JP3901585B2 - 補強構造体構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旧鉱山の地下坑道の充填、建築物床下の補強、水中における構造物の基礎構築など、空洞や空間へ型枠なしで補強構造体を構築する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
旧産炭地域においては、道路を新設する場合、旧坑道の上が計画線にかかる場合がある。このような場合、従来においては、地盤沈下を防ぐために旧坑道に土砂を詰めて埋めるなどの大がかりな工事が必要であったが、坑道の入り口が塞がれていたり、坑道の中が所々落盤していたりして、中に作業員が入って調査や工事をすることは非常に危険であった。
【0003】
また、都市部の地下水の枯渇化により旧地下水脈の部分の空洞化が進行し、地震や道路の振動が引き金となって地盤が突然沈下することも多い。その対策としては、地中の空洞部にセメントミルクを流し込むことが考えられるが、セメントミルクは不定形で水平方向に流れてしまい、鉛直方向の隙間を確実に埋めることが難しいし、大量のセメントミルクを注入する必要がある。
【0004】
さらに、既設の家屋や建築物において、柱や基礎の老朽化に伴い、建築物の強度が低下していくことがある。そのために補修が必要となるが、基礎を新たに作り替えることは困難である。
【0005】
そのほか、海や川、湖沼等の水中に構造物の基礎を構築しようとする場合、従来であればパイル等を打ち込んで水中での作業を行うのであるが、その作業が非常に大掛かりとなっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、地中や水中の空洞や空間へ、強度の高い構造物を直接構築することのできる補強構造体構築方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の補強構造体構築方法は、可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を縮径状態で空洞部に通じる小口径の掘削孔より挿入し、所定の位置で前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記空洞部内で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を前記空洞部に構築するものである。
この方法によれば、地中の空洞部を小口径の掘削孔から充填、硬化させた補強構造体により補強することが可能となる。
【0008】
また、本発明の他の補強構造体構築方法は、可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を下端部が水底に達するまで落とし込み、前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記水底部で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を水中に構築するものである。
この方法によれば、水中内に、作業員が潜水することなく、水底に構造物を構築することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は第1の実施形態の施工手順を示すものである。本実施形態においては、図1(a)に示すように、地盤1内に空洞部2が存在する場合、まず図1(b)に示すように小口径の掘削孔3を地表から穿孔して形成する。ついで、図1(c)に示すように、小口径の掘削孔3から、縮めた筒袋状の注入型枠4を空洞部2に達するように挿入する。ついで、図1(d)に示すように注入型枠4の上部開口部から、流動性のよい乾いた砂を注入する。砂は、掘削孔3の部分を落下して、注入型枠4の底部に溜まっていく。空洞部2においては、注入型枠4の形状は不定であるので、底部に溜まっていく砂の重量により注入型枠4は拡大していく。拡大部の形状は、目的に応じて任意に設定可能である。拡大部が所定の形状になったとき、注入型枠4の上部開口から硬化樹脂を充填する。硬化樹脂は、砂の粒子の隙間を通って下部に浸透していき、所定の時間が経過すると、砂と一体化した強固な補強構造物となる。この硬化樹脂については後述する。
【0010】
このようにして、地盤1内の空洞部2は、注入型枠4内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体により支持、補強され、地表に重量がかかっても、落盤等の事故を未然に防止することができる。
【0011】
図2は第2の実施形態を示すものである。この実施形態では、既設の建築物が老朽化した場合や、建築基準が変わった場合などにおいて、建築物の基礎を補強することを目的としている。施工に際して、まず、地盤11に敷設された既設の建築物の基礎12上の床13の部分に小口径の孔14を開け、その孔14から縮めた袋状の注入型枠15を挿入する。ついで、注入型枠15の上部開口から砂を注入して、床下の部分に拡大部を形成する。拡大部が所定の形状になったとき、注入型枠15の上部開口から硬化樹脂を充填する。硬化樹脂は、砂の粒子の隙間を通って下部に浸透していき、所定の時間が経過すると、砂と一体化した強固な補強構造物となる。これにより、既設の建築物の基礎12の補強と、床13の撓み強度の向上を図ることができる。
【0012】
図3は、第3の実施形態を示すものである。この実施形態では、旧産炭地区などの地下に縦横に存在する坑道の上に道路を新設する場合などにおいて、道路の重量や振動で落盤事故が発生するのを未然に防止することを目的としている。図3(a)は道路横断方向の断面図、(b)は道路縦断方向の断面図を示している。この実施形態の施工に際しては、図1に示した第1の実施形態による施工方法と同様に、地盤21に坑道22に達する小口径の孔を所定間隔で穿孔して注入型枠を用いて坑道22内に砂と硬化樹脂による隔壁23を構築し、坑道22の補強を行う。そして、新設道路24の部分の真下の坑道22には孔25を穿孔して、その孔25からセメントミルクを充填する。この際、隔壁23が坑道22内の空洞における型枠の役目を果たし、セメントが硬化すれば、坑道22は完全に埋められることになる。隔壁23なしでいたずらにセメントミルクを注入しても、坑道22が天井の部分まで完全に充填されるかどうかは確認できず、セメントの量もどれだけの量を使用すればいいか不確定である。
【0013】
図4は、第4の実施形態を示すものである。この実施形態では、海浜における消波ブロック前面の浸食防止を目的としている。図4において、海浜に設置された消波ブロック31の沖側に、作業船を係留して袋状の注入型枠32の底部を沈め、注入型枠32の上部開口から砂を注入して所定の大きさの拡大部が海底に形成されたところで硬化樹脂を充填し、硬化させて固形物を構築する。これが潮流の緩衝体となって、消波ブロック31を設置している砂層が浸食されて沈んだり移動することを防止することができる。この注入型枠32の海中への施工は水上で作業でき、クレーンなどの重機も不要であるので、短時間で安全な作業が可能となる。
【0014】
【実施例】
本発明において使用する硬化樹脂について説明する。
本発明においては、硬化時間がコントロール可能な二液反応型硬化樹脂を用いて、距離が長くて細い小口径孔を通過して空洞部の拡大部の砂に充填される材料を用いることとする。
【0015】
材料の特性
(1)二液反応型硬化樹脂の使用
本発明の実施の形態においては、保存時には硬化せず、混合時に硬化する二液反応型硬化樹脂溶液からなるものが用いられる。例えば、ポリエステルポリオールやポリエールポリオールからなる主剤溶液と4.4−ジフェニルメタン・ジイソシアネート成分を含有する硬化剤溶液からなる二液反応型ポリウレタン樹脂や、ビスフェール型液状エポキシ樹脂からなる主剤溶液とポリアミドアミンや変性ポリアミン等の成分を含有する硬化剤溶液からなる二液反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの主剤及び硬化剤溶液には予め主剤及び硬化剤の混合を容易にし、砂への浸透・充填を容易ならしめるために、硬化反応を阻害せず、また硬化物の特性を低下させない程度にジブチルフタレートやジオクチルフタレート等の可塑剤や高沸点溶剤を添加することができる。
【0016】
(2)この二液反応型硬化樹脂を使用する場合は専用(撹拌・注入)機械の活用が可能である。
【0017】
(3)目的に応じて、時間コントロールが可能な材料を選択できる。使用材料は、配合成分の違いで硬化時間にも差があり、目的に応じて選択が可能である。
【0018】
このような要件を満たす二液反応型硬化樹脂としては、例えばカーボ・リス・フレックス(CarboLith Flex:ドイツCARBOTEC社商品名)を使用することができる。この二液反応型硬化樹脂は、主剤液として珪酸ナトリウム、硬化剤液としてポリウレタンプレポリマーを使用する。両溶液が反応すると、珪酸塩を含有した硬く弾性のある有機性鉱物を作る。両溶液が十分に混合されると、その結果生成される粘性のある乳濁液は水とは混和せず、また注入型枠がその後破れた場合においても、砂と一体化した本体は、例えば周辺土壌や水中におけるいかなる水も吸収しない。
【0019】
また、他の二液反応硬化樹脂として、カーボ・リス(CarboLith:ドイツCARBOTECH社商品名)を使用することができる。この二液反応型硬化樹脂は、主剤液として珪酸ナトリウムと添加物の混合物、硬化剤液として4.4−ジフェニルメタン・ジイソシアネート基のポリイソシアネートを使用する。反応中に、ポリウレア・マスが形成されると同時に不発泡性の有機鉱物樹脂(シリケイト樹脂)を形成する。また、両溶液を互いに混合すると、その結果生じる粘性のある乳濁液はそれ以上水を吸収せず、また、水と混じることもなく、砂へ浸透する。
【0020】
なお、二液反応型硬化樹脂は、前掲の例に限定されるものではなく、他のものも使用可能であることは言うまでもない。表1は、数種類の硬化樹脂の粘度と固結時間を示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003901585
【0022】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば下記の効果を奏する。
(1)可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を縮径状態で空洞部に通じる小口径の掘削孔より挿入し、所定の位置で前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記空洞部内で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を前記空洞部に構築する方法を用いることにより、地中の空洞部を小口径の掘削孔から充填、硬化させた補強構造体により補強することが可能となる。
【0023】
(2)可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を下端部が水底に達するまで落とし込み、前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記水底部で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を水中に構築する方法を用いることにより、水中内に、作業員が潜水することなく、水底に構造物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の施工手順を示す工程図である。
【図2】 本発明の第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】 本発明の第3の実施形態を示すものであり、(a)は道路横断方向の断面図、(b)は道路縦断方向の断面図である。
【図4】 第4の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 地盤
2 空洞部
3 掘削孔
4 注入型枠
11 地盤
12 基礎
13 床
14 孔
15 注入型枠
21 地盤
22 坑道
23 隔壁
24 新設道路
25 孔
31 消波ブロック
32 注入型枠

Claims (2)

  1. 可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を縮径状態で空洞部に通じる小口径の掘削孔より挿入し、所定の位置で前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記空洞部内で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を前記空洞部に構築することを特徴とする補強構造体構築方法。
  2. 可撓性素材からなる筒袋状の注入型枠を下端部が水底に達するまで落とし込み、前記注入型枠の内部に砂を注入して当該注入型枠を前記水底部で拡大させ、さらに当該注入型枠の上部開口部から硬化樹脂を充填、硬化させることにより、前記注入型枠内において砂と硬化樹脂が一体的に硬化した補強構造体を水中に構築することを特徴とする補強構造体構築方法。
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