JP3891785B2 - 放射性物質貯蔵容器の監視方法、および監視装置を備えた放射性物質貯蔵システム - Google Patents

放射性物質貯蔵容器の監視方法、および監視装置を備えた放射性物質貯蔵システム Download PDF

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  • Monitoring And Testing Of Nuclear Reactors (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、使用済燃料等の放射性物質を貯蔵した貯蔵容器の健全性を監視する貯蔵容器の監視方法、および監視装置を備えた放射性物質貯蔵システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉の使用済燃料に代表される高放射性物質は、解体処理されるとともに、プルトニウム等の再度燃料として使用可能な有用物質を回収するため、再処理される。そして、これらの使用済燃料は、再処理を行うまでの間、密閉された状態で貯蔵されている。このような高放射性物質の貯蔵方法としては、貯蔵プール等による湿式法、あるいは、キャスク等の貯蔵容器を用いた乾式法が知られている。
【0003】
水に代わり空気によって自然冷却を行う乾式型の貯蔵方法は、湿式法に比較して運転コストが低いことから注目を集め、開発が進められている。また、乾式法に用いる貯蔵容器には種々の構造のものがあるが、コンクリート構造物によって使用済燃料を遮蔽するコンクリートキャスクは、低コストであることから特に注目されている。コンクリートは、中性子遮蔽材として優れ、他の遮蔽材よりも安価であるとともに、構造体として必要な強度が得られる等の利点も備えている。
【0004】
一般に、このようなコンクリートキャスクは、上部および底部が閉塞された筒状のコンクリート容器を備え、使用済燃料が封入された筒状の金属密閉容器、いわゆるキャニスタ、をこのコンクリート容器内に収納配置することにより、使用済燃料からの放射性物質を遮蔽している。キャニスタは、上記金属製の容器本体と、この容器本体内に配置されたバスケットと、を有し、使用済燃料集合体は、バスケットによって支持された状態で複数体封入されている。
【0005】
また、キャニスタにおいて、容器本体は底面が閉塞した筒状に形成され、容器本体の上部開口は、遮蔽板、一次および2次蓋によって閉塞されている。これらの一次蓋および二次蓋は所定の隙間を置いて重ねて配置されているとともに、それぞれ周縁部が全周に亘って容器本体の内周面に溶接されている。それにより、キャニスタの密閉性を上げている。また、容器本体内、および一次蓋と二次蓋との間の空間はヘリウム等の気体が封入され、加圧された状態となっている。
【0006】
このように構成されたコンクリートキャスクでは、高放射性物質を長期間に亘って安全に、かつ、安定して保管する必要があり、長期間に亘って高い放射線遮蔽性能が要求される。
【0007】
一方、キャニスタに収納されている使用済燃料は発熱体であり、キャニスタが局部的に加熱されて制限温度を越えると、歪みやクラック等の発生を招く。また、一次蓋や二次蓋の溶接部に溶接欠陥がある場合、あるいは、溶接の弱い箇所が経時変化により溶接欠陥となった場合、その部分から放射線が漏洩し、キャニスタの健全性を担保することが困難となる。そこで、貯蔵期間中、キャニスタにおけるクラックや溶接欠陥の発生を監視し、放射線の漏洩等を事前に防止することが安全評価上、および安全保障上望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなキャニスタのクラックや溶接欠陥の発生を監視する方法として、例えば、キャニスタの一次蓋と二次蓋との間の空間の圧力を監視する方法が考えられる。すなわち、前述したように、一次蓋と二次蓋との間の空間は加圧され、ヘリウム等の気体が封入されている。そして、キャニスタにクラックや溶接欠陥等が発生し、上記空間内のヘリウムが漏洩した場合、上記空間内の圧力が変化する。そこで、この空間内の圧力を監視することにより、キャニスタにおけるクラックや溶接欠陥等の発生を監視することができる。
【0009】
キャニスタの一次蓋と二次蓋との間の空間における圧力を検出する方法としては、二次蓋に貫通孔を形成し、この貫通孔を通して上記空間内に挿入された圧力センサによって検出する方法が考えられる。しかしながら、このようにキャニスタの二次蓋に貫通孔を形成した場合、キャニスタの密閉性が低下する可能性があり、キャニスタ本来の機能を考慮すると、望ましくない。また、作業性および安全性を考慮した場合、キャニスタをコンクリート容器から取り出すことなく、コンクリート容器の外部からキャニスタの健全性を監視できることが望ましい。
【0010】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、貯蔵容器の健全性を容易に監視可能な放射性物質貯蔵容器の監視方法、および監視装置を備えた放射性物質貯蔵システムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明に係る放射性物質貯蔵容器の監視方法は、貯蔵容器の高さ方向、つまり、軸方向に沿った温度分布を貯蔵容器の外部から測定し、測定した温度分布の変化に基づいて貯蔵容器内の圧力低下を監視することを特徴としている。
【0012】
また、この発明に係る放射性物質貯蔵容器の監視方法は、貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を貯蔵容器の外部から測定し、測定した温度の変化に基づいて貯蔵容器内の圧力低下を監視することを特徴としている。
【0013】
すなわち、貯蔵容器が健全な場合、この貯蔵容器内にはヘリウム等のガスが所定の圧力で封入されている。このヘリウムは空気に比較して熱伝導率が高いため、貯蔵容器内における高さ方向の温度分布は、貯蔵容器の下部では低いが、中間部および上部ではほぼ均一な温度となる。ところが、貯蔵容器に溶接欠陥、クラック等が発生し貯蔵容器内の圧力が低下すると、つまり、貯蔵容器内のヘリウムが外部に漏洩すると、貯蔵容器内の熱伝導率が低下し、温度分布が変化する。具体的には、貯蔵容器内のヘリウムが減少すると、これに伴い、貯蔵容器の高さ方向上部の温度が低下し、高さ方向中間部の温度が上昇してくる。そこで、このような貯蔵容器の高さ方向に沿った温度分布の変化を監視することにより、充填ガスの漏洩の有無、つまり、貯蔵容器の健全性を監視することができる。
【0014】
また、上記のように、充填ガスの減少に伴い、貯蔵容器の各部位の温度が変化することから、貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度変化を監視することによっても、充填ガスの漏洩の有無、つまり、貯蔵容器の健全性を監視することができる。
【0015】
以上のことから、この発明に係る監視方法は、放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、コンクリート製貯蔵容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製貯蔵容器の健全性を監視する放射性物質貯蔵容器の監視方法において、上記容器本体の高さ方向に沿って離間した複数箇所の温度である前記容器本体の高さ方向に沿った温度分布を、上記金属製貯蔵容器の外側から測定し、上記測定された温度分布の変化に基づいて上記充填ガスの漏洩を監視することを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係る監視方法は、放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、コンクリート製貯蔵容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属性貯蔵容器の健全性を監視する放射性物質貯蔵容器の監視方法において、上記コンクリート製貯蔵容器内で上記金属製貯蔵容器の外側に設けられた温度測定器により、上記金属製貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を測定し、上記コンクリート製貯蔵容器の外側に設けられているとともに上記温度測定器に接続された検出器により、上記測定された温度の変化に基づいて上記充填ガスの漏洩を監視することを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係る監視方法によれば、上記貯蔵容器の外側で上記コンクリート容器内に設けられた温度検出器により、上記貯蔵容器の高さ方向に沿った温度分布、あるいは貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度、を測定することを特徴としている。
【0018】
一方、この発明に係る放射性物質貯蔵システムは、内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
上記監視装置は、上記コンクリート容器内で上記容器本体の外側に設けられ、上記容器本体の高さ方向に沿って離間した複数箇所の温度である前記容器本体の高さ方向に沿った温度分布を測定する温度測定器と、上記温度測定器によって測定された温度分布の変化を検出する検出器と、を備えていることを特徴としている。
【0019】
温度測定器としては、キャニスタの高さ方向に沿って複数配置された熱電対、あるいは、キャニスタの高さ方向に沿って配設された光ファイバー等を用いることができる。
【0020】
また、この発明に係る他の放射性物質貯蔵システムによれば、監視装置は、コンクリート容器内でキャニスタの外側に設けられ、上記キャニスタの内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を測定する温度測定器と、上記温度測定器によって測定された温度の変化を検出する検出器と、を備えていることを特徴としている。温度測定器としては、キャニスタの内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位に設けられた熱電対、あるいは、光ファイバー等を用いることができる。
【0021】
上記のように構成された放射性物質貯蔵容器の監視方法、および放射性物質貯蔵システムによれば、貯蔵容器の高さ方向に沿った温度分布、あるいは、内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を検出することにより、貯蔵容器の蓋に透孔等を設けることなく、かつ、貯蔵容器の外部から上記貯蔵容器内の圧力変化、つまり、充填ガスの漏洩を容易に検出し、貯蔵容器の健全性を監視することができる。従って、貯蔵容器における溶接欠陥あるいはクラック等の発生を早期に発見し、交換、修理等の適切な処置を施すことができ、放射線の漏洩等を事前に防止することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の第1の実施の形態に係る監視装置を備えた放射性物質貯蔵システム、および監視方法について詳細に説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、この放射性物質貯蔵システムにおいて、コンクリート製貯蔵容器として機能するコンクリートキャスク10は、コンクリートにより形成され遮蔽構造体として機能するコンクリート容器12を備え、このコンクリート容器内には、金属製の密閉貯蔵容器として機能するキャニスタ14が収納されている。キャニスタ14は、両端が閉塞した円筒形状に形成され、その内部には、バスケット16により支持された状態で、使用済燃料集合体18が複数体封入されている。これらの使用済燃料集合体18は、例えば、原子炉の使用済燃料であり、崩壊熱に伴う発熱と放射線の発生を伴う放射性物質を含んでいる。そして、キャニスタ14は、封入された放射性物質が外部に漏洩しないよう、溶接密閉構造を有している。
【0024】
コンクリートキャスク10のコンクート容器12は、底部の閉塞された円筒形状を有し、例えば、高さ約6m、直径約4m程度に形成され、また、コンクリートの壁厚は、約0.9m程度に形成されている。コンクート容器12の上端開口は、外面が炭素鋼板によって覆われたコンクリート製の蓋体20により閉塞されている。この蓋体20は、複数のボルト21によりコンクリート容器12の上端にボルト止めされている。なお、コンクート容器12のコンクリート壁内には、図示しない配筋が施されている。
【0025】
コンクリート容器12内には、コンクリート容器の内周面および蓋体20により、円柱形状の収納部22が規定されている。そして、この収納部22内にキャニスタ14が収納されている。キャニスタ14は、収納部22の底面に形成された複数のリブ31上に載置されているとともに、コンクート容器12と同軸的に配置されている。
【0026】
また、収納部22内に収納された状態において、キャニスタ14の外周面とコンクート容器12の内周面との間には、所定の隙間、例えば、10cm程度の隙間が形成されている。そして、この隙間により、冷却空気が流れる冷却空気流路24が形成されている。冷却空気流路24は、キャニスタ14の外周面の全周に亘って、かつ、外周面の軸方向全長に亘って形成されている。
【0027】
コンクート容器12の底部には複数、例えば4つの吸気口26が形成され、また、コンクート容器12の上端部には、同様に、4つの排気口28が形成され、それぞれ冷却空気流路24に連通している。4つの吸気口26は、容器本体12の円周方向に沿って互いに等間隔離間して設けられ、コンクート容器12の底部外周面に開口している。また、排気口28は、コンクート容器12の円周方向に沿って互いに等間隔離間して設けられ、コンクート容器12の上端部外周面に開口している。
【0028】
これらの吸気口26、排気口28、および冷却空気流路24は、空気の自然循環冷却によりコンクリートキャスク10を除熱する除熱部を構成している。すなわち、吸気口26からコンクート容器12内に導入された冷却空気としての外気は、冷却空気流路24を通ってキャニスタ14の周囲を流れ、その間、キャニスタ14およびコンクート容器12を除熱し冷却する。そして、キャニスタ14からの熱によって加熱され昇温した冷却空気は、排気口28からコンクート容器12の外部に排出される。
【0029】
一方、コンクート容器12の内周面には、炭素鋼等の金属からなる円筒状のライナ30が設けられている。金属からなるライナ30は、コンクリートに比較して伝熱性が高く、使用済燃料集合体18から発生した熱の伝熱を促進するとともに、使用済燃料集合体18からの放射線、主としてγ線、を遮蔽する機能を有している。
【0030】
次に、キャニスタ14の構成について詳細に説明する。
図2および図3に示すように、キャニスタ14は、下端が閉塞されているとともに上端開口を有したほぼ円筒状の容器本体15を備えている。容器本体15は、例えばステンレス等の非磁性金属によって形成されている。そして、容器本体15内には、バスケット16により支持された状態で、使用済燃料集合体18が複数体封入されている。
【0031】
容器本体15の上端部内周面には環状の支持部材42が固定され、この支持部材上には、円盤状の遮蔽体44が載置され容器本体の上端開口を閉塞している。また、容器本体15の上端部内には、遮蔽体44に重ねて円盤状の一次蓋48が装着され、容器本体の上端開口を閉塞している。一次蓋48の上端側の周縁部は、全周に亘って容器本体15の内周面に溶接されている。遮蔽体44および一次蓋48には、容器本体15内の排気および排水に利用する流路50が形成され、この流路は一次蓋48に固定された栓体51によって封止されている。
【0032】
更に、容器本体15の上端部内には、一次蓋48に重ねて円盤状の二次蓋52が装着されている。二次蓋52の上端側の周縁部は容器本体40の内周面に溶接され、それにより、二次蓋52は容器本体40の上端開口を閉塞し、一次蓋48の外側に位置している。
【0033】
このように、容器本体15の上端開口は、遮蔽体44、一次蓋48、および二次蓋52によって気密に閉塞されている。これら遮蔽体44、一次蓋48、および二次蓋52は、例えばステンレス等の金属によって形成されている。
【0034】
また、一次蓋48と二次蓋52との間には密閉空間55が形成され、この密閉空間55には、加圧ガスとして、空気よりも熱伝導率の高いガス、例えば、ヘリウム(He)が封入されている。それにより、密閉空間55は約5気圧程度に加圧されている。同様に、容器本体15内には、ヘリウムが封入され約3気圧程度に加圧されている。
【0035】
次に、上記のように構成されたコンクリートキャスク10に収納されているキャニスタ14の健全性を監視する監視装置について説明する。
放射性物質貯蔵システムの一部を構成する監視装置60は、キャニスタ14の高さ方向に沿った温度分布を測定する温度測定器を備え、温度測定器によって測定された温度分布の変化を検出することにより、容器本体15内のヘリウムの漏洩の有無、すなわち、キャニスタの健全性を監視する。
【0036】
詳細に述べると、図2に示すように、監視装置60は、温度測定器として、コンクリート容器12内でキャニスタ14の容器本体15の外周面に設けられた複数の熱電対62を備えている。これらの熱電対62は、容器本体15の高さ方向、つまり、軸方向、に沿って互いに離間した複数箇所、例えば、容器本体15の上部、中間部、および下部を含む8箇所にそれぞれ設けられている。そして、これらの熱電対62は、コンクリート容器12の外部に配設された検出器64に電気的に接続されている。
【0037】
なお、監視装置60の温度測定器は、キャニスタ14上部の温度を測定する熱電対として、上記複数の熱電対62に加え、キャニスタ14の蓋部、例えば、二次蓋52の外面中央部の温度を測定する熱電対を含んでいてもよい。
【0038】
上記構成のコンクリートキャスク10によれば、キャニスタ14の貯蔵期間中、監視装置60によってキャニスタ14の健全性を監視する。すなわち、監視装置60は、複数の熱電対62により容器本体15の高さ方向に沿った各位置での温度を測定する。そして、検出器64は、熱電対62によって測定された各温度から、容器本体15の高さ方向に沿った温度分布を検出する。
【0039】
ここで、容器本体15の高さ方向に沿った温度分布は、この容器本体内におけるヘリウムの充填量に応じて変化する。すなわち、キャニスタ14が健全な場合、容器本体15内はヘリウムで満たされ所定圧力に維持されている。そして、ヘリウムは空気に比較して熱伝導率が高いため、使用済燃料集合体18から生じた熱は容器本体15内で効率よく対流する。従って、容器本体15内における高さ方向の温度分布は、図4に曲線Aで示すように、容器本体の下部では低いが、中間部および上部ではほぼ均一な温度となる。
【0040】
ところが、キャニスタ14に溶接欠陥、クラック等が発生し容器本体15内の圧力が低下すると、つまり、容器本体内のヘリウムが外部に漏洩すると、容器本体内部の熱伝導率が低下し、容器本体の高さ方向に沿った温度分布が変化する。例えば、図4における曲線Bは、容器本体15のヘリウムが漏洩し容器本体内の圧力が2気圧に低下した際の温度分布、また、曲線Cは、容器本体15のヘリウムが漏洩し容器本体内の圧力が1気圧に低下した際の温度分布をそれぞれ示すもので、容器本体15内のヘリウムの低減に伴い、容器本体上部の温度が低下し、高さ方向中間部の温度が上昇してくる。
【0041】
従って、熱電対62によって測定した温度に基づき、検出器64によって容器本体15の高さ方向に沿った温度分布の変化を監視することにより、ヘリウムの漏洩の有無、つまり、キャニスタ14の健全性を監視することができる。
【0042】
以上のように構成された第1の実施の形態によれば、キャニスタ14の高さ方向に沿った温度分布の変化を検出することにより、コンクリートキャスク10の外部からキャニスタ14の健全性を容易に監視可能な監視方法、および放射性物質貯蔵システムを得ることができる。
【0043】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る放射性物質貯蔵システムの監視装置および監視方法について説明する。
図5に示すように、第2の実施の形態によれば、監視装置60は、温度測定器として光ファイバ66を備え、この光ファイバ66は、コンクリート容器12内でキャニスタ14の容器本体15の外周面に接触して設けられ、容器本体15の高さ方向に沿って、かつ、ほぼ全長に亘って延びている。そして、光ファイバ66は、排気口28を通ってコンクリート容器12の外部に引き出されている。
【0044】
また、監視装置60は、光ファイバ66の入射端に接続され、レーザ光源70から出射されたパルス状のレーザ光を光ファイバに入射する光方向性結合器68と、光方向性結合器68に接続された波長分析器(SCA)72と、を有している。波長分析器72は、光ファイバ66中で発生し光ファイバの入射端から出射された後方散乱光を、光方向性結合器68を介して受け、この後方散乱光の検出および分析を行う。また、波長分析器72には、データ処理装置74、および検出結果を表示するモニタ76が接続されている。なお、波長分析器72およびデータ処理装置74は、この発明における検出器を構成している。
【0045】
光ファイバ34としては、耐放射線性に優れた純石英コアファイバ、フッ素ドープド石英コアファイバ等が用いられている。
【0046】
上記のように構成された監視装置60によってキャニスタ14の健全性を監視する場合、監視装置60は、レーザ光源70からパルス状のレーザ光を光方向性結合器68を通して光ファイバ66に入射する。そして、光ファイバ66に入射したレーザ光は、容器本体15の外周面に沿って光ファイバ内を伝搬する。その際、光ファイバ66中で生じた後方散乱光は、光ファイバの入射端から出射し、光方向性結合器68を介して波長分析器72に送られる。
【0047】
波長分析器72は、入力された後方散乱光を検出および分析し、容器本体15の高さ方向に沿った温度分布を測定する。すなわち、光ファイバ66を通るレーザ光には、容器本体15の各部位の温度に応じて特有の後方散乱光が発生し、波長分析器72はこの後方散乱光の強度および波長シフト量を測定する。そして、データ処理装置74は、波長分析器72で測定された後方散乱光の強度、波長シフト量から各部位の温度を検出する。同時に、後方散乱光の時間展開から、温度の各測定位置を特定することができる。
【0048】
なお、監視装置60による測定精度は、温度±0.1℃、位置精度10〜30cm程度が得られる。
【0049】
以上のように、監視装置60によって容器本体15の高さ方向に沿った温度分布を測定し、この温度分布の変化を監視することにより、容器本体15内におけるヘリウムの漏洩の有無、つまり、キャニスタ14の健全性を監視することができる。
【0050】
従って、上記構成を有する第2の実施の形態においても、キャニスタ14の高さ方向に沿った温度分布の変化を検出することにより、コンクリートキャスク10の外部からキャニスタ14の健全性を容易に監視可能な監視方法、および放射性物質貯蔵システムを得ることができる。
【0051】
なお、第2の実施の形態において、監視装置60として、ファイバ−ブラッグ−グレーティング(FBG)法に基づく監視装置が用いることもできる。この監視装置60によれば、光ファイバ66は、容器本体15の高さ方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の回折格子を有して構成される。この場合、レーザ光源70から光方向性結合器68を介して光ファイバ66に入射したパルス状レーザ光の内、ブラッグの反射条件に合った波長の光のみが回折格子により反射され、その反射光の波長シフト量は波長分析器72によって測定される。そして、測定された波長シフト量をデータ処理装置76によって演算処理することにより、容器本体15の高さ方向に沿った複数位置での温度を検出することができる。なお、監視装置60による測定精度は、温度±0.1℃、位置精度10〜30cm程度が得られる。
【0052】
上記のような監視装置60を用いた場合でも、上述した第2の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
上述した第1および第2の実施の形態では、キャニスタの高さ方向に沿った温度分布の変化を検出する構成としたが、下記のようなキャニスタの任意の箇所の温度変化を検出してキャニスタの健全性を監視する構成としても良い。
【0054】
すなわち、図4に曲線A、B、Cで示したように、キャニスタ内の圧力変化に応じて、キャニスタの各部の温度が変化する。例えば、キャニスタ上部の温度は約150℃から110℃の範囲で変化し、また、キャニスタ中間部の温度は約150℃から約170℃の範囲で変化する。そこで、そのようなキャニスタ14の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい任意の部位の温度変化を検出することにより、ヘリウムの漏洩に伴うキャニスタ内の圧力変化を検出し、キャニスタの健全性を監視することができる。
【0055】
図6に示す第3の実施の形態によれば、監視装置60は、温度測定器として機能する熱電対62を備え、この熱電対は、キャニスタ14の蓋部、例えば、二次蓋52の外面中央部に設けられている。そして、この熱電対62は、コンクリート容器12の外部に配設された検出器64に電気的に接続されている。他の構成は、前述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
上記第3の実施の形態によれば、キャニスタ14の貯蔵期間中、監視装置60は、熱電対62によりキャニスタ蓋部の温度を測定する。そして、熱電対62によって測定した温度に基づき、検出器64によってキャニスタ14上部の温度変化を検出することにより、ヘリウムの漏洩の有無、つまり、キャニスタ14の健全性を監視することができる。
【0057】
なお、第3の実施の形態において、温度を測定する部位は、キャニスタ14の蓋部に限らず、容器本体15の上端部、中間部、あるいは他の部位としても良い。但し、測定部位は、キャニスタ内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位を選択する。
【0058】
また、第3の実施の形態において、監視装置60は、熱電対と検出器との組合わせに限らず、第2の実施の形態と同様に、光ファイバ、レーザ光源、光方向性結合器、データ処理装置等を備えた監視装置、あるいは、ファイバーブラッグブレーティング法に基づく監視装置を用いてもよい。
【0059】
その他、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、密閉容器の形状、材質等は上述した実施の形態に限定されることなく、必要に応じて種々選択可能である。また、キャニスタの容器本体内に充填するガスは、空気よりも熱伝導率の高いガスであればよく、ヘリウムの他、窒素等を用いることができ、かつ、その圧力も任意に設定可能である。更に、キャニスタの高さ方向に沿った温度測定点は、必要に応じて増減可能である。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、貯蔵容器の高さ方向に沿った温度分布を貯蔵容器の外側から測定し、測定された温度分布の変化に基づいて充填ガスの漏洩を監視することにより、貯蔵容器の健全性を容易に監視可能な監視方法、および放射性物質貯蔵システムを提供することができる。
【0061】
また、この発明によれば、貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を貯蔵容器の外側から測定し、測定された温度変化に基づいて充填ガスの漏洩を監視することにより、貯蔵容器の健全性を容易に監視可能な監視方法、および放射性物質貯蔵システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る放射性物質貯蔵システムのコンクリートキャスクを一部破断して示す斜視図。
【図2】上記コンクリートキャスクの縦断面図。
【図3】上記コンクリートキャスクに収納されたキャニスタを一部破断して示す側面図。
【図4】上記キャニスタ内の圧力低下に伴う、上記キャニスタの高さ方向に沿った温度分布の変化を示すグラフ。
【図5】この発明の第2の実施の形態に係る放射性物質貯蔵システムを概略的に示す断面図。
【図6】この発明の第3の実施の形態に係る放射性物質貯蔵システムを概略的に示す断面図。
【符号の説明】
10…コンクリートキャクス
12…コンクリート容器
14…キャニスタ
15…容器本体
18…使用済燃料集合体
20…蓋体
22…収納部
48…一次蓋
52…二次蓋
55…密閉空間
60…監視装置
62…熱電対
64…検出器
66…光ファイバ
68…光方向性結合器
70…光源
72…波長分析器
74…データ処理装置

Claims (11)

  1. 放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、コンクリート製貯蔵容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製貯蔵容器の健全性を監視する放射性物質貯蔵容器の監視方法において、
    上記容器本体の高さ方向に沿って離間した複数箇所の温度である前記容器本体の高さ方向に沿った温度分布を、上記金属製貯蔵容器の外側から測定し、
    上記測定された温度分布の変化に基づいて上記充填ガスの漏洩を監視することを特徴とする放射性物質貯蔵容器の監視方法。
  2. 上記コンクリート製貯蔵容器内で上記金属製貯蔵容器の外側に設けられた温度測定器により、上記容器本体の高さ方向に沿った温度分布を測定することを特徴とする請求項1に記載の放射性物質貯蔵容器の監視方法。
  3. 内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、
    放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、
    上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
    上記監視装置は、
    上記コンクリート容器内で上記容器本体の外側に設けられ、上記容器本体の高さ方向に沿って離間した複数箇所の温度である前記容器本体の高さ方向に沿った温度分布を測定する温度測定器と、
    上記温度測定器によって測定された温度分布の変化を検出する検出器と、
    を備えていることを特徴とする放射性物質貯蔵システム。
  4. 上記温度測定器は、上記容器本体の高さ方向に沿って、少なくとも上記容器本体外周面の上部、中間部、および下部を含む複数の位置に配設された複数の熱電対を備えていることを特徴とする請求項3に記載の放射性物質貯蔵システム。
  5. 内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、
    放射性物質が収納された容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、
    上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
    上記監視装置は、
    上記コンクリート容器内で上記キャニスタの外側に設けられ、上記キャニスタの高さ方向に沿った温度分布を測定する温度測定器と、
    上記温度測定器によって測定された温度分布の変化を検出する検出器と、
    を備え、
    上記温度測定器は、上記キャニスタの外面に接触して設けられ上記キャニスタの高さ方向に沿って延びた光ファイバと、上記コンクリート容器の外部に配設され上記光ファイバにレーザ光を入射するレーザ光源と、を備え、
    上記検出器は、上記光ファイバ中で発生し上記光ファイバから出射された散乱光の強度および波長シフト量を測定する波長分析器と、測定した散乱光の強度および波長シフト量から温度を検出するとともに、測定した散乱光の時間展開から上記温度の測定位置を検出するデータ処理装置と、を備えている放射性物質貯蔵システム。
  6. 内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、
    放射性物質が収納された容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、
    上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
    上記監視装置は、
    上記コンクリート容器内で上記キャニスタの外側に設けられ、上記キャニスタの高さ方向に沿った温度分布を測定する温度測定器と、
    上記温度測定器によって測定された温度分布の変化を検出する検出器と、
    を備え、
    上記温度測定器は、上記キャニスタの外面に接触して設けられ上記キャニスタの高さ方向に沿って延びた光ファイバと、上記コンクリート容器の外部に配設され上記光ファイバにレーザ光を入射するレーザ光源と、を備え、
    上記光ファイバは上記キャニスタの高さ方向に離間した複数の位置に設けられた回折格子を有し、
    上記検出器は、上記回折格子で反射されたレーザ光の反射光を検出し上記反射光の波長シフト量を測定する波長分析器と、測定した上記波長シフト量から上記回折格子の位置における上記キャニスタの温度を検出するデータ処理装置と、を備えている放射性物質貯蔵システム。
  7. 放射性物質が収納された筒状の容器本体と、この容器本体の上端開口を閉塞した蓋と、を有し、コンクリート製貯蔵容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製貯蔵容器の健全性を監視する放射性物質貯蔵容器の監視方法において、
    上記コンクリート製貯蔵容器内で上記金属製貯蔵容器の外側に設けられた温度測定器により、上記金属製貯蔵容器の内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を測定し、
    上記コンクリート製貯蔵容器の外側に設けられているとともに上記温度測定器に接続された検出器により、上記測定された温度の変化に基づいて上記充填ガスの漏洩を監視することを特徴とする放射性物質貯蔵容器の監視方法。
  8. 上記金属製貯蔵容器の蓋部の温度を測定することを特徴とする請求項7に記載の放射性物質貯蔵容器の監視方法。
  9. 内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、
    放射性物質が収納された容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋部と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、
    上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
    上記監視装置は、
    上記コンクリート容器内で上記キャニスタの外側に設けられ、上記キャニスタの内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を測定する温度測定器と、
    上記コンクリート容器の外側に設けられているとともに上記温度測定器に接続され、上記温度測定器によって測定された温度の変化を検出する検出器と、
    を備えていることを特徴とする放射性物質貯蔵システム。
  10. 上記温度測定器は、上記キャニスタの内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位に接触して設けられた熱電対を備えていることを特徴とする請求項9に記載の放射性物質貯蔵システム。
  11. 内部に収納部を有したコンクリート容器と、上記コンクリート容器の上端開口を閉塞したコンクリート製の蓋体と、を備えたコンクリート製貯蔵容器と、
    放射性物質が収納された容器本体と、この容器本体に溶接され容器本体の上端開口を閉塞した蓋部と、を有し、上記コンクリート容器の収納部内に収納されているとともに、上記容器本体内に空気よりも熱伝導率が高く加圧されたガスが充填された金属製のキャニスタと、
    上記キャニスタの健全性を監視する監視装置と、を備え、
    上記監視装置は、
    上記コンクリート容器内で上記キャニスタの外側に設けられ、上記キャニスタの内部の圧力変化に応じた温度変化の大きい部位の温度を測定する温度測定器と、
    上記コンクリート容器の外側に設けられているとともに上記温度測定器に接続され、上記温度測定器によって測定された温度の変化を検出する検出器と、
    を備え、
    上記温度測定器は、上記キャニスタの外面に接触して設けられた光ファイバと、上記コンクリート容器の外部に配設され上記光ファイバにレーザ光を入射するレーザ光源と、を備え、
    上記検出器は、上記光ファイバ中で発生し上記光ファイバから出射された散乱光の強度および波長シフト量を測定する波長分析器と、測定した散乱光の強度および波長シフト量から温度を検出するとともに、測定した散乱光の時間展開から上記温度の測定位置を検出するデータ処理装置と、を備えている放射性物質貯蔵システム。
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