JP3896846B2 - プリント配線板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高速高周波信号を必要とするプリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の高性能・多機能化により、電子回路は高速・高周波化している。
【0003】
プリント配線板は、電気的接続を果たすだけでなく、電子回路の使用周波数に適合した信号伝達機能を有する必要がある。
【0004】
安定した信号伝達を行なうためには、特性インピーダンス(characteristic impedance:電子回路を高周波信号が伝播するときに生じる抵抗(電圧と電流の比)で電子回路に固有のパラメータ。電子機器の出力側と入力側のインピーダンスが合わない場合、回路上に反射による定在波が発生し、エネルギーロスが生じる。)を安定させるということが重要となる。
【0005】
電子回路の入出力デバイスの特性インピーダンスをマッチングさせることで信号を効率よく伝送し、デバイス性能およびセット性能を向上させることが必要となる。
【0006】
特性インピーダンスは、プリント配線板を構成している材料にも影響される。特に材料の誘電体と導体の構造に影響され、比誘電率が安定していると特性インピーダンスも安定することとなる。
【0007】
以下に従来のプリント配線板の構造を説明する。
【0008】
図9は従来のプリント配線板の構造の概略を示す図であり、絶縁基板21上に信号層23が形成されており、図9に示すように絶縁基板21は誘電体であるガラス繊維の長繊維24に、樹脂25を含浸させたものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
構成材料の比誘電率が安定していれば、均一な誘電体が形成されるのであるが、上記従来のプリント配線板の構造では絶縁基板としての誘電体の比誘電率は樹脂と繊維の条件に左右されやすく、前記誘電体であるガラス繊維と樹脂の比誘電率は6.6:3.9と異なっている。
【0010】
上記の場合、ガラス繊維はEガラスを用い、樹脂はエポキシ樹脂を用いている。
【0011】
さらに、図9に示すように、ガラス長繊維の縦糸と横糸がランダムに分布配置しているため、樹脂の充填量のバラツキが発生し、総合的な比誘電率にバラツキを生じさせるものとなっている。
【0012】
また、ガラス長繊維の縦糸と横糸がクロスする部分では厚み寸法が異なるため(図10)、この誘電体層の上に配置された回路の位置によっては比誘電率が異なり、安定した特性インピーダンスを保つことが困難になる。
【0013】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、プリント配線板の構成材料である誘電体層の比誘電率を均一にさせるために絶縁基材の樹脂と繊維を、ほぼ同体積で、かつ分布を均一にし、特性インピーダンスを安定させることで、高速信号および高周波回路に適する伝送線路を形成することのできるプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明は、以下の構成を有する。
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁基板または絶縁層と導体回路とを備えたプリント配線板であって、前記絶縁基板または絶縁層は基材に樹脂が含浸されたプリプレグが硬化されたものであり、前記プリプレグは、一定の大きさをもつ容器に基材を構成する短繊維を敷き詰め、前記短繊維の高さ近傍となるように樹脂を前記容器内に均一に分布させ、前記樹脂が半硬化状態となった単位シートを形成し、複数の前記単位シートから構成されたものであることを特徴とするプリント配線板である。絶縁層の基材と樹脂が、ほぼ同体積で、かつ均一に配置分布されることにより、均一な誘電率を備えた絶縁基板上または絶縁層上に導体回路を形成することができ、特性インピーダンスを安定させることで、高速信号および高周波回路に適したプリント配線板を提供することができる。
【0016】
本発明の請求項2の発明は、特に、前記基材と前記樹脂はともに誘電体であることを特徴としている。これにより、ともに誘電体である絶縁層の基材と樹脂が均一に配置分布されることにより、均一な誘電率を備えた絶縁基板上または絶縁層上に導体回路を形成することができる。
【0017】
また、前記基材と前記樹脂は絶縁基板または絶縁層の平面上及び断面上において略均一に混在分布されることにより、基材の繊維と樹脂の分布を平面上及び積層後の断面構造において均一にすることで、絶縁基板または絶縁層の誘電率を安定することができるという作用を有する。
【0018】
また、基材は、短繊維で構成されることにより、基材と樹脂とを均一に混在分布させることが可能となる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、前記導体回路は電源層とグランド層と信号層であり、かつ前記各層は絶縁基板を介して構成されている。これにより、多層構造のプリント配線板において、安定した誘電率を備えた絶縁層を介して電源層、グランド層、及び信号層上に導体回路が形成されたプリント配線板を提供することができる。
【0020】
特に、基材の比誘電率と樹脂の比誘電率は略同一あるいは近似値にすることで、絶縁基板または絶縁層の誘電率をさらに安定することができるという作用を有する。
【0021】
特に、基材は短繊維の不織布で構成されることにより、従来の織布での縦糸と横糸の重なりによる基材の誘電率のバラツキを低減することができるという作用を有する。
また、不織布は、複数の単位シートからなり、その単位シートは短繊維が互いに重なり合わない構造で形成されているというもので、これにより絶縁基板または絶縁層の誘電率をさらに安定させることができる。
【0023】
本発明の請求項4における発明は、特に、信号層の導体回路に使用する周波数帯域は、800MHz〜5GHzであることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板というもので、絶縁基材の誘電率が安定することにより、前記絶縁基板を介してなる導体回路が安定し、800MHz〜5GHzの周波帯域において特に安定した効果を示すプリント配線板を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項5における発明は、短繊維はアラミド繊維であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板というもので、短繊維にアラミド繊維を使用することによって基材の強靭性や耐熱性を向上させるとともに、含浸する樹脂の誘電率と近値させることが容易となり、絶縁基板または絶縁層の誘電率をさらに安定させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(実施の形態)
以下に本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態におけるプリント配線板の断面図を示す図であり、図2は本発明の実施の形態における短繊維の概略を示す図であり、図3、図4は本発明の実施の形態における短繊維と樹脂のシートの概略を示す図であり、図5、図6、図7は本発明の実施の形態におけるプリプレグの概略を示す図であり、図8は本発明の実施の形態におけるプリプレグの断面を示す図である。
【0028】
図1〜図8において、1はプリント配線板、2は絶縁基板、3は絶縁層、4は導体回路、5は短繊維、6は樹脂、7はプリプレグ、8は電源層、9はグランド層、10は信号層、11は導通孔、12は単位シート、13は容器である。
【0029】
まず、本発明の実施の形態におけるプリント配線板について説明する。
【0030】
図1は本発明の実施の形態による4層構造の多層のプリント配線板の断面図である。
【0031】
このプリント配線板の電源層8とグランド層9と信号層10は、絶縁基板2あるいは絶縁層3を介して形成された導体回路である。
【0032】
前記絶縁基板2は基材に樹脂が含浸されたものであり、前記基材と樹脂は略均一に混在分布されており、また前記基材は不織布に樹脂を含浸したものを複数枚積層し構成されている。
【0033】
このプリント配線板を構成する絶縁基板2、絶縁層3は、図5、図6、図7に示すように基材に樹脂を含浸させた半硬化状態のプリプレグ7を複数枚積層したのち加熱・加圧し硬化されたものである。
【0034】
ここでプリプレグ7の構成について図面を用いて説明する。
【0035】
本発明のプリプレグ7は、基材とそれに含浸された樹脂からなる複合材料であり、基材は短繊維を用いた不織布として構成されている。短繊維を使用することによって、地合にムラのないプリプレグを構成し、誘電率を安定させるのである。
【0036】
すなわち長繊維で織布として構成されている基材は強度は高いものの、従来の課題において説明したように、布の地合にムラが出やすく、均一な分布になりにくいのでプリプレグシートの上面に形成される導体回路の誘電率が不安定になる要因となる。
【0037】
また短繊維にアラミド繊維を使用することによって基材の強靭性や耐熱性を向上させるとともに、含浸する樹脂の誘電率と近値させることが可能となる。
【0038】
ここで、本発明の基材の構成について以下詳細に説明する。
【0039】
図2に短繊維として切断されたアラミド繊維を簡易的に示す。
【0040】
アラミドの短繊維5の直径をr、長さをhとすると、その体積はπr2hとなる。
【0041】
また、図3に示すような一定の大きさをもつ容器13に敷き詰められた短繊維5の個数をkとすると、容器13内の全ての短繊維5の占める体積は、πr2h×kとなる。
【0042】
この短繊維の総体積とほぼ同体積の樹脂を、短繊維の高さr近傍となるように均一に分布させ、半硬化状態の単位シート12を形成する。
【0043】
容器13内へk個の短繊維5を均一に敷き詰める方法および樹脂を均一に分布させる方法は、拡大鏡で観察しながら人為的に行うこともできるし、容器13に一定時間超音波により振動を与えることによって均一に分布させる方法もあるが、特に限定するものではない。
【0044】
また上記の事例では、容器13内の短繊維の方向を一定方向としているが、図4に示すように異なる方向を混在させることも可能である。いずれの場合においても、特に重要なことは、短繊維どうしが重ならない不織布構成となる基材を製作することである。
【0045】
この単位シート12を複数枚準備し、平面上で隣接接合し、さらにそれを積層することによって、図5に示すような一定の大きさ及び厚みを有するプリプレグ7を形成することができる。
【0046】
このプリプレグ7は、短繊維と樹脂が均一に分布している単位シート12を複数枚用いて構成されたものであるから、全体的に短繊維で構成された基材とそれに含浸された樹脂は均一な分布の構成を有するものであるといえる。
【0047】
また図6に示すように、単位シート12内の短繊維の方向が積層する毎に互いに垂直になるように積層することも可能であるし、互いに所定の角度をもたせて積層することも可能である。
【0048】
さらに、図7に示すように、単位シート12の位置を積層する毎に一定量ずつ横方向へずらすことによってプリプレグ7の物理的強度を向上させることができる。
【0049】
具体的な実施の形態として、現在プリント配線板の材料として電気的、物理的強度が最も安定している場合におけるプリプレグの構成について説明する。
【0050】
この場合におけるプリプレグ(厚さ約100μm)の単位面積(1cm×1cm)当たりのアラミド不織布基材を構成する短繊維の総量は、0.0072〜0.0075gである。
【0051】
また、プリプレグを構成するアラミド不織布基材とそれに含浸された樹脂との割合は、5.3:47〜50:50で構成されたものが最も適したものである。
【0052】
この構成を本発明の実施の形態として適用すると以下の通りとなる。
【0053】
(1)直径15μmのアラミド繊維を長さ3mmにカットし、アラミドの短繊維とする。
【0054】
(2)前記短繊維を容器(縦1cm×横1cm×高さ0.5cm)内に互いに重ならないように敷き詰める。敷き詰める短繊維の総数は、333〜354本とする。
【0055】
(3)短繊維の総量と含浸させる樹脂量の割合が47:53〜50:50となるような量、すなわち0.0072〜0.0085gの熱硬化性のエポキシ樹脂を容器に入れ、短繊維と樹脂を略均一に混在分布させる。
【0056】
なお、本実施の形態において使用したアラミド繊維の比誘電率は3.6〜3.9であるので、エポキシ樹脂の比誘電率を約3.6〜3.9であるものを選定し使用することによって、略同一の比誘電率とすることができる。従来のガラス繊維に含浸させて使用したエポキシ樹脂等多数の種類があり、選定は比較的容易である。
【0057】
(4)容器内の樹脂を指触乾燥し、半硬化状態の単位シートを作成する。
【0058】
(5)単位シートを複数作成し、平面上で隣接接合し、さらにそれを積層することによって、図5〜図7に示すようなプリプレグ(厚さ90〜110μm)を形成することができる。
【0059】
なお、単位シートの積層枚数あるいは樹脂の比重及び短繊維の間隔によって、プリプレグの厚さを決定することができる。
【0060】
この不織布基材と樹脂を含浸した単位シートを複数枚用いて形成したプリプレグにおいては、いかなる大きさや厚みであっても単位体積あたりの樹脂の分布は均一であるので短繊維と樹脂の分布は略均一となる。
【0061】
すなわち基材と樹脂の関係は図8に示すように、前記絶縁層上の平面上および断面上において略均一に混在分布されており、しかも基材の比誘電率と樹脂の比誘電率を略同一とすることができる。
【0062】
したがって本実施の形態のプリプレグを採用することにより、プリント配線板の絶縁層の誘電率も安定させることができ、板厚のバラツキも低減することができる。
【0063】
なお本実施の形態においては、単位シート12の大きさを縦1cm×横1cmとしたが、これに限定するものではない。
【0064】
上記構成の本発明のプリプレグを絶縁層として用いた場合のプリント配線板における特性インピーダンスについて従来と比較しながら説明する。
【0065】
通常、特性インピーダンスは絶縁層を構成する材料の比誘電率によって、影響を受ける。
【0066】
従来のプリント配線板においては、ガラス長繊維と樹脂の混合比率が7:3という値のプリプレグを採用しているものが多く、ガラス長繊維と樹脂の比誘電率は6.6:3.9と2倍近く異なるため、特性インピーダンスをコントロールするのは困難であった。
【0067】
また長繊維を用いているため、繊維と樹脂の配置にバラツキが出やすく、このことも特性インピーダンスをコントロールさせにくい要因の一つとなっていた。
【0068】
本発明の多層のプリント配線板を用いた場合、誘電体としての絶縁基板、あるいは絶縁層のアラミド短繊維とエポキシ樹脂の混合比率は47:53〜50:50であり、アラミド短繊維とエポキシ樹脂の比誘電率は略同一にすることが可能となる。
【0069】
この構成により絶縁基板、あるいは絶縁層の比誘電率が安定した構造となるので、絶縁層と導体の構造が一定及び同一寸法との条件であれば、プリント配線板のどの回路上においても特性インピーダンスは安定する。特に、信号層の導体回路に使用する周波数帯域が800MHz〜5GHzである場合においてその効果は顕著となる。
【0070】
本発明の短繊維の体積と樹脂の体積をほぼ一定量にし、短繊維の直径の高さにあわせたシートを作成し、前記シートを積層した不織布をプリプレグとして用いることによって、積層時の板厚のバラツキを軽減させ、比誘電率を安定させることによって、特性インピーダンスを安定させることができる。
【0071】
【発明の効果】
以上のように本発明は、プリント配線板の構成材料である絶縁基材を短繊維とし、前記短繊維の体積と樹脂の体積をほぼ一定量にして、分布が均一なプリプレグを用いるので、基材と樹脂の比誘電率の分布を一定にすることができ、特性インピーダンスを安定させることができる。
【0072】
また、基材と樹脂の比誘電率を同一、あるいは近似値のものを選ぶことによって、特性インピーダンスを安定させ、高速信号および、高周波回路に適する伝送線路が形成できるプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるプリント配線板の断面図
【図2】本発明の実施の形態における短繊維の概略図
【図3】本発明の実施の形態における短繊維と樹脂のシートの概略図
【図4】本発明の実施の形態における短繊維と樹脂のシートの概略図
【図5】本発明の実施の形態におけるプリプレグの概略図
【図6】本発明の実施の形態におけるプリプレグの概略図
【図7】本発明の実施の形態におけるプリプレグの概略図
【図8】本発明の実施の形態におけるプリプレグの断面図
【図9】従来のプリント配線板の概略断面図
【図10】従来のプリント配線板の絶縁基板の拡大断面図
【符号の説明】
1 プリント配線板
2 絶縁基板
3 絶縁層
4 導体回路
5 短繊維
6 樹脂
7 プリプレグ
8 電源層
9 グランド層
10 信号層
11 導通孔
12 単位シート
13 容器

Claims (5)

  1. 絶縁基板または絶縁層と導体回路とを備えたプリント配線板であって、
    前記絶縁基板または絶縁層は基材に樹脂が含浸されたプリプレグが硬化されたものであり、
    前記プリプレグは、一定の大きさをもつ容器に基材を構成する短繊維を敷き詰め、前記短繊維の高さ近傍となるように樹脂を前記容器内に均一に分布させ、前記樹脂が半硬化状態となった単位シートを形成し、複数の前記単位シートから構成されたものであることを特徴とするプリント配線板。
  2. 前記基材と前記樹脂は、ともに誘電体であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
  3. 導体回路は電源層とグランド層と信号層であり、かつ前記各層は絶縁基板を介して構成された多層のプリント配線板であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
  4. 信号層の導体回路に使用する周波数帯域は、800MHz〜5GHzであることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板。
  5. 短繊維はアラミド繊維であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
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