JP3896647B2 - 加工性に優れた高強度鋼管の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超微細結晶粒を有し、加工性に優れた高強度鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材には、強度のみでなく、延性・靱性が高いことが必要で、従来から、強度と延性のバランスがよい鋼材が要望されている。
結晶粒の微細化は、強度、靱性・延性をともに向上させうる数少ない手段として重要である。結晶粒の微細化の方法としては、オーステナイト粒の粗大化を防止して、微細オーステナイトからオーステナイト−フェライト変態を利用しフェライト結晶粒を微細化する方法、加工によりオーステナイト粒を微細化しフェライト結晶粒を微細化する方法、あるいは焼入れ焼戻し処理によるマルテンサイト、下部ベイナイトを利用する方法などがある。
【0003】
なかでも、オーステナイト域における強加工とそれに続くオーステナイト−フェライト変態によりフェライト粒を微細化する制御圧延が、鋼材製造に広く利用されている。また、微量のNbを添加しオーステナイト粒の再結晶を抑制してフェライト粒を一層微細化することも行われている。オーステナイトの未再結晶温度域で圧延加工を施すことにより、オーステナイト粒が伸長し粒内に変形帯を生成して、この変形帯からフェライト粒が生成され、フェライト粒が一層微細化されるのである。さらにフェライト粒を微細化するために、加工の途中あるいは加工後に冷却を行う、制御冷却も利用されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した方法では、フェライト粒径で4〜5μm 程度までの微細化が限度であり、また、鋼管の製造に適用するには、設備の改造を含む大幅な工程変更が必要となり、コスト面で限界があった。
600MPaを超える引張強さの高強度鋼管は、C含有量を0.30%以上に高めた材料、あるいはC含有量を高めさらに他の合金元素を多量に添加した材料を用いて製造されている。しかし、このようにして強度を高められた高強度鋼管では、伸び特性が低下するため、通常、強加工を施すことは避け、強加工を必要とする場合には、加工途中で中間焼鈍を施して、その後さらに焼ならし、または焼入れ焼戻し等の熱処理を行っていた。しかし、中間焼鈍等の熱処理を施すことは工程的に複雑となる。
【0005】
このようなことから、中間焼鈍を行うことなく高強度鋼管の強加工を可能とすることが要望され、高強度鋼管の加工性向上のために、結晶粒のさらなる微細化が望まれていた。
本発明は、上記した問題を有利に解決し、超微細結晶粒を有し、加工性に優れた引張強さ600MPa以上の高強度鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段
【0010】
また、本発明は、重量%で、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成を有し、鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径di(μm )で、外径ODi (mm)の素材鋼管を加熱し、平均圧延温度θm (℃)、合計縮径率Tred (%)の絞り圧延を施し外径ODf (mm)の製品管とする鋼管の製造方法において、前記絞り圧延を400 〜750 ℃の温度範囲で、かつ前記平均結晶粒径di(μm )、前記平均圧延温度θm(℃)および前記合計縮径率Tred (%)の関係が次(1)式
【0011】
【数2】
Figure 0003896647
【0012】
(ここに、di:素材鋼管の平均結晶粒径(μm )、θm:平均圧延温度(℃)=(θi+θf)/2、θi:圧延開始温度、θf:圧延終了温度、Tred :合計縮径率(%)=(ODi-ODf)×100 /ODi、ODi :素材鋼管外径(mm)、ODf :製品管外径(mm))を満足する絞り圧延とすることを特徴とする鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径が2μm 以下の超微細粒を有する高強度鋼管の製造方法である。また、本発明では、前記素材鋼管の加熱または均熱を750 ℃以下とするのが好ましく、また、本発明では、前記絞り圧延が潤滑下での圧延とするのが好ましい。
また、本発明では、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Cu :1%以下、 Ni :2%以下、 Cr :2%以下、 Mo :1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよく、また、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Nb :1%以下、V: 0.3 %以下、 Ti 0.2 %以下、B: 0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部 Fe および不回避的不純物からなる組成としてもよく、また、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 REM 0.02 %以下、 Ca 0.01 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよい。
また、本発明では、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Cu :1%以下、 Ni :2%以下、 Cr :2%以下、 Mo :1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および Nb :1%以下、V: 0.3 %以下、 Ti 0.2 %以下、B: 0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよく、また、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Cu :1%以下、 Ni :2%以下、 Cr :2%以下、 Mo :1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および REM 0.02 %以下、 Ca 0.01 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよく、また、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Nb :1%以下、V: 0.3 %以下、 Ti 0.2 %以下、B: 0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および REM 0.02 %以下、 Ca 0.01 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよい。
また、本発明では、前記組成を、C: 0.30 超〜 0.70 %、 Si 0.01 2.0 %、 Mn 0.01 2.0 %、 Al 0.001 0.10 %を含有し、さらに、 Cu :1%以下、 Ni :2%以下、 Cr :2%以下、 Mo :1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、 Nb :1%以下、V: 0.3 %以下、 Ti 0.2 %以下、B: 0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上、および REM 0.02 %以下、 Ca 0.01 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成としてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、素材として鋼管を用いる。素材鋼管の製造工程については、とくに限定しない。高周波を利用した電気抵抗溶接法による電気抵抗溶接鋼管(電縫管)、オープン管両エッジ部を固相圧接温度域に加熱し圧接接合による固相圧接鋼管、鍛接鋼管、およびマンネスマン式穿孔圧延による継目無鋼管等いずれも好適に使用できる。
【0014】
つぎに、素材鋼管および製品鋼管の化学組成の限定理由を説明する。
C:0.30超〜0.70%
Cは、基地中に固溶あるいは炭化物として析出し、鋼の強度を増加させる元素であり、また、硬質な第2相として析出したセメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトが高強度化と一様伸びの増加に寄与する。引張強さ600MPa以上の所望の強度を確保するためには、Cは、0.30%超以上の含有を必要とするが、0.70%を超えて含有すると延性が劣化する。このため、Cは、0.30超〜0.70%の範囲に限定した。
【0015】
Si:0.01〜2.0 %
Siは、脱酸剤として作用するとともに、基地中に固溶し鋼の強度を増加させる。この効果は、0.01%以上、好ましくは0.10%以上の含有で認められるが、2.0 %を超える含有は延性を劣化させる。このため、Siは0.01〜2.0 %の範囲に限定した。なお、好ましくは、強度延性バランスの点から0.10〜1.5 %の範囲である。
【0016】
Mn:0.01〜2.0 %
Mnは、鋼の強度を増加させる元素であり、第2相としてのセメンタイトの微細析出、あるいはマルテンサイト、ベイナイトの析出を促進させる。このような効果は0.01%以上の含有で認められるが、2.0 %を超える含有は延性を劣化させる。このため、Mnは0.01〜2.0 %の範囲に限定した。なお、強度延性バランスと溶接性の観点からはMnは0.2 〜1.3 %の範囲が好ましい。
【0017】
Al:0.001 〜0.10%
Alは、結晶粒を微細化する作用を有している。結晶粒微細化のためには、少なくとも0.001 %以上の含有を必要とするが、0.10%を超えると酸素系介在物量が増加し清浄度が劣化する。このため、Alは0.001 〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.015 〜0.06%である。
【0018】
上記した基本組成に加えて、次に述べる合金元素群を単独あるいは複合して添加してもよい。
Cu:1%以下、Ni:2%以下、Cr:2%以下、Mo:1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、Moはいずれも、鋼の焼入れ性を向上させ、強度を増加させる元素であり、必要に応じ1種または2種以上を添加できる。これら元素は、変態点を低下させ、フェライト粒あるいは第2相を微細化する効果を有している。しかし、Cuは多量添加すると熱間加工性が劣化するため、1%を上限とした。Niは強度増加とともに靱性を改善するが、2%を超えて添加しても効果が飽和し経済的に高価となるため、2%を上限とした。Cr、Moは多量添加すると溶接性、延性が劣化するうえ経済的に高価となるため、それぞれ2%、1%を上限とした。なお、好ましくは、Cu: 0.1〜0.6 %、Ni: 0.1〜1.0 %、Cr: 0.1〜1.5 %、Mo:0.05〜0.5 %である。
【0019】
Nb:0.1 %以下、V:0.3 %以下、Ti:0.2 %以下、B:0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Nb、V、Ti、Bはいずれも、炭化物、窒化物または炭窒化物として析出し、結晶粒の微細化と高強度化に寄与する。とくに高温に加熱される接合部を有する鋼管では、接合時の加熱過程での結晶粒の微細化や、冷却過程でのフェライトの析出核として作用し、接合部の硬化を防止する効果もあり、必要に応じ1種または2種以上添加できる。しかし、多量添加すると、溶接性と靱性・延性が劣化するため、Nbは0.1 %以下、Vは0.3 %以下、Tiは0.2 %以下、Bは0.004 %以下に限定した。なお、好ましくは、Nb: 0.005〜0.05%、V:0.05〜0.1 %、Ti: 0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.0020%である。
【0020】
REM :0.02%以下、Ca:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種
REM 、Caは、いずれも介在物の形状を調整し加工性を向上させる作用を有しており、さらに硫化物、酸化物または硫酸化物として析出し、接合部を有する鋼管では、接合部の硬化を防止する効果もあり、必要に応じ1種または2種添加できる。しかし、REM :0.02%、Ca:0.01%を超えると介在物が多くなりすぎ清浄度が低下し、延性が低下する。このため、REM :0.02%以下、Ca:0.01%以下に限定した。なお、REM :0.004 %未満、Ca:0.001 %未満ではこの効果が少ないため、REM :0.004 %以上、Ca:0.001 %以上とするのが好ましい。
【0021】
素材鋼管および製品鋼管は、上記した成分のほか、残部Feおよび不避的不純物からなる。
不可避的不純物としては、N:0.010 %以下、O:0.006 %以下、P:0.025 %以下、S:0.020 %以下が許容される。
N:0.010 %以下
Nは、Alと結合し結晶粒を微細化するに必要な量、0.010 %までは許容できるが、それ以上の含有は延性を劣化させるため、0.010 %以下に低減するのがこのましい。
【0022】
O:0.006 %以下
Oは、酸化物として清浄度を劣化させるため、できるだけ低減するのが好ましいが、0.006 %までは許容できる。
P:0.025 %以下
Pは、結晶粒界に偏析し、靱性を劣化させるため、できるだけ低減するのが好ましいが、0.025 %までは許容できる。
【0023】
S:0.020 %以下
Sは、硫化物として清浄度を劣化させるため、できるだけ低減するのが好ましいが、0.020 %までは許容できる。
つぎに、製品鋼管の組織について説明する。
本発明の製品鋼管の組織は、フェライトと、面積率で30%超のフェライト以外の第2相からなり、鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径が2μm 以下である鋼管である。
【0024】
フェライト以外の第2相としては、マルテンサイト、ベイナイト、セメンタイトがあり、それらが単独あるいは複合して析出してもよい。第2相の面積率は30%超とする。析出した第2相は、強度、一様伸びの向上に寄与し、鋼管の強度、延性を向上させるが、このような効果は第2相の面積率が30%以下では少ない。フェライト以外の第2相の面積率は30%超好ましくは60%以下とするのが好ましい。60%を超えるとセメンタイトの粗大化のため延性が劣化する。
【0025】
平均結晶粒径が2μm を超えると、延性の著しい向上がなく、加工性の著しい向上が得られない。
本発明における平均結晶粒径は、鋼管長手方向に直角な断面を、ナイタール液で腐食し光学顕微鏡または電子顕微鏡で組織観察し、200 個以上の粒の円相当系を求め、その平均値を用いた。なお、第2相の粒径は、第2相がパーライトの場合は、パーライトコロニー境界を、ベイナイト、マルテンサイトの場合にはパケット境界を粒界として、粒径を測定した。
【0026】
つぎに、本発明の鋼管の製造方法について説明する。
上記した組成を有し、鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径di(μm )、外径ODi (mm)の素材鋼管を、750 ℃以下、好ましくは400 ℃以上750 ℃以下に加熱または均熱したのち、平均圧延温度θm(℃)、合計縮径率Tred (%)の絞り圧延を施し外径ODf (mm)の製品管とする。
【0027】
絞り圧延方法は、レデューサと称される複数の孔型圧延機による絞り圧延が好適である。本発明の実施に好適な設備列の1例を図1に示す。図1では、孔型ロールを有する複数のスタンドの絞り圧延装置21が示されている。圧延機のスタンド数は、素材鋼管径と製品管径の組み合わせで適宜決定される。孔型ロールは、通常公知の2ロール、3ロールあるいは4ロールいずれでも好適に適用できる。
【0028】
絞り圧延の加熱または均熱方法はとくに限定するものではないが、加熱炉、あるいは誘導加熱によるのが好ましい。なかでも誘導加熱方式が加熱速度が大きく生産能率あるいは結晶粒の成長を抑制する点から好ましい。
加熱または均熱温度は結晶粒が粗大化しない温度範囲である750 ℃以下とするのが好ましい。本発明では、もちろん、素材鋼管の加熱あるいは均熱温度が上記した温度を超える場合でも製品管の結晶粒径は微細となる。しかし、加熱あるいは均熱温度が750 ℃を超えると表面性状が劣化し、また、400 ℃未満では好適な圧延温度を確保できないため、加熱あるいは均熱温度は400 ℃以上750 ℃以下とするのが好ましい。
【0029】
絞り圧延の圧延温度は400 〜750 ℃の温度範囲とする。この圧延域での圧延により、素材鋼管組織中の第2相がパーライトの場合には、パーライト中の層状セメンタイトが分断微細化され、これにより製品鋼管の伸び特性が確保され、加工性が向上する。また、素材鋼管組織中の第2相がベイナイトの場合には、加工を受けたベイナイトが再結晶し、微細ベイニティックフェライト組織となり、これにより製品鋼管の伸び特性が確保され、加工性が向上する。
【0030】
圧延温度が750 ℃を超えると、再結晶後の粒の成長が著しくなり微細粒となりにくく、延性が低下する。さらに、圧延温度が400 ℃未満では、青熱脆化域となり圧延が困難となるか、あるいは再結晶が不十分となり加工歪が残存しやすくなるため、延性・靱性が低下する。このため、絞り圧延の圧延温度は400 〜750 ℃の温度範囲とする。なお、好ましくは600 〜700 ℃である。
【0031】
絞り圧延は、上記圧延温度範囲内でかつ素材鋼管の鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径di(μm )、絞り圧延の平均圧延温度θm (℃)および合計縮径率Tred (%)の関係が次(1)式
【0032】
【数3】
Figure 0003896647
【0033】
を満足する絞り圧延とする。
ここに、平均圧延温度θm (℃)は、θm =(θi+θf)/2、(θi:圧延開始温度、θf:圧延終了温度)、合計縮径率Tred (%)は、Tred =(ODi-ODf)×100 /ODi、(ODi :素材鋼管外径(mm)、ODf :製品管外径(mm))で定義される。
【0034】
di、θmおよびTred の関係が(1)式を満足しない場合には、製品管の平均結晶粒(鋼管長手方向に直角な断面)が2μm 以下の微細粒とならない。
本発明における鋼管の絞り圧延は、2軸応力状態の圧延加工となり、著しい結晶粒微細化効果を得ることができる。これに対し、鋼板の圧延においては、圧延方向に加え、板幅方向(圧延直角方向)にも自由端が存在し、1軸応力状態における圧延加工となり、結晶粒微細化に限界がある。
【0035】
本発明では、絞り圧延は、潤滑下での圧延とするのが好ましい。圧延を潤滑圧延とすることにより、厚み方向の歪分布が均一となり、結晶粒径の分布が厚み方向で均一となる。無潤滑圧延では、材料表面のみ歪が集中し厚み方向の結晶粒が不均一となりやすい。潤滑圧延は鉱油あるいは鉱油と合成エステル等の通常の圧延油を用いて行えばよく、圧延油をとくに限定する必要はない。
【0036】
絞り圧延後、製品管は好ましくは300 ℃以下まで冷却される。冷却方法は、空冷でよいが、粒成長を少しでも抑える目的で急冷装置24を用い水冷、あるいはミスト冷却、強制空冷等通常公知の冷却方法が適用可能である。冷却速度は1℃/sec 以上とするのが好ましい。
なお、本発明では、絞り圧延装置21の入側あるいは絞り圧延装置21の途中に冷却装置を設置し、温度調節を行ってもよい。
【0037】
本発明で素材とする素材鋼管は、継目無鋼管あるいは、電縫鋼管、鍛接鋼管、固相圧接鋼管等いずれでもよい。また、本発明の超微細粒鋼管の製造工程は、上記した素材鋼管の製造ラインと連続化してもよい。固相圧接鋼管の製造ラインと連続化した1例を図2に示す。
アンコイラ14から払い出された帯鋼1は、接合装置15により先行する帯鋼と接続され、ルーパ17を介して予熱炉2で予熱されたのち、成形ロール群からなる成形加工装置3でオープン管7とされ、エッジ予熱用誘導加熱装置4とエッジ加熱用誘導加熱装置5により融点未満の温度域にオープン管7エッジ部を加熱して、スクイズロール6で衝合圧接され、素材鋼管8とされる。
【0038】
ついで、素材鋼管8は、上記したように、均熱炉22で所定の温度に加熱あるいは均熱後、デスケーリング装置23でスケールを除去し、絞り圧延装置21により絞り圧延され、切断機で切断され、管矯正装置19で矯正され製品管16となる。鋼管の温度は温度計20で測定する。
上記した製造方法によれば、フェライトと面積率で30%超のフェライト以外の第2相からなる組織を有し、鋼材長手方向直角断面の平均結晶粒径が2μm 以下の超微細粒を有する高強度鋼管が中間焼鈍なしに得られる。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼素材を熱間圧延により4.5mm 厚の帯鋼とした。図2に示す設備列を利用して、この帯鋼1を予熱炉2で600 ℃に予熱したのち、複数の成形ロール群からなる成形加工装置3で連続的に成形しオープン管7とした。ついで、オープン管7の両エッジ部をエッジ予熱用誘導誘導加熱装置4で1000℃まで予熱したのち、さらに両エッジ部をエッジ加熱用誘導加熱装置5により1450℃まで加熱しスクイズロール6により衝合し固相圧接して、φ 110×T4.5mmの素材鋼管8とした。
【0040】
ついで、素材鋼管をシーム冷却および管加熱装置22で表2に示す加熱均熱温度にしたのち、複数の3ロール構造の絞り圧延機を設置した絞り圧延装置21で所定の外径寸法の製品管とした。使用した圧延機のスタンド数は、製品管の外径がφ60.3mmの場合には6スタンド、φ42.7mmの場合には16スタンドとした。
なお、No.1-2の製品管は、絞り圧延に際し、鉱油に合成エステルを混合した圧延油を用いて潤滑圧延を行った。
【0041】
絞り圧延後、製品管は空冷した。
これら製品管について、結晶粒径、引張特性を調査しその結果を表2に示す。結晶粒径は、鋼管の長手方向に対し直角な断面(C断面)について、5000倍の倍率でそれぞれ5視野以上観察し、フェライトおよび第2相の平均結晶粒径を測定した。引張特性は、JIS 11号試験片を用いた。なお、伸び(El)は試験片のサイズ効果を考慮して、
El=El0 ×(√(a0/a))0.4
(El0 :実測伸び、a0=100mm2、a:試験片断面積mm2 )より求めた換算値を用いた。
【0042】
【表1】
Figure 0003896647
【0043】
【表2】
Figure 0003896647
【0044】
表2から、本発明範囲の本発明例(No.1-2、No.1-4〜No.1-7、No.1-10 )は、平均結晶粒径がいずれも2μm の微細粒となり、伸び、靱性も高く、引張強さも600MPa以上を有し、強度と靱性・延性のバランスが優れた鋼管となっている。また、潤滑圧延を行ったNo.1-2では、肉厚方向の結晶粒のばらつきが少なかった。それに比較し、本発明の範囲を外れた比較例(No.1-1、No.1-3、No.1-8、No.1-9)では、結晶粒が粗大化し、延性が劣化している。
【0045】
なお、本発明範囲の製品管の組織はフェライトと、第2相として面積率で30%超のセメンタイトを有する組織であった。
(実施例2)
表3に示す化学組成を有する素材鋼管を、表4に示す温度に誘導加熱コイルで再加熱したのち、3ロール構造の絞り圧延機で表4に示す外径の製品管とした。なお、使用した圧延機のスタンド数は16スタンドとした。
【0046】
これら製品管の特性を調査し、その結果を表4に示す。製品管の特性は、組織、結晶粒径、引張特性について実施例1と同様に調査した。
【0047】
【表3】
Figure 0003896647
【0048】
【表4】
Figure 0003896647
【0049】
表4から、本発明範囲の本発明例(No.2-1〜No.2-6)は、フェライトの平均結晶粒径が2μm 以下となり、引張強さが600MPa以上を有し、伸びも高く、さらに強度と延性のバランスが優れた鋼管となっている。それに比較し、本発明の範囲を外れた比較例(No.2-7、No.2-8)では、結晶粒が粗大化し強度が低下して、目標の引張強さが得られていない。
【0050】
なお、本発明範囲の製品管の組織はフェライトと、第2相として面積率で30%超のパーライト、セメンタイト、ベイナイト、あるいはマルテンサイトを有する組織であった。
本発明によれば、従来になく延性−強度バランスが向上した高強度鋼管が得られるが、さらに本発明の鋼管は、2次加工性、例えばハイドロフォーミング等のバルジ加工性にも優れ、バルジ加工用として好適な鋼管である。
【0051】
本発明の鋼管のうち、溶接鋼管またはシーム冷却を施した固相圧接鋼管においては、硬化シーム部が絞り圧延により母管部と同じレベルの硬さとなり、バルジ加工性が従来になく顕著に改善される。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、2μm 以下という超微細結晶粒を有し引張強さ600MPa以上の高強度でかつ靱性・延性に優れた鋼材が中間焼鈍なしに容易に製造でき、鋼材の用途を拡大でき産業上格別の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に好適な設備列の一例を示す概念図である。
【図2】本発明の実施に好適な固相圧接鋼管製造設備と連続化した設備列の1例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 帯鋼
2 予熱炉
3 成形加工装置
4 エッジ予熱用誘導加熱装置
5 エッジ加熱用誘導加熱装置
6 スクイズロール
7 オープン管
8 素材鋼管
14 アンコイラ
15 接合装置
16 製品管
17 ルーパ
18 切断機
19 管矯正装置
20 温度計
21 絞り圧延装置
22 均熱炉(シーム冷却および管加熱装置)
23 デスケーリング装置
24 急冷装置
25 再加熱装置
26 冷却装置

Claims (6)

  1. 重量%で、
    C: 0.30 超〜 0.70 %、
    Si 0.01 2.0 %、
    Mn 0.01 2.0 %、
    Al 0.001 0.10
    を含有し、残部 Fe および不可避的不純物からなる組成を有し、外径ODi (mm)、鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径di(μm )の素材鋼管を加熱または均熱し、平均圧延温度θm (℃)、合計縮径率Tred (%)の絞り圧延を施し外径ODf (mm)の製品管とする鋼管の製造方法において、前記絞り圧延を400 〜750 ℃の温度範囲で、かつ前記平均結晶粒径di(μm )、前記平均圧延温度θm(℃)および前記合計縮径率Tred (%)の関係が下記(1)式を満足する絞り圧延とすることを特徴とする鋼管長手方向に直角な断面の平均結晶粒径が2μm 以下の超微細粒を有する加工性に優れた高強度鋼管の製造方法。
    Figure 0003896647
    ここに、di:素材鋼管の平均結晶粒径(μm )、
    θm:平均圧延温度(℃)=(θi+θf)/2、
    θi:圧延開始温度(℃)、
    θf:圧延終了温度(℃)、
    Tred :合計縮径率(%)=(ODi-ODf)×100 /ODi
    ODi :素材鋼管外径(mm)
    ODf :製品管外径(mm)
  2. 前記素材鋼管の加熱または均熱を750 ℃以下の温度範囲とすることを特徴とする請求項記載の高強度鋼管の製造方法。
  3. 前記絞り圧延が潤滑下での圧延であることを特徴とする請求項またはに記載の高強度鋼管の製造方法。
  4. 前記組成に加えてさらに、重量%で、
    Cu :1%以下、 Ni :2%以下、 Cr :2%以下、 Mo :1%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、重量%で、
    Nb :1%以下、V: 0.3 %以下、 Ti 0.2 %以下、B: 0.004 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の高強度鋼管の製造方法。
  6. 前記組成に加えてさらに、重量%で、
    REM 0.02 %以下、 Ca 0.01 %以下のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法。
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