JP3892654B2 - 自動車のブレーキペダル装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車のブレーキペダル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のブレーキペダル装置は、例えば実開平6−1113号公報に示されているように、ペダルアームの上端部を回動自在に軸支したペダルブラケットをダッシュロアパネルと、該ダッシュロアパネルに接合されて車室側に張り出したダッシュアッパパネルの下面部とに締結固定してあって、ペダルアームを踏み込むことによって該ペダルアームの上端部に連結したプッシュロッドを前方へ押動して、マスターバックを作動させるようにしてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の構造によれば、車両の前面衝突時にマスターバック、もしくは該マスターバックを固定したダッシュロアパネルが変形して車室側へ後退移動すると、該マスターバックのプッシュロッドを介してペダルアームに踏み込み方向と逆方向の回動力が作用し、ブレーキペダルの踏み込み位置が後方へずれて違和感を生じるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は車両の前面衝突時にマスターバックのプッシュロッドを介してペダルアームに衝突荷重が作用するのを防止して、違和感を生じるのを回避するとともに、ペダルブラケットがダッシュアッパパネル下面部等の車体部材に対して通常位置にある場合にあっては、誤作動を防止してペダルアームの踏み込み位置の変化を抑えることができる自動車のブレーキペダル装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、ダッシュパネルに固定したペダルブラケットと、該ペダルブラケットに設けたシャフトに回転可能に軸支されたピボットブラケットと、前記シャフトよりも車両前方で、該ピボットブラケットに設けたペダルシャフトに回動自在に軸支されたペダルアームと、前記ダッシュパネルの上後方の車体部材の下面部に固定されると共に、前記ペダルブラケットの後部に設けられ、常態にあっては、ピボットブラケットと係合し、ペダルブラケットに対して車両前後方向に相対移動可能なスライドプレートとを備えると共に、前記ペダルブラケットに所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、少なくとも前記ペダルブラケットとスライドプレートとの車両前後方向の相対移動を許容し、これらペダルブラケットとスライドプレートとの摺動抵抗により衝撃を吸収する衝突吸収手段を設けて、前記ペダルブラケットとスライドプレートとが車両前後方向に相対移動した際に前記ピボットブラケットとスライドプレートとの係合が外れて該ピボットブラケットを前記シャフト周りに下後方に回動させるようにした構造であって、前記ペダルブラケットが前記車体部材に対して通常位置にある場合にあっては、前記ピボットブラケットの一部と当接して、その下後方への回動を規制する規制部を前記車体部材側にピボットブラケットと近接してけたことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを固定する固定部材の前記ピボットブラケット後部に近接した下部であることを特徴としている。
【0007】
請求項3の発明にあっては、請求項2に記載の規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを車両上方から締結固定するボルトの前記ピボットブラケット後部に近接したねじ部であることを特徴としている。
【0008】
請求項4の発明にあっては、請求項1〜3の何れか一項に記載のピボットブラケットを、前記シャフトよりも車両下方に底部を有する断面略コの字状に形成すると共に、前記規制部を、前記シャフトよりも車両上方で前記底部の後縁部が当接可能な位置に設けたことを特徴としている。
【0009】
【発明の効果】
請求項1によれば、非衝突時である常態にあってはスライドプレートとピボットブラケットとの係合によって、ピボットブラケットの回動を規制してあるため、ペダルシャフトを支点としてペダルアームを回動して、該ペダルアームに連結したプッシュロッドを介して、通常のマスターバック作動を行わせることができる。
【0010】
一方、車両が前面衝突し、ペダルブラケットに所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、スライドプレートとペダルブラケットとが車両前後方向に相対移動することにより、前記ピボットブラケットとスライドプレートとの係合が外れ、該ピボットブラケットの回動を許容して、前記シャフトを支点として該ピボットブラケットを下後方へ回動させ、ペダルアームの踏み込み位置を車両前方側へ引き寄せるようにしてあるから、マスターバックが後退移動、もしくはダッシュロアパネルが車室側へ変形してマスターバックのプッシュロッドが後退移動しても、ペダルアームの踏み込み位置が後方にずれて違和感を生じるのを回避することができる。
【0011】
また、前記ペダルブラケットが前記車体部材に対して通常位置にある場合に、ピボットブラケットとスライドプレートとの係合が何らかの要因により万が一外れて、ピボットブラケットがシャフト周りに下後方に回動しようとしても、規制部に前記ピボットブラケットの一部当接して、その下後方への回動を規制するため、ペダルアームの踏み込み位置の変化量が少なく、操作の違和感を少なくすることができる。また、ペダルブラケットに後退方向への所定荷重以上の入力が作用すると、車体部材と共に規制部はペダルブラケットに対して車両前後方向に相対移動するので、ピボットブラケットの回動の邪魔をすることがなくなる。
【0012】
請求項2によれば、請求項1の効果に加えて、前記規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを固定する固定部材の下部に設定してあるため、例えば締結固定用のボルト・ナットのボルト下面等を規制部とすれば、別途専用の部材を設定する必要がなくコスト的に有利に得ることができると共に、車両が前面衝突し、ペダルブラケットに所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、固定部材と共に前記規制部はペダルブラケットに対して車両前後方向に相対移動するので、該規制部とピボットブラケットの干渉が回避され、ピボットブラケットはその下後方へ回動することができる。
【0013】
請求項3によれば、請求項2の効果に加えて、前記規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを車両上方から締結固定するボルトのねじ部によって形成してあるため、通常、ボルトのねじ部は締め込み時にはナットよりも車両下方へ突出するので、ナット下面を規制部としたものに対して、規制部をより下方へ設定することができ、回動規制時の踏み込み位置の変化をより少なくすることができる。
【0014】
請求項4によれば、請求項1〜3の効果に加えて、前記ピボットブラケットを、前記シャフトよりも車両下方に底部を有する断面略コの字状に形成すると共に、前記規制部を、前記シャフトよりも車両上方で前記底部の後縁部が当接可能な位置に設けてあるため、車両が前面衝突し、ペダルブラケットに所定荷重を越える後退方向の入力が作用した際、車体部材と共にペダルブラケットに対して車両前後方向に相対移動する規制部と前記シャフト等との干渉を回避することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0016】
図1〜3において、1はブレーキペダル装置を示しており、2は、ダッシュパネルのダッシュロアパネル12に図外のボルト・ナットにより締結固定したペダルブラケットを示している。
【0017】
このペダルブラケット2は一対の対向する側面として、離間して配置される側壁部2A,2Aと、これらをその上方で結合する上壁部2Bとから基本的に構成されている。
【0018】
3は、該ペダルブラケット2に設けたシャフト4に回転可能に軸支され、側板部3A,3Aと底板部3Bとを有する断面略コ字状のピボットブラケットで、該ピボットブラケット3には、前記シャフト4よりも車両前方で、該ピボットブラケット3の対向する側板部3A,3Aに跨るように設けたペダルシャフト5にペダルアーム6が回動自在に軸支されている。
【0019】
7は、前記ダッシュロアパネル12の上端に接合されて車両後方へ延びるダッシュアッパパネル等の車体部材の下面部に固定されると共に、前記ペダルブラケット2の上壁部2Bの上面部に重合して固定された略平板状のスライドプレートを示している。
【0020】
前述のスライドプレート7は具体的には、その後端部で、ダッシュロアパネル12の上部につながる図外のダッシュアッパパネル等の車体部材の下面に接合配置された車体側ブラケット13の下面に、前記ペダルブラケット2の上壁部2Bの上面と共に、ボルト14およびナット15で車両下方から締結固定してある。
【0021】
特にこの実施形態にあっては、前記ボルト14が挿通する前記上壁部2B側のボルト孔を車両前方が開放した長孔に形成することによって、前記ペダルブラケット2に所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、前記ペダルブラケット2スライドプレート7との車両前後方向の相対移動を許容し、ペダルブラケット2の上壁部2Bとスライドプレート7との摺動抵抗により衝撃を吸収する衝突吸収手段としてある。
【0022】
また、前記スライドプレート7の前端部上面には孔部8が設けられており、該孔部8には、ピボットブラケット3の側板部3Aの前端部に上方に突設して設けた突出部9が挿通されている。そして、該孔部8の前縁部の係合部18に該突出部9の前端部に設けた切欠部19を係合してある。
【0023】
従って、非衝突時である常態にあっては、前述のように前記スライドプレート7の前端部の係合部18とピボットブラケット3の前端部の切欠部19とが係合していることにより、前記ピボットブラケット3の下方への回動を規制し、ペダルアーム6の踏み込み位置を所定位置(X)に規制して、ペダルシャフト5を支点としてペダルアーム6を回動して、該ペダルアーム6に連結したプッシュロッド11を介して、通常のマスターバック作動を行わせることができる。
【0024】
そして、図2に示すように、車両の前面衝突時にあっては、前記衝突吸収手段として長孔に形成したボルト孔の部分でペダルブラケット2がスライドプレート7に対して車両後方向に相対的に移動し、この相対動により、ダッシュアッパパネルに固定されたスライドプレート7がペダルブラケット2の上壁部2Bにガイドされつつ前記ピボットブラケット3に対して相対的に前方に移動するため、該ピボットブラケット3の突出部9とスライドプレート7との係合が外れ、ピボットブラケット3の回動を許容し突出部9がスライドプレート7の孔部8の後縁で前方へ押されることにより、前記シャフト4を支点として該ピボットブラケット3を後下方に回動させ、ペダルアーム6の踏み込み位置を車両前方側(Y)へ引き寄せるようにしてある。
【0025】
すなわち、ペダルアーム6のペダルシャフト5が車両後方へ移動することになるため、その分ペダルアーム6の踏み込み位置が前方に移動する(X→Y)ことになるわけである。
【0026】
また、ペダルブラケット2がダッシュアッパパネル下面部等の車体部材に対して通常位置にある通常の状態にあっては、前記ピボットブラケット3の一部と当接して、その下後方への回動を規制する規制部10を設けてある。
【0027】
具体的に本実施形態では、前記規制部10は、前記スライドプレート7をダッシュアッパパネルの下面に接合配置される車体側ブラケット13に締結固定するボルト14の下面部により構成してあり、前記ピボットブラケット3とスライドプレート7との係合が何らかの要因により万が一外れてしまった場合、図3,4に示すように、該規制部10と、ピボットブラケット3の底板部3Bとが当接し、ピボットブラケット3の回動を所定角度αに規制して、ペダルアーム6の踏み込み位置を規制位置(Z)に留まるようにしてある。
【0028】
また、特にこの実施形態にあっては、前記規制部10は、前記シャフト4よりも車両上方に設けてある。
【0029】
以上の実施形態の構造によれば、常態ではスライドプレート7によって、ピボットブラケット3の回動を規制してあるため、ペダルシャフト5を支点としてペダルアーム6を回動して、該ペダルアーム6に連結したプッシュロッド11を介して、通常のマスターバック作動を行わせることができる。
【0030】
一方、車両が前面衝突すると、ペダルブラケット2の上壁部2Bに長孔に形成したボルト孔の部分でペダルブラケット2がスライドプレート7に対して車両後方向に移動し、この相対動により、ピボットブラケット3とスライドプレート7との係合が外れ、ピボットブラケット3の回動を許容して、前記シャフト4を支点として該ピボットブラケット3を後下方に回動させ、ペダルアーム6の踏み込み位置を車両前方側へ引き寄せるようにしてあるから、図外のマスターバックが後退移動、もしくはダッシュロアパネル12が車室側へ変形して図外のマスターバックのプッシュロッド11が後退移動しても、ペダルアーム6の踏み込み位置が後方にずれて違和感を生じるのを回避することができる。
【0031】
また、通常の状態時に前記ピボットブラケット3とスライドプレート7との係合が何らかの要因により万が一外れてしまった場合でも、ピボットブラケット3がシャフト4周りに下後方に回動しようとしても、規制部10に前記ピボットブラケット3の一部である底板部3B当接して、その下後方への回動を規制位置(Z)に留まるようにしてあるため、ペダルアーム6の踏み込み位置の変化量が少なく、操作の違和感を少なくすることができる。
【0032】
特に本実施形態では、前記規制部10は、前記スライドプレート7と前記車体側ブラケット13の下面部とを固定する固定部材であるボルト14の下面部としてあるため、別途専用の部材を設定する必要がなくコスト的に有利に得ることができると共に、車両が前面衝突し、ペダルブラケット2に所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、前記規制部10がペダルブラケット2に対して相対的に前方へ移動するので、該規制部10とピボットブラケット3の干渉が回避され、ピボットブラケット3はその下後方へ回動することができる。
【0033】
また、前記ピボットブラケット3を、前記シャフト4よりも車両下方に底板部3Bを有する断面略コの字状に形成すると共に、前記規制部10を、前記シャフト4よりも車両上方に設けてあるため、車両が前面衝突し、ペダルブラケット2に所定荷重を越える後退方向の入力が作用した際、車体部材と共に前方へ相対移動する規制部10と前記シャフト4等との干渉を回避することができる。
【0034】
図5と共に本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、前述の第1実施形態とは規制部10の構成が異なっており、その他の部分に付いては前記第1実施形態と同様で、同一部分に同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
この第2実施形態では、スライドプレート7を、その後端部で、ダッシュアッパパネルの下面に接合配置された車体側ブラケット13の下面及び前記ペダルブラケット2の上壁部2Bの上面に、ボルト14およびナット15で車両上方から締結固定してある。即ち、前記上壁部2Bの下面にナット15が位置するようにしてある。
【0036】
そして、本実施形態では、規制部10は、ボルト14のねじ部14Aによって形成してある。
【0037】
従って、以上の第2実施形態の構造によれば、通常、ボルト14のねじ部14Aは締め込み時にはナット15よりも車両下方へ突出するので、ナット15の下面を規制部10とした第1実施形態に比べて、規制部10をより車両下方へ設定することができるので、ピボットブラケット3の回動を所定角度β(β>α)に規制して、回動規制時の踏み込み位置の変化をより少なくすることができる。
【0038】
なお、上記第1,第2実施形態では何れの場合も、ペダルブラケット2をダッシュアッパパネルの下面部に固定するようにした例を示したが、これに限らず、ダッシュロアパネル12の上後方に位置する、例えば車幅方向に延在するステアリングメンバなどの車体部材に固定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の常態を示す側方断面図。
【図2】同実施形態の衝突作動時を示す側方断面図。
【図3】同実施形態の回動規制時を示す側方断面図。
【図4】同実施形態の要部を示す側面図。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示す側面図。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル装置
2 ペダルブラケット
3 ピボットブラケット
3B 底板部(ピボットブラケットの一部)
4 シャフト
5 ペダルシャフト
6 ペダルアーム
7 スライドプレート
10 規制部
12 ダッシュロアパネル(ダッシュパネル)
14 ボルト(固定部材)
14A ねじ部
15 ナット(固定部材)

Claims (4)

  1. ダッシュパネルに固定したペダルブラケットと、該ペダルブラケットに設けたシャフトに回転可能に軸支されたピボットブラケットと、前記シャフトよりも車両前方で、該ピボットブラケットに設けたペダルシャフトに回動自在に軸支されたペダルアームと、前記ダッシュパネルの上後方の車体部材の下面部に固定されると共に、前記ペダルブラケットの後部に設けられ、常態にあっては、ピボットブラケットと係合し、ペダルブラケットに対して車両前後方向に相対移動可能なスライドプレートとを備えると共に、前記ペダルブラケットに所定荷重を越える後退方向の入力が作用すると、少なくとも前記ペダルブラケットとスライドプレートとの車両前後方向の相対移動を許容し、これらペダルブラケットとスライドプレートとの摺動抵抗により衝撃を吸収する衝突吸収手段を設けて、前記ペダルブラケットとスライドプレートとが車両前後方向に相対移動した際に前記ピボットブラケットとスライドプレートとの係合が外れて該ピボットブラケットを前記シャフト周りに下後方に回動させるようにした構造であって、
    前記ペダルブラケットが前記車体部材に対して通常位置にある場合にあっては、前記ピボットブラケットの一部と当接して、その下後方への回動を規制する規制部を前記車体部材側にピボットブラケットと近接してけたことを特徴とする自動車のブレーキペダル装置。
  2. 前記規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを固定する固定部材の前記ピボットブラケット後部に近接した下部であることを特徴とする請求項1に記載の自動車のブレーキペダル装置。
  3. 前記規制部は、前記スライドプレートと前記下面部とを車両上方から締結固定するボルトの前記ピボットブラケット後部に近接したねじ部であることを特徴とする請求項2に記載の自動車のブレーキペダル装置。
  4. 前記ピボットブラケットを、前記シャフトよりも車両下方に底部を有する断面略コの字状に形成すると共に、前記規制部を、前記シャフトよりも車両上方で前記底部の後縁部が当接可能な位置に設けたことを特徴とする請求項2〜3の何れか一項に記載の自動車のブレーキペダル装置。
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