JP3902329B2 - 耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性を有する表面処理金属材料 - Google Patents
耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性を有する表面処理金属材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トイレ用建材、厨房用建材、医療施設用建材等の様に、耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性にも優れていることが要求される建材の素材として有用な表面処理金属材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品加工業界や医療施設を初め生活必需品に至るまでの様々な用途において、衛生上の観点から細菌、藻、黴等の生育を阻害する特性を付与する処理を施した金属材料の採用が検討されている。本発明ではこれらの特性を、夫々抗菌性、防藻性および抗黴性と称している。そして各種の用途で必要とされる各特性の強さは種々異なっており、高衛生という好イメージ付与のためわずかな抗菌性を必要とする用途から、細菌、藻および黴の時間単位での繁殖、感染の防止を必要とするための即効性を重んじる用途まで様々である。
【0003】
これらの用途のうち、例えば床材や壁材、昇降台、敷居、食品倉庫や厨房、トイレのドアノブ、スウィングドア、ラッチ等の建材、更には食品産業用機械部品、食品や衣料品の台車のように、抗菌性、防藻性および抗黴性と共に耐久性も兼備した表面処理金属材料への要望も高まっている。
【0004】
抗菌性を付与した表面処理金属材料に関して、これまで様々な技術が提案されている。こうした技術として、大きく分けて下記(1)〜(3)の様な技術が知られている。
【0005】
(1)CuやAg等の抗菌性を有する各種金属やTiO2 等の光触媒機能を有する各種セラミックスを含有する塗装または樹脂層を金属表面に施す方法(例えば、特開平8−156175号、特開平8−27404号、特開平8−25548号等)。
(2)金属、主にステンレス表面にCuやAg等の抗菌性を有する金属を濃化させる方法(例えば、特開平8−53738号、特開平8−60303号、特開平8−104952号等)。
(3)化成処理やめっき処理により、CuやAg等の抗菌性を有する各種金属やTiO2 等の光触媒機能を有する各種セラミックスを含有する層を金属表面に施す方法(例えば、特開平9−195061号、特開平8−120482号、特開平7−228999号、特開平9−157860号等)。
【0006】
しかしながら、これまで提案されている技術では、いずれも下記の様な問題を抱えており、近年の要求に十分に応えることができない。まず上記(1)の方法で得られた金属材料では、抗菌性付与効果だけを考慮してなされたものであるので、皮膜の耐久性の点では十分とはいえず、皮膜が摩耗することによって抗菌性付与効果が早期に消滅してしまうという事態が生じる。また抗菌性、防藻性および抗黴性に関しても性能的に不十分なものであり、しかもその効果を発揮するまでに長時間若しくは多くの日数を必要とするものも少なくない。
【0007】
上記(2)の方法で得られた金属材料は、(1)の方法で得られたものよりも耐久性を有するが、表面硬度が低い為に抗菌効果のあるCu等の表面濃化層が損耗する場合がある。また抗菌性、防藻性および抗黴性等の付与効果が不十分であり、しかも上記(1)の技術と同様にその効果を発揮するまでに長時間もしくは多くの日数を必要とする。従って、強い抗菌性、防藻性および抗黴性付与効果を必要とする部材には不適である。更に、上記(3)の方法は、例えば特開平8−120482号や同7−228999号等のように、Crめっき等に抗菌粒子を分散させた金属材料では耐久性を有するが、やはり抗菌性、防藻性および抗黴性付与効果が不十分であり、その効果を発揮するものも長時間若しくは多くの日数を必要とする。従って、前記(2)の方法と同様に、強い抗菌性、防藻性および抗黴性付与効果を必要とする部材には不適合である。
【0008】
尚特開平9−157860号には、Ni−Pめっきに抗菌剤粒子を分散させたものも開示されているが、このNi−Pめっきは通常のものを使用しているので、抗菌剤粒子を分散しない場合や分散状態が特開平9−157860号提案のものと異なる場合には抗菌性付与が達成されず、分散状態を工夫することによりようやく抗菌性を付与できたものである。またこの技術では、耐久性を有する部材が得られるが、やはり抗菌性を発揮するまで6時間もの長時間を必要とし、防藻性および抗黴性付与効果も不十分である。
【0009】
また前述した処理のうち、光触媒機能を付与した表面処理材はその効果を発揮させるためには高強度の日光または紫外線を照射しなければならないが、実用部品においてこうした照射は必ずしも実行できる訳ではなく、こうした部材が使用できる分野は限られたものとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、強い抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性を備え有し、しかも耐久性の点でも優れた表面処理金属材料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の表面処理金属材料は、Pを1〜10%含むNi−P系合金皮膜が素地金属表面に被覆されたものであり、前記Ni−P系合金皮膜中の水素含有量が0.00001〜0.005%である点に要旨を有するものである。
【0012】
本発明の表面処理金属材料においては、下記(a)〜(g)の少なくともいずれかの要件を満足するものであることが好ましい。また本発明の表面処理金属材料で用いる素地金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
【0013】
(a)Ni−P系合金皮膜中のPの含有量が2〜5%である。
(b)Ni−P系合金皮膜中の硫黄含有量が0.0025〜0.1%(より好ましくは0.01〜0.05%)である。
(c)Ni−P系合金皮膜中の塩素含有量が0.001〜0.01%(より好ましくは0.005〜0.01%)である。
(d)30℃の静止水中へ浸漬したときのNi−P系合金皮膜からのNi溶出量が1〜50μg/cm2/週(より好ましくは10〜50μg/cm2/週)である。
(e)Ni−P系合金皮膜の表面粗度が中心線平均粗さRaで0.25μm以上である。
(f)Ni−P系合金皮膜の表面硬度がHv500以上(より好ましくはHv600以上)である。
(g)Ni−P系合金皮膜におけるビッカース圧子押し込み時の皮膜割れ発生最小荷重が10kgf/cm2以上(より好ましくは20kgf/cm2以上)である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記した従来技術における問題を解決するために様々な角度から検討を加えた。そして一般にCu,Ag,Coよりも抗菌性、防藻性および抗黴性が劣ると言われているNiにPを含有させて合金化させた、いわゆるNi−P系合金皮膜に着目し、この合金皮膜中のP,H,S,Cl等の含有量や水中へのNi溶出量を制御すれば、上記各特性Cu,Ag,Co等を使用したときよりも格段に高めることができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の表面処理金属材料は、素地金属表面にNi−P系合金皮膜を被覆したものであるが、この皮膜中のP含有量を1〜10%とする必要がある。即ち、Ni−P系合金皮膜のP含有量が1%未満では、抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの性能も劣るものとなり、P含有量が10%よりも多くなると、防藻性および抗黴性に優れるが抗菌性に劣る。
【0016】
またNi−P系合金皮膜のP含有量の好ましい範囲は、各特性によって異なり、例えば抗菌性に関してはP含有量が1〜5%の範囲にするのが好ましく、防藻性および抗黴性に関しては、P含有量が2%以上の範囲で優れた性能を発揮する。従って、Ni−P系合金皮膜のP含有量が2〜5%の範囲内の場合には、優れた抗菌性、防藻性および抗黴性をともに付与することができる。
【0017】
本発明に適用できるNi−P系合金皮膜は特に制限されず、例えばNi−P,Ni−P−B,Ni−P−C,Ni−Co−P,Zn−Ni−P等の各種合金皮膜が挙げられ、また必要によってこれらの皮膜中に硬質粒子、自己潤滑粒子、光触媒機能粒子等を分散させた各種複合皮膜を適用できる。また本発明に適用できるNi−P系合金皮膜の作製方法としては、例えば電気めっき、無電解めっき、気相めっきなどの様々な表面処理が挙げられ、特に制限されるものではないが、本発明を簡便に実行できる方法としては電気めっきが推奨される。
【0018】
本発明の表面処理金属材料においては、Ni−P系合金皮膜中の水素含有量を0.00001〜0.005%の範囲に制御することが好ましい。この水素量は、皮膜を基材から機械的に剥がし、皮膜自身について室温から350℃までの昇温分析を行い、検出される水素量である。より具体的には、昇温速度12℃/minで350℃まで連続加熱し、発生水素量を大気圧イオン化質量分析計(API−MS)により測定した値である。この水素含有量が0.00001%未満では、P含有量に依らず防藻性および抗黴性が十分に発揮されにくくなり、0.00001%以上、より好ましくは0.00015%以上とすることによってPの添加効果を増大させ、本発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0019】
Ni−P系合金皮膜が抗菌性、防藻性および抗黴性に有効に機能するのは、次の様な理由によるものと考えることができる。即ち、Ni−P系合金皮膜の表面には、通常で10nm〜1μm、高湿度の状態で数10〜数100μm厚さの吸着水が存在するが、この吸着水中に皮膜中のNiおよびPが溶出し、吸着水を介して増殖すると考えられる細菌、藻および黴を死滅させることができるためであると考えられる。
【0020】
そしてNi−P系合金皮膜中の水素量が抗菌性、防藻性および抗黴性に効果を発揮するのは、水素は還元作用を発揮することから皮膜表面において酸化を防ぎNiを活性化して、NiおよびPの上記溶出量を増加させ、またPを抗菌性、防藻性および抗黴性に有効な水素化物として溶出させ得るからであると推定される。
【0021】
Ni−P系合金皮膜中の水素を増加させる方法としては、皮膜形成後に、高温水素ガス雰囲気中に曝す方法、電気化学的には水素チャージする方法などがあり、いずれの方法も採用できる。尚電気めっきによってNi−P系合金皮膜を形成する場合には、カソード反応の一つとして水素反応があるので、電流効率をあえて低下させたりすることにより水素含有量を増加させることができるので、水素含有量の増加を同時に達成できる皮膜形成方法として望ましい。しかし、Ni−P系合金皮膜中の水素含有量が0.005%を超えると皮膜の靭性が著しく低下し、皮膜に割れが発生することがあるので、水素含有量は0.005%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.002%以下にするのが良い。
【0022】
本発明の表面処理金属材料においては、Ni−P系合金皮膜中の硫黄含有量を0.0025〜0.1%の範囲に、塩素含有量を0.001〜0.01%の範囲に制御することが好ましい。Ni−P系合金皮膜中の硫黄含有量が0.0025%未満、または塩素含有量が0.001%未満となると、抗菌性、防藻性および抗黴性の付与効果が小さいくなる。この様に硫黄含有量や塩素含有量を適切の規定することが抗菌性、防藻性および抗黴性に効果を発揮するのは、硫黄は皮膜表面において酸化を防ぎ活性化することと、水素吸蔵を助長する(水素過電圧を下げる)硫黄化合物を形成することにより、また塩素は皮膜表面において自然皮膜を破壊することにより、前述した吸着水中へのNiの溶出量を増大させるためと推定できる。
【0023】
Ni−P系合金皮膜中の硫黄や塩素の含有量を増加させる方法については特に限定するものではないが、湿式めっきの浴成分を制御したり、電気めっきの電流効率をあえて低下させることで前記水素含有量を増加すれば、硫黄や塩素の含有量を同時に増加させることができる。但し、Ni−P系合金皮膜中の硫黄が0.1%を超えると、或は塩素が0.01%を超えると、皮膜の靭性および強度が著しく低下するので、硫黄や塩素の含有量は上記範囲内に制御する必要がある。尚上記硫黄含有量のより好ましい上限は0.05%であり、より好ましい下限は0.01%である。また上記塩素含有量のより好ましい上限は0.01%であり、より好ましい下限は0.005%である。
【0024】
本発明の表面処理金属材料においては、30℃の静止水中へ浸漬したときのNi−P系合金皮膜からのNi溶出量が1〜50μg/cm2 /週以上であることが好ましく、より好ましく10〜50μg/cm2 /週以上であるのが良い。ここでNi溶出量測定方法としては、例えば500mlビーカー中に試料の面積25cm2 相当部分をイオン交換水50mlに浸したときにイオン交換水中に溶け出したNiの量である。このNi溶出量が1μg/cm2 /週未満では、抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの性能も劣るものとなる。Ni溶出量が増加するほど抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性も向上し、10μg/cm2 /週以上でいずれの特性も最大となる。Ni−P系合金皮膜からのNi溶出量を増加させる方法としては、前述した皮膜中のH,S,Cl元素を制御する方法が推奨されるが、その他単位面積当たりの表面積を増大させることや、Niよりも電位的に貴な物質を皮膜中に混合させる等して皮膜の電位をコントロールする、等の方法が採用できる。しかしながら、Ni溶出量が50μg/cm2 /週を超えると、耐食性や変色等が問題となることがあり、また装飾品等に用いるときには金属アレルギーが問題となるので、Ni溶出量は50μg/cm2 /週以下とするのがを好ましい。このNi溶出量のより好ましい上限は、25μg/cm2 /週程度である。
【0025】
本発明の表面処理金属材料においては、Ni−P系合金皮膜の表面粗度を中心線平均粗さRaで0.25μm以上とすることにより、Ni、Pの溶出量が増加し、抗菌性、防藻性および抗黴性を更に高めることができる。また本発明の表面処理金属材料は、素地金属材料の表面をNi−P系合金めっき皮膜で被覆したものであり、このめっき皮膜によって耐久性も基本的に優れたものであるが、この特性をより発揮させるためには、前記めっき皮膜の硬度はHv500以上であることが好ましく、より好ましくはHv600以上とするのが良い。また同様の観点から、ビッカース圧子押し込み時の皮膜剥離発生最小荷重を10kgf/cm2 以上とするのが好ましく、より好ましくは20kgf/cm2 以上とするのが良い。この様にNi−P系合金めっき皮膜の硬度をHv500以上とすることにより、摩擦による皮膜消失を防止することができ、またビッカース圧子押し込み時の皮膜剥離発生最小荷重を10kgf/cm2 以上とすることにより、チッピングによる皮膜消失を防止することができるため、長期間に亘って本発明の効果を維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0026】
本発明で素地金属として用いる金属材料としては、全ての金属および合金材料が適用でき何ら制限されるものではないが、耐食性、強度等の観点からすれば、特にチタン、チタン合金およびステンレス鋼が好ましいものとして挙げられ、軽量化の観点からはアルミ、アルミ合金が好ましいものとして挙げられる。尚アルミ合金基材等の様に、Ni−P系表面処理皮膜よりも電位の卑な金属・合金基材で耐食性を重視する場合には、Ni−P系合金皮膜の膜厚を15μmとするのが好ましく、より好ましくは30μm以上とするのが良い。また本発明の表面処理金属材料が適用される用途としては、抗菌性、防藻性および抗カビ性が必要な全ての分野に用いることができるが、短時間での抗菌性、防藻性および抗黴性効果が必要であり、また耐久性も必要であるトイレ用・厨房用・医療施設用建材に特に用いることが推奨される。
【0027】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0028】
【実施例】
素地金属として、純Tiまたはステンレスを用いて以下に示すような条件で供試材を作製した。まず各々の素地金属を、市販めっき前処理液を用いて脱脂、エッチング、表面活性化、Niストライクめっきを順次行った。その後NiSO4 :240g/l、NiCl2 :45g/l、ほう酸:30g/lからなるいわゆるワット浴やワット浴の塩化ニッケル量、硫酸ニッケル量を増減させた浴(電気Niめっき浴)に、適宜、界面活性剤、光沢剤等を加えた浴を用い、上記素地金属表面に約20μmのめっきを施して供試材とした。また上述電気Niめっき浴にリン酸、亜リン酸、オルトほう酸、アスコルビン酸、硫酸コバルト等を適宜添加した電気Ni−P系めっき浴を調整し、このめっき浴にて各々約20μmのめっきを施し、供試材とした。また一部の供試材においては、水素チャージを行い、めっき皮膜中の水素含有量を増加させた。
【0029】
各供試材のめっき皮膜中におけるP,S,Clの含有率量について、各々のめっきを溶解した後、ICP発光分光分析法にて測定した。また水素含有量は、各々のめっき皮膜を素地金属から機械的に剥離し、皮膜自身を昇温速度12℃/minで350℃まで連続加熱し、発生ガスおよびその量を大気圧イオン化質量分析計(API−MS)により分析した。尚この皮膜中の水素分析方法は、岩田らの既報(神戸製鋼技報/Vo147、No.1、P24、Apr.1997)に従った。またNi溶出量について、各々の試料25cm2 を30℃に保持した静止水(イオン交換水)50cm2 中で1週間浸漬し、浸漬後の液をICP発光分光分析法にて分析した。
【0030】
得られた各表面処理金属材料(供試材)について、耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性について調査し、各特性について評価した。このとき市販されている各種の抗菌性付与表面処理部材(下記表1)についても同様の評価を行なった。
【0031】
(耐久性)
摺動摩耗試験を下記の条件で行い、試験前後の質量変化を測定し、各々の密度から摩耗減量が5×10-4cm2 未満のものを評価A、5〜10-4cm2 のものを評価B、10-4cm2 以上のもの、または皮膜に割れ、剥離等が発生したものを評価Cとして評価した。
相手材:SUS304球
摺動面圧:1kgf/mm2
摺動距離:1cm×1万回往復
【0032】
(抗菌性)
大腸菌(IFO13500)の濃度が5×106 (CPU/ml)となるように調整した液50μlをサンプルに接種した後、30℃で2時間保持し、その後生菌数(菌の生存率、%)を平板希釈法によって測定した。菌の生存率が20%未満の場合は評価A、20〜50%の場合は評価B、50%を超える場合は評価Cとして評価した。
【0033】
(防藻性)
クロレラ226株の濃度が105 個/mlとなるように調整した液1mlをサンプル上に接種した後、25℃で12時間のサイクルで3000ルクスの明条件および暗条件にしたインキュベーターのもとで3週間保持し、クロロフィルをエタノールで抽出した。その後分光光度計により660nmの吸収を測定し、クロロフィルのみの標準曲線との比較によりクロレラの個体数を算出した。個体数が105 個/ml未満の場合は評価A、105 〜106 個/mlの場合は評価B、106 個/mlを超える場合は評価Cとして評価した。
【0034】
(抗黴性)
十分に生育させた黒麹カビ(アスペルギルス・ニガー:IFO6342)を懸濁させた液1mlをサンプルに接種した後、28℃で48時間保持した後、Alamar blueを0.1ml添加し、分光光度計により570nm、600nmの2波長の吸収値の差を測定し、液のみの吸収値の差との比較により阻害率を算出した。阻害率が95%を超える場合は評価A、90〜95%の場合は評価B、90%未満の場合は評価Cとして評価した。
【0035】
従来の抗菌性付与表面処理金属材料における試験結果を表1に示すが、この結果から明らかな様に従来材では耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性をいずれをも満足するものが得られていないことがわかる。
【0036】
【表1】
【0037】
一方、Ni−P系合金皮膜(Ni合金皮膜も含む)を金属材料表面に被覆した表面処理金属材料の試験結果を図1〜4に示す。このうち図1はNi−P系合金皮膜中のP含有量と水素含有量が各特性(耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性)に与える影響を示したグラフ、図2はNi−P系合金皮膜中の硫黄含有量が各特性に与える影響を示したグラフ、図3はNi−P系合金皮膜中の塩素含有量が各特性に与える影響を示したグラフ、図4はNi−P系合金皮膜中のP含有量とNi溶出量の関係を示したグラフである。このときの抗菌性、防藻性および抗黴性の評価は、下記の5段階の基準による総合評価とした。尚図1に評価対象となった表面処理金属材料は、全て硫黄含有量:0.0025〜0.1%、塩素含有量:0.001〜0.01%、Ni溶出量:10〜50μg/cm2 /週のものである。また図1中で「☆」印が付してあるものは、成膜した状態で水素含有量が0.00001%未満であって、後処理および水素チャージによって水素含有量を増加させたものである。更に、図2〜4において、▲1▼〜▲4▼で示したものは、Ni−P系合金皮膜中のPや水素の含有量が下記のものであることを示している(但し、図4における▲1▼,▲2▼は水素含有量のみが下記の範囲を満足するものである)。
【0038】
[総合評価基準]
◎:抗菌性、防藻性および抗黴性の3特性とも評価Aのとき
○:抗菌性、防藻性および抗黴性の3特性のうち、1特性が評価Bで2特性が評価Aのとき
△:抗菌性、防藻性および抗黴性の3特性のうち、2特性が評価Bで1特性が評価Aのとき、または3特性とも評価Bのとき
+:抗菌性、防藻性および抗黴性の3特性のうち、1〜2特性が評価Cのとき
×:抗菌性、防藻性および抗黴性の3特性とも評価Cのとき
【0039】
[P,水素の含有量]
▲1▼P含有量:3%、水素含有量:0.00015〜0.002%
▲2▼P含有量:8%、水素含有量:0.00001〜0.00015%
▲3▼P含有量:3%、水素含有量<0.00001%
▲4▼P含有量:12%、水素含有量:0.00015〜0.0020%
【0040】
これらの結果から、次の様に考察できる。Ni−P系合金皮膜中のP含有量、水素含有量、硫黄含有量、塩素含有量、30℃の静止水中へのNi溶出量等に、耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性が大きく依存し、これらの範囲を適切に制御することによって、上記特性のいずれをも良好にできることがわかる。
【0041】
【本発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、強い抗菌性、防藻性および抗黴性のいずれの特性を備え有し、しかも耐久性の点でも優れた表面処理金属材料が実現でき、こうした表面処理金属材料は従来耐久性不足あるいは抗菌性、防藻性及び抗カビ性不足等の理由により適用することができなかった様々な分野に適用することができる。即ち、本発明の表面処理金属材料は、ホール、福祉施設、学校、病院、駅、空港、輸送等の各種公共施設に用いられる床、壁、天井、敷居、手摺等の各種建材、コンベア部品等の産業用機械部品、食品や衣料品の台車、昇降台、更には食品倉庫や厨房、トイレのドアノブ、スイングドア、ラッチ等の素材として有用である。また本発明の表面処理金属材料は、各種衛生用品のみならず、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、乾燥機、食器乾燥機、エアコン等の電化製品の他、ごみ回り品やトイレ用品、厨房品、各種工業用・家庭用タンク、医療器具、サニタリー用品、文房具等、各種製品の素材としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ni−P系合金皮膜中のP含有量と水素含有量が各特性(耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性)に与える影響を示したグラフである。
【図2】Ni−P系合金皮膜中の硫黄含有量が各特性に与える影響を示したグラフである。
【図3】Ni−P系合金皮膜中の塩素含有量が各特性に与える影響を示したグラフである。
【図4】Ni−P系合金皮膜中のP含有量とNi溶出量の関係を示したグラフである。
Claims (8)
- Pを1〜10%(質量%の意味、以下同じ)含むNi−P系合金皮膜が素地金属表面に被覆されたものであり、前記Ni−P系合金皮膜中の水素含有量が0.00001〜0.005%であることを特徴とする耐久性、抗菌性、防藻性および抗黴性を有する表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜中のPの含有量が2〜5%である請求項1に記載の表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜中の硫黄含有量が0.0025〜0.1%である請求項1または2に記載の表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜中の塩素含有量が0.001〜0.01%である請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理金属材料。
- 30℃の静止水中へ浸漬したときのNi−P系合金皮膜からのNi溶出量が1〜50μg/cm2/週である請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜の表面粗度が中心線平均粗さRaで0.25μm以上である請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜の表面硬度がHv500以上である請求項1〜6のいずれかに記載の表面処理金属材料。
- Ni−P系合金皮膜におけるビッカース圧子押し込み時の皮膜割れ発生最小荷重が10kgf/cm2以上である請求項1〜7のいずれかに記載の表面処理金属材料。
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