JP3895082B2 - 磁気記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は孤立した磁性微粒子を有する記録媒体を使用した記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁気記録媒体は基板上にスパッタ蒸着された磁性連続膜が用いられている。この磁性連続膜に対し、磁気ヘッドもしくはレーザー光の照射により記録が行われている。磁気ヘッドの場合は磁場を、レーザー光の場合は照射されて温度が上がる領域を、それぞれ小さくすることにより高密度化が図られてきた。
【0003】
従来の磁気記録媒体においては、磁性体は連続的であり、記録位置に関する制限はない。また、記録方法については、例えば、アイ・トリプル・イー・トランザクション・オン・マグネティクス35巻(1999年)695頁から699頁(IEEE Trans. Magn. 35(1999) pp.695-699)では磁気ヘッドを収束イオンビームにより削り、磁場を局在させる方法が知られている。この方法ではヘッドの加工寸法により記録ビットの大きさが制限できると考えられている。
【0004】
また、例えば特開昭51−107121では、光照射と同時に外部磁場を印加することにより書き込みを行なう方法などが知られている。さらに、特開平8−249751では、媒体と加熱用の光の位置を相対的に移動させ記録を行なう方式が提案されている。この方式では光スポットの移動と磁場印加の周期を同期させることにより、光の径よりも小さな記録マークを記録することを可能にしている。
【0005】
しかし、高密度化が進むに従い、1ビットあたりの磁性体の体積が小さくなり、一般に信号と雑音の比の低下、熱揺らぎ耐性の現象などの問題が発生し、従来の磁性連続膜では、さらなる高密度化が困難である可能性が指摘されている。この問題を解決するために、磁気記録媒体において、磁性微粒子を周期的に配列させ、1粒子に1ビットの記録を行うことで高密度記録を実現させる記録方式が例えばジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス76(1994年)6673頁から6675頁(J. Appl. Phys. 76 (1994) pp6673-6675)や特開平10−233015などに提案されている。このような媒体は記録ビットの熱的安定性が高く、また各磁性微粒子のサイズ、形状、磁気特性を揃えることでノイズの低減が図れるため、高密度記録に有効と考えられている。
【0006】
しかし、このような磁性微粒子の配列された媒体においては、各微粒子の反転磁界の分散が存在することが、例えば、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス85(1999年)8327頁から8331頁(J. Appl. Phys. 85 (1999) pp.8327-8331)などに示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の連続膜における記録では連続膜上の任意の場所に記録することができたため、記録位置は厳密に制御する必要がなかったのに対し、上述のように孤立して配列された磁性微粒子に記録を行なう場合には、磁性微粒子間の非磁性体部では磁気的な情報を書き込むことができないために、正確に微粒子の位置と記録の位置を合わせる必要がある。
【0008】
また、光と磁場を重畳して加熱する記録方式においては、記録密度および記録速度は隣接ビットへの書き込みを行なうときに、その前に記録したビットが十分冷えていなければならないという条件により記録速度が制限されていた。
【0009】
本発明は、磁性微粒子の配列を持つ磁気記録媒体に対し、狙った微小な磁性微粒子に情報の記録を行い、かつ、他のビットに影響を与えない記録方式、それを実現させるための記録媒体、およびそれらを用いた記録装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために記録ヘッドに対して相対位置が固定された再生ヘッドを用いて微粒子の位置の検出を行い、その情報をもとに微粒子へ記録を行なう。前記構成によれば記録を行ないたいビットを選択し、磁化の反転を行なうことが可能となる。また、このように微粒子が規則的に配列された記録媒体に対し記録を行なう際に、光と磁気を重畳して印加することにより、1粒子への記録を行なうことが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
実施例1
図1(a)、(b)に本発明の記録方式を実現するための磁気記録装置の一例を示す。(a)は磁気記録装置の概略を示す平面図であり、(b)は記録部と記録媒体の一部を拡大して示す断面図である。
【0012】
記録媒体100が図示しないモータにより回転駆動され、記録媒体100の記録面に対向して、信号を読み込むためのGMRヘッド106および記録磁場を発生させるための記録ヘッド107が配置される。これらのヘッドはアーム105の先端部に保持され、アーム105は移動機構110によりその先端部が記録媒体100の必要な範囲を移動できるるように制御される。したがって、GMRヘッド106および記録ヘッド107の相対的な位置は固定されており、その離間距離は予め測定してある。
【0013】
記録媒体100は基板101の上に、たとえば、結晶異方性に起因する垂直異方性を持つ直径30nmの円柱状の磁性微粒子102が規則的に配列されており、磁性微粒子間は非磁性体103で埋められている。磁性微粒子102の中心間の距離はトラックにより若干異なるが、ほぼ50nmである。また、トラックの中心間の距離もほぼ50nmである。従って微粒子密度は約250ギガビット/平方インチに相当する。また、これらユーザーが任意に必要な情報を記録するための磁性微粒子に加え、トラッキングを行なうための磁性体が配置してあり、この磁性体からの信号をもとにトラッキングを行なう。もちろん、本発明では、記録媒体の磁気微粒子の垂直異方性は、結晶異方性に起因する垂直異方性に限らず、任意の垂直異方性の場合に適用できることは言うまでもない。
【0014】
記録媒体100の表面は保護膜104で覆われている。この記録媒体はディスク状の形状をしており、ディスクの中心を回転軸として10000rpmで回転しており、記録ヘッド107などに対して相対的に移動することができる。記録ヘッド107はスライダーに取り付けられており、記録媒体表面との距離が一定になるように制御されている。
【0015】
情報の記録には、まず、再生ヘッド106(ここではGMRヘッド106とする)からの信号をもとに微粒子位置情報を磁性微粒子位置検出装置108に送る。後述する説明から明らかなように、本発明の対象とする記録媒体では、磁性微粒子102が独立しているから、各磁性微粒子102必ず“1”あるいは“0”に対応する磁化を持っている。記録媒体の初期化がなされた状態では、全ての磁性微粒子102が“1”あるいは“0”となっている。したがって、GMRヘッド106は、どこの位置にあっても、磁性微粒子102に対応した位置で“1”あるいは“0”に対応する信号を検出することができる。磁性微粒子位置検出装置108は、GMRヘッド106からの信号を受けると、GMRヘッド106と記録ヘッド107との相対的な距離および磁性微粒子102の大きさ、さらに、GMRヘッド106が対向している位置の記録媒体100のトラックの線速度(この線速度は、上述の記録媒体100の回転速度とGMRヘッド106が対向している記録媒体100のトラックの位置によって決まる)との関係から、記録ヘッド107と磁性微粒子102とが、次に対向する位置に来るタイミングを知ることができる。このタイミングに応じて磁気コイル駆動装置109に書き込みのタイミング信号を送り、記録ヘッド107から磁性微粒子102に記録を行う。この際、磁性微粒子位置検出装置108は、複数の磁性微粒子102からの信号を読み込み、最尤復号処理を行い、磁性微粒子102の配列のばらつきを考慮したものとするのが良い。
上記タイミングについて、より具体的に述べると以下のようである。すなわち、
GMRヘッド106と記録ヘッド107との距離をLとする(この値は実測値として与えられてもよいし、後述するようにして測定しても良い)。記録媒体100は一定の角速度(ω)で回転しており、GMRヘッド106が対向している記録媒体100のトラックの半径値(r)が決まれば、その半径値でのGMRヘッド106−記録媒体100間の相対的な線速度(v)はv=rωにより決定することができる。ここで記録媒体100のトラックの半径値は設計値として与えられてもよいし、明細書の段落[0013]に示される記録媒体100面上に記録されたトラッキングを行うための磁性体(即ちサーボ信号)からの情報を元に決定するものとしても良い。また、角速度ωは明細書の段落[0014]に示されるように、予め記録装置ごとに決められている設計値を使用する。
ここで、GMRヘッド106があるビットからの磁束を電圧信号として検出してから、記録ヘッド107が当該ビット直上に至るまでの時間はTa=L/rω、またはTb=(2πr−L)/rωで表される。但し、Ta、Tbは記録媒体100の回転方向に対し、それぞれ、GMRヘッド106が記録ヘッド107の前にある場合(図5)と、後ろにある場合(図1)である。このTa若しくはTbが、記録ヘッド107と磁性微粒子102とが次に対向する位置に来るタイミングとなる。
例えば、角速度ωが10000rpm、記録媒体100のトラックの半径値rが、r=25mmの例についてみると、線速度vは、2π×25×10 −3 ×10000×1/60=26.1799[m/s]となる。また、再生素子と記録素子の距離L=10μmとすると、この例においては、GMRヘッド106が、ある磁性微粒子102による電圧信号を検出してからTa=381.97ns後(図1の例の場合)に、Tb=5999.62ns後(図5の例の場合)に、記録ヘッド107が、この磁性微粒子102と対向する位置に来る。したがって、GMRヘッド106があるビットからの信号を検出してから Ta 若しくは Tb 後に記録ヘッド107によって当該磁性微粒子102に書き込みを行えば良く、これが、書き込みのタイミングとなる。
【0016】
なお、記録媒体のトラック毎に磁性微粒子102間距離および記録ヘッド107の線速度は異なる可能性があるため、磁性微粒子位置検出装置108では、必要に応じて、トラック番号およびそのトラックの磁性微粒子102間距離を参照し、常に磁性微粒子中心を検出できるようにする。
【0017】
磁性微粒子位置検出装置108からの書き込みのタイミング信号が磁気コイル駆動装置109に伝えられ、記録を行ないたい磁性微粒子102の場所に記録ヘッド107が来たときに、磁気コイル駆動装置109により出力を調整して必要な外部磁場を印加するわけであるが、この際、記録ヘッド107が磁性微粒子102の中央部を通過するときに最大の磁場を発生するように、他の記録ビットに影響を与えない範囲で早めに磁場の印加を開始してもよい。これは、磁性微粒子102の検出に対応する書き込みのタイミング信号をどのように生成するかにより簡単に実現できる。これにより狙った磁性微粒子102に正確に記録を行なうことが可能となる。なお、情報の再生は従来の記録装置と同様にGMRヘッド106を用いて磁性微粒子102の磁化方向を検出することにより行なう。
【0018】
本実施例中、GMRヘッド106に代えて、必要な感度および分解能の得られる他の再生ヘッドを用いてもよい。本実施例では信号の再生および位置検出には同じ再生ヘッド106を用いているが、それぞれ別のヘッドを用いてもよい。その場合、再生ヘッド106と位置検出用のヘッドの相対位置を知っておく必要がある。
【0019】
図2に本発明の対象とする記録媒体による信号と従来の磁性連続膜による信号との差異を模式的に示す。図2(a)は非磁性体103の内部に磁性微粒子102が配列された媒体の断面図を模式的に示したものであり、太い矢印は微粒子の磁化方向を示す。すなわち、図2( a )に示す太い矢印は記録面に配列された磁性微粒子102の磁化を反転させる記録ヘッド107により、記録すべきデータに応じて磁性微粒子102に与えられた磁化の方向を示すものである。図2(b)はこの媒体の情報をGMRヘッド106で検出した場合の信号を示す。各磁性微粒子の中心に相当する部分で信号がピークに達する。また隣接する磁性微粒子の磁化が同じ向きである時も逆向きであるときも独立した信号が発生していることが分かる。GMRヘッド106の分解能が十分高くない場合、ピークの位置および高さはこの図とは若干異なる可能性があるが、前述したように最尤復号処理と記録ビット間の距離情報により正確なビット位置を決定することが可能である。図2(c)は、磁性連続膜204に同様の情報を記録した場合の模式図を示す。この場合は、各ビットは独立しているわけではないから、図に示すように仕切りがあるわけではないが、各ビットごとの情報があると言う意味でビットの仕切りの線を示した。太い矢印は微粒子の磁化方向を示す。図2(d)は、磁性連続膜204に記録された情報をGMRヘッドで再生した場合に取出される信号を示す。隣り合うビットの磁化が逆向きのときは記録ビットの中央部にピークが発生するが、隣接ビットの磁化が同じ向きのときは信号に変化が発生しない。従って信号波形自体からはビットの中心位置を決定することができない。
【0020】
実施例2
実施例1では、GMRヘッド106および記録ヘッド107の位置関係の情報を予め測定しておいたが、本実施例では、この相対的な位置関係は予め測定しておかなくても良い。図3は、本実施例が適用できるディスク100の平面図を示す模式図である。磁気ディスク100は、磁性微粒子が配列されている記録領域301、この記録領域301とは別の部分にパターニングしていない磁性連続膜領域302およびバンプ303から構成される。本実施例は本来の記録領域301のほかに、磁性連続膜領域302を用意したことが特徴である。
【0021】
磁気記録装置の使用前に、磁性連続膜302に記録ヘッド107を用いて特定の記録パターンを書き込む。その後、書き込んだ記録パターンをGMRヘッド106で検出する。ここで、記録パターンは信号の重畳によりピークシフトが起こらないように磁化の向きが上、下、上、下、上と交互に異なるような単純なパターンが望ましい。この書き込みのタイミングと書き込まれた信号の読み出しのタイミングとの時間およびディスク100の移動速度から、前述した明細書の段落[0015]の説明と同様に、記録ヘッド107とGMRヘッド106の間隔を求めることができる。この間隔が得られた後は、実施例1と同様に記録領域301の微粒子への記録が行える。
【0022】
なお、磁性連続膜領域302は必ずしもディスク最外周でなくてもよい。また連続した部分は1周に及ぶ必要はなく、記録ヘッドと位置検出ヘッドの距離を知るために必要な長さがあればよい。また、実施例1ではGMRヘッド106が記録ヘッド107の前に固定されていたが、記録ヘッド107をGMRヘッド106の前に配置されていても良い。
【0023】
実施例3
実施例1では、記録媒体100は結晶異方性に起因する垂直異方性を有する微粒子を配列させて記録を行なったが、結晶異方性に起因する垂直異方性を有する微粒子に代えて、面内異方性を有する微粒子を配列させた記録媒体100により記録を行なう場合にも本発明は適用できる。この実施例を図4に示す。
【0024】
図4(a)は、記録媒体100を上から見た状態での面内異方性を有する微粒子401の配列の一部を示す模式図であり、内部の太線の矢印はその磁化方向を示す。図4(b)はそのビット列をGMRヘッド106で再生したときの信号である。面内異方性を有する磁性微粒子401が基板上に周期的に配列されており、AおよびBは磁性微粒子401自体の幅と隣接する磁性微粒子401間の間隔であり、A≠Bとなるように配置されている。
【0025】
面内媒体においては、GMRヘッド106の出力はビットの始まりと終わりにおいて発生するため、ピーク位置検出だけでは磁性微粒子401が検出されたものとすることはできず、また、ビットの中心位置も確定しない。しかし、ビットの始まりと終わりとでは、必ず異符号の信号が得られる。従って得られる信号の異符号の信号を組み合わせて見たときの時間Cと磁性微粒子401自体の幅Aとが対応するとき、磁性微粒子401が検出されたものとし、その時間Cの中心部を磁性微粒子の中心とすることにより、実施例1の磁性微粒子102が検出されたものと同様に扱うことができる。なお、磁性微粒子401間の間隔Bと信号間の時間Dとが対応する。
【0026】
磁性微粒子401が検出できれば、実施例1と同様に、配列された面内異方性を持つ微粒子媒体においてもビット中心位置への記録が可能となる。
【0027】
実施例4
図5(a)、(b)に、図1(a)、(b)と同様に、本発明の磁気記録装置の他の実施例を示す。(a)は磁気記録装置の概略を示す平面図であり、(b)は記録部と記録媒体の一部を拡大して示す断面図である。
【0028】
実施例1においては記録ヘッド107とGMRヘッド106の間隔を知るために記録媒体の進行方向に対して前側に記録ヘッド107を配置していた。これに対し、本実施例ではGMRヘッド106を記録媒体100の進行方向に対して前側に配置した。実施例1と同様に、記録媒体100の基板101上に円柱状の磁性微粒子102が配置されており、その間は非磁性体103で埋められている。媒体表面は保護膜104により保護されている。GMRヘッド106と記録ヘッド107はアーム105に固定されており、記録媒体100に対して相対的に移動できる。本実施例では、記録媒体100の回転に対応して軸位置(回転角度)を知ることが必要となるので、記録媒体100の駆動モータの回転軸にはエンコーダ501を付設しておく。また、ビット位置検出装置108には、後述するように、ビット位置の検出を見かけ上修正するための修正信号入力端子502が設けられる。
【0029】
図6(a)は、GMRヘッド106の検出信号を示す図であり、横軸は時間、縦軸は信号の大きさである。図6(b)はGMRヘッド106が磁性微粒子102を検出した角度(時点)から磁性微粒子102の磁化反転を行なう迄の角度(時間)のずれΔθを示すものであり、横軸は時間、縦軸は角度(時間)のずれの大きさである。
【0030】
記録ヘッド107とGMRヘッド106の間隔を知るために、予め媒体全体を一方向に磁化しておく。まず、この媒体に対し、GMRヘッド106が磁性微粒子102を検出した角度(時点)で、媒体上の1つのトラック上で数ビットにわたり記録ヘッド107により磁性微粒子102の磁化反転を行なう。この場合、当然のことながら、磁性微粒子102の間隔に対応したパルス状の磁化反転信号を与える。磁化反転信号を与えた後、駆動モータの回転軸のエンコーダ501の信号から、ディスクが1周して記録を行なった角度に戻ってきたことを検出したときに、GMRヘッド106を用いて、磁化反転信号の記録状態を測定する。明細書の段落[0021]で説明した磁性連続膜302による場合と異なり、記録ヘッド107による磁化反転の信号が磁性微粒子102の位置と完全に合っていないときは、非磁性体103上で記録磁場を印加したことになるため、磁化状態は初めの磁化状態から変化しない。すなわち、予め媒体全体が磁化された状態のままであり、したがって、GMRヘッド106によって得られる磁化反転信号の記録状態の測定結果はなんら変化しない。図6(a)のT1に示す期間の信号がこれに対応するものとする。
【0031】
次に、ディスクの同じトラック上で、ディスクをわずかに回転させた位置、すなわち、修正信号入力端子502に所定の大きさの信号を与えることで、エンコーダ501の信号を見かけ上修正して、前記のトラック上の少しずれた位置で、GMRヘッド106により、磁性微粒子102の磁化反転を行なう。
【0032】
修正信号入力端子502に与える信号の大きさを少しずつ変えながら、ディスクをわずかに回転させる操作を繰り返しながら記録ヘッド107により磁性微粒子102の磁化反転を行なうと、GMRヘッド106による磁化反転が磁性微粒子102に対向する位置で行われるときが出てくる。図6(a)のT2に示す期間の信号がこれに対応するものとする。このとき修正信号入力端子502に与えている信号の大きさのがΔθ2である。すなわち、記録ヘッド107による磁化反転が磁性微粒子102に対向する位置で行われたので、GMRヘッド106によって得られる磁化反転信号の記録状態の測定結果は反転したものとなる。さらにこの操作を繰り返すと、図6(a)のT3に示す期間の信号のように、最初の状態と同じ信号が表れてくる。このとき修正信号入力端子502に与えている信号の大きさのがΔθ3である。修正信号をさらに大きくしながらこの操作を続けると、GMRヘッド106による磁化反転が繰り返され、図6(a)に示す信号が繰り返し表れる。
図6(a)のT 2 に示す期間の信号が得られるときの、記録ヘッド107により磁性微粒子102の磁化反転を行なう時刻と、GMRヘッド106による磁性微粒子102の磁化反転の検出の時刻が分ったときは、明細書の段落[0015]で説明したのと同様にして記録ヘッド107とGMRヘッド106の間隔が得られるから、実施例1と同様に記録領域301の微粒子への記録が行える。
【0033】
図6では、最初に全く磁化反転がおきない状態から説明を始めたが、これは、どのような状態が最初に表れても問題ではない。いずれの場合でも、少しずつディスクをわずかに回転させるために修正信号入力端子502に与える信号をずらして行くと、必ず、初期の状態に戻る時点が表れる。
【0034】
このようにして、磁性微粒子102の磁化反転に要する角度(時間)のずれΔθが分かると、この時の記録部の線速度から、記録ヘッド107とGMRヘッド106の距離を知ることができる。本実施例では、実施例2で示した連続磁性膜の部分が不要になり、またGMRヘッド106で位置を検出した直後に記録ヘッド107で記録を行なうことができるため、位置精度の向上が期待できる。なお、上述の説明では、ディスクの1周ごとに記録、信号再生、位置検出、微調整を繰り返し行なったが、1周内の部分ごとに少しずつ修正信号入力端子502に与える信号を変えながら、記録を繰り返し行い、その後まとめてGMRヘッドによる再生、位置検出を行なってもよい。こうすれば、記録ヘッド107とGMRヘッド106の距離の検出時間を短縮することが可能となる。
【0035】
図7は記録媒体100を上から見た模式図である。記録媒体100は、図に示すように、基板上に配列された磁性微粒子102およびトラッキング情報を持つ部分603からなる。記録媒体100は同心円状に複数の記録ゾーンに区切られるが、図では、簡単のために2つの記録ゾーン604、605とした。ディスクの内周に近い記録ゾーン605に比べ、外周に近い記録ゾーン604では1周当たりの磁性微粒子数が多くなっている。これによりディスクの全域に渡ってほぼ一様な線記録密度を達成できる。これに伴い、外周側の記録ゾーンではトラッキング情報を担う磁性体部分603の数も多くしてある。なお、606はディスクのバンプである。
【0036】
実施例4は、トラッキング情報を担う磁性体部分603に着目して、前述したエンコーダ501を省略することができる。すなわち、トラッキング情報を担う磁性体部分603はトラック、およびセクタごとに異なる番号が割り振ってあり、その情報をGMRで検出することにより、ディスク上の位置を決定することができるからである。したがって、エンコーダ501で得たディスク上の位置情報をトラッキング情報を担う磁性体部分603から得られる信号で代替することができる。
【0037】
実施例5
図8に本発明の磁気記録装置の他の実施例を示す。この実施例は、信号を読み込むためのGMRヘッド106、磁場を発生させるための記録ヘッド107、これらを保持するアーム105および記録媒体100に関する構成は先に説明した実施例のどの例でも適用できる。なお、本実施例では、後述するように、磁性微粒子102の温度を制御するために、近接場光の照射を行うので、基板101および非磁性体103はガラスなど光学的に透明な物質であるのが良い。本実施例では、この他に、記録ビット(磁性微粒子102)を加熱するためのレーザー源707、コリメートレンズ710、光を導く光ファイバー708などから構成される。光ファイバーの先端部は金属被覆が施してあり、被覆の中心部に開いた開口部から近接場光がにじみ出ている。照射光709の照射位置は記録ヘッド107の直下に来るように調整してある。また、先の実施例と同様、GMRヘッド106、記録ヘッド107の相対的な位置は固定されており、距離は予め測定してある。
【0038】
本実施例では、情報の再生は従来の記録装置と同様に、GMRヘッド106を用いて磁性微粒子102の磁化方向を検出することにより行なう。情報の書き込みには、書き込みを行ないたい磁性微粒子102の直下に照射光709の照射位置が来たときに、レーザー駆動装置712により出力を調整して照射光709を照射することにより書き込みに必要な温度まで磁性体を昇温し、同時に磁気コイル駆動装置109により記録ヘッド107に信号を与え、必要な外部磁場を印加する。記録を行ったビットの磁化が飽和に達するように、磁性微粒子102の温度が十分高いときから磁化方向が容易に反転しない温度に冷えるまで外部磁場を印加する。一つの記録ビットの書き込みが終了し、温度が十分冷えた状態で次のビットの書き込みを行なう。なお、基板101および非磁性体103はガラスなどが、光学的に透明な物質で作られているため、照射光は透過し、磁性微粒子102に比べレーザー光照射による昇温は小さい。また非磁性体103は磁性微粒子102に比べ熱伝導率が低いため、従来の連続膜への記録に比べ、照射された微粒子のみが選択的に加熱されやすく、他の磁性微粒子102へ熱が伝わりにくい。従って、特開平10−233015のように連続膜に光と磁場の重畳による記録を行なった場合に比べ、高速な記録が可能である。なお、一般に、基板101として非磁性体103よりも熱伝導率が高い物質を用いることにより記録後の冷却が急速に行われ、より高速な記録が可能となる。また、光ファイバーに代えてソリッドイマージョンレンズ(例えばアプライド・フィジックス・レターズ68(1996)141頁から143頁(Appl.Phys. Lett. 68 (1996) pp.141-143))やベリースモールアパーチャーレーザー(例えばアプライド・フィジックス・レターズ75(1999)1515頁から1517頁(Appl.Phys. Lett. 75 (1999) pp.1515-1517))など、局所加熱が可能な他の光源を用いてもよい。
【0039】
実施例6
図8の実施例において、照射光709のスポット径が磁性微粒子102の配列の周期よりも大きかった場合でも磁場印加の周期と移動速度を調整することにより特開平8−249751に示されるようにスポット径以下の周期で記録を行なうことが可能になる。図9(a)−(c)はそのような記録を行なった場合の磁性微粒子102の磁化の様子を示した模式図である。802が照射光709のスポットの大きさを示す。図では、照射光709のスポットに三つの磁性微粒子102が覆われる例を示している。黒い部分は下向きの磁化を、白い部分は上向きの磁化を表している。
【0040】
図9(a)では磁性微粒子102はすべて下向きで同じ磁化方向を向いている。この記録媒体に光スポット802が照射され、同時に上向きの外部磁場が印加されると、温度の上がった微粒子の磁化のみが反転し上を向く。この例では、図9(b)に示すように、光スポット802は磁性微粒子102の三つを覆うため、磁性微粒子群803が磁化反転している。次に、図9(c)に示すように、磁性微粒子102の一つ分だけディスクが移動した状態で、光スポット802を照射し、下向きの外部磁場を印加する。この結果、磁性微粒子群803の内805のみが上向きの磁化を維持するのみで、磁性微粒子群804は下向きの磁化を持つ。このように、光スポットとディスクを磁性微粒子102の一つの大きさに対応する距離だけずれるように制御することにより、大きな光スポットでも、小さな微粒子の磁化方向を制御することが可能となる。なお、このように、2回の光照射とそれに同期した磁場変調によって情報を書き込む場合は、記録結果としてのビットの形状は特開平8−249751に示されるように三日月型になるはずであるが、本発明のように、磁性微粒子102が独立しているときには、この磁性微粒子102の形状と一致する記録となる。しかし、光スポットの形状と磁性微粒子の形状は厳密に一致する必要は無い。さらに、温度分布が比較的均一で、微粒自然体の磁化が反転するような組成や形状であれば良く、磁性微粒子102の形状は図9(d)に示すように長方形でもよい。このように磁性微粒子の形状をトラック方向と直角方向が長い長方形状とした媒体を作製すると、GMRヘッドでの検出の信号/雑音比の大きな再生が可能になる。
【0041】
実施例7
図10に他の実施例を示す。本実施例は、図8で説明した、照射光709の照射により磁性微粒子102の温度を制御して書き込みを行う実施例5と本質的に同じであるが、記録ヘッド107を本体側に移して固定した形でコイル906か磁場を印加するものとするとともに、光ファイバー708の先端部をアーム105に固定するものとした点において異なる。実施例5では、照射光709はディスク100の基板101の下から照射されていたため、基板101に光学的に透明な物質を使う必要があったが、本実施例ではディスク100の上側から照射光709が照射されるので、このような制約は無くなる。また、照射光709のスポットの大きさを磁性微粒子102の大きさとほぼ同じ大きさにできるときは、磁場を比較的広範囲な領域に亘って一様な磁場が印加できるような大きなコイル906を用いて外部磁場の印加を行なうものとできる。したがって、記録ヘッド107のように、コイル906を微細加工する必要が無い。
【0042】
なお、GMRヘッド106に代えて、必要な感度および分解能の得られる他の再生ヘッド106を用いてもよい。たとえば、トンネリング磁気抵抗効果(TMR)、もしくはコロッサル磁気抵抗効果(CMR)を用いたヘッドとすることができる。
【0043】
また開口部を持つ光ファイバー708に代えて、ソリッドイマージョンレンズなど局所的に加熱のできる他の光学系を用いてもよい。また加熱の手段としては、光によらず、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、などの探針からの通電もしくは加熱された探針を近づけることにより局所的に加熱を行なってもよい。また、記録媒体とGMRヘッド705の相対的な移動はディスクの回転によるものではなくピエゾ素子やリニアモータなどを用いた移動機構であってもよい。また、特開平10−233015に示されるような媒体と組み合わせて用いることにより記録の安定的な保持、書き換え容易性を確保することができる。
【0044】
【発明の効果】
本発明によると基板上の任意の微粒子の磁化方向を制御することができる。従って微粒子の磁化の向きを情報の単位として用いることにより、本発明は情報の記録に有効な記録媒体、記録装置および記録方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は本発明の磁気記録装置の一例を示す図であり、(a)は磁気記録装置の概略を示す平面図、(b)は記録部と記録媒体の一部を拡大して示す断面図。
【図2】本発明の対象とする記録媒体による信号と従来の磁性連続膜による信号との差異を示す模式図。
【図3】本発明の実施例2が適用できるディスクの平面図を示す模式図。
【図4】(a)は、実施例3の記録媒体を上から見た状態での面内異方性を有する微粒子の配列の一部を示す模式図、(b)はそのビット列をGMRヘッドで再生したときの信号波形を示す模式図。
【図5】(a)は本発明の実施例4の概略を示す平面図、(b)は記録部と記録媒体の一部を拡大して示す断面図。
【図6】(a)は、図5に示す実施例4のGMRヘッドの検出信号を示す図、(b)はGMRヘッドが磁性微粒子を検出した軸位置(時点)から磁性微粒子の磁化反転を行なう迄の軸位置(時間)のずれΔθを示す図。
【図7】本発明の実施例4が適用できるディスクの他の実施例の平面図を示す模式図。
【図8】本発明の磁気記録装置の実施例5の構成を示すブロック図。
【図9】(a)−(d)は、図8に示す実施例5の光スポットの大きさが磁性微粒子より大きい場合でも記録が正常に行えることを説明する概念図。
【図10】本発明の磁気記録装置の実施例6の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
100:記録媒体、101:基板、102:磁性微粒子、103:非磁性体、104:保護膜、105:アーム、106:GMRヘッド、107:記録ヘッド、108:磁性微粒子位置検出装置、109:磁気コイル駆動装置、110:移動機構、201:磁性微粒子、202:非磁性体、204:連磁性続膜中の記録ビット、301:磁性微粒子配列領域、302:磁性連続膜領域、303,606:バンプ、401:面内異方性を有する磁性微粒子、501:エンコーダ、502:修正信号入力端子、603:トラッキング情報を持つ部分、604:記録ゾーン、605:記録ゾーン、707:レーザー源、708:光ファイバー、709:照射光、710:レンズ、802:光スポット、803:磁化反転した微粒子群、804:磁化反転した微粒子群、805:磁化反転した微粒子、906:コイル。

Claims (12)

  1. 孤立した磁性微粒子を配列させた記録媒体、前記磁性微粒子の磁化状態を検出するための再生ヘッド、前記磁性微粒子の磁化を反転させるための記録ヘッド、前記再生ヘッドおよび前記記録ヘッドを保持するアーム、および該アームに保持された前記再生ヘッドおよび前記録ヘッドに対して前記記録媒体を相対的に回転移動させる手段を備える磁気記録装置であって、前記再生ヘッドの特定の磁性微粒子の存在を検出した信号と、前記再生ヘッドと記録ヘッドの相対的な位置関係と、前記記録媒体と前記再生ヘッドとの相対速度とから決定されるタイミングで前記特定の磁性粒子に前記記録ヘッドによる磁化を行うことを特徴とする磁気記録装置。
  2. 前記記録媒体の一部に連続した記録面を備え、該記録面の前記磁性微粒子の磁化を反転させるための記録ヘッドによる磁化を前記再生ヘッドによって検出して得られるデータと前記記録媒体と前記再生ヘッドとの相対速度データとから、前記再生ヘッドと記録ヘッドの相対的な位置関係を決定する請求項1記載の記録装置。
  3. 前記記録媒体を回転させるモータ、該モータの回転軸の角度を検出する手段を備え、記録ヘッドによる磁化操作を前記角度に対して回転角をわずかずつ変更しながら行わせるとともにその結果を評価して、前記再生ヘッドと記録ヘッドの相対的な位置関係を決定する請求項1記載の記録装置。
  4. 前記記録媒体はその記録面側にトラッキング情報を持つ部分を有し、前記記録媒体を回転させるモータの回転軸の軸位置を検出する手段のデータに代えて、前記記録媒体のトラッキング情報を使用する請求項3記載の記録装置。
  5. 前記記録媒体の磁性微粒子が垂直異方性または面内異方性を持つ請求項1ないし4のいずれか一つに記載した磁気記録装置。
  6. 前記記録ヘッドが、前記記録媒体の孤立した磁性微粒子に作用する磁化信号と磁性微粒子の温度を制御するための光スポットを与えるものである請求項1ないし5のいずれか一つに記載した磁気記録装置。
  7. 前記磁化信号を与える手段および光スポットを与える手段のいずれかが前記アームに保持され、他の一つは本体に保持される請求項6記載の磁気記録装置。
  8. 前記磁性微粒子の温度を制御するための光スポットの大きさが孤立した磁性微粒子の複数個を覆う大きさであるとともに、書き込みが磁性微粒子の大きさに対応する距離だけスポットを移動させながら行なわれるものである請求項1ないし7のいずれか一つに記載した磁気記録装置。
  9. 前記磁性微粒子の温度を制御するための光スポットに代えて先端の鋭く尖った探針から局所的に加熱を行なうものである請求項1ないし8のいずれか一つに記載した磁気記録装置。
  10. 前記記録媒体の基板および磁性体周囲の非磁性体が光学的に透明な物質である請求項6ないし9のいずれか一つに記載の磁気記録装置。
  11. 前記磁性微粒子の周囲の非磁性体が該微粒子よりも熱伝導率の低い物質である請求項6ないし9のいずれか一つに記載の磁気記録装置。
  12. 前記磁性微粒子の形状をトラック方向と直角方向が長い長方形状とした請求項6ないし9のいずれか一つに記載の磁気記録装置。
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