JP3900018B2 - 高パス間温度多層盛り溶接鋼材の製造方法及び高パス間温度多層盛り溶接方法 - Google Patents

高パス間温度多層盛り溶接鋼材の製造方法及び高パス間温度多層盛り溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、建築、橋梁などに使用される鋼材、特に多層盛り溶接で高いパス間温度の溶接でも高いHAZ靭性を有する高パス間温度多層盛り溶接鋼材の製造方法及びそれにより製造された鋼材を使用して多層盛り溶接する方法に関する。
に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築、橋梁などの構造物を組み立てるに当たっては、炭酸ガス溶接、エレクトロガス溶接(EGW)、サブマージドアーク溶接(SAW)等の各種溶接方法による多層盛り溶接が行われる。この多層盛り溶接ではパス間温度が高くなり易く、それにより継ぎ手性能が低下し易い。そのため、鋼材の多層盛り溶接に当たっては、使用鋼材のグレード、板厚、溶接法に応じて溶接時の予熱温度、溶接材料などを最適に選ぶとともにパス間温度の上限を定め、これにしたがって厳しい作業管理基準のもとで溶着金属およびHAZの強度、靭性等を確保している。一般にパス間温度は350℃以下であることが要求される。
【0003】
特に、H形鋼からなる建築構造物の柱―梁の溶接施工では、炭酸ガスアーク溶接による柱通しダイアフラム形式の多層盛り梁端溶接が多用されるが、その構造上、パス間温度が高くなりやすく、上記作業管理基準の定めるパス間温度が350℃を越えることがしばしば起こる。このため、溶接作業を中断し、しかる後パス間温度の低下を待って溶接を再開しなければならず、溶接作業効率の低下を招いている。
【0004】
この様な状況下、パス間温度が高くても必要な継ぎ手性能が確保されるような鋼材、溶接方法等が求められている。例えば、特開平10−230387号公報、特開平11-239892号公報、特開2000−288734号公報では、溶接(溶着)金属に着目し溶接ワイヤの材質の改良により必要な継ぎ手性能を確保しようとする溶接方法が試みられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような手段のみでは、パス間温度が350℃以上、極端には700℃にも達するような高パス間温度で多層盛り溶接を行い十分な継ぎ手性能を持った鋼構造物を効率よく構築することができない。特に上記手段は、発明の対象が性能のよい溶接(溶着)金属を得ることに向けられており、溶接継ぎ手を構成するもう一方のメンバーである母材側HAZの改良に着目されていないという問題があり、そのため、上記提案にかかわらず、現状ではなお、溶接作業を中断してパス間温度の低下を待って溶接をしなければならないという制約を甘受しなければならないという問題がある。本発明は、かかる不具合を解消することを目的とし、パス間温度が350℃以上に達しても、十分HAZ靭性を有する高パス間温度溶接用鋼材の製造方法及びそれにより製造された鋼材を使用する多層盛り溶接方法を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、H形鋼などの多層盛り溶接では溶接金属部のみならず母材金属のHAZの靭性の低下が問題であることに着目した。特に、高パス問温度での溶接では、(1)溶融線近傍のCGHAZ(Coarse Grain HAZ)の幅拡大と、該CGHAZの上部ベーナイト化による脆化、(2)CGHAZが2層目以降の溶接により加熱されて生ずるICCGHAZ(Inter-critically−reheated Coarse Grain HAZ)部に生ずる脆化を防止することが重要であることに着目した。そして、かかる観点から発明者は鋭意研究を行い、パス間温度が350℃を超えるような高パス間温度で多層盛り溶接を行っても必要な継手性能が確保できる溶接鋼材の製造方法及びその方法により得られる鋼材を使用する多層盛り溶接方法を完成した。
【0007】
なお上記において、CGHAZとは、母材金属が1150℃〜融点未満の温度域に加熱されてオーステナイト結晶粒が粗大化した粗粒域HAZをいう。特に融点近傍まで加熱されたCGHAZは結晶粒の粗大化が著しく、靭性の低下が大きい。ICCGHAZとは、CGHAZが次のパスで700〜900℃に再加熱され多量の島状マルテンサイト(Martensite-Austenite constituent)を生成した再加熱2相域HAZをいう。特にCGHAZの粗粒化の程度が大きいほど多量の島状マルテンサイトを生成して靭性が著しく低下する。
【0008】
具体的には、本発明の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法は、質量比で、C:0.07〜0.15%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.6〜1.6%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0030〜0.070%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、上記Ti及びNが2.0≦Ti/Nの関係式を満たす鋼素材を 1000 1300 ℃に再加熱して熱間圧延するに当たり、素材中心部温度が 1000 ℃以上、かつその温度での滞留時間が 0.1 10h になるように再加熱し、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下量が 50% 以上、仕上げ圧延温度が 750 1000 ℃となるように熱間圧延を行った後、空気冷却又は加速冷却するものである。
【0009】
上記発明において、鋼組成は、さらにCa:0.0050%以下、Al:0.06%以下及びREM:0.03%以下のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましい。また、上記鋼組成は、さらにNb:0.030%以下、V:0.08%以下の1種又は2種を含有し、かつ、上記Nb及びVが30Nb+10V≦0.8の関係式を満たすようにすること、さらに、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.2%以下及びB:0.0030%以下の何れか1種又は2種以上含有し、かつ、上記Cu、Ni、Cr、Mo及びBはCu+0.5Ni+1.3Cr+5Mo+100B≦1.5の関係式を満たすようにすることができる。
【0010】
また、前記熱間圧延に際し、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下量が50%以上の熱間圧延後、さらにオーステナイト再結晶温度域以下で累積圧下量が50%以下の熱間圧延を行うこととするのが厚さ20mm以上の鋼材を製造するのに好適である。また、仕上げ圧延後、0.5〜50℃/sの冷却速度で700℃以下まで加速冷却後、放冷あるいは700℃以下の温度で焼き戻しするのが板厚の大きい高強度鋼を製造するのに好適である。
【0011】
また、質量比で、 C 0.07 0.15% Si 0.05 0.6% Mn 0.6 1.6% P 0.020% 以下、 S 0.020% 以下、 Ti 0.005 0.025% N 0.0030 0.070% 、残部: Fe および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、上記 Ti 及び N 2.0 Ti/N の関係式を満たすとともに、鋼中に析出した TiN 粒子の平均粒径が 100nm 以下、分布密度が 1 × 10 6 /mm 2 以上である高パス間温度多層盛り溶接鋼材に対しては、パス間温度が350℃以上の高パス間温度溶接を行うことができ、これによりパス間温度が350℃以上に達しても、十分なHAZ靭性を有する溶接継手を得ることができる。ここで、上記鋼組成は、さらに、 Ca 0.0050% 以下、 Al 0.06% 以下及び REM 0.03% 以下のいずれか 1 種又は 2 種以上を含有すること、あるいは、さらに、 Nb 0.030% 以下、 V 0.08% 以下の 1 種又は 2 種を含有し、かつ、上記 Nb 及び V 30Nb 10V 0.8 の関係式を満たすこと、さらに、 Cu 0.5% 以下、 Ni 0.5% 以下、 Cr 0.5% 以下、 Mo 0.2% 以下及び B 0.0030% 以下の何れか 1 種又は 2 種以上含有し、かつ、上記 Cu Ni Cr Mo 及び B Cu 0.5Ni 1.3Cr 5Mo 100B 1.5 の関係式を満たすものとすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化学組成、組織、製造方法について詳細に説明する。
【0013】
C:0.07〜0.15%、(化学組成は質量比で表す、以下同様)
Cは強度を確保するために最低0.07%以上が必要であり、一方、0.15%を超えると溶接低温割れ感受性を高めるために、0.07〜0.15%の範囲とする。
【0014】
Si:0.05〜0.6%
Siは、鋼中に固溶し強度向上に有効であるが、その効果を得るためには0.05%以上が必要である。しかし、0.60%を超えると、島状マルテンサイトを増加させHAZ靭性を低下させる。したがって0.05〜0.6%の範囲とする。
【0015】
Mn:0.6〜1.6%
Mnは、焼入れ性を高め強度向上に寄与するが、0.6%未満ではその効果が小さく、1.6%を超えると溶接性を低下させる。そのため0.6〜1.6%とする。
【0016】
P:0.020%以下、S:0.020%以下
Pは、不可避的不純物として鋼中に存在する元素であるが、高パス間溶接時に青熱脆性温度域以上に加熱される部分の靭性を低下させ、また、粒界割れを促進させる。そのため、その量は低い方が好ましい。0.020%以下とすれば上記の問題が回避できる。一方、Sは、母材の延性および靭性を低下させるのでその量は低い方が好ましいが、0.020%以下であれば実用上問題がないので、上限を0.020%とする。
【0017】
Ti:0.005〜0.03%
Tiは、TiNを形成することにより特に溶接パス間温度が高い場合には、溶融線近傍のCGHAZ靭性を向上させるので、有効な元素である。しかし、その含有量が0.005%未満ではその効果が小さく、0.030%を超えるとその効果が飽和するので0.005〜0.03%の範囲で含有させる。なお、Tiは、TiNの形で析出しているTi量が重要であり、TiN析出量をTi換算で0.005%以上、好ましくは0.008〜0.03%以下とするのがよい。
【0018】
N:0.0030〜0.0070%
Nは、Tiと結合してTiNを形成する。TiNは上述したように、高パス間温度溶接を行う際、溶融線近傍のCGHAZ靭性を向上させるので有効な元素である。しかし、Nが0.0030%未満では、該CGHAZの靭性向上に対して不十分であり、0.0070%を超えるとその効果は飽和する。したがってNは0.0030〜0.0070%の範囲とする。
【0019】
2.0≦Ti/N
上記のように本発明では、TiNにより溶融線近傍のCGHAZ靭性を向上させる。そのため、Ti及びNの含有量は上記の範囲内に制限されるが、さらに両者の関係について2.0≦Ti/Nとする必要がある。Ti含有量に見合った量のN含有量とし、さらにその析出粒径を十分微細にするためである。なお、上記Ti/N比は好ましくは2.5以上とするのがよい。
【0020】
TiN粒子の析出平均粒径100nm以下、分布密度1×106個/mm2以上
ところでCGHAZ領域では、TiNは析出粒径が小さいと溶接時の高熱で再固溶されやすく、逆に大きいとTiNが粗大化する傾向があり、ともにCGHAZの靭性を劣化させる原因となる。すなわち、TiNの析出粒径が小さく、TiNが再固溶するときには、固溶Nが存在し、固溶Nがその量に応じてHAZ靭性を低下させ、また、歪時効により靭性を低下させる原因となり、一方、粗大TiNの存在は溶融線近傍のCGHAZ靭性を低下させる。本発明では、このような観点から平均析出粒径及び分布密度を規定している。析出粒径は平均粒径で100nm以下、分布密度を1×106個/mm2以上とする。
【0021】
なお、上記平均粒径とは、鋼材から採取した試験片を電解腐食し、倍率20000倍の走査型電子顕微鏡で10視野分観察して撮影した分散粒子画像を画像解析装置にかけ、各視野ごとに平均粒子径を求めてその10視野分を平均した値をいう。また、分布密度とは、各視野の100nm以下の粒子数をカウントし積算し、1mm2当たりの粒子数に換算した値をいう。
【0022】
鋼の基本組成を上記のようにすることによって、高パス間温度で多層盛り溶接する場合のHAZ靭性の低下を効果的に阻止できる。しかし、本発明鋼の特性をさらに向上させるには、以下に示す諸元素を選択的に含有させることとするのがよい。
【0023】
Ca:0.0050%以下、Al:0.06%以下及びREM:0.03%以下の1種又は2種以上
Caは、Mn、0、Sと結合して、(Mn、Ca)(0、S)を形成する。これにより脆性を促進するMnSの発生を阻止し、また、CGHAZ部の粒内のアシキュラーフェライト化や板状粒界フェライトの粒状化を促進して靭性を一層向上させる。特に後に示す強度確保の観点から添加するCu、Ni、Cr、Moを添加した場合には、粗粒域(CGHAZ)の上部ベイナイト化を阻止する効果があり、それにより靭性の確保が期待できるが、多すぎると清浄性の観点から好ましくないので0.0050%以下とする。Alは製鋼時の脱酸剤として0.06%以下鋼中に残留するように添加するのがよい。REMは、REM(0、S)を形成してCGHAZ幅を縮小する効果があり、CGHAZ靭性向上に一層効果がある。このような効果が期待できるのは0.03%以下である。
【0024】
Nb:0.030%以下、V:0.08%以下で1種又は2種、ただし、30Nb+10V:0.8%以下
NbやVは、マイクロアロイとして母材の強度を向上し、また、HAZの軟化を抑制する元素である。しかし、高パス間温度の多層盛り溶接においては、ICCGHAZ部を中心にNbやVの炭窒化物が析出してこの部分のHAZ靭性を低下させので、Nbは0.030%以下、Vは0.08%以下とするとともに30Nb+10Vを0.8%以下とする。
【0025】
Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.2%以下及びB:0.0030%以下の1種または2種、ただし、Cu+0.5Ni+1.3Cr+5Mo+100B:1.5%以下
これらの元素は、引張強さが490MPa以上で比較的厚肉の鋼材を製造する場合に強度向上の観点から1種又は2種以上を添加するのが好適である。しかし、これら元素を過剰に含有するときには、高パス間多層盛り溶接を行った場合に、溶融線近傍のCGHAZが焼入れされて靭性が低下し、また、上部ベイナイトが形成されてHAZ靭性が低下する。このため各元素の焼き入れ効果を考慮して、Cu+0.5Ni+1.3Cr+5Mo+100Bを1.5%以下とした範囲内で、上記元素を選択添加するのが好ましい。なお、この場合さらに、Ca:0.0050%以下、Al:0.06%以下及びREM:0.03%以下の1種または2種以上を添加すると、これら元素の効果が相乗的に現われる。
【0026】
本発明に係る鋼材は以下のように熱間圧延して製造するのがよい。まず、熱間圧延に先立つ素材の加熱温度(いわゆるスラブ加熱温度)は1000〜1300℃とするが、その際、加熱条件を素材(スラブ)中心部温度が1000℃以上、かつその温度での滞留時間が0.1〜10hになるように再加熱する。
【0027】
加熱温度を1000℃以上とするのは熱間加工性を確保するためであるが、1300℃以下とするのは、必要なTiN析出物量を確保し、かつ高温加熱によるTiNが粗粒化を防止するためである。すなわち、加熱温度が1300℃を超えると、TiNの一部が分解してNが再固溶するとともにTiNが粗粒化するため、高パス間温度での溶接ではCGHAZが拡大して靭性を低下させる原因となる。したがって、熱間圧延のための素材加熱温度は1000〜1300℃とする。
【0028】
しかしながら、素材加熱温度が1000〜1300℃であってもそれだけでは十分でない。鋼素材中心部の温度が1000℃以上、かつその温度での滞留時間が0.1〜10hになるように再加熱する必要がある。この温度で10hを超えて保持すると、TiNがオストワルド成長し、微細なTiNの存在密度が減少し、その結果、CGHAZの幅が拡大する。特に、形鋼圧延の場合には、一般に厚鋼板よりも高温で熱間圧延されるので、鋼素材中心部が1000℃以上に晒される時間を5h以下とすることが望ましい。なお、上記温度での滞留時間を0.1h以上とするのは、必要なTiN析出物量を確保するためである。なお,鋼素材中心部の温度およびその温度での滞留時間は,炉内雰囲気温度履歴と鋼素材形状から伝熱模型によるシミュレーションによって得た値によればよい。
【0029】
熱間圧延においては、オーステナイト再結晶温度域で累積圧下量が50%以上となるようにするのが好ましい。オーステナイト粒の再結晶による微細化を図り、母材の靭性を確保するためである。この目的のためには、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下量を50%以上とすることが必要である。圧延仕上げ温度は、750〜1000℃、好ましくは800〜1000℃とする。圧延仕上げ温度が750℃を下回ると降伏比が75%を超えてかえって靭性が低下するので適切でなく、一方、1000℃を超えると、母材の靭性が低下するからである。
【0030】
このようにオーステナイト再結晶温度域での累積圧下量が50%以上確保できれば、本発明の目的に適う鋼とすることができるが、板厚やフランジ厚が20mmを超えるような場合には、オーステナイト再結晶粒の微細化が不十分となる場合がある。そのような場合には、上記オーステナイト再結晶温度域での熱間圧延後、さらに、オーステナイト再結晶温度域以下で累積圧下量が50%以下の熱間圧延を行うこととするのがよい。この場合、累積圧下量が50%を超えると降伏比が75%を超え、地震エネルギー吸収能が低下するので50%以下とする。
【0031】
上記仕上げ圧延後の冷却は一般に、仕上げ圧延後、放冷して空気冷却すれば足りる。しかし、さらに板厚やフランジ厚が20mmより大になる場合や、SN490級やSN570級(引張強さが、490又は570MPa)などの高張力鋼の場合には、必要に応じて加速冷却を行う。これは、例えば、仕上げ圧延後、降伏比が75%を超えない範囲で、0.5〜50℃/sの冷却速度で700℃以下まで適当な冷媒(例えば水スプレー)を用いて加速冷却する。この加速冷却は、圧延後直ちに、例えば圧延後60s以内に行うのが圧延能率を阻害しない点で好ましい。なお、上記加速冷却を行った場合には、必要に応じて、表面硬さの低減や残留応力の軽減のため、700℃以下の温度で焼もどしを行うことができる。しかしながら、この焼戻しは降伏比が75%を超えない範囲で行うことが必要である。
【0032】
本発明による鋼材は、350℃以上の高パス間温度多層盛り溶接を行う場合にも、そのHAZ部の靭性が十分高い。例えば、後に実施例により示すように、再現熱サイクル試験によるCGHAZあるいはICCGHAZ相当部におけるvEo値が100J以上を示す。したがって、本発明にかかる高パス間温度多層盛り溶接用鋼材を用いればパス間温度が350℃以上の高パス間温度多層盛り溶接を行うことができる。それにより、十分な靭性を有する継ぎ手を作業効率を低下させることなく得ることができる。なお上記において、350℃以上の高パス間温度多層盛り溶接とは、パス間温度が、従来作業管理基準とされたパス間温度の上限である350℃を溶接中に一度でも超える高パス間温度多層盛り溶接をいう。この溶接には、溶接長が短く連続で多層盛り溶接を行った場合に、700℃前後までパス間温度が高くなる場合を含む。
【0033】
【実施例】
以下本発明を、厚鋼板及びH形鋼に適用した場合を例にとって具体的に示す。表1(基本成分)及び表2(付加成分)に示す化学組成を有する鋼を溶製し、表3に示す条件によって厚鋼板およびH形鋼を製造した。得られた製品の母材性能は溶接再現熱サイクル特性とともに表4に示されている。
【0034】
【表1】
Figure 0003900018
【0035】
【表2】
Figure 0003900018
【0036】
【表3】
Figure 0003900018
【0037】
得られた製品から再現熱サイクル試験片を切出し,CGHAZに相当する1400℃加熱後,800〜500℃間の冷却時間が400sの単サイクルの熱サイクルを付与させた後、JIS Z 2202 4号シャルピー衝撃試験片を採取し,0℃におけるシャルピー衝撃特性を調べた。この熱サイクルは板厚30mmで溶接長さ150mmの鋼板を40kJ/cmの入熱で往復連続多層盛りCO2溶接した場合のJASS6で規定される位置の表面温度で700℃のパス間温度に相当する最終ビードの接合部をシミュレーションさサたものである。次に,ICCGHAZを調べる目的で,1400℃加熱後,800〜500℃間の冷却時間が400sの熱サイクルを付与後,850℃に再度加熱した後,800〜500℃間の冷却時間を400sとするダブル熱サイクルを付与させた後,同様に0℃におけるシャルピー衝撃特性を調べた。この熱サイクルは最終ビードによって再熱きれたHAZ部に相当している。その結果を表4にまとめて示す。
【0038】
表4から判るように、本発明例に属する鋼では,高いパス間温度となっても再現CGHAZ靭性およびICCGHAZ靭性は,vEoが100J以上であった。これに対して、比較例においては脆化部が存在し、vEoが70J以下となっており、高いパス間温度で溶接した場合には、十分なHAZ靭性を確保できないものであった。なお、本発明鋼は当然のことながら、従来の低いパス間温度にて多層盛り溶接が行われた場合についても十分な効果を有していることはいうまでもない。
【0039】
【表4】
Figure 0003900018
【0040】
このように、本発明にかかる鋼は、例えば700℃のような極めて高い高パス間温度で多層盛り溶接を行っても十分に高いHAZ靭性を確保することができるから、溶接を中断してパス間温度の低下を待って溶接を再開するという必要がない。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、高パス間温度多層盛り溶接において、十分な靭性を確保することができる。これによりパス間温度が350℃以下に下がるまで待って溶接しなければならないという不都合がなくなり、鉄骨溶接施工作業の効率化を図ることでき、溶接施工工数の低減により建設施工期間の効果的な短縮等を図ることができる。

Claims (10)

  1. 質量比で、C:0.07〜0.15%、Si:0.05〜0.6%、Mn:0.6〜1.6%、P:0.020%以下、S:0.020%以下、Ti:0.005〜0.025%、N:0.0030〜0.070%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有し、上記Ti及びNが2.0≦Ti/Nの関係式を満たす鋼素材を 1000 1300 ℃に再加熱して熱間圧延するに当たり、素材中心部温度が 1000 ℃以上、かつその温度での滞留時間が 0.1 10h になるように再加熱し、オーステナイト再結晶温度域での累積圧下量が 50% 以上、仕上げ圧延温度が 750 1000 ℃となるように熱間圧延を行った後、空気冷却又は加速冷却することを特徴とする高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法
  2. 鋼組成はさらにCa:0.0050%以下、Al:0.06%以下及びREM:0.03%以下のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法
  3. 鋼組成はさらにNb:0.030%以下、V:0.08%以下の1種又は2種を含有し、かつ、上記Nb及びVが30Nb+10V≦0.8の関係式を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法
  4. 鋼組成は、さらにCu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.2%以下及びB:0.0030%以下の何れか1種又は2種以上含有し、かつ、上記Cu、Ni、Cr、Mo及びBはCu+0.5Ni+1.3Cr+5Mo+100B≦1.5の関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法
  5. オーステナイト再結晶温度域での累積圧下量が50%以上の熱間圧延後、さらにオーステナイト再結晶温度域以下で累積圧下量が50%以下の熱間圧延を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法。
  6. 仕上げ圧延後、0.5〜50℃/sの冷却速度で700℃以下まで加速冷却後、放冷あるいは700℃以下の温度で焼き戻しすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高パス間温度多層盛り溶接用鋼材の製造方法。
  7. 質量比で、 C 0.07 0.15% Si 0.05 0.6% Mn 0.6 1.6% P 0.020% 以下、 S 0.020% 以下、 Ti 0.005 0.025% N 0.0030 0.070% 、残部: Fe および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、上記 Ti 及び N 2.0 Ti/N の関係式を満たすとともに、鋼中に析出した TiN 粒子の平均粒径が 100nm 以下、分布密度が 1 × 10 6 /mm 2 以上である高パス間温度多層盛り溶接用鋼材に対し、パス間温度が350℃以上の高パス間温度溶接を行うことを特徴とする高パス間温度多層盛り溶接方法。
  8. 鋼組成は、さらに Ca 0.0050% 以下、 Al 0.06% 以下及び REM 0.03% 以下のいずれか 1 種又は 2 種以上を含有することを特徴とする請求項7記載の高パス間温度多層盛り溶接方法。
  9. 鋼組成は、さらに Nb 0.030% 以下、 V 0.08% 以下の 1 種又は 2 種を含有し、かつ、上記 Nb 及び V 30Nb 10V 0.8 の関係式を満たすことを特徴とする請求項7又は8記載の高パス間温度多層盛り溶接方法。
  10. 鋼組成は、さらに Cu 0.5% 以下、 Ni 0.5% 以下、 Cr 0.5% 以下、 Mo 0.2% 以下及び B 0.0030% 以下の何れか 1 種又は 2 種以上含有し、かつ、上記 Cu Ni Cr Mo 及び B Cu 0.5Ni 1.3Cr 5Mo 100B 1.5 の関係式を満たすことを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の高パス間温度多層盛り溶接方法。
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