近年携帯電話を筆頭とする携帯機器に対し、多機能化が望まれている。特にデジタル地上波放送の開始などにより、携帯電話でテレビ放送を視聴するという新たな要求が出てきた。しかしながら、本発明のような携帯機器において携帯電話用のアンテナと、テレビ放送受信用のアンテナとを別々に準備することは、携帯機器の重量を重くするとともに、サイズも大きくなるので、携帯性を悪くしてしまうこととなる。
また、一般にテレビ放送を受信するためのロッドアンテナは、受信するテレビ放送信号の波長の1/4波長の長さとする。つまり、VHF放送(例えば国内VHF7ch)を受信するためには約40cmの長さのアンテナが必要であった。しかしながら、このような長さのロッドアンテナを携帯機器に用いた場合、携帯には非常に不便になり、携帯機器としては実用的ではない。従って本発明は、携帯電話用に準備されたアンテナをテレビ受信用にも用いることで携帯性の良い携帯受信装置を提供するものである。
(実施の形態1)
以下、本実施の形態1について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態1における携帯受信装置のブロック図である。なお本実施の形態1において従来と同じものについては同じ番号を付し、その説明は簡略化している。
図1において、1は携帯電話用のアンテナであり、携帯電話信号である約820MHz〜900MHzの高周波信号を受信するためのものである。そのためこのアンテナ1は、携帯電話信号の波長の略1/4波長の長さである約70mmとすることで、携帯電話信号に対して50オームのインピーダンスとしている。
なお、本発明においてアンテナ1は、UHF放送帯域(第1の周波数帯域の一例として用いた。)とVHF放送帯域(第2の周波数帯域の一例として用いた。)とのテレビ放送を受信するためにも使用される。つまりこのアンテナ1には、VHF放送の下限周波数からUHF放送の上限周波数までの周波数帯域(約50MHzから約770MHzの周波数)、のテレビ放送信号と、約820〜900MHzの携帯電話信号との高周波信号が入力されることとなる。
21はアンテナ1に入力された信号が入力される分波器22(整合装置の一例として用いた)の入力端子である。23は入力端子21へ入力された信号の中から携帯電話信号を出力する電話信号出力端子である。そしてこの電話信号出力端子23の出力が送受信器24に接続される。
なお、この送受信器24は、電話信号出力端子23からの携帯電話信号が供給されるディプレクサ25と、このディプレクサ25の出力25bに接続される受信器26と、ディプレクサ25の入力に接続された送信器27とから構成されている。
そしてこの送信器27の入力と受信器26の出力には信号処理部28が接続され、この信号処理部28には、マイク29とスピーカ30(音声出力器の一例として用いた)と、液晶パネル31ならびに複数のデータ入力キー32などが携帯受信装置の入出力インターフェイスとして接続されている。
一方、分波器22のテレビ放送信号出力端子33(出力端子の一例として用いた)からは、テレビ放送信号が出力される。そして、このテレビ放送信号出力端子33と信号処理部28との間には電子チューナ34が挿入される。そしてこの電子チューナ34では入力されたテレビ放送信号をVHFローバンドと、VHFハイバンドと、UHFバンドの3つの周波数帯域に分けて処理し、受信したいテレビ放送信号を選局して出力する。
次に、電子チューナ34の詳細について図面を用いて説明する。図2は、本実施の形態1における電子チューナのブロック図である。なお、この電子チューナ34は、VHF帯、UHF帯の信号を受信するものである。
図2において、127は、分波器22の出力端子33に接続されるチューナの入力端子である。この入力端子127は、UHF帯の信号を減衰するローパスフィルタ128とVHF帯の信号を減衰させるハイパスフィルタ129に接続されている。前記ローパスフィルタ128の一方の出力は、VHFローバンド帯信号受信部130に供給され、ローパスフィルタ128の他方の出力は、VHFハイバンド受信部131に供給される。一方ハイパスフィルタ129の出力は、UHF帯信号受信部132に接続され、このUHF帯信号受信部132の出力と、VHFローバンド帯信号受信部130の出力と、VHFハイバンド帯信号受信部131の出力とがチューナ出力端子126へ接続されている。
なお、VHFローバンド帯信号受信部130は、フィルタ128に接続されるとともに一つの同調回路によって構成された単同調型のフィルタ141と、この単同調型フィルタ141の出力が接続された高周波増幅器142と、この高周波増幅器142の出力が接続されると共に、二つの同調回路によって構成された複同調型フィルタ143と、この複同調型フィルタ143の出力がその一方の入力に接続されると共に他方の入力には第1の局部発振器144の出力が接続される第1の混合器145とから形成されている。
VHFハイバンド帯信号受信部131やUHF帯信号受信部132についてもVHFローバンド帯信号受信部130同様の構成となっており、まずVHFハイバンド帯信号受信部131では、単同調型のフィルタ146と、高周波増幅器147と、複同調型フィルタ148と、第2の局部発振器149に接続された第2の混合器150とがこの順に接続されている。また、UHF帯信号受信部132では、単同調型のフィルタ151と、高周波増幅器152と、複同調型フィルタ153と、第3の局部発振器154に接続された第3の混合器155とがこの順に接続されている。
次に、分波器22について図1を用いて、詳細に説明する。まず41は、入力端子21と電話信号出力端子23との間に接続されたキャパシタである。そしてこのキャパシタ41は、入力端子21へ入力された携帯電話信号を電話信号出力端子23へ通過させる。つまり、キャパシタ41のインピーダンスは、携帯電話信号よりも低い周波数であるテレビ放送信号に対して大きくしているので、テレビ放送信号はキャパシタ41を通過し難くなっている。従って、携帯電話信号出力端子23からは携帯電話信号が主に出力される。なお、本実施の形態1においてこのキャパシタ41の値は4pFとしている。
一方入力端子21とテレビ放送信号出力端子33との間には、インダクタ42と、DCカット用コンデンサ43と、整合器44と増幅器45とが入力端子側よりこの順序で接続されている。なお、増幅器45は、その制御端子45aでオン・オフされる。ここで、整合器44と電子チューナ34との間に増幅器45が挿入されているので、整合器44は入力インピーダンス値が安定した増幅器45に対して整合が取れれば良い。従って整合が取り易くなる。また、電子チューナ34のインピーダンス変動による影響も受け難くなり、安定した受信をすることができる。
なお、この増幅器45と整合器44の出力端子62とは、近接して配置することが望ましい。これは、整合器44の出力端子62と増幅器45との間の接続が短くなり、整合器44と増幅器45との間での不要なインダクタンス成分などの発生が少なくでき、整合器44と増幅器45との整合を合わせ易くできる。
次に、47と46は、インダクタ42とDCカット用コンデンサ43の接続点とグランドとの間に挿入されたダイオードであり、入力端子21に入力される静電気などの大きな電圧をグランドへと流し、送受信器24や電子チューナ34の破壊を防止するためのものである。なお、これらのダイオード47と46とは、正の電圧と負の電圧の双方の電圧を共にグランドへ接地するために、互いに逆極性となるように接続されている。
次に、整合器44について詳細に説明する。61は整合器44の入力端子であり、DCカット用コンデンサ43に接続されている。一方62は整合器44の出力端子であり、増幅器45の入力に接続される。そして、これら入力端子61と出力端子62との間には、キャパシタ63とキャパシタ64とが入力端子側より順に直列接続される。
また、入力端子61とグランドとの間には、インダクタ65(第3のインダクタの一例として用いた)と、2つのインダクタ66a(第5のインダクタの一例として用いた)、66b(第6のインダクタの一例として用いた)の直列接続体66(第4のインダクタの一例として用いた)とが接続されている。そしてこの直列接続体66とインダクタ65との直列接続体とによって、第1のインダクタを構成している。そして、インダクタ65とインダクタ66との間の接続点68とグランドとの間には、制御端子69へ供給される電圧によってオン・オフするダイオードを用いたスイッチ70(切り替え手段の一例として用いた)が接続されている。
また、キャパシタ63とキャパシタ64との接続点71(第2の接続点の一例として用いた)とグランドとの間には、インダクタ72(第2のインダクタの一例として用いた)とキャパシタ73(第2のキャパシタの一例として用いた)とが直列に接続されている。なお、ここでこのインダクタ72の自己共振周波数は携帯電話信号の周波数よりも高いものを用いている。つまり、このインダクタ72はテレビ放送信号に対しても携帯電話信号に対してもインダクタンス性を示すこととなる。従って、このインダクタ72とキャパシタ73とによってトラップが形成される。そこで、本実施の形態1においてこれらの定数を適宜選定し、トラップ周波数が携帯電話信号の周波数となるようにしてある。
なおここで、インダクタ72は22nHであり、キャパシタ73は1pFとすることで、約850MHzの周波数にトラップが形成され、携帯電話信号が出力端子62側へ流れることを阻止する。
次に図3は、本実施の形態に使用されるインダクタのリアクタンス特性の概念図であり、図3(a)はインダクタ65のリアクタンス特性であり、図3(b)はインダクタ65と直列接続体66との合成リアクタンス特性を示している。この図において横軸171は周波数であり、縦軸172はリアクタンスである。そして、そのプラス方向がインダクタンス性を示し、マイナス方向がキャパシタンス性を示す。
ここで本実施の形態1においては、図3(a)に示されるように、インダクタ65は、VHFローバンドの周波数帯域173とVHFハイバンドの周波数帯域174においては、インダクタンス性を示し、UHF帯の周波数帯域175および携帯電話信号の周波数帯域178に対してキャパシタンス性を示すものである。つまりこれは、インダクタ65の自己共振周波数176を、VHFハイバンドの周波数帯域174の最も高い周波数174a(以降VHFハイのハイエンドと言う)と、UHF帯の周波数帯域175の最も低い周波数175a(以降UHF帯のローエンドと言う)との間とすることによって実現している。
一方、図3(b)に示されるように、インダクタ65と66の合成リアクタンスは、VHFローバンドの周波数帯域173において、インダクタンス性を示し、UHF帯の周波数帯域175および携帯電話信号の周波数帯域178においてはキャパシタンス性を示す。つまりこれは、インダクタ65と66との合成自己共振周波数177を、VHFローバンド帯の周波数帯域173の最も高い周波数173a(以降VHFローのハイエンドと言う)とUHF帯のローエンド175aとの間とすることによって実現している。これらの受信周波数と夫々のインダクタとの関係をまとめると(表1)に示されるようになっている。
次に、以上のように構成された本実施の形態1における分波器とこれに用いた整合器の動作について図面を用いて説明する。まず、整合器44の受信時における動作について説明する。図4から図7は、夫々整合器の等価回路図を示し、図4はVHFローバンド帯の信号を受信する場合であり、図5はVHFハイバンド帯の信号を受信する場合であり、図6、図7はUHF帯の信号を受信する場合を示している。
そして本実施の形態1における整合器44は、VHFローバンドを受信する場合には、スイッチ70をオフとし、VHFハイバンドを受信する場合には、スイッチ70をオンとする。なお、UHF帯の信号を受信する場合は、スイッチ70はオン、オフの特にどちらでも構わない。なお、本実施の形態1においては、スイッチ70をオンとした場合に、UHFを受信するようにしてある。
そこでまずは、整合器44にてVHFローバンドを受信する場合について図4を用いて説明する。VHFローバンドを受信する場合は、スイッチ70(図1)がオフとなるので、入力端子61とグランドとの間にはインダクタ65とインダクタ66との直列接続体が挿入されることとなる。そして、それらのインダクタは直列に接続されているので、それらの合成インダクタンスは大きくなり、VHFローバンドの低い周波数に対し整合を合わせることができる。
次に、VHFハイバンドの受信時について図5を用いて説明する。VHFハイバンドの受信時にはスイッチ70がオンとなるので、インダクタ65がグランドに直結される。これにより図5に示されるように、入力端子61とグランドとの間にはインダクタ65のみが挿入されることとなる。従って、VHFハイバンドの受信時には、インダクタンスは小さくなり、VHFハイバンドの周波数に対して整合を合わせることができる。
最後に、UHF帯の信号の受信時について図6を用いて説明する。図6は、スイッチ70がオフのときにUHF帯の信号を受信する場合の等価回路図であり、図7は、スイッチ70がオンのときにUHF帯の信号を受信する場合の等価回路図である。図3に示したように全てのインダクタ65,66は、UHF帯の信号に対してキャパシタンス性を示す。従ってUHF帯の信号の受信時には、入力端子61とグランドとの間には、図6あるいは図7に示されるように、それぞれキャパシタンス成分が挿入された回路となる。これによりUHF帯の信号を受信したときに、この整合器44はキャパシタンス成分のみによって形成されたものとして扱うことができることとなる。
なお、図3(a)、図3(b)に示されたように、インダクタ65,66はUHF帯以上の周波数に対してキャパシタンス性を示すので、携帯電話信号の周波数帯域178に対してもキャパシタンス性を示すこととなる。
また、本実施の形態1においては、スイッチ70がオンのときにUHF帯の信号を受信するようにしてある。これにより、入力端子61とグランドとの間には、インダクタ65によるキャパシタンス成分190が挿入されたこととなる。そして、この場合、インダクタ65の自己共振周波数176は、VHFハイのハイエンド174aとUHF帯のローエンド175aとの間としておくと良い。
さらに、スイッチ70がオフのときにUHF帯の信号を受信しても良く、その場合には図6に示されるように、入力端子61とグランドとの間にインダクタ65によるキャパシタンス成分181とインダクタ66によるキャパシタンス成分182との直列接続体が挿入されることとなる。なお、この場合においては、インダクタ65の自己共振周波数176、インダクタ66の自己共振周波数177共に、VHFローのハイエンド173aとUHF帯のローエンド175aとの間に設けておくと良い。つまりいずれの場合も、通過するインダクタの共振周波数が受信する周波数帯域内に入らないようにすることが重要である。
ここで、VHFハイバンドの整合が小さなインダクタで可能であり、自己共振周波数がUHF帯のローエンドより高くなる場合は、スイッチ70がオフのときにUHF帯の信号を受信する。
次に、このように構成された整合器44がテレビ放送信号に対して整合する動作について図を用いて説明する。図8は、VHF帯の信号受信時の本実施の形態1におけるアンテナ1と整合器44とのスミスチャートであり、円の上側半分はインダクタンス性であり、下側半分はキャパシタンス性を示し、その中心点は増幅器45のインピーダンス値と等しくしてある。
まず図8において、201は、VHFローバンドに対するアンテナ1のインピーダンスを示し、202はVHFハイバンドに対するアンテナ1のインピーダンスを示している。ここで、アンテナ1は、長さ70mmの棒状アンテナであるので、受信信号のλ/4に比べてその電気長は非常に短く、そのインピーダンス抵抗分201,202は非常に小さくなる。例えば、VHFハイバンドの最も高いチャンネルの周波数でも、その波長は1300mmであるので、アンテナの電気長はλ/4よりも短くなり、インピーダンス202は小さくなる。さらにも増して、VHFローバンドの最も低いチャンネルの周波数における波長の長さが、3330mmであるので、そのインピーダンスはさらに小さくなり、図8に示されるようにVHFバンドの最も低い周波数におけるインピーダンス203は非常に小さくなる。
つまりアンテナ1と増幅器45とを直接に接続すると、その間のインピーダンスが合わず、信号が減衰してしまうこととなる。そこで、本発明における整合器44は、キャパシタ63,64やインダクタ65,66を整合用のインピーダンス素子として用い、信号の波長が長くインピーダンスが合わないような周波数の信号に対して、アンテナ1と増幅器45とを整合させるものである。
そのためには、整合器44の入力側インピーダンス値を略アンテナ1のインピーダンスと合わせる訳である。その場合、整合器44の入力側インピーダンス値をアンテナ1のインピーダンスに対して、複素数域(アンテナ1のインピーダンス201,202に対して軸204を挟んで略対称となる値)とすることが必要である。そこでまず図8のように、VHFハイバンドにおける整合器44のインピーダンス205がアンテナ1のインピーダンス202と合うように、インダクタ65の値を決定する。そして次に、VHFローバンドにおける整合器44のインピーダンス206がアンテナ1のインピーダンス201と合うように、インダクタ66の値を決定する。続いて出力端子におけるインピーダンスが、VHFローバンドとVHFハイバンドの周波数に対して増幅器45の入力インピーダンス(図8の中心点)に近づくように、キャパシタ63,64の値を適宜選定する。
ここで、アンテナ1のインピーダンスと整合器44のインピーダンスとの整合をとるために、アンテナ1と整合器44とのインピーダンスは夫々複素領域となるようにする訳であるが、そのために、アンテナ1自体が有した非常に微少な抵抗値と整合器44の抵抗成分とを略同じとすることで夫々のインピーダンスを略同じ値としている。そこで、本実施の形態1においては、インダクタ65やインダクタ66を構成するインダクタ自体が有する微少な抵抗成分による抵抗値をアンテナ自体が有した抵抗値とを略同じにするものである。
なお、インダクタ65やインダクタ66に用いる素子の種類や、数あるいはそれらを構成する回路などを適宜選択してやれば、整合器44の抵抗値をアンテナ1の抵抗値と略等しくすることができる。これにより、受信する高周波信号の波長の4分の1波長よりも十分に短いアンテナ1に対しても整合を取ることができることとなる。従って、VHFローバンドのような低い周波数の受信に対しても、携帯電話信号用に用いるアンテナ1を共有することができる。
ここで、この整合器44の各素子によるインピーダンス変化について、以下VHFローバンドの最も低い周波数(以降VHFローのローエンドと言う)とVHFハイのハイエンドを例にとって説明する。まずVHFローのローエンドに関しては、整合器44の入力端子61から見たインピーダンスは、インダクタ65とインダクタ66との合成インダクタンスによってインピーダンス値207となり、次にキャパシタ63,64によって中心210に近いインピーダンス211へ変化させるものである。
次に、VHFハイバンドを受信する場合には、入力端子61とグランド間にインダクタ65のみが挿入されるので、VHFローバンド受信時に比べそのインダクタンス値は小さくなる。従って、VHFハイのハイエンド受信時には、入力側のインピーダンスはインピーダンス値212となり、アンテナ1のVHFハイのハイエンドにおけるインピーダンス213と略整合が取れることとなる。次にキャパシタ63,64によって中心210に近いインピーダンス216へ変化させるものである。
最後にUHF帯の信号の受信時について図9を用いて説明する。図9において、220はUHF帯の信号を受信する場合のアンテナ1のインピーダンスである。このようにUHF帯の最も高い周波数(UHF帯のハイバンド)近傍では、アンテナ1の電気長がλ/4に近くなるので、アンテナ1のインピーダンスは、インダクタンス性を示す。そしてUHF受信時に整合器44の各インダクタは全てキャパシタンス性を示すので、整合器44のインピーダンスをアンテナ1のインピーダンスの複素数領域に近づけ易くなる。
なお、UHF帯のローエンド近傍においては、アンテナ1と整合器44のインピーダンスは共にキャパシタンス性を示すので、整合は取れない。しかしコンデンサによるインピーダンスは周波数の大きさに反比例するので、UHF帯の信号に対してキャパシタンス成分のみで構成された整合器44は、インピーダンスが小さくなり、信号のロスを小さくすることができる。
なお、本実施の形態1において、インダクタ65は82nHであり、インダクタ66aは120nHであり、インダクタ66bは、120nHであり、キャパシタ63を22pFとし、キャパシタ64を27pFとすることによってアンテナ1に対して、VHFローバンドとVHFハイバンドの双方に対して整合が取れるとともに、UHF帯の信号のロスが小さな整合器を実現している。
以上の構成によって、VHF帯の信号受信時におけるアンテナ1から見た整合器44のインピーダンスを、各バンドに対するアンテナ1のインピーダンスと合わせることができ、かつ増幅器45から見た整合器44のインピーダンスも近くすることができる。そして、増幅器45の出力インピーダンスは約75オームであり、電子チューナ34の入力インピーダンスも約75オームであるので、分波器22と電子チューナ34とを整合させることができ、信号の損失を小さくすることができる。
つまり本整合器44は、VHF帯のローバンドとVHF帯のハイバンドの2回路の切り替えによって、VHF帯のローバンドとVHF帯のハイバンドとの夫々に対して整合が取れると共に、UHF帯の信号に対してはキャパシタンス性となるので、夫々の帯域の信号に対する損失は小さくなる。従って整合器44は、非常に簡単な回路構成によって、各バンドの信号を電子チューナ34へ信号をロスなく伝達することができる小型かつ低価格な整合器を実現することができることとなる。
そしてこのような整合器44を用いた分波器22における分波動作について以下に説明する。本実施の形態1における分波器22は、整合器44の入力端子61と分波器22の入力端子21との間にインダクタ42が挿入される。
これによって、まずスイッチ70がオフである場合には、インダクタ65と直列接続体66とは携帯電話に対してキャパシタンス性を示すので、インダクタ42とこれらインダクタ65と直列接続体66によってローパスフィルタを構成させることができる。一方、スイッチ70がオンである場合においても、インダクタ65はキャパシタンス性を示すので、携帯電話信号に対してインダクタ42とこのインダクタ65とでやはりローパスフィルタを構成することができる。
そして、インダクタ42、インダクタ65や直列接続体66のインダクタンス値を適宜選定し、ローパスフィルタのカットオフ周波数を携帯電話信号の周波数帯域とテレビ放送信号の周波数帯域との間の周波数としてやれば、携帯電話信号は通過させないで、テレビ放送信号を通過させることができるので、テレビ放送信号出力端子33からテレビ放送信号を出力する分波器22を実現することができる。
なお、本実施の形態1においては、インダクタ42の値を15nHとしておくことで、UHF帯の周波数は通過させ、携帯電話信号が減衰域となるローパスフィルタが構成できる。
以上の構成により、インダクタ65、直列接続体66は携帯電話信号に対してキャパシタンス性を示すので、インダクタ42を接続することによってローパスフィルタを形成することができる。従って、このローパスフィルタは携帯電話信号に対するインピーダンスは大きくなるが、テレビ放送信号に対してはインピーダンスは小さくなる。従って、この分波器22はテレビ放送信号をテレビ放送信号出力端子33側へ供給することができるとともに、携帯電話信号は通過させないものとなる。
さらに、テレビ放送信号は、携帯電話信号の周波数帯域より低い周波数であるので、テレビ放送信号に対しキャパシタ41によるインピーダンスは大きくなる。一方、整合器44の動作によって、テレビ放送信号に対してアンテナ1と増幅器45や電子チューナ34と整合を取ることができるので、テレビ放送信号に対して整合器44側のインピーダンスは小さくできる。
以上のような構成によってテレビ放送信号の受信の有無や受信する周波数帯域に係わらず、アンテナ1で受信した携帯電話信号は電話信号出力端子23を介して受信器26へ供給されるとともに、送信器27から入力される携帯電話信号はアンテナ1側へ供給される。一方テレビ放送信号は、携帯電話信号の送受信に係わらずテレビ放送信号出力端子33側へ出力させることができる。
これにより、波長が長く周波数の低いテレビ放送信号の受信に対して、波長が短く周波数が高い携帯電話信号を受信するために用いる短い長さのアンテナ1をひとつ準備すれば良いので、携帯性に優れた携帯受信装置を提供することができる。
また、テレビ放送信号に対しては、電話信号出力端子23側のインピーダンスに比べて、テレビ放送信号出力端子33側のインピーダンスは小さくなる。従って、テレビ放送信号は整合器44側へ流れることとなり、この分波器22におけるテレビ放送信号の損失は小さくなる。逆に携帯電話信号に対しては、テレビ放送信号出力端子33側のインピーダンスに比べて、電話信号出力端子23側のインピーダンスが小さくなる。従って、携帯電話信号は整合器44側に流れにくくなり、この分波器22における携帯電話信号の損失は小さくできる。
さらにまた、入力端子21と電話信号出力端子23との間にはキャパシタ41が設けられているだけであるので、テレビ放送信号に受信の有無に係わらず送信や受信が可能となる。
また、この分波器22でVHFローバンドを受信する場合にはVHFハイバンドの信号に対しては整合が取れないので、VHFローバンドを受信する場合にはVHFハイバンドの信号は通過し難くなる。逆にVHFハイバンドを受信する場合にはVHFローバンドの信号に対して整合は取れないので、VHFハイバンドを受信する場合にはVHFローバンドの信号は通過し難くなる。つまり、電子チューナ34のローパスフィルタ128の前に整合器44が接続されることによって、単同調フィルタ141,146や複同調フィルタ143,148,153等の入力フィルタの減衰特性を緩和することができ、これらの入力フィルタを簡素化することもできる。従って電子チューナ34の低価格化が実現できるとともにアンテナ1に入力された信号を電子チューナ34へロスなく取り込むことができる。
さらに、本実施の形態1における分波器22を用いれば、4分の1波長よりも十分に短いアンテナに接続しても整合を取ることができるので、小型のアンテナ1を使用することができ、さらに携帯性の良い携帯受信装置を実現することができる。
さらにまた、スイッチ70は信号路上に設けられていないので、このスイッチ70による信号のロス等は発生しない。
(実施の形態2)
以下本実施の形態2について図を用いて説明する。図10は、本実施の形態2における携帯受信装置のブロック図である。なお、図10において図1と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。なお、本実施の形態2においては、FM放送とテレビ放送の双方の受信と、携帯電話による通信とに対応可能な分波器を提供するものであり、アンテナ1にはテレビ放送信号と約850MHzの携帯電話信号以外に76MHzから108MHzのFM放送信号も入力される。
本実施の形態2において、アンテナ1は、分波器310(整合装置の一例として用いた)の入力端子311に接続され、携帯電話信号は電話信号出力端子312から出力される。そしてこの電話信号出力端子312が送受信器24へ接続され、携帯電話信号が供給される。そして、送受信器24には信号処理部28が接続される。一方、分波器310のテレビ放送信号出力端子324(出力端子の一例として用いた)の出力は、電子チューナ34とFMチューナ313とへ接続される。そしてこれら電子チューナ34の出力とFMチューナ313の出力が信号処理部28に接続される。なお、この信号処理部28には入力装置としてマイク29と入力キー32、そして出力装置としてスピーカ30と液晶パネル31とに接続されている。
従って、本実施の形態2においては、FM放送信号も受信するために、入力端子311には、FM放送の76MHzから携帯電話信号の約850MHzの高周波信号が供給されることとなる。
次に本実施の形態2におけるFMチューナ313について説明する。314はテレビ放送出力端子324に接続されるFM入力端子である。そして、315は、FM入力端子314に接続されたローパスフィルタである。このローパスフィルタ315は、FM放送の信号を通過させるものである。
316はローパスフィルタ315の出力に接続された増幅器であり、317はその一方の入力に増幅器316の出力が接続されると共に、他方の入力に局部発振器318の発振信号が入力される混合器である。そしてこの混合器317でFM放送信号を中間周波数信号へ変化し、FM放送信号出力端子319より信号処理部28へ信号を供給している。
次に本実施の形態2における分波器310は、入力端子311と電話信号出力端子312との間にキャパシタ313が挿入される。そしてさらに、入力端子311とテレビ放送信号出力端子324との間に、インダクタ315と整合器323とが直列に接続されている。なおここで、インダクタ315と整合器323とは入力端子311側よりこの順に接続されている。
次に、この整合器323について詳細に説明する。322は、整合器323の入力端子であり、324がこの整合器323の出力端子である。この出力端子324には電子チューナ34が接続され、この電子チューナ34によって希望チャンネルのみを選局し、国内chでは58.75MHz、米国chでは45.75MHzの中間周波数信号へ変換し、信号処理部28へ供給する。
360は、整合器323の入力端子322に接続されたキャパシタであり、このキャパシタ360と出力端子324との間に、キャパシタ361が挿入される。そして、入力端子322とグランドとの間にはインダクタ362(第1のインダクタの一例として用いた)が設けられ、キャパシタ360とキャパシタ361の接続点380とグランドとの間には、インダクタ365(第2のインダクタの一例として用いた)が挿入されている。そして、インダクタ362は、インダクタ362a(第3のインダクタの一例)とインダクタ362b(第4のインダクタの一例)との直列接続体であり、インダクタ362aが入力端子322側に設けられている。なお、インダクタ362aとインダクタ362bとの接続点363とグランドとの間にはスイッチ364(切り替え手段の一例として用いた)が挿入されている。
一方、インダクタ365は、インダクタ365a(第6のインダクタンスの一例として用いた)とインダクタ365b(第7のインダクタンスの一例として用いた)との直列接続体であり、インダクタ365aがキャパシタ360側に設けられている。そして、インダクタ365aとインダクタ365bとの接続点366とグランドとの間には、スイッチ367(切り替え手段の一例として用いた)が挿入されている。
なお、これらスイッチ364とスイッチ367とは、整合器323に設けられた制御端子368に接続され、これらのスイッチ364とスイッチ367のオン・オフは、共に連動して動作するようになっている。
次に図11は、本実施の形態に使用されるインダクタのリアクタンス特性の概念図であり、図11(a)はインダクタ362aあるいはインダクタ365aのリアクタンス特性であり、図11(b)はインダクタ362bあるいはインダクタ365bのリアクタンス特性を示している。この図において横軸371は周波数であり、縦軸372はリアクタンスであり、そのプラス方向がインダクタンス性を示し、マイナス方向がキャパシタンス性を示す。
ここで本実施の形態2においては、図11(a)に示されるように、インダクタ362aとインダクタ365aとは、FM放送の周波数帯域372とVHFローバンドの周波数帯域373とVHFハイバンドの周波数帯域374においては、インダクタンス性を示し、UHF帯の周波数帯域375と携帯電話信号の周波数帯域371に対してキャパシタンス性を示すものである。つまりこれは、インダクタ362aとインダクタ365aを、それらの自己共振周波数377がVHFハイバンドの周波数帯域374の最も高い周波数374a(以降VHFハイのハイエンドと言う)とUHF帯の周波数帯域375の最も低い周波数375a(以降UHF帯のローエンドと言う)との間となるようにすることによって実現している。
一方、図11(b)に示されるように、インダクタ362bとインダクタ365bとは、FM放送の周波数帯域372とVHFローバンドの周波数帯域373において、インダクタンス性を示し、UHF帯の周波数帯域375と携帯電話信号の周波数帯域371においてはキャパシタンス性を示す。つまりこれは、インダクタ362bとインダクタ365bとの自己共振周波数378が、VHFローバンド帯の周波数帯域373の最も高い周波数373a(以降VHFローのハイエンドと言う)とUHF帯のローエンド375aとの間となるようにすることによって実現している。これらの受信周波数と夫々のインダクタとの関係をまとめると(表2)に示されるようになっている。
次に、以上のように構成された本実施の形態2における整合器323の受信時の動作について説明する。図12から図15は、整合器323の等価回路図を示し、図12はVHFローバンド帯の信号を受信する場合であり、図13はVHFハイバンド帯の信号を受信する場合であり、図14、図15はUHF帯の信号を受信する場合を示している。
そして本実施の形態2における整合器323は、(表3)に示されるように、FM放送あるいはVHFローバンドを受信する場合には、スイッチ364(SW1)とスイッチ367(SW2)とを共にオフとし、VHFハイバンドを受信する場合には、スイッチ364(SW1)とスイッチ367(SW2)とを共にオンとする。なお、UHF帯の信号を受信する場合や携帯電話信号で通信する場合には、スイッチ364(SW1)とスイッチ367(SW2)とは、オン、オフの特にどちらでも構わない。
なお、本実施の形態2においては、スイッチ364(SW1)とスイッチ367(SW2)とを共にオンとした場合に、UHFを受信するようにしてある。
そこでまずは、整合器323にてFM放送あるいはVHFローバンドを受信する場合について図12を用いて説明する。FM放送あるいはVHFローバンドを受信する場合は、図12に示すように、入力端子322とグランドとの間にはインダクタ362aとインダクタ362bとの直列接続体が挿入され、一方接続点380とグランドとの間には、インダクタ365aとインダクタ365bとの直列接続体が挿入されることとなる。そして、それぞれのインダクタは直列に接続されているので、それらの合成インダクタンスは大きくなり、FM放送やVHFローバンドの低い周波数に対して整合を合わすことができる。
次に、VHFハイバンドの受信時について図13を用いて説明する。この場合、インダクタ362aとインダクタ365aとは共にグランドに直結される。これにより、VHFハイバンドの受信時には、インダクタンスは小さくなり、VHFハイバンドの周波数に対して整合を合わせることができる。
そして最後に、UHF帯の信号の受信時について図14と図15を用いて説明する。図14は、スイッチ364,367がオフのときにUHF帯の信号を受信する場合の等価回路図であり、図15は、スイッチ364,367がオンのときにUHF帯の信号を受信する場合の等価回路図である。全てのインダクタは図11に示されたように、UHF帯の信号に対してキャパシタンス性を示す。これによりUHF帯の信号を受信時に、この整合器323はキャパシタンス成分のみによって形成されたものとして扱うことができることとなる。
なお、本実施の形態2においては、スイッチ364,367がオンのときにUHF帯の信号を受信するようにしてあるが、この場合入力端子322とグランドとの間には、インダクタ362aによるキャパシタンス成分390が挿入されたこととなり、接続点380とグランドとの間には、インダクタ365aによるキャパシタンス成分391が挿入されたこととなる。なおこの場合には、インダクタ362aと、365aそれぞれの自己共振周波数377を、VHFハイのハイエンド374aとUHF帯のローエンド375aとの間に設ければ良い。
また、スイッチ364,367がオフのときにUHF帯の信号を受信する場合は、図14に示されるように、入力端子322とグランドとの間には、インダクタ362aによるキャパシタンス成分381と、インダクタ362bによるキャパシタンス成分382との直列接続体が挿入される。また、接続点380とグランドとの間には、インダクタ365aによるキャパシタンス成分383と365bによるキャパシタンス成分384との直列接続体が挿入される。なお、この場合においては、インダクタ362a,362b及び、インダクタ365a,365bのそれぞれの自己共振周波数は、VHFローのハイエンド373aとUHF帯のローエンド375aの間に設けておけば良い。
ただしここで、いずれの場合においても、インダクタの自己共振周波数は、受信する周波数帯域内に入らないようにすることが重要である。
次に、このように構成された整合器323における整合動作について図面を用いて説明する。図16は、VHF帯の信号受信時の本実施の形態2におけるアンテナ1と整合器323のスミスチャートであり、図17は、UHF帯の信号受信時の本実施の形態2におけるアンテナ1と整合器323のスミスチャートである。図16、図17において、円の上側半分はインダクタンス性であり、下側半分はキャパシタンス性を示している。本実施の形態2においては、整合器323の下流にはその入力インピーダンスが約75オームの電子チューナ34が接続される。従って、図16、図17における中心点410は75オームである。
まず図16において、401は、FM放送とVHFローバンドに対するアンテナ1のインピーダンスを示し、402はVHFハイバンドに対するアンテナ1のインピーダンスを示している。ここで、アンテナ1の長さは受信信号のλ/4に比べてその電気長は非常に短いので、そのインピーダンス抵抗分401,402は非常に小さくなる。一方、電子チューナ34の入力は75オームであるので、この電子チューナ34を直接アンテナ1と接続すると、インピーダンスが合わないので、信号は減衰する。そこで、本発明ではこのようにキャパシタ360,361やインダクタ362a,362b,365a,365bを整合用のインピーダンス素子として用い、アンテナ1と電子チューナ34と整合させている。
そのためには、整合器323入力側のインピーダンス値をアンテナ1のインピーダンスの複素数域とすることが必要である。そこでまず図16のように、VHFハイバンドにおける整合器323のインピーダンス405がアンテナ1のインピーダンス402と合うように、インダクタ362aの値を決定する。そして次に、VHFローバンドにおける整合器323のインピーダンス406がアンテナ1のインピーダンス401と合うように、インダクタ362bの値を決定する。続いて出力端子におけるインピーダンスが、VHFローバンドとVHFハイバンドの周波数に対して略75オーム(図16の中心点)に近づくように、キャパシタ360、キャパシタ361と、インダクタ365a,365bの値を適宜選定する。
ここで、この整合器323の各素子によるインピーダンス変化について、以下FM放送のローエンドとVHFハイのハイエンドを例にとって説明する。まずFM放送のローエンドに関しては、インダクタ362aとインダクタ362bとの合成インダクタンスによってインピーダンス値407となり、次にキャパシタ360によってインピーダンス408へと変化させ、インダクタンス365aとインダクタンス365bとの合成インダクタンスによってインピーダンス409へと変化させ、最後にキャパシタ361によって75オームである中心410に近いインピーダンス411へ変化させるものである。
次に、VHFハイバンドを受信する場合には、入力端子322とグランド間にインダクタ362aのみが挿入されるので、VHFローバンド受信時に比べそのインダクタンス値は小さくなる。従って、VHFハイのハイエンド受信時には、入力側のインピーダンスはインピーダンス値412となり、アンテナ1のVHFハイのハイエンドにおけるインピーダンス413と略整合が取れることとなる。次にキャパシタ360によってインピーダンス414へと変化させ、インダクタ365aによってインピーダンス415へと変化させ、最後にキャパシタ361によって75オームである中心410に近いインピーダンス416へ変化させるものである。
この構成によりインダクタ365によってFM放送やVHFローバンドとVHFハイバンドの双方の信号に対し電子チューナ34との整合を確りと取ることができる。従ってさらにテレビ放送信号受信時の信号の損失を小さくすることができる。
最後にUHF帯の信号の受信時について図17を用いて説明する。図17において、420はUHF帯の信号を受信する場合のアンテナ1のインピーダンスであり、401はFM放送を受信する場合のアンテナ1のインピーダンスである。UHF帯の最も高い周波数(UHF帯のハイエンド)近傍では、アンテナ1の電気長は1/4波長の長さに近くなるので、整合器323のインピーダンスをアンテナ1のインピーダンスの複素数領域に近づけ易くなる。一方、UHF帯のローエンド近傍においては、キャパシタンス成分のみで構成された整合器323に対するインピーダンスは小さくなり、信号のロスは小さくなる。
以上の構成によって、VHF帯の信号受信時におけるアンテナ1から見た整合器323のインピーダンスを、各バンドに対するアンテナ1のインピーダンスと合わせることができ、かつ電子チューナ34から見た整合器323のインピーダンスを、電子チューナ34のインピーダンスと整合させることができる。従って整合器323は、非常に簡単な回路構成によって、各バンドの信号を電子チューナへ信号をロスなく伝達することができるので、小型かつ低価格な整合器を実現することができる。
さらに、本実施の形態2における整合器323によれば、アンテナ1のインピーダンスと整合器323のインピーダンスとの整合を取るために、アンテナ1と整合器323とのインピーダンスが夫々複素領域となるようにしてある。そのために、本実施の形態2では、アンテナ1の有している抵抗値と整合器323の抵抗値とを略等しくすることで、互いのインピーダンスが複素領域にあるようにしてある。
以上の構成により、本実施の形態2においては、受信する高周波信号の波長の4分の1波長よりも十分に短いアンテナ1に対し整合を取ることができることとなる。従って、FM放送のような低い周波数に対しても、携帯電話信号用に用いるアンテナ1を共有することができる。
そしてこのような整合器323を本実施の形態2における分波器310へ用いてやれば、スイッチ364,367がオフである場合には、インダクタ362とインダクタ365とは携帯電話に対してキャパシタンス性を示す。従って、インダクタ315と整合器323によってローパスフィルタを構成させることができる。一方、スイッチ364,367がオンである場合においても、インダクタ365はキャパシタンス性を示す。従って、この場合においても携帯電話信号に対しローパスフィルタが構成される。
そして、インダクタ315、インダクタ362(インダクタ362a,362b)及び、インダクタ365(インダクタ365a,365b)のインダクタンス値を適宜選定し、ローパスフィルタのカットオフ周波数を携帯電話信号の周波数帯域とテレビ放送信号の周波数帯域との間の周波数としてやる。これによって、携帯電話信号は整合器323側へ流れ難くなるとともに、FM放送信号やテレビ放送信号は通過させることができるので、テレビ放送信号出力端子324からFM放送信号やテレビ放送信号を出力することができる分波器310を実現することができる。
以上の構成により、整合器323は携帯電話信号に対してキャパシタンス性を示すので、この整合器323と、インダクタ315によってローパスフィルタが形成される。そこで、このローパスフィルタのカットオフ周波数を携帯電話信号の周波数帯域とテレビ放送信号の周波数帯域との間の周波数としてやれば、携帯電話信号に対するインピーダンスは大きくなり、FM放送信号やテレビ放送信号に対するインピーダンスは小さくなる。従って、この分波器310は、テレビ放送信号出力端子324側に対しては、FM放送信号やテレビ放送信号を通過させるが、携帯電話信号は通過させないこととなる。
さらに、テレビ放送信号は、携帯電話信号の周波数帯域より低い周波数であるので、テレビ放送信号に対しキャパシタ313によるインピーダンスは大きくなる。一方、整合器323の動作によって、テレビ放送信号に対してアンテナ1と電子チューナ34との整合を取ることができるので、FM放送信号やテレビ放送信号に対して整合器323側のインピーダンスは小さくできる。
以上のような構成によってFM放送信号やテレビ放送信号の受信の有無や受信する周波数帯域に係わらず、アンテナ1で受信した携帯電話信号は電話信号出力端子312を介して受信器24へ供給されるとともに、送信器27から入力される携帯電話信号はアンテナ1側へ供給される。一方テレビ放送信号は、携帯電話信号の送受信に係わらずテレビ放送信号出力端子324側へ出力させることができる。
これにより、高い周波数帯域の信号と低い周波数帯域の信号とに分波された信号が、夫々の周波数帯域に対応する出力端子より出力されるとともに、周波数が低い周波数に対して整合を取ることができる分波器を実現することができる。従って、波長が長く周波数の低いテレビ放送信号の受信に対して、波長が短く周波数が高い携帯電話信号を受信するために用いる短い長さのアンテナ1ひとつのみを準備すれば良いので、携帯性に優れた携帯受信装置を提供することができる。
また、テレビ放送信号に対しては、電話信号出力端子312側のインピーダンスに比べて、テレビ放送信号出力端子324側のインピーダンスは小さくなる。従って、テレビ放送信号は整合器323側へ流れることとなり、この分波器310におけるテレビ放送信号の損失は小さくなる。逆に携帯電話信号に対しては、テレビ放送信号出力端子324側のインピーダンスに比べて、電話信号出力端子312側のインピーダンスが小さくなる。従って、携帯電話信号は整合器323側へ流れにくくなり、この分波器310における携帯電話信号の損失を小さくできる。
さらにまた、入力端子311と電話信号出力端子312との間にはキャパシタ313が設けられているだけであるので、テレビ放送信号の受信の有無に係わらず送信や受信が可能となる。
また、この分波器310でVHFローバンドを受信する場合にはVHFハイバンドの信号に対しては整合が取れないので、VHFローバンドを受信する場合にはVHFハイバンドの信号は通過し難くなる。逆にVHFハイバンドを受信する場合にはVHFローバンドの信号に対して整合は取れないので、VHFハイバンドを受信する場合にはVHFローバンドの信号は通過し難くなる。つまり、電子チューナ34のローパスフィルタ128の前に整合器323が接続されることによって、単同調フィルタ141,146や複同調フィルタ143,148等の入力フィルタの減衰特性を緩和することができ、これらの入力フィルタを簡素化することもできる。従って電子チューナ34の低価格化が実現できるとともにアンテナ1に入力された信号を電子チューナ34へロスなく取り込むことができる。
さらに、本実施の形態2における分波器310を用いれば、4分の1波長よりも十分に短いアンテナ1に接続しても整合を取ることができるので、小型のアンテナを使用することができ、さらに携帯性の良い携帯受信装置を実現することができる。
次に、図18は、本実施の形態2における分波器の回路図であり、図10の中の分波器の部分のみさらに詳細にしたものである。図19はその部品配置図である。図18、図19において、図1や、図10と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。
図18において、インダクタ362はインダクタ430とインダクタ431とインダクタ432との直列接続体により構成され、入力端子311側よりこの順で接続されているものである。また、インダクタ365は、インダクタ433とインダクタ434とインダクタ435との直列接続体によって構成されている。
さらにスイッチ364,367は、3つのダイオードで構成された回路で形成されており、接続点363と接続点366との間にコンデンサ436とコンデンサ437の直列接続体が挿入され、これらコンデンサ436とコンデンサ437の間にダイオード438が挿入される。そして、このダイオード438のカソード側にはダイオード439のアノード側が接続され、一方ダイオード439のカソード側はグランドに接続される。また、ダイオード438のアノード側にはダイオード440のカソード側が接続され、ダイオード440のアノード側は抵抗を介して制御端子368に接続されている。
なお、コンデンサ436,437は、制御信号である直流信号が入力端子や出力端子へ流れることを防止するために設けてある。さらに、ダイオード438は、ダイオード439がオフの場合に接続点363と接続点366との間に高周波信号が流れるのを防止するために設けられている。最後にダイオード440は、高周波信号が制御端子368から流れ出すのを防止するために設けられている。そしてVHFハイバンドを受信する場合には、制御端子368に5Vの電圧を供給することで、ダイオード438,439と440がオンとなり、VHFローバンド受信時は制御端子を0Vとしておけばダイオード438,439と440はオフとなる。
そしてこれらの回路は図19に示されるように、チップ部品によって構成され、これらのチップ部品をリフロー半田付けによって両面プリント基板451に装着し、半田付けすることによって接続・固定されている。そしてこの整合器の入力端子311、電話信号出力端子312、テレビ放送信号出力端子324、制御端子368とグランド端子とはスルーホール端子によって形成されている。なお、分波器310にはカバー(図示せず)が装着され、そのカバーの脚部とグランド端子とが半田付けされることによって、シールドされることとなる。
ここで、インダクタ430(L10)は、本来であればUHF帯においてはキャパシタンス性を示さなければならない。しかしながら本実施の形態2においては、インダクタンス性を示している。これは、インダクタ430に対しVHF帯ローバンドとVHF帯ハイバンドの双方に対して最適なインダクタンスを選定した結果、インダクタ430単独ではUHF帯においてインダクタンス性となってしまったものである。
つまりこのインダクタ430の自己共振周波数は、UHF帯の周波数の中に入ってしまっていることとなる。そこで、このインダクタ430とこのインダクタ430に半田を介して基板導体452による微少インダクタンスが接続される。これによりインダクタ430と基板導体452によって形成される合成インダクタの共振周波数は低い方向に変化し、UHF帯の周波数に対してキャパシタンス性を示すこととなる。なお、基板導体452による微少インダクタンスは、非常に小さいのでVHF帯の周波数に対してはほとんど影響しない。
つまり、常に全ての条件を満足したような最適な定数があるとは限らず、その場合にはVHF帯の周波数でインダクタンス性を示すとともに、VHFハイバンドとVHFローバンドの周波数に対する整合が最適となるような定数を選定する。そしてその状態でインダクタ430が、UHF帯の周波数に対してインダクタンス性を示している場合には、キャパシタンス性を示すように基板導体452を適宜決定してやればよい。
これによって、実際に使用するインダクタの定数がUHF帯の周波数に対してキャパシタンス性を示さないような値であっても、容易にUHF帯の周波数に対してキャパシタンス性とすることができる。またこのことは、使用するインダクタの定数の選択できる範囲を大きくできることを意味している。
なお、夫々のインダクタはパターンにリフロー半田付けされているので、リフロー半田付けによるセルフアライメント効果で夫々のインダクタの装着位置は精度良く略一定の場所に半田付けされることとなる。従って、基板導体452によって形成される微少インダクタンス値も略一定となるので、第1のインダクタの自己発振周波数を安定させることができ、分波器310の製造品質が安定する。
(実施の形態3)
以下本実施の形態3について図を用いて説明する。図20は、本実施の形態3の分波器を用いた高周波受信装置の断面図である。図20において521はアンテナであり、このアンテナ521の端部に設けられた固定部521aは高周波受信装置の本体ケース560(樹脂など導電性の無いケース)に固定されている。そしてこの固定部521aの先端部521bで、本体ケース560内に収められたプリント基板561へ半田562(もしくは、ねじ止めなどでプリント基板導体と接触)によって接続されている。
なお、アンテナ521の本体部521cと固定部521aとの間には可動部563を有した構成となっている。この可動部は、図20のようにA方向とB回転の2軸の方向に回転自在に軸支されている。一方、プリント基板561上には分波器310が搭載され、半田562によってアンテナ521と入力端子311とが電気的に接続される。
以上のように構成された高周波受信装置は、アンテナ521の指向性による受信感度の低下を補うために、可動部563を動かして受信感度が最適となるようにするわけである。しかしながら、本実施の形態3では軸支された可動部563を有しているので、接触抵抗が存在し高周波的に微少な抵抗値が存在することとなる。従って、このアンテナ521の可動部563による抵抗値によるインピーダンスと分波器310内の整合器323の回路における抵抗成分のインピーダンス値とを略同じとなるようにすることにより、非常に小さなインピーダンスのアンテナ521との整合を取りやすくなる。
本発明の整合器を用いれば、分波器の回路は簡単であり、小型化できるので、高周波受信装置を小型化することができる。さらに、可動部563による抵抗値によるインピーダンスと整合器323の回路における抵抗成分のインピーダンス値とを略同じとなるようにすることにより、アンテナ521は、受信周波数のλ/4よりも十分に小さな電気長のアンテナを用いても電子チューナ34との間で広帯域での整合が取れるので、小型なアンテナを使用することができる。
(実施の形態4)
以下、実施の形態4について図面を用いて説明する。図21は本実施の形態4における携帯受信機のアンテナ近傍の要部断面図である。図21において、実施の形態3と同じものは同じ記号を付し、その説明は簡略化している。
図21において、595は携帯受信機596の上端に装着されたアンテナ本体であり、このアンテナ本体595は摺動体部597を介して、携帯受信機596内のプリント基板598に接続される。なお、アンテナ本体595と、摺動体部597とが実施の形態3におけるアンテナ521に該当する。
摺動体部597は、受信信号を伝送可能なように金属で形成され、A方向に伸縮自在に設けられている。そして、摺動体部597はプリント基板598上に設けられたパターン599を介して整合器323を含む分波器310に接続されている。
以上のような構成により、摺動体部597は接触により電気的に接続されているので、これらの摺動体部597間で微小な接触抵抗を有することとなる。従って、この抵抗値を有することによって、リアクタンス素子で構成された整合器323で容易に出力インピーダンスを目標インピーダンスに設定することができ、損失の小さい携帯受信機を実現することができる。
また、アンテナ本体595は、整合器323を含む分波器310を用いることにより、受信電波の波長に比べて充分短くできるので、小型化された携帯受信機596を実現することができる。
なお、本実施の形態4において、微小抵抗は摺動体部597自身の抵抗を用いたが、これはアンテナと分波器310間に別途チップ抵抗等を付加しても良い。その場合付加されたチップ抵抗によって、摺動体部597の微小抵抗の寄与度合いが小さくなり、アンテナ本体595の方向移動などに対して常に安定した抵抗値を得ることができる。従って、アンテナ本体595の方向によらず安定した受信ができる携帯受信機596を実現することができる。
なお、このチップ抵抗を、整合器323と同じくプリント基板598上に装着すれば、チップ抵抗は整合器323と同時に装着することができるので、生産性が良く、低価格な携帯受信機596を実現することができる。逆にアンテナ本体595側に装着すれば、プリント基板598側での整合が取りやすくなる。