JP3899080B2 - 新規ウレタナーゼ - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
発明の属する技術分野
本発明は、新規ウレタナーゼおよび該ウレタナーゼを利用したプラスチック、特にポリウレタンの分解方法に関する。
従来の技術
ポリウレタンはその優れた性質からさまざまな分野で利用されている。しかしその一方で廃棄量も年々増加し、高い燃焼熱による焼却炉の損傷や埋立地の飽和等、深刻な環境問題を起こしている。これらの廃棄物の対策として、低コスト、かつ省エネルギー型プロセスである微生物分解・酵素分解が注目されている。ポリウレタンを酵素によってモノマーに分解できれば、これを回収、再合成することにより一次生産品と全く同等のポリウレタンを作ることができ、リサイクルへの道が開ける。
ポリウレタンの生分解性については、これまで微生物や生体内酵素による劣化という面での研究が主体であり、いかに生分解を防止するかが主要なテーマであった。そのため、ポリウレタン分解微生物自身やその分解酵素についての研究は進んでいない。
ポリウレタンの分解は、ウレタン結合の分解と、ポリオール部分の分解とに大別される。このうちウレタン結合はすべてのポリウレタンに共通に存在する結合である。しかし、ポリウレタン中のウレタン結合の分解に関する知見はほとんどない。微生物分解に伴って、ウレタン結合が加水分解を受けているという報告はいくつかあるが(非特許文献1および2)、ウレタン結合の切断と微生物またはその酵素との因果関係は明らかでない。
B. Jansen et al., Zentralbl Bakteriol., 276, 36(1991) R. T. Darby and A. M. Kaplan, Appl. Microbiol., 16, 900(1968) 尚、ポリエステル型のポリウレタン分解菌としては、ペニバチルスアミロリチカスTB−13株(特願平2002−334162)およびコマモナスアシドボランス(Comamonas acidovorans)TB−35株(FEMS Microbiology Letters, Vol. 129,39−42,1995、非特許文献3)が知られているが、これらの分解菌はウレタン中のエステル結合は分解するものの、ウレタン結合はほとんど分解しない。 T.Nakajima−Kambe,F.Onuma,N.Kimpara and T.Nakahara,Isolation and characterization of a bacterium which utilizes polyester polyurethane as a sole carbon and nitrogen source.FEMS Microbiology Letters, Vol. 129,39−42,1995 一方、低分子のウレタン化合物が微生物によって分解されることはすでに報告されているが、その分解はウレタナーゼによるものではなくエステラーゼによるものであることが知られている。そして、そのほとんどは酒類の品種改良やカルバメート系農薬の分解浄化に関するものであり(特開平01−300892、特開平01−240179、特開平02−128689、特開平03−175985、特開平04−104784、特開平04−325079)、ポリウレタンの分解に利用できる技術ではない。ポリウレタン原料となりうる物質の分解菌としてはカビによるものが報告されているが(特開平09−192633)、大量培養が容易な細菌によるものはなく、その分解酵素は特定されていない。 特開平01−300892号公報 特開平01−240179号公報 特開平02−128689号公報 特開平03−175985号公報 特開平04−104784号公報 特開平04−325079号公報 特開平09−192633号公報 発明が解決しようとする課題 本発明は、ウレタン化合物を分解することのできる新規ウレタナーゼ、および該ウレタナーゼを用いたウレタン化合物の分解方法を提供することを目的とする。特に、ポリウレタンの原料となるウレタン化合物またはポリウレタンを分解することのできるウレタナーゼ、および該ウレタナーゼを用いたポリウレタンの原料となるウレタン化合物またはポリウレタンの分解方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
この問題を解決するため、我々はポリウレタン合成原料として用いられる芳香族・脂肪族イソシアネートと一価アルコールから合成した低分子量ウレタン結合含有化合物を用いて、各種土壌を分離源として微生物のスクリーングを行い、得られた微生物に関して既に特許出願している(特願平2003−055421)。尚、ロドコッカス属に属する微生物がウレタン化合物の分解能を有することはそれまで知られていなかった。
本発明者らは、ロドコッカス エクイ TB−60株が生産するウレタン結合切断酵素を精製しその諸性質について詳細に検討を行い、該酵素がポリウレタン合成原料として用いられる芳香族系のみならず脂肪族系化合物に対しても、ウレタン結合切断活性を有することを見出した。
即ち、本発明はウレタン化合物、特にポリウレタン合成原料として用いられる低分子量ウレタン化合物を分解する能力を有するウレタナーゼを提供するものであり、また該ウレタナーゼを用いたウレタン化合物の分解方法を提供するものである。
発明の実施の形態
酵素(新規ウレタナーゼ)
本発明のウレタナーゼは、SDS−PAGEによる分子量が約55,000、ゲル濾過クロマトグラフィーによる分子量が約55,000の単量体タンパクである。至適温度は約45℃、至適pHは約5.5である。本発明のウレタナーゼは、ウレタン化合物の他に、アミド、エステルに対しても加水分解活性が認められる。本発明のウレタナーゼは、ポリウレタンの合成に用いられている芳香族系および脂肪族系化合物に対しても、ウレタン結合切断活性を有する。本発明のウレタナーゼは、pH8〜10の範囲で安定である。
尚、本発明でいうウレタン化合物とは、ウレタン結合を有する化合物をいい、いずれの分子量の化合物も含まれる。
新規ウレタナーゼの供給源
新規ウレタナーゼの供給源は、ウレタン化合物分解能を有する微生物であれば、既に公知の微生物であってもよく、新たにスクリーニングされた微生物であってもよい。新規ウレタナーゼの供給源の一例としては、ロドコッカス属に属する微生物であり、2004年1月24日付けでドイツの特許生物寄託機関であるDSMZに寄託されたロドコッカス エクイ TB−60株(DSMZ 16175)を挙げることができる。ロドコッカス属菌の菌学的性質は、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(BERGEY’S MANUAL OF Systematic Bacteriology)(第1巻1984年、第2巻1986年、第3巻1989年、第4巻1989年)に記載されている。
微生物のスクリーニングの一例を示せば、各地より採取した土壌をポリウレタン合成原料として用いられる低分子量ウレタン化合物を含む培地の入った試験管に入れ、30℃にて振とう培養し、一週間ごとに植え継ぎを繰り返した後、培養液中に白濁や変色が認められたサンプルについて、培養上清をNB平板に希釈塗布し、30℃で1〜3日培養後、生育してきたコロニーをピックアップし、ウレタン結合分解菌の候補菌株とする。それから、得られた候補株を、トルエンジイソシアネートとブタノールを反応させて得た低分子量のウレタン化合物(ウレタン化合物I)を炭素源として含んだ液体培地にて培養し、培養
液中にウレタン化合物Iのウレタン結合加水分解産物であるトルエンジアミンの生成が確
認された菌を取得することにより行うことができる。
新規ウレタナーゼの供給源は、ウレタン化合物分解能を有する微生物であれば、野生株、変異株のいずれでも良い。
新規ウレタナーゼの分離・精製
本発明のウレタナーゼの分離・精製は、通常微生物からの蛋白質の分離・精製に用いられる方法を用いることにより行うことができる。具体的には、微生物を破壊後、通常用いられる分離精製手段を用いることにより行うことができる。微生物の破壊には、制限的でない例として、超音波処理、高圧ホモジナイザー処理、浸透圧ショック法が挙げられる。分離精製手段は、例えば塩析、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて用いればよい。
ウレタン化合物の分解方法
更に本発明は、ウレタン化合物をウレタナーゼの作用により分解処理する方法を提供する。該方法に用いるウレタナーゼは、精製された酵素、粗精製酵素、または微生物菌体を破砕した液であってもよい。微生物菌体の破砕は、当業者に知られた方法により行うことができる。
本発明のウレタナーゼが分解できるウレタン化合物は、分子構造中にウレタン結合を有するものであればよい。制限的でない例としては、トルエン−2,4−カルバミン酸ジブチルエステル、トルエン−2,6−ジカルバミン酸ジブチルエステル、メチレンビスフェニルジカルバミン酸ジブチルエステル、ヘキサメチレン−ジカルバミン酸ジブチルエステル、ノルボルネンジカルバミン酸ジブチルエステルおよびそれらを合成原料とするポリウレタンが挙げられる。尚、ポリウレタンとは、分子中にウレタン結合(−NHCOO−)を有する高分子化合物の総称で、多官能イソシアネートとヒドロキル基含有化合物との反応により得られ、エステル、エーテル、アミド、ウレア、カルバメートなどの基を有するポリマーである。ヒドロキシル基もしくはイソシアネート基の官能性数を変化させることで多種多様の分岐あるいは架橋ポリマーを調製することができる。用いるポリオールの種類によってエステル系とエーテル系に大別できる。ポリウレタンは、易加工性、耐腐敗性、耐変質性、低比重等の優れた特性により、弾性体、発泡体、接着剤、塗料、繊維、合成皮革など幅広い用途を持っており、自動車部品としても広く使用されている。本発明の分解方法において適用し得るポリウレタン樹脂の数平均分子量は、特に制限はない。
分解に供されるウレタン化合物は、例えば溶液中にエマルジョンとして、あるいは粉体の形で加えても良いし、フィルム、ペレット等の塊として加えても良い。なお、溶液に対するウレタン化合物の投入量は、0.01〜10重量%が望ましい。添加する酵素量は極少量であってもよいが、分解効率を考慮してウレタン化合物に対して0.01重量%以上(湿重量)が好ましい。また、分解に供するウレタン化合物は、1種類であっても複数種類であっても良い。溶液は、緩衝液にウレタン化合物を添加したものであっても良いが、その他に窒素源、無機塩、ビタミンなどを添加しても良い。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液が挙げられる。
ウレタン化合物の分解に要する時間は、分解に供するウレタン化合物の種類、組成、形状及び量、ウレタナーゼのウレタン化合物に対する相対量、pH、温度その他種々の分解条件等に応じて変化しうる。
分解反応中のウレタン化合物の分解の確認は、例えば、分解に供したウレタン化合物の重量減少の測定、残存ウレタン化合物量の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による測定、あるいはウレタン結合加水分解産物であるジアミン化合物の生成の測定により確認することができる。ジアミン化合物の生成の確認は、例えば薄層クロマトグラフィにて生成が予想されるジアミン化合物を標準物質として用いることにより、またはガスクロマトグラフィにより行うことができる。
ポリウレタンの完全分解方法
固体ポリウレタンの分解方法の一態様として、ポリエステル型のポリウレタンのエステル結合分解菌として知られるペニバチルスアミロリチカスTB−13株(受託番号FERM P−19104、特願平2002−334162参照)および/またはコマモナスアシドボランスTB−35株、あるいはそれらの菌株由来の酵素と、ウレタン結合分解能を有する本発明のウレタナーゼを用いることにより、ポリウレタンの完全分解を行うことができる。
ウレタナーゼを生産する方法
本発明のウレタナーゼは、ロドコッカス属に属し、プラスチック分解能を有する微生物を培養し、該微生物中の酵素を分離・精製することにより生産することができる。
ウレタン化合物分解能を有する微生物は、上述のように既に公知のロドコッカス属に属する微生物であってもよく、新たにスクリーニングされた微生物であってもよい。ロドコッカス属に属する微生物の一例は、2004年1月24日付けでドイツの特許生物寄託機関であるDSMZに国際寄託されたロドコッカス エクイ TB−60−DSMZ 16175を挙げることができる。
ロドコッカス属に属する微生物の培養に用いる培地としては、ロドコッカス属に属する微生物が生育できる培地であれば特に制限なく用いることができ、例えば、LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl)が挙げられるがこれらに限定されない。該微生物の生育に使用する培地は、具体的には、該微生物が資化し得る炭素源、例えばグルコース等、及び該微生物が資化し得る窒素源を含有し、窒素源としては有機窒素源、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー等、無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等を含有することができる。さらに所望により、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンと硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等の陰イオンとからなる塩類を含んでもよい。さらに、ビタミン類、核酸類等の微量要素を含有することもできる。炭素源の濃度は、例えば0.1〜10%程度であり、窒素源の濃度は、種類により異るが、例えば0.01〜5%程度である。また、無機塩類の濃度は、例えば0.001〜1%程度である。
微生物からウレタナーゼを分離・精製は、上述のように当業者に周知な方法で行うことができる。
実施例
本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1 ロドコッカス エクイ TB−60株の生産するウレタナーゼの精製
A.方法
1.培地および培養条件
基本培地の組成は、表1に示す通りである。炭素源としてカルバミン酸ブチルを用いた。
Figure 0003899080
肉汁平板培地にて30℃、2日間培養したロドコッカス エクイ TB−60株を、100mlの培地を含む500mlの三角フラスコに植菌し、30℃、24時間回転振盪培養を行った。その培養液を、0.1%アセトアニリドを含む1Lの培地を入れた3L三角フラスコに植菌し、30℃、36時間回転振盪培養を行った。
2.酵素活性測定法
ウレタン加水分解活性
0.1%エチルN−フェニルカルバメート0.2ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.7mlに、酵素溶液を0.1ml添加し、反応を開始させた。30℃、60min反応後、6N HCLを0.1ml添加し、反応を停止させた。生成したアニリンの量を、ジアゾカップリング法を用いて定量した。1分間に1μmolのアニリンを生成させる酵素量を1unitとした。
アミダーゼ活性
1mMp−ニトロアセトアニリド 0.268ml、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)1.6mlに、酵素溶液を0.132ml添加し、反応を開始させた。生成したp−ニトロアニリンの量を、405nmの吸光度を測定することによって求めた。1分間に1μmolのp−ニトロアニリンを生成させる酵素量を1unitとした。
エステラーゼ活性
基質にはp−ニトロフェニルアセテートを用い、上述のアミダーゼ活性と同様の方法で測定を行った。1分間に1μmolのp−ニトロフェノールを生成させる酵素量を1unitとした。
3.酵素精製
酵素活性の測定には、p−ニトロアセトアニリドを基質として用いた。
1に示した方法でロドコッカス エクイ TB−60株を培養後、集菌した菌体(培養液2L分)を、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)30mlに懸濁後、フレンチプレスにて菌体破砕を行った(1280psi、3回)。これを20,000rpm、30min遠心し、無細胞抽出液を得た。これを、硫酸アンモニウム沈殿法にて分画し、40〜60%画分の沈殿を回収し、20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解した。1mM DTTを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化したHiTrap Desaltingカラムを用いて脱塩を行った後、Resource Qカラムクロマトグラフィーに供した。1mM DTTを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて平衡化し、流速は2.0ml/minとした。溶出は、0−0.2M NaCl/60minのリニアグラジエントにて行った。活性画分を回収し、限外濾過にて濃縮を行うとともに、20%グリセロール及び1mM DTTを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.0)へ置換した。精製酵素は、4℃にて保存した。
4.各種ウレタン化合物の加水分解
基質には、トルエン−2,4−ジカルバミン酸ジブチルエステル(TDCB)、メチレンビスフェニルジカルバミン酸ジブチルエステル(MDCB)、ヘキサメチレンジカルバミン酸ジブチルエステル(HDCB)を用いた。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.8mlに、各基質のエタノール溶液(0.1%)を0.1ml加え混合後、酵素溶液0.1mlを加えて反応を開始した。30℃で1晩反応後、反応産物を等量の酢酸エチルにて抽出し、GC−MS分析に供した。HDCBに関しては、分解産物をヘプタフルオロ酪酸無水物(HFBA)にて誘導体化した後、GC−MS分析に供した。GC−MS条件を以下に示す。
機器
ガスクロマトグラフ:TraceGC(サーモエレクトロン株式会社)
MS検出器:PolarisQ(サーモエレクトロン株式会社)
カラム
DB−1MS 内径0.25mm,長さ30m(J&W Scientific社製)
分析条件
GC:120℃〜280℃(15℃/minの昇温分析)
MS:イオンソース温度225℃、イオン化エネルギー70eV
B.結果
1.ウレタナーゼ活性の誘導
誘導物質としてアニリンを添加したときの、ロドコッカス エクイ TB−60株の生育量、ウレタン加水分解活性、アミダーゼ活性、及びエステラーゼ活性を経時的に測定した結果を図1に示した。
誘導物質としてアニリンを用いたとき、ウレタナーゼ活性が認められた。それと同時にアミダーゼ活性、エステラーゼ活性が認められた。ただし、エステラーゼ活性は、アセトアニリドを添加しない培養においても認められた。ウレタナーゼ活性、アミダーゼ活性ともに、培養36時間に最も高い活性を示した。これらの結果より、ロドコッカス エクイ TB−60株のウレタナーゼは、アセトアニリドによって誘導されることが明らかとなった。また、本酵素はアミダーゼの一種であることが示唆された。
2.ウレタナーゼの精製
硫酸アンモニウム沈殿法による分画、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーという二段階の簡便な精製法にて、ウレタナーゼを精製した。収率は58%、比活性6.0U/mgであった。精製酵素標品をSDS−PAGEに供したところ、分子量約55,000の位置に、単一のバンドとして検出された。本酵素の保存性は、0.1Mリン酸緩衝液中において極めて不安定であったが、20%グリセロールを添加することによって著しく改善され、4℃で1ヶ月以上保存後も活性の低下は認められなかった。
3.酵素の物理化学的諸性質
分子量
ゲル濾過クロマトグラフィーによって本酵素の分子量を測定したところ、55,000であった。また、SDS−PAGEにおいては分子量約55,000の位置に、単一のバンドとして検出されたことから、本酵素は分子量55,000の単量体であることが示された。
至適温度、pH
本酵素の至適反応条件を、エチルN−フェニルカルバメートを基質として決定した。その結果、至適温度45℃、至適pH5.5であった。
温度安定性、pH安定性
本酵素は、pH8〜10の範囲で安定であった。また、30分間の加温後は30℃で23%、40℃で98%の酵素が失活した。
ウレタン化合物の分解
TDCBを基質とした場合、GC−MS分析にて2種類の分解産物が検出された。保持時間3.8分のピーク1は、トルエンジアミンであると同定された(図2)。保持時間8.0分のピーク2は、マススペクトルを解析した結果、TDCBの2つのウレタン結合のうち1つが加水分解されアミンとなった化合物であると推定された(図2)。MDCBを基質とした場合、GCにて1つのピーク(ピーク3)が検出された。マススペクトルを解析した結果、この分解産物は4, 4’−ジアミノジフェニルメタンと同定された(図3
)。HDCBに関しては、HFBA誘導体化された分解産物を解析した。GCにて1つのピーク(ピーク4)が検出され、マススペクトル解析の結果、ヘキサメチレンジアミンのHFBA誘導体とスペクトルが一致した(図4)。このことから、HDCBの加水分解産物はヘキサメチレンジアミンであると考えられた。以上の結果より、精製したウレタナーゼによって、TDCB、MDCB、HDCBの3種類のウレタン化合物のウレタン結合が加水分解され、それに対応するアミンが分解産物として生成することが明らかとなった。
発明の効果
本発明のウレタナーゼは、ウレタン化合物、特にポリウレタンの集約的分解処理、土壌中やコンポスト中に添加することによる分解処理や肥料として再資源化等への応用が期待される。ポリウレタン中のエステル結合分解菌であるペニバチルスアミロリチカスTB−13株またはコマモナスアシドボランスTB−35株、またはそれらの酵素と本発明のウレタナーゼを共存させることにより、ポリウレタンの完全分解が可能となる。
図1は、誘導物質としてアニリンを添加したときの、ロドコッカス エクイ TB−60株の生育量、ウレタン加水分解活性、アミダーゼ活性、及びエステラーゼ活性を経時的に測定した結果である。 図2は、TDCBを基質とした場合の分解産物の分析結果である。 図3は、MDCBを基質とした場合の分解産物の分析結果である。 図4は、HDCBを基質とした場合の分解産物の分析結果である。

Claims (12)

  1. 下記の性質を有する、ロドコッカス属に属する微生物由来ウレタナーゼ:
    (a)ウレタン化合物の分解能を有し;
    (b)分子量が、55,000であり;
    (c)至適温度は、45℃であり;
    (d)至適pHは、5.5である。
  2. ロドコッカス属に属する微生物がロドコッカス エクイである、請求項1記載の酵素。
  3. ロドコッカス属に属する微生物がロドコッカス エクイ TB−60株である、請求項1記載の酵素。
  4. ウレタン化合物が低分子量化合物である、請求項1〜3の何れか一項に記載の酵素。
  5. ウレタン化合物がポリウレタンである、請求項1〜3の何れか一項に記載の酵素。
  6. 請求項1〜3の何れか一項に記載の酵素をウレタン化合物と接触させる工程を含む、ウレタン化合物の分解方法。
  7. ウレタン化合物が低分子量化合物である、請求項6記載の方法。
  8. ウレタン化合物がポリウレタンである、請求項6記載の方法。
  9. ポリウレタンの分解方法であって、
    ポリウレタンと請求項1〜3の何れか一項に記載の酵素を接触させる工程、および
    ポリウレタンとポリウレタンのエステル結合分解能を有する微生物または該微生物由来酵素を接触させる工程であって、ここで前記ポリウレタンのエステル結合分解能を有する微生物はペニバチルスアミロリチカスTB−13株またはコマモナスアシドボランスTB−35株である、
    を含む、前記ポリウレタンの分解方法。
  10. 請求項1記載の酵素を生産する方法であって、
    ロドコッカス属の微生物を培養する工程:
    前記微生物から前記酵素を分離・精製する工程:
    からなる、前記酵素の生産方法。
  11. ロドコッカス属の微生物がロドコッカス エクイである、請求項10記載の方法。
  12. ロドコッカス属の微生物がロドコッカス エクイ TB−60株である、請求項10記載の方法。
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