JP3891733B2 - 舵取機の油圧制御装置およびこの油圧制御装置を有する船舶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、舵板を駆動する油圧式の舵取機に係り、特に舵板の舵角に応じてアクチュエータに加わる油圧を制御する油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶の舵板を駆動する油圧式の舵取機は、アクチュエータとしての油圧シリンダと、この油圧シリンダのラムの往復直線運動を回転運動に変換する舵柄とを備えており、この舵柄に舵板の舵軸が結合されている。油圧シリンダは、油圧回路を通じてポンプに接続されており、このポンプから油圧シリンダに供給される油圧により舵取機の出力トルクが変化するようになっている。
【0003】
ところで、航行中の舵取り動作に伴って舵板の舵角が大きくなると、水流に対する舵板の受圧面積が増大するので、舵板に生じる舵トルク(負荷トルク)は、舵角が0°の時よりも大きくなる。図8は、舵板の舵角と舵トルクとの関係を示すもので、この図中特性曲線Aは、通常の一枚の舵板を舵角0°から最大舵角である45°まで変化させた時の舵トルクの推移を示している。この図8から明らかなように、通常の舵板では、舵トルクが舵角に比例して大きくなり、最大舵角において舵トルクが最も大きくなるようなトルク特性を有している。
【0004】
このことから、従来の舵取機は、舵板が最大舵角に達した時にこの舵板から受ける舵トルクの大きさに基づいて設計を行い、舵板を動かすに必要な出力トルクを定めている。図9は、舵取機の出力トルクと舵角との関係を示すもので、特性曲線X、Y、Zは従来の三種類の舵取機の出力トルクを表わしている。これら舵取機の出力トルクは、上記特性曲線Aで示す舵トルクに略比例するように舵角が大きくなるに従い増大し、舵角が0°から35°又は45°までの全ての動作領域において舵トルクを上回るように設定されている。
【0005】
そして、符号Xで示すトルク特性の舵取機と符号Yで示すトルク特性の舵取機は、互いに同一の型式のものであり、符号Yのトルク特性の舵取機では、舵角が0°から35°までの動作領域での出力トルクを大きくするため、舵角が35度の時に最大出力トルクを得られるような設定となっている。
【0006】
また、従来の舵取機の油圧回路には、過大な舵トルクから舵取機を保護するための安全弁が設置されている。この安全弁は、油圧シリンダを含む油圧系統の油圧が許容圧力を上回った時に作動され、上記油圧系統の油圧を低圧ラインに逃すようになっている。このため、安全弁が作動するような状況では、舵板の舵取り動作ができなくなり、舵取機の破損が防止される。
【0007】
一方、いわゆるフラップラダーやベッカラダーと称する特殊な舵板は、舵軸に連なる舵本体の後端部にフラップが取り付けられている。この種の舵板では、図8や図9に特性曲線Bで示すように、舵角が15°付近の時に舵トルクが最大となり、それ以降、舵トルクは舵角が増すに従い低下する傾向にある。
【0008】
このような特殊な舵板を、図9に符号Xで示すトルク特性の舵取機で駆動する場合、この舵取機の最大出力トルクは最大舵トルクよりも大きいものの、逆に舵角15°付近での出力トルクが舵トルクよりも小さくなっている。そのため、舵板の舵角が15°付近に達した時点で、舵取機が舵板から過大トルクを受けた時と同じ状態に陥り、それ故、舵トルクが出力トルクを上回る中間舵角の領域Rにおいて安全弁が作動し、舵板の舵取り操作が不可能となる。
【0009】
したがって、最大舵角に達する以前に舵トルクが最大となるような特殊な舵板では、図9に符号YあるいはZで示すような出力トルクが得られる舵取機を選択する必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、符号Yで示すトルク特性の舵取機は、最大舵角が35°に設定され、その時の舵トルクに基づいて出力トルクが決められているので、舵板の舵角が35°を上回ると、舵取機の油圧シリンダのような構成要素に過大な負荷が加わる恐れがあり得る。そのため、舵取機の強度が不足し、最大舵角が45°に達する舵板の駆動用としては不適切なものとなる。
【0011】
これに対し、符号Zで示すトルク特性の舵取機は、最大舵角45°の時の舵トルクに基づいて出力トルクが設定されているので、舵板の舵角が0°から45°までの全動作領域において舵トルクを上回る出力トルクを発揮し得るようになっている。そのため、最大舵角が45°で、しかも舵角が15°付近で舵トルクが最大となる特殊な舵板の駆動用として適している。
【0012】
しかしながら、この符号Zのトルク特性を有する舵取機は、符号X・Yのトルク特性の舵取機よりも大きな出力トルクを発生するため、型式が一つ又は二つ上のランクとなり、その分、舵取機の価格が高くなるとともに、舵取機自体が重く大きなものとなる。
【0013】
そのため、舵角が最大舵角に達する以前に舵トルクが最大となる舵板では、止む無く大型で高価な舵取機を選択しなくてはならず、この点においていま一歩改善の余地が残されている。
【0014】
本発明は、このような事情にもとづいてなされたもので、舵角が最大舵角に達する以前に舵トルクが最大となる舵板用として、舵板の舵角に応じて出力トルクを段階的に設定することができ、舵板の最大舵角付近での強度を充分に確保できるとともに、舵取機の小型・軽量化やコストの低減が可能となる油圧制御装置およびこの油圧制御装置を有する船舶の提供を目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る舵取機の油圧制御装置は、最大舵角に達する以前の中間舵角の時に舵トルクが最大となり、それ以降は舵角が増すに従い低下する舵板の最大舵トルクよりも大きな出力トルクで上記舵板を舵取り動作させ、上記舵板の舵角が大きくなるに従い出力トルクが増大するとともに、上記舵板が最大舵角に達する以前に出力トルクが最大となるトルク特性を有する油圧式のアクチュエータと;このアクチュエータに油圧回路を通じて接続された油圧発生源と;を備えている。
そして、上記油圧回路に、上記アクチュエータの出力トルクが最大となるまでの動作領域において上記油圧回路の油圧が許容圧力を上回った時に作動され、上記アクチュエータに加わる油圧を制限する第1の圧力制御手段を設けるとともに、上記舵板が上記アクチュエータの最大出力トルクを超える舵角にまで動作された時に上記第1の圧力制御手段よりも低い設定圧で作動され、上記アクチュエータの出力トルクを低下させる第2の圧力制御手段を設けたことを特徴としている。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る船舶は、船体の後部に舵取り可能に支持され、最大舵角に達する以前の中間舵角の時に舵トルクが最大となり、それ以降は舵角が増すに従い低下する舵板と;この舵板の最大舵トルクよりも大きな出力トルクで上記舵板を舵取り動作させ、上記舵板の舵角が大きくなるに従い出力トルクが増大するとともに、上記舵板が最大舵角に達する以前に出力トルクが最大となるトルク特性を有する油圧式のアクチュエータを含む舵取機と;を備えている。
そして、この舵取機は、上記アクチュエータの出力トルクが最大となるまでの動作領域において上記油圧回路の油圧が許容圧力を上回った時に作動され、上記アクチュエータに加わる油圧を制限する第1の圧力制御手段と;上記舵板が上記アクチュエータの最大出力トルクを超える舵角に動作された時に上記第1の圧力制御手段よりも低い設定圧で作動され、上記アクチュエータの出力トルクを低下させる第2の圧力制御手段と;を備えていることを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を、貨物船のような大型船舶に適用した図面にもとづいて説明する。
【0018】
図2は、大型船舶の船尾部分を示しており、符号1で示す船体の後部には、推進用のプロペラ2と舵板3とが設置されている。舵板3は、上下方向に延びる舵軸4に連結され、この舵軸4を中心に中立位置から左右方向に夫々0°〜45°の範囲に亘って回動されるようになっている。そのため、舵板3の最大舵角は45°に設定されている。
【0019】
舵板3は、いわゆるフラップラダーあるいはベッカーラダーと称する特殊なものであり、舵軸4に連なる舵本体3aと、この舵本体3aの後端部に左右方向に回動可能に支持されたフラップ3bとを有している。この種の舵板3は、図3に示すように、例えば舵本体3aが前後方向に延びる基準線Sに対しα°回動されると、フラップ3bがα°の二倍のβ°回動されるといった相関関係を有している。そして、この舵板3は、図7に特性曲線Cで示すように、舵本体3aの舵角が15°付近に達した時に舵トルクが最大となり、それ以降、舵トルクは舵角が増すに従い低下するような特性を有している。
【0020】
舵板3の回動中心となる舵軸4は、舵取機5に連結されている。舵取機5は、船体1の後部の機関室に据え付けられている。舵取機5は、油圧式の駆動ユニット6と、この駆動ユニット6を制御する油圧制御装置7とを備えている。
【0021】
図1および図4に示すように、駆動ユニット6は、アクチュエータとしての第1ないし第4の油圧シリンダ10a〜10dを有している。第1の油圧シリンダ10aと第2の油圧シリンダ10bおよび第3の油圧シリンダ10cと第4の油圧シリンダ10dとは、夫々同軸状に並べて水平に配置されている。
【0022】
第1の油圧シリンダ10aと第2の油圧シリンダ10bとの間には、棒状をなす第1のラム11が軸方向に直線的に往復動可能に架け渡されている。第1のラム11の一端部は、第1の油圧シリンダ10aに摺動可能に嵌合されて、この第1の油圧シリンダ10aの内部に第1の油圧室12aを構成している。第1のラム11の他端部は、第2の油圧シリンダ10bに摺動可能に嵌合されて、この第2の油圧シリンダ10bの内部に第2の油圧室12bを構成している。
【0023】
第3の油圧シリンダ10cと第4の油圧シリンダ10dとの間には、棒状をなす第2のラム13が軸方向に直線的に往復動可能に架け渡されている。第2のラム13の一端部は、第3の油圧シリンダ10cに摺動可能に嵌合されて、この第3の油圧シリンダ10cの内部に第3の油圧室12cを構成している。第2のラム13の他端部は、第4の油圧シリンダ10dに摺動可能に嵌合されて、この第4の油圧シリンダ10dの内部に第4の油圧室12dを構成している。
【0024】
第1のラム11および第2のラム13は、互いに平行をなして水平に配置されており、これらラム11,13の中間部の間に舵軸4の上端部が導かれている。この舵軸4の上端部は、舵柄14を介して第1および第2のラム11,13の中間部に連結されている。
【0025】
舵柄14は、円筒状のボス部15と、このボス部15に連なる一対のフォーク部16a,16bとを有している。ボス部15は、舵軸4の上端部に結合されて、この舵軸4と一体に回動するようになっている。フォーク部16a,16bは、ボス部15の外周面から径方向外側に互いに逆向きに張り出しており、これらフォーク部16a,16bの先端部は、上記第1および第2のラム11,13の中間部を上下方向から挟み込んでいる。そして、第1および第2のラム11,13の中間部には、夫々ラム11,13を貫通するラムピン17が取り付けられており、各ラムピン17の先端部がフォーク部16a,16bの先端部に回動可能に引っ掛かっている。
【0026】
そのため、第1ないし第4の油圧シリンダ10a〜10dを介して第1および第2のラム11,13が互いに逆向きに直線的に駆動されると、これらラム11,13の直線運動がラムピン17および舵柄14を介して回転運動に変換され、これにより舵軸4が軸回り方向に回動されるようになっている。
【0027】
図1に示すように、油圧制御装置7は、第1ないし第4の油圧シリンダ10a〜10dの油圧を制御するための第1および第2の油圧制御ユニット20,21を備えている。第1および第2の油圧制御ユニット20,21は、通常の使用時において共に動作されるようになっており、非常時にいずれかの油圧制御ユニット20,21が選択的に動作される。そして、これら第1および第2の油圧制御ユニット20,21は互いに同一の構成を有するため、第1の油圧制御ユニット20を代表して説明し、第2の油圧制御ユニット21については同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
第1の油圧制御ユニット20は、圧力発生源としてのポンプユニット24を有している。ポンプユニット24は、可変容量形のメインポンプ24aと補助ポンプ24bとを有し、これらポンプ24a,24bは、モータ23からの動力伝達により互いに連動して駆動される。
【0029】
メインポンプ24aは、二つの出口を有し、この出口に第1の油圧回路25および第2の油圧回路26が夫々接続されている。第1の油圧回路25は、第1の油圧シリンダ10aの第1の油圧室12aに接続されており、第2の油圧回路26は、第2の油圧シリンダ10bの第2の油圧室12bに接続されている。
【0030】
また、第2の油圧制御ユニット21においては、その第1の油圧回路25が第4の油圧シリンダ10dの第4の油圧室12dに接続されているとともに、第2の油圧回路26が第3の油圧シリンダ10cの第3の油圧室12cに接続されている。第1の油圧制御ユニット20の第1の油圧回路25と、第2の油圧制御ユニット21の第1の油圧回路25とは、第1の中継回路27を介して接続されている。同様に第1の油圧制御ユニット20の第2の油圧回路26と、第2の油圧制御ユニット21の第2の油圧回路26とは、第2の中継回路28を介して接続されている。そのため、第1および第2の油圧制御ユニット20,21の第1の油圧回路25は、夫々第1の油圧室12aと第4の油圧室12dの双方に連なるとともに、第2の油圧回路26は、夫々第2の油圧室12bと第3の油圧室12cの双方に連なっている。
【0031】
第1および第2の油圧回路25,26の途中には、4ポート2位置形の切換弁30が設置されている。切換弁30の操作部30aは、パイロット通路31を介して補助ポンプ24bの出口に連なっている。そのため、切換弁30は、補助ポンプ24bから油が供給された時に、この油圧をパイロット圧として開作動されるようになっている。
【0032】
ところで、図1は、舵板3を面舵操作する際の油の流れ方向を示しており、補助ポンプ24bからの油の供給により切換弁30が開かれると、メインポンプ24aで加圧された油が第1の油圧回路25を介して第1の油圧シリンダ10aの第1の油圧室12aに供給される。また、この油は、第1の油圧回路25から第1の中継回路27を介して第4の油圧シリンダ10dの第4の油圧室12dに供給される。
【0033】
これにより、第1および第4の油圧室12a,12dの油圧が増大するので、第1および第2のラム11,13が互いに逆向きに直線的に押圧され、これらラム11,13が第2の油圧シリンダ10bの第2の油圧室12bおよび第3の油圧シリンダ10cの第3の油圧室12cに押し込まれる。第2および第3の油圧室12b,12cから押し出された油は、第2の油圧回路26および第2の中継回路28を介してメインポンプ24aに戻される。
【0034】
ラム11,13の直線運動は、舵柄14により回動運動に変換されて舵軸4に伝えられ、舵板3が図1の矢印方向に所定の出力トルクで回動される。この結果、舵板3は、船体1の舳先が右を向くように面舵操作されることになる。
【0035】
このような舵取機5の駆動ユニット6は、舵板3の舵角が35°に達した時の舵トルクの大きさに基づいて出力トルクを設定している。すなわち、本実施形態の駆動ユニット6は、図7に符号Tで示すように、舵板3の舵角が0°から35°までの動作領域において上記舵トルクCよりも大きな出力トルクを発生するようになっている。そして、この駆動ユニット6の出力トルクTは、舵角が大きくなるに従い増大するとともに、舵板3の舵角35°の時に最も大きくなるように設定されている。
【0036】
舵柄14の近傍には、そのボス部15の回動角度から舵板3の舵角を検出する複数のセンサ32(図4に示す)が設置されている。センサ32としてはリミットスイッチが用いられており、これらセンサ32は、舵板3の舵角が35°に達した時に制御信号を出力するようになっている。
【0037】
第1の油圧制御ユニット20は、過大な舵トルクから舵取機5を保護する圧力制御装置35を備えている。圧力制御装置35は、第1のバルブユニット35aと第2のバルブユニット35bとを有している。第1のバルブユニット35aは、第1の油圧回路25と第2の油圧回路26とを結ぶ第1のバイパス通路36aに設置され、上記第1および第2の中継回路27,28の上流側に位置されている。第2のバルブユニット35bは、第1の油圧回路25と第2の油圧回路26とを結ぶ第2のバイパス通路36bに設置され、上記第1および第2の中継回路27,28の下流側に位置されている。
【0038】
図5や図6に示すように、第1のバルブユニット35aは、第1の圧力制御手段としてのパイロット作動式の第1の安全弁38と、第2の圧力制御手段としての直動式の第2の安全弁39と、上記センサ32からの制御信号に基づいて作動される3ポート2位置形の電磁弁40とを備えている。
【0039】
第1の安全弁38は、第1のバイパス通路36a上に設置されている。この第1の安全弁38は、入口41a,出口41bおよび排出口41cが形成された弁箱41を有している。弁箱41の入口41aは、第1のバイパス通路36aを介して第1の油圧回路25に連なるとともに、弁箱41の出口41bは、第1のバイパス通路36aを介して第2の油圧回路26に接続されている。
【0040】
弁箱41の内部には、出口41bを開閉するピストン形の弁体42が収容されている。弁体42は、出口41bを閉じる閉じ位置と、出口41bを開放する開き位置とに亘って移動可能に弁箱41に支持されており、常にスプリング43を介して閉じ位置に保持されている。そして、この弁体42の開弁圧力Pv1は、例えば225Kgf/cm2に設定されている。
【0041】
弁体42は、入口41aと排出口41cとを連通させる連通口44を有している。そのため、排出口41cには、連通口44を通じて第1の油圧回路25の油圧がパイロット圧として作用しており、この排出口41cは、逃し通路45を介して油タンク46に連なっている。
【0042】
第2の安全弁39は、逃し通路45上に設置されている。この第2の安全弁39は、入口48aおよび出口48bが形成された弁箱48を有している。弁箱48の入口48aは、第1の安全弁38の排出口41cに連なるとともに、出口48bは油タンク46に連なっている。
【0043】
弁箱48の内部には、弁体49が収容されている。弁体49は、入口48aと出口48bとの連通を遮断する閉じ位置と、入口48aと出口48bとを連通させる開き位置とに亘って移動可能に弁箱48に支持されており、常時スプリング50を介して閉じ位置に保持されている。そして、この弁体49の開弁圧力Pv2は、例えば160Kgf/cm2に設定され、上記第1の安全弁38の開弁圧力Pv1よりも小さくなっている。
【0044】
電磁弁40は、第1の安全弁38と第2の安全弁39との間に位置されている。電磁弁40は、第1の安全弁38の排出口41c、第2の安全弁39の入口48aおよびドレン通路50に連なる三つのポートを有しており、図6に示すように電磁弁40が閉じられた状態では、第1の安全弁38の排出口41cがブロックされている。そのため、第1の油圧回路25の許容圧力は、第1の安全弁38の開弁圧力Pv1に設定される。
【0045】
電磁弁40のソレノイド駆動部51は、信号ケーブル(図示せず)を介して上記センサ32に接続されている。センサ32は、舵板3の舵角が35°に達した時に制御信号を出力するので、この制御信号がソレノイド駆動部51に送られると、このソレノイド駆動部51を介して電磁弁40が開かれる。そのため、第1の安全弁38の排出口41cが開放され、この第1の安全弁38の作動が停止されるとともに、第1の油圧回路25の油圧が排出口41cから逃し通路45を介して第2の安全弁39に作用する。この結果、第1の油圧回路25の許容圧力は、第2の安全弁39の開弁圧力Pv2に設定される。
【0046】
第2のバルブユニット35bは、上記第1のバルブユニット35aと同様に第1の安全弁38、第2の安全弁39および電磁弁40を有しており、その基本的な構成は第1のバルブユニット35aと同様である。そして、第2のバルブユニット35bでは、第1の安全弁38の入口41aが第2の油圧回路26に接続されているとともに、第1の安全弁38の出口41bが第1の油圧回路25に接続されている。
【0047】
このため、第2のバルブユニット35bの第1の安全弁38の排出口41cが閉止されている限り、第2の油圧回路26の許容圧力は、第1の安全弁38の開弁圧力Pv1に設定され、上記センサ32からの信号によって第1の安全弁38の排出口41cが開放された時に、第2の油圧回路26の許容圧力が第2の安全弁39の開弁圧力Pv2に設定されるようになっている。
【0048】
このような油圧式の舵取機5において、舵板3の舵角が35°未満の状態においては、第1および第2のバルブユニット35a,35bの電磁弁40が閉状態を維持し、第1の安全弁38の排出口41cがブロックされている。そのため、第1および第2の油圧回路25,26の許容圧力が第1の安全弁38の開弁圧力Pv1に保持され、舵板3の舵角が35°未満の状態では、駆動ユニット6は図7に示すような出力トルクTで舵板3を駆動する。
【0049】
舵板3の舵角が35°に達し、駆動ユニット6の出力トルクTが最大となると、センサ32からの制御信号により電磁弁40が開き、第1の安全弁38の排出口41cが第2の安全弁39の入口48aに連なる。そのため、第1の安全弁38の作動が停止されると同時に、第2の安全弁39に第1および第2の油圧回路25,26の油圧が作用し、これら油圧回路25,26の許容圧力が第2の安全弁39の開弁圧力PV2に移行する。
【0050】
この際、開弁圧力PV2は、開弁圧力Pv1よりも小さいので、第2の安全弁39に第1および第2の油圧回路25,26の油圧が作用すると、弁体49がスプリング50に抗して閉じ位置から開き位置に移動し、第2の安全弁39が開かれる。このため、第1および第2の油圧回路25,26を流れる油が第1および第2のバイパス通路36a,36bや逃し通路45を介して油タンク46に戻され、駆動ユニット6の第1および第2の油圧室12a,12dの油圧が低下する。
【0051】
これにより、図7に示すように、舵板3の舵角が35°に達した時点で駆動ユニット6の出力トルクTが一時的に低下し、この出力トルクTが舵板3の最大舵トルク付近に達した時点で電磁弁40が閉じられる。よって、駆動ユニット6の出力トルクTは、舵板3の舵角が大きくなるに従い再度増加に転じ、舵板3の舵トルクを上回る大きな出力トルクTで舵板3を駆動することになる。
【0052】
このような構成によれば、舵取機5の出力トルクTが最大となった以降は、第2の安全弁39を作動させて舵取機5の出力トルクTが低下するように油圧を制御しているので、最大舵角が45°の舵板3の舵取り動作を行うに際して、舵角が35°の時の舵トルクCに基づいて出力トルクTが決められた舵取機5を用いたとしても、舵板3の舵角が45°となった時点での舵取機5の出力トルクTは、舵角が35°の時の出力トルクTよりも小さくなる。
【0053】
このため、舵板3の舵角が35°から45°に達した時点での舵取機5の強度を許容限度内に収めることができ、この舵取機5を最大舵角が45°に達するような特殊な舵板3の駆動用として選択することができる。
【0054】
したがって、舵板3の全動作領域において出力トルクTが舵トルクCを上回るような一つ又は二つ上のランクの大型の舵取機を選択する必要はなく、その分、舵取機5が小型・軽量化されて舵取機5の設置スペースを削減できる。それとともに、舵取機5自体の価格を低く抑えることができ、コストの低減が可能となる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施の形態に特定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0056】
例えば、上記第1の実施の形態では、舵板の舵角に応じて一つの第2の安全弁を作動させるようにしたが、例えば第2の安全弁を複数設置し、これら第2の安全弁の開弁圧力を互いに異ならせるとともに、第2の安全弁が開く舵角を段階的に設定するようにしても良い。
【0057】
この構成によれば、舵板の舵角が最大舵角に近づくに従って、舵取機の出力トルクが舵板の舵トルクに近づくように段階的に小さくなるので、ポンプユニットを駆動するモータの負荷を軽減することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、最大舵角に達する以前の中間舵角の時に舵トルクが最大となり、それ以降は舵角が増すに従い低下する舵板用の舵取機において出力トルクが最大となった(即ち、油圧回路の油圧が許容圧力を上回った)以降は、第2の圧力制御手段を作動させて舵取機の出力トルクが低下するように油圧を制御しているので、最大舵角よりも小さな舵角の時の舵トルクに基づいて出力トルクが決められた舵取機を用いて舵板を駆動する場合に、舵板の舵角が最大となった時点での舵取機の出力トルクを、舵角が中間開度の時の出力トルクよりも小さく抑えることができ、舵板の舵角が最大舵角に達した時点での舵取機の強度を許容限度内に収めることができる。
【0059】
したがって、舵板の全動作領域において出力トルクが舵トルクを上回るような一つ又は二つ上のランクの大型の舵取機を選択する必要はなく、その分、舵取機が小型・軽量化されて舵取機の設置スペースを削減できるとともに、舵取機自体の価格を低く抑えて、コストの低減が可能となるといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】舵取機を動作させるための油圧回路図。
【図2】船体に対する舵板と舵取機との位置関係を示す斜視図。
【図3】舵本体とフラップとの位置関係を示す断面図。
【図4】舵取機の平面図。
【図5】第1のバルブユニットの油圧回路図。
【図6】第1の安全弁、電磁弁および第2の安全弁の構造を概略的に示す断面図。
【図7】特殊な舵板の舵トルクと舵取機の出力トルクとの関係を示す特性図。
【図8】従来の特殊な舵板の舵トルクを示す特性図。
【図9】従来の舵取機の出力トルクと特殊な舵板の舵トルクとの関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…船体
3…舵板
5…舵取機
10a〜10d…アクチュエータ(第1ないし第4の油圧シリンダ)
24…圧力発生源(ポンプユニット)
25,26…油圧回路(第1および第2の油圧回路)
38…第1の圧力制御手段(第1の安全弁)
39…第2の圧力制御手段(第2の安全弁)
Claims (5)
- 最大舵角に達する以前の中間舵角の時に舵トルクが最大となり、それ以降は舵角が増すに従い低下する舵板の最大舵トルクよりも大きな出力トルクで上記舵板を舵取り動作させ、上記舵板の舵角が大きくなるに従い出力トルクが増大するとともに、上記舵板が最大舵角に達する以前に出力トルクが最大となる油圧式のアクチュエータと;このアクチュエータに油圧回路を通じて接続された油圧発生源と;を備え、
上記油圧回路に、上記アクチュエータの出力トルクが最大となるまでの動作領域において上記油圧回路の油圧が許容圧力を上回った時に作動され、上記アクチュエータに加わる油圧を制限する第1の圧力制御手段を設けるとともに、上記舵板が上記アクチュエータの最大出力トルクを超える舵角にまで動作された時に上記第1の圧力制御手段よりも低い設定圧で作動され、上記アクチュエータの出力トルクを低下させる第2の圧力制御手段を設けたことを特徴とする舵取機の油圧制御装置。 - 請求項1の記載において、上記第1の圧力制御手段は、上記油圧回路の油圧に応じて作動されるパイロット作動式の安全弁であり、この安全弁は、常に上記油圧回路の油圧が作用する排出口を有するとともに、この排出口が上記舵板の舵角を検出する検出手段からの信号に基づいて作動される電磁弁を介して上記第2の圧力制御手段に接続されていることを特徴とする舵取機の油圧制御装置。
- 請求項2の記載において、上記第2の圧力制御手段は、上記電磁弁によって作動される少なくとも一つの直動式の安全弁を有することを特徴とする舵取機の油圧制御装置。
- 請求項1ないし3のいずれかの記載において、上記油圧発生源は、モータによって駆動されるポンプを備えていることを特徴とする舵取機の油圧制御装置。
- 船体と;この船体の後部に舵取り可能に支持され、最大舵角に達する以前の中間舵角の時に舵トルクが最大となり、それ以降は舵角が増すに従い低下する舵板と;この舵板の最大舵トルクよりも大きな出力トルクで上記舵板を舵取り動作させ、上記舵板の舵角が大きくなるに従い出力トルクが増大するとともに、上記舵板が最大舵角に達する以前に出力トルクが最大となる油圧式のアクチュエータを含む舵取機と;を備えており、
この舵取機は、
上記アクチュエータの出力トルクが最大となるまでの動作領域において上記油圧回路の油圧が許容圧力を上回った時に作動され、上記アクチュエータに加わる油圧を制限する第1の圧力制御手段と;上記舵板が上記アクチュエータの最大出力トルクを超える舵角に動作された時に上記第1の圧力制御手段よりも低い設定圧で作動され、上記アクチュエータの出力トルクを低下させる第2の圧力制御手段と;を備えていることを特徴とする船舶。
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