbのとき、E1(F )の一部は、音響波(振幅∝E1(F ) E2* (f ))により、E2 (f )に変換される。また、E1(F ' )(ただし、F ' ≠F )と、E2(f )だけについて考える場合においても同様に、E1(F ' )の一部は、音響波(振幅∝E1(F ' ) E2* (f ))により、E2 (f )に変換される。ただし、本発明では連続発振光源としてインコヒーレントな光源を使用するため、E1(F )とE1(F ' )は統計的に独立である。その結果、|E2 (f )|2 の増分、δ|E2 (f )|2 は次式(6)で表わされるように、それぞれの増分の電力加算で与えられる。
δ|E2 (f )|2、∝ (|E1 (F )|2 + |E1 (F ' )|2 ) |E2 (f )|2 (6)
【0041】
したがって、同様の考察を繰り返すことにより、第2の光の電力成分、|E2 (f )|2のブリルアン光増幅には、電力が、|E1 (F )E2*(f ) |2(ただしFは第1の光源の任意の周波数)に比例する全ての音響波が寄与することになる。その音響波の周波数はおよそ、νc -ΔνS からνc +ΔνSまでの広い範囲に分布する。しかし、効率的にブリルアン光増幅が起きる帯域は、前述のように、νb - (Δνb/2) からνb + (Δνb/2) までの狭い範囲である。したがって、図2に示したような広い線幅のインコヒーレントな連続発振光を使用したときのブリルアン光増幅の利得のピーク値は、単色連続光を使用したときの値に、上記のブリルアン光増幅の帯域、Δνbと、誘起された音響波の帯域、2ΔνSとの比である、Δνb / (2ΔνS)を乗じたものとなる。ちなみに、Δνb = 20MHz、2ΔνS = 2GHzを想定すると、この比は、1/100となり、大幅に利得係数が減少することがわかる。
【0042】
また、音響波の周波数範囲は広いため、第1の光と第2の光の中心周波数差、νc = Fc - fc を、ブリルアン利得が最大となる周波数であるブリルアン周波数シフトνbから多少変化させても、ブリルアン利得の変化は少ない。したがって、ブリルアンスペクトルは半値全幅が、2ΔνS程度までひろがった非常に広いものとなることも理解できる。
【0043】
さらに、以上のブリルアン利得は、光ファイバ中の位置に依存せずに得られる。この特徴は、次に説明する、別のブリルアン利得の特徴と大きく異なり、後に明らかになるように本発明において重要な特徴の1つである。
【0044】
以上のブリルアン利得(これをgIとする)を導出するにあたり、第1の光および第2の光は、同一の光源の出力光を、光周波数変換器により、周波数シフトあるいは光変調して得たものであるとした。しかし、実際には、上記の導出過程からも分かるように、第1の光と第2の光を、独立な別の光源から得た場合でも、ブリルアン利得、gI、については同一の結果を得る。実は、本発明のように、第1の光と第2の光を同一の光源から得、その周波数がシフトされている場合には、上記ブリルアン利得、gIに加え,、新たな利得、gIIが現れるのである。gIIの源は、同一の周波数を持つ、複数の音響波の各位相が揃って重なることにより、大きな振幅の音響波が形成されることによる。
【0045】
今、先に、gIを導出したときと同様に、第1の光の周波数Fの電界成分E1(F )と第2の光の周波数fの成分E2(f )によって誘起された音響波(振幅∝E1(F ) E2* (f ))を考える。ただし、今回は、F-f=νcである複数の音響波に着目する。第1の光と第2の光は、同一光源から得られたものであり、お互いの周波数をシフトさせただけのものであるので、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる光ファイバ中の位置(以後、この位置を位置z0Tと呼ぶ)では、E1(F )とE2(f )の位相は同期している。したがって、それらから誘起された、周波数νcの複数の音響波は、位置z0Tでは、位相が全て揃って重なるため、その振幅は大きくなる。このように重なり合った周波数νcの音響波の振幅は、以下の式(7)に、比例する。
∫E1(F ) E2* (f ) df =∫E1(f +νc) E2* (f ) df
= |E1||E2|{∫|ES(F )|2 dF / |ES|2 } = |E1||E2| (7)
【0046】
ここで、|ES(F) |2 は第1の光と第2の光の元となった光源1のパワースペクトル密度である。また、|E1|2、|E2|2 および |ES|2は、それぞれ、第1の光、第2の光、および元の光源の全パワーであり、次式(8.1)、(8.2)、(8.3)で与えられる。
|E1|2 = ∫|E1 (F )|2 dF (8.1)
|E2|2 = ∫|E2 (f )|2 df (8.2)
|ES|2 = ∫|ES (F )|2 dF (8.3)
【0047】
したがって、上式(7)に比例した振幅をもつ音響波により、第1の光が周波数がシフトして後方に散乱され、第2の光に加わる。さらに計算を進めると、最終的にこの第2の光のパワーの増分は次式(9)で与えられることがわかる。 δ|E2|2∝|E1||E2|∫E1(f +νc) E2* (f ) df = |E1|2|E2|2 (9)式(9)は、ブリルアン光増幅に第1の光の全パワー |E1|2 が寄与していることを示している。すなわち、この場合のブリルアン利得 gII は、gI のように減少することなく、単色光を使用したときと同じとなる。ただし、注意すべきは、以上のgIIは第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる光ファイバ中の位置z0Tでのみ実現されることである。位置z0Tから、距離zだけ離れた位置では、周波数の違いから、E1 (F )とE2 (f )の位相差は、次式(10)となる。
2π(F−Fc )z/v + 2π(f−fc )z/v = 2π(F−Fc )(2z/v) (10)
【0048】
ここで、vは、光ファイバ中の光速である。この位相差を考慮すると、上式(7)は以下の式(11)のように修正される。
【0049】
ここで、
γ(2z/v) = ∫|ES(F)|2 exp[ i 2π(F−Fc)(2z/v)] dF / |ES|2} (12)は、干渉計測などにおいて重要な役割を果たす光源の干渉性を表す関数、コヒーレンス関数と一致する。すなわち、音響波の振幅の大きさは、光源のコヒーレンス関数に比例することが分かる。以上の結果から、さらに上式(9)は以下の式(13)ように修正される。
δ|E2|2 ∝|γ(2z/v)|2 |E1|2|E2|2 (13)
【0050】
一般に、|γ(2z/v)|2は、z = 0のとき、1であり、|z|が大きくなるにつれ急速にゼロに近付くという性質を有する。すなわち、ブリルアン利得 gII は、単色光使用時と同じく大きな値となるが、それが得られる位置は、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる光ファイバ中の位置z0Tの近傍に限られることがわかる。本発明はこの特徴を積極的に活用し、第1の光と第2の光の相対遅延時間を可変光遅延器を使用して変化させることにより、光ファイバ中の任意の位置のブリルアンスペクトルを測定するものである。このとき、gIによるブリルアンスペクトルも重畳されて測定されるが、前述のように、gIによるブリルアンスペクトルは非常に広帯域であり、第1の光と第2の光の周波数差の違いによる変化は少ないため、測定されるブリルアンスペクトルから、gII に基づくものだけを抽出することは比較的容易である。
【0051】
以上では、詳細な計算過程は省略して、本発明の原理のエッセンスのみを説明した。しかし、線幅の広い光源を使用するための、第1の光の周波数と第2の光の周波数との組み合わせは多数あり、一見、上述したgIおよびgII 以外の利得も存在するかのように考えられる。そこで、本発明者らは厳密な解析を行い、gIおよびgII 以外の大きな利得は存在しないことを以下の説明で明らかにするとともに、本発明によるブリルアンスペクトル分布測定方法および装置におけるブリルアン光増幅を表す、以下の(14.1)〜(14.3)に示す、簡潔な方程式を導いた。
ここで、ブリルアン周波数シフトνbは、前述したように、歪みまたは温度などにより変化するため、明示的には書いていないが、位置の関数である。
【0052】
なお、光源のスペクトル形状を、半値全幅がΔνSのローレンツ型とすると、次式(15)となる。
|γ(2z/v)|2 = exp{−2πΔνS|2z/v|} (15)
【0053】
前述したように、位置z0T(z = 0)では|γ|2 = 1であるが、z0Tから離れるに従い急速にゼロに近付く。そこで、|γ|2 = 0.5となるz0Tの両側の点間の距離を、本発明の分布測定における距離分解能Δzrとすると、Δzrは次式(16)で与えられる(図3参照)。
Δzr = 0.11 v /ΔνS (16)
上式(14.1)が示すように、本発明による測定法では、2種類のブリルアン光増幅の利得 gI と gIIが測定される。両利得は、第1の光と第2の光の中心周波数の差νc を変化させたときの、第2の光の信号パワーの変化から測定可能である。
【0054】
上式(14.2)が示すように、利得 gI は光ファイバの長さ方向のどの位置でもほぼ同じである。その帯域は非常に広く、Δνb+ 2ΔνS である。第1の光と第2の光の中心周波数の差νcを、ブリルアン周波数シフトνbに一致させたとき、利得 gI は最大値をとるが、その値は、光源の線幅がブリルアンスペクトル幅に対して無視できるときの利得であるg0 の、Δνb / (Δνb+ 2ΔνS) 倍に低下している。
【0055】
これに対して、上式(14.3)が示すように、ブリルアン利得gIIは、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置z0Tとその近傍のみで、大きな値をとり、その最大値はg0と一致する。その他の位置では、z0Tから離れるにつれ、上式(15)に従い、ブリルアン利得は指数関数状に急速にゼロに近付く。この様子を図3に示した。図3には、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置z0Tにおけるブリルアン利得のスペクトル(a)と、z0Tから徐々に離れた位置におけるブリルアン利得のスペクトル(b)(c)(d)を示している。
【0056】
以上の本発明によるブリルアン利得gII、と比較するために、図4に、PMCW法で得られるブリルアン利得を示す。図4では、位相変調され、かつ周波数シフトされた2つの光の相関が最大となる位置z0pmにおけるブリルアン利得のスペクトル(a)と、z0pmから徐々に離れた位置におけるブリルアン利得のスペクトル(b)(c)(d)を示している。確かに、PMCW法においても、位置z0pmにおいて、ブリルアン利得g0が得られ、その他の位置におけるブリルアン利得はg0よりも小さくなる。しかし、z0pmから徐々に離れたとき、PMCW法のブリルアン利得は、離れる距離に比例して緩慢に減少する(文献[2]を参照)。
【0057】
一方、本発明のブリルアン利得gIIは、上式(15)に従い、z0Tから離れるにつれて指数関数状に急速に減少する。これは、本発明が、PMCW法よりもクロストーク特性において格段に優れていることを示している。
【0058】
さらに、図3と図4の比較から分かるように、本発明のブリルアン利得gIIのスペクトル形状は、半値全幅がΔνbのローレンツ型で、位置に依存しないが、一方のPMCW法の利得のスペクトル形状は位置に依存し、その半値全幅は、z0pmからの距離にほぼ比例して増加する。これは、被測定光ファイバの本来のブリルアンスペクトル形状を変形することなく測定するという点において、本発明は、PMCW法に勝っていることを示している。
【0059】
したがって、本発明では、このような利得の特徴を活用し、第1の光と第2の光の相対遅延時間を、可変光遅延器を使用して変化させるので、光ファイバ中の任意の位置のブリルアンスペクトルを正確に測定することが可能となる。また、そのときの距離分解能は上式(16)で与えられる。
【0060】
実際には、図3から分かるように、本発明では、利得gIによる信号PI = C1∫gI(z) dzと、利得gIIによる信号PII = C1∫gII(z) dzとの和、P = PI + PIIが測定される(ここでC1は比例係数である)。したがって、第1の光のスペクトルの中心周波数と第2の光のスペクトルの中心周波数の差νcを変化させて、PI、PII、および、Pを測定したものを、それぞれPI (νc)、PII (νc)およびP (νc) = PI (νc) + PII (νc)とすると、被測定媒質の本来のブリルアンスペクトルを測定するためには、PII (νc)をP (νc)から分離、抽出しなければならないことがわかる。
【0061】
しかし、上式(14.2)が示唆するように、ΔνS > Δνb、とした場合には、νcの変化に対するPIの変化は非常に緩やかであるのに比べ、PIIは急峻な峰上の変化を示す。すなわち、PIIが大きな値をとるνcの範囲においては、PI はほぼ一定とみなすことが可能となるので、全体の信号P (νc)から、その一定値を差し引くことにより、PII (νc)のみを抽出することが可能である。
【0062】
また、νcの変化に対するPIの変化が緩やかではあるが、無視できない場合でも、PIIが大きな値をとるνcの範囲以外のデータから、適当なνcに関する近似関数を得て、その近似関数を基に、PIIが大きな値をとるνcの範囲におけるPIIの推定値を得ることは可能である。そこで、全体の信号P (νc)から、そのPIIの推定値を差し引くことにより、PII (νc)のみを抽出することが可能となる。これらの信号処理は、PI (νb) < PII (νb) または、PI (νb)〜 PII (νb)のときには容易に実行可能である。ここで、PI (νb) およびPII (νb) は、それぞれ、νc=νbとしたときの、PI (νc) およびPII (νc)の値である。
【0063】
しかし、利得gIはgIIに比べて小さいと言えども、光ファイバの全長にわたってほぼ同じ値をとるため、光ファイバが長い場合には、その長さについての積分値であるPIが大きくなり、PI (νb) >> PII (νb) となる。このときには、前述のような信号処理では誤差が非常に大きくなる。そこで、これに対処するため、本発明では、図6、図7、図9、図10に示す本発明の各実施形態で詳述するように、被測定光ファイバと、ブリルアンスペクトルが既知である参照媒質とを光学的に接続した複合媒質を形成して、ブリルアンスペクトル分布の測定を行っている。
【0064】
このとき、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置を、被測定光ファイバ中の点、および、参照媒質中の点としたときの測定信号を、それぞれP TおよびP Rとしたとき、それらは次式(17)、(18)で与えられる。
P T = PI + C1∫T gII(z) dz (17)
P R = C2 (PI + C1∫R gII(z) dz ) (18)
【0065】
ここで、
PI = C1∫T gI(z) dz + C1∫R gI(z) dz (19)
である。また、∫Tおよび、∫Rは、それぞれ、被測定光ファイバ区間および参照媒質区間における積分を表す。C2はP TおよびP Rとを測定するときの測定系の違いを較正するための比例係数である。同一測定系のときは、C2 = 1である。式(17)、(18)から、次式(20)を得る。
P DIF = P T−(P R / C2) = C1∫T gII(z) dz − C1∫R gII(z) dz (20)
【0066】
ここで、C2は予め求めておくことが可能なため、上式(20)における、 P T−(P R / C2)の計算処理は容易に可能である。また、参照媒質のブリルアンスペクトルは既知であるので、上式(20)の右辺第2項、C1∫R gII(z) dzは容易に得られる。特に、参照媒質に、測定する周波数の範囲で、ブリルアン利得が無視可能なほど小さな媒質を使用する場合には、上式(20)の右辺第2項はゼロとみなせるので、P T−(P R / C2) の計算処理は更に簡単になる。このような参照媒質としては、空気や、被測定光ファイバと材料、あるいは材料成分比が異なる光ファイバなどが使用可能である。
【0067】
このようにして、利得gI の影響を受けることなく、P TおよびP Rと上式(20)の関係を使用することにより、被測定光ファイバのブリルアンスペクトルである、νcを変化させたときのC1∫T gII(z) dz を、測定することが可能となる。さらに同様にして、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる被測定光ファイバ中の位置を変化させた測定を繰り返すことにより、被測定光ファイバのブリルアンスペクトルの分布の測定が可能となる。
【0068】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図5に、本発明の第1の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。このブリルアンスペクトル分布測定装置は、光源1と、光分岐器2と、遅延量可変の可変光遅延器3と、光周波数変換器4と、被測定媒質5と、光分岐器6と、光フィルタ7と、光検出器8と、同期検波受信器9と、光変調器10とを有する。ここで、変調周波数fSDの同期信号発振器は、図面の簡略化のため、図示を省略している。同様に、このような同期信号発振器は他の実施形態でも省略している。
【0069】
光源1は被測定媒質5のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を出力する。光分岐器2は、光源1からの出力光を分岐して、第21の光と第22の光を出力する。可変光遅延器3は、第21の光を入力して、その遅延量を変化させて出力する。光変調器10は、可変光遅延器3により遅延量を変化させた第21の光を入力して、それを周波数fSDの変調信号で変調し、第1の光として出力する。
【0070】
光周波数変換器4は、上記の第22の光を入力し、その周波数を変化させて第2の光として出力して、被測定媒質5の一方の端5−bに導く。光分岐器6は、上記第1の光を、被測定媒質5の別の端5−aから入射して、かつ、この端5−aから出射する第2の光を光フィルタ7に導く。
【0071】
光フィルタ7は、光分岐器6からの出力光である第2の光は通過させ、他の波長の光は遮断する。光検出器8は、光フィルタ7からの出力である第2の光のパワーを検出する。同期検波受信器9は光検出器8の出力電気信号を、周波数fSDの変調信号と同期して検波する。
【0072】
光源1には、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、光増幅媒質から出力される自然放出光を利用したASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、あるいは、それらの光源の出力光を所望の帯域の光フィルタで切り出した連続発振光源などが使用できる。また、光源1として、線幅の広い半導体レーザなども使用可能である。
【0073】
可変光遅延器3は、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置を、被測定媒質5における任意の位置に設定可能とするものである。可変光遅延器3として、微調用のものは、反射ミラーあるいはプリズム反射器と移動光学ステージとの組み合わせなどにより実現できる。また、可変光遅延器3として、粗調用のものは、長さの異なる複数の光ファイバを光スイッチで切り替える方式のものなどが使用可能である。
【0074】
光変調器10は、第1の光によりブリルアン光増幅された第2の光を同期検波するために、第1の光を光強度変調あるいは光位相変調するものであり、変調周波数fSDが低い場合には、機械式チョッパによる光強度変調器や、圧電素子に光ファイバを巻きつけた光位相変調器などが使用できる。また、変調周波数fSDが高い場合には、音響光学的光変調器やリチウムニオベート結晶などを使用した電界効果型光変調器が光変調器10として使用できる。
【0075】
光周波数変換器4は、図2に示した、第1の光の中心周波数Fcと第2の光の中心周波数fcとの間に、被測定媒質5のブリルアン周波数シフトνb程度の差を与え、その周波数差νc = Fc - fc をνbの近傍で変化させるためのものであり、リチウムニオベート結晶などを使用した電界効果型光強度変調器や光位相変調器などが使用できる。なぜなら、光強度変調器や光位相変調器の変調により発生させた1つあるいは複数のサイドバンド光は、それら光変調器に入射した光の周波数を変換したものとみなせるからである。
【0076】
また、周波数をシフトさせる音響光学的周波数シフタも、光周波数変換器4として使用可能である。その音響光学的周波数シフタのシフト量が、被測定媒質5のブリルアン周波数シフトνbに比べて小さい場合には、その音響光学的光周波数シフタと、光増幅器および光分岐回路などをリング状に結び、光を多数回、その音響光学的光周波数シフタに通過させることで、νb程度の大きな周波数シフトを受けた光を取り出すことが可能なリング光回路(文献[3] K. Shimizu et al.,“Technique for translating light-wave frequency by using an optical ring circuit containing a frequency shifter”, Opt. Lett., vol.17, no.18, pp.1307-1309, Sept. 1992)が光周波数変換器4として使用可能である。
【0077】
光分岐器6には、光パワースプリッタの他に、光サーキュレータ、あるいは、波長の異なる光を分離して出力する光分波器などが使用可能である。
【0078】
光フィルタ7には、誘電体多層膜フィルタ、回折格子型光フィルタ、ファイバグレーティングフィルタ、AWG(Arrayed Waveguide Grating)フィルタなどが使用可能である。
【0079】
なお、本発明の実施形態における被測定媒質5が、光ファイバの場合には、前述したように、歪みや温度の分布計測が可能となるが、本発明の測定対象は光ファイバに限定されないことは言うまでも無い。これについては、以降、説明する本発明の種々の実施形態についても同様である。
【0080】
このようにして構成した本発明の第1の実施形態では、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる、被測定媒質5の中の位置z0T において、大きなブリルアン利得gIIが発生し、この利得gIIにより増幅された第2の光のパワーの変化が、光検出器8および同期検波受信器9によって測定される。
【0081】
このとき、第1の光の中心周波数Fcと第2の光の中心周波数fcとの周波数差νc = Fc - fc を、被測定媒質5のブリルアン周波数シフトνbの近傍で変化させると、光検出器8および同期検波受信器9によって測定される第2の光のパワー変化も、上式(14.3)の右辺に比例して変わる。このνc と測定された第2の光のパワー変化の関係が、位置z0T において測定されたブリルアンスペクトルである。
【0082】
さらに、可変光遅延器3の遅延量を変化させて、同様の測定を繰り返すことにより、被測定媒質5におけるブリルアンスペクトルの空間分布が測定される。なお、大きなブリルアン利得gIIが発生する範囲は、上記のz0Tを中心として、式(16)に示した幅Δzr の範囲である。したがって、Δzr がブリルアンスペクトル分布測定の空間(距離)分解能を与える。例えば、ΔνS= 2 GHz とすると、被測定媒質5が石英ガラスファイバであるとき、v = 2x108m/s であるから、Δzr = 1.1 cm が実現される。
【0083】
以上の説明では、gIIとともに、被測定媒質5の中の全ての位置で発生するgIが、gIIの測定に及ぼす影響は少ないとして無視した。この仮定は、すでに説明したように、被測定媒質5の長さが比較的短く、gI による検出信号PIと、gII による検出信号PIIとが、
PI (νb) < PII(νb) または、
PI (νb) 〜 PII (νb)
のときに有効である。この仮定が成立しない、PI (νb) >> PII (νb) の場合については、以下の実施形態例の中で説明する。
【0084】
(第2の実施形態)
図6に、本発明の第2の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。本実施形態においては、被測定媒質5の片端5−aに、参照媒質11を光学的に接続し、被測定媒質5と参照媒質11を合わせたものを複合媒質12としている。この複合媒質12を図5における被測定媒質5とみなせば、図6のその他の構成物品は、図5の構成物品と同一である。なお、13は同期検波受信器9の測定出力をデータ処理するデータ処理装置である。データ処理装置13としては、パーソナルコンピュータ等の汎用のデータ処理装置が利用できる。
【0085】
ここで、参照媒質11には、そのブリルアンスペクトルが既知のものを使用する。また、参照媒質11は、測定時間中にそのブリルアンスペクトルが変化することがない安定な媒質、あるいは、不要な応力付与や、温度変化などがない安定環境下においた媒質であるとする。
【0086】
このようにして構成した本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態のときと同様にして、複合媒質12におけるブリルアンスペクトル分布を測定する。このとき、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置を、被測定媒質5中の点、および、参照媒質11中の点としたときの測定信号を、それぞれP TおよびP Rとしたとき、それらはすでに説明したように、上式(17)および上式(18)で与えられる。これら両測定信号には、利得gIによる不要な測定信号PIが含まれるが、それらは共通なため、上式(20)に示した簡単な計算処理により、利得gIIによる求むべき測定信号PIIを分離、抽出することが可能である。以上の説明から分かるように、本実施形態は、PI (νb) >> PII (νb)の場合に特に有効である。
【0087】
(第3の実施形態)
図7に、本発明の第3の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。本実施形態は、第2の光との相対遅延時間がゼロとなる位置が、被測定媒質5中の点となる光と、参照媒質11中の点となる光とを合流させたものを第1の光とするものである。
【0088】
そのために、本実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置は、光分岐器2からの一方の出力光である第21の光を分岐するための光分岐器14と、この光分岐器14の一方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第1の可変光遅延器3−1と、この第1の可変光遅延器3−1により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD1の変調信号で変調して出力する第1の光変調器10−1と、上記の光分岐器14の他方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第2の可変光遅延器3−2と、この第2の可変光遅延器3−2により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD2 (≠ fSD1)の変調信号で変調して出力する第2の光変調器10−2と、第1の光変調器10−1の出力光と、第2の光変調器10−2の出力光とを合流して第1の光として出力する光合流器15とを備え、さらに、図6において、可変光遅延器3と光変調器10とを除いたその他の全ての構成品を合わせたものを備えている。ただし、図7における同期検波受信器9は、変調周波数が異なる2種類の信号を検波可能なものとする。
【0089】
図6の構成と、図7の構成の違いは、図6における可変光遅延器3と光変調器10が、図7においては、第1の可変光遅延器3−1と第1の光変調器10−1、および第2の可変光遅延器3−2と第2の光変調器10−2とに並列化されたものに置き換わり、さらに、その並列化のための光信号の分岐および合流用に、光分岐器14と光合流器15が加わったことである。
【0090】
本発明の第3の実施形態はこのような構成となっているため、周波数fSD1で変調された第1の光の一部の光は被測定媒質5の測定のために使用するとともに、周波数fSD2で変調された第1の光の残りの光は参照媒質11の測定のために同時に使用することが可能となる。よって、前述のP TおよびP Rの測定が同時に可能となる。これにより、P Tおよび、P Rの測定時刻が異なることによる、光源パワーや、光源周波数のドリフトなどに起因した測定誤差の発生を抑圧することが可能となる。
【0091】
(第4の実施形態)
図8に、本発明の第4の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。本実施形態は、被測定媒質5の片端から、第1の光と第2の光を入出力するための構成である。そのために、本発明の第4の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置は、光変調器10の出力である第1の光と光周波数変換器4の出力である第2の光とを合流してそれを出力する光合流器16と、被測定媒質5の片端5−aから他端5−bに達した第2の光を反射させて、再び端5−aに向けて被測定媒質5を伝搬させるための光反射器17と、光合流器16の出力である合流した第1の光と第2の光を被測定媒質5の片端5−aから入射し、かつその片端5−aから出射する第2の光を光フィルタ7に導く光学的手段である光分岐器6等で構成している。
その他の構成品は、図5の第1の実施形態で使用されているものと同じである。
【0092】
光合流器16には、光パワースプリッタの他に、波長の異なる光を合波して出力する光合波器などが使用可能である。
【0093】
光反射器17には、ミラーの他に、第2の光の波長を選択的に反射する反射型多層膜フィルタなどが使用可能である。
【0094】
本発明の第4の実施形態では、このような構成となっているため、第1の光と第2の光は、被測定媒質5の中で、対向して伝搬し、第1の光によって第2の光をブリルアン光増幅することが可能となる。また、被測定媒質の端5−bに、一度、光反射器17を取りつければ、それ以降の複数回の測定では、被測定媒質のもう一方の端5−aと、光分岐器6の入出力端を接続するだけで測定が可能となるため、測定のたびに被測定媒質の両端との接続が必要な、前述の第1、第2、および、第3の実施形態に比べ、測定のための作業時間の短縮が図られる。
【0095】
(第5の実施形態)
図9に、本発明の第5の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。図9の構成は、図8の構成に、被測定媒質5の片端5−aに光学的に接続した参照媒質11を加えたものである。
【0096】
図8に示した第4の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置は、図5に示した第1の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を一部変更し、第1の光および第2の光の片端入出力を可能としたものであったが、これと同様に、図9に示した第5の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置は、図6に示した第2の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を一部変更し、第1の光および第2の光の片端入出力を可能としたものである。第1および第2の光の被測定媒質5への入射方法が異なる点を除けば、第5の実施形態の動作は、第2の実施形態の動作と同じである。
【0097】
(第6の実施形態)
図10に、本発明の第6の実施形態である、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示す。図10の構成は、図8の構成の可変光遅延器3と光変調器10とを、図7の構成の第1の可変光遅延器3−1、第1の光変調器10−1、第2の可変光遅延器3−2、第2の光変調器10−2、光分岐器14、および光合流器15で置き換えたものである。
【0098】
図8に示した第4の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置は、図5に示した第1の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を一部変更し、第1の光および第2の光の片端入出力を可能としたものであったが、これと同様に、図10に示した第6の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置は、図7に示した第3の実施形態の、ブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を一部変更し、第1の光および第2の光の片端入出力を可能としたものである。
第1および第2の光の被測定媒質5への入射方法が異なる点を除けば、第6の実施形態の動作は、第3の実施形態の動作と同じである。
【0099】
(変形例および他の実施形態)
次に、本発明の実施形態のこれまでの説明について、いくつかの補足説明を行う。
【0100】
まず、可変光遅延器3、可変光遅延器3−1、および可変光遅延器3−2の位置について補足説明する。これらの可変光遅延器の目的は、第1の光と第2の光の相対遅延時間を変化させることであるので、その位置は、図5〜図7に示した位置の他に、光分岐器2から光分岐器6を経由して被測定媒質5の端5−aに至る光路上の任意の個所、あるいは、光分岐器2から被測定媒質5の他端5−bに至る光路上の任意の個所で良い。また、同様にして、これらの可変光遅延器の位置は、図8〜図10に示した位置の他に、光分岐器2から光合流器16に至る光路上の任意の個所でも良い。
【0101】
なお、可変光遅延器3−1、および可変光遅延器3−2の何れか一方は、参照媒質11の測定のために使用することから、参照媒質11の位置が固定されている場合には、参照媒質11の測定用の光遅延器の遅延量は可変である必要はないことは言うまでも無い。
【0102】
次に、光変調器10、光変調器10−1、および光変調器10−2の位置について補足説明する。これらの光変調器の目的は、第1の光を変調することにあるので、その位置は、図5〜図10に示した、可変光遅延器の出力側の他に、可変光遅延器の入力側であっても良い。
【0103】
次に、光周波数変換器4の位置について補足説明する。光周波数変換器4の目的は、第1の光と第2の光の周波数に差を与え、その周波数を可変とすることであるので、その位置は、図5〜図10に示した位置の他に、図5〜図10に示したブリルアンスペクトル分布測定装置における、光源1から光分岐器6に至る光路上の任意の個所でも良い。
【0104】
次に、光フィルタ7について補足説明する。光フィルタ7の目的は、第1の光と周波数が所望の周波数だけシフトした第2の光以外の光を遮断することにより、信号対雑音比に優れた測定を行うためのものである。したがって、大きな信号が検出される場合には、光フィルタ7は必ずしも必要ではない。
【0105】
次に、同期検波受信器9について補足説明する。同期検波受信器9の目的は、光変調器10による第1の光に対する変調周波数fSDでの変調と、被測定媒質中でのブリルアン光増幅との“積”の効果により発生する、第2の光の周波数fSDの成分を同期して検波することにより、信号対雑音電力比を改善し、ブリルアン光増幅による第2の光のパワー変化を測定することである。したがって、同期検波より、性能は劣るが、同様な信号対雑音電力比の改善が期待できる、中心周波数fSDの帯域通過型電気フィルタを内蔵した電気信号受信器を、同期検波受信器9の代わりに使用しても良い。この場合には、その電気信号受信器に入力される同期信号は必要ない。また、ブリルアン光増幅による第2の光のパワー変化として大きな信号が得られる場合には、このような同期検波受信器9や、中心周波数fSDの帯域通過型電気フィルタは不用である。この場合には、同期検波受信器9、あるいは、上述の中心周波数fSDの帯域通過型電気フィルタを内蔵した電気信号受信器とペアで使用される、光変調器10も不用である。
【0106】
次に、参照媒質11の位置について補足説明する。参照媒質11の使用の目的は、参照媒質11と被測定媒質5と一体化して測定することにより、第1の光と第2の光の相対遅延時間がゼロとなる位置にかかわらず共通して発生する信号(前述のPI )を除去することにある。したがって、その位置は、図6、図7、図9、および、図10に示した位置の他に、被測定媒質5の他端5−b側であっても良い。また被測定媒質5を分割し、分割したものの中間の位置であっても良い。
【0107】
次に、光増幅器(図示しない)の使用について補足説明する。本発明で測定する信号は非常に微弱なため、高精度な測定をするためには、光増幅器を使用することが有効である。光増幅器は、図5〜図10における光路上の任意の位置で使用可能である。
【0108】
最後に、第1の光の中心周波数Fcと第2の光の中心周波数fcの差、νc = Fc - fcについて補足説明する。これまでの説明では、図2に示すように、νcは正であった。前述したように、Fc - fc をνc〜νbと変化させることにより、第1の光によって第2の光はブリルアン光増幅されるので、本発明ではこの光増幅によって増加した第2の光のパワーを測定した。このとき、実は、変化するのは第2の光のパワーだけでなく、第1の光のパワーも変化する。第1の光はエネルギ保存の法則から、第2の光のパワーが増加した分、第1の光のパワーが減少する。したがって、第2の光のパワーの増加を測定する代わりに、第1の光のパワーの減少量を測定することによっても、これまでの説明と同様にして、ブリルアンスペクトル分布の測定が可能である。このような測定は、図2において、Fc < fc とし、図5〜図10の実施形態において、νc = Fc - fcを、−νbの付近で変化させ、第2の光のパワーの減少量を測定することと等価である。
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明によれば、被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、またはその連続発振光から分岐した連続光を、光強度変調あるいは光位相変調、または周波数シフトすることにより、スペクトルが所定の周波数だけシフトした2つの連続発振光を発生させ、これら発生した光を第1の光と第2の光とし、第1の光と第2の光を被測定媒質中で対向して伝搬させ、第1の光と第2の光の相対遅延時間を変化させて、その被測定媒質中の所望の位置z0Tでその相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりもその位置z0Tでブリルアン光増幅を効率的に起こさせるようにしたため、連続発振光の線幅の逆数に光速を乗じた値で決定される、1m以下の優れた空間分解能でブリルアンスペクトル分布を測定可能となる、という効果を奏する。
【0110】
また、本発明によれば、従来の高空間分解能ブリルアンスペクトル分布技術に比べ、クロストークが少ないため、測定位置の選択特性が格段に向上するとともに、被測定媒質の本来のブリルアンスペクトルを変形することなく測定可能なため、従来技術で必要とされた複雑な計算機による数値演算処理を伴うことなく、格段に高精度なブリルアンスペクトル分布の測定が可能となる、という効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における光の伝搬方向を説明する概念図である。
【図2】本発明で使用する第1の光と第2の光のスペクトルの一例を説明する波形図である。
【図3】本発明で実現する2種類のブリルアン利得gI およびgII のスペクトルと、その発生位置の関係を示す説明図である。
【図4】従来の高空間分解能ブリルアンスペクトル分布測定技術により測定されるブリルアン利得のスペクトルと、その発生位置の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第5の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第6の実施形態のブリルアンスペクトル分布測定装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 光源
2 光分岐器
3、3−1、3−2 可変光遅延器
4 光周波数変換器
5 被測定媒質
6 光分岐器
7 光フィルタ
8 光検出器
9 同期検波受信器
10、10−1、10−2 光変調器
11 参照媒質
12 複合媒質
13 データ処理装置
14 光分岐器
15 光合流器
16 光合流器
17 光反射器
Claims (9)
- 被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、または、該連続発振光から分岐した連続発振光を、周波数シフト、または、光強度変調あるいは光位相変調することにより、互いのスペクトルの中心周波数が前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ離れた2つの連続発振光を発生させ、これらを第1の光と第2の光とし、
該第1の光と該第2の光を被測定媒質中で対向して伝搬させ、
該第1の光と該第2の光の相対遅延時間を変化させて、前記被測定媒質中の所望の位置z0Tで該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該所望の位置z0Tでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、
前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差を変化させて、前記被測定媒質から出射した第1あるいは第2の光の、前記ブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記所望の位置z0Tにおけるブリルアンスペクトルを測定する
ことを特徴とするブリルアンスペクトル分布測定方法。 - 被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を、または、該連続発振光から分岐した連続発振光を、周波数シフト、または、光強度変調あるいは光位相変調することにより、互いのスペクトルの中心周波数が前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ離れた2つの連続発振光を発生させ、これらを第1の光と第2の光とし、
前記被測定媒質とブリルアンスペクトルが既知である参照媒質とを光学的に接続した複合媒質を形成して、該複合媒質中で前記第1の光と前記第2の光を対向して伝搬させ、
該第1の光と該第2の光の相対遅延時間を変化させて、前記被測定媒質中の所望の位置z0Tで該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該所望の位置z0Tでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、
前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差νcを変化させて、前記被測定媒質から出射した前記第1の光あるいは前記第2の光の、前記ブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記所望の位置z0Tにおいて前記相対遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルPT(νc)を測定し、
かつ、前記第1の光と前記第2の光との相対遅延時間、または前記第1の光と前記第2の光の一部の光との相対遅延時間を変化させて、前記参照媒質中の位置z0Rで、該相対遅延時間をほぼゼロとすることにより、他の位置よりも該位置z0Rでブリルアン光増幅を効率的に起こさせ、
前記第1の光のスペクトルの中心周波数と、前記第2の光のスペクトルの中心周波数の差νcを変化させて、前記複合媒質から出射した前記第1あるいは前記第2の光の、前記位置z0Rでのブリルアン光増幅によって変化した光パワーを測定することにより、前記位置z0Rにおいて前記相対遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルPR(νc)を測定し、
測定した前記ブリルアンスペクトルPT(νc)と測定した前記ブリルアンスペクトルPR(νc)の関係を利用して、前記所望の位置z0Tにおける補正されたブリルアンスペクトルを求める
ことを特徴とするブリルアンスペクトル分布測定方法。 - 被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を出力する光源と、
該連続発振光を分岐して第21の光と第22の光を出力する光分岐器と、
該第21の光と該第22の光の間の相対遅延時間を所望の値に変化させる可変光遅延器と、
前記光源の出力光、または該出力光を分岐した前記第21の光、または前記第22の光を、光周波数軸上で所定の量だけシフトさせた光を発生させる光周波数変換器と、
前記第21の光と前記第22の光から、前記可変光遅延器と前記光周波数変換器によって発生させた、所望の相対遅延時間を有し、かつ前記被測定媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ互いの中心周波数が離れたスペクトルを有する2つの光を、それぞれ第1の光と第2の光としたとき、該第1の光および該第2の光が前記被測定媒質中で対向して伝搬するように、前記第1の光および前記第2の光を、前記被測定媒質中に入射させ、前記被測定媒質を伝搬後、該被測定媒質から出力する前記第1の光または前記第2の光の少なくとも一部を取り出す光学的手段と、
該光学的手段により取り出された光のパワーを検出する光検出手段と、
前記可変光遅延器により前記第1の光と前記第2の光の相対遅延時間がほぼゼロとなる前記被測定媒質中の位置を変化させ、かつ前記光周波数変換器を使用して前記第1の光のスペクトルの中心周波数と前記第2の光のスペクトルの中心周波数との差νcを変化させることにより得られる前記光検出手段の出力データを基に前記被測定媒質のブリルアンスペクトル分布を測定するデータ処理手段と
を有することを特徴とするブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 被測定媒質のブリルアンスペクトル幅以上の広い線幅を有するインコヒーレントな連続発振光を出力する光源と、
該連続発振光を分岐して第21の光と第22の光を出力する光分岐器と、
該第21の光と該第22の光の間の相対遅延時間を所望の値に変化させる可変光遅延器と、
前記光源の出力光、または該出力光を分岐した前記第21の光、または前記第22の光を、光周波数軸上で所定の量だけシフトさせた光を発生させる光周波数変換器と、
前記被測定媒質とブリルアンスペクトルが既知である参照媒質とを光学的に接続することにより形成した複合媒質と、
前記第21の光と前記第22の光から、前記可変光遅延器と前記光周波数変換器によって発生させた、所望の相対遅延時間を有し、かつ、前記複合媒質のブリルアン周波数シフト程度だけ互いの中心周波数が離れたスペクトルを有する2つの光を、それぞれ第1の光と第2の光としたとき、該第1の光および該第2の光が前記複合媒質中で対向して伝搬するように、該第1の光および該第2の光を、
前記複合媒質中に入射させ、前記複合媒質を伝搬後、該複合媒質から出力する該第1の光または該第2の光の少なくとも一部を取り出す光学的手段と、
該光学的手段により取り出された光のパワーを検出する光検出手段と、
前記可変光遅延器により前記第1の光と前記第2の光の相対的遅延時間がほぼゼロとなる前記複合媒質中の位置を変化させ、かつ前記光周波数変換器を使用して前記第1の光のスペクトルの中心周波数と前記第2の光のスペクトルの中心周波数との差νcを変化させることにより、前記被測定媒質中の位置z0Tおよび前記参照媒質中の位置 z0Rにおいて、前記第1の光と前記第2の光の相対的遅延時間をほぼゼロとしたときのブリルアンスペクトルを、前記光検出手段の出力データを基に測定し、該測定したそれぞれのブリルアンスペクトルを、PT(νc)およびPR(νc)としたとき、該PT(νc)と該PR(νc)の関係を利用して、前記位置z0Tにおける補正されたブリルアンスペクトルを求め、前記被測定媒質のブリルアンスペクトル分布を測定するデータ処理手段と
を有することを特徴とするブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 前記光学的手段は、
前記第1の光と前記第2の光とを合流する光合流器と、
前記被測定媒質の片端から他端に達した前記第2の光または前記第1の光を反射させて再び該片端に向けて該被測定媒質を伝搬させるための光反射器と、
前記光合流器の出力である合流した前記第1の光と前記第2の光とを前記被測定媒質の前記片端から入射し、かつ該片端から出射する前記第2の光または前記第1の光を前記光検出手段側へ導く光分岐器と
を含むことを特徴とする請求項3に記載のブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 前記光学的手段は、
前記第1の光と前記第2の光とを合流する光合流器と、
前記複合媒質の片端から他端に達した第2の光または前記第1の光を反射させて再び該片端に向けて該複合媒質を伝搬させるための光反射器と、
前記光合流器の出力である合流した前記第1の光と前記第2の光とを前記複合媒質の前記片端から入射し、かつ該片端から出射する前記第2の光または前記第1の光を前記光検出手段側へ導く光分岐器と
を含むことを特徴とする請求項4に記載のブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 前記可変光遅延器で遅延された前記第21の光を周波数fSDの変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第1の光変調器と、
前記光検出手段の出力電気信号を、周波数fSD の前記変調信号と同期して検波するための同期検波受信器と
を更に有することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 前記可変光遅延器に置き換えて、前記光分岐器からの一方の出力光である前記第21の光を分岐するための第2の光分岐器と、該第2の光分岐器の一方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第1の可変光遅延器と、該第1の可変光遅延器により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD1の変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第1の光変調器と、前記第2の光分岐器の他方の出力光を入力し、その遅延量を変化させて出力する、遅延量可変の第2の可変光遅延器と、該第2の可変光遅延器により遅延量を変化させた光を入力し、それを周波数fSD2 (≠ fSD1)の変調信号で光強度変調あるいは光位相変調または周波数シフトして出力する第2の光変調器と、前記第1の光変調器の出力光と、前記第2の光変調器の出力光とを合流して第1の光として出力する光合流器とを有し、
かつ、前記光検出手段の出力電気信号を、周波数fSD1 、fSD2の前記変調信号と同期して検波するための同期検波受信器を有することを特徴とする請求項4または6に記載のブリルアンスペクトル分布測定装置。 - 前記光学的手段は、前記第2の光または前記第1の光は通過させて前記光検出手段に導き、他の波長の光は遮断する光フィルタを含むことを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載のブリルアンスペクトル分布測定装置。
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