JP3895700B2 - 通信網故障頻度計算方法、通信網故障頻度計算装置、通信網故障頻度計算プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する通信網故障頻度計算方法及びその装置と、その通信網故障頻度計算方法の実現に用いられる通信網故障頻度計算プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体とに関する。
【0002】
更に具体的に説明するならば、本発明は、通信網において、あるノードSとあるノードTとの間が通信不能となる故障が発生する頻度の平均値(故障頻度)を計算する技術に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
通信網の信頼性とは、通信が安定して行われる度合いまたは性質を表す。通信網は点と線とからなり、点は通信装置(交換機、多重化装置等)、線は回線装置を表す。点で表される通信装置のことを、以下ではノードと呼び、線で表される回線装置のことを、以下ではリンクと呼ぶ。
【0004】
通信網の信頼性は、まず、特定の二つのノード(それぞれS,Tと書く)に着目し、この着目ノード間が通信可能である確率(S,T間の信頼度。以下、S−T間信頼度と記載することがある)、あるいは、この着目ノード間が通信不可能となる故障の平均発生頻度(S,T間の故障頻度。以下、S−T間故障頻度と記載することがある)で評価される。
【0005】
S−T間信頼度は、0から1の範囲の値をとる確率として表され、一方、S−T間故障頻度は、例えば、年に何回という尺度で表される。S−T間信頼度もS−T間故障頻度も共に、重要な信頼性評価尺度として用いられている。
【0006】
ここで、ノードは故障しないと仮定する。何故ならば、ノードは通信網内で、頑丈な局舎に囲まれていると想定されることが多いこと、また、局舎内では、故障しても直ちに保守要員が復旧に当たることができること等を考えると、故障した場合の保守が容易ではない局社外ケーブル断によって引き起こされる回線装置の故障に比べれば、故障発生を無視できると考えられるからである。
【0007】
この前提の下で、各リンクの正常確率(正常である(故障していない)確率)と、各リンクの故障率(単位時間の平均故障回数)とから、S−T間信頼度およびS−T間故障頻度を計算する方法にはいくつかの方法あるが、基本的となる三つの方法が考えられる。説明の容易さのため、S−T間信頼度について、まず述べる。
【0008】
S−T間信頼度を計算する方法として、下記に示す縮退法、パス法、分解法という三つの手法がある。
(1)通信網の信頼度を保存しながら、通信網の形状を単純化する(縮退法)。
(2)着目ノード間の通信パスを全て列挙し、少なくとも一つの通信パスが存在している確率を計算する(パス法)。
(3)あるリンクに着目し、そのリンクが接続する二つのノードを一つと見なした通信網と、そのリンクを除去した通信網という二つの通信網に分解して、分解によって得られた二つの通信網の信頼度から、最初の通信網の信頼度を計算する(分解法)。
【0009】
次に、これらの三つの手法の概要について説明する。
【0010】
図20の通信網構成で、S,T間の信頼度を計算する場合について説明する。説明のため、リンクには図中のような番号が与えられているとする。以下、各リンクは、この番号で識別される。そして、リンクiが正常である確率をそれぞれpi する。
【0011】
図20に示す通信網において、リンク1,2は、その何れかが故障しても、他方が正常であれば、通信の確保に支障は無い。リンク1,2の何れかが正常であれば、通信は確保できる(このような関係を並列と呼ぶ)。
【0012】
つまり、リンク1,2という二つのリンクは、図21に示すように、リンク1,2の何れかが正常である確率を改めて、リンクの正常確率として与えられた一つのリンク4に置き換えても、S−T間信頼度の計算上は等価である。ここで、リンク4が正常である確率p4 は、「p4 =p1 +p2 −p1 p2 」で与えられる。
【0013】
このようにS,T間の信頼度を変えずに、通信網をより簡単な構成に置き換えることを縮退と呼び、図21のように、並列構成のリンクを1リンクに置き換える操作を並列の縮退と呼ぶ。
【0014】
図21の縮退で得られた通信網は、リンク4とリンク3とから構成されるが、これらの二つのリンクは、両方が正常であって初めてS,T間の通信が確保できる(このような関係を直列の関係と呼ぶ)。
【0015】
つまり、リンク4,3という二つのリンクは、図22に示すように、リンク4,3の両方が正常である確率を改めて、リンクの正常確率として与えられた一つのリンク5に置き換えても、S−T間信頼度の計算上は等価である。ここで、リンク5が正常である確率p5 は、「p5 =p4 p3 」で与えられる。
【0016】
図22のように、直列構成のリンクを1リンクに置き換える操作を直列の縮退と呼ぶ。
【0017】
結局、図20の通信網は、図22のように等価な1リンクに置き換えることができる。この場合、S−T間信頼度は、SとTとが通信できる確率であるから、明らかにp5 である。
【0018】
図22の直列の縮退の変換式より、
S−T間信頼度=p5 =p4 p3
となる。ところが、図21の並列の縮退の変換式より、
p4 =p1 +p2 −p1 p2
であるから、結局、S−T間信頼度は、
S−T間信頼度=p5 =p4 p3 =(p1 +p2 −p1 p2 )p3
というように求められる。
【0019】
このように、通信網が、直列と並列で構成されていれば、縮退を用いて、そのS,T間の信頼度を求めることができる。しかし、直列でも並列でもない構成を含む場合、例えばブリッジと呼ばれる図23のような場合には、縮退法だけでは、S,T間の信頼度を求めることは出来ない。この場合には、パス法または分解法が用いられる。
【0020】
パス法は、SとTとの通信を確保するために必要な極小なリンク集合(以下、パスと呼ぶ)を列挙し、少なくとも一つのパスが使用できる確率を求めるものである。
【0021】
例えば、リンク1,2が正常であれば、他のリンクが故障していても、SとTとの間の通信は確保され、しかし、さらに、リンク1またはリンク2が故障すると、SとTとの間の通信は確保されない場合、リンク集合{1,2}は極小なリンク集合を構成して、パスの一つとなる。
【0022】
このような極小なリンク集合の定義に従って、図23の場合、パスは、
パス1:{1,3} パス2:{2,5}
パス3:{1,4,5} パス4:{2,4,3}
という4つであることが分かる。
【0023】
求める必要のあるS,T間の信頼度は、パスj(j=1,2, …)に属するリンクが全て正常である事象をEj とすれば、
S−T間信頼度=Pr(E1 ∪E2 ∪E3 ∪E4 )
となる。
【0024】
この式の右辺を、例えば包除原理(「藤木,"システムの信頼性理論",信学誌, 59,4,p.346(1984)」参照)で展開すれば、S−T間信頼度は、
と求められる。
【0025】
パス法は、直列と並列とからなる通信網構成に限らず、任意の形状の通信網のS,T間の信頼度計算に適用可能である。
【0026】
その他に、任意の形状の通信網のS,T間の信頼度の計算法として、分解法と呼ばれる方法がある。これは、以下の操作に基づいた計算法である。
【0027】
この分解法では、
<1>先ず最初に、S,T間の信頼度を求めたい通信網の一つのリンクに着目して、通信網と着目リンクを取り除いた上で、着目リンクの両端ノードを一つのノードと見なした(以下、この操作を短絡除去と呼ぶ)通信網を生成し、
<2>続いて、その着目リンクを取り除いた(以下、この操作を開放除去と呼ぶ)通信網を生成し(<1><2>によって二つの通信網を生成する操作を「通信網を分解する」と呼ぶ)、
<3>続いて、その得られた二つの通信網のS,T間の信頼度から、分解前の通信網のS,T間の信頼度を一定の変換式によって計算する、
という手順に従って、任意の形状の通信網のS,T間の信頼度を計算する。
【0028】
例えば、図23の通信網をリンク4に着目して分解すると、図24のようになる。
【0029】
今、通信網をGで表し、GのS,T間の信頼度をR(G)で表す。また、Gにおいて、リンクeを短絡除去して得られた通信網をGe 、リンクeを開放除去して得られた通信網をGe * と書けば、
R(G)=pe R(Ge )+(1−pe )R(Ge * )・・・式(1)
但し、pe :リンクeの正常である確率
という式(1)の成立することが知られている。
【0030】
図24の場合、求めたいS,T間の信頼度は、直並列の縮退と式(1)とを用いて計算できる。
【0031】
すなわち、リンク4を短絡除去して得られた通信網(図24の左側の通信網)については、直並列の縮退を用いて、
S−T間信頼度=(p1 +p2 −p1 p2 )(p3 +p5 −p3 p5 )
が成り立つ。一方、リンク4を開放除去して得られた通信網(図24の右側の通信網)については、同様に直並列の縮退を用いて、
S−T間信頼度=p1 p3 +p2 p5 −p1 p2 p3 p5
が成り立つ。
【0032】
従って、求めたい分解前の通信網のS,T間の信頼度は、上述の式(1)を用いて、
と求められる。
【0033】
分解によって得られた通信網が、直列と並列の組み合わせで表現できる構成であれば、以上の方法によって、その信頼度を計算できる。もし、直列と並列のみで表現できなければ、さらに分解を繰り返せばよい。図25に、より複雑な分解の例を示す。
【0034】
このようにして、任意の形状の通信網のS,T間の信頼度を分解法に基づいて計算することができる。
【0035】
以上に説明したように、縮退法、パス法、分解法を用いて、通信網のS,T間の信頼度を求めることができることが知られている。
【0036】
しかし、通信網のノード数、リンク数が増えると、計算量は膨大となり、大規模な通信網の信頼度計算については計算時間の点で困難性が予想される。
【0037】
そこで、パス法及び分解法の計算速度に関する検討が既になされており、分解法がパス法よりも極めて高速であり、現在のところ現実的な計算法であると言われている(「林,阿部,"ネットワーク信頼性計算アルゴリズムの性能評価",電子情報通信学会春季全国大会 A-6(1991)」参照)。
【0038】
一方、S,T間の故障頻度を求めようとする場合でも、S,T間の信頼度と同様な計算手続きが利用できる。
【0039】
この場合、リンクiには、正常確率pi とともに、故障率λi (1/(修理されてから再び故障するまでの平均時間)が与えられているとする。
【0040】
並列の縮退については、
pc =(pa +pb −pa pb )
λc =(pa λa +pb λb −pa pb (λa +λb ))/(pa +pb −pa pb )
という変換式で縮退ができることが知られている(「M.Hayashi,"System failure frequency analysis using differential operator",IEEE Trans.,R-40,pp.601-609(1991) 」参照)。ここで、a,bは縮退前の2つのリンクの番号、cは縮退後のリンク番号である。
【0041】
一方、直列の縮退については、
pc =pa pb
λc =λa +λb
という変換式で縮退ができることが知られている(「M.Hayashi,"System failure frequency analysis using differential operator",IEEE Trans.,R-40,pp.601-609(1991) 」参照)。同様に、a,bは縮退前の2つのリンクの番号、cは縮退後のリンク番号である。
【0042】
これらの式に従って、例えば、図20の通信網では、最終的な縮退後の故障率が、
(p1 λ1 +p2 λ2 −p1 p2 (λ1 +λ2 ))/(p1 +p2 −p1 p2 )+λ3
となる。
【0043】
ここで、リンクが一つからなる通信網のS,T間の故障頻度、信頼度、故障率に関しては、
S−T間故障頻度=(S−T間信頼度)×(S−T間故障率)
という関係式が成立することが知られている(「M.Hayashi,"System failure frequency analysis using differential operator",IEEE Trans.,R-40,pp.601-609(1991) 」参照)。
【0044】
この関係式に従って、図20の通信網におけるS,T間の故障頻度は、
で求められる。
【0045】
以上説明したように、S,T間の故障頻度の計算には縮退法が利用できるのである。
【0046】
パス法については、パス法での計算手続き中において、
px1px2…pxn → px1px2…pxn(λx1+λx2+…+λxn)
但し、x1〜xnは任意のリンク番号
という変換を行えば、変換後の計算値が、S,T間の故障頻度であることが知られている(「W.G.Schneeweiss,"Computing failure frequency,MTBF & MTTR via mixed products of availability and unavailabilities",IEEE Trans.Vol.R-30,pp.362-363(1981)」参照)。
【0047】
例えば、図23の通信網のS,T間の故障頻度は、
で求められる。
【0048】
以上に説明したように、S,T間の故障頻度については、縮退法とパス法とによって計算することができることが知られている。
【0049】
なお、ここでは、2リンクからなる構成を1リンクに変換する縮退法について説明したが、本発明者の一人は、下記の特許文献1で、別の種類の縮退法を提案している。
【0050】
しかしながら、特許文献1で提案した縮退法は、通信網の容量や通信経路の割り当てまで考慮した場合の縮退法である。これに対して、本発明で対象としている通信網は、通信網を現実に構築する際、まず考慮しなければならないところの、物理的に接続されているか否かに関する信頼性評価尺度に着目したものである。従って、特許文献1で提案した縮退法は、計算手法の利用対象が本発明と異なっている。
【0051】
【特許文献1】
特開平9−27835号公報
【0052】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来技術では、S,T間の故障頻度については、縮退法とパス法によって計算していた。
【0053】
ところが、縮退法、パス法を用いての計算は、通信網のノード数、リンク数が大きくなると、計算項が莫大となり、高速計算機を用いても、計算時間の点での困難が生じていた。
【0054】
これから、S,T間の故障頻度の計算についても、S,T間の信頼度の計算(上述したように分解法を用いて計算することが可能である)と同様に、高速な分解法を用いる手法が要望されている。
【0055】
ところが、従来技術では、式(1)に相当する、分解法に必要な、分解後の通信網から分解前の通信網のS,T間の故障頻度の計算に必要なパラメータを算出する手続きが知られていなかったために、分解法を用いて故障頻度を計算することはできなかった。
【0056】
なお、この件に関連して、本発明者は、「林, 阿部,"ネットワーク信頼性計算アルゴリズムの性能評価",春季信学全大,A-6(1991)」で、分解法を用いた故障頻度数値実験の結果について報告しているが、この学術論文では、実際にどのように分解法を用いたのかについては一切発表していない。
【0057】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、分解後の通信網から分解前の故障頻度計算に必要なパラメータを算出する手続きを使うことにより、通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を高速に計算できるようにする新たな通信網故障頻度計算技術の提供を目的とする。
【0058】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は、分解法を用いてS,T間の故障頻度の計算のために必要となる、分解後の通信網から分解前の通信網の故障頻度計算に必要なパラメータを算出する手続きとして、下記の式(2)を用いる手段を用意する。
【0059】
【数1】
ただし、
【0060】
【数2】
である。
【0061】
ここで、R(G)は通信網GのS,T間の信頼度、F(G)は通信網GのS,T間の故障頻度を表す。また、eは分解を適用する際に着目するリンク、pe はリンクeの正常確率、λe はリンクeの故障率を表す。
【0062】
この式(2)の適用イメージを明らかにするために、図23の通信網に、この式(2)を適用した例について説明する。
【0063】
今、図23の通信網で、p1 =p2 =p3 =p4 =p5 =0.99、λ1 =λ2 =λ3 =λ4 =λ5 =0.02とする。
【0064】
リンク4を着目リンクとして、縮退法を用いれば、
R(G4 ) =0.9998, F(G4 ) =0.00079
R(G4 * )=0.9996, F(G4 * )=0.0156
と求められる。
これから、式(2)を用いると、
【0065】
【数3】
となり、図23の通信網において、S,T間の故障頻度は“0.00080”と求められることになる。
【0066】
次に、式(2)の正当性について説明する。
【0067】
通信網Gのリンク番号の集合をL={1,2,・・・,N}とする。さらに、p1,p2,・・・,pN を変数に持つ関数の全体をXとし、p1,p2,・・・,pN , λ1,λ2,・・・,λN を変数に持つ関数の全体をYとする。
【0068】
XからYへの写像Dを、
条件1.任意のi∈Lに対して、D(pi )=pi λi ・・・式(3)
条件2.任意のf,g∈Xに対して、
D(f+g)=D(f)+D(g) ・・・式(4)
D(fg)=D(f)g+fD(g) ・・・式(5)
という条件を満足する写像と定義する。
【0069】
このとき、
性質1.Dは存在し、かつ唯一である
性質2.以下の式が成立する
F(G)=D(R(G))
性質3.任意のf,g∈Xに対して、
D(f−g)=D(f)−D(g) ・・・式(6)
D(1)=0 ・・・式(7)
という性質のあることが知られている(「M.Hayashi,"System failure frequency analysis using differential operator",IEEE Trans.,R-40,pp.601-609(1991) 」参照)。
【0070】
ここで、性質2を式(1)に用いると、
となる。
【0071】
この式に、式(3)〜式(7)を適用して、
となる。
【0072】
式(1)と上式を変形した上で並び替えると、
のようになる。
従って、
【0073】
【数4】
という関係式が得られ、これを変形すると、
【0074】
【数5】
が導かれる。この式は式(2)に一致する。
【0075】
このようにして、本発明は、分解法を使った故障頻度計算を可能にするために、計算したい通信網Gの持つあるリンクeを短絡した通信網の信頼度R(Ge )及び故障頻度F(Ge )と、計算したい通信網Gからそのリンクeを開放した通信網の信頼度R(Ge * )及び故障頻度F(Ge * )とから、
pe :リンクeの正常確率
λe :リンクeの故障率
という、式(2)の計算式に従って、計算したい通信網の信頼度R(G)及び故障頻度F(G)を計算するという構成を基本構成とするものである。
【0076】
本発明は、この基本構成に従い、
▲1▼処理対象の通信網を計算対象の通信網の起点として、計算対象の通信網を縮退して、1リンクへ縮退できる場合には、その1リンクの信頼度及び故障頻度から計算対象の通信網の信頼度及び故障頻度を計算し、1リンクへ縮退できない場合には、計算対象の通信網の持つあるリンクを短絡した通信網とそのリンクを開放した通信網とを新たな計算対象の通信網として、この処理を繰り返すことで、計算対象の通信網の信頼度及び故障頻度を計算する第1の処理過程と、
▲2▼第1の処理過程で求めた短絡した通信網の信頼度及び故障頻度と、第1の処理過程で求めた開放した通信網の信頼度及び故障頻度とをパラメータ値とする、上述の式(2)の計算式に従って、その短絡及び開放前の通信網の信頼度及び故障頻度を計算して、処理対象の通信網の信頼度及び故障頻度が計算できるまで、この処理を繰り返すことで、処理対象の通信網の信頼度及び故障頻度を計算する第2の処理過程とを備えることで、
処理対象となる通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する。
【0077】
以上の各処理過程が動作することで実現される本発明の通信網故障頻度計算方法はコンピュータプログラムで実現できるものであり、このコンピュータプログラムは、半導体メモリなどのような適当な記録媒体に記録して提供されたり、ネットワークを介して提供され、本発明を実施する際にインストールされてCPUなどの制御手段上で動作することにより本発明を実現することになる。
【0078】
このようにして、本発明によれば、通信網において、あるノードSとあるノードTとの間が通信不能となる故障が発生する頻度の平均値(故障頻度)を分解法を使って計算できるようになることから、通信網の故障頻度を高速に計算できるようになる。
【0079】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に従って本発明を詳細に説明する。
【0080】
図1に、本発明を具備する通信網故障頻度計算装置1の装置構成の一例を図示する。
【0081】
この図に示すように、本発明の通信網故障頻度計算装置1は、通信網の形状を表すデータと故障頻度計算に必要なデータとを格納する記憶部10と、そのデータに縮退の処理を行う縮退部11と、そのデータに分解の処理を行う分解部12と、計算全体を統括する制御部13とを備えるとともに、入力装置として、キーホード14を備え、出力装置として、表示制御部15/表示メモリ16/CRT17を備える。
【0082】
先ず最初に、記憶部10に記憶されるデータの構造について説明し、続いて、縮退部11の処理機能、分解部12の処理機能、制御部13の処理機能について説明する。
【0083】
(1)記憶部10に記憶されるデータの構造
記憶部10は、通信網の形状を表すデータと故障頻度計算に必要なデータとを記憶する。
【0084】
図2に、記憶部10に記憶されるデータの構造を示す。なお、図2中に示す数値は、例を示すための仮想値である。
【0085】
図2において、各行が通信網の持つリンクに対応し、各行の成分は、そのリンクのリンク番号、そのリンクが接続するノード番号、そのリンクの正常確率、そのリンクの故障率に対応する。ノード番号を示す二つの自然数S,Tも入力される。
【0086】
本発明の通信網故障頻度計算装置1は、ノード番号Sのノードとノード番号Tのノードとの間が非連結となる故障頻度を求めることになる。
【0087】
以下、説明のために、リンク番号xのリンクに接続しているノード番号を、図2のデータ構造において左からn1(x),n2(x)と表し、また、リンク番号xのリンクの正常確率をpx 、リンク番号xのリンクの故障率をλx と表すことにする。
【0088】
(2)縮退部11の処理機能
縮退部11は、記憶部10に記憶されている通信網データから、直列と並列の縮退が可能な部分を見つけ出して、実際に適用する処理を行う。この処理を行うために、縮退部11は、ノード次数カウンタ、直列縮退変換部、並列縮退変換部を備える。
【0089】
(2−1)ノード次数カウンタの処理機能
ノード次数カウンタは、図3の処理フローを実行することで、通信網データから、各ノードに接続しているリンク数(次数)を数え上げる処理を行って、それを記憶する。
【0090】
各ノードの次数のカウント結果については、d(1)〜d(N)に格納されることになる。
【0091】
(2−2)直列縮退変換部の処理機能
直列縮退変換部は、図4の処理フローを実行することで、直列構成の二つのリンクを探索して、直列の縮退を実行する。
【0092】
(2−3)並列縮退変換部の処理機能
並列縮退変換部は、図5の処理フローを実行することで、並列構成の二つのリンクを探索して、並列の縮退を実行する。
【0093】
縮退部11は、これらのノード次数カウンタ/直列縮退変換部/並列縮退変換部を使い、図6の処理フローに示すように、先ず最初に、ステップ10で、入力された通信網データの全リンク数Mを求め、続くステップ11で、ノード次数カウンタを使って各ノードの次数をカウントする。
【0094】
続いて、ステップ12で、ノードの次数を参照しつつ、直列縮退変換部を使って、ノード次数カウンタによりカウントされたノードの次数を参照しつつ直列縮退変換を実行し、続くステップ13で、並列縮退変換部を使って、ノード次数カウンタによりカウントされたノードの次数を参照しつつ並列縮退変換を実行する。
【0095】
続いて、ステップ14で、縮退変換を施すことで書き替えた通信網データの全リンク数M0 を求め、続くステップ15で、M0 がMよりも小さいのか否かを判断して、M0 がMよりも小さいことを判断するときには、ステップ16に進んで、M0 を新たなMと設定して、ステップ11に戻り、M0 がMよりも小さくならないことを判断するときには、処理を終了する。
【0096】
このようにして、縮退部11は、入力された通信網データを可能な限り縮退するように処理するのである。
【0097】
(3)分解部12の処理機能
分解部12は、通信網データにおいて特定のリンクに着目し、その着目リンクを短絡除去した通信網に対応するデータと、その着目リンクを開放除去した通信網に対応するデータとを生成する処理を行う。この処理を行うために、分解部12は、短絡除去部と開放除去部とを備える。
【0098】
(3−1)短絡除去部の処理機能
短絡除去部は、図7の処理フローを実行することで、通信網データから、着目リンク(リンク番号e)を短絡除去した通信網Ge のデータを生成する。
【0099】
ここで、上述したように、ノードxの両端のノードはn1(x),n2(x)で表している。
【0100】
(3−2)開放除去部の処理機能
開放除去部は、図8の処理フローを実行することで、通信網データから、着目リンク(リンク番号e)を開放除去した通信網Ge * のデータを生成する。
【0101】
(4)制御部13の処理機能
制御部13は、縮退部11及び分解部12を制御して、S,T間の故障頻度を計算する処理を行う。この計算処理を行うために、制御部13は、再帰的な手続きを用いる。
通信網Gを表すデータから、
【0102】
【数6】
を算出する関数f(G)を考える。
【0103】
この関数f(G)は、以下の処理を実行する。
【0104】
すなわち、先ず最初に、通信網Gを表すデータに、縮退部11を用いて、直並列の縮退をこれ以上縮退できなくなるまで(縮退を適用してもリンク数が減らなくなるまで)繰り返す。
【0105】
直並列の縮退をこれ以上縮退できなくなるまで繰り返した結果、縮退した通信網データが1リンクとなった場合には、そのリンクの信頼度R0 と、そのリンクの故障率F0 とから、関数f(G)の値として、
【0106】
【数7】
を算出する。
【0107】
一方、直並列の縮退をこれ以上縮退できなくなるまで繰り返した結果、縮退した通信網データが1リンクとならない場合には、任意のリンクeを選択して、分解部12を用いて、Ge とGe * を表すデータを生成し、自分自身(関数f)をコールすることでf(Ge )とf(Ge * )とを算出する。
【0108】
そして、式(2)と等価となる
f(G)=Pe ・f(Ge )+(E−Pe )・f(Ge * )
を算出する。
【0109】
関数f(G)は、この処理を再帰的に繰り返すことで、通信網GにおけるS,T間の故障頻度を計算する。
【0110】
次に、図9(a)に示す通信網データを具体例にして、本発明による故障頻度計算処理について具体的に説明する。
【0111】
ここで、図9(a)に示す通信網データを構成する各リンクの正常確率及び故障率については、図9(b)に示すものを想定するとともに、ノード1とノード4との間の故障頻度について計算することを想定する。
【0112】
制御部13において、Gに関数fが適用される。
【0113】
関数fの最初の手続きとして、直並列の縮退が適用され、図9(a)のデータについては並列の縮退が適用されることで、図10に示すG' に変換されることになる。
【0114】
これ以上、縮退を適用してもリンク数が減らないので、G' を分解する操作が適用されて、Ge ' とGe * ' とが生成される。例えば、着目するリンクとしてリンク4が選択される場合には、図11(a)に示すようなGe ' と、図11(b)に示すようなGe * ' とが生成されることになる。
【0115】
関数fの次の手続きとして、関数f(Ge ' )と関数f(Ge * ' )とが計算される。
【0116】
先ず、f(Ge ' )の手続きとして、縮退が適用され、図11(a)に示すGe ' は、図12に示すように1リンクまで縮退される。このようにして1リンクまで縮退できたので、f(Ge ' )は、
【0117】
【数8】
を値として返す。
【0118】
同様に、f(Ge * ' )の手続きとして、縮退が適用され、図11(b)に示すGe * ' は、図13に示すように1リンクまで縮退される。このようにして1リンクまで縮退できたので、f(Ge * ' ) は、
【0119】
【数9】
を値として返す。
【0120】
このようにして、f(Ge ' )とf(Ge * ' )とが求められると、式(2)に従って、
【0121】
【数10】
というようにf(G)が求められるので、本発明の通信網故障頻度計算装置1は、Gの故障頻度F(G)として“0.0362”という値を出力する。
【0122】
このようにして、本発明の通信網故障頻度計算装置1によれば、分解法を使って、通信網において、あるノードSとあるノードTとの間が通信不能となる故障発生の故障頻度を計算できるようになる。
【0123】
次に、図14ないし図17に従って、本発明の通信網故障頻度計算装置1の実行する故障頻度計算処理のための全体的な処理について、さらに詳細に説明する。
【0124】
この図14に示す構成では、本発明の通信網故障頻度計算装置1は、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100と、分解前通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン200と、メインプログラム300というプログラム構成に従って、分解法を使って通信網の故障頻度を計算するという構成を採っている。
【0125】
この指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100は、メインプログラム300から、通信網を指定してコールされると、図15の処理フローに示すように、その指定される通信網を受け取って、これ以上縮退できないというまで縮退を行う。
【0126】
そして、その縮退の結果、リンク数が1つとなるまで縮退できたのか否かを判断して、リンク数が1つとなるまで縮退できた場合には、縮退した1リンクの信頼度・故障率から、指定される通信網の信頼度・故障頻度を算出して、それをメインプログラムに返却し、一方、リンク数が1つとなるまで縮退できない場合には、指定される通信網の任意のリンクを選択して、短絡除去と開放除去により2つの分解後通信網を生成して、それをメインプログラムに返却するという処理を実行する。
【0127】
また、分解前通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン200は、メインプログラム300から、短絡除去と開放除去により生成された2つの分解後通信網の信頼度・故障頻度を指定してコールされると、図16の処理フローに示すように、その2つの分解後通信網の信頼度・故障頻度を受け取り、その分解後通信網の分解に用いられた着目リンクの正常確率及び故障率を取得する。
【0128】
そして、上述した式(2)を使って、2つの分解後通信網の信頼度・故障頻度と、その分解後通信網の分解に用いられた着目リンクの正常確率及び故障率とから、分解前通信網の信頼度・故障頻度を算出して、それをメインプログラムに返却するという処理を実行する。
【0129】
メインプログラム300は、この指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100の処理と、分解前通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン200の処理とを受けて、図17の処理フローに示すように、処理対象の通信網を入力すると、処理対象の通信網を指定して、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100をコールすることで、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100から、指定した通信網の信頼度・故障頻度を受け取るか、指定した通信網から分解される分解後通信網を受け取り、分解後通信網を受け取る場合には、分解後通信網を指定して、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100を再度コールしていく。
【0130】
そして、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100から受け取った全ての分解後通信網についてコールしたことを判断するときには、下位側の分解後通信網からの順番に従って、指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン100から受け取った分解後通信網の信頼度・故障頻度を指定して、分解前通信網信頼度・故障頻度算出ルーチン200をコールすることで、その分解後通信網の分解前の通信網の信頼度・故障頻度を受け取り、処理対象の通信網に戻るまで、そのコールを繰り返していくのである。
【0131】
最後に、本発明の有効性を検証するために行った実験の結果について説明する。
【0132】
この実験は、図18(a)に示す6完全メッシュの通信網データと、図18(b)に示す7完全メッシュの通信網データとについて、本発明を用いて計算した場合の計算時間と、パス法を用いる計算方法の中で効率的な方法として知られている「J.A.Abraham,"An improved algorithm for network reliability",IEEE,Trans.,R-28,pp.58-61(1979) 」を用いて計算した場合の計算時間とを比較することで行った。
【0133】
図19に、この実験結果を図示する。この実験結果から本発明の有効性が検証できた。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、通信網において、あるノードSとあるノードTとの間が通信不能となる故障が発生する頻度の平均値(故障頻度)を分解法を使って計算できるようになることから、通信網の故障頻度を高速に計算できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の通信網故障頻度計算装置の装置構成の一例を示す図である。
【図2】記憶部に格納されるデータの構造を示す図である。
【図3】ノード次数カウンタの実行する処理フローである。
【図4】直列縮退変換部の実行する処理フローである。
【図5】並列縮退変換部の実行する処理フローである。
【図6】縮退部の実行する処理フローである。
【図7】短絡除去部の実行する処理フローである。
【図8】開放除去部の実行する処理フローである。
【図9】通信網データの一例を示す図である。
【図10】縮退された通信網データの説明図である。
【図11】分解された通信網データの説明図である。
【図12】通信網データの縮退の説明図である。
【図13】通信網データの縮退の説明図である。
【図14】本発明の通信網故障頻度計算装置の備えるプログラム構成の他の一例を示す図である。
【図15】指定通信網信頼度・故障頻度算出ルーチンの実行する処理フローである。
【図16】分解前通信網信頼度・故障頻度算出ルーチンの実行する処理フローである。
【図17】メインプログラムの実行する処理フローである。
【図18】本発明の有効性を検証するために行った実験で用いた通信網データの説明図である。
【図19】本発明の有効性を検証するために行った実験結果の説明図である。
【図20】通信網の一例を示す図である。
【図21】通信網の並列縮退の説明図である。
【図22】通信網の直列縮退の説明図である。
【図23】通信網の一例を示す図である。
【図24】通信網の分解の説明図である。
【図25】通信網の分解の説明図である。
【符号の説明】
1 通信網故障頻度計算装置
10 記憶部
11 縮退部
12 分解部
13 制御部
14 キーホード
15 表示制御部
16 表示メモリ
17 CRT
Claims (8)
- 通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する通信網故障頻度計算方法であって、
計算したい通信網の持つあるリンクを短絡した通信網の信頼度及び故障頻度と、計算したい通信網からそのリンクを開放した通信網の信頼度及び故障頻度とをパラメータ値とする計算式に従って、計算したい通信網の信頼度及び故障頻度を計算することを、
特徴とする通信網故障頻度計算方法。 - 処理対象となる通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する通信網故障頻度計算方法であって、
処理対象の通信網を計算対象の通信網の起点として、計算対象の通信網を縮退して、1リンクへ縮退できる場合には、その1リンクの信頼度及び故障頻度から計算対象の通信網の信頼度及び故障頻度を計算し、1リンクへ縮退できない場合には、計算対象の通信網の持つあるリンクを短絡した通信網とそのリンクを開放した通信網とを新たな計算対象の通信網として、この処理を繰り返す過程と、
上記短絡した通信網の信頼度及び故障頻度と、上記開放した通信網の信頼度及び故障頻度とをパラメータ値とする計算式に従って、その短絡及び開放前の通信網の信頼度及び故障頻度を計算して、処理対象の通信網の信頼度及び故障頻度が計算できるまで、この処理を繰り返す過程とを備えることを、
特徴とする通信網故障頻度計算方法。 - 通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する通信網故障頻度計算装置であって、
計算したい通信網の持つあるリンクを短絡した通信網の信頼度及び故障頻度と、計算したい通信網からそのリンクを開放した通信網の信頼度及び故障頻度とをパラメータ値とする計算式に従って、計算したい通信網の信頼度及び故障頻度を計算する手段を備えることを、
特徴とする通信網故障頻度計算装置。 - 処理対象となる通信網の持つ指定される2つのノード間が通信不能となる故障頻度を計算する通信網故障頻度計算装置であって、
処理対象の通信網を計算対象の通信網の起点として、計算対象の通信網を縮退して、1リンクへ縮退できる場合には、その1リンクの信頼度及び故障頻度から計算対象の通信網の信頼度及び故障頻度を計算し、1リンクへ縮退できない場合には、計算対象の通信網の持つあるリンクを短絡した通信網とそのリンクを開放した通信網とを新たな計算対象の通信網として、この処理を繰り返す手段と、
上記短絡した通信網の信頼度及び故障頻度と、上記開放した通信網の信頼度及び故障頻度とをパラメータ値とする計算式に従って、その短絡及び開放前の通信網の信頼度及び故障頻度を計算して、処理対象の通信網の信頼度及び故障頻度が計算できるまで、この処理を繰り返す手段とを備えることを、
特徴とする通信網故障頻度計算装置。 - 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の通信網故障頻度計算方法の実現に用いられる処理をコンピュータに実行させるための通信網故障頻度計算プログラム。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の通信網故障頻度計算方法の実現に用いられる処理をコンピュータに実行させるための通信網故障頻度計算プログラムを記録した記録媒体。
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