JP3904395B2 - 電子機器筐体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器等の筐体とその製造方法に関する。更に詳しくは、プリス加工された金属板、ダスキャスト品等の金属製のケースを補強したり、電子機器を取り付けたり、内装、外装を容易とするために合成樹脂を一体化して樹脂部品を固着した電子機器筐体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金、アルミニウム合金製等の金属製筐体を採用した携帯電話、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ等の情報通信機器や家庭電化製品が増加している。例えばマグネシウム合金で作られた電子機器の筐体は、メタリック的な色彩の美しさがある。プラスチックス樹脂より重量は1.5倍程度重いが機械的強度が2倍から3倍も強いので薄肉にできるので結果として軽くなる。電磁シールド作用があることから脚光を浴びている。マグネシウム合金の成形は、従来のダイカスト法から近年では射出成形法が商業化されている。
【0003】
マグネシウム合金の射出成型は専用の射出成形機を使ってマグネシウム合金を金型内に射出し電子部品、筐体等を完成するものであり、従来のダイカスト法ではできなかった高度の薄肉成形を可能にしたものである。しかしながら、得られる射出成形品は、いわゆるガス、フローマーク、バリを含み易く、表面処理加工に回す前に切削加工、研削加工等によるクリーンアップ処理が不可欠というのが現状であり、必ずしも満足できるレベルまで来ていない。
【0004】
昨今、マグネシューム合金やアルミ合金にて金属プレス加工ができる素材の供給が可能になってきており、本発明者等はこれに着目している。金属プレス加工は、板材から打抜き、切断、曲げ、絞り加工等を行うもので成形品形状は制限され、射出成形品のような複雑形状品を得ることはできない。例えば、筐体の外形を所望のデザインにプレス加工できたとしても、筐体内に電子回路基板を固定するためのもので、内部に隔壁、ビス穴、補強リブ等の構造物を同時に形成することは困難である。
【0005】
要するに金属プレス加工によって電子機器用筐体を作ろうと、クリーンアップ処理などは不要であるのものの組立加工で難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
【0007】
本発明の目的は、金属製の電子機器の筐体の良さと合成樹脂製の良さを両立させた電子機器の筐体とその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、生産性が高く量産性のある金属製の電子機器の筐体とその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、形状、構造の設計が自由にできる金属製の電子機器の筐体とその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子機器筐体は、加工された金属ケースと、前記金属ケース面に射出成形により成形された樹脂部品が一体化された電子機器筐体において、前記樹脂部品を構成するために射出される熱可塑性樹脂が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたオレフィン系樹脂を含む樹脂であることを特徴としている。
【0011】
変性体の不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、具体的に例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸または、その無水物が好ましい。特に、マレイン酸またはその無水物がさらに好適である。
【0012】
また、オレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルー1−ペンテン等のα―オレフィンの単独重合体、または、α―オレフィン同士の共重合体で、熱可塑性樹脂に含まれる変性α―オレフィン樹脂の量は、5〜100%である。
【0013】
本発明における不飽和カルボン酸または、その誘導体で変性されたオレフィン系樹脂に含まれる不飽和カルボン酸または、その誘導体の含有量は、0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%であるものが好ましい。不飽和カルボン酸または、その誘導体の含有量が前記範囲未満では、熱融着によって、金属ケース6に固着する際の接着力が弱く初期の目的を達成できない。一方前記範囲超過では、変性重合体中にゲル等が生じ、それが、フィッシュアイやブツ等となって、外観不良や接着力の低下を来すことになる。
【0014】
不飽和カルボン酸またはその誘導体の変性は、グラフト反応によって行われる。そのグラフト反応条件としては、例えば、ジーt―プチルパーオキシド、t―プチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t―プチルパーオキシド)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ(t―プチルパーオキシ)ヘキシンー3等のジアルキルパーオキシド類、t−プチルパーオキシアセテート、t−プチルパーオキシベンゾエート、t−プチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキセン、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシンー3等のパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジイソピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチルー2,5−ジ(ヒドロパーオキシド)ヘキサン等のヒドロパーオキシド類等の有機過酸化物を前記オレフィン樹脂100重量部に対して0.001〜10重量部程度用いて、80〜300℃程度の温度で、溶融状態または半溶融状態で反応させる方法が採用される。
【0015】
また、前記樹脂部品が前記金属ケースに熱融着により一体化して固着されてもよい。さらに、前記オレフィン系樹脂がエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルー1−ペンテン等のα―オレフィンの単独重合体、または、α―オレフィン同士の共重合体であってもよい。
【0016】
さらに、前記不飽和カルボン酸またはその誘導体が、マレイン酸またはその無水物であってもよい。さらに、前記樹脂部品が、ビス、ツメ、リブ、ボス等のように、機械要素的な機能のための構造部分であってもよい。
【0017】
本発明の電子機器筐体の製造方法は、金属ケースを含む電子機器筐体の製造方法であって、前記金属ケースを射出成形金型にインサートする工程と、前記金属ケースと一体化した樹脂部品を成形するため前記射出成形金型にポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル樹脂、ABS樹脂から選択される一種以上の熱可塑性樹脂に請求項1の変性α―オレフィン樹脂を含有した樹脂を射出する工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
また、前記熱可塑性樹脂に含まれる変性α―オレフィン樹脂の量が、5〜100%であることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1を図面に従って説明する。本発明の電子機器の筐体を携帯用電話器に採用した例で説明する。図1に示すものは、本発明の筐体を備えた携帯用電話器の正面図である。携帯用電話器1は、合成樹脂製の電話器本体2から構成されており、この電話器本体2内には電話の機能を実現するIC等の電子機器が内装されている。
【0020】
電話器本体2は、2体からなりその厚さ方向の中心の分割面で2分割される。電話器本体2の上面にはケースカバー3が配置され、この裏面には裏面本体4が配置されている。ケースカバー3は、制御パネルの機能と電話器本体2としての両方の機能を果たすものであり、複数の押ボタン5が配置されキー群を構成する。押ボタン5は、電話器本体2内に配置された接点類(図示せず)を駆動する。ケースカバー3と裏面本体4とは、ビス又はノッチ等の固定手段(図示せず)で一体に固定されている。
【0021】
図2は、図1のII−II線で切断したときのケースカバーの断面図である。ケースカバー3の外表面は、マグネシウム合金で作られた金属ケース6から形成されている。金属ケース6は、射出成形機を使ってマグネシウム合金を金型内に射出して作られるが、この製造方法については、公知でありここでは詳記しない。また、比較的簡素な形状のものはプレス加工により製造される。プレス加工の場合は低コストで製造が可能である。金属ケース6は、IC等の電子部品から発生する電磁波、又は他の電子機器等からの電磁波を効率良く遮蔽する。
【0022】
金属ケース6は、耐腐食性、耐摩耗性、装飾性の向上等の要請から化成処理、金属メッキ等の周知の方法による表面処理が通常なされている。金属ケース6の内面には、隔壁と補強のために熱可塑性樹脂製のリブ7(樹脂部品)が一体に固着されている。この固着は後述する方法により熱融着されて金属ケース6と一体化されている。
【0023】
本発明において、リブ7を一体化して成形するための前記熱可塑性樹脂は、不飽和カルボン酸または、その誘導体で変性されたオレフィン系樹脂を含んでいる。従って、リブ7は、この熱可塑性樹脂の熱融着により、一体化して金属ケース6に固着されている。
【0024】
この熱可塑性樹脂は、機械的な強度、物性を有するものが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル樹脂、ABS樹脂(ABS)等から選択される1種以上から選択される熱可塑性樹脂に変性α―オレフィン系樹脂を含有した樹脂であることが望ましい。場合によっては、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の高強度繊維を混入させると良い。
【0025】
リブ7を射出成形する前に金属ケース6の表面は、少なくとも1層の有機質による表皮層30による被覆、即ちライニング、又はコーティング(本発明では印刷や塗装を含む意味である。)されている。この表皮層30は、金属ケース6と付着性が良く、かつリブ7を構成する熱可塑性樹脂とも熱融着性が良いものが好適である。
【0026】
本実施の形態においては、ジ(1,3,5−トリアジンー2,4,6−トリチオール)トリエタノールアミン錯体(以下トリアジンチオール誘導体と称す)を使用している。このトリアジンチオール誘導体の詳細は特開平2−233666号公報に記載されている(関連技術として、特開平2−298284号公報)。このトリアジンチオール誘導体は、ジ(1,3,5−トリアジンー2,4,6−トリチオール)トリエタノールアミン錯体、及び1,3,5−トリアジンー2,4,6−トリチオールとトリエタノールアミンとを溶液中で加熱反応させて得られたものであり、固化して塊状物となることなく、水溶液から結晶として析出し、濾過により水溶液から容易に分離でき、また、粉砕も容易なものである。
【0027】
加水分解に対し高い安定性を示し、水中で長期間保存が可能な性質がある。このトリアジンチオール誘導体の使用上の特徴として、静電気を帯び難い材料であることである。また、中性または弱酸性溶液として使用できるので、金属の表面処理剤として使用が可能で、この場合金属表面のアルカリ焼けが生じることがない等の優れた性質を有している。金属ケース6の表面上に表皮層30として、このトリアジンチオール誘導体が塗られる。この塗布は薄く厚さをナノメーターのレベルで行う。
【0028】
表皮層30は、表面処理された金属素地に付着性が良く、しかも前述した表皮層30は金属表面と強く接着するとともに、前述した熱可塑性組成物と融着したり、射出成形時の熱と圧力で反応接着することができる層である必要がある。前述の表皮層30はこの条件を満たすものであり、この反応接着を行うためには1層で1種類のみの表皮層30を塗布したものであっても良いが、1層のみでは性能的には十分とは言えない場合がある。即ち、2つのコーティング材14,金属の密着性に優れる第1コーティング材と熱可塑性樹脂との射出成形による接着、融着が期待できる第2コーティング材の双方を使用した2層の重ね塗りコーティングがより好ましい場合もある。
【0029】
重ね塗布について詳細に述べる。第1コーティング材としては、1液硬化性、又は2液硬化性のエポキシ系塗布材が使用でき、具体的には金属塗布用塗料、金属表面への印刷用インキとして市販されているエポキシ系や変性エポキシ系のスクリーン印刷インキ、及びパット印刷用インキが使用できる。
【0030】
第2コーティング材としては、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系の合成樹脂よりなる塗料やインキ、コート材が使用でき、好ましくは、ウレタン系2液硬化性の塗料やインキ、1液性のアクリル塗料やインキ、1液性のポリエステル系インキやコーティング材が使用できる。
【0031】
第1、第2のコーティング材の塗布、乾燥、焼付(硬化)の方法について述べる。まず好ましくない塗布法について述べる。いわゆるWET ON WETという手法、即ち 塗布後の第1コーティング層の乾燥が全く不十分なうちに、第2コーティング材の塗布を行う方法では、最終的に満足できる結果が得られないことが多い。
【0032】
又、第1コーティング材の塗布後に加熱硬化処理、通常120〜150℃で加熱しエポキシ層を架橋硬化させることを行ってから第2コーティング材を塗布した場合、第1コーティング層と第2コーティング層の接着強度が不十分になってしまうことが多い。コーティング材14として実際に何を使うかで詳細な塗布方法は変わる。好ましい方法は、第1コーティング材を塗布した後に、1日程度の風乾や比較的低温での強制乾燥で含有溶剤を蒸発させて半硬化をさせる方法である。
【0033】
例えば、第1コーティング材が1液硬化性の変性エポキシ塗料であれば、硬化条件は120〜150℃であるので70〜100℃の低い温度で加熱して半硬化させる。第1コーティング材が2液硬化性のエポキシ系塗料、インキ、接着材などの場合は、指定された硬化条件より低い温度条件で溶剤の大部分が蒸発させて半硬化させる方法が好ましい。第2コーティング材の塗布はそのような後に実施すると好ましい結果が得られる。
【0034】
第2コーティング材の塗布後に加熱硬化処理を行う。部分硬化に留まっていた第1コーティング層を完全硬化し、しかも第2コーティング層も硬化性コーティング材を使用したものは硬化し、硬化性でないコーティング材を使った場合は溶剤の揮発で固化するようにする。
【0035】
この処理された金属ケース6は、リブ7を射出するための射出成形金型にインサートされる。図3は、金属ケース6の表面に射出成形により熱可塑性合成樹脂が充填される射出成形金型の断面図である。可動側型板10のキャビティ11に、前処理された金属ケース6を挿入配置する。
【0036】
金属ケース6をキャビティ11に挿入した状態で固定側型板15を閉じる。キャビティ11は、可動側型板10と固定側型板15とを閉めた状態で、金属ケース6、可動側型板10、固定側型板15で形成された空間である。このキャビティ11は、部分的な空間として設けられている。即ち、金属ケース6全体に跨るものでなく、構造物となる部分のみ、例えば、リブ、ボス、フック等となるための空間として設けられている。
【0037】
このキャビティ11にランナ17、ゲート16を介してリブ7等を構成する熱可塑性合成樹脂の溶融樹脂が供給され、リブ7等の成形を行う。この溶融樹脂はリブ7等を含めその近傍のみ充填される。この溶融樹脂を部分的に供給するのは、供給する樹脂の収縮力が強いので、薄い金属ケース6の広い面積に溶融樹脂を供給し固着させると、収縮力のため変形してしまうおそれがありそれを避けるためである。また、余分な溶融樹脂の供給をしないので、生産量が多い場合はコスト面で有利である。
【0038】
完成されたケースカバー3の筐体は、金属ケース6と熱可塑性合成樹脂で作られたリブ7とが一体に接合されて、強度的にも、外観のデザイン上も金属の特徴を活かし、しかも筐体内部の形状、構造も複雑な形状とすることができる。なお、ケースカバー3と共に電話器本体2を構成する裏面本体4も同様に製造される。以上樹脂部品をリブ7を中心に説明してきたが、リブに限定されることはなく、ビス、ツメ、ボスにおいても同様である。
【0039】
[実施の形態2]
前記実施の形態1は、金属ケース6の裏面にのみリブ7を形成するものであったが、このリブ7は必ずしも裏面にのみでなくても良い。即ち、金属ケース6の機械的な強度が不足するときには、金属ケース6の一部を型曲げして断面係数を増加させる方法、又は部分的に絞り加工してここに孔を形成して樹脂を金属ケースの表裏に貫通させる方法等がある。
【0040】
図4に、実施の形態2による金属ケースと射出成形金型を示し、射出成形により熱可塑性合成樹脂が充填される前の断面図が示されている。この金属ケース12は、金属ケース12を塑性加工により成形し、かつ貫通孔8を形成したものである。この金属ケース12は、絞り加工により張出し加工を行って筐体内部に突出する凸部9を必要な複数個所に形成し、更にこの凸部9にポンチ加工により貫通孔8を加工したものである。この加工の後、前述した表皮層30が塗布硬化された後、射出成形金型内にインサートされる。
【0041】
ゲート16介して射出された溶融樹脂は、金属ケース12の外側に形成された凹部13近傍のみを満たす。また、リブ7を形成する部分である金属ケース12の内側のキャビティ18については、個別に空間が設けられており、ゲート16aを介して溶融樹脂が供給される。金属ケース12は、貫通孔8が必要個所に開けられているので、射出成形時に溶融樹脂が円滑に流れる効果もある。
【0042】
[実施の形態3]
前記実施の形態1及び2は、金属ケース6,12の表面に、隔壁、リブ7等の構造的なものを形成するものであったが、これらの構造物と共に表皮を形成しても良い。即ち、携帯用電話器1のデザイン上の要請からくる外観のため、又使用者が使用するときの手の感触を向上させるため、金属ケース6、12の外表面に熱可塑性エラストマーで作られた表皮を配置すると良い。
【0043】
図5は、実施の形態3の電子機器の筐体の一部を示す断面図で、筐体内部に実装されるプリント基板22に固定するためのボス等構造物21が設けられた金属ケース20の一部を示している。金属ケース20は、射出成形金型(図示せず)内にインサートされる。この射出成形金型内に、金属ケース20の表皮23を形成するために、熱可塑性エラストマーが充填される。溶融された熱可塑性エラストマーは、金属ケース20の表面24上を流れてこれを覆いケースカバー25が成形される。望ましくはこの熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマーから選択される1種以上の熱可塑性組成物が良い。
【0044】
[実施例1]
(第1コーティング材の塗布)
以下、前述した金属ケース6,12,20と、リブ7等の接合強度を確認するために以下のような実施、及び実験を行った。以下、この実施例を説明する。長方形(30mm×10mm×1mm)のマグネシウム合金(AZ91D)の試験片を常法によりノンクロム苛性処理をして耐食性をアップした後、試験片の長さ方向の半分を粘着テープを貼ってマスキングする。
【0045】
これに以下の方法で作られたコーティング材を常温、常圧下で塗布した。第1コーティング材の製法は、最初に以下の混合比からなる液体状の変性エポキシ塗料主液の混合液を作る。
【0046】
このアルキッド変性エポキシ塗料主液50gに、硬化剤として混合TDI(トリレンジイソシアネート)3gとを十分に攪拌する。この攪拌した混合溶液に、溶剤として更に芳香族混合物(トルエン96%、キシレン4%)60部と、イソプロパノール40部からなる溶剤20gを加えて攪拌混合する。結局、最終的な第1コーティング材の混合割合は次のようになる。
【0047】
これを前述した試験片に塗布し、50℃で2時間の強制乾燥させた。
【0048】
(第2コーティング材の塗布)
次に、ウレタン硬化性の2液性スクリーン印刷用インキを主液と硬化剤を所定量を混合し、この混合液を溶剤であるイソホロンで希釈して第2コーティング材を作った。前述した下層である第1コーティング材の上に上塗り塗布した。1時間風乾の後、マスキングテープを剥がして熱風炉に入れて120℃で2時間加熱硬化させた。なお、第2コーティング材は、市販品を用いたもので、カタログ上の硬化条件は80℃で30分のものを用いた。
【0049】
この前処理された試験片を60mm×10mmの大きさのキャビティを有する射出成形金型内にインサートし、30%のグラスファイバー(GF)を含有するABS樹脂(商標名JSR−ABS:テクノポリマー製)を射出し、上層のコーティング材の上層にABS樹脂を熱融着させた。このようにしてABS樹脂と試験片が一体成形されたものを、ABS樹脂と試験片とを同一平面の反対方向に引っ張って金属片とABS樹脂部のせん断接合強度を測定した。10個のサンプルで、破壊強度は、密着面積1.5cm2に対して平均103ニュートンであった。従って、電子機器の筐体のリブ、区画等の構造としては、使用可能な機械的強度が得られた。
【0050】
[実施例2]
実施例1と同様のマグネシウム合金製の試験片に前述した下層の第1コーティング材を塗布して、50℃で2時間乾燥させた。この試験片に市販されているアクリル系1液性スクリーン印刷インキ(使用ポリマーの理論融点が80℃)をシクロヘキサンで希釈し、この希釈したものを前述した第1コーティング材の上に上塗り塗布した。これを更に常温、常圧下で乾燥させた後、熱風炉に入れて120℃で2時間加熱硬化させて前処理を終了した。
【0051】
この試験片を60mm×10mmの大きさのキャビティを有する射出成形金型内にインサートし、30%のグラスファイバー(GF)を含有する6−ナイロン樹脂(商標名)を射出し、上層のコーティング材の上層にナイロン樹脂を熱融着させた。このようにしてポリアミド樹脂と試験片が一体成形されたものを、実施例1と同様にして引っ張り、そのせん断強度を測定した。10個のサンプルで、破壊強度は、平均83ニュートンであった。従って、電子機器の筐体のリブ、区画等の構造としては、使用可能な機械的強度が得られた。
【0052】
(実施例3)
前記実施例1及び2と同様のマグネシウム合金製の試験片に前述した第1塗布物を塗布して、50℃で2時間乾燥させた。この試験片に市販されているポリエステル系ポリマーを含む表面処理用コート剤(商標名:東洋紡バイロン200:東洋紡社製)をイソホロンで希釈したものを第2コーティング材として上塗り塗布した。これを常温下で1時間乾燥させた後、熱風炉に入れて120℃で2時間加熱硬化させて前処理を終了した。
【0053】
この前処理された試験片を60mm×10mmの大きさのキャビティを有する射出成形金型内にインサートし、30%のグラスファイバー(GF)を含有するABS樹脂(商標名JSR−ABS:テクノポリマー製)を射出し、第2コーティング材上層にABS樹脂を熱融着させた。このようにしてABS樹脂と試験片が一体成形されたものを、ABS樹脂と試験片とを同一平面方向に引っ張って金属との一体強度を測定した。10個のサンプルで、せん断破壊強度は、平均127ニュートンであった。従って、電子機器の筐体のリブ、区画等の構造としては、使用可能な機械的強度が得られた。
【0054】
(その他の実施の形態)
前記実施の形態では、金属ケース6は、射出成形によって成形またはプレス加工されたマグネシウム合金であったが、これに限定されるものではない。アルミ、又はアルミ合金製のダイキャスト成形品、又は、アルミ、アルミ合金、ステンレス、一般鋼の切断材であってもよいし、これら材料の板材、薄板材、サンドイッチ型積層材であってもよい。
【0055】
更に、金属ケース6は、射出成形等される前にコーティング材として塗布物が塗布されるが、材質が変わってもこのコーティング材は、必ずしも2層に限る必要はなく、1層であっても良く材料の特性に応じて選択すればよい。また、射出成形される前述した熱可塑性合成樹脂は、例えば25%〜35%程度のグラスファイバー(GF)、炭素繊維(CF)等を混入させたABS/PCアロイ樹脂、PC樹脂を使用すると金属に熱膨張係数が近くなり、ヒートサイクルでの熱ひずみが少なくできるので一体化品の耐久性が確保できる。
【0056】
また、成型される構造物は全て射出により成型されるものでなく、一部(樹脂材と異なる材質のものであってもよい)を金属ケースとともにインサートし一体成形されるもの、あるいは樹脂等によって一体的に接着されるものであってもよい。
【0057】
更に、前記実施の形態では、携帯電話の筐体に適用したものであったが、本発明はモバイルコンピュータ、デジタルカメラ及びハードディスク等の情報通信機器や家庭電化製品等のあらゆる電子機器の筐体に適用できることはいうまでもない。
【0058】
【発明の効果】
以上の詳記したように、本発明の電子機器の筐体とその製造方法は、構造物を形成する熱可塑性合成樹脂と金属製のケースとは容易に剥がれことなく一体になる方法である。
【0059】
必要とする構造物のみ金属ケースに強固に固着するようにしたので、形状、構造上も機械的強度の上でも問題がない経済的に低コストの電子機器の筐体を作ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の筐体を備えた携帯用電話器の正面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線で切断したときのケースカバーの断面図である。
【図3】図3は、金属ケース6の表面に射出成形により熱可塑性合成樹脂が充填される射出成形金型の断面図である。
【図4】図4は、実施の形態2の構造の金属ケースと射出成形金型を示し、射出成形により熱可塑性合成樹脂が充填される前の断面図である。
【図5】図5は、実施の形態3の電子機器の筐体を示す金属ケースの一部断面図である。
【符号の説明】
1…携帯用電話器
2…電話機本体
3…ケースカバー
5…押ボタン
6、12、20…金属ケース
7…リブ(構造物)
11…キャビティ
10…可動側型板
15…固定側型板
30…表皮層
Claims (6)
- 加工された金属ケースと、
前記金属ケースの表面にエポキシ系塗布材を被覆して形成された第1の表皮層と、
前記第1の表皮層の表面にウレタン系、アクリル系、またはポリエステル系の塗布材を被覆して形成された第2の表皮層と、
前記金属ケースの前記第1および第2の表皮層側に、射出成形により前記金属ケースと一体化して成形された樹脂部品とを有し、
前記樹脂部品を構成するために射出される熱可塑性樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたオレフィン系樹脂を含む樹脂であり、
前記第1の表皮層および前記第2の表皮層は、半硬化させた前記第1の表皮層の表面に前記第2の表皮層を形成し、その後、前記第1の表皮層を完全硬化させたものである電子機器筐体。 - 請求項1に記載した電子機器筐体であって、
前記オレフィン系樹脂がエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル―1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体、または、α−オレフィン同士の共重合体である電子機器筐体。 - 請求項1,2のいずれか1項に記載した電子機器筐体であって、
前記不飽和カルボン酸またはその誘導体が、マレイン酸またはその無水物である電子機器筐体。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載した電子機器筐体であって、
前記樹脂部品は、前記熱可塑性樹脂を前記金属ケースの表面の一部にのみ射出して成形されたものである電子機器筐体。 - 金属ケースを含む電子機器筐体の製造方法であって、
前記金属ケースの表面にエポキシ系塗布材を被覆して第1の表皮層を形成する工程と、
半硬化させた前記第1の表皮層の表面にウレタン系、アクリル系、またはポリエステル系の塗布材を被覆して第2の表皮層を形成する工程と、
前記第2の表皮層を形成した後、前記第1の表皮層を完全硬化させる工程と、
前記金属ケースを射出成形金型にインサートする工程と、
前記金属ケースの前記第1および第2の表皮層側に前記金属ケースと一体化した樹脂部品を成形するための前記射出成形金型に、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル樹脂およびABS樹脂から選択される一種以上の熱可塑性樹脂に変性α−オレフィン樹脂を含有した樹脂を射出する工程とを有し、
前記変性α−オレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたオレフィン系樹脂である電子機器筐体の製造方法。 - 請求項5に記載した電子機器筐体の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂に含まれる変性α−オレフィン樹脂の量が、5〜100%である電子機器筐体の製造方法。
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