JP4558768B2 - 通信網信頼性近似計算方法および装置 - Google Patents

通信網信頼性近似計算方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、通信網の信頼性高速近似計算方法および装置に関し、具体的には、通信網を構成する通信網構成要素(交換装置、伝送装置、ケーブル等)と、通信網構成要素からなる通信経路、正常に機能する通信経路によって確保される通信容量、各通信網構成要素の故障確率が知られているときに、当該通信網の通信網構成要素間に通信網が正常に機能しているとみなすしきい値以上の通信容量を伝送することができる確率を高速に近似計算する信頼性近似計算方法および装置に関する。
通信網の信頼性とは、通信が安定して行われる度合い、または性質を表す。通信網をどのように構成するかによって、通信網の信頼性は大きく異なったものになる。
例えば、二つの交換装置の間を一つの通信経路で結ぶ場合(図1の11→13→14→15の経路参照)と、二つの通信経路で結ぶ場合(図2の11→12→15および11→13→14→15の経路参照)とでは、二つの通信経路のうち一つの通信経路が利用できなくなっても、もう一方の通信経路が利用できることから、後者の方(図2の方)が高い信頼性を実現できる。
さらに、通信経路が二つ設定されている場合(図2の場合)でも、その通信経路の関係が、通信を両方に振り分けて、片方の通信経路が利用できないときは、半分の通信容量のみが利用可能であるのか、通信経路の一方が現用の通信経路(通常、使用されている通信経路)であり、他方の予備の通信経路(現用の通信経路が利用不可能となった際にのみ利用する)で、現用の通信経路が運ぶことのできる通信容量を全て予備の通信経路で代替できるのかでは、さらに信頼性は異なってくる。例えば、図3の左側は両方の経路が現用なので、伝送装置12が故障のとき、11→13→14→15の経路で通信容量50%が確保されるが、図3の右側は一方の経路が予備であるため、通信容量100%が確保される。
さらに、通信網の構成が複雑である場合(例えば、図4のように、通信経路がより多くなった場合)、信頼性の観点から、適切な網構成であるのかどうかを判断することは簡単ではない。図4の場合には、現用経路として、11→16→12→18→15,11→16→12→14→15,11→16→12→17→14→15,11→13→17→14→15,11→13→12→18→15の経路があり、予備経路として、11→13→14→15の経路がある。
適切な判断を行うためには、信頼性を数値で表すことが合理的である。信頼性を表す数値が、通信網構成によって、どのように変化するかを検証することで、想定される通信網構成の中で最も高信頼な通信網を明らかにすることができる。
この検証のため、例えば、T.A.Feo and R.J.Johnson,“Partial factoring:An efficient algorithm for approximating terminal reliability on complete graphs”,IEEE Trans.,R−39,pp.290−295,1990.(非特許文献1参照)は、通信網が特殊な場合(通信経路と通信容量に関する条件を無視できる場合)、通信網構成要素の故障確率が、実態としては0.00001等の極めて小さいことに着眼し、信頼性計算式中、「・・・+[通信網の構成要素の故障確率]×[部分式]」と表現される箇所がある場合において、[部分式]を粗い精度で近似しても、計算式全体の精度には余り影響しないという性質を用いた通信網信頼性近似計算法を提示している。
しかし、上記文献に提示された方法を通信経路と通信容量の条件を加味した場合に適用するときに、「・・・+[通信網の構成要素の故障確率]×[部分式]」が計算式にどのような具体的な形で登場し、さらに、粗い精度で構わないとしても、[部分式]をどのように近似すればよいかに関しては、これまで知見が得られておらず、上記文献に記載の方法にも限界があった。
また、先に本発明者等(本出願人)が提案した『通信網信頼性計算装置と方法』では、通信網を「通信網構成要素」と「通信経路」からなる構成物として捉え、その信頼性を「利用できる通信経路が確保する通信容量が一定値以上である確率」と定義し、値を計算する方法が提示されている。
しかし、上記の方法を実際に適用しようとすると、計算時間が、通信網の「通信経路」の数に対して指数関数的に増大し、大規模な通信網に適用すると計算が終了するまでに膨大な時間を要するという困難が生じていた。
以下、課題を説明するために必要な概念と前提を整理する。
通信網は、通信網構成要素(交換装置、伝送装置、ケーブル等)と通信経路から構成されるものとする。通信経路は、通信網構成要素の集まった集合と考える。
通信網構成要素全体の集合をEと書き、通信経路全体の集合をWと書く。ある通信経路w∈Wに対し、wに含まれる通信網構成要素の集合をυ(w)で表す。
例えば、図5に示す通信網構成である場合、通信網構成要素は、E={1,2,3,4,5,6,7,8}である。なお、図5では、説明を簡単にするため、ケーブルのみが故障するものとし、通信網構成要素をケーブルのみとしている。これは、あくまで説明を容易にするためであり、本発明で提案する考え方は、ケーブル以外を考慮に入れても問題なく適用することが可能である。
通信経路は通信経路1〜5まで割り当てられており、それらの通信経路に含まれる通信網構成要素は以下の通りである。
Figure 0004558768
上記のうち、通信経路2〜4(実線で示す)は現用の通信経路であり、通信経路1,5(点線で示す)は予備の通信経路である。予備の通信経路とは現用の通信経路が故障したときのみ、利用できる通信経路であり、現用の通信経路が正常の場合には使用しない通信経路のことである(故障が発生した際に、予備の通信経路が現用の通信経路の通信容量を100%代替するのか、半分だけ代替するのか等については、予備の通信経路導入の実装に依存する。この点に関する本発明における扱いは、以下の前提の説明の後の注意事項1で述べる。
E,W,υが定められたとき、通信網をE,W,υの組と考え、通信網NをN=(E,W,υ)と書く。Nについては、以下の前提を置く。
前提1:各通信網構成要素i∈Eは、正常または故障の2つのいずれかの状態である。
前提2:各通信網構成要素i∈Eは、故障状態にある確率(故障確率)qが分かっている。正常である確率は1−qで求められ、これをpと書く。
前提3:通信網構成要素のそれぞれは、互いに確率的に独立に故障する。
前提4:通信経路w∈Eが正常であるとは、wに含まれる通信網構成要素、すなわち、υ(w)に含まれる全ての通信網構成要素が正常であることであり、υ(w)の通信網構成要素の1つでも故障するとwは正常に機能しない。通信経路が正常に機能しないとき、以下で示す通信経路で確保されている通信容量は0となる。
前提5:Wの任意部分集合εに対し、εに含まれる全ての通信経路が正常に機能したとき、εに含まれる通信網構成要素から構成される通信経路が決定され、この通信経路を利用して確保される通信容量が決まる。これを関数C(ε)と書く。
(ε)は0または正の実数値を値域とする(なお、ε≠φとする。ε=φのときは、C(ε)は定義されない)。
前提6:C(ε)は以下の条件を満足する。
εとεをWの部分集合とするとき、
ε⊆εが成立するならば、C(ε)≦C(ε)が成立する。
(前提6は、正常な通信経路が増えたにも関わらず確保される通信容量が減るという非現実的な現象がないことを保障している)。
前提7:Eに含まれる通信網構成要素のうち、正常である通信網構成要素の全体をEg(正常集合と呼ぶ)で表し、このとき通信網Nが確保する通信容量をC(N)と書くとき、通信容量C(N)を次式で定める。
Figure 0004558768
注意事項1:
前提6においてC(ε)の値を実際に算出する手続きは、各通信経路の通信容量の割り当て方式や通信経路間の切り替え(現用の通信経路から予備の通信経路への切り替え)方式等に依存する。本発明では、説明を簡潔にするために、これらの方式の詳細については述べない。C(ε)が算出できるという前提で、かつC(ε)が前提6を満足すれば、本発明は可能である。
注意事項2:
前提3では、通信網構成要素のそれぞれは互いに独立故障するとしたが、実際には、通信網構成要素xが故障すると、同時に通信網構成要素xが故障することは起こりうる(例えば、xはxから電力を供給されている場合)。このような場合でも、xを含んでいる通信経路xも含まれるという想定にすれば、前提3を替えず、本発明は適用可能である。
前提1〜7の理解を容易にするために、正常である通信網構成要素の全体、すなわち、正常集合Egが与えられたときの通信網nの通信容量C(N)の値を算出する例を示す。
以下の通信網を想定する(図5に対応している)。
通信網構成例1:
E={1,2,3,4,5,6,7,8},W={通信経路1,通信経路2,通信経路3,通信経路4,通信経路5}
υ(通信経路1)={1,8},υ(通信経路2)={1,6,7},υ(通信経路3)={2,3,8},υ(通信経路4)={5},υ(通信経路5)={3,4,7}
現用の通信経路:通信経路2,通信経路3,通信経路4
通信容量についてはC(通信経路2)=C(通信経路3)=C(通信経路4)=100
予備の通信経路:通信経路1,通信経路5,
通信容量についてはC(通信経路1)=C(通信経路5)=100
ただし、この例ではC(ε)の算出は、以下の手順で行う。
(手順0)まずC(ε)=0とする。
(手順1)εが通信経路2または通信経路1を含めば、C(ε)=C(ε)+100とする。
(手順2)εが通信経路3または5を含めばC(ε)=C(ε)+100とする。
(手順3)εが通信経路4を含めばC(ε)=C(ε)+100とする。

(この例におけるC(ε)の算出は、それぞれの通信経路が100の通信容量を持ち、現用のみで300の通信容量が確保されるが、通信経路2が利用できない場合には通信経路1を予備の通信経路として利用し、通信経路3が利用できない場合には通信経路5を予備として利用できる状況に対応している。)
Eg={1,4,5,7,8}の場合について通信容量C(N)を求めてみる。
通信網の想定により、
Figure 0004558768
となり、従って、{w|w∈E,υ(w)⊆Eg}={通信経路1,通信経路4}が得られる。
ε={通信経路1,通信経路4}とすれば、この例におけるC(ε)の定義により、
Figure 0004558768
となり、よって、前提7より、
Figure 0004558768
となる。
通信網において、それぞれの通信網構成要素がそれぞれの確率に従って故障すると、Egは変化し、従って、通信網が確保する通信容量C(N)=C({w|w∈E,υ(w)⊆Eg})の値は確率的に変化する。当然C(N)の値が小さくなると、確保できる通信容量が小さくなり、通信網の性能が劣化する。このような劣化が発生する確率が大きな通信網は、信頼性が高いとは言えない。つまり、信頼性が高い通信網とは、通信容量C(N)がある一定の値以上である状態に通信網がある確率が十分に1に近い通信網のことを言う。
上記の観点から、通信網の信頼性を以下のように表すことにする。(Pr( )は( )内の事象が発生する確率を意味する)。
Figure 0004558768
ここで、αはしきい値と呼ばれる正の実数定数である。
前述の本発明者等(本出願人)が先に提案したものでは、通信網構成要素の故障確率から、Pr(C(N)≧α)を求めるための具体的な計算法を提示している。しかし、提示された計算法は、通信経路数の増大に対して、計算時間が指数関数的に増大することから、大規模な通信網の信頼性設計に供するには困難が生じていた。
そこで、本発明の目的は、交換装置、伝送装置、ケーブル等の通信網を構成する構成要素と各構成要素の故障確率、複数の構成要素からなる通信経路、その経路の通信容量、から構成要素間で一定の通信容量による通信ができる確率を、計算時間が指数関数的には増えない高速近似法を確立することにより、効率よく計算することが可能な通信網信頼性近似計算方法および装置を提供することである。
本発明においては、通信経路と通信容量を考慮した通信網の信頼性計算を行う場合において、「・・・+[通信網の構成要素の故障確率]×[部分式]」が登場する具体的な形を明らかにし、その形の中における[部分式]を多くの通信網構成要素が同時に故障することは無いとして、近似を行うことで限界を克服する。
なお、本発明においては、通信網が交換装置、伝送装置、ケーブル等の通信網構成要素の集まりとして構成され、情報を送信するとき、どの通信網構成要素を経由するかを示す経路が1つないし複数指定され、さらに、正常に機能している通信網構成要素から構成されている通信経路により送信することができる情報の量(通信容量)と通信網構成要素の故障確率が分かっているとき、通信網が故障すると、送信できる情報の量(通信容量)は、正常のときより低下するが、あるしきい値以上の通信容量が確保されている状態の確率を『通信網信頼性』と定義する。
N〔i〕を通信網Nにおいて通信網構成要素iが確実に正常であるとした通信網を示し、N〔i〕を通信網Nにおいて通信網構成要素iが確実に故障しているとした通信網を示すとする。
このとき以下の式が成り立つ(前提2で定義した通り、pは通信網構成要素iの正常確率、qは故障確率を示す)。
Figure 0004558768
(式(1)の正当性は、作用で示す)。
ここで、Pr( )は確率を表すのであるから、式(1)の中のPr(C(N[i])≧αについて以下の式が成立する。
Figure 0004558768
通常、通信網構成要素の現実の故障確率は0.0001等、極めて小さな値を取るという事実より、通信網構成要素iの故障確率qは0.0001等極めて小さい値をとることと、上式(2)より上式(1)中の
Figure 0004558768
も高々0.0001といった極めて小さい値をとることになる(一方、式(1)中の他項、すなわち、 ×Pr(C(N[i])≧α)については0.9999等非常に1に近い値になることも同様の考察によって言えることである。
従って、Pr(C(N)≧α)の値を式(1)に基づいて計算する場合、
Figure 0004558768
に多少の誤差が含まれる近似を行っても、Pr(C(N)≧α)の計算誤差は極めて小さくなる。
この考え方を繰り返すことで、Pr(C(N)≧α)を計算することができる。
つまり、以下のような再帰的な手続きによる計算を行う。(手続きhが、その内部手続き中、自分自身hを呼び出すとき、hは再帰的手続きと呼ばれる)。
(以下、「通信網Nを分解適用通信網構成要素iについて分解する」とは、Nを構成する通信網構成要素iに着目し、NからN[i]と
Figure 0004558768
を生成することである。iを分解適用通信網構成要素と呼ぶ。また、手続き中、曖昧な表現である下線部については後述する)。
再帰的手続き:f( )
入出力:fの入力はNであり、出力はPr(C(N)≧α)である。

fの内部手続き:
If Pr(C(N)≧α)が正確かつ簡単に算出可能
Then その算出値を出力し、終了する。
Else以下を実行する。

通信網Nを、適切に選んだ分解適用通信網構成要素iについて分解する。
(iは、今までに起動されたfにおいて分解適用通信網構成要素に選ばれなかった通信 網構成要素から選ぶ)。
〔数10〕をサブ関数gを用い、比較的誤差が大きいが高速な計算方法で近似した値(以下、
Figure 0004558768
と書く)を求める。
手続きfを呼び出し、以下の計算を行う。
Figure 0004558768
上の計算結果を出力し、終了する。
End
サブ関数g( )
入力は、
Figure 0004558768
出力は〔数12〕の近似値である。また、ある自然数mを指定しておく(mは通常1または2に固定する)。

m個より多くの通信網構成要素が同時故障をしないとした仮定の下で、
Figure 0004558768
が実現する故障状態(故障する通信網構成要素の組み合わせ)を全て列挙し、それらの実現確率の総和を出力する。

(サブ関数g( )終わり)

(サブ関数g( )の計算手順の詳細は、後述の「C.「比較的誤差が大きいが高速な近似計算方法」について」で述べる)。
手続きfの中の
Figure 0004558768
において、手続fが呼び出されている。つまり、fが自分自身を呼び出しており、従って、fは再帰的手続きである。一方、g( )は〔数11〕を「比較的誤差が大きいが高速な計算」で近似することができれば、どのような方法でもよく、g( )が再帰的である必要はない。本発明では、g( )を、数個以上の通信網構成要素が同時に故障することはない、という前提から近似する(「C.比較的誤差が大きいが高速な近似計算方法について」参照)。
図6に、上の再帰的手続きをイメージで示す。
分から易くするために、k回目に呼び出されたfをf(ここで、k=1,・・・,K)、fの手続き中に選ばれた分解適用通信網構成要素iをiと書き、再帰的手続きの中で、iを確実に正常であるとした通信網をN[i]、確実に故障であるとした通信網をN[i ]で表した。
以下に、fにNが入力されたときの計算の進行過程を示す。

fの進行過程:
[1回目の分解適用]
Nにおいて通信網構成要素iが確実に正常であるとしたN[i]と、iが確実に故障しているとした
Figure 0004558768
を生成し、
Figure 0004558768
を計算しようとする。
Figure 0004558768
をサブ関数g( )によって、近似的に求める。
もし、f(N[i])が簡単に求められれば、上式よりf(N)は求められる。
しかし、f(N[i])が簡単に求められないならば、次に進む。
(N[i]において、確実に正常と見なされる通信網構成要素は[i]である)。
[2回目の分解適用]
N[i]において通信網構成要素iが確実に正常であるとしたN[i]とiが確実に故障しているとしたN[i ]を生成し、
Figure 0004558768
を計算しようとする。
Figure 0004558768
はサブ関数g( )によって、近似的に求める。
もし、f(N[i])が簡単に求められれば、上式によりf(N[i])は求められる。
しかし、f(N[i])が簡単に求められないならば、次に進む。
(N[i]において、確実に正常と見なされる通信網構成要素は[i,i]である)。
[3回目の分解適用]
N[i]において通信網構成要素iが確実に正常であるとしたN[i]とiが確実に故障しているとしたN[i ]を生成し、
Figure 0004558768
を計算しようとする。
Figure 0004558768
をサブ関数g( )によって、近似的に求める。
もし、f(N[i])が簡単に求められれば、上式よりf(N[i])は求められる。
しかし、f(N[i])が簡単に求められないならば、次に進む。
(N[i]において、確実に正常と見なされる通信網構成要素は{i,i,i}である。
上の進行過程は無限には進行しない。何故ならば、分解を適用する通信網構成要素数は有限個であるからである(停止条件は後述の「4.Pr(C(N)≧α)が正確かつ簡単に算出できる場合」について」で述べるとおりである)。
今、図6に示すように、K回目で分解適用が止まった、つまりf(N[i])が簡単に求められたとすると、手続きの最後に、
[K回目の分解適用]
Figure 0004558768
を計算しようとする。
Figure 0004558768
はサブ関数g( )によって、近似的に求められる。今、
Figure 0004558768
が簡単に求められたとしているので、上式により
Figure 0004558768
は求められる。
この[K回目の分解適用]でfK−1(N)が求められたので、[K−1回目の分解適用]でfK−2(N)が求められ、従って、[K−2回目の分解適用]で
Figure 0004558768
が求められ、・・・、[1回目の分解適用]でf(N)が求められることになる。
実際に、この再帰的手続きを用いてPr(C(N)≧α)を求めるためには、手続き中の曖昧な部分である下線部を明確にする必要がある。以下に、これらについて説明する。
A.「Pr(C(N)≧α)が正確かつ簡単に算出できる場合」について
準備:
通信網構成要素の全体Eの任意の部分集合E’について
Figure 0004558768
と定義する。このとき、
Figure 0004558768
となり、前提5より、C(φ)は定義されないのでC(φ)も定義されない。また、前提7より、正常な通信網構成要素の集まりEgに対し
Figure 0004558768
となる。(準備終わり)
fの進行過程で示した( )内の記述により、fの進行が進み、分解適用が増えるに従い、確実に正常である通信網構成要素数は増えていく。従って、いずれ以下の二つのどちらかの場合に到達する。
場合1:全ての通信網構成要素が確実に正常となる。
場合2:全ての通信網構成要素が確実に正常とは限らなくても、確実に正常であるとされた通信網構成要素のみで確保される通信容量がα以上となる。
場合1については、以下の通りとなる。
(ここで、Eは、通信網Nの全ての通信網構成要素の集まりであり、C(E)は、「準備」で述べた定義に従えば、Eに含まれる全ての通信網構成要素が正常であるときの通信容量である)。
(E)≧αならば出力は1であり、
(E)<αならば出力は0である。
場合2については、fの出力は1である。
(なお、これらの出力の正当性については初等的に示すことができる。説明の煩雑さを避けるため、詳細は省略する)。
従って、場合1と場合2においては、fの出力は簡単に求められる。
つまり、「Pr(C(N)≧α)が正確かつ簡単に算出できる場合」は、場合1または場合2が確認されたこととすることができる。
B.「通信網Nを適切に選んだ分解適用通信網構成要素i」について
再帰的手続きfにおいて、誤差を小さくするためには、g( )が「比較的誤差の大きい」近似を行うことを踏まえれば、
〔数16〕において、なるべくqが小さい方がよいことは当然である。
従って、分解適用通信網構成要素iを選択する際には、以下の規則を守ることが近似誤差を小さくするために効果的である。
規則:分解適用通信網構成要素は、最も故障率の小さい通信網構成要素から選択する。
上記規則を守る簡便な方法として、手続きを実行する前に、予め通信網構成要素の番号をその故障確率について昇順に並べておき、この順序に従って、逐次分解適分通信網構成要素を選択すればよい。
C.「比較的誤差が大きいが高速な計算方法」について
比較的誤差が大きいが速い計算方法として、以下のような仮定をおいて信頼性計算を行う。
仮定.m(自然数)より多い数の通信網構成要素が同時に故障することは無視できる。
実際、一つ一つの通信網構成要素の故障確率は、0.00001等非常に小さく、従って、例えば3つの通信網構成要素が故障する確率は、各通信網構成要素の故障確率の3乗であり、極端に小さな確率となり、近似計算として意味がある。
計算手順は以下の通りである。
(通信網Nの全ての通信網構成要素の集まりEをE={1,2,・・・,e}とする)。
(手順1),2,・・・eから0個以上m個以下を選ぶ組み合わせを全て列挙し、各組み合わせをT,T,・・・,Tωとする。
(手順2)全てのj=1,2,・・・ωについて、
Tjで列挙された通信網構成要素が全て故障し、列挙されなかった通信網構成要素が全て正常であるとしたときに通信容量がαを超えるかどうかを確認し、
αを超えるならば、
=「Tで列挙された通信網構成要素の故障確率の積」×「Tで列挙されなかった通信網構成要素の正常確率の積」
とし、
αを超えなければ、
=0
とする。
(手順3)以下の式の算出値をPr(Pr(C(N)≧α)の近似値とする。
Figure 0004558768
(本手順の例は後述の〔通信網構成例2を対象としたf’の計算過程〕で示す)。
この考え方に基づいた信頼性計算法は、真理表(Truth Table)を用いた近似と呼ばれる方法(例えば、W.G.Schneeweiss,BOOLEANFUNTIONS,Spring−Verlag,Berlin,1989参照)であり、よく知られている。しかし、mが1,2の場合は、明らかに誤差は大きくなる。
逆に、mが大きくなれば、誤差は小さくなるが、計算速度は遅くなる。適当なバランスを示すmを決めることは簡単ではないことから、ここでは、m=1,2の場合に限定し、比較的近似誤差は大きいが高速な計算法として用いる。
以上述べたA,B,Cを用い、再帰的手続きfの曖昧な部分を確定させた再帰的手続きf”を以下に示す(Eは通信網Nの通信網構成要素の全体を示し、Eは、手続き中、確実に正常であるとされた通信網構成要素の全体を示すとする。C(E)は、Aの「準備」で述べたC( )の定義に従えば、Eに含まれる全ての通信網構成要素が正常であるとしたときの通信容量である)。
前処理:Nの通信網構成要素をそれらの故障確率について昇順に並べたリストLを作成する。
=φとする。
再帰的手続き:f’( )
入出力:f’の入力はNであり、出力はPr(C(N)≧α)である。
f’の内部手続き:
If E=Eならば、
Then
IfC(E)≧αならば、Then1を出力し終了する。
Else0を出力し終了する。
End
Else
If C(E)≧α
Then1を出力し終了する。
Else
Lから最も故障確率の小さい通信網構成要素iを選択し、
Lからiを取り除き、
Figure 0004558768
とし、
f’とサブ関数gを呼び出し、以下の計算値を出力し終了する。
Figure 0004558768
End
End

サブ関数g( ):
入力N[i]に対し、〔数10〕をCの方法で近似した結果を出力する。(サブ関数終わり)
図7は通信網構成例2を示す図であって、この通信網構成例2について再帰的手続きf’を用いた計算実行例を以下に示す。
まず、計算実行のための想定の詳細を示す。
〔計算実行のための想定〕
通信網構成例2:
E={1,2,3,4,5,6},W={通信経路1,通信経路2,通信経路3,通信 経路4}
υ(通信経路1)={1,3,5},υ(通信経路2)={2,3,4},υ(通信経 路3)={1,4},υ(通信経路4)={6}
現用の通信経路:通信経路1,通信経路2
予備の通信経路:通信経路3,通信経路4
ただし、εが通信経路4を含むときC(ε)=200
εが通信経路4を含まないとき、Min(εに含まれる通信経路数,2)×100
(Min(,)は、(,)中の二つの数字の小さい方を表す)。
ここで、通信網構成例2の各通信網構成要素の故障確率は以下の通りとする。
=0.0001,q=0.0003,q=0.0004,q=0.0005,
=0.0006,q=0.0002
また、しきい値αについては、α=200とする。簡単のため、Cの手順を用いる際の同時に故障しうる通信網構成要素の数mについては、m=1とする。
以上の想定で計算過程は以下のようになる。
〔通信網構成例2を対象としたf’の計算過程〕
前処理:通信網構成要素を故障確率の昇順に並べると、q,q,q,q,q,qとなる。従って、Lは1,6,2,3,4,5をこの順に並べた列となる。E=φとする。(以下、E={1,2,3,4,5,6}であることに注意する)。
f’(一回目のf’の呼び出し)の内部手続き:
E=E1ではなく、C1(E1)=C1(φ)は定義されない(Aの「準備」参照)のでC(E)≧200=αとはならない。従って、Lから1を取り出し、Lを5,2,3,4,6の順番で数字を並べた列とし、E=E∪{1}={1}とし、f’を起動し、
Figure 0004558768
を計算する。前式(3)において、
Figure 0004558768
は、m=1の場合には、(通信網構成要素1は確実に故障しているとして、)以下のTからTが列挙され、
T1:通信網構成要素は故障せず、2,3,4,5,6が正常
≧通信経路2,4が正常で、通信容量≧200
T2:通信網構成要素2が故障、3,4,5,6が正常
≧通信経路4が正常で、通信容量≧200
T3:通信網構成要素3が故障、2,4,5,6が正常
≧通信経路4が正常で、通信容量≧200
T4:通信網構成要素4が故障、2,3,5,6が正常
≧通信経路4が正常で、通信容量≧200
T5:通信網構成要素5が故障、2,3,4,6が正常
≧通信経路2,4が正常で、通信容量≧200
T6:通信網構成要素6が故障、2,3,4,5が正常
≧通信経路2のみが正常で、通信容量≧200
となるので、
Figure 0004558768
となり、前式(3)は以下のように書ける。
Figure 0004558768
この式中f’(N〔1〕)は以下のように計算される。
f’(2回目のf’の呼び出し)の内部手続き:
今E={1}であるので、E=Eではなく、C(E)=0<200=αなので、Lから6を取り出し、Lを2,3,4,5の順番で数字を並べた列とし、さらに、E=E∪{6}={1,6}とし、f’を起動し、
Figure 0004558768
を計算する。前式(4)においてg(N[6])は、m=1の場合には、(通信網構成要素1)は確実に正常で、6が確実に故障として、以下のT1からT5が列挙され、
:通信網構成要素故障せず、2,3,4,5が正常
≧通信経路1,2,3が正常で、通信容量≧200
:通信網構成要素2が故障、3,4,5が正常
≧通信経路1,3が正常で、通信容量≧200
:通信網構成要素3が故障、2,4,5が正常
≧通信経路3のみが正常で、通信容量≧200
:通信網構成要素4が故障、2,3,4が正常
≧通信経路1のみが正常で、通信容量≧200
:通信網構成要素5が故障、2,3,4が正常
≧通信経路2,3が正常で、通信容量≧200
となるので、
Figure 0004558768
となり、前式(4)は以下のように書ける。
Figure 0004558768
このf’(N[6])は以下のように計算される。
f’(3回目のf’の呼び出し)の内部手続き:
今、E={1,6}であるので、C[E]=200≧200=αなので、f’(N[6])の値として1を出力する。すなわち、
Figure 0004558768
式(3)’(4)’(5)より、以下の演算が成立し、所望の値を計算することができる。
Figure 0004558768
本発明の意義について再確認する。
上述した再帰的手続きfについては、類似の報告が前記非特許文献1でなされている。
しかし、その適用範囲は、通信経路や通信容量を全く考慮に入れていない場合に限られている。非特許文献1を通信経路や通信容量を考慮に入れた場合に適用するためには、式(1)が本発明で述べている通信網の構造において成立することと、fの下線部分について具体的な方法を提示する必要がある。非特許文献1では、これらの点について何も述べていない。
本発明は、初めてこれらの点を解決した。
また、本発明による計算時間は、図6を参照すれば明らなように、「サブ関数gの実行時間」×「fの最大呼び出し数」と考えてよい。サブ関数gの実行時間は、通信網構成要素の集合から高々m個の要素を全て抽出する時間に比例し、一方、fのfの呼び出し回数は、通信網構成要素の数を超えることはなく、従って、通信経路の数の増大によって指数関数的に増大することはない。この点が、本発明者等により先に提案されたものに比べて、実用上重要な進歩と言える。
本発明によれば、通信網に分解適用を行い、一方を複数の通信網構成要素の同時故障を無視するという仮定から近似し、もう一方についてはさらに近似する手順を繰り返すことで、通信網の信頼性を高速近似することができる。
図18、図19の計算結果によれば、本発明の方法は、従来の方法に比較して極めて高速であり、かつ近似精度は十分小さいことを示している。
(作用)
ここでは、本発明が利用している式(1)の正当性について説明する。
〈正当性の説明1〉式(1)の正当性について
以下の式は、初等的な確率論から導かれている(野田一雄、宮岡悦良、「入門・演習 数理統計」共立出版、1990.参照)。
(ただし、ここで、Pr(事象Xが発生|事象Yが発生)は事象2が発生したという条件の下で事象1が発生する確率、すなわち、条件付き確率を示す。Pr(事象Xが発生|事象Yが発生しない)も同様の表記である)。
Pr(事象Xが発生)=Pr(事象Yが発生)×Pr(事象Xが発生|事象Yが発生)
+Pr(事象Yが発生しない)×Pr(事象Xが発生|事象Yが発生しない)
事象Xを「C(N)≧αが成立」とし、事象Yを「通信網構成要素iが正常」として、本発明の表記法(例えば、pi=Pr(通信網構成要素iが正常)と書ける等)を当てまめれば、式(1)が導かれる。
図8に、本発明で示した通信網信頼性評価法を実施する装置の構成図を示す。
本装置は、通信網の構成を示すデータ(通信網データと呼ぶ)を格納する記憶部24、補助記憶部(1)21、補助記憶部(2)22、補助記憶部(3)23、記憶部の通信網データから通信経路によって確保される通信容量を計算する通信容量計算部、分解適用の操作を行うまでもなく信頼性を計算できるかを確認し、計算可能性が確認されれば、実際に計算を実行する補助信頼性計算部26、多数の通信網構成要素が同時に故障しないという前提から近似を行う暫定信頼性近似部31、補助信頼性計算部26の出力と暫定信頼性近似部31の出力から所望の通信網の信頼性を最終計算する最終計算実行部28、これらの装置を制御する制御部25、入力装置としてKEY34、出力部として、ディスプレイ表示部29、表示メモリ32、CRT33を備える。
まず、記憶部24について説明し、以下順次、各装置の機能を説明する。
〈記憶部〉
入力データの構造を図10に示す。
なお、図10の数値は、例として、図7に対応するデータを示している。
一行目には、対象とする通信網の各通信網構成要素に対応する番号が格納されている。
二行目には、一行目に入力された各通信網構成要素の故障確率が格納されている(一行目のa列目の通信網構成要素の故障確率が二行目のa列目に記憶されている)。
三行目には、対象とする通信網に割り当てられた通信経路に対応する番号が格納されている(通信網構成要素の番号と区別するため、通信経路に対応する番号にはアンダーラインを引いている)。
四行目には、現用の通信経路に対応する番号が格納されている。
五行目には、予備の通信経路に対応する番号が格納されている。
六行目以降(最後の行を除く)は、各行を各通信経路に対応させ、その通信経路に含まれる通信網構成要素の番号が格納されている。
最後の行には、前記〔発明が解決しようとする課題〕で述べたしきい値αの値が格納される。
〈補助記憶部1〉
図11に、補助記憶部1のデータ構造を示す。
信頼性計算の前処理として、通信網構成要素番号を対応する故障確率に関する昇順に格納する。このデータ構造では、左ほど通信網構成要素の故障確率の小さな通信網構成要素に対応する通信網構成要素番号が格納されている。
〈補助記憶部2〉
図12に、補助記憶部2のデータ構造を示す。
前記〔課題を解決するための手段〕で述べた関数f’中の式における
Figure 0004558768
の計算に関するデータを記憶しておく部分である。
分解適用がされるたびに、qの値(分解適用通信網構成要素iの故障確率)を2行目に、
Figure 0004558768
の値を3行目に格納する。一行目は、それらの値が得られたときの分解適用が何番目であったかを示す。
〈補助記憶部3〉
計算の実行が進むとともに、確実に正常と見なされる通信網構成要素の番号を記憶しておく。データ構造は補助記憶部1と同様である。
〈暫定信頼性近似部〉
補助記憶部2の説明で述べた下式の値を求める。
Figure 0004558768
計算手順は、〔課題を解決するための手段〕のCで述べた通りである。
〈通信容量計算部〉
入力された通信網構成要素の集まりEから、〔課題を解決するための手段〕のAの「準備」で述べた定義に従ってC(E)の算出を行う。本実施例では、説明を簡明にするため、C(E)は以下の式で算出できるとする。
が通信経路4を構成する通信網構成要素を全て含むとき、すなわち
υ(通信経路4)⊆Eのとき、
(E)=200、
とし、そうでなければ、
Figure 0004558768
これは、通信経路4が現用通信経路で200の通信容量を確保しているが、通信経路4が使用できないときは、他の予備通信経路の二つで200を確保するという状況に対応している。予備通信経路の一つが確保できる通信容量は100である。
〈補助信頼性計算部〉
記憶部24のデータに対応する通信網において、その信頼性が直ちに計算できる場合であるか否かを確認し、直ちに計算できる場合には、その計算値を出力する。
具体的には、
−記憶部24の第六行以降(最後の行を除く)の行に、通信網構成要素番号が存在しなければ、「信頼性は直ちに計算できる」とし、「E=全ての通信網構成要素」として通信容量計算部30を起動し、通信容量がα以上であれば、補助信頼性計算部26の出力値を1とし、そうでなければ0とする。
−記憶部24の第六行目以降(最後の行を除く)の行に含まれる通信網構成要素番号が存在すれば、補助記憶部(3)23(確実に正常と見なせる通信網構成要素番号の集まり)に格納されている通信網構成要素番号をEとして通信容量計算部30を起動し、通信容量計算部30が算出した通信容量がα以上ならば、「信頼性は直ちに計算できる」とし、補助信頼性計算部26の出力値を1とする。α以上でなければ、「信頼性は直ちには計算できない」とする(なお、E=φならば、〔課題を解決するための手段〕のAの「準備」よりC(E)=C0(φ)は定義されないことになり、通信容量はα以上ではないので、やはり、「信頼性は直ちには計算できない」とする。
〈分解適用部〉
分解適用通信網構成要素iを定めると、記憶部24に格納されている通信網データについて、通信網構成要素iを確実に正常であるとした通信網と、確実に故障しているとした通信網の二つの通信網に対応するデータを作成し、確実に正常としたときの通信網データを通信網データとして出力する。一方、確実に故障しているとした通信網に対応するデータを暫定信頼性近似部31に送り、得られた結果を出力する。
ここで、通信網構成要素iが確実に正常であるとした通信網データとは、記憶部24の通信網データを以下のように改変した通信網データである。
改変1:記憶部24のデータの全行から通信網構成要素番号iを取り除く。
改変2:二行目の通信網構成要素の故障確率のうち、通信網構成要素番号iの故障確率を取り除く。
一方、通信網構成要素iが確実に故障しているとした通信網データとは、記憶部24の通信網データを以下のように改変した通信網データである。
改変1:記憶部24のデータの全行から通信網構成要素番号iを取り除く。
改変2:二行目の通信網構成要素の故障確率のうち、通信網構成要素番号iの故障確率を取り除く。
改変3:六行目以降(最後の行を除く)について、通信網構成要素番号iを含む行を除去する。さらに、除去された行に対応する通信経路番号を四行目と五行目から取り除く。
さらに、補助記憶部(3)23にiを加える。
〈最終計算実行部〉
補助信頼性計算部26から出力された値と補助記憶部(2)22に格納されているデータから、以下の計算で実行する。θが所望の信頼性を示す。
ここで、分解適用回数はK回とする。Kの値は、補助記憶部(2)22の一行目中の分解適用順位の最大数に等しい。
θ=K回目に分解適用された通信網構成要素の正常確率×補助信頼性計算部の出力値+K回目の分解適用の際の暫定信頼性近似部の出力値
θK−1=K−1回目に分解適用された通信網構成要素の正常確率×θK−1
+K−2回目に分解適用された通信網構成要素の故障確率
×K−2回目の分解適用で得られた暫定信頼性近似値部の出力値
・・・
θ=1回目に分解適用された通信網構成要素の正常確率×θ
+1回目に分解適用された通信網構成要素の故障確率
×1回目の分解適用で得られた暫定信頼性近似値部の出力値
〈制御部〉
これまで説明した各部を以下の制御手順で動作させ、記憶部24に入力されたデータから通信網の信頼性を計算する(初期設定として、補助記憶部(1)21,(2)22,(3)23は空にしておく)。
制御手順1:記憶部24のデータから、1行目の通信網構成要素番号を取り出し、2行 目の通信網構成要素の故障確率に基づいて、通信網構成要素の故障確率に 関する昇順に従って、通信網構成要素番号を補助記憶部(1)21に格納 する。
制御手順2:補助信頼性計算部26を起動し、記憶部24のデータにおいて、分解適用 せずに信頼性計算可能かどうかを確認する。
−計算可能ならば、最終計算実行部28を起動し、最終計算実行部28の 値をディスプレイ表示部29に表示して終了する。
−計算可能でなければ、補助記憶部(1)21から最も小さい故障確率に 対応する通信網構成要素番号を取り出し、iとし、iを補助記憶部(1) 21から取り除くと共に、通信網構成要素iについて分解適用部27を起 動し、暫定信頼性近似部31からの出力値を、補助記憶部(2)22の3 行目に、通信網構成要素iの故障確率を2行目に、分解適用順位を1行目 に、それぞれ補助記憶部(2)22のデータ構造に従って格納する。さら に、記憶部24のデータを分解適用部27の出力した通信網データで置き 換える。
制御手順3:制御手順2に戻る。
装置の各部の連携の様子を示すため、図10のデータに対する計算実行例を以下に示す。
ただし、α=200、m=1とする。
〔計算実行例〕
初期設定として、補助記憶部(1)21,(2)22,(3)23は全て空とする。
制御手順1:図10のデータから1行目の通信網構成要素について、2行目の通信網構 成要素確率に基づいて、通信網構成要素確率に関する昇順に通信網構成要 素番号を補助記憶部(1)21に格納した結果が図11に示すデータであ る。
制御手順2:補助信頼性計算部26を起動し、図10のデータにおいて分解適用せずに 信頼性計算が可能かどうかを確認する。
−図10のデータの第六行目以降(最後の行を除く)の行に含まれる通信 網構成番号は存在する。
−そこで、補助記憶部(3)23を確認すると、空なので、この場合には 、「信頼性は直ちには計算できない」と判断される。
よって、
補助記憶部(1)21、すなわち、図11から最も故障確率の小さな 通信網構成要素の番号1を取り除き(補助記憶部(1)21のデータ は図13に示す通りとなる。)、通信網構成要素1について分解適分 部27を起動し、暫定信頼性近似部31の出力値0.999799を 補助記憶部(2)22の3行目に、通信網構成要素1の故障確率0. 0001を2行目に、分解適用順位1を図14のように書き込む。
さらに、記憶部24のデータを図15のように書き込む。さらに、記 憶部24のデータを図15のように書き換える。記憶部24に通信構 成要素番号1を付加し、図16を得る。
制御手順3:制御手順2に戻る。
制御手順2’:補助信頼性計算部26を起動し、図10のデータにおいて分解適用せずに信頼性計算が可能かどうかを確認すると、
−図15のデータの第六行目以降(最後の行を除く)の行に含まれる通信 網構成要素番号は存在する。
−そこで、補助記憶部(3)23を確認すると、通信網構成要素番号1が 記憶されている。これを通信容量計算部30に送り、C({1})= 0が得られ、通信容量がα=200未満なので、「信頼性は直ちには計 算できない」と判断される。
よって、
補助記憶部(1)21、すなわち、図13から、最も故障確率の小さな 通信網構成要素の番号6を取り除き(補助記憶部(1)21のデータは 図17の通りとなる。)、通信網構成要素6について分解適用部27を 起動し、暫定信頼性近似部31の出力値0.999100を補助記憶部 (2)22の3行目に、通信網構成要素1の故障確率0.0001を2 行目に、分解適用順位3を書き込むと、図12のデータが得られる。さ らに、記憶部24のデータを図18に示すように書き換え、かつ、補助 記憶部(3)23のデータに通信網構成要素番号6を加えて、図19を 得る。
制御手順3’:制御手順2に戻る。
制御手順2“:補助信頼性計算部26を起動し、図10のデータにおいて分解適分せずに信頼性計算が可能かどうかを確認すると、
−図18のデータの第六行目以降(最後の行を除く)の行に含まれる通 信網構成要素番号は存在する。
−そこで、補助記憶部(3)23を確認すると、通信網構成要素番号1 ,6が格納されており、E={1,6}の場合には、C(E)= 200≧α=200となるので、「信頼性は直ちに計算できる」と判断 される。
θ=2回目に分解適用された通信網構成要素の正常確率×補助信頼性計算部の出力値
+2回目に分解適用された通信網構成要素の故障確率
×2回目の分解適用で得られた暫定信頼性近似部の出力値
=0.9998×1+0.0002×0.999100

θ=1回目に分解適用された通信網構成要素の正常確率×θ
+1回目に分解適用された通信網構成要素の故障確率
×1回目の分解適用で得られた暫定信頼性近似部の出力値
=0.9999×(0.9998×1+0.0002×0.999100)
+0.0001×0.999799
=0.999999800
以上の計算実施例に加え、図9に示すところの、より大きな通信網に対する数値実験結果を図20、図21に示す。
図9において、図中の番号はケーブルに付与された番号である。右側各通信経路は、示された番号のケーブルに沿って通信を運んでいるとする。その他の条件と表記上の注意点を以下に示す。
〔図9における条件〕
−各通信経路の通信容量は100とする。
−通信網の通信容量は、正常である通信経路の通信容量の和とする。
−通信網構成要素の故障確率は以下の二つのパタンを想定する。

パタン1:交換装置、伝送装置、ケーブルの故障確率は全て1.00×10−3であ る。
パタン2:交換装置、伝送装置は、1.0×10−3であるが、ケーブルについては 、横向きのケーブルが0.1、縦向きが5×10−5とする。
〔表記上の注意点〕
−図20、図21において、文献〔1〕の方法と本発明とを対応させているが、ここで文献〔1〕とは、先に本発明者等(本出願人)が提案した『通信網信頼性計算装置と方法』のことであって、この文献〔1〕では、通信網を「通信網構成要素」と「通信経路」からなる構成物として捉え、その信頼性を「利用できる通信経路が確保する通信容量が一定値以上である確率」と定義し、値を計算する方法が提示されている。
図20,図21中の計算値は、表記上の都合から、Pr(C(N)≧α)ではなく、1−Pr(C(N)≧α)で表記している。
−図10〜図21に示す表中の相対誤差の定義は、以下の式で定めた。

相対誤差
=|(本発明による計算値−文献〔1〕による計算値)/(文献〔1〕による計算値)|

図20、図21においては、文献〔1〕の方法に比べて、本発明の方法が極めて高速であることがわかる。近似誤差は小さい。
通信経路が一つしかない場合の通信網構成例を示す図である。 二つの通信経路が割り当てられている通信網構成例を示す図である。 通信容量を分割して収容した場合と、予備の通信経路による救済を行った場合の比較図である。 複雑な通信網構成の例を示す図である。 本文中で通信網を詳しく定義するための参考図である。 本発明の実行のフローチャートである。 図5と同じく、本文中で通信網を詳しく定義するための参考図である。 本発明に係る装置構成図である。 本発明を適用した数値実験分の通信網構成の例を示す図である。 記憶部に格納される通信網データのデータ構造を示す図である。 補助記憶部(1)に格納されるデータ構造を示す図である。 補助記憶部(2)に格納されるデータ構造を示す図である。 本発明の実施例で示した装置を用いた場合の計算途中で登場する各種データのうち、補助記憶部(1)のデータ書き換え1を示す図である。 同じく、補助記憶部(2)の書き込みを示す図である。 同じく、記憶部のデータ構造の書き換え1を示す図である。 同じく、補助記憶部(3)のデータ構造の書き換え1を示す図である。 同じく、補助記憶部(1)のデータ構造の書き換え2を示す図である。 同じく、記憶部のデータ構造の書き換え2を示す図である。 同じく、補助記憶部(3)のデータ構造の書き換え2を示す図である。 図9に示した通信網構成に対する本発明の適用した数値実験の結果1を示す図である。 図9に示した通信網構成に対する本発明の適用した数値実験の結果2を示す図である。
符号の説明
11,15 交換装置
12,13,14 伝送装置
16,17,18 伝送装置
21 補助記憶部(1)
22 補助記憶部(2)
23 補助記憶部(3)
24 記憶部
25 制御部
26 補助信頼性計算部
27 分解適用部
28 最終計算実行部
29 ディスプレイ表示部
30 通信容量計算部
31 暫定信頼性近似部
32 表示メモリ
33 CRT
34 KEY

Claims (4)

  1. 故障時における通信網で通信可能な情報量(通信容量)が予め定められたしきい値以上となる確率を、当該通信網の通信網信頼性として算出する通信網信頼性近似計算装置による通信網信頼性近似計算方法であって、
    上記通信網信頼性近似計算装置は、記憶手段と計算手段を具備し、
    上記記憶手段により、予め、通信網Nを構成する各通信網構成要素の識別情報と各通信網構成要素の故障確率(正常確率)、および、各通信網構成要素で構成される通信経路の識別情報と各通信経路の正常時における上記通信容量とからなるデータを記憶し、
    上記計算手段は、
    上記通信網Nを構成する通信網構成要素iを選択し、該通信網構成要素iが確実に正常であると見なした通信網1の通信網信頼性と上記通信網構成要素iが確実に故障していると見なした通信網2の通信網信頼性および上記通信網構成要素iの故障確率を用いた式「(1−〔通信網構成要素iの故障確率〕)×〔通信網1の通信網信頼性〕+〔通信網構成要素iの故障確率〕×〔通信網2の通信網信頼性〕」を計算し、該計算結果を、上記通信網Nの通信網信頼性として出力する際、
    上記通信網構成要素iを除く各通信網構成要素の1つずつを順次に故障していると見なした際に正常となる各通信経路を、上記記憶手段が記憶したデータを参照して求め、該求めた正常な各通信経路の通信容量の合計を算出し、該合計が上記しきい値以上となる各通信経路を特定し、該特定した各通信経路毎に、当該通信経路を構成する各通信網構成要素の正常確率と上記故障していると見なした通信網構成要素の故障確率との積事象を算出し、該算出した各積事象の総和を上記通信網2の通信網信頼性として算出すると共に、
    上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常であるか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が上記しきい値以上であれば、上記通信網1の通信網信頼性として1を算出し、
    上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常でないか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が上記しきい値以上でなければ、上記通信網1に対して、上記通信網Nに対する上記通信網構成要素iの選択処理と上記式の計算処理および上記通信網2の通信網信頼性の算出処理を行い、
    該処理を、上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常となるか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が予め定められたしきい値以上となるまで繰り返し、該繰り返し処理で得られた計算結果を、上記通信網Nの通信網信頼性として出力する
    ことを特徴とする通信網信頼性近似計算方法。
  2. 請求項1に記載の通信網信頼性近似計算方法であって、
    上記通信網信頼性近似計算装置は、補助記憶手段を具備し、
    該補助記憶手段により、上記記憶手段が記憶した各通信網構成要素の故障確率を参照して、上記通信網Nを構成する各通信網構成要素を、故障確率の小さい順に読み出して昇順に並び替えて記憶し、
    上記計算手段は、上記式の計算処理時および上記通信網2の通信網信頼性の算出処理時、上記補助記憶手段から故障確率の小さい順に上記通信網構成要素iの選択を行う
    ことを特徴とする通信網信頼性近似計算方法。
  3. 故障時における通信網で通信可能な情報量(通信容量)が予め定められたしきい値以上となる確率を、当該通信網の通信網信頼性として算出する通信網信頼性近似計算装置であって、
    予め、通信網Nを構成する各通信網構成要素の識別情報と各通信網構成要素の故障確率(正常確率)、および、各通信網構成要素で構成される通信経路の識別情報と各通信経路の正常時における上記通信容量とからなるデータを記憶する記憶手段と、
    上記通信網Nを構成する通信網構成要素iを選択し、該通信網構成要素iが確実に正常であると見なした通信網1の通信網信頼性と上記通信網構成要素iが確実に故障していると見なした通信網2の通信網信頼性および上記通信網構成要素iの故障確率を用いた式「(1−〔通信網構成要素iの故障確率〕)×〔通信網1の通信網信頼性〕+〔通信網構成要素iの故障確率〕×〔通信網2の通信網信頼性〕」を計算し、該計算結果を、上記通信網Nの通信網信頼性として出力する計算手段と
    を有し、
    該計算手段は、
    上記通信網構成要素iを除く各通信網構成要素の1つずつを順次に故障していると見なした際に正常となる各通信経路を、上記記憶手段が記憶したデータを参照して求め、該求めた正常な各通信経路の通信容量の合計を算出し、該合計が上記しきい値以上となる各通信経路を特定し、該特定した各通信経路毎に、当該通信経路を構成する各通信網構成要素の正常確率と上記故障していると見なした通信網構成要素の故障確率との積事象を算出し、該算出した各積事象の総和を上記通信網2の通信網信頼性として算出する近似手段と、
    上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常であるか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が上記しきい値以上であれば、上記通信網1の通信網信頼性として1を算出する第1の計算手段と、
    上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常でないか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が上記しきい値以上でなければ、上記通信網1に対して、上記通信網Nに対する上記通信網構成要素iの選択処理と上記式の計算処理および上記近似手段による上記通信網2の通信網信頼性の算出処理を行う第2の計算手段とを有し、
    該第2の計算手段による処理を、上記通信網1における全ての通信網構成要素が正常となるか、あるいは、確実に正常である通信網構成要素により確保できる通信容量が予め定められたしきい値以上となるまで繰り返し、該繰り返し処理で得られた計算結果を、上記通信網Nの通信網信頼性として出力する
    ことを特徴とする通信網信頼性近似計算装置。
  4. 請求項1に記載の通信網信頼性近似計算装置であって、
    上記記憶手段が記憶した各通信網構成要素の故障確率を参照して、上記通信網Nを構成する各通信網構成要素を、故障確率の小さい順に読み出して昇順に並び替えて記憶する補助記憶手段を有し、
    上記計算手段は、上記式の計算処理時および上記第2の計算手段による処理時、上記補助記憶手段から故障確率の小さい順に上記通信網構成要素iの選択を行う
    ことを特徴とする通信網信頼性近似計算装置。
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