JP3896254B2 - 鉄筋の定着具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対向して配設された主鉄筋と、これら主鉄筋間に交叉して設けられるような補助鉄筋等に用いられる鉄筋の定着具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋を埋設したコンクリート構造体を構成する場合、一般的には対向して主鉄筋を配設し、これら主鉄筋間に周辺コンクリート剥落時の鉄筋座屈に抗する目的にて補助鉄筋を配置して所望の強度を確保するようにしている。
図8は、その一例として板状(スラブ)の鉄筋コンクリート構造体を構築する場合を示したもので、主鉄筋1aと1bとは所謂格子状となるよう互いに交叉して固定したものをスラブの上側と下側に平面状に配設し、この上下の主鉄筋間に補強鉄筋2を配設した後に、コンクリート3を充填して所望のコンクリート構造体4を形成している。
なお、以下においては、副鉄筋又は補助鉄筋と称されているものを総称して補強鉄筋と云う。
【0003】
図9は、補強鉄筋2を示したもので、一般には両側に180度,135度のフックを設けて構成されが、(a)図のものは両端に円形や矩形のプレートを備えたもの。(b)図のものは、一端にプレートを、他端はフック状に湾曲されたもので、このフック部が主鉄筋に係合して配置される。また、(c)図のものは、両端が湾曲されて、それぞれの湾曲部が主鉄筋に係合配置されるものである。
図8の(b)(c)は、9図で示す補強鉄筋2を用いたコンクリート構造体の概念図で、有効高さdにコンクリートによるかぶりを付加して高さHのコンクリート構造体を形成したものである。
図10は、前記9図の(a)タイプにおける鉄筋とプレートとの接合方法の一例を示したもので、鉄筋をプレートに当接し、そのプレートを回転させながら接合する摩擦圧接工法や、その他溶接等によって鉄筋とプレートとの結合が行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
コンクリート3に埋設される鉄筋は、長期間安定した強度を維持することが要求される。特に接続部においては、鉄筋相互が係わりあっていることに伴い、所定の強度を確保し、且つ所定のかぶり幅を確保することが重要となる。
しかし、接続部等は全て鉄筋であるため、侵入した水分により腐食が始まると、相互の鉄筋の腐食が同時に、且つ同様に進行することになって鉄筋の強度低下が進行することになり、コンクリート構造物としての強度低下が進むことになる。
【0005】
本発明の目的は、耐腐食性を向上した鉄筋の定着具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、主鉄筋に定着具を介して鉄筋を係合するものにおいて、
前記鉄筋の一方側にセラミックス焼結体からなる定着具を固定し、且つ鉄筋の他方側を屈曲させると共に、前記主鉄筋と係合する側の定着具に湾曲溝を設け、この湾曲溝と連設して定着具の先端側にテーパー部を設けたことを特徴としたものである。
【0007】
本発明の第2は、前記定着具は、酸化アルミニウムを主成分として用い、この主成分に副成分を添加して混合破砕した量に体積比で0.01〜5.0の繊維物を添加し、造粒、成形、焼成されたことを特徴としたものである。
【0008】
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【0009】
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【0010】
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【0011】
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【0012】
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【0013】
削除
【0014】
削除
【0015】
【発明の実施の形態】
【0016】
【実施形態1】
図1は、本発明の実施形態を示したもので、同図の(a)〜(c)において、10はそれぞれ補強鉄筋を示したものである。補強鉄筋10は、鉄筋11とその一端側に取り付けられたセラミックス焼結体よりなる定着具12によって構成される。定着具12は、図9等で示す円形又は矩形状に形成されたプレートに相当するもので、鉄筋11とは螺着や接着剤による固着手段によって固定される。
なお、接着剤としては樹脂系,無機系何れでもよく、(a)図は定着具12の厚みが比較的薄い場合を示し、鉄筋11が貫通されて接着剤若しくはねじ込みによって固定したものである。(b)図は定着具12の厚みが比較的大の場合で、定着具12に穴を穿設し、その穴に鉄筋11の一端を挿入し固定したものである。(c)図は定着具12の固着部分に突起を設け、その突起に鉄筋11との固着のための穴を穿設し、その穴に鉄筋11の一端を挿入して固着手段により固定したものである。
【0017】
図2において、13はフック形状に形成された定着具で、この定着具13は図9の(b)(c)図の片側若しくは両側に半円形状に形成されたフックに相当するものである。定着具13は、図1で示す定着具12同様セラミックス焼結体よりなり、その一側には穴が穿設され、鉄筋11の一端が挿入されて固着手段によって固定される。また、この定着具13の中程には主鉄筋1を係合するための湾曲溝が形成されている。この湾曲溝は、図2の(a)で示すように比較的深く形成してもよく、また、同図(b)で示すように定着具13の先端側(鉄筋11との反固定側)にテーパー部を設けて湾曲溝を比較的浅く形成してもよい。何れにしても、定着具はセラミックスで形成されるので、その形状は任意に形成することができ、施工性がよく且つ緩みの少ないものを得ることが可能となる。
【0018】
図3は定着具の使用状態を示したもので、同図(a)は鉄筋としてねじ鉄筋14a,14bを使用し、両者の定着具としてセラミックス焼結体よりなるカプラー15を用いた場合を示したものである。ねじ鉄筋14a,14bの反係合側にはそれぞれねじ部が螺設されており、カプラー15の貫通孔にはねじ部と螺合するための雌ねじ部が形成されている。
(b)図のものは、鉄筋11の一端側をフック状に形成し、他端側に定着具13を固着したもので、鉄筋11のフック側を主鉄筋1に回動自在に取付け、定着具13側を矢印で示す方向に移動して主鉄筋1にはめ込み定着させるものである。
(c)図のものは、鉄筋11の両端に定着具13を固着して矢印で示す方向に押圧することによって主鉄筋1に定着するものである。
図(b)と図(c)のものは、定着具13の先端側にテーパーを付けたことにより、単に押圧することのみによって定着できるので、作業性が大幅に向上する。
【0019】
【実施形態2】
上記のように構成されたセラミックス焼結体よりなる定着具を用い、図8で示すようなコンクリート構造体若しくは構造物が形成されるが、その定着具は図4のようにして製造される。
【0020】
同図において、20は秤量工程で、本発明におけるセラミックス焼結体の主成分としては酸化アルミニウム、ジルコニア、炭化珪素および窒化珪素のうち、何れかが使用されるが、ここでは、その主成分として例えば酸化アルミニウムを使用した場合、平均粒径1μm以下で純度99.9%以上のAl23粉末を所定量(90〜98W%の範囲)秤量し、焼結助剤としての副成分を添加する。主成分としての酸化アルミニウムの量が90W%以下となると、定着具としての強度が不足し、特にねじ部のねじ山が破損する。また、98W%以上になると焼結温度を高くする必要が生じて経済的に好ましくない。したがって、主成分としてのAl23の量は、90〜98W%の範囲が適当である。副成分である焼結助剤としては、MgO,SiO2,CaOが好ましく、このうちの一種類もしくは複数種の混合で2〜10W%添加する。この副成分は焼成温度を低下させるための働きをする。
21は、混合破砕工程で、この混合破砕工程では、秤量工程において秤量された主成分と副成分よりなる出発原料に純水を加え、ボールミルによって10時間程度の混合破砕を行う。
【0021】
22は造粒工程で、工程21によって得られた原料スラリーに、ポリビニールアルコールなどの有機バインダーと、分散剤として例えばポリカルボン酸アンモニウム塩を添加し、スプレードライヤーで150°C程度の温度で乾燥し、噴霧造粒する。造粒された顆粒としては、その粒径が30μm以下になると流動性が悪化し、成形型への充填が困難となって空洞が発生する。また、粒径が200μm以上となると、係合部材としての強度、靭性が低下して所望値のものを得ることが困難となる。したがって、約30〜200μmの範囲に分布しているものがよく、この分布範囲のものが80%以上を占めているものが好ましい。
【0022】
23は成形工程で、造粒工程によって得られた顆粒を図1〜3で示すような定着具の枠型に充填し、等方圧静水成形機により圧力をかけて成形する。成形圧力としては、約3〜10MPaの範囲、好ましくは5MPaとして成形する。この範囲以下になると成形圧力不足によって欠けやクラックが発生し、また、それ以上となると圧力解除までの時間がかかり過ぎて生産性が低下し、しかも、離型性が悪くなって型割れが発生しやすくなる。
24は焼成工程で、成形品を例えばガス炉によって、焼成保持温度1500〜1700°Cで1.5〜3.00時間焼成する。焼成後は焼成保持温度から 400°C近辺までを50〜200°C/時間の降温速度で冷却してアルミナセラミックスの鉄筋の定着具が製造される。
【0023】
【実施形態3】
図6は、セラミックス焼結体の主成分として酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化珪素、炭化珪素及びジルコニアを用いたときにおける焼結体の靭性比較図で、酸化アルミニウムは、安価な原料である特徴を有するものの靭性の点で他の焼結体のものよりもやや劣っている。
しかし、発明者は、酸化アルミニウムに繊維状物質を若干量添加して焼結することによって、図7で示すように靭性が向上することに着目し、これを鉄筋の定着具に適用することによって酸化アルミニウムを主成分としてより高い強度を得るようにしたものである。
なお、図7は、繊維状物質として炭化珪素ウイスカーを添加した場合を示したもので、ウイスカーの大きさや成形条件、焼結条件等によって得られる強度、靭性は多少異なるものの、ある量の体積比率で添加することによって、添加なし時に比較して向上していることが解る。
【0024】
図5は、主成分である酸化アルミニウムに繊維状物質を添加する場合の製造工程図を示したもので、繊維状物質の添加工程25を混合破砕工程21の後に設けたものである。他は図4と同様であるので、同一符号付してその説明は省略する。 工程25における繊維状物質は長繊維、短繊維のウイスカーが使用され、前工程21において混合破砕された粉末にこのウイスカーを添加して混合する。繊維状物質は、例えば炭素珪素のウイスカーよりなり、体積比で0.01〜5.0含有させる。実験によると、この範囲外になると係合部材としての所望の靭性,強度の向上が確保できなかった。
なお、繊維の大きさとしては、短径10μm以下(好ましくは0.5〜4.0μm)、アスペクト比(長径/短径)は平均3〜100(好ましくは10〜50)である。繊維材料としては、炭素珪素の他、セラミックスウイスカー、カーボン繊維などの無機質材料が使用でき、金属系においても使用できるが、その際には腐食の点がら表面に金属が露出しないよう構成することが重要となる。
図6の右半分の欄は、アルミナおよび窒化珪素にウイスカーとして炭化珪素を添加したときの靭性で、ウイスカー添加により大幅に向上していることが解る。
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、コンクリート内に埋設される鉄筋相互の接続は、耐腐食性に富むセラミックス焼結体からなる定着具を介して接続されるので、従来のように鉄筋相互の接続でないことから、一方の鉄筋に例え腐食が発生しても、他の鉄筋に進行することなく、互いに独立したものとなる。
したがって、鉄筋による骨格部の強度を長期間安定した状態にて維持でき、コンクリート構造物の強度を長期間安定なものにできる。
また、従来におけるコンクリート構造体の耐腐食性は、帯筋のフック部のかぶりに依存しているため、そのかぶり寸法を大にしなければならない不具合が生じていたが、本発明においてはかぶりを小さくできるので、合理的な構造とすることができる。
また、湾曲溝が形成された定着具とし、その溝と連設された定着具を用いることによって、鉄筋組み立て時には補強鉄筋部を単に押圧するのみで組み立て可能となるので、その作業性を格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を示したもので、(a)は定着具の厚さが小の場合の断面図、(b)は定着具の厚さ大の場合の断面図、(c)は定着具に突起を設けた場合の断面図。
【図2】 本発明の他の定着具の断面図で、(a)定着具の湾曲部の溝を深くした断面図、(b)は定着具にテーパーを設けて湾曲溝を浅くし断面図。
【図3】 本発明の定着具の使用状態図で、(a)はカプラーを使用した状態図、(b)は鉄筋の一端側にテーパー付き定着具を使用した状態図、(c)は鉄筋の両端にテーパー付き定着具を使用した状態図。
【図4】 本発明の製造工程図。
【図5】 本発明の他の製造工程図。
【図6】 靭性の比較図。
【図7】 酸化アルミニウムへのウイスカー添加と破壊強度、破壊靭性の関係図。
【図8】 板状コンクリート構造体を示し、(a)、(b)、(c)はそれぞれ板状コンクリート構造体の概念図。
【図9】 補強鉄筋を示したもので、(a)は両端プレート付補強鉄筋の外観図、(b)は片側プレート付、片側フックの補強鉄筋外観図、(c)は両端フックの補強鉄筋外観図。
【図10】 プレートと鉄筋接合説明図。
【符号の説明】
1…主鉄筋
2,10…補強鉄筋
3…コンクリート
4…コンクリート構造体
5…座屈防止鉄筋
11…鉄筋
12,13,15…定着具
14…ねじ鉄筋
20…秤量工程
21…混合破砕工程
22…造粒工程
23…成形工程
24…焼成工程
25…繊維状物質添加工程

Claims (2)

  1. 主鉄筋に定着具を介して鉄筋を係合するものにおいて、
    前記鉄筋の一方側にセラミックス焼結体からなる定着具を固定し、且つ鉄筋の他方側を屈曲させると共に、前記主鉄筋と係合する側の定着具に湾曲溝を設け、この湾曲溝と連設して定着具の先端側にテーパー部を設けたことを特徴とした鉄筋の定着具。
  2. 前記定着具は、酸化アルミニウムを主成分として用い、この主成分に副成分を添加して混合破砕した量に体積比で0.01〜5.0の繊維物を添加し、造粒、成形、焼成されたことを特徴とした請求項1記載の鉄筋の定着具。
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