JP3897530B2 - 苛酷な系におけるスケールの抑制方法及びこれのための新規スケール防止剤 - Google Patents

苛酷な系におけるスケールの抑制方法及びこれのための新規スケール防止剤 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の分野)
この発明は、一般に苛酷な(harsh)条件下に維持されている水性系におけるスケール形成の抑制方法に関する。本発明はより詳しくは、炭酸カルシウムスケールが抑制される改良クラフト方法に関する。この発明の1つの特徴において、工業水性系における炭酸カルシウムスケール形成の防止において有用な新規ポリマースケール防止剤が提供される。
【0002】
(背景技術)
溶解された無機質の濃度がその溶解限界を超え、この無機質が沈殿する時に、スケールが形成される。スケールは、水性系を利用している多くの種類の工業操作に用いられている装置において問題であり、問題になりうる。
【0003】
ここで用いられている用語「水性系」は、水を含むあらゆる系を含むものとする。これには、冷却水、ボイラー水、脱塩、ガススクラバー、高炉、下水スラッジ温度調節装置、逆浸透蒸発器、紙加工処理、採鉱回路等であって、このような系が温度及びpHの苛酷な条件下で操作されるものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0004】
ここで用いられている用語「苛酷な条件」は、温度が約100℃〜約200℃の範囲にあり、pHが約10〜約14の範囲にある水性系を規定するものである。
【0005】
スケール抑制を必要とする工業用水性操作に用いられる典型的な装置には、ボイラー、蒸発器、熱交換器、その他の熱伝達装置、パイプ、及び水性系と接触するその他のあらゆる装置が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0006】
この出願の目的のためには、このような工業操作は、木材パルプの生産のためのクラフト方法によって例証される。
【0007】
木材パルプは、ほとんどすべてのグレードの紙及び様々な種類の包装製品、例えばドラム及びカートンの製造に用いられる基本的な原料である。
【0008】
木材からパルプを製造するためには、様々な有機化合物、主としてこれらを結合しているリグニンから、セルロース繊維を分離する必要がある。この分離を実施するために、様々な機械的及び化学的方法が用いられており、最も広く用いられている技術は、クラフト又は硫酸塩方法として知られているが、これは、紙製品に高い強度と良好な耐老化性とを与えるパルプを生産するからである。
【0009】
クラフト方法において、木材からリグニンを抽出するために、水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの蒸煮リカー(cooking liquor)(ホワイトリカー)が用いられる。抽出プロセスは、蒸解がまにおいてバッチ式又は連続的に実施される。蒸解がまのpHは一般に、約11〜約14である。
【0010】
リカーの温度は、約150℃〜約175℃に維持されている。完全な蒸解には、約2〜約3時間が通常必要とされる。ついでさらなる処理、例えばその後の使用の前の漂白のために送られる前にパルプが洗浄される。
【0011】
クラフト方法の経済性は、蒸煮リカーの回収に依る。この回収プロセスにおいて、この使用済み蒸煮リカー(ブラックリカー)に含まれている蒸解化学物質は、新しい蒸煮リカーの調製において再使用するために、蒸発器、炉、及び苛性化器を経て回収される。ブラックリカーが供給材料として用いうるようになる前に、ブラックリカーを、通常は45重量%又はそれ以上まで濃縮する必要がある。この濃縮は、多作用蒸発器において実施される。ここにおいて生蒸気が第一装置に導入され(ここにおいてリカーは最高の固体濃度にある)、最終装置まで流れる。このような蒸発器は、1つの長い熱伝達表面として記載することができ、ここにおいてこの目的は、ブラックリカーと蒸気加熱表面との間の有意な接触を与えることにより、水を沸騰させて除去することである。しかしながらこのような蒸発器が抱える共通の問題は、かなり多量の沈積物の形成である。これらは、蒸発器の内壁又は管にこびりつく傾向がある。蒸発器系におけるリカースケール形成の主要源は、不溶性炭酸カルシウムである。
【0012】
このプロセスから生じた蒸煮リカー(ホワイトリカー)は、苛性化器における不完全反応によって、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム、並びに可溶性カルシウム及び沈殿炭酸カルシウムを含んでいる。
【0013】
クラフト方法において、カルシウムは木材から抽出され、高いpH、温度、及び蒸煮リカーにおける炭酸塩の存在によって、このカルシウムは炭酸カルシウムとして沈殿する。スケールの最も目に付く形態は、蒸煮リカー加熱器におけるものである。これらの加熱器は、所望の蒸解がまのプロセス条件を維持しており、多くの場合2〜4週間毎に洗浄する必要がある。
【0014】
スケール形成はまた、リカー分離器スクリーン上に生じることもある。これは今度はリカー流を制限することになり、これはプラント生産を減少させ、場合によっては洗浄のためにプラントの運転停止が必要となる。
【0015】
クラフト方法の水性系において、ここで受ける条件に因って炭酸カルシウムがスケール形成する傾向があるので、このプロセスの中の様々な位置に、スケール防止剤を添加することが実際に必要になる。
【0016】
蒸解がまの中で出会うスケール形成の問題に加えて、スケール形成はまた、木材パルプの漂白を実施するために用いられる装置における問題でもある。クラフト方法によって生産されたパルプは通常、所望の白色度及び強度を得るために、多段階順序において漂白される。この目的のためには、様々な漂白剤が用いられる。塩素又はニ酸化塩素が、パルプに残留するリグニンに最も反応性のある漂白剤である。漂白プラントにおける条件は、クラフト蒸解がまに見られる条件よりも厳しくないが、スケール形成への推進力は有意である。例えばカルシウム濃度は、100ppm以上にも上ることがあり、漂白段階に入る流のpHは、約11よりも高く、温度はさらに高い。
【0017】
前記のことから、条件はクラフト方法の様々な段階、すなわち蒸解がま、漂白プラント、及び蒸発器で、苛酷度が様々であるが、様々な段階内に含まれているこのような水性系は、すべて温度及びpHの苛酷な条件下にあり、従って操作中にスケール形成の問題があることが分かる。
【0018】
従って、蒸解ゾーンにおいて木材チップを蒸解する工程、結果として生じた木材パルプを漂白ゾーンにおいて漂白する工程、及び蒸解ゾーンから来る分離されたリカーを蒸発ゾーンにおいて濃縮する工程を含む木材パルプの生産のためのクラフト方法において、スケール形成を抑制するポリマースケール防止剤を添加することを含む、これへの改良を与えることが実際に必要であることが容易に明らかになる。
【0019】
従って、さもなければこの系に生じる苛酷な条件に因ってこのようなスケール形成がある水性系において、炭酸カルシウムスケールの抑制のための新規方法を提供することが本発明の1つの目的である。
【0020】
本発明のもう1つの目的は、炭酸カルシウムスケールの形成がプラント操作の間に抑制されるような、木材パルプの生産のためのクラフト方法を改良するための方法を提供することである。
【0021】
この発明のさらにもう1つの目的は、工業用水性系の処理に用いるための新規ポリマースケール防止剤を提供することである。
【0022】
この発明のその他の特徴、目的、及びいくつかの利点は、次の明細書及び添付クレームを読めば明らかになるであろう。
【0023】
(発明の要旨)
本発明の1つの実施態様において、本発明者らは、スケール形成カルシウム塩を含む水性液体の処理方法であって、前記水性液体に、
(A)1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンモノマー単位と、
(B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
とを含むポリマースケール防止剤であって、前記ポリマーは、モノマー単位―(CH2−CH=CH―CH2―O)―を含まないところのポリマースケール防止剤をスケール抑制量をもって添加することを含む方法を発見した。
【0024】
本発明のもう1つの実施態様において、新規ポリマースケール防止剤を用いる木材パルプの生産のための改良されたクラフト方法が提供される。
【0025】
従って、蒸解ゾーンにおいて木材チップを蒸解する工程、結果として生じた木材パルプを漂白ゾーンにおいて漂白する工程、及び蒸解ゾーンから来る分離されたリカーを蒸発ゾーンにおいて濃縮する工程を含む木材パルプの生産のためのクラフト方法において、前記蒸解ゾーン、漂白ゾーン、及び蒸発ゾーンのうちの少なくとも1つに、その中でのスケール形成を抑制するのに十分な量で、ポリマースケール防止剤を添加することを含む改良が提供されるが、前記ポリマースケール防止剤は、
(A)1,2−ジヒドロキシ―3−ブテン、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、及びN−(スルホメチル)アクリルアミドから成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位と、
(B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
とを含んでいる。
【0026】
本発明のさらにもう1つの実施態様において、
(A)1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンモノマー単位と、
(B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
とを含む新規ポリマーであって、前記ポリマーは、モノマー単位―(CH2−CH=CH―CH2―O)―を含んでいないポリマーが提供される。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、温度及びpHの苛酷な条件を受ける水性系における炭酸カルシウムスケールが、
(A)1,2−ジヒドロキシ―3−ブテン、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、及びN−(スルホメチル)アクリルアミドから成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位と、
(B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
とを含むポリマースケール防止剤のスケール抑制量を、このような系に添加することによって抑制されうるという本発明者らの発見に基づいている。
【0028】
このようなポリマースケール防止剤は、約1,000〜約100,000、好ましくは約1,000〜約50,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。この出願の目的のためには、重量平均分子量はすべて、ポリエチレングリコール標準あるいはポリスチレンスルホネート標準のどちらかに対する水性ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0029】
この発明の実施において用いられるポリマースケール防止剤の量は、処理される系の種類に依る。本発明によるスケール抑制方法の実施において、選択されたポリマースケール防止剤は、処理される系の金属表面へのスケール形成、これへの沈積、あるいは接着を防止するのに十分な量で、処理される水性系に添加される。一般に、選択されたポリマースケール防止剤の有効量は、約1ppm〜約200ppmの範囲にある。
【0030】
この発明の方法に用いられるポリマースケール防止剤は、単独で、あるいは処理される系において優勢な条件下に安定なその他の既知のスケール抑制剤及び分散剤と組み合わせて用いることができる。しかしながらこのような追加のスケール抑制剤は、ここに記載されているようなポリマースケール防止剤を用いる本発明の方法を実施する時に、満足すべき結果を得る上では必要とされない。
【0031】
ポリマースケール防止剤の特別な適量は、処理される系において通常出会う条件に依るであろう。従ってこのクラフト方法において、ポリマースケール防止剤の最高の適量レベルは、蒸解がまに対してであろうし、漂白プラント及び蒸発器には、より少量しか必要とされないであろう。
【0032】
この発明のここでの好ましい実施態様の実施によって、ここに規定されているようなポリマースケール防止剤の、蒸解がま、漂白プラント、又は蒸発器への添加による木材パルプの生産のためのクラフト方法において改良が得られるが、選択されたスケール防止剤のこのような添加は、スケール防止剤の苛酷な環境へのスケール防止剤の添加のためのこの技術で知られているあらゆる手段によって実施することができる。例えば選択されたスケール防止剤の溶液を、所望の濃度レベルを得るのに十分な量で、蒸解がまに連続的に導入してもよい。この段階における添加は、蒸解がまにおけるスケール形成を防止するのに役立つだけでなく、これによってスケール防止剤が、それらからパルプがスクリーンされ、かつ洗浄される洗浄装置まで持ち越される。
【0033】
蒸解がまへのスケール防止剤の添加に加えて、このようなスケール防止剤はまた、漂白塔、洗浄装置、又は苛性ソーダ抽出塔のうちの1つ又はそれ以上に導入されてもよく、これらは、パルプの脱リグニン(delignification)及び究極的増白を得るために、所望の塩素化及び抽出を可能にするために通常多段階として備えられている。同様に、蒸解がまリカーからの化学物質の効率的回収及び蒸解がまにおいて用いるための新鮮なホワイトリカーを形成するために化学物質の再構成が望まれているので、この方法におけるさらなる使用のために、蒸解がまからこのようなリカーを濃縮するのに役立つ蒸発器への、この発明のポリマースケール防止剤の1つ又はそれ以上の添加は、このような装置において望ましくないスケール形成を減少させるか又は防止するのに役立つであろう。
【0034】
従って、さもなければ望ましくない炭酸カルシウムのスケール形成があるようなクラフト方法のゾーンの1つ又はそれ以上を処理することによって、本発明の方法によって、スケール形成の抑制によるクラフト方法の効率における全体的改良が得られ、これによって今度はより長い操作時間が可能になる。
【0035】
本発明のもう1つの実施態様は、カルシウムのスケール形成塩を有する水性系に用いられる時にスケール防止特性を示す新規群のポリマースケール防止剤である。
【0036】
このような新規スケール防止剤は、1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンモノマー単位と、マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマーであるが、但し前記新規ポリマーは、モノマー単位―(CH2−CH=CH―CH2―O)―を含んでいないという条件があるポリマーである。
【0037】
この新規スケール防止剤ポリマーは、このポリマーにおける総モルパーセントの約1〜約50パーセントの1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンのモル含量を有していてもよい。
【0038】
本発明の1つのここで好ましい実施態様において、新規スケール防止剤組成物は、およそ約4,000の分子量を有する、1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンとマレイン酸との50モルパーセント:50モルパーセントコポリマー;及び約10,000の分子量を有する、1,2−ジヒドロキシ―3―ブテン、マレイン酸、及びアクリル酸の33.3モルパーセント:33.3モルパーセント:33.3モルパーセントターポリマーである。
【0039】
このような新規ポリマースケール防止剤は、水性媒質中の通常のフリーラジカル重合によって調製することができる。このような方法は、当業者によく知られている。一般に、典型的な通常のフリーラジカル重合方法は、反応容器への1つ又はそれ以上のモノマーの添加、ついで適切な塩基での中和を含んでいる。重合触媒もまた、先頭の容器に添加されてもよく、あるいは反応中に徐々に供給されてもよい。水溶性開始剤、例えばあらゆるフリーラジカル又はレドックス開始剤、あるいはこれらの組み合わせを、その他のあらゆる任意モノマーと共に、反応混合物に別々の供給材料として、同じ程度の時間で、通常は4〜6時間にわたって添加する。
【0040】
反応温度は、約90℃〜約100℃に維持する。残留モノマーレベルを低下させるために、添加が終了した後、追加の開始剤を用いてもよい。反応が終了した時、pHを調節するために適切な塩基を添加する。
【0041】
1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンは、テネシー州37662キングスポート、私書箱431、イーストマン・ケミカル社、ファイン・ケミカルズ(Eastman Chemical Company,Fine Chemicals,P.O.Box431,Kingsport,TN37662)(電話番号は1−800−327−8626)から入手することができる。あるいはエポキシブテンを加水分解することによって合成的に製造することができる。
【0042】
(実施例)
次の実施例は、本発明を例証するため、及び本発明を製造及び使用する方法を当業者に教示するためのものである。これらの実施例は、本発明を限定するためのものではない。
【0043】
実施例I
クラフト蒸解がま及び漂白プラントにおける炭酸カルシウムの制御のためのスケール防止剤手順のオートクレーブテスト
様々なポリマースケール防止剤のテストを実施する上で、濃縮合成ブラックリカーを次のように調製した。
【0044】
1000mLビーカーにおいて、4グラム(g)のNa2CO3、2gのインヂュリンAT(沈殿リグニン)、及び16mLの500g/l NaOHを、蒸留水を用いて1000mLの容積まで希釈した。沈殿リグニン及び炭酸ナトリウムが検出されなくなるまで、ビーカーを攪拌プレート上で混合した。溶解されたリカーを、0.45μmフィルターで濾過し、2000mL目盛りシリンダーに移し替えた。このリカーを2リットルの最終容積まで希釈した。
【0045】
スケール防止剤化学物質及びカルシウム溶液の5000ppm活性物質ベースのサンプルを製造した。ガラス製品及びオートクレーブのすべてを、H2SO4の10%溶液を用いて酸洗浄した。16本のB.U.N.管を二重蒸留水20mLで満たし、試験管ラックに置いたが、これは、1つのマトリックス又は8縦列、2横列を満たすものである。オートクレーブ蒸解がまを50℃の温度まで予備加熱した(約30分)。二重蒸留水25mL及び100mL中に所望の活性物質濃度を生じるのに十分なスケール防止剤溶液を、8つの100mL容積フラスコに加えた。濃縮ブラックリカー50mL及び5000ppmカルシウム溶液2mLを各フラスコに加え、これらのフラスコを充填ラインの下2mLまで満たした。これらのフラスコをハンドミックスして、カルシウム添加時に形成したあらゆる沈殿物を再溶解した。フラスコの内容物(100mL)を、オートクレーブ(Lorentzen&Wettreオートクレーブ)に移し替えた。当初カルシウム濃度の評価のために、サンプル2mLをB.U.N.管に移し替えた。オートクレーブをレンチでシールし、オートクレーブ加熱器を、所望の温度どおりにセットした。オートクレーブを回転させ、加熱を開始し、サンプルを下げて熱油浴に入れた。クラフト蒸解がまにおける炭酸カルシウム沈殿の抑制に対する効果を、170℃で30分間評価した。漂白プラントスクリーニングのために、これらのサンプルを100℃に達するようにし、この温度で30分間運転した。加熱を停止し、サンプルを引き上げて油浴から出した。オートクレーブを、除去直後に冷水タブにおいて10分間冷却した。オートクレーブを開け、このリカー2mLを、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過し、最終カルシウムの評価のためにB.U.N.試験管に移し替えた。B.U.N.管すべてを、二重蒸留水を用いて25mLラインまで満たし、パラフィルムを上部に被せた。サンプルをハンドミックスした。検定標準を用いる原子吸光を用いて、カルシウムレベルを測定した。スケール抑制割合パーセントは、下記のように表わされる:
抑制%=濾過されたカルシウム/当初カルシウム×100
次の結果が得られた。
【0046】
各試運転に対して、ブランク(スケール防止剤を含まない)について示されている結果は、本発明の一例ではなく、これらはむしろ比較例である。
【0047】
【表1】
Figure 0003897530
【0048】
【表2】
Figure 0003897530
【0049】
実施例II
ブラックリカー蒸発器においてスケールを制御するためのスケール防止剤化学物質の評価
内径1.5インチ、外径2インチ、長さ12インチのTeflona反応器を、これらのスクリーニング実験において用いた。0.25インチカートリッジ加熱器(600W)を、穴があけられた0.5インチねじ込み径違いブッシュを介して反応器底部の中に挿入した。このブッシュは、底部Teflonaエンドキャップにねじ込まれている。還流凝縮器の24/40すりガラスジョイントを取り付けるために、上部エンドキャップに接着されているステンレス鋼アダプターを用いた。これは、Teflonaスリーブが、すりガラス―ステンレス連結のシーリングを容易にするために挿入されている。蒸煮を100℃で60分間実施した。残りの実験手順は、実施例Iのクラフト蒸解がま及び漂白プラントスクリーニングテスト手順に概略が示されている指示に従って続行した。
【0050】
次の結果が得られた。
【0051】
【表3】
Figure 0003897530
【0052】
実施例III
アクリル酸33.3モルパーセント/マレイン酸33.3モルパーセント/1,2−ジヒドロキシ―3−ブテン33.3モルパーセントのターポリマーの調製
機械攪拌機、還流凝縮器、及びモノマー及び開始剤の連続添加のためのシリンジポンプを備えた、5つ口100mL樹脂フラスコに、蒸留水10.7g、無水マレイン酸12.74g、1,2−ジヒドロキシ―3−ブテンの57重量パーセント溶液20g、及びあらゆる発熱を制御するために冷却を用いる水酸化ナトリウムの50重量パーセント水性液体12.48gを装入した。ついでこの混合物を約98℃まで加熱した。この温度において、蒸留水中に溶解した硫酸鉄七水和物の0.15パーセント溶液0.67gを、反応混合物に添加した。次に、アクリル酸1.87gを反応器に添加し、ついで過硫酸ナトリウム0.145g、30重量パーセント過酸化水素溶液1.06g、及び蒸留水4gから成る開始剤溶液0.34gを添加した。ついで残留開始剤溶液及びアクリル酸7.5gと蒸留水2.22gとの溶液を、約4.5時間にわたって一定速度でフラスコに別々に供給し、一方で、反応温度は90℃〜100℃に維持された。モノマー及び開始剤供給が完了した後、反応をさらに30分間この温度に維持した。ついで30重量パーセント過酸化水素溶液9.86g、過硫酸ナトリウム1.31g、及び蒸留水5gから成る追加の開始剤溶液を、3時間にわたって反応器に供給し、添加後再び30分間保持した。反応を80℃まで冷却し、ニ亜硫酸ナトリウム1.02gと蒸留水3.63gとの溶液を、半時間にわたって添加した。反応混合物をさらに30分間この温度に維持し、ついで室温まで冷却した。13CNMRによって生成物形成が確認された。この生成物は、ポリエチレングリコール(PEG)MW標準を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定された時、約10,000の重量平均分子量を有していた。
【0053】
実施例IV
50モルパーセントマレイン酸/50モルパーセント1,2−ジヒドロキシ―3−ブテンコポリマーの調製
実施例IIIに記載されている反応器に、蒸留水15g、無水マレイン酸15.39g、1,2−ジヒドロキシ―3−ブテンの57重量パーセント溶液24.24g、及びあらゆる発熱を制御するために冷却を用いる水酸化ナトリウムの50重量パーセント水性液体13.80gを装入した。ついでこの混合物を約98℃まで加熱した。この温度において、ついで過硫酸ナトリウム2.57g、30重量パーセント過酸化水素溶液18.86g、及び蒸留水5.49gから成る開始剤溶液を、約4.5時間にわたって一定速度でフラスコに供給し、一方で、反応温度は90℃〜100℃に維持された。モノマー及び開始剤供給が完了した後、反応をさらに30分間この温度に維持した。ついで反応を80℃まで冷却し、ニ亜硫酸ナトリウム1.02gと蒸留水3.63gとの溶液を、半時間にわたって添加した。反応混合物をさらに30分間この温度に維持し、ついで室温まで冷却した。13CNMRによって生成物形成が確認された。この生成物は、ポリエチレングリコール(PEG)MW標準を用いたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定された時、約4,000の重量平均分子量を有していた。
【0054】
ここに開示されている特定の実施例は、主として例証的なものと考えるべきである。記載されているもの以外の様々な変更も、当業者にとってありうることは疑いもなく、このような変更は、これらが添付クレームの精神及び範囲内にある限り、この発明の一部を成すと理解すべきである。

Claims (3)

  1. スケール形成カルシウム塩を含む水性液体の処理方法であって、前記水性液体に、
    (A)1,2−ジヒドロキシ―3−ブテンモノマー単位と、
    (B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
    とを含むポリマースケール防止剤であって、前記ポリマー添加剤が、モノマー単位―(CH2−CH=CH―CH2―O)―を含まないところのポリマースケール防止剤をスケール抑制量をもって添加することを含む方法。
  2. 蒸解ゾーンにおいて木材チップを蒸解する工程、結果として生じた木材パルプを漂白ゾーンにおいて漂白する工程、及び蒸解ゾーンから来る分離されたリカーを蒸発ゾーンにおいて濃縮する工程を含む、木材パルプの生産のためのクラフト方法において、前記蒸解ゾーン、漂白ゾーン、及び蒸発ゾーンのうちの少なくとも1つに、その中でのスケール形成を抑制するのに十分な量でポリマースケール防止剤が添加され、前記ポリマースケール防止剤が、
    (A)1,2−ジヒドロキシ―3−ブテン、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、及びN−(スルホメチル)アクリルアミドから成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位と、
    (B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
    とを含む
    ことを特徴とする方法。
  3. (A)1,2−ジヒドロキシ―3―ブテンモノマー単位と、
    (B)マレイン酸、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、N−第三ブチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ナトリウムアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、及びこれらの塩から成る群から誘導された少なくとも1つのモノマー単位、
    とを含むポリマーであって、前記ポリマーは、モノマー単位―(CH 2 −CH=CH―CH 2 ―O)―を含んでいないポリマー
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