JP3891687B2 - 灰溶融炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみや産業廃棄物の焼却炉並びに石炭焚事業用ボイラなどより排出される焼却灰や飛灰等の被溶融部材である灰の表面をバーナにより加熱溶融して、溶融灰を溶融スラグとして排出する灰溶融炉に関し、特に広域溶融を可能とした灰溶融炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に使用されているバーナ式灰溶融炉には、円形回転式表面溶融炉と角型固定式表面溶融炉とがあるが、簡単のため角型固定式表面溶融炉により概略の機能を説明する。
図4に示すように、従来の灰溶融炉は、斜めに下降する傾斜状の炉底55と、炉体本体の一端側に設けた灰供給部53と、他端側に設けた排出口57と、炉天井56に設けた固定バーナ52とよりなる。前記灰供給部53は下端に灰供給口54を備えた灰貯留部60よりなり、灰貯留部60は焼却灰等の被溶融部材を貯留し、その下部より貯留する前記被溶融部材である灰50をプッシャ58を介して排出口57に向け押し出し、炉底55の傾斜面に沿って灰供給層59を形成させる構造にしている。
【0003】
そして、前記固定バーナ52は、炉天井56の中央軸線上に設けられ、該バーナ内に圧送された液体燃料を高圧空気ないし排熱ボイラの蒸気により微粒子化して噴射し、それとともに供給される高温の燃焼空気と混合させて前記微粒化された燃料を燃焼させ、その火炎輻射熱が灰供給層59の表面に溶融温度領域を形成して溶融灰25を形成するようにしている。
前記排出口57に向け移動を続ける灰供給層59の外表面の灰50は、上記のように加熱溶融され溶融灰25を形成して溶融スラグ25aとして炉底55の末端に設けた堰63のスラグ出滓口64を介して排出口57の下部へ滴下させ、図示してない水封コンベアを介して外部へ排出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記固定バーナ52は炉天井56の中央軸線上に固定されているため、図5に示すように固定バーナ52の火炎輻射熱による前記灰供給層59の表面に形成される灰を加熱溶融する溶融温度領域71を、炉底55上の炉壁70、70の間を移動する灰供給層59の全幅に亙って形成することは無理で、図に示すように加熱溶融される前記溶融温度領域71の外側には固形状の灰焼結部72を形成するため、炉壁70との間の灰の移動は困難となり灰堆積部73を形成する。
【0005】
ところで、上記溶融温度領域71の外側に固形円弧状の灰焼結部72が形成されるため、灰焼結部72の近傍より炉壁70に到る間の灰の移動は阻害され前記したように灰堆積部73ができ、堆積量がその限度を越すと雪崩現象を起こし、炉底55の末端へ向け逸走し未溶融の灰を溶融スラグの中に混入させ、溶融スラグの品質の低下の原因を形成する問題がある。
また、前記灰焼結部72の内側においても、固形円弧状の灰焼結部72が溶融灰25の下方への流れの阻害を起こすとともに、それ自身の成長肥大化と増殖が起こり、ついには溶融灰25の流れの閉塞状態を惹起し運転停止に到る問題がある。
しかも上記閉塞状態の解消には、上記肥大化した灰焼結部72の破砕が必要で、これの解消には多大の困難を伴う問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点の解決のためになされたもので、バーナによる灰の加熱溶融する溶融温度領域を広域化し、炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたり、移動するすべての灰の加熱溶融を可能としたもので、しかも一個のバーナにより低コスト、省スペースのもとに可能とするため、溶融加熱域を適宜選択制御可能の構造とした効率的灰溶融炉の提供を目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の灰溶融炉は、炉体本体の一端側に灰供給口を設け、他端側に溶融灰の排出口を形成し、前記灰供給口から供給された灰を傾斜した炉底に沿って前記排出口側へ移動させながらバーナにより加熱溶融する灰溶融炉において、
前記バーナを首振り機構を介して首振り可能に構成し、前記首振り機構は、炉天井に設けた回動体の回転軸線の軸線周り方向に回動自在に設けた回動体を含む旋回機構と、前記回動体に取り付けられ、前記バーナを垂直断面内で左右に揺動させる角度揺動機構により構成し、前記旋回機構は最大回動角が1回転以下に抑えられているとともに、
前記角度揺動機構は、灰の加熱溶融する溶融温度領域を炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたる角度範囲に亘って前記バーナを揺動させるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記灰溶融炉は、請求項2記載のように、炉内での灰溶融状態を監視する温度分布検知手段(サーモビューア等)を設けるとともに、該温度分布検知手段からの出力に基づく溶融灰の温度分布状態に応じて前記バーナの首振り機構の駆動を制御するバーナ駆動制御装置を設けるのがよい。
【0010】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、移動する灰供給層の表面を加熱溶融するバーナを首振り構造としたため、溶融加熱領域は首振り半径に相応して加熱溶融領域の範囲を広げることができ、1台のバーナで炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたる角度範囲の広範囲の加熱溶融を可能とすることができ、灰溶融負荷の増大と安定運転が可能となる。
【0011】
また、請求項1記載の発明によれば、炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたる角度範囲領域に対しては、旋回機構によりその周方向の所定角度変向と旋回(正逆回転も含む)により、1台のバーナで広域加熱を効率的に可能とすることが出来る。
【0012】
また、請求項2記載の発明によれば、温度分布検知手段(サーモビューア等)からの出力に基づく溶融灰の温度分布状態に対応して所用の溶融加熱を必要とする領域を演算設定して、首振り機構の旋回機構と角度揺動機構をそれぞれ駆動制御する構成にしてあるため、必要とする領域へのバーナを向けて加熱溶融を積極的に行なうことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例の形態を、図示例と共に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対的位置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお従来例を示す図面と同一部材については同一符号を使用する。
【0014】
図1は本発明の灰溶融炉の概略の構成を示す図で、本発明の灰溶融炉は、炉体本体の一端側には灰供給部53とその下部に灰供給口54が設けられ、灰50は前記灰供給口54よりその下部に設けられた炉底55上に供給され、プッシャ58により傾斜する炉底55に沿って灰供給層59を形成させながら炉底55の末端に向け移動させるとともに、炉体本体の上部の炉天井56の中央部の軸芯に設けた首振りバーナ10により前記灰供給層59の表面の灰を加熱溶融させ、溶融灰25を得る構成にするとともに、前記首振りバーナ10により広域の加熱溶融を可能としたものである。
なお、灰供給口54には灰焼結部を破砕するための昇降による破砕可能の解砕機20を設けて、灰の円滑な移動を可能にしてある。
【0015】
また、炉体本体の他端側上部の端面に設けた赤外線CCDカメラ等の撮像部16(サーモビューア)により炉内の溶融灰25の温度分布状態を検出し、その状態に応じて首振りバーナ10の首振り機構を制御して、広域の加熱溶融を可能とするバーナ駆動制御装置15を設ける構成にしてある。
【0016】
上記首振りバーナ10は、図2に示すように炉天井56に設けた回動体14の回転軸線の軸線周り方向に回動自在に設けた回動体14(図2(B)に回動体14の回転軸線が1点鎖線で表示されており、その回転軸線の軸線周り方向に回動体14の回動方向を示す矢印が付されている。)と該回動体14に設けた歯車列13と駆動用サーボモータ12とよりなる旋回機構と、前記回動体14に垂直断面内で左右揺動自在に回動軸11aを介して設けたバーナ10aと前記回動軸11aに直結する揺動用サーボモータ11とよりなる角度揺動機構とより構成する。また首振りバーナ10を支持する炉天井56の内部は輻射熱を受けるため、遮蔽、耐熱、水冷構造56a等の冷却構造を具備している。
【0017】
なお、図2(A)はバーナ10aを角度揺動機構により左右に揺動させる状況を示す図で、(B)は旋回機構により(A)に示すバーナ10aを90度回動させた状態を示す図である。
なお、図2(A)、(B)に示すように、バーナ10aを作動させる灯油と、酸素と高温高圧空気との混合体とは外部より個別に回動体14に導入され、次いでフレキシブルパイプを介してバーナ10aに導入可能にしてあり、前記旋回機構の最大回動角は1回転以下に抑え、導入パイプの絡み付きを防止する必要がある。
また、前記駆動用サーボモータ12の代わりに、停止位置自己保持可能のパルスモータを用いても良い。
【0018】
前記バーナ駆動制御装置15は、炉体本体の他端側の排出口57上部の端面に設けた赤外線CCDカメラ等の撮像部16と、画像処理部17と、温度分布比較部18と、揺動制御部19aと旋回制御部19bとよりなる制御部19とより構成する。
上記赤外線CCDカメラ等の撮像部16は炉体本体の他端側端面の排出口57の上部に設け、炉内の灰供給層59の表面の加熱溶融の状況を把握できるようにしてある。
【0019】
上記構成により、赤外線CCDカメラ等の撮像部16で得られた画像は画像処理部17で画像分析され、炉内の灰供給層59表面の温度分布状態を検出する。ついで、温度分布比較部18で、加熱を必要とする部位を演算し併せて所用の旋回角及び揺動角を演算して制御指令を制御部19に出力する。次いで、指令を受けた揺動制御部19a及び旋回制御部19bは角度揺動機構及び旋回機構の夫々のサーボモータ11、12を駆動制御させる。斯くして、バーナ10aを所要位置にセットし広域加熱を可能とする構成にしてある。
【0020】
上記広域加熱制御の状況を図3に示す。図に見るように灰供給層59の上には広域加熱の結果もたらされた溶融温度領域21が示されており、中央軸芯Y−Yに対して均一な灰の溶融を可能にし、従来の固定バーナに見られた灰焼結部や灰堆積部の形成を完全防止し、溶融灰の閉塞等を皆無とするばかりでなく、未溶融の灰の溶融スラグへの混入も完全防止できる。
なお、同図に見るように、バーナ10aを例えば灰供給層の矢印A方向の移動に対し、左右方向にバーナを揺動させる場合は旋回機構により図の仮想線で示す位置に90度回動させるとともに、角度揺動機構により垂直断面面内において所定角度の揺動をさせる必要がある。このような操作により1台のバーナにより図に示す広域の加熱溶融を可能とすることが出来る。
【0021】
【発明の効果】
上記記載のように、請求項1記載の発明によれば、バーナを首振り構造としたため、加熱溶融領域は炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたる角度範囲に範囲を広げることができ、1台のバーナで広範囲の加熱溶融を可能とすることができ、灰溶融負荷の増大と安定運転が可能となる。
【0022】
また、請求項1記載の発明により、溶融加熱を必要とする領域に対しては、旋回機構によりその周方向の首振り方向を設定した後、必要に応じ角度揺動機構により垂直断面面内において揺動角を設定すれば良く、1台のバーナで広域の加熱溶融を可能とすることが出来る。
【0023】
また、請求項2記載の発明により、赤外線カメラ等の温度分布検知手段(サーモビューア等)からの出力に基づく溶融灰の温度分布状態に対応して所用の溶融加熱を必要とする領域を演算設定し、首振り機構を介してバーナを所定方向位置に駆動制御する構成にしてあるため、適宜必要とする領域の加熱溶融を積極的効率的に可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の灰溶融炉の概略の構成を示す図である。
【図2】図1の首振りバーナの構成を示す図で、(A)は角度揺動機構の揺動状況を示し、(B)旋回機構により(A)に示す位置より90度回動させた状態を示す図である。
【図3】図1のバーナ駆動制御装置の作動の結果得られた広域の溶融加熱領域を形成した灰供給層の状況とバーナの揺動及び旋回制御の状況を示す図である。
【図4】従来の灰溶融炉の概略の構成を示す図である。
【図5】図4の固定バーナを使用した場合の灰供給層面に形成される、灰の溶融温度領域及び灰焼結部および灰堆積部発生の状況を示す図である。
【符号の説明】
10 首振りバーナ
10a バーナ
11、12 サーボモータ
13 歯車列
14 回動体
15 駆動制御装置
16 赤外線CCDカメラ等の撮像部
17 画像処理部
18 温度分布比較部
19 制御部
20 解砕機
21 溶融温度領域
25 溶融灰
25a 溶融スラグ
Claims (2)
- 炉体本体の一端側に灰供給口を設け、他端側に溶融灰の排出口を形成し、前記灰供給口から供給された灰を傾斜した炉底に沿って前記排出口側へ移動させながらバーナにより加熱溶融する灰溶融炉において、
前記バーナを首振り機構を介して首振り可能に構成し、前記首振り機構は、炉天井に設けた回動体の回転軸線の軸線周り方向に回動自在に設けた回動体を含む旋回機構と、前記回動体に取り付けられ、前記バーナを垂直断面内で左右に揺動させる角度揺動機構により構成し、前記旋回機構は最大回動角が1回転以下に抑えられているとともに、
前記角度揺動機構は、灰の加熱溶融する溶融温度領域を炉底に沿い形成される灰供給層の全幅にわたる角度範囲に亘って前記バーナを揺動させるように構成されていることを特徴とする灰溶融炉。 - 前記灰溶融炉に、炉内での灰溶融状態を監視する温度分布検知手段を設けるとともに、該温度分布検知手段からの出力に基づく溶融灰の温度分布状態に応じて前記バーナの首振り機構の駆動を制御するバーナ駆動制御装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の灰溶融炉。
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