JP3895671B2 - 分光法及び分光装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光法及び分光装置に関し、特に、アダマール変換法を用いた分光法及び分光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アダマール行列Hとは、要素が全て+1と−1のどちらかからなる正方行列であり、次の性質を有する行列の総称である。
【0003】
【数1】
Figure 0003895671
アダマール行列の要素は全て+1か−1であるので、それを+と−で表記する方法が一般的に行われている。例えば4次のアダマール行列H4 は、
【0004】
【数2】
Figure 0003895671
のように記述される。本明細書においても、今後この記述法を用いる。
【0005】
アダマール行列Hを用いたアダマール変換は、例えば非特許文献1に詳しく説明されているように、スペクトル分析や信号伝送、画像処理等、幅広い応用分野がある。例えば、アダマール変換を用いた分光法は、単一スリットを用いた通常の分光方法に比べると、一度に検出する光量が多くなる。したがって、単一スリットを用いた方法より高S/Nの分光強度分布を得ることが可能である。非特許文献2には、巡回性の255セルのアダマールマスクを用いることにより、単一スリットを用いる通常の方法に比べて、約8倍のS/Nが得られたことが報告されている。
【0006】
アダマール変換を用いた分光装置の代表的な装置の構成を、図5に示す。分光装置は、入射スリット1と、入射スリット1を透過した入射光を平行光にするためのコリメートレンズ2と、コリメートされた入射光を分光するための分光グレーティング3と、分光された入射スリット像を形成するスリット投影レンズ4と、分光された入射スリット像位置に移動可能に挿入されたアダマールマスク5と、アダマールマスク5を透過した分光成分で分光グレーティング3の像を投影するグレーティング投影レンズ6と、分光グレーティング3で生じた波長分散を補償する分散補償グレーティング7と、分散補償グレーティング7で分散補償された入射スリット像を再び結像するための撮像レンズ8と、再び結像された入射スリット像の強度を検出する検出器9とからなる。
【0007】
アダマールマスク5には、巡回行列である、いわゆるPaley型アダマール行列の心行列(アダマール行列の第1行目と第1列目を除いた部分行列)Sの要素に応じた開口が設けてある。Paley型アダマール行列は、心行列が巡回行列となっているアダマール行列である。
【0008】
以下に、7次の心行列Sの例S7 を用いて、心行列Sに対応するアダマールマスクの関係を説明する。図6に示すように、S7 の各行は、+1と−1からなる要素が7つ並んでおり、上の行から順に、右回りに1要素ずつ回転操作を行った関係にある。したがって、S7 の各行を上から下に、左側に1要素ずつずらしながら重ねることにより、13個の+と−の要素からなる行ベクトルν7 を定義できる。アダマールマスクは図6及び図7(b)に示すように、ν7 の要素と同じ数のセルが並んだ形状をしており、その各セルはν7 の各要素が+か−かに対応して開口を設定したものである。図6及び図7(b)の例では、ν7 の要素が+に対応するセルが開口部となり、−に対応するセルが遮蔽部となっている。一方、補助マスクは図7(a)に示すように、アダマールマスク(図の(b))の7つのセル分の長さの開口部を持つ。アダマールマスクにこの補助マスクを重ねると、合成開口(図の(c))が形成される。そして、固定された補助マスクに対してアダマールマスクを1セル分ずつ移動して行けば、S7 の各行に対応する開口パターンが順次得られる。このように、固定された補助マスクに対してアダマールマスクを1セル分ずつ移動可能に設置したのが、図5のアダマールマスク5である。
【0009】
アダマールマスク5の面上には、入射スリット1と分光グレーティング3とによって生成された入射光の分光スペクトルが投影される。アダマールマスク5は、その分光スペクトルを各セルの幅で定められる波長帯域毎に分割し、それぞれの波長帯域毎に各セルの透過、遮蔽による分光変調を行う。
【0010】
このように、S7 の各行に対応して分光変調を受けた入射光は、検出器9によってその変調強度が検出される。S7 の全ての行の分光変調に対する変調強度が検出された後、S7 の逆行列を用いて変調強度は復調され、各波長帯域毎の分光強度が算出される。
【0011】
【非特許文献1】
喜安善市著「アダマール行列とその応用」(コロナ社)
【0012】
【非特許文献2】
J.A.Decker,Jr.,"Experimantal Realization of the MultiplexAdvantage with a Hadamard-Transform Spectrometer",Applied Optics,Vol.10,No.3,pp.510-514 (1971)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のアダマール変換分光法には、以下に述べる不都合が存在する。すなわち、アダマール行列H又はその心行列Sの全ての行又は列に対する分光変調を行わない限り、それを復調して目的の分光強度を算出することは不可能である。例えば、波長帯域255分割のアダマールマスクを用いて分光データを得るためには、アダマールマスクの分光変調を切り替えながら、255通りの分光変調に対する変調強度を記録しなければならない。ところが、計測者が必要とする波長分解能は必ずしも一定ではない。もし、計測者が必要とする分光強度の波長分解能がアダマールマスクで決まる波長分解能よりも低いならば、必要以上に長い計測時間を取っていることになる。特に、微弱蛍光標本の分光を行う場合には、不要な計測時間は高速な分光計測の妨げとなったり、蛍光色素の褪色を早めてしまったりするので、好ましくない。
【0014】
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、所望の波長分解能に応じて高速に分光計測することが可能なアダマール変換法を用いた分光法及び分光装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の分光法は、分光素子によって波長分解された入射光を、アダマール行列における行又は列の+1、−1の要素の配列に対応してそれぞれ第1の方向に入射光を導く第1領域、第2の方向に入射光を導く第2領域が設定されるように変調可能な分光変調素子に入射させ、前記分光変調素子の第1領域又は第2領域により導かれた光の検出を、アダマール行列の行又は列の順序に従って前記分光変調素子の変調状態を順次切り替えて順次行い、これらの複数回の検出結果から入射光の波長分布を検出する分光法であって、
前記アダマール行列として、次数2v (vは自然数)のアダマール行列であって、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列を用い、初めの2w 個の行又は列の要素の配列に対応する2w 回の検出結果より前記入射光の波長分布を算出することを特徴とする方法である。
【0016】
この場合に、そのアダマール行列は、行又は列の交番数が昇順のアダマール行列であることができる。
【0017】
さらに、上記目的を達成する本発明の分光装置は、入射光を波長分解する分光素子と、前記分光素子からの光を受ける分光変調素子と、前記分光変調素子により分光変調を受けた前記入射光の変調強度を検出する検出素子と、前記検出素子で検出された前記入射光の変調強度より前記入射光の波長分布を算出する計算手段とを備え、前記分光変調素子は、アダマール行列における行又は列の+1、−1の要素の配列に対応してそれぞれ前記検出素子に向かって光を導く第1の領域と、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2領域、あるいは、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2の領域と、前記検出素子に向かって光を導く第1の領域が設定されるように変調可能なものからなり、前記アダマール行列として、次数2v (vは自然数)のアダマール行列であって、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列が用いられ、前記分光変調素子は、このアダマール行列の行又は列の順序に従うようにその変調状態が順次切り替えられ、前記計算手段は2w 回検出された時点において前記前記入射光の波長分布を算出することを特徴とするものである。
【0018】
この場合に、そのアダマール行列は、行又は列の交番数が昇順のアダマール行列とすることができる。
【0019】
本発明は、このような分光装置を備えた顕微鏡、レーザ走査顕微鏡等の光学装置を含むものである。
【0020】
なお、上記の本発明において、第1領域と第2領域の一方、あるいは、検出素子とは異なる方向に光を導く第2領域は遮光性領域であってもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、まず、上記の目的を達成することができる分光法の実施形態とその作用効果について説明する。そして、次に、本発明の分光装置の実施例を説明することにする。
【0022】
本発明に用いるアダマール行列としては、次数2v (vは自然数)のアダマール行列を用い、そのアダマール行列は、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列である。
【0023】
このとき用いられるアダマール行列は、いわゆるS型H行列と呼ばれるものであり、n次のS型H行列の一つHn は、以下の手順で帰納的に求めることができる。
【0024】
【数3】
Figure 0003895671
ここで、Hn はn次のS型H行列である。このように、S型H行列は、n=2v (vは自然数)次数のみ定義されている。
【0025】
また、交番数とは、ある一つの行又は列内で、隣り合う要素の符号が異なる位置の数を表している。n=8の例だと、以下の通りとなる。
【0026】
【数4】
Figure 0003895671
上記の(4)式の行列の右横に示した数が、各行に対する交番数である。
【0027】
この方法で求められたS型H行列の各行の交番数は、0からn−1の整数が一つずつ存在する。S型H行列は対称行列なので、列に対する交番数もこの順番となる。また、S型H行列の逆行列は、それ自身の1/nと等しい。すなわち、以下の通りとなる。
【0028】
【数5】
Figure 0003895671
本発明の分光法の一つの実施形態に用いるアダマール行列は、上記(4)式のような交番数がランダムになっているものではなく、交番数が昇順になっているものを使う。S型H行列の行又は列の交番数を昇順に並べ替えた(交番数順の)行列H* は、やはりアダマール行列の一つである。n=8の例だと、以下の通りとなる。
【0029】
【数6】
Figure 0003895671
ここで、アダマール変換を用いた分光法は、以下の通りとなる。波長帯域をn=2v 分割にサンプリングしたときの中心波長の行列λT ={λ1 λ2 ・・・λn T に対する分光強度の行列xT ={x1 2 ・・・xn T を未知数として、アダマール行列Hの各行の要素を基にアダマールマスクの開口パターンを切り替えながら検出された信号強度の行列sT ={s1 2 ・・・sn T は、
【0030】
【数7】
Figure 0003895671
で表される。したがって、アダマール行列Hの全ての行に対する信号強度を検出すれば、分光強度は、(5)式を用いて、
【0031】
【数8】
Figure 0003895671
の計算式より求めることができる。
【0032】
ところで、本実施例の形態においては、信号強度の行列sT ={s1 2 ・・・sn T の要素全てを計測しなくても、低分解能の分光強度を求めることができる。以下に、そのことを説明する。
【0033】
非特許文献1の第6章によれば、2n次の交番数順のアダマール行列H* 2nの上半分の要素は、n次の交番数順のアダマール行列H* n を用いて、
【0034】
【数9】
Figure 0003895671
の形で表される。ここで、×の演算子は、クロネッカー演算子であり、
【0035】
【数10】
Figure 0003895671
を表す。したがって信号強度の行列sの最初の半分は、
【0036】
【数11】
Figure 0003895671
となり、この方程式を解くと、
【0037】
【数12】
Figure 0003895671
の式が得られる。このことは、つまり、最初の半分の数の信号強度から、波長分解能が半分の分光強度が得られることを示している。同様にして、最初の1/4の数の信号強度から、
【0038】
【数13】
Figure 0003895671
の式を用いて、波長分解能が1/4の分光強度を求められることが分かる。逆に言えば、交番数順のアダマール行列H* n の初めの2つの行に対する信号強度{s1 2 T を検出した時点で、波長帯域を2分割した分光強度を求めることができる。すなわち、
【0039】
【数14】
Figure 0003895671
となる。さらに、アダマール行列Hの初めの4つの行列に対する信号強度{s1 2 3 4 T を検出した時点で、波長帯域を4分割した分光強度を求めることができる。すなわち、
【0040】
【数15】
Figure 0003895671
となる。
【0041】
このように、本発明のアダマール変換法を用いた分光法においては、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列を用いている。これにより、初めの2w 個の変調に対する計測値が求まった時点で、低分解能の分光強度を求めることができる。
【0042】
この発明の好適一実施形態においては、使用するアダマール行列は、行又は列の交番数が昇順のアダマール行列であり、所望な分解能の分光強度が得られる回数の検出が行われた時点で検出を終了する。
【0043】
本実施形態においては、使用するアダマール行列の行又は列の交番数が昇順であることにより、分光変調を変えながら計測を進めて行く過程において、低分解能から高分解能へと順次波長分解能を上げて行きながら分光強度を求めることができる。そして、所望な分解能の分光強度が得られる回数の検出が行われた時点で検出を終了することができる。
【0044】
また、本発明の分光装置は、入射光を波長分解する分光素子と、前記分光素子からの光を受ける分光変調素子と、前記分光変調素子により分光変調を受けた前記入射光の変調強度を検出する検出素子とを備え、前記分光変調素子は、アダマール行列のにおける行又は列の+1、−1の要素の配列に対応してそれぞれ前記検出素子に向かって光を導く第1の領域と、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2領域、あるいは、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2の領域と、前記検出素子に向かって光を導く第1の領域が設定されるように変調可能なものからなり、前記アダマール行列として、次数2v (vは自然数)のアダマール行列であって、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列が用いられ、前記分光変調素子は、このアダマール行列の行又は列の順序に従うようにその変調状態が順次切り替えられることを特徴とするものである。
【0045】
本実施形態においては、分光変調素子は、上記のようなアダマール行列の行又は列の要素の値に従って変調状態が決定され、そのアダマール行列の行又は列の順序に従って変調状態が順次切り替えられ、検出素子で検出した変調信号を用いて低分解能から高分解能の分光強度を順次算出できるようにしたことにより、分光計測の途中で低分解能の分光強度を求めることができる。
【0046】
この発明の好適一実施形態においては、低分解能から高分解能の分光強度を順次算出する過程において、所望な分解能の分光強度が得られた時点で、検出素子での検出を終了することができる。
【0047】
本実施形態においては、必要な分解能の分光強度が得られた時点で検出を打ち切ることができるので、必要な分解能に応じて計測時間を短縮することができる。
【0048】
次に、図面を用いて本発明の分光法を用いた本発明の分光装置の実施例について説明する。
【0049】
本発明による第1実施例の分光装置を備えたレーザ走査顕微鏡(LSM)の構成を図1に示す。図1(a)はこのLSMの側面図、(b)はその上面図である。LSMは、励起光を発するレーザ光源11と、レーザ光源11からの励起光を標本に向かう光路内に導くダイクロイックミラー12と、標本面上を2次元走査するための主走査ガルバノミラー13及び副走査ガルバノミラー14と、励起光を標本面上に集光させる対物レンズ15と、標本Oのボケ像を除去するための共焦点ピンホール16とを備えている。そして、本発明による分光装置は、標本面で発生した蛍光を分光するための分光プリズム17と、分光プリズム17によって分光した蛍光を平行光にするためのコリメータレンズ18と、分光された蛍光の波長帯域によってオン、オフの切替が可能なプログラマブルミラー19と、プログラマブルミラー19のオンの波長帯域の成分のみ選択して検出するPMT(光電子倍増管)20とからなっている。
【0050】
図1(b)に示すように、共焦点ピンホール16を通過した標本Oの面で発生した蛍光は、分光プリズム17により分光された後、軸外しのコリメータレンズ18によって、プログラマブルミラー19に斜め入射する。プログラマブルミラー19のオンの要素で反射した分光成分は、コリメータレンズ18で集光されて、分光プリズム17で分散補償された後に、PMT20に入射する。プログラマブルミラー19のオフの要素で反射した分光成分は、オンの要素で反射した分光成分とは異なる方向に反射され、ストッパ21により吸収される。プログラマブルミラー19はプログラマブルミラー駆動装置22を介してコンピュータ23に接続しており、コンピュータ23に記憶されたアダマール行列の行の要素に対応したパターンを、その交番順で順次発生する。PMT20は、PMT駆動装置22を介してコンピュータ23に接続している。コンピュータ23に接続された表示装置24に、アダマール変換から求めた分光強度分布を表示する。
【0051】
ここで、プログラマブルミラー19は、分光プリズム17の波長分散方向にアダマール行列の次数に等しい数の微小ミラーが並列してなる微小ミラー集合体であり、その微小ミラーの各々は独立に傾き角度制御することができるものである。そして、各微小ミラーの制御信号のオン、オフでその反射面の傾きを変えることができる。ここでは、オンの状態の微小ミラーで反射した光がPMT20に入射し、オフの状態の微小ミラーで反射した光はPMT20には入射せず、それ以外の方向であるストッパ21に向かうように設定されている。
【0052】
そして、本実施例では、プログラマブルミラー19の各微小ミラーをアダマール行列の行の要素+1、−1に対応させる。微小ミラーがオンの状態をアダマール行列の行の要素+1、オフの状態を−1とする。
【0053】
本実施例における分光測定の流れを、図2に示す。ここで、wは、2w が波長帯域の分割数を表す補助変数であり、mはアダマール行列の行番号を指定する補助変数である。wとmはまず0から出発する(ST1、ST2)。次に、分割数を表す補助変数wをまず1とする(ST3)。続いて、アダマール行列の行mを1から順に加算してゆきながら(ST4)、次数2v のアダマール行列H* v のm行目の分光変調をかけて(ST5)、その分光変調に対して検出して変調強度を順次記録し(ST6)する。そして、mが2w に一致した時点で(ST7)、それまで記録したm個の変調強度を用いて波長帯域2w 分割の分光強度を計算する(ST8)。算出された波長分解能が不十分ならば(ST7)、mを加算しながら(ST4)、さらに分光計測を継続し、波長分解能が十分になったか(ST10)、mがアダマール行列H* v の次数2v に等しくなった時点(ST9)で分光計測を打ち切る。
【0054】
このように、本実施例においては、交番数順のS型H行列を用いたことにより、各行に対する信号強度を全て検出せずとも、低分解能から高分解能に、順次解像を上げながら分光強度を求めて行くことができる。
【0055】
本発明による第2実施例を図3に示す。図3は図1(b)に対応する上面図であって、第1実施例の検出部の一部に変更を加えたものである。第2実施例では、2つの光電子倍増管(PMT201 及びPMT202 )を用いて、プログラマブルミラー19のオン・オフの両方の信号強度を同時に検出している。本実施例では、PMT201 とPMT202 からの出力を、加算器28で加算して和信号を生成している。また同時に、両者の出力を減算器27により減算して差信号を生成している。そして、加算器28と減算器27により生成した信号を、コンピュータ23(図1)に送っている。プログラマブルミラー19と2つのPMT201 、202 の間には、集光レンズ25と分散補償プリズム26が挿入されている。集光レンズ25はプログラマブルミラー19で発散した光束をPMT201 、202 上に集光する役割をし、分散補償プリズム26は分光プリズム17によって生じた波長分散を補償する役割をする。
【0056】
本実施例においては、プログラマブルミラー19がオンの分光成分とオフの分光成分の差信号を検出するようにしたので、プログラマブルミラー19がオンの分光成分のみを検出する第1実施例に比較して、PMTで発生するノイズの影響を少なくすることができる。その結果、第1実施例では用いていなかった、プログラマブルミラー19がオフの分光成分を計測するようにしたので、第1実施例に比べて、高いS/N比が得られる利点がある。さらに、本実施例においては、プログラマブルミラー19がオンとオフの両方の信号の和信号を常に検出しているので、光源11の出力あるいは検出器のオペアンプの感度のふらつきが生じても、それを補正することができる。よって、さらに精度の高い分光強度分布の算出を行うことができる。
【0057】
本発明による第3実施例の蛍光分光顕微鏡を図4に示す。蛍光分光顕微鏡は、励起光を発する光源31と、光源31からの励起光を標本Oに向かう光路に導入するダイクロイックミラー32と、励起光を標本面上に集光させ、標本Oの蛍光像を拡大するための対物レンズ33と、対物レンズ33により拡大された標本Oの像を結像させるための結像レンズ34を備える。そして更に、対物レンズ33の射出瞳を分光するための分光グレーティング35と、分光された対物レンズ33の射出瞳の像を結像させるための瞳投影レンズ36と、分光された対物レンズ33の射出瞳の結像位置に配置され分光変調を行う本発明によるアダマールマスク37と、アダマールマスク37を横方向に移動するアダマールマスク駆動装置38と、アダマールマスク37を透過した分光成分で分光グレーティング35の像を投影するグレーティング投影レンズ39と、分光グレーティング39で生じた波長分散を補償する分散補償グレーティング40と、分散補償グレーティング40により分散補償された蛍光像を撮像するための撮像装置41とを備える。また図示していないが、撮像装置41とアダマールマスク駆動装置38を制御し、蛍光像の分光像を求めるコンピュータを有する。
【0058】
アダマールマスク37には、図4(b)にそのn=8の例のパターンを示すように、交番数順のアダマール行列H* に対応した開口パターンが開いている。対物レンズ33の射出瞳は、分光グレーティング35によってこのアダマールマスク37上に縦方向の分光スペクトルとなって投影される。アダマールマスク駆動装置38でこのアダマールマスク37を横方向に順次動かしながら撮像装置41で撮像した画像を、コンピュータに蓄積して行く。そして、各画素毎に第1実施例で説明した復調を行うことにより、分光画像を算出することができる。
【0059】
本実施例においても、交番数順のアダマール行列の開口パターンを設けたことにより、第1実施例で説明したのと同様、計測の途中から低分解能の分光画像を順次得ることができる。
【0060】
なお、以上の実施例では、交番数順のアダマール行列を用いた例を説明したが、変調画像を復調できるのは、交番数が0から2w −1(wは任意の自然数)である行成分を用いた2w 枚の変調画像を取得できた後となる。つまり、2w 枚の変調画像を取得する順序に制限はない。したがって、交番数順のアダマール行列の代わりに、初めの2w 個の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列を用いても、初めの2w 個の分光変調を行った時点で、波長帯域2w 分割の低解像度の分光強度を求めることができるので、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、本発明には以下のものが含まれる。
【0062】
(1) 前記アダマール行列は、行又は列の交番数が昇順のアダマール行列であることを特徴とする請求項3記載の分光装置。
【0063】
(2) 請求項3又は4記載の分光装置を備えたことを特徴とする光学装置。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の分光法及び分光装置によると、初めの2w 個の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列を用いて初めの2w 個の分光変調を行った時点で波長帯域2w 分割の分光強度を求めることができるので、計測時間の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1実施例の分光装置を備えたレーザ走査顕微鏡の構成を示す図である。
【図2】第1実施例の分光装置による分光計測のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明による第2実施例の分光装置の検出部の上面図である。
【図4】本発明による第3実施例の分光装置を備えた蛍光分光顕微鏡の構成を示す図である。
【図5】従来のアダマール変換を用いた分光装置の構成を示す図である。
【図6】従来の7次のS行列の例とそれに対応するアダマールマスクを示す図である。
【図7】従来のアダマールマスクによる分光変調の切り替えを表す図である。
【符号の説明】
O…標本
1…入射スリット
2…コリメートレンズ
3…分光グレーティング
4…スリット投影レンズ
5…アダマールマスク
6…グレーティング投影レンズ
7…分散補償グレーティング
8…撮像レンズ
9…検出器
11…レーザ光源
12…ダイクロイックミラー
13…主走査ガルバノミラー
14…副走査ガルバノミラー
15…対物レンズ
16…共焦点ピンホール
17…分光プリズム
18…コリメータレンズ
19…プログラマブルミラー
20、201 、202 …PMT(光電子倍増管)
21…ストッパ
22…プログラマブルミラー駆動装置
23…コンピュータ
24…表示装置
25…集光レンズ
26…分散補償プリズム
27…減算器
28…加算器
31…光源
32…ダイクロイックミラー
33…対物レンズ
34…結像レンズ
35…分光グレーティング
36…瞳投影レンズ
37…アダマールマスク
38…アダマールマスク駆動装置
39…グレーティング投影レンズ
40…分散補償グレーティング
41…撮像装置

Claims (3)

  1. 分光素子によって波長分解された入射光を、アダマール行列における行又は列の+1、−1の要素の配列に対応してそれぞれ第1の方向に入射光を導く第1領域、第2の方向に入射光を導く第2領域が設定されるように変調可能な分光変調素子に入射させ、前記分光変調素子の第1領域又は第2領域により導かれた光の検出を、アダマール行列の行又は列の順序に従って前記分光変調素子の変調状態を順次切り替えて順次行い、これらの複数回の検出結果から入射光の波長分布を検出する分光法であって、
    前記アダマール行列として、次数2v (vは自然数)のアダマール行列であって、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列を用い、初めの2w 個の行又は列の要素の配列に対応する2w 回の検出結果より前記入射光の波長分布を算出することを特徴とする分光法。
  2. 前記アダマール行列は、行又は列の交番数が昇順のアダマール行列であることを特徴とする請求項1記載の分光法。
  3. 入射光を波長分解する分光素子と、前記分光素子からの光を受ける分光変調素子と、前記分光変調素子により分光変調を受けた前記入射光の変調強度を検出する検出素子と、前記検出素子で検出された前記入射光の変調強度より前記入射光の波長分布を算出する計算手段とを備え、前記分光変調素子は、アダマール行列における行又は列の+1、−1の要素の配列に対応してそれぞれ前記検出素子に向かって光を導く第1の領域と、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2領域、あるいは、前記検出素子とは異なる方向に光を導く第2の領域と、前記検出素子に向かって光を導く第1の領域が設定されるように変調可能なものからなり、前記アダマール行列として、次数2v (vは自然数)のアダマール行列であって、初めの2w 個(wはvより小さい自然数)の行又は列の交番数が残りの全ての行又は列の交番数の最小値よりも小さいアダマール行列が用いられ、前記分光変調素子は、このアダマール行列の行又は列の順序に従うようにその変調状態が順次切り替えられ、前記計算手段は2 w 回検出された時点において前記前記入射光の波長分布を算出することを特徴とする分光装置。
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