JP3895965B2 - 多結晶Siインゴットの表面処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池などに用いられる多結晶Siインゴットの表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Siウエハの需要は、太陽電池などの普及に伴い年々増加している。1枚の太陽電池モジュールは、5インチの四角形型のSiウエハを54枚程度用いて製造される。そのため、IC(Integrated Circuit)およびLSI(Large Scale Integration)などに使用されるSiウエハの量と比べて、太陽電池に使用されるSiウエハの量は非常に多い。
【0003】
太陽電池には、主に多結晶Siウエハが使用される。これは、単結晶Siウエハに比べ、多結晶Siウエハは、製造方法が比較的容易で、低コストで製造できるからである。
【0004】
多結晶Siウエハを製造するには、まず、四角形型の多結晶Siインゴットを製造する。次に、多結晶Siインゴットを、バンドソーなどによって切断し、多数の四角形型の多結晶Siブロックにする。そして、多結晶Siブロックの寸法精度を出すために、多結晶Siブロックの表面を研削する。
【0005】
多結晶Siブロックの寸法精度を出すためには、たとえば砥粒を含む円筒状の砥石またはダイヤモンドホイールを用いる。図6は砥石6による多結晶Siブロック5の研削を示す図であり、図7はカップ型ダイヤモンドブラシ7による多結晶Siブロック5の研磨を示す図である。たとえば、高速回転している砥石6に多結晶Siブロック5の表面を押し付けて、それらを相対的に移動させることによって、多結晶Siブロック5の表面を研削する。上述の説明では、多結晶Siインゴットをブロックにしてから研削を行うが、インゴットの状態で同様の研削を行ってもよい。
【0006】
多結晶Siブロックの表面研削後、多結晶Siブロックをスライスして、多結晶Siウエハにする。さらに、多結晶Siウエハの端面処理を行う。多結晶Siウエハに端面処理を行わない場合、多結晶Siウエハの形成以降の工程で割れが発生し易く、歩留りを落とす結果となる。
【0007】
特開平10−154321号公報には、ガラス基板の端面を1枚ずつ所定の形状に研削する端面処理の方法が開示されている。特開2000−317790号公報には、半導体ウエハの端面処理方法が開示されている。多結晶Siウエハの場合も、これらと同様の端面処理が行われている。
【0008】
また他にも、エッチングで多結晶Siウエハの表面処理および端面処理を行う方法がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
エッチングで多結晶Siウエハの表面処理および端面処理を行う場合、大量の廃液を処理する設備が必要となる。
【0010】
特開平10−154321号公報または特開2000−317790号公報のように、1枚ずつ端面処理を行う方法では、膨大な時間、設備および労力がかかる。それに伴って、設備のコストおよび人件費が膨大になる。特に太陽電池の場合は、使用される多結晶Siウエハの量が非常に多いので、この問題は重大である。さらに、多結晶Siウエハの供給が多結晶Siウエハの需要に追いつかなくなることも予想される。
【0011】
この問題を解決する方法として、インゴットあるいはブロックの状態で表面処理を行い、その後でスライスしてウエハを形成する方法がある。
【0012】
多結晶Siインゴットの表面処理方法として、前述の図6のように砥石6によって表面を研削する方法がある。しかしながら砥石は硬いので、この方法では研削を微小な切込みでしか行えない。したがってこの方法では、多大な時間と工程数とが必要となる。また砥石による研削は、金属などの延性材料には適するが、セラミックなどの脆性材料には適さない。これは、脆性材料を硬い砥石で研削すると、脆性材料にダメージ・クラックが入りやすいからである。したがって脆性材料である多結晶Siインゴットに、砥石による研削は適さない。
【0013】
また多結晶Siインゴットの表面処理方法として、前述の図7のようにカップ型ダイヤモンドブラシ7によって表面を研磨する方法がある。カップ型ダイヤモンドブラシ7は、ブラシの毛にダイヤモンド砥粒を含み、ブラシの毛が回転軸線L3と平行に延びる円形のブラシである。このカップ型ダイヤモンドブラシ7を回転軸線L3を中心に回転させ、ブラシ先端を多結晶Siインゴットの表面に押し付けて研磨する。
【0014】
この方法は、砥石による研削に比べて、容易に高精度かつ短時間で表面処理ができるという点で優れている。しかしながら、カップ型ダイヤモンドブラシによる表面処理には、以下のような問題点がある。
【0015】
第1の問題点は、木目状に研磨ムラができ平坦度がでないことである。多結晶Siインゴットは、多くの結晶粒の集まりであり、結晶粒界はやや硬いという特性がある。そのため、カップ型ダイヤモンドブラシによる研磨では、軟らかい部分は研磨できるが、硬い結晶粒界の部分はブラシの毛が逃げて研磨できない。その結果、木目状に研磨ムラができ平坦度がでない。たとえば番手#800、直径φ200mmのカップ型ダイヤモンドブラシを用いて、周速度1000mm/secで実施した結果、多結晶Siインゴットの表面は面粗さRy2μmであった。
【0016】
第2の問題点は、研磨能力がないことである。カップ型ダイヤモンドブラシは、先端でブラシの毛が円形に密集しており、この密集したブラシ全面を、多結晶Siインゴットの表面に押し付けて研磨するので、接触面積が大きくなり、回転モータにかかる負荷が大きくなる。そのため、回転モータの回転数を上げられず、研磨能力が低い。
【0017】
第3の問題点は、歪・破砕層を取りきれないことである。カップ型ダイヤモンドブラシによる研磨だけでは、十分な研磨ができず、完全に歪・破砕層を取りきれない。
【0018】
本発明の目的は、多結晶Siインゴットの表面を均一に研磨し、また多結晶Siインゴットの表面の歪・破砕層を除去する多結晶Siインゴットの表面処理方法を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ダイヤモンド砥粒を含むブラシの毛が回転軸線を中心として半径方向に放射状に延びるホイール型のダイヤモンドブラシを、前記回転軸線を中心に回転させながら、前記ダイヤモンドブラシの外周を、多結晶Siインゴットの表面に押し付けて、前記多結晶Siインゴットの表面を機械的に研磨し、
前記ダイヤモンドブラシによる研磨の後に、前記多結晶Siインゴットに対して、歪・破砕層を除去するためにショットピーニング処理を行うことを特徴とする多結晶Siインゴットの表面処理方法である。
【0020】
本発明に従えば、ホイール型のダイヤモンドブラシを、その回転軸線を中心に回転させながら、前記ダイヤモンドブラシの外周を、多結晶Siインゴットの表面に押し付けて、多結晶Siインゴットの表面を研磨する。カップ型ダイヤモンドブラシによる研磨の場合は、密集したブラシ全面が多結晶Siインゴットの表面に接触するのに対し、ホイール型ダイヤモンドブラシによる研磨の場合は、ダイヤモンドブラシの一部しか多結晶Siインゴットの表面に接触しない。したがって、カップ型ダイヤモンドブラシによる研磨に比べ、多結晶Siインゴットとの接触面積が小さい。そのため、ダイヤモンドブラシを回転させる回転モータに負荷がかからず、回転モータの回転数を上げることができる。その結果、ブラシの毛が多結晶Siインゴットに対して硬く作用し、多結晶Siインゴットの硬度ムラに依存せず、均一な研磨が可能となる。
しかもダイヤモンドブラシによる研磨の後に、ショットピーニング処理を行い、多結晶Siインゴットの表面の歪・破砕層を除去する。したがって後の工程で、割れおよびカケが発生し難くなる。
【0021】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシは、ブラシ間に、研磨屑を排除するための間隙を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、ブラシ間に、間隙が設けられるので、その間隙から研磨屑を排除することができる。したがってダイヤモンドブラシは、目詰まりし難く、研磨能力を持続することができる。
【0023】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシによる研磨は、切込み1mm以上で行うことを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、切込み1mm以上で多結晶Siインゴットの表面を研磨するので、多結晶Siインゴットの硬度ムラに依存せず、均一な研磨が可能となる。
【0025】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシのホイール幅は、多結晶Siインゴットの幅より狭いことを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、ダイヤモンドブラシのホイール幅は、多結晶Siインゴットの幅より狭い。ダイヤモンドブラシのホイール幅を狭くすると、ダイヤモンドブラシと多結晶Siインゴットとの接触面積が小さくなり、研磨の負荷を軽減できる。したがって、局所的に高切込みで多結晶Siインゴットを研磨することができ、均一な研磨を高能率で行うことができる。
【0027】
また本発明は、ブラシの毛が多結晶Siインゴットの表面を上からたたくように前記ダイヤモンドブラシを回転させることを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、ブラシの毛が多結晶Siインゴットの表面を上からたたくようにダイヤモンドブラシを回転させるので、多結晶インゴットにチッピングが発生し難い。
【0029】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシの研磨量は50μm以上100μm以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明に従えば、ダイヤモンドブラシの研磨量を50μm以上100μm以下とするので、前工程のバンドソーなどによる切断で発生した歪・破砕層を除去できる。
【0033】
また本発明は、ショットピーニング処理に用いる砥粒は、前記ダイヤモンドブラシのダイヤモンド砥粒より細かいことを特徴とする。
【0034】
本発明に従えば、ダイヤモンドブラシのダイヤモンド砥粒より細かい砥粒をショットピーニング処理に用いる。そのため、ダイヤモンドブラシによる研磨以上のダメージを多結晶Siインゴットに与えることがない。したがって、ダイヤモンドブラシによる研磨では除去できない微細な歪・破砕層を除去することができる。
【0037】
また本発明は、ショットピーニング処理に用いる砥粒は、C砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒であることを特徴とする。
【0038】
本発明に従えば、ショットピーニング処理に、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒を用いるので、多結晶Siインゴットの表面の歪・破砕層を効果的に除去することができる。
【0039】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシを砥石でドレッシングして、目詰まりを除去することを特徴とする。
【0040】
本発明に従えば、ダイヤモンドブラシを砥石でドレッシングするので、ダイヤモンドブラシが目詰まりして研磨能力が低下したときに、研磨屑の排除およびダイヤモンドブラシの目立てができ、ダイヤモンドブラシを再生することができる。
【0041】
また本発明は、前記ダイヤモンドブラシのドレッシングに用いる砥石の砥粒は、C砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒であることを特徴とする。
【0042】
本発明に従えば、ダイヤモンドブラシのドレッシングに、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒を含む砥石を用いるので、研磨屑の排除およびダイヤモンドブラシの目立てを効果的に行うことができる。
【0047】
【発明の実施の形態】
多結晶Siインゴットおよび多結晶Siブロックは、バンドソーなどで切断される。切断後は、面精度が悪く、微小な凹凸が存在する。この微小な凹凸は、後の工程で割れまたはカケが発生する原因になる。そのため、この微小な凹凸を除去するために表面処理を行う必要がある。以下、本発明である多結晶Siインゴットの表面処理方法を、図面を用いて説明する。
【0048】
まず、本発明の第1の実施形態であるホイール型ダイヤモンドブラシを用いた多結晶Siインゴットの表面処理方法を説明する。
【0049】
図1はホイール型ダイヤモンドブラシ1による多結晶Siインゴット2の研磨を示す図であり、図2はホイール型ダイヤモンドブラシ1の斜視図である。
【0050】
ホイール型ダイヤモンドブラシ1は、円筒状の基部11にブラシの毛12が放射状に植えられて構成され、回転軸線L1まわりに回転する。ブラシの毛12は、ダイヤモンド砥粒を含有し、基部11の回転軸線L1を中心として半径方向に延びるように植えられる。このホイール型ダイヤモンドブラシ1は、図示しない平面研削盤に装着される。
【0051】
平面研削盤は、ホイール型ダイヤモンドブラシ1を、回転軸線L1を中心に回転させる。そして平面研削盤は、回転するホイール型ダイヤモンドブラシ1の外周を多結晶Siインゴット2の表面に押し付ける。このとき平面研削盤は、ホイール型ダイヤモンドブラシ1の回転軸線L1が多結晶Siインゴット2の研磨される表面と平行になるように、ホイール型ダイヤモンドブラシ1を多結晶Siインゴット2に押し付け、多結晶Siインゴット2の表面に沿って、ホイール型ダイヤモンドブラシ1を移動させる。
【0052】
従来のカップ型ダイヤモンドブラシ7による研磨に比べ、ホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨では、ブラシの毛12と多結晶Siインゴット2との接触面積が小さい。そのため、ホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨では、ホイール型ダイヤモンドブラシ1を回転させる回転モータに負荷がかからず、回転モータの回転数を上げることができる。またホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨では切込みを深くすることができる。
【0053】
実際に、カップ型ダイヤモンドブラシ7では、切込み0.5mm程度であったが、ホイール型ダイヤモンドブラシ1では、切込み1mm以上が可能であった。切込み1mmとは、ブラシの毛がインゴット表面に接触しないとしたら、インゴット表面より1mm下にブラシの毛の先端がくるようにダイヤモンドブラシの位置を設定することである。
【0054】
このようにホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨では、高切込み、高回転数がとれ、ブラシの毛12が多結晶Siインゴット2に対して硬く作用する。その結果、多結晶Siインゴット2の硬度ムラに依存せず、均一な研磨が可能となる。
【0055】
次に、本実施形態において、より効果的な研磨を実現するための方法を説明する。
【0056】
第1の方法として、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のブラシ間に、間隙を設ける。
【0057】
図3は、ブラシ間に間隙31を有するホイール型ダイヤモンドブラシ3の斜視図である。ホイール型ダイヤモンドブラシ3のブラシの毛は密生しているが、図3のようにブラシの毛が植えられていない間隙31が形成される。間隙31は、図3に示すようにホイール型ダイヤモンドブラシ3の側面に対して斜めに設けられる。したがってインゴットに押し付けて研磨するとき、研磨された研磨屑が間隙31を案内され、ブラシの側面から排除される。またブラシ間の間隙31は、複数設けられる。ブラシ間に設けられる間隙31は、研磨屑を排除し易くする効果がある。したがって、ブラシ間に間隙31を有するホイール型ダイヤモンドブラシ3は、目詰まりし難く、研磨能力を持続することができる。
【0058】
実際に、ブラシ間に間隙31を有するホイール型ダイヤモンドブラシ3は、100回の研磨テストでも目詰まりが少なく、ドレッシングが不要であった。
【0059】
間隙の設け方は、上記の限りではない。たとえば上記斜めの間隙31に加え、逆方向に斜めとなる間隙を設け、間隙が斜めにクロスするようにしてもよい。また、基部11の横方向(回転軸線L2に平行)に複数の間隙を設けてもよいし、基部11の縦方向(周方向)に複数の間隙を設けてもよい。また、基部11の横方向および縦方向にそれぞれ複数の間隙を設け、間隙が縦横にクロスするようにしてもよい。
【0060】
第2の方法として、切込み1mm以上で研磨する。
多結晶Siインゴット2の表面精度およびホイール型ダイヤモンドブラシ1の毛先の精度から、切込みを1mm以上とする。切込みを1mm以上とすることで、より均一な研磨が可能となる。
【0061】
番手♯800、直径φ200mmのホイール型ダイヤモンドブラシ1を用いて、切込み1mm、周速度1000mm/secで実施した結果、面粗さRy1.8μm、うねり10μm以下と良好な結果が得られた。
【0062】
第3の方法として、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のホイール幅を、多結晶Siインゴット2の幅より狭くする。
【0063】
ホイール型ダイヤモンドブラシ1のホイール幅が狭いほど、ブラシの毛12と多結晶Siインゴット2との接触面積が小さくなる。したがって、局所的に高切込みで多結晶Siインゴット2を研磨することができ、均一な研磨を高能率で行うことができる。
【0064】
実際に、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のホイール幅を20mmにした結果、高切込みでも研磨負荷の上昇がなく、容易に多結晶Siインゴット2を研磨できた。
【0065】
第4の方法として、ダウンカットで研磨する。
ダウンカットとは、ブラシの毛12が多結晶Siインゴット2を上から下にたたきつけるようにホイール型ダイヤモンドブラシ1を回転させる状態を示す。平面研削盤は、ダウンカットで研磨するために、ホイール型ダイヤモンドブラシ1が多結晶Siインゴット2に対して相対的に移動する方向と、ホイール型ダイヤモンドブラシ1と多結晶Siインゴット2との接触面におけるホイール型ダイヤモンドブラシ1の回転方向とが反対になるようにホイール型ダイヤモンドブラシ1を回転させる。ダウンカットで研磨すると、研磨によるチッピングおよびカケの発生が抑制できる。
【0066】
実際に、ダウンカットではなくアップカットで研磨したときは、エッジのチッピングが発生したが、ダウンカットで研磨したときは、チッピングが発生しなかった。
【0067】
第5の方法として、研磨量を50μm以上100μm以下とする。
ホイール型ダイヤモンドブラシ1の研磨量を50μm以上100μm以下とすることで、余分に多結晶Siインゴット2を研磨することなく、前工程のバンドソーなどによる切断で発生した歪・破砕層を除去できる。
【0068】
上述の5つの方法を、ホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨に適用することで、より効果的な研磨が可能となる。
【0069】
ホイール型ダイヤモンドブラシ1は、研磨を繰返し行うことによって、目詰まりして研磨能力が低下する。そこで、砥石を用いてホイール型ダイヤモンドブラシ1をドレッシングする。
【0070】
図4は、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のドレッシングを示す図である。多結晶Siインゴット2の代わりに砥石4を研磨することで、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のドレッシングを行う。このドレッシングによって、ブラシ間の研磨屑が排除される。またこのドレッシングによって、ブラシの毛12の目立てができる。ホイール型ダイヤモンドブラシ1は、このようにして再生される。
【0071】
ホイール型ダイヤモンドブラシ1のドレッシングに用いる砥石4には、C砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒を含む砥石を用いる。このような砥石は、ドレッシング効果が高い。上記砥粒の中でも、A砥粒およびWA砥粒は、やや軟らかい。このA砥粒またはWA砥粒を含む砥石の方が、C砥粒またはGC砥粒を含む砥石より、ドレッシングに適している。
【0072】
ホイール型ダイヤモンドブラシ1を回転数500rpmで回転させ、WA♯800ステック砥石4を切込み1mmで研磨した結果、ブラシ間のSi研磨屑が排除され、良好な目立てができた。
【0073】
次に、本発明の第2の実施形態である多結晶Siインゴットの表面処理方法を説明する。本実施形態では、ホイール型ダイヤモンドブラシによる研磨と、ショットピーニング処理とによって多結晶Siインゴットの表面処理を行う。
【0074】
本実施形態では、最初に第1の実施形態のように、ホイール型ダイヤモンドブラシ1を用いて多結晶Siインゴット2の表面を研磨する。ホイール型ダイヤモンドブラシ1で研磨した多結晶Siインゴット2の表面からは、ほとんどの歪・破砕層が除去されているが、ブラシの毛12に含まれるダイヤモンド砥粒の粒径以下の微細な歪・破砕層は除去されていない。この微細な歪・破砕層を除去するために、本実施形態ではショットピーニング処理を行う。
【0075】
図5は、ショットピーニング処理を示す図である。ショットピーニング処理では、圧縮空気を利用して、砥粒を多結晶Siインゴット2に噴射させる。
【0076】
ショットピーニング処理には、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒、WA砥粒またはダイヤモンド砥粒を用いる。このような硬度の高い砥粒を用いることで、多結晶Siインゴット2の表面の歪・破砕層を効果的に除去することができる。
【0077】
直径8mmのノズルを有する装置を用いて、エア圧力3.1kg/cm2で♯800(10〜30μm)のWA砥粒を多結晶Siインゴット2に噴射した結果、加工時間20secで20〜40μmの深さの加工ができ、歪・破砕層除去の効果があることが確認できた。
【0078】
ショットピーニング処理には、ホイール型ダイヤモンドブラシ1のブラシの毛12に含まれるダイヤモンド砥粒より細かい砥粒を用いる。この場合、加工レートは落ちるが、ホイール型ダイヤモンドブラシ1による研磨では除去できない微細な歪・破砕層を除去することができる。
【0079】
番手♯800、直径φ200mmのホイール型ダイヤモンドブラシ1を用いて、切込み1mm、周速度1000mm/secで多結晶Siインゴット2の表面を研磨した結果、多結晶Siインゴット2の表面は、面粗さRy1.8μmとなった。この多結晶Siインゴット2を、#1000の砥粒を用いて、ショットピーニング処理した結果、多結晶Siインゴット2の表面は、面粗さRy1.5μm以下となった。
【0080】
次に、本発明の第3の実施形態である多結晶Siインゴットの表面処理方法を説明する。本実施形態では、ホイール型ダイヤモンドブラシによる研磨なしで、ショットピーニング処理によって多結晶Siインゴットの表面処理を行う。本実施形態のショットピーニング処理は、第2の実施形態のショットピーニング処理と同様である。
【0081】
ショットピーニング処理には、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒、WA砥粒またはダイヤモンド砥粒を用いる。このように硬度の高い砥粒を用いることで、多結晶Siインゴット2の表面の歪・破砕層を効果的に除去することができる。
【0082】
本実施形態では、粗砥粒を用いる段階および仕上砥粒を用いる段階の2段階でショットピーニング処理を行う。このように2段階で処理することで、多結晶Siインゴット2の表面の歪・破砕層を効果的に除去することができる。
【0083】
粗砥粒を♯240とし、仕上げ砥粒を♯800とした場合、面粗さRy2μm以内で、加工深さ80μmの加工が可能であった。
【0084】
第2の実施形態または第3の実施形態に示すようなショットピーニング処理を施された多結晶Siインゴット2は、歪・破砕層が少なく、割れおよびカケが少ないという特徴を持つ。実際に、ショットピーニング処理された多結晶Siインゴット2をスライスウエハとした場合、ハンドリング後工程の割れ歩留まりは98.4%であった。ショットピーニング処理されなかった多結晶Siインゴット2をスライスウエハとした場合、ハンドリング後工程の割れ歩留りは96.1%であった。つまり、ショットピーニング処理を行うことで、2.3%高い歩留まりを維持することができた。
【0085】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ダイヤモンドブラシを回転させる回転モータに負荷がかからず、回転モータの回転数を上げることができる。その結果、ブラシの毛が多結晶Siインゴットに対して硬く作用し、多結晶Siインゴットの硬度ムラに依存せず、均一な研磨が可能となる。
しかもダイヤモンドブラシによる研磨の後に、ショットピーニング処理を行い、多結晶Siインゴットの表面の歪・破砕層を除去する。したがって後の工程で、割れおよびカケが発生し難くなる。
【0086】
また本発明によれば、ブラシ間に設けられる間隙から研磨屑を排除することができる。したがって、ダイヤモンドブラシは、目詰まりし難く、研磨能力を持続することができる。
【0087】
また本発明によれば、切込み1mm以上で多結晶Siインゴットの表面を研磨するので、多結晶Siインゴットの硬度ムラに依存せず、均一な研磨が可能となる。
【0088】
また本発明によれば、ダイヤモンドブラシのホイール幅は、多結晶Siインゴットの幅より狭いので、局所的に高切込みで多結晶Siインゴットを研磨することができ、均一な研磨を高能率で行うことができる。
【0089】
また本発明によれば、ブラシの毛が多結晶Siインゴットの表面を上からたたくようにダイヤモンドブラシを回転させるので、多結晶Siインゴットにチッピングが発生し難い。
【0090】
また本発明によれば、ダイヤモンドブラシの研磨量を50μm以上100μm以下とするので、前工程のバンドソーなどによる切断で発生した歪・破砕層を除去できる。
【0092】
また本発明によれば、ダイヤモンドブラシのダイヤモンド砥粒より細かい砥粒をショットピーニング処理に用いる。そのため、ダイヤモンドブラシによる研磨以上のダメージを多結晶Siインゴットに与えることがない。したがって、ダイヤモンドブラシによる研磨では除去できない微細な歪・破砕層を除去することができる。
【0094】
また本発明によれば、ショットピーニング処理に、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒を用いるので、多結晶Siインゴットの歪・破砕層を効果的に除去することができる。
【0095】
また本発明によれば、ダイヤモンドブラシが目詰まりして研磨能力が低下したときに、研磨屑の排除およびダイヤモンドブラシの目立てができ、ダイヤモンドブラシを再生することができる。
【0096】
また本発明によれば、ダイヤモンドブラシのドレッシングに、硬度の高いC砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒を含む砥石を用いるので、研磨屑の排除およびダイヤモンドブラシの目立てを効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ホイール型ダイヤモンドブラシ1による多結晶Siインゴット2の研磨を示す図である。
【図2】ホイール型ダイヤモンドブラシ1の斜視図である。
【図3】ブラシ間に間隙31を有するホイール型ダイヤモンドブラシ3の斜視図である。
【図4】ホイール型ダイヤモンドブラシ1のドレッシングを示す図である。
【図5】ショットピーニング処理を示す図である。
【図6】砥石6による多結晶Siブロック5の研削を示す図である。
【図7】カップ型ダイヤモンドブラシに7よる多結晶Siブロック5の研磨を示す図である。
【符号の説明】
1,3 ホイール型ダイヤモンドブラシ
2 多結晶Siインゴット
4 砥石
11 基部
12 ブラシの毛
31 間隙
L1,L2 回転軸線
Claims (10)
- ダイヤモンド砥粒を含むブラシの毛が回転軸線を中心として半径方向に放射状に延びるホイール型のダイヤモンドブラシを、前記回転軸線を中心に回転させながら、前記ダイヤモンドブラシの外周を、多結晶Siインゴットの表面に押し付けて、前記多結晶Siインゴットの表面を機械的に研磨し、
前記ダイヤモンドブラシによる研磨の後に、前記多結晶Siインゴットに対して、歪・破砕層を除去するためにショットピーニング処理を行うことを特徴とする多結晶Siインゴットの表面処理方法。 - 前記ダイヤモンドブラシは、ブラシ間に、研磨屑を排除するための間隙を有することを特徴とする請求項1記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- 前記ダイヤモンドブラシによる研磨は、切込み1mm以上で行うことを特徴とする請求項1または2記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- 前記ダイヤモンドブラシのホイール幅は、多結晶Siインゴットの幅より狭いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- ブラシの毛が多結晶Siインゴットの表面を上からたたくように前記ダイヤモンドブラシを回転させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- 前記ダイヤモンドブラシの研磨量は50μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- ショットピーニング処理に用いる砥粒は、前記ダイヤモンドブラシのダイヤモンド砥粒より細かいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- ショットピーニング処理に用いる砥粒は、C砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- 前記ダイヤモンドブラシを砥石でドレッシングして、目詰まりを除去することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
- 前記ダイヤモンドブラシのドレッシングに用いる砥石の砥粒は、C砥粒、GC砥粒、A砥粒またはWA砥粒であることを特徴とする請求項9記載の多結晶Siインゴットの表面処理方法。
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