JP3897340B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用紙に関するもので、さらに詳しくは、優れたインク吸収性、定着性を示すと共に、高品質な画質が得られる高白度のインクジェット記録用紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット方式によるプリンターは、多色化が容易なこと、色の鮮明さ、動作時の音の静かさ、高品位の記録物を得られることから、近年その普及は増大しつつある。インクジェットのインクには各種の色素が用いられているが、油溶性の色素を有機溶剤を含む溶液で調整したインクを用いるもの、水溶性の色素を水で調整したインクを用いるもの、顔料色素を分散したインクを用いるもの等がある。この中でも水溶性の色素を用いたインクは印刷の鮮明性や写真調の高品位の記録物を速いスピードにて印刷できるためインクジェットプリンターの主流をなしている。水溶性の色素を用いたインクジェットプリンターのインクにはアニオン性の色素が用いられている。このため、高品位のインクジェットプリンター用の記録用紙では、用紙上でのインクのにじみをおさえるためにインクジェット記録用紙製造時にカチオン性のインク定着剤や耐水化剤等を用いることが多い。また、記録用紙には画像の鮮明な発色性が求められるため高品位の白度も要求される。このため、各種の蛍光増白剤を用いて高白度に染色されたインクジェット記録用紙が製造される。このとき用いられる蛍光増白剤は、製造過程の特性上アニオン性の水溶性蛍光増白剤が多く用いられる。しかしながら、前述したカチオン性定着剤とアニオン性の蛍光増白剤を同時に用いると溶液中で、インク定着剤と蛍光増白剤が結合するため水に不溶化し、結晶が析出したり、また、染色時に要求される高白度が得られない現象が起きることが大きな問題であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決し、カチオン性のインク定着剤とアニオン性の水溶性蛍光増白剤を同時に用いて高品位の白度を有するインクジェット用の受容紙を製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、インクジェット用の記録用紙を染色する際、特定の構造を有する蛍光増白剤を用いることにより前記課題が解決されることを見出し本発明を完成させたものである。すなわち本発明は、
(1)遊離酸の形で下記式(1)で表される蛍光増白剤を有するインクジェット記録用紙、
【0005】
【化2】
【0006】
(式中、スルホン酸基に対するカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属のカチオン又はアンモニウムイオンである。)
(2)カチオン性のインク定着剤を有する(1)記載のインクジェット記録用紙、
(3)インク受容層用塗工液を塗工した(1)または(2)記載のインクジェット記録用紙、
に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明を詳細に説明する。
式(1)の蛍光増白剤はすでにベルギー特許第719065号公報にその構造が開示されており、例えば1モルの4,4'−ジアミノスチルベン−2,2'−ジスルホン酸と2モルの塩化シアヌールを反応させ、得られた化合物に2モルのアニリンジスルホン酸を反応させ、得られた化合物に2モルのジ−2−プロパノールアミンを反応させることによって得られる。または、2モルのアニリンジスルホン酸に2モルの塩化シアヌールを反応させ得られた化合物に1モルの4,4'−ジアミノスチルベン−2,2'−ジスルホン酸を反応し、得られた化合物に2モルのジ−2−プロパノールアミンを反応させることによっても得られる。
【0008】
これらの方法によって得られた式(1)の蛍光増白剤の反応液は、塩酸、硫酸、硝酸等によって、酸析し遊離酸の結晶として取り出したり、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類によって塩析することによって、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の結晶として取り出すことができる。
【0009】
得られた式(1)で表される蛍光増白剤の遊離酸を所望の量の水酸化ナトリウムとともに水に溶解するか、得られた式(1)で表される蛍光増白剤のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩等を水に溶解することによって本発明に使用する蛍光増白剤の通常10〜40質量%の水溶液が得られる。または、得られた反応液をそのまま、もしくは濃縮することによっても本発明に用いる蛍光増白剤が得られる。
【0010】
本発明に使用されるインクジェット記録用紙の基質は、セルロース繊維を主体としたパルプ原料からなる紙が適用され、その組成、製造方法は特に限定されるものではない。例えば湿式抄紙法により製造される紙が用いられる。具体的には、パルプ原料として針葉樹、広葉樹を単独もしくは適宜配合して作製されるクラフトパルプ、サルファイトパルプ、セミケミカルパルプ等の木材パルプが使用される。受容紙上に鮮明な画像を印刷するためには晒パルプが好ましい。また、古紙パルプやバガス、ケナフ、綿、麻、エスパルト、竹、ワラ等の非木材パルプを使用することもできる。
【0011】
パルプ原料への添加薬品としてデンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂等の内添紙力剤、着色剤、硫酸バンドやポリアクリルアミド等の定着剤、更に塗工薬品として前記表面紙力増強剤以外にジアルデヒドデンプン、メラミン樹脂、帯電防止剤、撥水剤、減摩剤、サイズ剤、pH調整剤、防腐剤、分散剤、滑剤や界面活性剤等を必要に応じて使用することができる。
【0012】
本発明の式(1)の蛍光増白剤及びその水溶液は、紙、パルプなどのセルロース系材料の染色に適しており、特にインクジェット記録用紙の染色に適している。インクジェット記録用紙は通常、パルプの叩解、抄紙、サイズプレスの後、インク受容層、光沢層等のオーバーコート層が必要に応じ設けられる。
【0013】
内添法とは、パルプの叩解後、抄紙されるまでの工程で蛍光増白剤を添加することにより着色することができる方法である。まずパルプをパルパー、リファイナー等によって所定の叩解度に叩解してパルプスラリーとなし、これに通常10〜40℃において通常0.01〜4.0%相当(乾燥紙質量あたり純分量)の式(1)の蛍光増白剤またはその水溶液を添加し、更に通常のサイズ剤、硫酸バンド、紙力増強剤、固着剤等を必要に応じて添加した後、常法により抄紙工程、乾燥工程を経て、蛍光増白された着色紙を得る。
【0014】
外添法のサイズプレスとは、抄紙後のサイズプレス工程でサイズプレス液に蛍光増白剤を添加する方法である。抄紙を行った後、シリンダードライヤーで乾燥を行う工程において多数配置されたシリンダードライヤーの中間部に配置されたサイズプレス機により、蛍光増白剤とインク定着剤を含有したサイズプレス塗工液を塗工し、以下乾燥することによって蛍光増白された紙が得られる。前述におけるサイズプレス塗工液は蛍光増白剤とインク定着剤および、式(1)の蛍光増白剤またはその水溶液と、澱粉、PVA、CMC、表面サイズ剤、水等を適宜混合して調整されるものであり、サイズプレス塗工液中の式(1)で表される蛍光増白剤の含有量は通常0.001〜2.0%(純分量)であり、サイズプレス塗工液の塗工量は通上乾燥乾燥抄造紙あたり通常0.1〜3g/m2(乾燥質量)である。
【0015】
外添法のオーバーコーティング層は、パルプをパルパー、リファイナー等によって所定の叩解度に叩解してパルプスラリーとなし、通常の填料、サイズ剤、硫酸バンド、定着剤等を適宜添加したあと常法により抄紙を行い、作製された紙の表面にコートされた層であり、通常白色無機顔料100質量部に対して接着剤5〜30質量部、蛍光増白剤0.05〜10質量部、インク定着剤0.50〜30質量部、分散剤0.1〜0.5質量部に水を加えて、該混合物中の固形物含量が40〜70質量%になるように調製することにより得ることができる。これを上記で作製された紙の表面にコーターやゲートロールで通常5〜40g/m2(乾燥質量)になるように塗工し通常90〜130℃で例えば熱風乾燥機で乾燥して蛍光増白された紙を得る。この場合、コート液に所望によりポリアミド−尿素系樹脂、メラミン系樹脂の耐水化剤、防腐剤、消泡剤を加えることができる。又接着剤としては例えば変性澱粉(酸化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉等が例示される)とスチレン−ブタジエン共重合物との混合物(例えば変性澱粉、スチレン−ブタジエン共重合物=1〜6:4〜9(質量比)の混合物)、ポリビニルアルコール等が用いられる。又白色無機顔料としてはクレー、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、無定形シリカゲル等が例示されこれらは併用して用いてもよい。更に分散剤としてはアクリル系重合物、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が常法により使用される。
【0016】
外添法のオーバーコーティングによってインク受容層を用いることもできる。インク受容層はインクジェットプリンタ用のインクの吸収能を高めた層であって、サイズプレスの後にインク受容層を設けてもよいし、前述したオーバーコーティング層の上に設けることもできる。また、この中に式(1)の蛍光増白剤またはその水溶液を添加することもできる。インク受容層には、顔料および結着剤が使用されており、その配合割合及び形成方法、層構成等特に限定されるものではない。インク受容層の例としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、水溶性ポリビニルアセタール樹脂、その他のビニル系樹脂、酸化澱粉、カゼイン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、シリコーン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノ−ル樹脂、アルキド樹脂、クマロン−インデン樹脂等の水溶性樹脂および水性エマルジョン樹脂を結着剤として使用し、シリカ、クレー、膨潤性雲母、タルク、カオリン、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、合成ゼオライト、アルミナ、酸化亜鉛、リトポン、サチンホワイト等の顔料及び、有機または無機の着色顔料等から構成される。
【0017】
本発明のインクジェット記録用紙はインク受容層を2層以上の積層構成とすることもできる。また、インク受容層上に光沢層用塗料を塗布してもよい。光沢層の塗布方法は特に限定されるものではなく、例えばエアナイフコーティング法、ロッドバーコーティング法、グラビアコーティング法、リバースロールコーティング法等の方法を適宜使用することができる。
【0018】
用いうるカチオン性のインク定着剤としては高級脂肪族アミン、第4級アンモニウム塩型の化合物、第2級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物、カチオン性ポリマー化合物、表面がカチオン性を帯びた無機粒子などが挙げられる。
カチオン性インク定着剤としては例えば1級〜3級アミン塩型の化合物、具体的にはラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等があげられる。第4級アンモニウム塩型の化合物としてはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等があり、さらにはピリジニウム塩型の化合物、具体的にはセチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等があげられ、さらにはイミダゾリン型カチオン性化合物、具体的には2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン等がある。第2級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物としてはジヒドロキシエチルステアリルアミン等がある。
【0019】
カチオン性ポリマー化合物としては、ポリアクリルアミド、ポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、具体的には、アミノメチルアクリルアミド共重合物、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、4級化アンモニウム塩基含有アルキルアクリレート、カチオン化澱粉、キトサン及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物または部分中和物等のカチオン性ポリマー、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジシアンジアミド、ジメチル・ジアリル・アンモニウムクロライドを主成分とするカチオン性ポリマー化合物が挙げられる。
【0020】
表面がカチオン性を帯びた無機粒子としては、例えばアルミナの微粒子、カチオン性基とシリカ粒子表面と反応し得る基を共に有する化合物を反応させたシリカ粒子が挙げられる。
これらのカチオン性物質を紙に塗工する場合の使用量は、0.1〜10g/m2程度、好ましくは0.5〜5g/m2程度である。
【0021】
本発明における式(1)の化合物は内添法、外添法のサイズプレス、外添法のオーバーコーティング、インク受容層に使用することによって高白度のインクジェット記録用紙を製造することができる。これらのうち、外添法のサイズプレス、外添法のオーバーコーティング、インク受容層においてはカチオン性インク定着剤と併用して、インク吸収能が高く、かつ高白度のインクジェット記録用紙を製造することもできる。
【0022】
式(1)の化合物を用いたインクジェット記録用紙は、高品位の白度を有すると共に、良好なインク吸収性、インクの滲み等がない鮮明な画質が得られる印字特性に優れている。
【0023】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0024】
実施例1
20質量部の塩化シアヌールを80質量部の水と40質量部の氷と0.1質量部のノニオン系の分散剤を用いて分散した。この分散液に32.7質量部のアニリン−2,5−ジスルホン酸を加えた。温度を5℃まで氷を加えて冷却し、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ちながら温度を5.0から25℃に3時間かけて上げていった。この溶液に19.5質量部の4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸を水酸化ナトリウムによってpHを9.5から10.5になるように溶解した水溶液(130質量部)を3時間かけて滴下した。その間、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0から4.5に保ち、温度は35から50℃に徐々に上げていった。この溶液に18質量部のジ−2−プロパノールアミンを加え水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを8.5から9.0に保ちながら80℃にて3時間反応した。得られた反応液に塩酸を加えてpH0.6とし、沈殿してきた結晶を濾過して式(1)で表される化合物を得た。この水を含む結晶50質量部に水80質量部を加え、水酸化ナトリウムによってpHを8.5に調整し、式(1)で表される化合物のナトリウム塩を15質量%含有する水溶液を得た。(水中のλmax=348nm)
【0025】
(インクジェット記録用紙用の受容層用塗工液を用いた外添法オーバーコーティング)
実施例2
超微粉末シリカ(水澤化学工業社製、商品名:ミズカシルP−78A)100部、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製、商品名:ゴーセノールNM−11)30部、カチオン性染料定着剤であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリマーの第4級アンモニウム塩)(センカ社製、商品名:HP−126A)固形分10部、式(1)の化合物のナトリウム塩の水溶液を蛍光増白剤純分として0.9部を用い塗工液濃度(固形分)が13%になるように水で調製し受容層用塗工液を得た。このインク受容層用塗工液を乾燥質量5g/m2になるように、市販中性PPC用紙にバーコーターで塗工し、120℃で乾燥して受容層つきの蛍光増白された紙を作製し、分光白色度測色計(SC−10W:スガ試験機株式会社製)を用いて測色した白色度(ΔW)を表−1に示す。
【0026】
比較例1
式(1)の代わりに下記式(2)の化合物(特公昭51−16060 実施例1の化合物)を用いる以外は実施例2と同様にして受容層つきの蛍光増白された紙を作製し、測色した白色度(ΔW)を表−1に示す。
【0027】
比較例2
式(1)の代わりに下記式(3)の化合物(ベルギー特許第719065号公報Exemple 19の化合物)を用いる以外は実施例2と同様にして受容層つきの蛍光増白された紙を作製し、測色した白色度(ΔW)を表−1に示す。
【0028】
比較例3
式(1)の代わりに下記式(4)の化合物(ベルギー特許第719065号公報Exemple 4の化合物)を用いる以外は実施例2と同様にして受容層つきの蛍光増白された紙を作製し、測色した白色度(ΔW)を表−1に示す。
【0029】
比較例3
式(1)の代わりに下記式(5)の化合物(特開昭60−158266記載の化合物)を用いる以外は実施例2と同様にして受容層つきの蛍光増白された紙を作製し、測色した白色度(ΔW)を表−1に示す。
【0030】
【化3】
【0031】
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、高品位の白度を有すると共に、良好なインク吸収性、インクの滲み等がない鮮明な画質が得られる印字特性に優れたインクジェット記録用紙が提供される。
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