JP3893860B2 - 電子部品のケース及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子部品のケース及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パワーモジュールの構成としては、図5に示す構成が一般的である。即ち、ケース(ハウジング)を構成するアルミニウムベース41の上に放熱板42が図示しないネジ(ボルト)により固定され、放熱板42上には両面に金属層43aが形成された絶縁基板43が半田44を介して固定されている。そして、絶縁基板43の金属層43a上に半田45を介して半導体装置等の電子部品46が実装されている。絶縁基板43は窒化アルミニウム(AlN)で形成されている。放熱板42は金属マトリックス相にセラミックスを分散させた金属基複合材料、例えばSiC粒子をアルミニウム基材に分散させたものが使用されている。また、放熱板42とアルミニウムベース41との間には、アルミニウムベース41あるいは放熱板42の表面の凹凸を埋めるためグリース層47が介在されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記グリース層47は空気層に比較して熱伝導率は良いが、金属等に比較すると熱伝導率が小さく、モジュール全体の熱抵抗を増加させている。その結果、半導体装置等の大電流化や小型化の障害となっている。
【0004】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は放熱板(ヒートシンク)と、放熱板が固定されるアルミニウムベース(アルミニウムケース)との間にグリース層を設けずに、放熱板からアルミニウムベースへの熱伝導が良好に行われる電子部品のケースを提供することにある。また、第2の目的はその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するため請求項1に記載の発明では、アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない。なお、アルミニウム系金属とはアルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。
【0006】
この発明では、放熱板を構成する金属基複合材料(以下、単に複合材料と称す)のマトリックス金属が、ケースのアルミニウム系金属と直接接合されている。その結果、放熱板とケースとの間にグリース層が存在した従来の構成に比較して、放熱板からケースへの熱伝導が良好に行われる。また、放熱板をケースに取り付けるネジ等の部品が不要になる。
【0007】
また、冷却通路に冷却媒体を流すことにより冷却機能が向上する
【0008】
第2の目的を達成するため、請求項に記載の発明では、アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない電子部品のケースの製造方法において、底部内面に凹部が形成された成形型を使用し、前記凹部に非金属性無機物質の分散材又は該分散材が所定形状に賦形されたプリフォームを収容し、その状態で成形型にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込み、溶融金属の固化後に成形型から取り出す。
【0009】
この発明の製造方法では、成形型の底部内面に形成された凹部に分散材がそのまま、又は分散材が所定形状に賦形されたプリフォームが収容された状態で、溶融状態のアルミニウム系金属が加圧状態で鋳込まれる。従って、分散材をプリフォームとせずに粉末あるいは繊維の状態で凹部に収容(充填)して、溶融金属を鋳込んでも、成形型から取り出された製品としてのアルミニウム系金属ケース本体には、複合材料製の放熱板が成形型の凹部と対応する箇所において露出する状態で鋳込まれる。
【0010】
請求項に記載の発明では、アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない電子部品のケースの製造方法において、成形型内に非金属性無機物質の分散材が所定形状に賦形されたプリフォームをセットし、その状態で成形型にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込み、溶融金属の固化後に成形型から取り出す。この発明では、分散材は所定形状に賦形されたプリフォームの状態で成形型にセットされる。従って、成形型に分散材を所定位置に保持する凹部を形成する必要はない。
【0011】
請求項に記載の発明では、請求項又は請求項に記載の発明において、前記成形型に製品の冷却通路を形成するための中子をセットした状態で、成形型内にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込む。従って、この発明の方法では、冷却媒体を流すために製品に設けられる冷却通路を簡単に製造できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1及び図2に従って説明する。
図1は電子部品のケースの模式斜視図である。ケース1は四角筒状体2と、その幅広の一方の壁2aの外面に平行に突設された一対の側壁3とを備えている。四角筒状体2の中空部は冷却通路4を構成する。ケース1はアルミニウム系金属(この実施の形態ではアルミニウム合金)で形成されている。
【0013】
壁2aには冷却通路4と反対側の面に複合材料製の放熱板5が、一面が露出する状態で鋳込まれている。即ち、放熱板5は壁2aと一平面を成す状態で鋳込まれている。放熱板5はマトリックス相6aと分散相6bで構成され、マトリックス相6aがケース1を構成する金属と同じ金属で構成され、分散相6bがマトリックス相6aの金属より熱膨張率の小さい材質製の微粒子で構成されている。この実施の形態ではでマトリックス相6aにはアルミニウム合金が使用されている。
【0014】
分散相6bの材質としては炭化ケイ素(SiC)と同程度の熱伝導率及び熱膨張率を有するセラミックスが使用されている。この実施の形態では分散相6bとしてSiCの粉末が使用されている。分散相6bの粒度や充填量は、複合材料に要求される特性(物性)に応じて設定されるが、この実施の形態ではSiC粉末として粒子径が10μmのものと100μmのものとの混合物が使用されている。
【0015】
次に前記のように構成されたケース1の製造方法を図2に基づいて説明する。図2(a),(b)に示すように、成形型7には四角柱状のキャビティー7aとそれに連続する一対の溝部7bが形成されている。図2(a)に示すように、成形型7の底部に放熱板5に対応する所定形状に賦形された分散材から成るプリフォーム8がセットされる。また、成形型7内の所定位置に、製品の冷却通路4を形成するための中子9がセットされる。
【0016】
プリフォーム8は、例えばSiC粉末に、無機バインダーを加えて混合し、その混合物を成形し、得られた成形物を焼成することにより形成される。
次に溶融状態のアルミニウム合金10が成形型7内に加圧状態で注入される。キャビティー7a内に注入された溶融状態のアルミニウム合金10はプリフォーム8を構成する微粒子の隙間に侵入し、複合材料が形成される。所定量のアルミニウム合金10が成形型7内に注入された後、押湯圧としてダイカスト成形と同程度の圧力(例えば、数十MPa〜百MPa)が加えられ、図2(b)に示すように、放熱板5が一面が露出する状態で鋳込まれた状態となる。所定時間経過後、成形型7が冷却されてアルミニウム合金10が凝固、冷却される。その後、ケース1が成形型7から取り出される。
【0017】
このようにして製造されたケース1には、放熱板5上に従来のモジュールと同様に、絶縁基板を介して電子部品が搭載(実装)される。そして、モジュールの使用時には冷却通路4に水、空気等の冷却媒体が流通される。
【0018】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) アルミニウム合金製のケース1に、複合材料製の放熱板5が一面が露出する状態で鋳込まれている。従って、放熱板5を構成する複合材料のマトリックス金属が、ケース1のアルミニウム合金10と直接接合され、放熱板とケースとの間にグリース層が存在した従来の構成に比較して、放熱板5からケース1への熱伝導が良好に行われる。その結果、放熱板5に取り付けられる電子部品の大電流化、小型化が可能になる。また、放熱板5をケース1に取り付けるネジ等の部品が不要になり、組み付け工数も低減する。
【0019】
(2) ケース1には冷却通路4が形成されている。従って、冷却通路4に冷却媒体を流すことにより冷却機能が向上し、放熱板5に取り付けられる電子部品の大電流化、小型化に寄与する。また、冷却機能が向上するため、フィンを設けなくてもよくなり、モジュール全体の小型化が可能になる。
【0020】
(3) 冷却通路4が放熱板5の幅より広く形成されているため、冷却通路4が放熱板5の幅より狭く形成された場合に比較して、放熱板5の冷却効率が向上する。
【0021】
(4) 放熱板5を構成する複合材料のマトリックス相6aには、ケース1を構成する金属と同じものが使用されている。従って、ケース1を鋳造する際に、複合材料を同時に形成することができ、複合材料のマトリックス相6aにケース1を構成する金属と別のものを使用する場合に比較して、製造が簡単になる。また、放熱板5とケース1との接合面での伝熱抵抗が小さくなる。
【0022】
(5) 放熱板5を構成する複合材料のマトリックス相6aとして、アルミニウム合金が使用されているため、軽量で必要な熱伝導性を確保できる。
(6) ケース1を製造する際、分散材として所定形状に賦形されたプリフォーム8を使用するため、分散材を粉末(粒子)の状態又はバラバラの繊維の状態で成形型7内に収容して、その状態で成形型7に溶融金属を注入する方法に比較して、分散材を所定の位置に保持するのが容易になり製造が簡単になる。
【0023】
(7) 成形型7に製品の冷却通路4を形成するための中子9をセットした状態で、成形型7内に溶融金属を鋳込むことにより冷却通路4が形成されるため、冷却通路4を簡単に製造できる。
【0024】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ 冷却通路4は放熱板5の幅より大きな幅に形成する必要はなく、例えば図3に示すように、放熱板5と同じ幅に形成したり、放熱板5より幅狭に形成してもよい。
【0025】
○ 冷却通路4の形状は直線状に限らず、例えばケース1の一端で折り返すほぼU字状に形成してもよい。この場合、冷却媒体の供給配管や排出配管を冷却通路4に接続する構成や、配管の取り回しが簡単になる。
【0026】
○ 冷却通路4を省略してもよい。
○ ケース1を製造する際、プリフォーム8を使用せずに、分散材11としてのセラミックス粉末や繊維を直接成形型7内に収容した状態で製造してもよい。但し、分散材11を成形型7の平坦な面上に配置したのでは、溶融金属が成形型7内に注入された際に分散材11が飛散したり、位置がずれたりする虞がある。従って、図4に示すように、底部内面に凹部7cが形成された成形型7を使用し、凹部7cに分散材11を収容し、その状態で成形型にアルミニウム合金10を溶融したものを加圧状態で鋳込み、溶融金属の固化後に成形型から取り出す。この製造方法では予めプリフォーム8を形成する必要がないため、製造工程数が少なくなり、製造が簡単になる。
【0027】
○ プリフォーム8を使用する場合に凹部7cを有する成形型7を使用し、凹部7cにプリフォーム8を配置した状態で、ケース1を製造してもよい。
○ 放熱板5は少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれていればよく、壁2aと一平面を成す状態で鋳込まれる構成に限らず、放熱板5の一部が壁2aから突出する構成でもよい。この構成のケース1は、前記のように凹部7cを備えた成形型7を使用し、凹部7cに分散材11又はプリフォーム8を配置した状態で溶融金属の注入を行うことで製造される。
【0028】
○ 放熱板5を構成する複合材料のマトリックス相6aの金属は、必ずしもケース1の金属と同じでなくても、ケイ素を含むアルミニウムと同程度以上の熱伝導率を有するものであればよく、他の金属例えば銅を使用してもよい。この場合は予め製造した放熱板5を成形型7にセットして溶融金属を注入することでケース1が製造される。
【0029】
○ 分散相6bは炭化ケイ素の微粒子に限らず、熱伝導率のよい他のセラミックス、例えば、窒化ホウ素(BN)、酸化マグネシウム(MgO)、二ケイ化モリブデン(MoSi2)や、非金属無機物質、例えば炭素(グラファイト)の微粒子や繊維を使用してもよい。
【0030】
○ 成形型7に溶融金属を加圧状態で含浸させた後、押湯圧としてダイカスト成形と同程度の圧力(例えば、数十MPa〜百MPa)を加えるのを省略してもよい。即ち、高圧鋳造ではなく、溶融金属の自重又は自重+20kPa程度の加圧状態で含浸させた後、冷却してケース1を形成する。
【0031】
○ 放熱板5を複数鋳込んでもよい。
○ ケース1の鋳造を高圧鋳造ではなく、ダイカスト成形としてもよい。
前記実施の形態から把握される発明(技術思想)について、以下に記載する。
【0032】
(1) 記放熱板を構成する複合材料のマトリックス相はケースの材質と同じである。
(2) 記プリフォームはセラミック粉末とバインダーとの混合物を焼成して形成されている。
【0033】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、放熱板と、放熱板が固定されるアルミニウムケースとの間にグリース層を設けずに、放熱板からケースへの熱伝導が良好に行われる。また、請求項〜請求項に記載の発明によれば、前記ケースを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態のケースの模式斜視図。
【図2】 (a)は成形型にプリフォームと中子をセットした状態の模式断面図、(b)は溶融金属が注入された後の模式断面図。
【図3】 別の実施の形態のケースの模式断面図。
【図4】 別の実施の形態の製造方法を示す模式断面図。
【図5】 従来技術のモジュールの模式断面図。
【符号の説明】
1…ケース、4…冷却通路、5…放熱板、6a…マトリックス相、6b…分散相、7…成形型、8…プリフォーム、9…中子。

Claims (4)

  1. アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない電子部品のケース。
  2. アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ、前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない電子部品のケースの製造方法において、
    底部内面に凹部が形成された成形型を使用し、前記凹部に非金属性無機物質の分散材又は該分散材が所定形状に賦形されたプリフォームを収容し、その状態で成形型にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込み、溶融金属の固化後に成形型から取り出す電子部品のケースの製造方法
  3. アルミニウム系金属ケースに、金属基複合材料製の放熱板が、少なくとも一面が露出する状態で鋳込まれ、前記金属ケースは筒状体を備え、該筒状体の中空部により冷却通路が構成され、前記放熱板は前記冷却通路の長手方向に沿って前記金属ケースに鋳込まれており、前記筒状体を構成する壁のうち前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向と交差する方向の両端に、前記放熱板の長手方向と平行に側壁が突設されるとともに、前記放熱板が鋳込まれている壁における前記放熱板の長手方向の一端には側壁がない電子部品のケースの製造方法において、
    成形型内に非金属性無機物質の分散材が所定形状に賦形されたプリフォームをセットし、その状態で成形型にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込み、溶融金属の固化後に成形型から取り出す電子部品のケースの製造方法
  4. 前記成形型に製品の冷却通路を形成するための中子をセットした状態で、成形型内にアルミニウム系金属を溶融したものを加圧状態で鋳込む請求項2又は請求項3に記載の電子部品のケースの製造方法。
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